大学生のMさんが住む築十年ほどのアパートは、都心へのアクセスも良く、静かな住宅街の中にあった。 隣の部屋に新しい住人が引っ越してきたのは、梅雨が明けたばかりの蒸し暑い日のことだった。 挨拶に来たのは痩せぎすで、どこか陰のある雰囲気の男性だった。 名前は確か、Sさんと言ったはずだ。 Sさんはとても物静かで、Mさんが生活音に気を遣う必要がないほど、物音を立てることがなかった。
私の友人はアウトドアが好きで、特にキャンプには目がなかった。 彼はゴールデンウィークの長期休みを利用して、一人で山奥へと向かった。 事前にキャンプ場を予約していなかった彼は、山道を車で走らせ良さそうな場所を探していた。しばらく走ると山道から少し入った場所に、ぽっかりと開けた広場を見つけた。 木々に囲まれていて地面は比較的平ら、テントを張るには絶好の場所だった。 友人は車を停め、早速テントの設営に取り掛かった。
私の友人の家族は、毎年夏になると車で数時間かかる山奥の故郷に帰省していた。 その途中の道に、地元で曰くつきの心霊スポットとして知られる古いトンネルがあり、トンネル内は薄暗く、じめっとした空気が漂いどこか陰鬱な雰囲気に包まれていた。 ある年の夏、友人の家族がいつものようにそのトンネルを通過していると、後部座席に座っていた幼い娘が突然泣き出した。 「ママ、怖いよ。あそこに誰かいる」 娘は震える声でトンネルの壁を指差した。
私の故郷には、小さな山の上にひっそりと佇む古びた神社があった。 子供の頃、その神社は薄気味悪く近づくことを避けていた。 しかし大人になってから故郷を訪れた際、ふとその神社のことを思い出し足を運んでみることにした。 山道を登っていくと、木々の隙間から神社の屋根が見えてきた。 近づいてみると、境内に足を踏み入れるのも躊躇われるほどの異様な雰囲気に包まれていた。 鳥居は朽ち果て、社殿は崩れかかっており、まるで長い間放置されていたかのようだった。
小学校の帰り道、私はいつも近道のために裏山にある竹薮を抜けていた。 鬱蒼とした竹林は昼でも薄暗く、少し不気味だったが近道できるメリットには代えられなかった。 ある日、いつものように竹薮を歩いていると、奇妙な物音に気づいた。 ガサガサと竹が揺れる音、そして何かが蠢くような気配。 立ち止まって耳を澄ますと、微かに子供の笑い声が聞こえた気がした。
これはとある神社の神主から聞いた話。 数年前の夏、大学生が神社にやってきて、リュックサックから古びた木彫りの人形を取り出し、神主にこう頼んだ。 「この人形、処分してくれないか?」 話を聞いてみたところ、その人形は彼が最近骨董品屋で購入したものらしい。 アフリカの木彫りの民族人形で、素朴ながらも力強い存在感を放っていた。 だが、家に持ち帰ってからというもの、奇妙な現象が起こるようになったという。
夏の強い日差しが照りつける中、Rさんはドライブを楽しんでいた。 地方の道を気ままに走らせていると、古びた図書館が視界に飛び込んできた。 蔦が絡まり、外壁の塗装は剥がれ落ち、まるで長い間忘れ去られていたような佇まいだ。 「こんなところに図書館が・・・」 好奇心に駆られたRさんは車を駐車場に停め、図書館へと足を踏み入れた。
深夜、台車を押す作業着を着た人
夏休みが始まったばかりの7月、ある中学校の2年生は、恒例の林間学校に出かけた。 場所は山奥にある古いキャンプ場。 生徒たちは自然の中で過ごす3日間を楽しみにしている様子だった。 初日の夜はキャンプファイヤー。 火を囲んで歌を歌ったりゲームをしたりと、生徒たちは楽しい時間を過ごした。 夜の自由時間になり、各班ごとにテントに戻ると、興奮冷めやらぬ様子でしばらくの間はひそひそと話し声が続いていた。
中学校2年生のAさんは、自然体験学習で山奥の宿泊施設に来ていた。 同級生たちと寝食を共にし、ハイキングやキャンプファイヤーなど、都会では味わえない貴重な体験に胸を躍らせていた。 Aさんたちが寝泊まりする部屋は2階にあった。 2日目の夜、Aさんは奇妙な体験をする。 消灯時間を過ぎ、同級生たちが寝静まった頃、Aさんはトイレに行きたくなって目を覚ました。 薄暗い部屋の中、Aさんはベッドから抜け出し廊下へと出た。 宿泊施設は古い木造建築で、廊下は長く裸電球がぽつんと一つ灯っているだけだった。 その薄明かりがかえって廊下の奥を暗く見せ、Aさんは少し怖くなった。 トイレを済ませ部屋に戻ろうとした時、Aさん…
大学の探検部のメンバーであるA子は、夏休みの合宿で山奥の廃村を訪れていた。 その村は数十年前の山津波によって壊滅し、それ以来無人となってしまった。 A子たちは村の調査を目的として、廃墟となった家屋や神社などを探索していた。 ある日、A子は村はずれの森の中で奇妙な石碑を発見する。 その石碑には見たこともない文字が刻まれていた。 A子が石碑に触れた瞬間、彼女の頭の中に鮮やかな映像が流れ込んできた。
夏休みに入ったばかりの7月の事。 大学のサークル仲間5人、A子、B美、C香、D奈、E子は、海辺のキャンプ場に来ていた。 昼間は海水浴やビーチバレーを楽しんだ彼女たちは、夜になると砂浜に焚き火を囲んで、怪談話を始めた。 「この近くには、曰くつきの岬があるって知ってる?」 地元出身のC香が、意味ありげに話を切り出した。
大学生のA子は、夏休みを利用して友人3人と海辺の別荘に遊びに来ていた。 その別荘はA子の叔母が所有するもので、古くて少し不気味な雰囲気だったが広くて快適だった。 ある夜、4人はトランプをして遊んでいた。 窓の外は嵐で激しい雨が窓を叩きつけていた。 その時、突然停電が起こり部屋は真っ暗闇に包まれた。 「キャー!」 悲鳴を上げたのはB子だった。
夕暮れ迫る薄暗い校舎。 部活に熱中していたAさんは、気がつけばすっかり日が暮れてしまっていた。 慌てて荷物をまとめ帰路につこうとするが、大事な教科書を教室に忘れてきたことに気づいた。 もうあたりはすっかり暗くなっている。 それでも教科書は宿題の為に必要なものだ。 ため息をつきながら、Aさんは重い足取りで4階の教室へと向かったのだが、向かってる途中で嫌な噂を思い出してしまった。 それは「18時を過ぎると4階の教室の中に黒い影が歩き回っている」というものだった。
Dさんは旅行が趣味だった。 有名な観光地もいいけれど、Dさんはどちらかというとあまり知られていないような、秘境と呼ばれる場所を訪れるのが好きだった。 ある日、Dさんは、山奥にある「霧ノ村」という村を訪れることにした。 霧ノ村は名前の通り、一年中霧に包まれた村で地図にも載っていないような、まさに秘境と呼ぶにふさわしい場所だった。
学生時代、友達のB子から聞いた話。 B子はパソコンで夜更かしが大好きだった。 学校が終わって家に帰ると、すぐにパソコンを開いてチャットルームに入り浸るのが日課だった。 ある日、B子はいつもとは違うチャットルームを見つけた。 「真夜中の井戸端会議」という名前で、深夜0時から朝6時までしか開いていないらしい。
Aは、オカルト掲示板の住人だった。 日々様々な怖い話を漁っては、ゾクゾクとしたスリルを楽しんでいた。 そんなAが最近気になっているのが、「ひとりこっくりさん」という遊びだった。 廃寺や夜の神社、いわく付きの場所でやるといいと書いてあったので、Aは廃寺を探して行ってみることにした。
Kさんが高校時代に体験した話。 Kさんは高校陸上部の長距離選手で、夏の合宿で山奥にある古い寺に泊まり込んでいた。 昼間は寺の近くの広場で走り込み、夜は寺の広間で雑魚寝。 一日中走りっぱなしで疲れ果て、夜は泥のように眠りに落ちるはずだった。 しかし、Kさんはなかなか寝付けなかった。 寺の住職が毎晩語る怪談のせいだ。
これは知り合いの人から聞いた話なので、聞いたそのままをここに記述します。 深い霧に包まれた山奥の森。 焚き火の爆ぜる音だけが響く静寂の中、キャンパーのVは一人、テントの中で不安に震えていた。 さっきから焚き火の向こうの霧の中に、人影のようなものがぼんやりと浮かんでいるのだ。
トンネルでの恐怖体験の後、お腹がすいたFさんは、宿の人に教えてもらったコンビニへ向かった。 必要なものを買い込み、宿に戻るために田んぼの横を通る道を歩いていた。 するとどこからか何人かが喋っているような、よく聞き取れないけどザワザワとした声が聞こえてきた。 なんだろう?と周りを見ながら歩いていると、少し離れた街灯の近くに何人かの影が見える。
知り合いのFさんから聞いた話。 Fさんはトンネル巡りが趣味で、各地のトンネルを巡っていた。 今回訪れたのは山奥にある古いトンネル。 マニアの間では変なものが写る所として有名で、以前から気になっていた場所だった。 まず安全確認の為、昼間にトンネルを下見することにした。 トンネルはひんやりとしていて、じめじめとした空気が漂っていた。
Aさんは職場から遠くても安いアパートを選んで住んでいた。 普段は規則正しい生活を送っていて、夜更かしをすることなど滅多になかった。 しかし、お盆休みで10日間の休暇に入り、久々の自由時間を満喫していた。 その夜、Aさんは珍しく夜中までネット動画を見ていた。 そろそろ寝ようと時計を見ると、深夜1時を過ぎていた。 寝室に向かい、布団に入ろうとしたその時、押入れの方から微かな物音が聞こえてきた。
山深い集落の奥に朽ち果てた古い寺があった。 そこはかつて栄えた寺だったが、火事で住職一家が亡くなって以来、廃寺となってしまった。 村人たちは寺を恐れて近づかず、いつしか「呪われた寺」と呼ばれるようになった。 ある夏の日、肝試しに来た若者たちが廃寺を訪れた。 彼らは荒れ果てた境内を探索し、本堂の中に入ると薄暗い中に不気味な人形を見つけた。
夏の夜、山奥のキャンプ場。パチパチと音を立てるキャンプファイヤーを囲んで、大学生のY、K、R、Aの4人が集まっていた。 彼らは同じ大学の「不思議探索サークル」のメンバーで、心霊スポット巡りや都市伝説の調査など、オカルトにまつわる活動を行っていた。 「じゃあ、次はYだな」 Kに促され、Yはリュックから古びたランタンを取り出した。
社会人2年目のYは、大学時代からの友人S、A、K、山奥のキャンプ場へ向かっていた。 Yの提案で、都会の喧騒から離れて自然の中でリフレッシュしようと計画したのだ。 数時間のドライブの間、車内は音楽と4人の楽しげな会話で溢れていた。 キャンプ場に到着すると、彼らは手際よくテントを設営し、近くの川で釣りを楽しんだり森の中を散策したりして自然を満喫した。
知り合いのAさんから聞いた話。 Aさんは、大学で写真部というサークルに入っていて、この話はその時の夏合宿で山奥のキャンプ場に行った時の事。 メンバーは真面目でしっかり者のB、お調子者だが頼りになるC、そして怖がりのDの3人。 キャンプ場に着くと、管理人のおじいさんから道具やそれらを使う方法等の説明を受けたあと、最後に怖い顔で「奥の森には絶対に入るな」と忠告を受けた。
友人のKが大学生の頃、長期休みを利用して、一人でとある県北部の温泉街に旅行に出かけた時の話。 旅行の目的は温泉と、山間に点在する様々なお寺を巡ること。 大学で歴史を専攻していたKにとっては、まさにうってつけの旅先だった。 午前中に旅館に到着したKは、荷物を預けると早速お寺巡りに出かけた。 古い木造の建物、苔むした石段、静謐な空気。それぞれの寺が持つ独特の雰囲気に浸りながら、Kは時間を忘れて散策を楽しんだ。
友人Aから聞いた話だが、これがかなり気味が悪い。 Aが一人で山奥の温泉旅館に泊まった時のことで、都会の喧騒を離れて、ゆっくり羽を伸ばそうと出かけたそうだ。 Aの部屋は廊下の奥の方。窓の外は真っ暗で虫の声だけが響く静かな夜だったらしい。 そろそろ寝ようかと思った時、廊下から音が聞こえてきたという。 コツン、コツン、コツン… 規則正しい何かが硬い床を叩くような音。それがゆっくりとAの部屋に近づいてくる。
深い山奥に佇む古びた温泉旅館「月影荘」。 その名の通り、月明かりが映える静かな夜に奇妙な現象が起き始めた。 ある晩、若い女性が一人旅で月影荘を訪れた。 彼女は疲れを癒やすため、すぐに露天風呂へ向かった。湯船に浸かりながら夜空を見上げると、満点の星空が広がっていた。 しかし、ふと視線を落とすと、露天風呂の隅に黒い影がうずくまっているのが見えた。 女はギョッとしたが暗くてよく見えない。 気のせいだろうと自分に言い聞かせ、部屋に戻った。
大学二年の夏、俺たち三人、SとKとTは、ゼミの仲間と卒業旅行に行った。 行き先はKの地元である東北の温泉地。電車とバスを乗り継ぎ、山奥にある古びた旅館に到着した頃にはすっかり日が暮れていた。 旅館は歴史を感じる木造建築で、廊下は軋み、部屋はどこかひんやりとしていた。 案内された部屋は六畳間で、窓の外は鬱蒼とした木々に覆われていた。 夕食は囲炉裏を囲んでの山菜料理。 素朴だが滋味深く、都会の喧騒を忘れさせるような静けさが心地よかった。
知り合いのFさんから聞いた話。 Fさんは子供の頃、近所の子供たち7人くらいでよく遊んでいて、その日は地域にある神社へ向かった。 神社に集まったFさんたちは、だるまさんが転んだをして遊び始めた。 何回かやっていた時、Fさんが鬼の出番になった。 「だるまさんが~、ころんだっ!」 Fさんが振り向くと誰も動いていない。
知り合いのRさんは山登りが趣味で、週末や長期休暇に登山を楽しんでいた。 夏の初め頃、たまたま取れた長期休暇を利用して、山に登り、山小屋で一泊することにした。 山小屋には2段ベッドが2つあり、Rさんは下の段で寝ることにした。 夜、Rさんが本を読んでいると、山小屋の外で歩く音が聞こえた。 「こんな時間に誰かが来たのかな?」 Rさんは不思議に思いながら本を読み続けた。 しかし、いくら経っても誰も山小屋に入ってこない。
深夜、フリーランスのライターUさんは、自宅の書斎でブログ記事の作成に没頭していた。 一区切りついたUさんは、大きく伸びをしてから「そうだ、コーヒーでも淹れて休憩しよう」と立ち上がった。 ふと背後にある本棚に目を向けると、何かが動いたような影を見た。 気のせいかと思ったが、もう一度目を凝らして見ると、やはり本棚の隙間から何かがこちらを覗いているような気配がする。
友人のIさんから聞いた話。 Iさんは、会社からようやくまとまった休暇をもらい、リフレッシュしようと山奥にあるG県の旅館へ向かっていた。 Iさんが旅館に到着したのは昼過ぎ。 周囲を高い山々に囲まれたその旅館は古びた木造建築で、どこか懐かしい雰囲気が漂っていた。 Iさん以外に他に客はいないようで、まるで時間が止まったかのように静まり返っていた。 早速荷物を部屋に置き、Iさんは周辺の山を散策した。
私が何年か前に体験した話。 その日は秋の終わり頃で、深夜の仕事帰りにいつもの道を歩いていた。 街灯がポツポツと灯る静かな夜道、帰り道にある家はほとんど電気が消えている。 公園に差し掛かった時、何気なく公園を見ていると、視界に入ったブランコが音を立てて揺れている。 「キィー…キィー…」 こんな深夜に誰がいるんだろう?
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大学生のMさんが住む築十年ほどのアパートは、都心へのアクセスも良く、静かな住宅街の中にあった。 隣の部屋に新しい住人が引っ越してきたのは、梅雨が明けたばかりの蒸し暑い日のことだった。 挨拶に来たのは痩せぎすで、どこか陰のある雰囲気の男性だった。 名前は確か、Sさんと言ったはずだ。 Sさんはとても物静かで、Mさんが生活音に気を遣う必要がないほど、物音を立てることがなかった。
これは、とある夫婦、夫のKさんと妻のYさんが経験した話。 都会の喧騒から離れ、少し古いが趣のある一軒家に引っ越してきた二人は、新しい生活を楽しみにしていた。 しかし、この家には一つだけ奇妙な点があった。 それは家の奥まった場所にある、決して開かない一室の存在だった。 管理人の人も「ずっと開かずの間だった」とだけ説明し、特に気にすることもなかったため、二人は特に深く考えることもなく、その部屋を「開かずのドア」と呼んで放置していた。 しかし、引っ越して数週間が経ったある夜のことだった。
これはとある社会人のKさんから聞いた話。 Kさんは、最近引っ越したばかりのアパートに住んでいた。 築年数はそれなりに経っていたが、立地も良く、何より家賃が手頃だったため、すぐに決めたのだ。 窓からは小さな公園が見え、日当たりも良く、Kさんは新生活に期待を膨らませていた。 引っ越してきて数日経った頃、Kさんは夜中にふと目が覚めた。 時計を見ると午前3時。
これは、Sさんという方が学生だった頃の話。 Sさんは大学で歴史学を専攻していた。 特に興味があったのは、郷土史。 地域の小さな図書館に通い、古い資料を読み漁るのが日課だった。 その図書館は町の中心部からは少し離れた、ひっそりとした場所にあった。 建物自体も古く、天井が高く、木製の書架がずらりと並び独特の埃っぽい匂いがした。 訪れる人もまばらで、静寂が常にその場所を支配していた。
夜勤のBさんは、いつものように仮眠を取るために休憩室へ向かったのだが、4つあるのベッドがすべて使用中だった。 仕方なく、誰かが起きてくるまで仕事を片付けることにした。 しばらくすると、3人の同僚が起きてきてBさんに声をかけた。 「あれ?Bさん、まだ仮眠取ってないんですか?」 Bさんは、仮眠室のベッドが4つ埋まっていたから使えなかったと説明した。 すると同僚たちは不思議そうな顔で言う。 「廊下側が1つ空いてたじゃないですか」 「そんなはずはない、確かに4つ埋まってたよ」
ある年の夏、Kさんはいつもの地方の無人駅のホームで、最終電車を待っていた。 残業で遅くなってしまい、疲れた体をひきずって辿り着いたこの駅には、最終の到着を待つ乗客はKさん一人だけだった。 深夜の駅のホームは、街灯の明かりがぼんやりと照らすだけで、物音ひとつしない。 普段なら虫の鳴き声がうるさいのだが、この日は虫の声すら聞こえず、ただただ静寂がKさんを包んでいた。 その時、背後のベンチから「きしり」という小さな音が聞こえた。 誰かが腰かけたような、そんな音だった。
今回この話は2つのバージョンを用意しましたので、お好きな方をどうぞ。 1つ目 Iさんは大学の登山サークルに所属していて、その日は仲間たちと連れ立って、少し険しい山を訪れていた。 新緑が眩しい季節で、鳥のさえずりが心地よく響く、ごく普通の登山になるはずだった。 しかし、途中で道を間違えてしまったのか、Iさんたちはいつの間にか、地図には載っていない谷間に迷い込んでいた。
Sさんは学生の頃から登山が趣味で、社会人になってからも週末になると、一人で山へ出かけることが多かった。 その日もいつものように単独登山を楽しんでいたのだが、予報にない悪天候に見舞われ、急遽、山中の避難小屋に泊まることになった。 小屋は古く、軋む音が不気味に響く。 Sさんは持参した食料を広げ、ラジオで天気予報を聞いた。 夜遅くになるとさらに荒れるらしい。 不安を覚えながらも、疲労からすぐに眠りについた。 深夜、ガタガタと窓が揺れる音で目が覚めた。
Nさんは、数年前から登山に没頭している。 普段から人の少ない、整備されすぎていない登山道を好んで歩く。 その日も、彼は地図には載っていないような古い山道を、気ままに探索していた。 鳥の声だけが響く静かな山の中、踏み固められた道は徐々に細くなり、やがて獣道へと変わっていった。 Nさんはそういった道を進むのが好きだった。 未知の風景に出会える期待感が、彼の好奇心を刺激する。 しばらく獣道を分け入って進むと、ふと、道の脇に不自然な空間があることに気がついた。
ある晴れた週末の午後、Yさんは小学生になる娘を連れて、山のふもとにある森林公園を訪れていた。 都会の騒がしい場所と違い、休日でも人がまばらで、静かに過ごしたい家族にはうってつけだった。 Yさんの目的は、娘がネットで見て興味を持った、園内奥にある木製遊具だった。 木製の滑り台やジャングルジムでしばらく遊んだ後、娘はふと、その奥にひっそりと佇むブランコを見つけた。 それは古びた木製のもので、使い込まれた座面はすっかり色褪せ、鎖は錆びついていた。
Mさんたち大学生グループは、休日を利用して近場の山に登山に来ていた。 新緑が眩しい季節で、道中も賑やかに談笑しながら、ゆっくりとしたペースで山を登っていく。 ちょうど昼食を終え、もう少しで頂上というあたりで、小さな観光展望台に立ち寄ることにした。 展望台は、山の景色を一望できる開けた場所にあり、頂上付近の少し手前に位置する。 小さな東屋が建てられ、中には木製の古びた望遠鏡と、休憩用のベンチがいくつか設置されていた。 普段なら観光客で賑わう場所だが、その日はあいにくの曇り空。 人もまばらでひっそりとしていた。 遠くの景色も霞んで見え、少し肌寒い風が吹き抜けていく。
夏も終わりに差し掛かった頃、Hさんは山の中腹で野営の準備を進めていた。 日はすでに傾き、周囲は急速に薄暗さを増していく。 湿った空気が肌にまとわりつき、あたりには濃い霧が立ち込め始めていた。 視界は悪く、わずか数メートル先も見通せないほどだ。 そんな中、Hさんの視界の先にぽつんと白い塊が浮かび上がった。 目を凝らすと、それはどうやら真っ白なテントのようだった。 こんな高地に他の登山者がいるとは珍しい。 Hさんは訝しく思いながらも、近くに誰かがいることにわずかな安堵を覚えた。 登山仲間だろうし、挨拶をしに行こうかな…と、Hさんは白いテントへと足を進めた。
Kさんが友人たちと5人でグループキャンプに来ていたのは、夏の終わりのことだった。 山奥のキャンプ場は、昼間は賑やかだったが、夜になると虫の鳴き声だけになる。 5人は焚き火を囲み、酒を飲みながら談笑していた。 持参した一眼レフで、キャンプの思い出にと写真を撮り始めたのは、友人のTさんだった。 焚き火を背に4人全員で肩を組み、笑顔でレンズを見た。 「はい、チーズ!」 Tさんがシャッターを切る。 すぐに撮れた写真を確認すると、妙な違和感があった。
Mさんが友人たちと3人でキャンプに来たのは、少し肌寒くなってきた秋の終わりだった。 予約していたキャンプ場は、平日ということもあってかほとんど人がいない。 それがまた焚き火の暖かさを一層心地よく感じさせた。 夜も更け、3人はパチパチと音を立てる焚き火を囲んで談笑していた。 薪が燃える音と、時折聞こえる虫の声だけが静寂を破る。 そんな中、ふとMさんの視線が林の奥に向けられた。
Tさんは、都心に建つ複合施設の、広大な地下駐車場の監視を担当していた。 深夜の監視室はいつも静まり返り、無数のモニターだけが規則的な光を放っている。 Tさんの仕事は、そのモニターに映し出される映像を監視し、異常があれば対処することだった。 その夜も、いつもと変わらぬ深夜勤務についていた。 時刻は深夜3時を少し回った頃。 Tさんはいつものようにモニターの映像を順に確認していた。 その時、ふと、あるモニターにTさんの視線が釘付けになった。 そこには、映っているはずのない通路が映し出されていたのだ。
Sさんは、都心にそびえ立つ高層オフィスビルで夜間勤務をしていた。 深夜のビルはほとんどのテナントが閉まり、人の気配はまばらになる。 Sさんの仕事は、そんな静かなビルで設備監視や巡回を行うことだった。 その夜も、いつもと変わらぬルーティンをこなしていた。 時刻は深夜1時を少し過ぎた頃。 監視室のモニターを眺めていたSさんの目に、奇妙な異変が飛び込んできた。 誰もいないはずのフロアを示す表示板が、突然、パッと明るくなったのだ。 そしてそれと同時に、1階に停止していたエレベーターが、ゆっくりと上昇を始めた。
警備員のKさんは、深夜のオフィスビルの巡回が日課だった。 人気のない深夜のビルは、普段は静まり返っている。 しかしここ最近、Kさんは奇妙な現象に気づいていた。 それは深夜の巡回中、決まって3階東側の非常灯だけが素早く点滅している時があることだった。 Kさんは最初、単なる球切れか、電気系統の不具合だろうと考えた。 報告しようとも思ったが、よくよく観察すると、その点滅は深夜の2時過ぎにしか起こらず、他の時間には何の異常も見られないのだ。 一度だけならまだしも、それが不定期に、しかし決まって深夜2時過ぎにだけ起こることに、Kさんは徐々に不審を抱き始めた。
Tさんは長距離運転手として夜間の配送中、山道に入り込んだ。 深夜の山道は普段から慣れていたが、その日はいつも通るルートとは少し違う道を選んでいた。 午前2時を過ぎた頃、Tさんの目に見慣れない「道の駅」が飛び込んできた。 疲れもたまっていたTさんは、休憩がてら立ち寄ることにする。 駐車場には、他に2台の大型トラックが停まっていた。 電気が煌々とつき、トイレも清潔に保たれているようだった。 深夜にもかかわらず、人の気配があることにTさんはどこか安心感を覚えた。
長距離トラック運転手のYさんは、全国各地を走り回る毎日を送っていた。 彼の仕事は、深夜の高速道路をひたすら走り続けること。 特にある山中の長いトンネルは、毎日のように通過する、もはや見慣れた景色となっていた。 その日は前日の寝不足がたたって、特に眠気が強かった。 眠気を覚ますためのラジオも、いつの間にか切れてしまっている。 静まり返ったトラックの車内には、エンジンの低い唸り声だけが響いていた。
オフィスビルの夜間清掃員として働くSさんは、いつものように淡々と業務をこなしていた。 深夜のオフィスは人けがなく、誰もいないフロアを巡るSさんの足音は、妙に大きく聞こえた。 日報を確認すると、「301会議室:未清掃」という文字が目に飛び込んできた。 Sさんは首を傾げる。 301会議室は通常、清掃リストに含まれていないはずだ。 というのも、そこは何年も前から閉鎖されており、普段は鍵もかけられ、清掃の必要がないとされていたからだ。
この話はとある寂れた港町にある、海のすぐ近くに佇む廃墟ホテルでの話。 そのホテルは、かつては多くの観光客で賑わっていたそうだが、今は見る影もなく朽ち果て、地元の人間ですら近寄らないと言う。 そんな誰も寄り付かなくなったホテルにまつわる、恐ろしい噂話がある。 それはこのホテルがまだ営業していた頃、宿泊客の一人が謎の失踪を遂げてからというもの、13号室にだけは決して入ってはならない…と、ホテルの従業員の間で囁かれるようになったというのだ。
廃墟巡りをしていた人が廃墟で見つけた日記。 7月1日 今日はこの村に引っ越してきた記念すべき日だ。 自然に囲まれた静かな場所で、都会の喧騒を離れて穏やかに暮らしていけると思うと、今から楽しみで仕方ない。 7月15日 この村の人々はどこかよそよそしい。 挨拶をしても目を合わせようとしないし、何かを隠しているような、そんな不気味さを感じる。
日本各地に存在する「いわくつきのトンネル」。 山の中にある○○トンネルもまた、そんな曰く付きスポットとして地元では有名な場所だった。 私が耳にしたのは、このトンネルで起こる奇妙な現象についてだった。 それは「赤いヘッドライトの車」の怪異。 「深夜、あのトンネルを走っていると、前から赤いヘッドライトの車が対向車線にはみ出してくるんだ。 で、ヘッドライトの光が強すぎて車種まではよく分からないんだけど、どうにも車の種類が古臭い、っていうか今時見ないような型の車なんだよ」
ある地方の山奥に一つの古びたトンネルがあった。 そのトンネルは長い間使われておらず、昼間でも薄暗い雰囲気を漂わせていて、地元の人々の間では、このトンネルにまつわる恐ろしい噂が広まっていた。 その噂とは、夜になると「白い少女」が現れるというものだった。 その少女は、かつてトンネル近くの村でトラブルにあい命を落とし、その怨念がトンネルに宿っていると言われていた。
深夜のコンビニで働くIさんは、いつものように夜勤に入っていた。 町外れにあるそのコンビニは、夜になると閑散として客足も途絶えがちだ。 時計の針が午前2時を指していた頃、店内はしんと静まり返っていた。 「休憩室に行こうかな…」 Iさんはレジのカウンターに肘をついて、うっすらとため息をついた。 その時だった。 自動ドアが開く音がし、冷たい夜風が一瞬店内に吹き込んだ。
山奥深くで炭焼きを生業とするFさんがいた。 炭焼きは孤独な作業。日が昇ると山に入り、窯の火を見守りながら日が暮れるまでただひたすらに時を過ごす。 ある年の夏の終わり、炭焼き小屋で一晩を明かしていたFさんは奇妙な物音で目を覚ました。 それは小屋の戸をゆっくりと叩くような音だった。 何事かと耳を澄ませていると、戸を叩く音は徐々に速さを増し、まるで何かが中に入ろうとしているかのようだった。 不安を感じ、意を決して小屋の戸を開けたが外には何もいなかった。 Fさんは首をかしげながらも再び戸を閉め、寝床に戻ろうとしたその時、背後からかすかな気配を感じた。 振り返ると小屋の中に一匹の奇妙な生き物がいた。 見…
※虫が苦手な方はこの話は読まない方がいいです。 夏の暑さが本格的になる少し前、古い一軒家で奇妙な出来事が起こった。 雨が降る中、OLのSさんが夜遅くに帰宅すると、玄関のドアの前に見慣れないものが置かれていることに気づいた。 直径10センチほどの泥でできた小さな球体だった。
久しぶりに大学時代の友人たちと再会し、登山をした日の事。 F、Y、Eの3人は、それぞれ社会人となり、忙しい日々を送っていたが、この日は特別な計画があった。 大学時代によく行っていた山に登るため、朝方に駅で待ち合わせしていた。 「久しぶりだな、みんな!」 Fが笑顔で声をかけると、YとEも嬉しそうに頷いた。 彼らは久しぶりの再会に興奮しながら電車とバスを乗り継ぎ、目的の山へと向かった。
東京より山側にある、とある町でのこと。 そこに一人暮らしをしていた大学生のAさんは、数日前から奇妙な現象に悩まされていた。 それは夜中の2時になると、決まって天井裏から「トトトトト」という足音のような音が聞こえてくるというものだった。 最初はネズミでもいるのかと思い、駆除剤を置いたり業者に依頼したりもしたが、効果はなかった。 それどころか「トトトトト」という音は日に日に大きく、そして不規則になっていった。
あれは確か、私がまだ駆け出しの怪談師だった頃の話でございます。 ある山奥の村に伝わる「赤い着物」の怪談を採集しに行った時のことでした。 その村は、古くから「赤い着物を着た女に出会ったら、決して目を合わせてはならない」という言い伝えがあるそうでして、興味津々の私は早速村人たちに話を聞いて回りました。 しかし、話を聞けば聞くほどその「赤い着物」の女の正体は謎に包まれ、得られる情報は 「夜中に山道で赤い着物を着た女を見た」 「女の顔は影になっていて見えなかった」 「女を見た者はその後、原因不明の熱病で死んでしまった」 といった断片的なものばかり…。
夏手前の蒸し暑い夜、大学の友人グループはKの家に集まっていた。 メンバーはK、M、Rの三人。彼らは怪談や都市伝説に興味を持っており、この夜も新たな冒険を企てていた。 「今日は少し変わった場所に行こうか」 とKが切り出した。 「川辺にある幽霊灯の話、知ってるか?」
梅雨が明けたばかりの初夏の夕方、大学生の3人組、M、T、Kは、ネットで見つけた廃村の墓地へと向かっていた。 Mの運転する車で、彼らは廃村があるという山奥へと進んでいった。 「本当にここに廃村があるのか?」 Tが後部座席から前の二人に問いかける。 「ああ、ネットで見た情報だとこの先にあるらしい。気味悪いけど興味あるだろ?」 Kがスマホの地図を見ながら答えた。 「まあな…肝試しにはうってつけだな。」 Mは運転しながら笑った。
梅雨の晴れ間、久しぶりに強い日差しが降り注いだ日のこと。 一人暮らしの女性Sさんが、引っ越しをしようと荷造りをしていた。 段ボールに荷物を詰め込みガムテープで封をしていると、ふと、部屋の奥に何か黒い影のようなものが見えた気がした。 「なんだろう?」 しかし家具の隙間から差し込む光の関係の錯覚だろうと思い、Sさんは気にせず作業を続けた。 箱詰めもあらかた片付いた時、ふと先程の黒い影が気になり壁に目をやった。 「な、何あれ?」 その影の正体に気づいた時、Sさんの顔から血の気が引いた。 それは奥の壁一面に、びっしりと描かれた無数の目だった。 黒く塗りつぶされたような楕円形の一つ一つが、まるでこちらを…
梅雨明けが待ち遠しい、ある蒸し暑い日の午後。 高校の美術部の生徒たちは、日没後の風景を描くため校舎の屋上に来ていた。 「先生、もうちょっとで沈みますね」 「ああ、茜色に染まる空をよく観察して描くんだぞ」 教師の言葉に、生徒たちは一斉にキャンバスに向き直る。 しかし、その中でひとりの女子生徒だけが、じっと西の空を見つめていた。 「先生……あれ、何ですか?」
梅雨の晴れ間、むしむしと暑い日が続いていた。 学校では教室の窓を開け放して授業を受けていたが、生ぬるい風は熱気を運んでくるばかりで、生徒たちの集中力は途切れがちだった。 午後の授業中、黒板に奇妙な影が映っていることに気づいたのは、窓際から少し離れた席に座っていた男子生徒だった。 「あれ?」 男子生徒は目を凝らした。 それは、まるで長い髪の女が立っているような影だった。
今からお話する怪談の登場人物をご紹介させていただきます。 語り部である「私、H」と、高校時代からの友人であるK、そしてS、Yの4人で肝試しに行った時の出来事でございます。 舞台は県外にあるYの実家の近くにある、通称「幽霊トンネル」と呼ばれる場所。 そこで私たちが目にしたもの、体験したものとは。 一体全体どんな恐怖が待ち受けていたのか。 それでは皆様、心の準備はよろしいでしょうか?
雨の夜、都会の一角にある古びた公園。 そこには昔から誰も使わない古い木造の休憩所がり、雨が降るとその休憩所には不気味な噂があった。 ある夜、仕事が遅くなったサラリーマンのケンジは終バスを逃してしまい、仕方なく歩いて帰ることにした。 途中で雨が強くなってきてしまい、濡れるのを避けるために公園にある休憩所で雨宿りをすることにした。 休憩所に近づくと、中には一人の女性が座っていた。
とある都市部の下町での話。 狭い路地裏が多く残るその町で、夜な夜な奇妙な噂が流れ始めた。 「おい、聞いたか?あの路地裏の街灯の下にある水たまりで、奇妙な顔を見たってやつがいたらしいぜ…」 噂の発端は、仕事帰りのサラリーマンだった。 彼はいつものように薄暗い路地裏を歩いて帰宅していた。 雨が降った後で、路地裏にはいくつもの水たまりができていた。
子供というのは感受性が豊かで、純粋な心の持ち主であるが故に、時として大人には見えない「何か」を見てしまうことがあると言われている。 そして、子供たちが日常的に利用する通学路。 そこは子供たちの無邪気な笑顔と恐怖が隣り合わせに存在する、不思議な空間と言えるだろう。 舞台は関東の山の方、とあるのどかな田舎町。 そこに住む小学3年生のユウタ君は、雨が降ると決まっていつもの通学路の景色がガラリと変わって見えてしまう奇妙な現象に悩んでいた。 ユウタ君の通学路は田んぼの脇を通る一本道。 普段は太陽の光を浴びて緑色に輝く稲穂が風になびく美しい風景が広がっている。 しかし、雨が降るとその風景は一変する。
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