Sさんから聞いた話。 Sさんは仕事終わりの日課として、いつも海沿いの遊歩道を歩いていた会社員だった。 日中は観光客やカップルで賑わう場所だが、夜遅くになると人通りはほとんどなくなる。 街の灯りも届かない暗い遊歩道で、波の音と潮風だけが、日々の仕事で疲れたSさんの心を癒してくれた。 ある晩、いつものように遊歩道を歩いていると、遠くから微かな音が聞こえてきた。 それは「パチャ、パチャ」と誰かが水面を叩くような音だった。
Tさんが幼馴染のYさんと二人で、地元の山奥にある廃神社を訪れた時の話。 その神社は何十年も使われておらず、地元でも「あまり近づくべきではない」と言われている場所だった。 二人はその場所が心霊スポットとして有名だと聞き、興味本位で昼間に訪れたが、薄暗い木々に囲まれた神社は昼でも異様に静まり返っており、不気味な雰囲気だった。 鳥居をくぐり本殿の前に立つと、Yさんが「おかしい」と言い始めた。 最初は「空気が重い」と言っていたが、次第に「耳元で何か囁いている声が聞こえる」と震えだした。
ネットで知り合った友人の話。 高校の部活で、山の中にある合宿所で合宿をしたときのことだった。 最終日の夜、深夜になると突然どこからともなく優しい音色が聞こえてきた。 オルゴールのような旋律が静かな山の中にぽつりぽつりと響き渡る。 「何の音だ?」 最初に気づいたのはAさんだった。 次第に音ははっきりしてきて他のメンバーも耳を傾ける。
山登りが趣味のIさんと仲間たちは、秋の終わりに山小屋を目指して登山をしていた。 夕暮れ時、目的地の山小屋に到着すると、古びた外観と苔むした壁が印象的だった。 簡単な夕食を済ませたあと、疲れもあって仲間たちは早々に寝袋に潜り込んだ。 Iさんも目を閉じたが小屋の古さゆえか、軋む音や隙間風の音が不気味に響いてくる。 夜半、ふと冷気を感じて目が覚めた。 薄暗い室内に目を慣らしていくと、仲間たちは全員寝静まっている。
廃墟巡りを趣味とするMさんは、ある晩、町外れにある古びた日本庭園付きの屋敷を訪れることにした。 長い間手入れされていないその庭園は、噂によれば"不思議な池"があるという。 夜中にその池を覗き込むと、自分ともう一人の人影が映るという話だった。 到着した屋敷は苔むした石灯籠や荒れ果てた植木で覆われ、どこか息苦しい雰囲気を放っていた。 庭園を進むと確かに池があった。 満月の光が揺れる水面を静かに照らしている。 興味津々で懐中電灯を消し、Mさんは池のほとりに腰を下ろした。
Rさんが鉄道写真を趣味とする大学生だった頃の話。 ある日、Rさんは友人と廃線跡を巡る撮影旅行に出かけた。 途中山奥の朽ちた無人駅にたどり着いた二人は、その場所の静けさに感動し、しばらく撮影を楽しんだ。 しかし日は早くも傾き薄暗くなり始めたため、その駅近くにあった小さな民宿に泊まることにした。 夜、疲れ果てたRさんは深く眠りについたが、夜中にふと目が覚めた。 トイレに行こうとベッドから起き上がり、部屋の隅に置かれた古びた鏡台に目が止まった。
Tさんが大学生の頃の話だ。 サークルの友人たちと肝試しに行こうということになり、郊外にある使われなくなったトンネルを訪れた。 地元では「何かがいるトンネル」と噂されている場所だった。 夜の10時過ぎ、トンネルの入口に着くと薄い霧が立ち込め、錆びた標識が幽かに揺れていた。
Rさんが社会人になりたての頃、友人たちと肝試しをしに郊外の廃工場へ行った時の話。 その工場は数十年前に閉鎖され、今ではひっそりとした廃墟と化している場所だった。 薄暗い夜、懐中電灯を片手にRさんたちは工場内を進んだ。 広いフロアには古びた機械が並び、錆びた金属やオイルの臭いが鼻をつく。 不気味な雰囲気だが、興味本位の彼らはそのまま奥へと進んでいった。
Tさんが体験した話。 友人のKさんと一緒に訪れたのは、山奥にある廃病院だった。 噂好きのKさんが「幽霊が出る」と言われる場所をどうしても見てみたいと言い出し、半ば強引に連れて行かれたのだ。 山奥は夜中という事もあり不気味な程静かだが、Tさんたちは廃病院に入っていく。 朽ち果てた壁、割れた窓ガラス、錆びついた器具が散乱する中、Tさんたちは懐中電灯を頼りに廊下を進んでいった。 数分歩いた頃だろうか。
Sさんが体験した話。 友人たちと訪れた山間のキャンプ場でのこと。 彼らはキャンプ場から少し離れた森の中を探索していた。 その途中、苔むした倒木の隙間に何かが挟まっているのを見つけた。 それはビニールに包まれた古びた日記だった。 カバーは湿気で傷んでいたが、中のページは意外にもはっきり読める状態だった。 興味を惹かれたSさんたちは、その場でページをめくり始めた。 日記には数年前、この場所でキャンプを楽しんだ人々の記録が残されていた。
これは学生時代に親しくしていたRさんから聞いた話。 Rさんたち数人の友人グループは、夏休みを利用して山奥のキャンプ場へ行くことにした。 その場所は川がすぐ近くにあり、涼しい風が流れる絶好のキャンプ地として知られていた。 夕食を終えた後、彼らは焚き火を囲みながら喋っていたそうだ。 時刻はすでに深夜に差し掛かった時、川の向こう側から奇妙な音が聞こえてきた。 最初は風の音かと思ったそうだが、それは次第に明確な声になり何かを叫んでいるようだった。
これは山奥の古びた集落で働いていた知人の話。 彼は地元で古民家を改修する仕事を請け負っており、ある日、村の外れにある一軒家の調査を頼まれた。 その家は長らく空き家になっていたが、所有者が売却を考えているらしく、修繕の見積もりが必要だったのだ。 その家は道端の他の古民家と比べても異様に朽ち果てていて、壁は苔むし、木の扉にはひびが入っている。
Yさんが大学生の頃の話。 地元に帰省していたある夏の日、友人のKさんと夜の散歩をしていた。 Kさんは昔から好奇心旺盛で、地元の不思議な話を集めるのが趣味だった。 その日も「少し変わった場所に行こう」と言い出した。 連れて行かれたのは山奥にある小さな神社だった。 地元でも人がほとんど訪れない場所場所らしく、荒れた石段を登ると古びた鳥居と小さな拝殿が現れた。
Sさんが中学生くらいの時の事で、夏休みに毎年恒例の祖母の家にお泊りしにいった時の事。 古びた和室で過ごしていると、押し入れの中から何かが落ちる音がした。 気になって中を覗くと、押入れの上の段の箱の上に埃をかぶった古いアルバムが置かれていた。 重厚な装丁で、年代物らしいそのアルバムには見覚えがなかった。 どこから落ちてきたんだろう?と押し入れの上を見るが上には天井板があるだけ。
週末、Mさんたちは仕事の残業を終え、コンビニで買い物をしてから深夜の閑散とした街を歩いていた。 都会の喧騒はすっかり消え、街灯の淡い光だけが道を照らしていた。 「少し先に誰かいるな」 同行していた友人が小声でそう言った。 目を凝らしてみると街灯の下に立つ影が見えた。
Rさんたちは夏の高原でキャンプをしていた。 山の澄んだ空気と満点の星空を楽しみながら、焚き火を囲んで語り合う夜は格別だった。 深夜になり火が小さくなり始めた頃、ふとRさんが「何か動いてる」と言い出した。 皆で焚き火を囲みながら視線を向けると、草むらの奥に白い影が見えた。 それはゆらゆらと揺れながら近づいてくる。
Hさんの職場では、夜になるとほとんどのフロアが無人になり静寂が広がる。 その夜、Hさんは一人で遅くまで残業をしていた。 仕事を終えて帰るころには日付も変わり、ビル全体が不気味なほど静まり返っていた。 エレベーターを使おうとボタンを押したがなかなか来ない。 「こんな時間に故障か?」 と考え、仕方なく非常階段を使うことにした。 階段を降り始めてすぐに、何か違和感を覚えた。
Hさんが子供の頃、近所には底なし池と呼ばれる不気味な池があった。 その池には、絶対に近づいてはいけないという言い伝えがあり、村の子どもたちは遊び場にすることを厳しく禁じられていた。 ある日、Hさんと友人たちはその池の近くを通りかかった。 猛暑の日で、どこか涼しい場所を求めて山中を歩いていたのだが、誰かが冗談で「底なし池に行ってみよう」と言い出した。 「噂なんて大げさだろう?」という友人の言葉に押され、彼らは池に向かうことになった。
仕事で遅くなった帰り道のことだった。 住宅街を抜ける細い道を歩いていると、遠くからこちらに向かって歩いてくる人影があった。 やがて近づいてきたその人は、どこか懐かしい雰囲気を纏った中年の男性だった。 「お久しぶりです」そう声をかけられた瞬間、私は驚いた。 彼は昔よく世話になった近所のYさんだったのだ。
数年前の出来事。 その日、友人たちとの集まりが思いのほか長引き終電を逃してしまった。 仕方なく深夜運行のバスを利用することにした。 乗客は私一人。 運転手は無言でハンドルを握り、バスのエンジン音だけが車内に響いている。 外は街灯もまばらな道が続き、車内の薄暗い照明が気持ちをさらに不安にさせた。 バスが森の中を抜けるあたりでふと窓の外に目を向ける。 その時、暗闇の中に何かが動いているのが見えた。
小学四年生の夏休み、私は母方の実家に帰省していた。 古い日本家屋のその家はどこか薄暗く、静けさが際立つ場所で、昼間は楽しい田舎暮らしを満喫していたけれど、夜になると少し不気味に感じることもあった。 その夜、私は真夜中に目を覚ましてしまった。 時計を見ると、午前二時を少し過ぎたところだった。 ついでだからトイレに行こうと布団を抜け出し廊下を歩いていると、仏壇のある部屋のあたりから微かに音が聞こえた。
日付が変わり、新年を迎えたばかりの夜。 大学生のRさん、Oさん、Yさんの三人は、「肝試しに行こう」と軽いノリで、地方にある小さな丘の廃墟を目指していた。 車で丘のふもと近くにある駐車場に到着すると、辺りはひと気がなくひっそりとしていた。 夜の冷気が漂う中、三人は懐中電灯を片手に登り始めた。 丘といってもなだらかな道が続く程度で、話しながら歩いていればそれほど怖くないはずだった。
年始の深夜、Sさんは親戚の家での新年会に向かうため車を走らせていた。 田舎道は街灯がまばらで、ほとんどが暗闇に包まれている。 車内にはラジオが微かに流れているが、周囲の静けさを紛らわせるには十分ではなかった。 山間の狭い一本道に差し掛かった頃、Sさんは何気なくバックミラーを見た。 すると遠くにぼんやりと人影のようなものが見えた。 「こんな時間にこんな場所を歩くなんて…」 気のせいだろうと自分に言い聞かせて前方に目を戻したが、しばらくして再びミラーを見ると、影はさっきより近づいている。
大晦日の夜、Sさんの家では家族が集まり、こたつに入って年越しそばを食べていた。 外は冷たい風が吹き荒れ、テレビから除夜の鐘の音が流れている。 そんな中、不意に玄関を叩く音がした。 「こんな時間に誰だ?」 と父親が立ち上がる。 時計を見るとすでに日付が変わろうとしていた。 近所の人だろうか、それとも何か緊急事態か。
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Sさんから聞いた話。 Sさんは仕事終わりの日課として、いつも海沿いの遊歩道を歩いていた会社員だった。 日中は観光客やカップルで賑わう場所だが、夜遅くになると人通りはほとんどなくなる。 街の灯りも届かない暗い遊歩道で、波の音と潮風だけが、日々の仕事で疲れたSさんの心を癒してくれた。 ある晩、いつものように遊歩道を歩いていると、遠くから微かな音が聞こえてきた。 それは「パチャ、パチャ」と誰かが水面を叩くような音だった。
Tさんという人から聞いた話。 Tさんは夜間の警備員として、都心にある大きなデパートで働いている男性だった。 昼間のデパートは人で溢れかえり、喧騒に包まれているが、深夜になると照明も落とされシンと静まり返る。 非常灯の薄暗い光だけが通路をぼんやりと照らし、華やかな商品が並ぶ売り場は、どこか無機質な空気をまとっていた。 Tさんはこの深夜の静寂が嫌いではなかった。 いつものように、夜間の巡回業務をこなしていた時だった。
Hさんは、大学の友人たちと廃墟巡りをするのが趣味だった。 廃れた場所の持つ独特の雰囲気に惹かれ、カメラ片手に様々な場所を訪れていた。 ある日、Hさんはネットの掲示板で「地図から消えたトンネル」という古いトンネルの存在を知った。 それは、かつて使われていた鉄道のトンネルで、今は完全に閉鎖されているという。 危険だと忠告する書き込みも多かったが、Hさんの好奇心は抑えきれなかった。 Hさんは廃墟巡りの仲間である友人のFさんと二人で、そのトンネルを目指すことにした。 車で山道を奥へ奥へと進むと、やがて古びた標識が見え、その先に目的のトンネルの入り口が見えてきた。
Mさんが大学生だった頃の話。 都会の喧騒から離れたくて、Mさんは旅行雑誌で見つけた山奥の古い民宿を訪れることにした。 そこは車でもたどり着くのが困難なほどの山奥にあり、雑誌には「静寂に包まれた隠れ家」と紹介されていた。 民宿は想像以上に古く、黒光りする木材の柱や梁が時代を感じさせた。 独特の土埃と、何かが燻されたような匂いが混じり合ったような、古い匂いがした。 宿の女将は年配の女性で、物静かな人だった。 Mさんは二階の、庭が見える広々とした部屋に通された。
とある学校で教員をしているKさんが、学生だった頃に体験した話。 Kさんは地方の大学に進学するため、初めて一人暮らしをすることになった。 大学から少し離れた築年数の古いアパートの一室を借りることになったのだが、家賃が相場よりもずっと安く、広さも十分だったのでKさんは大満足だった。 部屋は日当たりもよく、静かで勉強するにはもってこいの環境。 ただ一つだけ気になったのは、備え付けのクローゼットだった。 クローゼットの扉はなぜかいつも少しだけ開いていて、閉めてもすぐにまた少し開いてしまう。 Kさんは、建付けが悪いのだろう、と特に気にせずに服をしまっていた。
地方に住むKさんが中学生の頃に体験した話。 その地域にある古いお寺は、鬱蒼とした林の中にひっそりと佇んでいた。 昼間でも薄暗く、どこか神秘的な雰囲気が漂っている。 お寺のすぐ隣には広い墓地が広がっており、夕暮れ時になると、ひんやりとした空気が漂ってくる場所だった。 ある日の夜、Kさんを含む仲の良い友人たち数名で、肝試しをしようという話になった。 怖いもの見たさという年頃特有の好奇心からだった。
小学生のHさんは、夏休みの宿泊体験で地域のお寺に来ていた。 ここは広く、古くからの言い伝えも多い場所だった。 お寺の敷地の隅には、苔むした小さな石のお地蔵様が、いくつも横一列に並べられていた。 どれも同じような大きさで、素朴な表情をしている。 肝試しではないが、Hさんは友達と「あのお地蔵様の数を数えてみよう」と話していた。
小学生のSさんは、夏休みに地域のお寺で宿泊体験に参加した。 これは地域の子供たちが集まって、お寺での生活を体験するという催しだった。 Sさんの他にも、地域の学校から集まった数人の希望者が、本堂に布団を並べて寝ることになっていた。 昼間、子供たちは住職からお寺の歴史や仏様の教えについて話を聞いた。 古びた本堂の柱や、使い込まれた畳、そして厳かな仏像に、Sさんは普段の生活では感じられない空気を感じていた。 住職は優しそうな人で、時折冗談を交えながら、子供たちにも分かりやすいように話をしてくれた。 その後は広大な境内を散策したり、庭の手伝いをしたりと、普段できない体験に子供たちは興奮していた。
大学生のMさんが住む築十年ほどのアパートは、都心へのアクセスも良く、静かな住宅街の中にあった。 隣の部屋に新しい住人が引っ越してきたのは、梅雨が明けたばかりの蒸し暑い日のことだった。 挨拶に来たのは痩せぎすで、どこか陰のある雰囲気の男性だった。 名前は確か、Sさんと言ったはずだ。 Sさんはとても物静かで、Mさんが生活音に気を遣う必要がないほど、物音を立てることがなかった。
これは、とある夫婦、夫のKさんと妻のYさんが経験した話。 都会の喧騒から離れ、少し古いが趣のある一軒家に引っ越してきた二人は、新しい生活を楽しみにしていた。 しかし、この家には一つだけ奇妙な点があった。 それは家の奥まった場所にある、決して開かない一室の存在だった。 管理人の人も「ずっと開かずの間だった」とだけ説明し、特に気にすることもなかったため、二人は特に深く考えることもなく、その部屋を「開かずのドア」と呼んで放置していた。 しかし、引っ越して数週間が経ったある夜のことだった。
これはとある社会人のKさんから聞いた話。 Kさんは、最近引っ越したばかりのアパートに住んでいた。 築年数はそれなりに経っていたが、立地も良く、何より家賃が手頃だったため、すぐに決めたのだ。 窓からは小さな公園が見え、日当たりも良く、Kさんは新生活に期待を膨らませていた。 引っ越してきて数日経った頃、Kさんは夜中にふと目が覚めた。 時計を見ると午前3時。
これは、Sさんという方が学生だった頃の話。 Sさんは大学で歴史学を専攻していた。 特に興味があったのは、郷土史。 地域の小さな図書館に通い、古い資料を読み漁るのが日課だった。 その図書館は町の中心部からは少し離れた、ひっそりとした場所にあった。 建物自体も古く、天井が高く、木製の書架がずらりと並び独特の埃っぽい匂いがした。 訪れる人もまばらで、静寂が常にその場所を支配していた。
夜勤のBさんは、いつものように仮眠を取るために休憩室へ向かったのだが、4つあるのベッドがすべて使用中だった。 仕方なく、誰かが起きてくるまで仕事を片付けることにした。 しばらくすると、3人の同僚が起きてきてBさんに声をかけた。 「あれ?Bさん、まだ仮眠取ってないんですか?」 Bさんは、仮眠室のベッドが4つ埋まっていたから使えなかったと説明した。 すると同僚たちは不思議そうな顔で言う。 「廊下側が1つ空いてたじゃないですか」 「そんなはずはない、確かに4つ埋まってたよ」
ある年の夏、Kさんはいつもの地方の無人駅のホームで、最終電車を待っていた。 残業で遅くなってしまい、疲れた体をひきずって辿り着いたこの駅には、最終の到着を待つ乗客はKさん一人だけだった。 深夜の駅のホームは、街灯の明かりがぼんやりと照らすだけで、物音ひとつしない。 普段なら虫の鳴き声がうるさいのだが、この日は虫の声すら聞こえず、ただただ静寂がKさんを包んでいた。 その時、背後のベンチから「きしり」という小さな音が聞こえた。 誰かが腰かけたような、そんな音だった。
今回この話は2つのバージョンを用意しましたので、お好きな方をどうぞ。 1つ目 Iさんは大学の登山サークルに所属していて、その日は仲間たちと連れ立って、少し険しい山を訪れていた。 新緑が眩しい季節で、鳥のさえずりが心地よく響く、ごく普通の登山になるはずだった。 しかし、途中で道を間違えてしまったのか、Iさんたちはいつの間にか、地図には載っていない谷間に迷い込んでいた。
Sさんは学生の頃から登山が趣味で、社会人になってからも週末になると、一人で山へ出かけることが多かった。 その日もいつものように単独登山を楽しんでいたのだが、予報にない悪天候に見舞われ、急遽、山中の避難小屋に泊まることになった。 小屋は古く、軋む音が不気味に響く。 Sさんは持参した食料を広げ、ラジオで天気予報を聞いた。 夜遅くになるとさらに荒れるらしい。 不安を覚えながらも、疲労からすぐに眠りについた。 深夜、ガタガタと窓が揺れる音で目が覚めた。
Nさんは、数年前から登山に没頭している。 普段から人の少ない、整備されすぎていない登山道を好んで歩く。 その日も、彼は地図には載っていないような古い山道を、気ままに探索していた。 鳥の声だけが響く静かな山の中、踏み固められた道は徐々に細くなり、やがて獣道へと変わっていった。 Nさんはそういった道を進むのが好きだった。 未知の風景に出会える期待感が、彼の好奇心を刺激する。 しばらく獣道を分け入って進むと、ふと、道の脇に不自然な空間があることに気がついた。
ある晴れた週末の午後、Yさんは小学生になる娘を連れて、山のふもとにある森林公園を訪れていた。 都会の騒がしい場所と違い、休日でも人がまばらで、静かに過ごしたい家族にはうってつけだった。 Yさんの目的は、娘がネットで見て興味を持った、園内奥にある木製遊具だった。 木製の滑り台やジャングルジムでしばらく遊んだ後、娘はふと、その奥にひっそりと佇むブランコを見つけた。 それは古びた木製のもので、使い込まれた座面はすっかり色褪せ、鎖は錆びついていた。
Mさんたち大学生グループは、休日を利用して近場の山に登山に来ていた。 新緑が眩しい季節で、道中も賑やかに談笑しながら、ゆっくりとしたペースで山を登っていく。 ちょうど昼食を終え、もう少しで頂上というあたりで、小さな観光展望台に立ち寄ることにした。 展望台は、山の景色を一望できる開けた場所にあり、頂上付近の少し手前に位置する。 小さな東屋が建てられ、中には木製の古びた望遠鏡と、休憩用のベンチがいくつか設置されていた。 普段なら観光客で賑わう場所だが、その日はあいにくの曇り空。 人もまばらでひっそりとしていた。 遠くの景色も霞んで見え、少し肌寒い風が吹き抜けていく。
夏も終わりに差し掛かった頃、Hさんは山の中腹で野営の準備を進めていた。 日はすでに傾き、周囲は急速に薄暗さを増していく。 湿った空気が肌にまとわりつき、あたりには濃い霧が立ち込め始めていた。 視界は悪く、わずか数メートル先も見通せないほどだ。 そんな中、Hさんの視界の先にぽつんと白い塊が浮かび上がった。 目を凝らすと、それはどうやら真っ白なテントのようだった。 こんな高地に他の登山者がいるとは珍しい。 Hさんは訝しく思いながらも、近くに誰かがいることにわずかな安堵を覚えた。 登山仲間だろうし、挨拶をしに行こうかな…と、Hさんは白いテントへと足を進めた。
Nさんという人から聞いた話。 Nさんは大学生で、試験近くに深夜まで図書館で勉強することが多かった。 大学の近くにあるその図書館は、24時間営業しており学生たちにとっては非常に便利な場所だった。 ある晩、図書館で勉強をしていたNさんは、深夜1時を過ぎた頃に休憩を取ることにした。 静まり返った図書館の中で、Nさんは飲み物を取りに行こうと席を立った。 自動販売機の前で飲み物を選んでいると、誰かの視線を感じた。 振り返ると遠くの書架の間に人影が見えた。 暗い中で見えるその影は、じっとこちらを見つめているようだった。 (こんな時間に他にも勉強している人がいるんだな) そう思ったNさんは特に気にせず席に戻…
Mさんは、毎晩遅くまで働く会社員だった。 仕事は次の日にまわしても良かったのだが、ついつい気になってやり続けてしまい、帰宅はいつも終電近くになってしまう。 そんな彼がある日、奇妙な体験をした。 その日は特に疲れていて、仕事が終わった頃にはもう午前0時を回っていた。 Mさんは駅に急ぎ、なんとか終電に間に合った。 車内はガラガラで、座席に腰を下ろしていつものように窓の外を眺めていた。 しばらくすると、次の駅で一人の女性が乗ってきた。 彼女は黒いコートを着て長い髪を下ろしている。 他に変わったところは無く、ただ静かにドアの近くに立っていた。 その姿に特に違和感を感じることもなく、Mさんは再び窓の外に…
知り合いのKさんが体験した話。 Kさんはその日、残業で帰りが遅くなってしまった。 帰宅してシャワーを浴び、ベッドに横たわるともう午前2時を過ぎていた。 スマホの画面を確認し、明日のアラームをセットして寝る準備をしていた。 するとその時、スマホが突然鳴り出した。 急いでスマホの画面を確認するが、着信画面には見知らぬ番号が表示されている。 こんな時間に誰だ?と不思議に思いながらも好奇心が勝り、Kさんは電話に出た。
社会人のAさんが登山をして体験した話。 久々にまとまった休みが取れたので、学生時代から好きだった登山をすることにした。 朝早くに車で山の麓に向かい、登山を開始。 静かな山道を歩きながら、新鮮な空気と山の景色を楽しんでいた。 しばらく山を登っていると突然霧が発生し、数メートル先が見えない程に視界が悪くなってしまった。
この話はとある寂れた港町にある、海のすぐ近くに佇む廃墟ホテルでの話。 そのホテルは、かつては多くの観光客で賑わっていたそうだが、今は見る影もなく朽ち果て、地元の人間ですら近寄らないと言う。 そんな誰も寄り付かなくなったホテルにまつわる、恐ろしい噂話がある。 それはこのホテルがまだ営業していた頃、宿泊客の一人が謎の失踪を遂げてからというもの、13号室にだけは決して入ってはならない…と、ホテルの従業員の間で囁かれるようになったというのだ。
廃墟巡りをしていた人が廃墟で見つけた日記。 7月1日 今日はこの村に引っ越してきた記念すべき日だ。 自然に囲まれた静かな場所で、都会の喧騒を離れて穏やかに暮らしていけると思うと、今から楽しみで仕方ない。 7月15日 この村の人々はどこかよそよそしい。 挨拶をしても目を合わせようとしないし、何かを隠しているような、そんな不気味さを感じる。
日本各地に存在する「いわくつきのトンネル」。 山の中にある○○トンネルもまた、そんな曰く付きスポットとして地元では有名な場所だった。 私が耳にしたのは、このトンネルで起こる奇妙な現象についてだった。 それは「赤いヘッドライトの車」の怪異。 「深夜、あのトンネルを走っていると、前から赤いヘッドライトの車が対向車線にはみ出してくるんだ。 で、ヘッドライトの光が強すぎて車種まではよく分からないんだけど、どうにも車の種類が古臭い、っていうか今時見ないような型の車なんだよ」
ある地方の山奥に一つの古びたトンネルがあった。 そのトンネルは長い間使われておらず、昼間でも薄暗い雰囲気を漂わせていて、地元の人々の間では、このトンネルにまつわる恐ろしい噂が広まっていた。 その噂とは、夜になると「白い少女」が現れるというものだった。 その少女は、かつてトンネル近くの村でトラブルにあい命を落とし、その怨念がトンネルに宿っていると言われていた。
深夜のコンビニで働くIさんは、いつものように夜勤に入っていた。 町外れにあるそのコンビニは、夜になると閑散として客足も途絶えがちだ。 時計の針が午前2時を指していた頃、店内はしんと静まり返っていた。 「休憩室に行こうかな…」 Iさんはレジのカウンターに肘をついて、うっすらとため息をついた。 その時だった。 自動ドアが開く音がし、冷たい夜風が一瞬店内に吹き込んだ。
山奥深くで炭焼きを生業とするFさんがいた。 炭焼きは孤独な作業。日が昇ると山に入り、窯の火を見守りながら日が暮れるまでただひたすらに時を過ごす。 ある年の夏の終わり、炭焼き小屋で一晩を明かしていたFさんは奇妙な物音で目を覚ました。 それは小屋の戸をゆっくりと叩くような音だった。 何事かと耳を澄ませていると、戸を叩く音は徐々に速さを増し、まるで何かが中に入ろうとしているかのようだった。 不安を感じ、意を決して小屋の戸を開けたが外には何もいなかった。 Fさんは首をかしげながらも再び戸を閉め、寝床に戻ろうとしたその時、背後からかすかな気配を感じた。 振り返ると小屋の中に一匹の奇妙な生き物がいた。 見…
※虫が苦手な方はこの話は読まない方がいいです。 夏の暑さが本格的になる少し前、古い一軒家で奇妙な出来事が起こった。 雨が降る中、OLのSさんが夜遅くに帰宅すると、玄関のドアの前に見慣れないものが置かれていることに気づいた。 直径10センチほどの泥でできた小さな球体だった。
久しぶりに大学時代の友人たちと再会し、登山をした日の事。 F、Y、Eの3人は、それぞれ社会人となり、忙しい日々を送っていたが、この日は特別な計画があった。 大学時代によく行っていた山に登るため、朝方に駅で待ち合わせしていた。 「久しぶりだな、みんな!」 Fが笑顔で声をかけると、YとEも嬉しそうに頷いた。 彼らは久しぶりの再会に興奮しながら電車とバスを乗り継ぎ、目的の山へと向かった。
東京より山側にある、とある町でのこと。 そこに一人暮らしをしていた大学生のAさんは、数日前から奇妙な現象に悩まされていた。 それは夜中の2時になると、決まって天井裏から「トトトトト」という足音のような音が聞こえてくるというものだった。 最初はネズミでもいるのかと思い、駆除剤を置いたり業者に依頼したりもしたが、効果はなかった。 それどころか「トトトトト」という音は日に日に大きく、そして不規則になっていった。
あれは確か、私がまだ駆け出しの怪談師だった頃の話でございます。 ある山奥の村に伝わる「赤い着物」の怪談を採集しに行った時のことでした。 その村は、古くから「赤い着物を着た女に出会ったら、決して目を合わせてはならない」という言い伝えがあるそうでして、興味津々の私は早速村人たちに話を聞いて回りました。 しかし、話を聞けば聞くほどその「赤い着物」の女の正体は謎に包まれ、得られる情報は 「夜中に山道で赤い着物を着た女を見た」 「女の顔は影になっていて見えなかった」 「女を見た者はその後、原因不明の熱病で死んでしまった」 といった断片的なものばかり…。
夏手前の蒸し暑い夜、大学の友人グループはKの家に集まっていた。 メンバーはK、M、Rの三人。彼らは怪談や都市伝説に興味を持っており、この夜も新たな冒険を企てていた。 「今日は少し変わった場所に行こうか」 とKが切り出した。 「川辺にある幽霊灯の話、知ってるか?」
梅雨が明けたばかりの初夏の夕方、大学生の3人組、M、T、Kは、ネットで見つけた廃村の墓地へと向かっていた。 Mの運転する車で、彼らは廃村があるという山奥へと進んでいった。 「本当にここに廃村があるのか?」 Tが後部座席から前の二人に問いかける。 「ああ、ネットで見た情報だとこの先にあるらしい。気味悪いけど興味あるだろ?」 Kがスマホの地図を見ながら答えた。 「まあな…肝試しにはうってつけだな。」 Mは運転しながら笑った。
梅雨の晴れ間、久しぶりに強い日差しが降り注いだ日のこと。 一人暮らしの女性Sさんが、引っ越しをしようと荷造りをしていた。 段ボールに荷物を詰め込みガムテープで封をしていると、ふと、部屋の奥に何か黒い影のようなものが見えた気がした。 「なんだろう?」 しかし家具の隙間から差し込む光の関係の錯覚だろうと思い、Sさんは気にせず作業を続けた。 箱詰めもあらかた片付いた時、ふと先程の黒い影が気になり壁に目をやった。 「な、何あれ?」 その影の正体に気づいた時、Sさんの顔から血の気が引いた。 それは奥の壁一面に、びっしりと描かれた無数の目だった。 黒く塗りつぶされたような楕円形の一つ一つが、まるでこちらを…
梅雨明けが待ち遠しい、ある蒸し暑い日の午後。 高校の美術部の生徒たちは、日没後の風景を描くため校舎の屋上に来ていた。 「先生、もうちょっとで沈みますね」 「ああ、茜色に染まる空をよく観察して描くんだぞ」 教師の言葉に、生徒たちは一斉にキャンバスに向き直る。 しかし、その中でひとりの女子生徒だけが、じっと西の空を見つめていた。 「先生……あれ、何ですか?」
梅雨の晴れ間、むしむしと暑い日が続いていた。 学校では教室の窓を開け放して授業を受けていたが、生ぬるい風は熱気を運んでくるばかりで、生徒たちの集中力は途切れがちだった。 午後の授業中、黒板に奇妙な影が映っていることに気づいたのは、窓際から少し離れた席に座っていた男子生徒だった。 「あれ?」 男子生徒は目を凝らした。 それは、まるで長い髪の女が立っているような影だった。
今からお話する怪談の登場人物をご紹介させていただきます。 語り部である「私、H」と、高校時代からの友人であるK、そしてS、Yの4人で肝試しに行った時の出来事でございます。 舞台は県外にあるYの実家の近くにある、通称「幽霊トンネル」と呼ばれる場所。 そこで私たちが目にしたもの、体験したものとは。 一体全体どんな恐怖が待ち受けていたのか。 それでは皆様、心の準備はよろしいでしょうか?