井上ひさし「四千万歩の男 忠敬の生き方」を読む 商家に養子に入り、傾いた店の経営を立て直し、村の政治にも力を発揮した50歳までの前半生。忠敬が江戸に出て天文学を学び、さらには日本全国の地図作成という大事業に挑むのは後半生のこと。定年を迎えたサラリーマン諸氏にとって、これからどう生きるか? お手本を示してくれるようであります。 しかしこの本の面白さは、伊能忠敬の偉さよりもむしろ井上ひさしのオタクっぷりにありそうです。遅筆で有名な著者は、脚本の設定をイメージするために手書きの現地地図を書いていたという。オクラホマ州アナダルコの地図、小林一茶が生活していた頃の江戸市中・・手書きの地図には国境や保護地…