**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 2.積み重ねた日記帳(3)
**************** 「坊っちゃま」「ん?」 ドアの外から高野の声が響いて、俺と周一郎はそちらを見た。「いらっしゃいましたが」「入ってもらってくれ」「誰だ?」「厚木警部です」「なにい?」
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 2.積み重ねた日記帳(2)
**************** 「どう思う?」 高多が一通りのことを話し終わって帰って行った後、俺は周一郎に問いかけた。「そうですね」 相手はゆっくりとコーヒーを口に含んだ。「彼が謎解きをしたがっ
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 2.積み重ねた日記帳(1)
**************** 「……」 ふと、膝の上のルトを撫でていた周一郎が手を止めた。ちらりと玄関の方へ目を遣る。「ん?」「いらっしゃったようですね」 言いながら、外していたサングラスを掛け
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 1.雨の日の物語(2)
**************** 3日後。「あつっ…つっ…」 ノックが響く。「開いてるよ……うあっち!」 答えてドアを振り向き、拍子に傷口に貼ったカットバンを思い切り引っ剥がして声を上げた。「く…ああ
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 1.雨の日の物語(1)
**************** それは初冬と言うのも遅すぎた、ある雨の日のことだった。「ひええええぃ」 俺は学校帰りに雨に降られ、ようよう軒先きの一つに飛び込み、バタバタ雨粒を払い落としながら周
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 24.国史(2)
**************** 「…良いんですか」 ガストの声に、レダンはちらりとバラディオスと話し込むシャルンを見遣る。「良い。あいつがあれほど派手に反応するとはな。面白いやつじゃないか」「…お
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 24.国史(1)
**************** 薄暗い坑道の中を先に立って進みながら、先ほどから「どう言うことだあれは」とか「計算外だったな畜生」とか「誰か余計なことを吹き込んだんじゃないだろうな」とか「これ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 23.私室(2)
**************** あなたが読んでからでいいよ。 レダンはそう囁いて、シャルンを抱きしめたまま、ソファでゆっくりすることに決めてしまったらしい。離してくれないので、仕方なしにシャル
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 23.私室(1)
**************** 「手紙?」「はい、母から私へのものだと思います」 レダンはシャルンの元私室で質素な椅子に腰を降ろした。 玉座の広間より少し離れた場所に設えられていた部屋は、隙間風
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**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな
**************** 「………だから見せに来たんですか」「え?」「大輔さんと恵子さんに」「……」 黙り込んだ真崎に、やっぱり、と思った。 ただのイブキの墓参りなら、まっすぐここへ来ればいいだ
**************** 残念ながら、移動先での一休みと食事にはありつけなかった。 周囲を警戒しながら進んでいたはずだが、燃え続けて収まる気配のない『氷の双宮』に皆が気を取られた一瞬、「敵
**************** 大輔は京介が『ぼけ』にかまけて自分と遊ばないとたびたび癇癪を起こしていた。そうして、ある日、『そんなにこいつが大事か』『大ちゃんっ』『こんなちっこいやつが』『やめ
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ