chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
怖い話と怪談の処 https://kaibana.hateblo.jp/

怖い話、不思議な話が大好きな人は是非御覧ください。 怖い話はあり(出来)次第アップしていきます。

kaibana
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2024/01/28

arrow_drop_down
  • 神無月の神社に鎮座するもの

    これはTさんが体験した、ある秋の夜の出来事。 Tさんは地元で写真を趣味にしており、その日は神無月の澄んだ夜空を撮ろうと、人気のない山中にひっそりと佇む古い神社を訪れた。 木々に囲まれた参道を進み、石段を上がると、月明かりに照らされた拝殿が見えてきた。 神社には誰もおらず、しんと冷たい空気が境内を満たしていた。 Tさんは三脚を立て、夜の社の風情を何枚か撮影していたが、ふと視線の端で何かが揺れた気がした。

  • T沢の川と背の高い女

    これはSさんから聞いた話。 Sさんは大学のサークル仲間と、K県にあるT沢の奥のキャンプ場によく行っていた。 その日も中の良いメンバーと川沿いでキャンプを楽しんでいた。 夜が更け、山の中は冷え込みを増していた。 大学生のSさんたちは、川沿いのキャンプ場で焚き火を囲んでいた。 パチパチと音を立てて燃える炎が、彼らの顔を赤く照らす。 昼間は賑やかだった川のせせらぎも、夜になるとどこか不気味な響きに変わっていた。 「Tさん、薪が減ってきたので取って」 Mさんがそう言って、Tさんのそばに積み上げられた薪を指さした。 Tさんが、ちょっと待ってろと言って立ち上がった、その時だった。

  • 山のコテージを覗いている

    Kさんという、山のコテージを管理している人から聞いた話。 長年コテージの管理人をやっていたKさんは、いつも物静かな男だった。 だが彼がこの場所で見てきたものは、誰にも話せないような、ひどいものばかりだった。 ある夏の夜、Kさんはいつものようにコテージの見回りをしていた。 その日はひどく蒸し暑く、なかなか眠れなかったので窓から外を眺めていた。 すると一番奥にある古びたコテージの影に、何かがいるような気がした。

  • 窓の外の雨音

    Mさんが小学生の時に体験した話。 夏休みのある日、Mさんの家族は、少し古びた趣のある旅館に泊まっていた。 Mさんは日中の遊び疲れもあり、その夜はぐっすりと眠りについていたのだが、夜中にふと目が覚めた。 耳に届いたのは、ザーザーと激しく降る雨の音だった。 まるでバケツをひっくり返したかのような、激しい雨音だ。

  • 深夜の湯けむりの誘い

    この話は、Oさんがまだ中学生だった頃の修学旅行での出来事。 わんぱくなOさんは、初めての長旅に胸を躍らせ、友人たちと夜遅くまで語り合っていた。 普段なら朝までぐっすり眠ってしまうOさんだが、その夜はなぜか、深夜にふと目が覚めてしまった。 時計を見ればまだ真夜中。 他の友人たちは寝息を立てていた。

  • 岩壁を上がっていく液体

    知人のTさんから聞いた話。 彼は高山植物の調査を生業としていて、その日も人里離れた深い山へと分け入っていた。 彼の専門は、滅多にお目にかかれないような珍しい高山植物の生態を記録すること。 そのためならどんな険しい道のりも厭わなかった。 この日も彼は地図を片手に、人の手がほとんど入っていないという山頂を目指して黙々と歩を進めていた。 山肌は次第に険しさを増し、足元はゴツゴツとした岩だらけになった。 Tは疲労を感じながらも、目当ての植物が群生しているかもしれないという期待に胸を膨らませていた。

  • 音のない青い霧の村

    田舎巡りが趣味のHさんは、今日も地図を頼りに人里離れた集落を探して山道を走っていた。 古い農村の風景や、忘れ去られたような神社を見つけるのが好きだった。 しかしこの日は少し様子がおかしかった。 午前中から深い霧が出ていて、山道はまるで白い壁に包まれているようだった。 「こりゃ、どこまで行っても同じ景色に見えちゃうな」 Hさんはそう呟き、少し焦りを感じ始めていた。 気づけば車のナビも圏外になり、頼れるのは感覚だけになっていた。 霧はますます濃くなり、視界は数メートル先も見えないほどになった。

  • 森の祠から付いてくるもの

    大学生のSさんたちは地形調査のため、とある山に入っていた。 普段から野山を駆け回るのが好きな、アクティブな学生たちだった。 この日も地図を片手に、鬱蒼と茂る森の奥へと進んでいた。 「おい、ここ、地図にない道だぞ」 Mが生い茂る草木に覆われた、かろうじて道だとわかるような細い獣道を見つけた。 好奇心旺盛な彼らは、普段なら立ち入らないような場所へも、調査の一環として分け入っていくことがあった。 今回の調査では、古地図に記された失われた道を探すという目的もあったのだ。

  • 古い展示館の倉庫

    この話は、地方にある古い展示館で夜間警備をしている、Kさんから聞いた話。 Kさんが勤めている施設は、昔ながらの民具や地域の歴史に関する展示がされている、小さくても趣がある場所だった。 普段はあまり人も来ないが、たまに遠方から熱心な歴史愛好家が訪れることもあった。 その日の夜も、Kさんはいつも通り閉館作業を進めていた。 全ての展示室を回り、電気を消し、窓の施錠を確認する。 館内は薄暗く、Kさんの足音だけがコツコツと静かに響いた。 全ての戸締まりを終え、最後に倉庫の鍵をかけようとしたその時。

  • 森の方に向かって唸る猫

    小学生だった夏休みのこと。 毎年恒例で、母方の実家の東北にある「じいちゃん家」に遊びに行っていた。 じいちゃん家は本当に田舎で、周りは山と畑ばかり。 夜になるとカエルの鳴き声と虫の音がすごく、都会じゃ絶対聞けないような音が聞こえる。 でもそれが夏休みって感じで好きだった。 じいちゃん家には、ミケという三毛猫がいた。 このミケが本当に可愛くて、じいちゃん家に着くといつも「ニャー」って言いながら擦り寄ってくる。

  • 林間学校の夜

    あれは中学二年の夏のこと。 俺たちのクラスは、林間学校でバンガローに一泊することになった。 昼間はカレーを作ったり、肝試しをしたりしてみんなでワイワイ楽しんでいた。 特に盛り上がったのはキャンプファイヤー。 クラスごとの出し物をしたり、歌を歌ったりして夜遅くまで火を囲んでいた。 出し物が全部終わって、そろそろバンガローに戻ろうかという時間になった時だった。 火の番をしていた先生に、「残った薪を片付けておいてくれ」と頼まれた数人の男子と女子が残って、他の生徒たちは先にバンガローへと帰っていった。 俺もその残るグループの一人だった。

  • 廊下に置いてあったテント

    Fさんという人から聞いた話。 Fさんは、とある映像制作会社で働いている。 彼女の仕事は怖い話の映像を作ること。 怪奇現象や心霊現象をいかにリアルに、そして見る人に恐怖を与えるかを日々追求している。 そのため、企画や編集作業は常に深夜に及ぶことが多かった。 その日も、Fさんは残業に追われていた。 編集室のモニターに映し出される映像の中では、白い靄がゆっくりと形を変え、見る見るうちに人のような姿になっていく。

  • 拾ってきた古い木の棒

    大学の夏休み、仲の良い友人3人組、行動派のAさん、慎重なBさん、ムードメーカーのCさんたちは、都会の喧騒を離れ、人里離れた山奥のキャンプ場へとやってきた。 時間は午後2時を少し過ぎたくらいで、各自が持ち寄ったアウトドアグッズを広げ、慣れない手つきでテントを設営したりしていた。 テントの設営が終わるとまだ陽も高かったので、彼らは少しだけ周辺を探索することにした。 AさんとCさんは興味津々に森の奥へと足を踏み入れ、珍しい植物を見つけては写真を撮ったり、小さな沢を見つけては涼んだりした。

  • 合宿の名簿に存在しない生徒

    H先生から聞いた話。 H先生は都心から少し離れた、私立高校のベテラン音楽教師だった。 普段は穏やかなH先生だが、生徒指導には人一倍熱心で、生徒たちの些細な変化も見逃さない。 その日は新入生を交えた恒例の夏期合宿で、H先生は引率として山奥のキャンプ場に来ていた。 まだ少し肌寒さが残る夜、生徒たちは焚き火を囲んで、それぞれ持ってきた怖い話を披露し合っていた。

  • 旧校舎の心霊現象

    Oさんが中学生の頃に体験したという話。 季節は夏。 学校から少し離れた場所にあった、木材でできた古びた旧校舎。 そこは一時期有名だった、都市伝説が囁かれる場所だった。 一番有名なのは「夜中に人体模型が動き出す」という話だった。 当時のOさんは、そういうオカルトめいた話に夢中だった。 クラスで都市伝説が流行り始めると、友達のYさんやKさんと一緒に、休日になると学校の周りをうろつき、旧校舎の窓から中を覗き込んだり、怪しい音に耳を澄ませたりしていた。

  • 美術室の動く石膏像

    「これは、私がまだ若手の美術教師だった頃の話です」 美術の授業の終わり、生徒たちにせがまれて、K先生は少しばかり声を潜めてそう語り始めた。 冬の時期という事もあり、教室の窓の外はすでに夕焼けが暗くなり始めていた。 その日、K先生は提出物の確認が終わらず、珍しく夜遅くまで学校に残っていた。 職員室で最後の書類に目を通し、ふと、美術室に大切な画材を忘れてきたことに気づいたのは、夜の9時を回った頃だった。 「まあすぐに済むだろう」 そう軽く考えて、K先生は美術室へと向かった。

  • 図書館の奥から聞こえるヒソヒソ声

    Sさんは、地方の市で運営されている図書館の職員だった。 いつも閉館時間まで利用者がいる賑やかな場所も、夜が更ければしんと静まり返り、冷たい空気が張り詰める。 この日も月末の資料整理に追われ、Sさんは一人残業をしていた。 時間はもう、とっくに日付が変わろうとしている頃だ。 カチカチと壁掛け時計の秒針が進む音だけが、やけに大きく響く。 館内の照明は最低限しかついておらず、本棚の隙間には濃い影が落ちていた。 その時だった。

  • 放送室の鏡

    これはUさんという人から聞いた話で、学生の頃の噂話らしい。 その中学校には昔から妙な噂があった。 放送室の奥、機材ラックの裏に、古い姿見の鏡が打ちつけられているというものだった。 誰が何のためにそこへ鏡を設置したのか分からない。 管理記録にも残っておらず、長く教師を務めている用務員ですら、「そんなもん、あったか?」と首をかしげる始末だった。

  • 地下鉄のミラーに写ったのは

    Sさんが終電間際の地下鉄を使った時の話。 その晩、Sさんは仕事帰りに地下鉄に乗り込んだ。 乗客は他におらず、車内はがらんとしていた。 発車してしばらくはスマホを眺めていたが、トンネルのカーブにさしかかった時、ふと目の前にある運転席上部の防犯ミラーに目が向いた。 鏡には自分の姿が映っていた…と思ったのも束の間、その背後に誰かが立っているように見えた。

  • 冷蔵室の背中

    Tさんは、郊外にある食品倉庫で働いている。 冷凍食品や生鮮品を保管する冷蔵室で、配送前の仕分け作業を毎日こなすのが日課だった。 冷蔵室は大型で、一定の低温を保つため出入口には厚いドアが設けられている。 その日は夕方近く、いつも通り一人で作業に入った。 薄暗い庫内でコンテナを並べていると、不意に視界の端に人影が映った。 同じ作業服を着た背中が、冷蔵室の奥に見えた。 「お疲れさまです」とTさんは声をかけた。

  • 毎晩2時44分に届く着信

    Yさんは地方の大学に通う、理工学部の2年生。 下宿先は古いワンルームのアパートで、学校まで自転車で15分ほど。 バイトや研究の合間を縫って、深夜までゲームやSNSをして過ごすのが日課だった。 その電話がかかってきたのは、7月半ばの蒸し暑い夜のこと。 スマホが震えたのは、深夜2時44分。非通知の表示が浮かんでいた。 「誰だよ…」ぼんやりした頭で通話ボタンを押すと、受話口の向こうからは、遠くでチャポン…チャポン…と、水の音だけが聞こえてきた。

  • 見えない同居人

    社会人になったばかりのYさんから聞いた話。 Yさんは念願の一人暮らしを始めるため、都心から少し離れた場所に建つ中古の一軒家を借りた。 広さの割に家賃が手頃で、古いながらも趣のある造りがYさんは気に入っていた。 引っ越してきて数週間、新しい生活にも慣れてきた頃、Yさんは妙なことに気づき始めた。 ある朝、Yさんが目を覚ますと、リビングの方から明るい光が漏れている。 昨夜は確かに消したはずのキッチンの電気が、煌々とついているのだ。 Yさんは「ああ、また消し忘れたのか」と独り言をこぼしながら電気を消した。

  • 誰もいない隣から聞こえてくる音

    一人暮らしをしているKさんから聞いた話。 Kさんは古いアパートの二階に住んでいた。 壁は薄く、隣の部屋の物音も時々聞こえてくるような造りだった。 しかしKさんの隣の部屋は長いこと空室で、半年経っても誰も住んでいる気配はなかった。 ある夜、Kさんは自室で読書をしていた。 時間は深夜を回っていた。 突然隣の部屋から「カタカタ」という奇妙な物音が聞こえてきた。

  • 禁忌の森の赤き眼と揺らめく影

    お爺さんが森の番人を務めるという、Fさんから聞いた話。Fさんのお爺さんは、神社の裏手に広がる「禁忌の森」を見守る役目を担っているという。 その森には、昔から人ならざるものが住み着いていると、祖父や父から何度も聞かされて育ったそうだ。 特に夜の森には決して近づいてはならないと、口酸っぱく言われていた。

  • すすり泣きが聞こえる神社

    夏休み、大学生のKさん、Sさん、Tさんの3人は、普段から探検好きで、今回はネットで見つけた廃村巡りの旅に出かけることにした。 地図を頼りに山道を分け入り、目的の廃村を目指して歩き続けたけれど、日が傾き始めても一向にたどり着く気配がない。 道は次第に獣道と化し、うっそうとした森の中に迷い込んでしまったようだった。 「やばいな、このままだと日が暮れちまう」 Kさんが焦った声を出す。 SさんもTさんも、不安げな表情で周囲を見回す。 その時、少し先に苔むした石段が見えた。

  • 肝試し中に見えた赤い光

    Rさんが、友人のYさんとNさんと体験した話。 彼らはどこにでもいる普通の大学生で、その日はちょっとしたスリルを求めていた。 夜の22時過ぎ、Yさんの運転する車で、とある県の山奥にある心霊スポットとして有名な森へと向かっていた。 「まじかよ、こんなとこに本当にあんのか?」 Nさんがスマホのマップと窓の外を交互に確認しながら、少し不安そうに呟いた。 車は舗装路を外れ、ガタガタと揺れる砂利道を進んでいく。 ヘッドライトが照らす先は、うっそうとした木々が連なる暗闇で道の先がよく見えない。

  • 誰もいない山小屋の訪問者

    都内のIT企業で働く、KさんとTさんが体験した話。 KさんとTさんは同僚で、普段はパソコンの画面と向き合い、コードを打ち込む毎日を送っている。 そんな二人が、たまには都会の喧騒から離れてリフレッシュしようと、会社の有給を使って登山に出かけた。 選んだのはそれほど人も多くないとされる、静かな山だった。 数時間の登山を終え、夕方には目的地の山小屋に到着する予定だった。 山道は想像以上に厳しく、到着する頃にはもう日が傾き、辺りは薄暗くなり始めていた。

  • だんだんと近づいてくる息の音

    フリーライターのHさんから聞いた話。 Hさんはいつものように、カフェで原稿と睨めっこしながら次の企画について考えていた。 今回は過疎化が進む日本の現状を探るべく、とある山奥の廃村を取材することになっていた。 都会の喧騒から離れ、静かに考え事をするのは嫌いじゃなかった。 むしろそういう場所でこそ、良いアイデアが浮かぶこともあった。 取材当日、Hさんは愛車を走らせていた。 ナビが示す道は次第に舗装が荒くなり、すれ違う車もほとんどなくなる。

  • 深夜の研修棟を走り回る音

    Yさんが参加したのは、大手企業の新入社員研修だった。 場所は山奥にある古びた研修施設。 3泊4日で泊まり込み、朝から晩まで座学と体験研修を受けるという、少し厳しい内容だった。 建物は清掃が行き届いており、ぱっと見は清潔だったが、どこか湿気を含んだ匂いと、長い廊下の奥にある暗がりが不気味に感じられた。 初日の夜、Yさんは寝る前にトイレ行き、戻って来る途中の事。 廊下の奥の方から「ぺたっ、ぺたっ、ぺたっ」と裸足のような足音が聞こえてきた。

  • 深夜に最上階に移動するエレベーター

    オフィスビルの警備員をしている、Nさんから聞いた話。 Nさんは都心にある20階建てのオフィスビルで、夜間警備の仕事をしている。 警備員は三人一組の交代制で、ビル内を巡回しつつ、監視カメラをチェックするのが主な仕事。 そのビルで不可解なことが起こるようになったのは、ある改装工事のあとだった。 毎晩深夜1時になると、誰もいないはずのエレベーターが勝手に動き、最上階の20のボタンを点灯させて上昇するのだ。

  • 閉店後の試着室

    Sさんは郊外にある、ショッピングモール内の衣料品店で働いていた。 大型チェーンではあるがその店は少し古く、どこか薄暗さを感じさせる作りだった。 その日も閉店作業は滞りなく進んでいた。 最後の客を見送り、シャッターを半分降ろし、店内の棚や床を整え始めていた頃だった。 Sさんはある違和感に気づいた。 一番奥にある試着室のカーテンが閉まっている。 閉店作業では、全ての試着室のカーテンを開けておく決まりだった。 さっき見回った時には、確かに開いていたはずだ。

  • 水の中の藁人形

    Iさんは水源の点検を仕事としている。 山間部にひっそりと建つ、古い取水施設の担当だった。 その日も町の水道課から「水圧が安定しない」と連絡が入り、午後から一人で点検に向かった。 山奥へ続く細道を軽トラで登り、最後は徒歩で斜面を下って川沿いの取水施設へ。 建屋の周囲は木々に覆われ、午後とは思えないほど辺りはひんやりとして、川の音だけが聞こえている。 施設の扉を開け、中に入って点検を始める。

  • 鉄塔を渡り歩くモノ

    Tさんは高圧送電線の鉄塔点検員だった。 定期的に山中の鉄塔を巡回し、異常がないか確認する仕事で、どちらかというと単調で静かな職場だ。 ただ山奥の鉄塔は街灯も無く、日が落ちると真っ暗になる。 この日も秋が深まりつつある頃で、午後の点検は薄暗さと冷たい風が吹いていた。 Tさんが目指してる鉄塔は尾根に立っているため、送電ルート沿いに登山道を歩き、塔の足元に着いたのが午後5時を回った頃だった。 点検項目を淡々と確認していると、不意に背後の林の方から 「おーい」 と低くかすれた声がした。 思わず振り返ったが誰もいない。

  • 土間の下に埋まってる物

    この話はKさんから聞いた話。 Kさんの家は、曾祖父が自らの手で建てたという築百年近い古民家だった。 土間のある広い玄関、太い梁、そして重たい引き戸。 その家には、古くからの「言い伝え」がひとつだけあったという。 土間の下は絶対に掘り返すな。 言いつけは曽祖父から祖父へ、祖父から父へと代を重ねるごとに、必ず口伝されてきた。 理由は語られない。ただ「決して掘るな」とだけ。

  • 深夜の駐輪場で揺れる自転車

    仕事帰りのMさんが、駅の立体駐輪場に自転車を取りに行った時の事。 時間は深夜0時前。 駅はもう人通りもほとんどなく、遠くを歩いてる人の音が聞こえる程だった。 2階建ての駐輪場は鉄骨の柱が無機質に並び、辺りには誰の姿もなかった。 いつもと同じように、自分の自転車の場所へ向かって歩いていくと、右前方にある一台の自転車が「ぎっ、ぎっ…」と音を立てて揺れているのが目に入った。 「地震?」 そう思って周囲を確認するが、他の自転車は微動だにしていない。

  • 駅の裏側にあった地下への階段

    深夜一時過ぎ。 駅前のコンビニでバイトを終えたTさんは、気まぐれに駅の裏手に回ってみた。 人通りのないその裏路地は街灯も少なく暗い。 ふと視線を落とすと、路面の隙間に古びた階段が口を開けている。 「こんなのあったか?」何度か通った道のはずなのに、これまで目に入ったことは一度もなかった。 吸い寄せられるように階段を下りると、そこには厚い鉄の扉がある。 錆びついているが鍵は掛かっておらず、押すと軋みながら開く。

  • リアガラスを叩きつける女

    深夜2時をまわった頃の事。 配送ドライバーのMさんは、翌朝の納品に備え、山間部を抜けるルートを走っていた。 峠道は街灯もほとんどなく、外はまるで墨を流したような闇。 けれど仕事に慣れたMさんは、ラジオを流しながら淡々と走っていた。 そのとき、カーナビの画面が検索をし始め、目的地への新たなルートを示した。 それは今いる道から外れ、山側に入る細い林道だった。 「近道か?」 そう呟いたMさんは、ためらいなくハンドルを切った。

  • 立入禁止の沢

    写真が趣味のYさんは、ある週末、仲間とのキャンプのついでに一人でカメラを持って近くの沢に向かった。 地元ではあまり知られていない、観光案内にも載っていない場所だったが、前夜に話を聞いた年配の管理人が「水の流れが綺麗」と言っていたのを思い出したのだ。 小道をしばらく進むと、ぬかるんだ地面の先に水音が聞こえてきた。 木々の間から差す陽が、白く泡立つ沢の流れを照らしていて、風に揺れる葉の影が水面に揺れている。 だが、道の途中に細く張られたロープがあった。 「立入禁止」の札が風に揺れている。

  • 旅館の見取り図

    Kさんは一人旅が趣味だった。 人混みを避け、ふと目に留まった古びた旅館のホームページを頼りに、車で山道を登った。 着いたのは、周囲を杉林に囲まれた小さな旅館。 木造三階建てで、表には「創業明治二十年」の看板が色褪せて掲げられていた。 受付で出迎えたのは無口な初老の男性。 必要最小限の挨拶の後、部屋の鍵と一枚の紙を差し出してきた。

  • 見えない鳥居

    Tさんから聞いた話。 大学の休暇を利用して、朝早くに登山に出かけたTさんたち四人のグループ。 地図とコンパスを頼りに整備された登山道を歩いていたが、途中で道を一つ間違えた。 スマホの電波は既に届かず、地図にも載っていない小道に入り込んでしまったことに気づいた時には、もう引き返すタイミングを逸していた。 獣道のようなその細道を進むしかなく、全員で手で草をかき分けながら、なんとか先へ進んだ。

  • 遭難した人の無線

    林業の現場で長年働いていた、Sさんが体験したという話。 ある年の晩秋、Sさんは奥山の斜面で、数人の作業員と一緒に間伐作業をしていた。 山道はぬかるみ、霧も立ち込めていたが、無線機を頼りに連携しながら作業は進んでいた。 その日、Sさんの腰にぶら下げていた無線機が、突然「ジジ…ガッ…コッチニ…」と、ノイズ混じりの音を拾った。 女性の声のようにも聞こえたが、誰の声か判然としない。

  • 存在しない階、3.5F

    MさんがまだIT企業に勤めていた頃の話。 その日は大規模な障害対応で、終電間際まで一人オフィスに残っていた。 Mさんが働いていたのは、都心にある築30年のオフィスビルの5階だった。 普段は賑やかなフロアも、夜になると照明が落とされ、外の灯りだけがぼんやり反射している。 深夜0時をまわりようやく全ての作業が片付き、Mさんは静かに椅子から立ち上がった。 ノートPCをカバンに収め、薄暗い廊下を抜けてエレベーターに乗り込む。 行き先ボタンで「1」を押し、ややくたびれたエレベーターがガクン、と音を立てて降下を始めた。

  • 真っ白な缶の自販機

    介護施設で夜勤を終えた早朝、Yさんは車で自宅に向かっていた。 眠気のせいでまぶたが重く、ナビの音もぼんやりとしか頭に入ってこなかった。 次第に記憶が曖昧になり、気づいたときには見覚えのない小道を走っていた。 舗装はされているが道幅は狭く、両側には杉の木が立ち並ぶ山裾の道。 ナビには何の表示もなく、「ルートを外れました」とだけ繰り返している。 引き返そうと考えたとき、ふいに視界が開けた。 「霧の見える丘」と書かれた小さな木の看板と、コンクリート製の古びた休憩所がそこにあった。

  • 薄暗い地下鉄の駅

    営業帰りのTさんは、終電間近の車内でついウトウトしていた。 疲れ切った身体がシートに沈み、気がつけば聞き慣れないアナウンスが聞こえた。 「━━まもなく、〇〇駅、〇〇駅です」 何と言ったのかよく聞き取れなかった。 寝過ごしたのかと思い慌てて立ち上がり、扉が開くと同時にホームへ降りる。 だが、そこはどこかおかしかった。 薄暗い地下鉄の駅。 照明はあるが薄汚れており、どの光も白く濁っていた。

  • 【不思議な話】ととの屋

    建設会社で働くSさんは、夜の現場作業を終えた帰り道、唐突にラーメンが食べたくなった。 時計を見ると午前1時をまわっていた。 普段ならまっすぐ帰宅する時間だが、その夜は空腹が勝っていた。 車を運転しながら見慣れぬ路地にハンドルを切った。 住宅街の裏手に入ると急に街灯がまばらになり、あたりは薄暗くひっそりとしていた。 そんな中、一つだけぽつんと明かりのついた古い木造の建物が目に入った。 看板は薄れて文字が読みづらかったが、暖簾には確かにこう書いてあった。 「ととの屋」 昔ながらの雰囲気にひかれて、Sさんは車を停めて店に入った。

  • 階段にいる女の子

    Yさんが小学生の頃に通っていた学習塾の話。 その塾は商店街のはずれの、古い雑居ビルの4階にあった。 エレベーターは使えず、いつも階段で上り下りしていた。 ビルの階段は、鉄の手すりがついたコンクリート打ちっぱなしで、3階と4階の間の踊り場だけがなぜか電灯が暗く、昼間でもうっすら影がかかっていた。 おかしな事に気づいたのは、たしか小学4年生の頃。 ある雨の夕方、いつものように塾へ向かい、3階を過ぎて暗い踊り場へ差しかかったときだった。 そこにひとりの女の子が立っていた。

  • 線路沿いの手

    高校生のTさんには、帰り道にどうしても気が進まない場所があった。 駅から少し離れた古い踏切━━線路の両側はくすんだ雑草が生い茂り、夜ともなれば灯りも乏しく人通りもほとんどない。 別に誰かが亡くなった場所というわけでもない。 ただTさんは小学生の頃からずっと、その踏切を渡るたび視線のようなものを感じていた。 風が吹いてもいないのに草むらがざわりと動く音。

  • 夜霧の送迎路

    ネットで知り合ったRさんが、中学生だった時に体験した話。 Rさんは夜の21時過ぎ、小さな学習塾の入り口を出た。 雨がしとしと降っていて、空気はどこか重たかった。 周囲の民家はすでに灯りを落とし、通りも人けがない。 いつもなら同じ中学生たちが数人、送迎バスを待っているのだが、今日はもう誰もいなかった。 「質問なんかしなきゃよかったかな…」 英語の文法がよく分からず、つい授業後に先生を捕まえて長話になってしまったのだ。 塾の閉館時間ギリギリまでいたせいで、Rさんは一人だけ取り残されていた。

  • 通学路の鏡

    これはSさんが中学時代の話。 Sさんが通っていた中学校の近くには、ちょっと変わったものがあった。 それは道沿いの民家の塀の脇に、なぜか姿見が立てかけられていたのだ。 全身が映るほどの大きな鏡。 縁は古く傷だらけで少し傾いているが、それでも人が通るたびに姿を映す。 Sさんは最初こそ違和感を覚えたが、毎日通るうちに当たり前の風景になっていった。 不思議なことに風の強い日も、台風の翌日も鏡は倒れていない。 それどころか、土台に重りがあるわけでもないのに、まるで誰かが毎朝立て直しているかのように、同じ角度でそこにあった。

  • 使われていない第六会議室

    Aさんという人から聞いた話。 Aさんの勤務する会社は、駅近の古いビルに入っている。 築年数は数十年は経っているが、内装はリノベーションされていて、働いていてとくに問題はなかった。 ただ一つ、社員の間で「ちょっと気味が悪い」と噂されていたのが、フロア奥にある使われていない会議室だった。 正式には「第六会議室」。 図面にも名前は残っているが、なぜか予約システムには表示されず、鍵も常に管理部で預かったままだった。 使っているところを見た者は誰もいない。

  • 鏡を横切る髪の長い人

    Yさんは都内の大型テナントビルに入居する企業で、総務を担当していた。 その日は決算前の資料整理で、22時をまわってもフロアに残っているのはYさんひとり。 オフィス内は照明を落とし、足元灯だけが点いた半分暗がりの状態だった。 コーヒーを飲みすぎたせいか、ふと尿意を覚えてトイレへ向かった。 トイレのある廊下はいつもより妙に静かで、蛍光灯の光もどこか青白く感じる。 だが、疲れもあってYさんは深く考えず、個室を使ったあと、手を洗いに洗面所の前に立った。

  • 編集データに映っていた黒い塊

    Mさんというフリーランスの映像編集者から聞いた話。 その日は仕事部屋にこもり、日々クライアントから送られてくる動画データと向き合っていた。 手がけていたのは小劇団のプロモーション映像だった。 劇団名は「深縁座(しんえんざ)」。 都内の小さな劇場を拠点に活動しているが、演出や構成が尖っており、業界では注目され始めているという。

  • プリンター室から聞こえる女性の声

    Tさんは都内の編集プロダクションで働く若手社員。 雑誌の特集記事が立て込んでいたその週、彼は連日、終電ギリギリまで会社に残ることが多かった。 金曜の夜、その日も昼からずっとパソコンとにらめっこしていたTさんは、資料の校正とレイアウト調整に追われ、あっという間に時間が過ぎた。 21時をすぎたあたりで、フロアにいた社員たちは一人、また一人と帰り支度をはじめた。 22時前には、課長が「戸締まり頼むな」と声をかけて退社。 23時を回った頃、静まり返った社内に残っていたのは、もうTさんだけになっていた。

  • 深夜のランタンの灯り

    Cさんがそのキャンプ場を訪れたのは、ちょうど夏が終わる頃だった。 人里から離れた山あいにあるその場所は、シーズンが過ぎると人もまばらで、静かに過ごしたいソロキャンパーには好まれるという。 管理棟も午後5時には閉まり、夜は完全に無人になるのが常だった。 その日、Cさんのサイトには他に客はおらず、まわりのサイトも空のままだった。 焚き火を眺めながら時間を過ごしていたが、炊事場に忘れ物を思い出して、ランタン片手に歩き出したのは夜の10時過ぎだった。

  • バンガローの天井裏

    Rさんたちは、大学時代の友人同士で計画した夏の小旅行で、山奥のキャンプ場にある古びたバンガローを借りた。 森に囲まれたその場所は街からも遠く、電波もほとんど入らない。 だが静かさを楽しむにはちょうど良かった。 建物は木造で玄関の引き戸がきしむ音や、床板のたわむ感触に少しばかり古さを感じたが、それもまた風情だと皆で笑った。 ただ部屋の天井がやけに低く、寝転ぶと手を伸ばせばすぐに届きそうな距離だったのが少し気になったという。

  • フゥ~っと息を吹きかけられた

    ソロキャンプが趣味のYさんは、週末になると人の少ない山奥に分け入って、一人で自然の中に身を置くことを楽しみにしていた。 その日も、地図にも載っていないような旧道を進んだ先の、廃れた林道脇の空き地にテントを張った。 標高も高く携帯の電波は届かないが、水場もあって静かな場所だったという。 夕方には焚き火を起こし、持参した小鍋で湯を沸かして簡単な夕食をとった。 風の音もなく、虫の声と木々のざわめきが心地よく響いていた。

  • 火の中に立っていたもの

    Mさんたちが大学のゼミ仲間と訪れたキャンプ場は、県境の森の中にあった。 宿泊は古びたバンガローだったが、簡易シャワーや炊事場もあり、学生たちには十分だったという。 夜になってバンガローの横で焚き火を囲んだ。 火を見ながら語る他愛ない話や、持ち寄ったギター、マシュマロ焼き体験。 そうした時間が過ぎる中、Nさんがスマホで焚き火を連写しはじめた。 「スロー動画っぽく編集したいんだよ」 と言いながら、何十枚も角度を変えて撮っていた。 その場では特に何も起きず、皆、焚き火を見つめながら眠たくなり、それぞれバンガローへ戻っていった。

  • 仮設トイレにやってくる足音

    Kさんが大学の友人たちとキャンプに出かけたのは、ちょうど夏休みの終わり頃だった。 場所は県内の山間にあるキャンプ場で、水道や簡易シャワーはあるものの、建物らしい建物は管理棟と仮設トイレくらいしかないような場所だった。 夜は焚き火を囲んでくだらない話で盛り上がった。 酒も入って誰からともなく「怖い話でもしようぜ」という流れになり、軽い怪談の応酬が始まった。 やがて日付も変わる頃、それぞれのテントに戻っていった。

  • 音だけの登山者

    地元の山岳会に所属しているという60代のSさんが、ある秋の日に体験したという話。 その日、Sさんは県内でも特に整備が行き届いたと評判の登山道を、ひとりで登っていた。 紅葉の見ごろには少し早かったが、涼しい風が吹いていて、歩くにはちょうどよい天気だったという。 頂上まではあと一時間ほど。 落ち葉を踏みながら淡々と歩いていると、後ろから「ガサッ、ガサッ」と、誰かが枯れ葉を踏む音がした。

  • 首を振るだけの人

    これは長年山岳ガイドを務めるという、Kさんから聞いた話。 標高二千メートルを越える某山系で、ルート調査と称して単独行動をとっていたときのことだった。 その地域には、遭難者や登山客の緊急避難用として建てられた、古びた無人の山小屋がいくつか点在している。 Kさんがその晩利用したのも、そうした小屋のひとつだった。

  • 仮設トイレのノック音

    ネットで知り合ったMさんから聞いた話。 それは友人たちと出かけた、山間のキャンプ場で起こったという。 その場所は県境近くの標高の高いエリアにあり、近年できたばかりの簡易キャンプ場だった。 トイレは仮設の青い簡易型。 だが最低限の設備はあり、敷地の端には太陽光で加熱する簡易シャワー設備が一基だけ設置されていた。 湯量は限られるが、夏場ならなんとか汗は流せるということで、友人たちはそこに二泊三日の予定で滞在することにした。

  • 廃校の保健室にいた女生徒

    Mさんが体験した話。 それは大学時代の夏休みのこと。 地元に戻ってきたMさんは中学時代の友人たちと集まり、夜にある場所へ向かった。 行き先は彼らが通っていた中学校。 数年前に統合で廃校になり、今は雑草と落書きに覆われた無人の建物だった。 「懐かしいな」「ここ、職員室だったよな」そんな話をしながら、懐中電灯を片手に進んでいく。 床は埃にまみれ、掲示板の紙は茶色く変色している。

  • 名前を呼ぶ女の声

    この話は、林業歴三十年以上のTさんから聞いた話。 その日もTさんは、三人組である区域の境界に近い尾根に入っていた。 午前中はチェーンソーの音が響いていたが、午後になると皆バラバラに位置取りして、間伐作業に入っていたという。 喉が乾いたTさんは手を止め、 「おーい、休憩にしねぇかー」 仕事仲間に呼びかけたつもりだった。だが返ってきたのは 「Tさぁん」 甲高い女の声だった。

  • 自分と同じ服装の人

    この話は趣味で登山を続けているYさん(30代・男性)が、昨年の秋に体験した話。 その日、YさんはN県にある標高1,◯00mほどの山に登っていた。 天気は快晴。 平日ということもあり、登山道に人の姿はほとんどなかった。 ゆるやかな尾根道に出た頃には昼も近く、山の上から見下ろす紅葉の景色に、彼は何枚かスマホで写真を撮っていたという。 尾根沿いの道は左右に低木が続いていて、見通しは良かった。 ところがふと気配を感じて、Yさんはスマホ越しに右側の斜面を見た。

  • 張り子だるま

    これは、Sさんが引っ越した直後に体験した出来事。 就職を機に一人暮らしを始めたSさん。 新生活の運気を上げようと、駅前の骨董市で真っ白な張り子のだるまを一つ購入した。 古道具屋の隅に置かれていたそれは、手作りなのか少しいびつで、他と比べると妙に目が大きかったのが印象的だった。 「願いごとをして、左目を入れるんだよ」 店の老人がそう言うので、部屋に戻ってすぐ黒ペンで左目を塗りつぶした。 「どうか、新しい仕事がうまくいきますように」

  • 赤い畳の部屋

    これは大学時代に肝試しに行ったという、Tさんから聞いた話。 Tさんたちは友人6人のグループで、とある山奥の古民家を訪れた。 すでに人が住まなくなって久しく、屋根の一部も抜けかけていたが、知り合いの親戚の持ち物で取り壊しが決まっていたため、一晩だけならと泊まる許可をもらったのだという。 古民家には全部で五つの部屋があった。 そのうちの一つ、一番奥の部屋だけが他と明らかに違っていた。 畳が真っ赤だった。

  • 影送り

    Kさんが小学生の頃に体験した話。 当時住んでいたのは、山あいにある静かな集落だった。 街灯も少なく、夜になると辺りは真っ暗になったが、自然に囲まれたのどかな場所だったという。 その村には、少し変わった風習があった。 「影送り」と呼ばれるもので、夕暮れ時に自分の影を踏みながら「さようなら」と唱えることで、一日分の厄を影に流して追い出すというものだった。 ただし、年に何日か「影送りをしてはいけない日」がある、と大人たちは言っていた。 Kさんはその理由を深く聞いたことはなかった。

  • 留守番電話に残された自分の声

    これは会社員のMさんが実際に体験したという話。 その日Mさんは仕事からの帰宅中、スマホに「留守番電話が1件」と表示されていることに気づいた。 発信元は非通知。 だが内容を確認してみると──自分の声だった。 『…オレだけど…たぶん、大丈夫、もうすぐ帰る』 声は確かにMさんの声。 けれど、どこかおかしい。

  • 這い上がってくる手

    この話は、大学生のIさんが体験した出来事だという。 Iさんは、郊外の二階建てアパートの一室に一人で暮らしていた。 夏も終わりに近づいたある夜、部屋の窓を開けて夜風に当たりながらスマホを見ていた。 その時だった。 「コン、コン」 耳をすますと、窓のすぐ下から軽く叩くような音がした。

  • 顔が映る額縁

    これはRさんが昔、古道具屋で働いていた時のこと。 遺品整理の依頼で引き取った荷物の中に、木枠が黒ずんだ古い額縁があった。 中の写真はすでに抜かれており、ガラスと台紙だけが残っている。 湿気を含んだような匂いが微かに漂っていたが、Rさんはそれを丁寧に拭き取り、他の額縁と一緒に棚へ並べた。 ところが数日後、その額縁に異変が起きた。 他の作業をしていた同僚が、「あれ、今、人の顔が…」と額縁を見て顔をしかめる。

  • 深夜に聞こえる「おかえりなさい」

    Eさんが転勤を機に引っ越したのは、地方のとある町にある古びた一軒家だった。 家賃は月2万円。 風呂トイレ付きで、間取りも一人暮らしには十分。 築年数は古いものの、特に事故物件などの説明もなかった。 最初の一週間は特に問題もなかった。 静かな環境で、仕事から帰ってはテレビを見て寝るだけの生活。 だがある晩、眠りかけたEさんの耳に声が届いた。

  • 崖の上の祠

    これはTさんが高校生の夏、田舎の親戚の家に泊まりに行ったときの話。 その村は山間にあり、携帯の電波もろくに入らないような場所だった。 Tさんにとっては退屈な時間だったが、近所の子どもたちと話すうちに一つだけ気になる場所の話を聞いた。 「崖の上の祠、ぜったい行っちゃダメだよ」 「近づいたら、目ぇつけられるんだって」 どうやら村はずれ、断崖の上にぽつんと建っている古い祠があり、地元の人間は子どもどころか大人でも近づかないという。

  • 裏山の見えない道

    これはYさんが大学生の夏休みに体験した話。 Yさんは数年ぶりに祖父母の家を訪れていた。 山間の古い家で、子どもの頃はよく裏山を駆け回って遊んでいたという。 到着した日の午後、夕飯まで少し時間があったので、懐かしさから一人で裏山へ登ってみることにした。 山の入り口には、変わらず朽ちかけた鳥居が立っていた。 奥には昔よく通った小道が続いている。

  • 林の奥から聞こえる呼び声

    Kさんが大学時代に体験した話。 夏の終わり、Kさんは友人4人と一緒に、人けの少ない山奥のキャンプ場を訪れた。 標高は高く、夜になると一気に気温が下がる場所だったが、年に一度の恒例行事となっていた。 その晩も焚き火を囲んで他愛もない話をしていたが、日付が変わる頃、疲れた一同はテントに入って眠りについた。 Kさんが目を覚ましたのは、午前2時を少し回った頃だった。

  • 案山子の村

    Yさんは新緑の眩しい季節を選んで、愛車のバイクで気ままな一人旅を続けていた。 予定していたルートを少し外れ、地図にも載っていないような細い山道に入り込んでしまったのは、もう日が傾きかけた頃だった。 焦りと不安を感じ始めたYさんの目に、不意に小さな集落が飛び込んできた。 まるで忘れ去られたような、静かで古びた村だった。 「助かった…」 ほっと胸をなでおろし、村へとバイクを進めたYさんだったが、すぐに異様な光景に気づく。 村の入り口から続く田畑に、無数の案山子が立っているのだ。

  • 四時四十四分のアラーム

    会社員のKさんは、都内の築三十年近い古いマンションに引っ越してきたばかりだった。 家賃は安く駅からも近い。 設備は年季が入っていたが、広さのわりに格安だった。 最初の一週間は何の問題もなかった。 だが、それはアラームが鳴った日から始まった。 その日、Kさんは寝不足だった。 ベッドに倒れこむようにして眠ったのに、突然、けたたましいアラーム音で目が覚めた。

  • 風呂の底

    ネットで知り合ったFさんから聞いた話。 Fさんがそのアパートに引っ越してきたのは、仕事の都合で急遽決まった異動がきっかけだった。 築年数は古いが、内装はリフォーム済みで綺麗。 家賃も安く立地も悪くなかった。 ただひとつだけ気になるのは、入居時に管理会社の人が妙に念を押したことだった。 「お風呂、夜中には入らないほうがいいですよ。 …できればですけどね」

  • 踏んではいけない黒い階段

    大学生のSさんが住むのは、都内郊外に建つ築40年のアパートだった。 木造二階建て、六世帯が住む古びた建物で、メインの階段の他にSさんの部屋の横には、古い鉄製の非常階段が取り付けられていた。 その非常階段は黒い階段と呼ばれ、住人の間ではある噂が囁かれていた。 「一段だけ、踏んじゃいけない段があるんだって。 夜中に降りると、変なことが起きるらしいよ」 そんな話を聞いたのは引っ越してきたばかりの頃だった。

  • 見かけなくなった隣人

    築50年を超える木造アパート「桜荘」の一室に、女性のYさんは住んでいた。 家賃が安く都内の職場にも通いやすかったが、夜になると家鳴りが酷く、冬は隙間風がひゅうひゅうと鳴いた。 Yさんの部屋の隣には、Mさんという30代くらいの男性が住んでいた。 物静かで会えば軽く会釈を交わす程度だったが、特に問題のある人物ではなかった。 だがある日を境に、そのMさんの姿をぱったりと見かけなくなる。

  • 踏切の向こう側に

    この話は、都内で働く会社員のSさんが体験したという出来事。 彼は終電で最寄りの無人駅に降り立ち、自宅まで歩いて帰るのが日課だった。 その帰り道、工場地帯へと伸びる貨物専用線の踏切がある。 住宅街とは少し離れた場所で、日中でもあまり人が通らないようなところだ。 その踏切は深夜になると、1本だけ貨物列車が通過していく。 時刻は毎晩0時37分。

  • 顔が写らない友人

    Tさんから聞いた話。 大学時代、Tさんにはよく遊ぶ仲間が3人おり、どこに行くにも一緒だった。 そのうちの1人、Yさんは写真に写るのが苦手というタイプではなかったが、ある日を境に少しずつ様子がおかしくなっていった。 きっかけは旅行先での集合写真だった。 Tさんがスマホで撮った1枚、みんなが笑っている中、Yさんの顔だけがぐにゃりと歪んでいた。 ピントがずれたかと思いすぐに撮り直したが、やはりYさんの顔だけがぼんやりしている。

  • 人が住んでるいる空き部屋

    ネットで知り合ったJさんが体験した話。 大学進学をきっかけに、Jさんは地方都市の少し古びたアパートに引っ越した。 駅から遠くもなく家賃も安く、少しだけ壁が薄いことを除けば、条件としては悪くなかった。 引っ越しからしばらくして、気になったのは隣の部屋のことだった。 入居の時に管理人から「隣室は長らく空き部屋」と聞かされていたのに、夜になると壁越しにわずかな生活音が響いてくるのだ。

  • 何かが出てくる旧校舎

    Sさんから聞いた話。 Sさんが通っていた中学校には、すでに使われていない旧校舎があった。 今では扉も錆びつき、廊下にはホコリが積もっている。 けれど文化祭の準備期間中だけは、道具置き場として一部の教室が解放されることがある。 その年の文化祭前、Sさんたちのクラスも旧校舎の教室を一時的に使うことになった。 掃除と荷運びのため、何人かの生徒が旧校舎へ行くことになり、Sさんもそのうちの一人だった。

  • 自分じゃない影

    ネットで知り合ったRさんから聞いた話。 この話はRさんの知り合いのMさんの体験談となっている。 その日、Mさんは仕事帰りに立ち寄った銭湯で、ちょっとした違和感を覚えた。 そこは昭和の雰囲気が残るタイル張りの古びた銭湯。 常連らしき年配客が多く静かで落ち着いた雰囲気だった。 脱衣所で服を脱ぎ浴場へ入ったとき、ふと鏡に映った自分の姿を見てMさんは一瞬立ち止まった。

  • 傾いているペンション

    Hさんが体験した話。 それは秋の初めの頃、大学時代の友人と2人で、山奥にあるペンションへ一泊旅行に出かけた時のことだった。 目的地は山の中腹にひっそりと建つ洋風のペンション。 近年は訪れる客も少ないらしく、平日ということもあり、泊まっていたのはHさんたちと、もう1組の年寄り夫婦だけだったという。 「なんかこの部屋、床がちょっと斜めってない?」 そう言ったのは同行した友人だった。

  • 天井裏に何かがいる

    Kさんが大学時代に体験した話。 地方都市の外れにある小さな古アパート。 木造で築年数も経っているが家賃が格安だったため、Kさんは即決でそこを借りることにした。 大学までバスで10数分。町中と違って静かな環境。 部屋も狭いがそれなりに住めそうだった。

  • 誰かがいる電話ボックス

    Tさんが中学生だった頃に体験した話。 学校からの帰り道、通学路の途中には小さな公園があり、その一角にガラス張りの電話ボックスがぽつんと建っていた。 当時はまだ携帯を持っている子はほとんどいなくて、電話ボックスもそこそこ使われていた。 でもその電話ボックスだけは、なぜかいつも空気が重かった。 曇ったガラス、誰かの指で書かれたような消えかけた文字、そして中に入ると、ひんやりとした湿気が肌にまとわりつく。

  • 深夜に玄関から聞こえた音

    Oさんが体験した話。 転勤を機にOさんは都内のワンルームに引っ越した。 駅からは少し遠いがオートロックつき、室内も清潔で申し分ない。 ただ一つ入居初日から妙な違和感があった。 それはどこか“空気が澱んでいる”という感覚。 窓もドアも開け放って換気してもなぜか息苦しい。 「きっと引っ越し疲れだろう」と思い直し、その晩は早めに寝ることにした。 深夜、玄関の方から「カチャ…」という音が聞こえた。

  • 脱衣所の色褪せた白いロッカー

    ネットで知り合ったIさんから聞いた話。 Iさんが泊まったのは山の中腹にあるロッジだった。 スキー客や登山者がよく利用する場所で、年季は入っていたが掃除は行き届いていて、清潔な印象だったという。 そのロッジには宿泊者用の共同浴場があり、脱衣所には古い木製ロッカーが並んでいた。 その中にひとつだけ白く塗られたロッカーがあった。 他と違って色褪せており、扉には紙が貼られていた。 「使用禁止」

  • 山霧

    Mさんが体験した話。 その温泉旅館は、山深い場所にひっそりと佇んでいた。 古くからあるというその宿は木造のぬくもりが残っており、観光地からも離れているせいか、とても静かだったという。 Mさんは仕事の疲れを癒やすため、一人でその宿に泊まった。 部屋は二階の端にあり、山の景色が一望できる角部屋。 露天風呂にも入り、静かな夜を満喫しながら布団に入ろうとしたときだった。 ――外が、白く霞んでいた。

  • 山鳴りの宿

    Sさんが体験した話。 登山の帰り道、Sさんは知人の勧めで山中にある一軒の宿を訪れた。 木造の古びた2階建ての建物で、周囲には人の気配も少なく、まさに“隠れ家”のような佇まい。 その日は天気も良く、何も問題なくチェックインを済ませ、夕食を食べて早めに部屋に戻って布団に入った。 奇妙な音が聞こえ始めたのは、午前2時過ぎのこと。

  • リビングの隅にある引き戸

    Kさんという人から聞いた話。 Kさんが社会人になって数年が過ぎた時、ゴールデンウィークに大学時代の友人たちと久々の小旅行をする事になった。 泊まりに選んだのは、山間にある一棟貸しのコテージだった。 山道を抜けて辿り着くそのコテージは古びてはいたが清潔感があり、木の香りが心地よく漂っていた。 昼間は自然を満喫し、バーベキューを楽しむ。 何年ぶりかに味わう無邪気な空気に、みんなすっかり気が緩んでいた。

  • お連れの方はどこに…

    山の中や地方の旅館めぐりが好きな、Yさんから聞いた話。 週末、前にネットで見つけた温泉旅館に向かった。 そこは山間にぽつんと佇む古びた温泉旅館の為、電車とバスを使い、最後は細い山道を徒歩で上ってたどり着くような場所だったという。 帳場には年配の女将と若い従業員が一人。 笑顔で迎えられ宿帳に名前を書くと、女将がふと奥を見ながら小さく言った。 「あら、お連れの方はどこに…」 その瞬間、隣にいた若い従業員が急に小声で何かを告げ、女将はハッとしたように顔を引き締めた。

  • ゆらゆらと揺れる崖下の灯り

    Rさんが体験した話。 秋も深まった頃、Rさんは静養を兼ねて山間の温泉宿を一人で訪れた。 その宿は三方を山に囲まれ、谷に面して建っているため窓からの眺めはよく、夜ともなれば遠くに町の明かりがちらちら見え、自然と心が落ち着くような場所だった。 到着した日は平日で客は少なく、館内もひっそりと静まり返っていた。 露天風呂に入ったあと、部屋でひとり晩酌を楽しみながら、窓の外を何気なく眺めていたとき――崖の下の林の中に、小さな光が揺れているのを見つけた。

  • 橋の下の祠

    ネットで知り合ったKさんが体験した話。 それは盆休みを利用して、山へ一泊釣り旅行に出かけた時のこと。 Kさんは社会人で普段は都会で働いているが、静かな自然の中でゆっくり釣りを楽しむのが唯一の癒しだった。 その日も車で数時間かけて、かつて祖父に教えてもらったという山中の古い橋の近くまでやってきた。 人の気配はなく、川の流れる音だけが心地よく響いていた。 橋の上から糸を垂らしているうちに、ふと橋の下の様子が気になり、岸を回って影の奥へと歩を進めた。

  • 旅館の存在しない部屋

    Hさんが体験した話。 夏の終わり、Hさんは家族を連れて、山間にある老舗旅館へ泊まりに出かけた。 木造三階建てのその旅館は昔ながらの建物で、少し年季が入ってはいたものの、館内は清潔に保たれており、何より静かで落ち着いた雰囲気が気に入ったという。 その夜、風呂から上がって一息ついた頃、子どもが「探検してくる」と言って部屋を飛び出していった。 Hさんは最初こそ微笑ましく見送っていたが、しばらくしても戻ってこないことに気づき、廊下へ出て名前を呼びながら探し始めた。

  • 見回りにきた山岳警備隊

    Nさんが体験した話。 それはNさんが大学時代の友人たちと夏休みに訪れた、山奥の貸別荘でのことだった。 周囲に民家もなく、最寄りのバス停からもかなり離れたその別荘は、川のそばに建つ一軒家で、夜になると虫の音と風の音しか聞こえないような静けさに包まれていた。 その晩はバーベキューや花火を楽しんだあと、皆疲れて早めに布団に入った。 深夜1時を少し回った頃だった。 玄関のチャイムが「ピンポーン」と鳴ったのだ。

  • 山小屋のノート

    Aさんが体験した話。 趣味の登山で一人、山を歩いていたAさんは、急に天候が崩れたため予定を変更し、地図に載っていた無人の山小屋に避難することにした。 標高も高く風雨が激しくなるなか、小屋を見つけたときは本当にほっとしたという。 中は古びてはいたが、雨風を凌げるだけで充分だった。 入口近くの棚にはカセットコンロや古いランタン、そして「登山者用ノート」が置かれていた。 そこには何年も前からの記録が、登山客たちの手で残されていた。

  • クローゼットの中の部屋

    Kさんが体験した話。 短期の仕事で地方都市に滞在することになったKさんは、駅から少し離れた場所にあるマンスリーマンションを借りた。 間取りは1K。 家具つきで、すぐに生活が始められる手軽さが気に入ったという。 初日から特に不便はなかったが、夜になると部屋のどこかで引き戸が開くような音がすることに気づいた。 スー…と、空気を切るようなその音は、毎晩0時を過ぎた頃に決まって聞こえる。

  • 浴場から聞こえた女の声

    Tさんが体験した話。 出張の帰り道、少し足を延ばして立ち寄ったのは、山あいにある古びた温泉宿だった。 建物全体に時代を感じさせる静けさがあり、平日ということもあってか他の宿泊客の気配もほとんどなかった。 その宿には、昔ながらの大浴場が一つある。 夜も遅くなった頃、Tさんはゆっくり湯に浸かろうと脱衣所に向かった。 時刻は0時を回っていた。 誰もいないだろうと思いながら浴場の引き戸を開けたそのとき。

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、kaibanaさんをフォローしませんか?

ハンドル名
kaibanaさん
ブログタイトル
怖い話と怪談の処
フォロー
怖い話と怪談の処

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用