夢の世を母生きわれは葱作る 不思議だ……。なんて明瞭に喋るのだろう。一人で幻と喋っているとき、寝
床擦れは耳にもありや穴惑 ある夜、耳が痛いと言う。脊椎間狭窄症の後遺症で腕や足の痛みを訴えること
父退院帰路は葉桜ばかりなり これを退院というのだろうか。やせ衰え、立つこともできず、ことばもほと
何者といふべきものになれぬまま かはたれのわれ たそかれのわれ 「かはたれ」「たそかれ」。どちら
死してより父とは言葉ひこばゆる 父はことばの人であったと思う。若い頃から仕事にも家事にも本当にま
問うておき話を聞かず餅食ふか 母は以前ほど喋らなくなった。ことばが出てこないせいもあるのだろうが
母の便摘まんで出せる秋日かな 出た便の処理はまだいい。下痢便で大惨事ということもないわけではない
母に摘む今年の苺匂ひたる 苺は秋に苗を植えて、翌年の春に収穫する。一度苗を買うと、そこから蔓(ラ
今日はぼくの誕生日だよと母に言へば掛けてくれたことばは「おはよう」 母の語彙が痩せていく。それに
春の星にじめる人を母とおもふ 努力をする母を見た記憶はない。口癖は「しんどいよ。せんよ」だった。
「ブログリーダー」を活用して、@haikaigoさんをフォローしませんか?