**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』9.龍神祭り(5)
**************** 「シャルン、何してる、こっちへ!」「駄目です、陛下」 震える声を絞り出す。「ここに……龍神が………居ます」「は?」「どこに居るってんですか姫様、そんなものどこにも」 ぞ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』9.龍神祭り(4)
**************** 陛下はやはりリュハヤ様の方を美しいとご覧になっているのかしら。 さすがにちょっと不安になってレダンを見上げると、相手は厳しい顔でリュハヤを見つめている。いや、正確
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』9.龍神祭り(3)
**************** ドン、ドン、ドォオン。『祈りの館』の中央に引き出された大きな木板を、男達が力強く木槌で打ち鳴らす。「これより、龍神祭りを執り行う!」 真っ白の衣をつけ、頭に白い頭
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』9.龍神祭り(2)
**************** 「いよいよ明日ですね」 ベッドの側に腰を下ろしたガストが呟く。「明日だな」 ベッドに寝転びながら、レダンは強い視線を天蓋へ向ける。「『祈りの館』の中央祭壇から地下へ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』9.龍神祭り(1)
**************** 「…」 その夜、シャルンはリュハヤに借りた針の手をふと止めた。「姫様? お疲れでしょう、もう残りは私が」 同じように針を動かしていたルッカが気づいて労ってくれる。「
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』8.竃のダイシャ(4)
**************** 「…ガスト」 ぼそりとレダンが唸った。「………いや、止めた方が」「まだ何も言ってねえぞ」「続くことばが予想できるからですよ、短い付き合いじゃないですし」「なら、話が早い
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』8.竃のダイシャ(3)
**************** ようやく少し落ち着いたレダンは、それでもシャルンを側に、昨日の話を聞き取った。「小屋に行く前に細い小道が湖に降りていましてね」 ガストが考え考え続ける。「周囲に特
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』8.竃のダイシャ(2)
**************** 「どういうことですか!」 レダンの部屋に入ると、ルッカはいきなり大声で詰った。「何をなさってるんですか!」「ああ、すまん、けれど俺も我慢の限界でな」「にしても一応私
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』8.竃のダイシャ(1)
**************** 翌日の昼過ぎ、シャルンの部屋の扉を小さく叩く音がした。「はい」 腰を浮かしかけたシャルンを制して、ルッカが扉へ近づく。「…シャルン様はおいでかしら」 生き生きと楽
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』7.花石(5)
**************** ダイシャが案内してくれたのは、幾つもあった鍵のかかった扉の1つだった。「こちらへどうぞ」 腰から下げていた鍵を使って扉を開ける。「まあ…」「足元が危ういので…お気を
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』7.花石(4)
**************** 「……陛下はどうして倒れられたのでしょう」 呟くように尋ねてみる。「…御公務のお疲れでしょう」 リュハヤはさらりと答えた。「王たる務めを理解している者がお仕えしてこそ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』7.花石(3)
**************** 「……ほう」 シャルンはレダンの部屋を出て、大きく息をついた。 体が暑くて苦しい。まるでレダンの熱を移されたようだ。脳裏に今まで唇を合わせていたレダンの表情が過ぎる。
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』7.花石(2)
**************** 「シャル…」 そんなことはない、と強がろうとした唇に、小さくキスされて顔を歪めた。息苦しさと鼓動に叩きのめされながら、息を喘がせる。「…陛下、もう少し、私にお任せ下さ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』7.花石(1)
**************** 「…言ってくれるね」 殺しても死なないとは。 レダンはシャルンの話に嘆息する。「まあ、その通りだったが」「…陛下は」 話し終わったシャルンは、少し首を傾げた。「まだお
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』6.糸繰り場(8)
**************** 「世話をかけます」「はっ」 庶民風の身なりに騎士風の礼を返しては仕方がないだろうに、バラディオスはいささかうろたえているようだ。少し頬の辺りが赤いが、部屋の暑さのせ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』6.糸繰り場(7)
**************** レース工房では、また別の発見があった。「あら…」 壁際で見慣れぬ庶民の格好で腕組みをして立っている、辺境伯、バラディオス・クレラント。「商人でございますよ、…奥方様
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』6.糸繰り場(6)
**************** 「……まあ…」 こちらです、と案内された糸繰り場は、薄暗い部屋に熱気が満ちていた。「お暑うございますよ、ご不快であれば、すぐにお外へお連れします」「大丈夫です。…あれは
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』6.糸繰り場(5)
**************** オルガが戻って渡したのは、確かに粗末な衣類だった。「懐かしいわね」「懐かしゅうございますね」 ルッカと2人、手にした服と頭を包む三角形の布を眺める。「カースウェル
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』6.糸繰り場(4)
**************** 「……お薬のせいですか?」「ん?」「私が来た時、リュハヤ様が添い寝してらっしゃいました……私はもう要らないと……陛下がリュハヤ様に命じられたと…」「……うん」 そんなことを
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』6.糸繰り場(3)
**************** 「…か……陛下!」 耳元で悲痛な声で呼ばれたから、ゆっくり瞬いて目を開けた。「…シャルン…」「……陛下……」 目元を真っ赤にし、今の今まで泣き崩れていたのではないかと思うよ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』6.糸繰り場(2)
**************** エイリカ湖は周囲の山から流れ落ちてきた水と、恐らくは湖の底から染み出すように噴き出している地下水が合わさってできていると思われている。かつてレダンは一度ここへ潜っ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』6.糸繰り場(1)
**************** 不愉快な朝食の席が終わって部屋を移動し、ようやく交渉の場を持てたと思えば。「美しい音色でしょう」「……」「これは特別な楽器でね、わざわざリュハヤのために作らせたので
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』5.レース工房(7)
**************** 今度の焼き菓子は日持ちがするように固めに焼いたもので、お茶に含ませつつ食べるのだと教え、オルガはこれも1つ、じっくり楽しみながら食べた。「お話とはなんでしょう」「
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』5.レース工房(6)
**************** 「さあ、どうぞ」「え……あの…」 ただでさえ豪華な部屋に引き入れられて、びくびくしていたオルガは、目の前にお茶とお菓子を出されて目を白黒させた。「あたし、あの」 リュ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』5.レース工房(5)
**************** 「皆様……そしてリュハヤ様」 静まり返った部屋にシャルンの声が響く。「私の至らなさより、不快な思いをさせ、すまなく思います」 顔を上げ、イルデハヤを、続いてリュハヤを
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』5.レース工房(4)
**************** 「…リュハヤ、遠慮はわかるが、もう少しはっきりと話しなさい」 司祭が重々しく続けた。「働く者を悲しませるような振る舞いだと教えて差し上げねば……我らは臣下であるのだか
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』5.レース工房(3)
**************** 食事は和やかに進んだ。 温かいスープに味わいのある干し肉、多種類のパンに豊富な果物。 部屋と同じく、粗末で質素な暮らしぶりとは程遠い、豊かで傲慢な食卓。 周囲に立
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3』5.レース工房(2)
**************** 「…まあ」 朝食の席で薄紅のドレスを着たリュハヤが目を丸くした。「シャルン様、また………あっ」 何か言いたげに呟き、慌てて口を手で押さえる。「ごめんなさい」「…何か?」
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**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな
**************** 「………だから見せに来たんですか」「え?」「大輔さんと恵子さんに」「……」 黙り込んだ真崎に、やっぱり、と思った。 ただのイブキの墓参りなら、まっすぐここへ来ればいいだ
**************** 残念ながら、移動先での一休みと食事にはありつけなかった。 周囲を警戒しながら進んでいたはずだが、燃え続けて収まる気配のない『氷の双宮』に皆が気を取られた一瞬、「敵
**************** 大輔は京介が『ぼけ』にかまけて自分と遊ばないとたびたび癇癪を起こしていた。そうして、ある日、『そんなにこいつが大事か』『大ちゃんっ』『こんなちっこいやつが』『やめ
**************** 一群れの軍を制圧した、と言えばいいのだろうか。 戦い方を変えてからは、勝敗はあっさり決した。死屍累々とはまだ早いか、大怪我をしつつ未だ死んでは居ない者も転がる広場
**************** 「ここだよ」 黙って手を繋いだまま山を登って、京介は慣れた場所に辿りつく。「綺麗なところですね」 じっと見ていた伊吹がぽつりと言って、思わず振り向いた。「綺麗? こ
**************** 「シートス!」「隊長!」 周囲に満ちる剣戟の隙間からも、重なり合った2つの声は届いた。その一つが、奇跡的な救いに繋がると感じてシートスは振り返る。炎に彩られた道なき
**************** 「わぁ…」「気に入った?」「いや、気に入ったというか、なんて言うか」 ゆっくり足下に気をつけながら歩いたから、結構な時間が立ったはずだ。 美並が額にうっすら汗を感じ
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ