**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
**************** 「かわい、そう?」 俺の頓狂な返答に、由美は笑いを響かせた。『だってね、高多君、和枝を殺してなんかいないんです』「へ?」『和枝が一人で落ちちゃっただけ。私、見てたんだ
1980000ヒット、ありがとうございました!『ラズーン7』1.開門(1)
**************** 「扉が開くぞ!」「おお、『氷の双宮』の扉が!」 人々の間から静かな囁きが広がり、やがて大きなどよめきとなっていった。『氷の双宮』 二百年以上の長きに渡って四大公し
****************「そうですか……」 見舞いに来た俺と周一郎(もっとも周一郎は俺が無理に引っ張って来たのだが)に、るりは儚げな微笑を見せた。 謎解きが終わったことを告げられると、一層淡い笑
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 7.時には愛が(3)
**************** 「…俺は河本の言う通りにするしかなかった」 高多は噛み切るような激しさで言い切り、がぶりとコーヒーを飲んだ。味も何もわかっていないのだろう。口の中に残った苦さに、初めて
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 7.時には愛が(2)
**************** 赤い夕陽の中、不安そうに待っていた和枝は、高多の足音にぱっと振り返った。頬を染め、俯く。それから、蚊が鳴くように小さく、「あの……高多さん…お話がある……んです」「だっ
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 7.時には愛が(1)
**************** 窓の外は曇って来ていた。さっきまで、近頃には珍しい晴天で、いやに冷え込むと思ってはいたが、この様子じゃ雪になるかも知れない。昼過ぎだというのに、薄暗い陽が弱々し
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 6.パズルな夜(2)
**************** リッ……リリリリ…。「!」 鳴り出した電話にぎくりとして我に返る。受話器を取り上げたお由宇が、二言三言話して、俺を振り向いた。瞳が打って変わって、どこか優しい、どこか
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 6.パズルな夜(1)
**************** 「あら…」 お由宇は玄関で俺を迎え、しばらく感心したように、腰に手を当て、俺を見ていた。「わ…わるいけど……え…っくしょいっ!!」「…」「ちょっと、ふ…服を…ひえっくしょん!
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 5.空を飛べたら(3)
**************** (本当に、この娘が人を殺したのか?) 心の中に、またもや何度も繰り返した問いが膨れ上がる。 るりの笑顔には、そういったものを思わせる翳りはどこにも見当たらない。それ
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 5.空を飛べたら(2)
**************** 「それより…」「うん?」「麻薬の方はどうなってるんですか?」「あんまりおおっぴらにできんのだが…」 ことばを切り、俺がその意味を『きちんと』理解しているのかどうかを疑う
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 5.空を飛べたら(1)
****************「きゃっ…」「あ、悪い…」 高多の後を追って店を出かけた俺は、ちょうど入って来ようとした娘とぶつかりそうになって慌てて避けた。不安定な姿勢を、浮かせた片足と広げた両手で
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 4.卒業写真のその先で(2)
**************** 「いや、今の子、これを忘れてったぞ」「会った時に返しとくよ。何だ、高校の時の卒業写真じゃないか」 懐かしそうに呟いて、今まで典代が座っていた所に腰を下ろす。「ずっと前
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 4.卒業写真のその先で(1)
**************** 店で流れていたのは昔懐かしい歌だった。革表紙の卒業写真なんて、今も渡されているんだろうか。「で?」 しばらく黙ったまま聴いていた俺は、業を煮やして目の前でアイステ
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 3.裏切りの街(3)
****************「可哀想に」「だろ! 何も今更、高多を見捨てろなんて言わなくても…」「馬鹿ね」 お由宇はいつもの決まり文句を少々冷たく口にした。「私が言ってるのは、周一郎の方よ」「周一
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 3.裏切りの街(2)
****************「ん?」 俺は高多が調べて来た情報に目を通すのを中止して、周一郎の方を振り向いた。 俺の部屋のソファに、細身の体を気持ち良さそうに納めた周一郎は、既にその資料を読み終
『夢を抱いた男』〜『猫たちの時間』10〜 3.裏切りの街(1)
**************** 「そうねえ…そう言えば、最近、高多君、るりちゃんに冷たかったわよね」 平田奈子はもう一人の娘に同意を求めた。「うん、そうね、そう言えば…」 ショートカットの実尾典代が
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**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな
**************** 「………だから見せに来たんですか」「え?」「大輔さんと恵子さんに」「……」 黙り込んだ真崎に、やっぱり、と思った。 ただのイブキの墓参りなら、まっすぐここへ来ればいいだ
**************** 残念ながら、移動先での一休みと食事にはありつけなかった。 周囲を警戒しながら進んでいたはずだが、燃え続けて収まる気配のない『氷の双宮』に皆が気を取られた一瞬、「敵
**************** 大輔は京介が『ぼけ』にかまけて自分と遊ばないとたびたび癇癪を起こしていた。そうして、ある日、『そんなにこいつが大事か』『大ちゃんっ』『こんなちっこいやつが』『やめ
**************** 一群れの軍を制圧した、と言えばいいのだろうか。 戦い方を変えてからは、勝敗はあっさり決した。死屍累々とはまだ早いか、大怪我をしつつ未だ死んでは居ない者も転がる広場
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ