怪談 ~雨宿り~ 「あー、降ってきやがった」フリーライターの貴志は、取材先からの帰途、激しい夕立に見舞われていた。傘を持ってこなかった自分を呪いながらも、しばらくどこかの軒下で雨宿りをしようと辺りを見回す。ふと、道の向こう側にある公園に目が止まった。鬱蒼とした木々の中に、古びて朽ちかけた東屋のような休憩所がある。雨を凌ぐには丁度良い、そう思うと同時に貴志は公園に向けて歩き出していた。 信号のない横断歩道を足早に渡ると、公園を囲う柵を乗り越え休憩所へと入る。中には苔むしたベンチが一つあるだけだった。フゥとため息をついてから、貴志はそのベンチへと腰を下ろす。鞄からタオルを取り出すと、濡れた髪を無造…