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日々これ好日 https://shirane3193.hatenablog.com/

57歳で早期退職。再就職研修中に脳腫瘍・悪性リンパ腫に罹患。治療終了して自分を取り囲む総てのものの見方が変わっていた。普通の日々の中に喜びがある。スローでストレスのない生活をしていこう、と考えている。そんな日々で思う事を書いています。

杜幸
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2023/03/09

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  • こんな街か

    「あの、すみません。駅の入り口はどちらでしょうか?」もうそこは駅を構成するビル群の一つなのだが肝心の改札が分からない。ビルは出来たてでその周りには幾つもの真新しい高層ビルと大型クレーンが空に向かって伸びていくのだ。これから仙台に帰るので東京駅に行きたい。しかし肝心の駅が分からない。大きな荷物を降ろして彼女は空を見上げていた。 僕も教えたい。しかし困ったことに肝心の自分もここが何処なのかが分からないのだった。こんなビルはあの頃にはなかった。この辺りは雑居ビルの並ぶやや疲れた路地裏だったのに。ぐるりと回廊を歩いて改札前に出た。そこまで彼女を送リ、僕は首都高速のガード下に出てようやく肩を降ろした。金…

  • ワンダーランド

    ビル・エヴァンスは好きだ。時にしっとりと聞く。かのマイルス・ディヴィスもジョン・コルトレインも数枚しか聞いたことが無い。ジャズには余りのめり込めなかった自分だがピアノトリオは好きだ。マッコイ・タイナー、ドン・フリードマンなどミニマムな楽器の作り出す空間とインタープレイが素敵だ。そんな中にエヴァンスのピアノは別格に素晴らしく思う。ニューヨークのジャズクラブ、ビレッジ・ヴェンガードで1961年の日曜日に録音されたレコードは名盤だろう。その一曲にあるアリス・イン・ワンダーランド。そう、不思議の国のアリス。これは彼の代表曲と言われるワルツ・フォー・デビィと並んでも良い演奏ではないか。スコット・ラファロ…

  • 二千円で悩まない

    宅急便が届いた。少し待ちかねていた。頼んだものにくらべて大きな箱。壊れ物ではないけれど慎重に扱った方が良いのは確かだった。 10ホールハモニカ。穴が十個の手のひらサイズのハモニカがある。ブルースハープとも呼ばれる。もともと一人での山歩きでテントを張り終えてからそのサイトで拭いたら気持ちよかろうと買った。フランクフルトの空港の土産物店だった。吹き方も知らぬが高くはないし土産のつもりで買ってみようと思ったのだろう。ホーナーというブランドはドイツの楽器メーカーでこの手の楽器では有名と知ったのは後だった。 実際にこれをテントの横で吹いたことは一度きりではなかったか。そこは尾瀬であり僕はザックを背負いテ…

  • 永久機関

    自分は全くの文系人間。ロジカルよりもエモーショナル。難解な方程式を解いて喜ぶよりも本を開き夢想の世界に遊び、話に涙するほうが好きだった。しかし電子工作には小学生から、アマチュア無線には中学生から興味を持った。確かに自然科学に神秘を感じていたのかもしれない。だからだろうか、夢中になってしまった。オランダの画家・エッシャーのだまし絵だ。誰もが知っているだろう、あの有名な「永遠に水が流れる水路」の絵を。ポンプで吸い上げない限り水は上には登らない。しかしその絵では水路の水が水車を通り上がっていき滝となりそれは下に落ちて水車を回し再び上がる。空間のどこかが歪んでいるのか目の錯覚を利用しているのか、それは…

  • 散歩の友

    仕事のない日はだらけてしまう。朝8時迄寝ることも多い。疲れがたまっているのかいくらでも寝られてしまう。毎晩21時には散歩して犬のフクちゃんは排泄をする。我慢は苦痛に思うが彼は翌朝やはり9時ごろまでは彼は排泄をしない。ドッグフードの朝食を終えると大人しくベッドの上で寝ているだけだ。しかしもう辛かろうと忖度して彼を散歩に連れ出す。季節が良くなったので自分達は近くの湧き水の湧く森や神社に行く。 五月のこの地はちょうど水田が綺麗だ。田植えが終わったばかりなのだから。時にはそんなあぜ道も散歩する。ここでおしっこをするわけにもいかないから排泄はあぜ道の前に済ませてもらうだろう。勿論彼に排泄の強要は出来ない…

  • 人違い

    図書館で楽しそうな本が借りられた。そしてCD欄には興味をそそるものがあった。ニコラス・アーノンクールそしてトン・コープマン。共にモーツァルトのシンフォニー。若き頃の作品は珍しい。そして後期三部作か。古楽器でのピリオド奏法の解釈のモーツァルトの演奏は聞いたことが無い。どんなに新鮮に思えるだろうか。もう一枚はマーラーの交響曲八番があった。マーラーの曲は神経質で情緒不安定に思え自分は苦手だった。一曲として好きな物がない。しかしこれは大合唱団がつくシンフォニーだ。合唱曲が好きなのだから一度は聞かねば。ゲオルグ・ショルティとシカゴ交響楽団が組んだ録音か。ならば問題ないだろう。 ドラッグストアに立ち寄った…

  • 図書の旅50 1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター

    ●1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター 五十嵐貴久 双葉社2007年 本を読んで泣く事など忘れていた。しかしやられた。涙が止まらなかった。 高校受験に失敗した中学浪人の息子をもつ主婦。男運がなく離婚を繰り返しマルチに引っかかり借金を抱える独身女。万引き常習犯の主婦。そして自称プロミュージシャンあがりという訳あり風の酒まみれの女。とある縁で四十歳を超えた彼女たちが集まる。そして素人おばさんバンドを結成し、息子が受験を目指す高校のチャリティコンサートでとうとうやってしまう。スモーク・オン・ザ・ウォーターを演奏するのだった。ライブが終わった。拍手の中に彼女たちが感じたものは何だったのだろう。閉…

  • 何でもできる記念日

    ゴーグルの向こうに壁が近づいてくる。自分は今迄この辺りで息が苦しくなり、また足がつって立ってしまったのだ。しかし今日は少しリラックスして体を動かしてきた。するとここまで来られた。壁が見えた時に考えた。あと三回息継ぎをすればよいだけだと。再び頭を沈めて手のひらを外に向けて、足の裏をやはり九十度立てて動かしてみた。あと二回だ。あと一回で解放される・・・。 必死だった。しかしここで足を着いたらすべてが水泡に帰する。どうなってもいいから掴むのだ。すると右手が確かに捉えた。タイルの壁面だった。 満願成就。思わず手を挙げた。やった!と。還暦過ぎのガッツポーズだった。そう、生まれて初めて平泳ぎで泳げた。25…

  • 友人の個展

    個展と言う言葉には憧れる。まずはこれが頭に浮かぶ。 ♪拝啓 いまはどんな絵 仕上げていますか 個展の案内が 嬉しかったの 美術学校の学生時代を振り返ったであろう松任谷由実はそう唄っていたっけ。青春の苦さを書いたであろうやや切ないメロディが浮かんでくる。そこは多分玉川上水だろう。個展の案内を出してきたのは昔の恋人か、片思いに終わった友人か。そんな想像も楽しい。 個展をやるからね、そう友人は葉書を手渡してくれたのだった。自分より一回り以上年上の彼はこの地に住む山の友達だった。もう十五年以上前に都会からこの地に移住してきた。なかなかの多趣味で、ご夫婦で生活を楽しまれている。そんなライフスタイルに自分…

  • 図書の旅49 光の台地

    ●光の台地 辻邦生 毎日新聞社 1996年 本について何かを語る時にはやはり自分の好きな作家が冒頭に来る。これだけは仕方がない。それだけ多くのことを、そして本と言う広い海を旅することを教えてくれたのだから。自分の好きな作家を挙げるならばやはり北杜夫になってしまう。彼のお陰で信州の松本という街に憧れ、自分の見知らぬ世界を旅することへの憧れを知った。彼の書いた「どくとるマンボウ航海記」「どくとるマンボウ青春記」を開くならある人物の名前が出てくる。旧制高校のバンカラで破天荒な寮で知り合い生涯の交流を持った。文中ではTという名前で出てくる。見聞を広めようと船医として水産庁の調査船に乗った旅を書いた航海…

  • 幸せのメカ

    そこは高速道路のインターを降りてすぐのコンビニだった。キャンディレッドの世田谷ナンバーの大きなバイクが停まっていた。お、素敵なメカだ。僕はオーナーと話したくて仕方なかったが彼は店の中だった。トイレを済ましコーヒーを買った。コンビニのコーヒーは最近とみに味が良い。自分のような味音痴には手軽でありがたい。「120円の贅沢」と称してよく利用する。これから横浜に向かうのだから二時間半のドライブか。贅沢をして美味い珈琲を頂こう。濃いめを選んでカップに入れた。 バイクのオーナーがヘルメットを被るところだった。僕は彼を見て考えた。話に応じるだろうかと。しかしこの言葉なら皆が喜んで応じるだろう、そんな魔法の挨…

  • チャットGPTに聞けば?

    都会の駅だった。僕はあとニ分後にやってくる快速南浦和行きを捕まえるべく階段を慌てて降りていた。転がり落ちぬようもちろんしっかり手すりをつかんで。階段で行き交ったお母さんに小学生が話していた。「そんなのチャットGPTを使えば?」と。 とうとう来たか、そう思った。人工知能と言っても自分はそれがなんだかわからないし動作原理もわからない。多分いや確実にそれを教わっても理解しない。ただ一度試してみた。何かの単語をベースに短文を書いてもらったのかもしれない。たちどころに何百の文字がモニターを流れた。なんだろうこれは。不気味になり画面を閉じた。 キーワードを入れれば相応の文章もイラストも描いてくれるらしい。…

  • 定期便

    何も新しい話でもないのだがここのところほぼ三日に一日はやってくる。あたかも離島にやってくる定期便の船や旅客機の様だ。 そこはパプアニューギニアのニューブリテン島。東の端にラバウルと言う街がある。西には大きなニューギニア島。その南にはポート・モレスビーという街がある。太平洋戦争中はそこには連合軍の基地があった。♪さらばラバウルよ、又来る日ぃまで…。そんなラバウル小唄で知られる日本海軍ラバウル航空隊の基地からではポートモレスビーは遠かった。そこでポートモレスビーの北に前進基地を日本軍は作る。ラエという小さな滑走路一本の基地だった。両者の間にはスタンレー山脈という4000m級の山脈があり陸路での攻撃…

  • 二つの春

    春、と題のついた曲は何だろう。小学生の時に覚えた曲がある。メンデルスゾーンの作った無言歌集にある優美なメロディだろう。確か下校時間にかかっていた。優しいのに憂鬱さがあり、脆い旋律にははかなさを感じる曲だ。バイオリンの独奏もあればピアノもあったかもしれない。ビバルディの「四季」にも春はある。しかしクラシック音楽の代名詞のようによく流れるこの曲は自分にはあまり心地よくない。大衆化されたものは好きではないという好くない自分の癖だろう。もう一曲浮かぶ。これが春と名がつく中で一番好きだ。シューマンの交響曲第一番「春」。これは四曲あるシューマンのシンフォニーで一番聞きやすいのではないだろうか。シューマンは…

  • 似非サイクリスト

    寒冷地にはサイクリストをまず見ないはずだ。なんといっても降雪の後が凍るから。しかし高校生とはある意味怖れ知らずでブロックタイヤのマウンテンバイクで通学している。それしか交通手段がないともいえるかもしれないが、それにしても転ばぬかはたで見て不安にもなる。加えて風だ。北から西から乾いた風が吹いてくる。そんな自分は冬の間はサイクリングを閉業していた。転倒も怖いがそもそも寒い。もう十歳、いや二十歳若ければそんな元気もあったかもしれない。 すっかり春景色になったのでリビングに置いてあるランドナーを外に出した。埃を払いチェーンに油をさした。やはり空気は抜けている。このランドナーを作ったのはもう二十年ほど前…

  • 先輩とフレッシャーズ

    四月は瞬く間に通り過ぎた。我が家に来るホトトギスは今よ盛りと良く啼いている。それはそうだろう、暦は五月になったのだから。それもすでに黄金連休も終わってしまった。会社によっては十日を越える休みがあったのかもしれない。だれもが皆会社生活に戻っているのだろうか。 フレッシャーズ向けのスーツを販売する量販店のTVコマーシャルもよく見かけていたが流石にこの季節は見る事もない。もし自分がまだ首都圏で生活しているのなら沢山の真新しいスーツ姿の若者を電車の中で見ることがあるだろう。自分の住んでいる高原ではスーツを着て仕事をする人もいない。県庁の街まで行けばそんなビジネスマン然とした若い男女を見ることが出来るの…

  • 月夜

    居酒屋などせわしい駅前にゴマンとあった。しかし勤めを終えて帰宅するのだからそこで足止めを食らうこともなかった。時には勤務先の駅の周りで呑んでもう出来上がっていることもあった。が駅前の呑み屋には何度か娘と二人で行ったことがある。こんなとこもあった。飲みに行こうよ、そう僕は娘を誘った。すると彼女も偶然!と言った。誘おうとしていたという。 高原の地に引っ越してきたのは五月だった。住み慣れた横浜を離れ新たに建てた家だ。転居は脳外科の病棟でひらめいた。脳腫瘍を取り朦朧としていた時に甲斐駒ケ岳を前にしたこの地が浮かんだ。頭のガンだ。余命がどれほどか。会社は早期退職をしていた。生活は何とかなるだろう。ならば…

  • 腕時計

    腕時計には思い出がある。高校生の時にデザインに憧れて親にねだったセイコーのデジタル。勤務二十五年の会社からの記念贈答品であるセイコー。死んだ叔父の葬儀返礼品のシチズン。ヨーロッパでの七年間の勤務を終え帰国の際に記念にとパリのラファイエットへ。そこで買った憧れのスイス時計は自動巻のティソ。出張帰りの香港で三度迷って買ったスケルトンの自動巻セイコー。父親の遺品のシチズン。海外出張用にと家内が買った世界時計機能の付いた電波時計のシチズン。そして登山用のカシオ。どれも現役で、腕に巻くとそれを手にした時の気持ちを思い出す。嬉しかったり哀しかったり。時を刻む道具だからさもありなんだろう。そんな腕時計もこれ…

  • 予定管理

    システム手帳というものが世に出たのは自分が新入社員の頃だったか。いやその前からあったかもしれない。銀座の伊東屋あたりで見かけたのかもしれない。 同期入社の理系の男だった。A5サイズの革製の手帳を彼は持っていた。会社員になると予定が増える。来客、出張。、そしてまたプライベートも約束を入れてしまう。仕事よりもプライベート。僕は彼女との約束をたくさん覚える必要があった。会社が支給してくれる文庫本サイズの手帳もあった。そこに予定を書いていたが何分こちらはガサツで走り書きばかり。ぱっと見て分かる予定表ではなかった。その点理系の彼はしっかりと丁寧に予定を書いていた。そのノートはリング式で好きなところに好き…

  • 三つの実力者

    社会科で習ったように思う。確か日本神話に書かれていたのだろうか。皇室に伝わる三つの宝物を三種の神器と言うと。鏡、まが玉、剣だ。日本三景を初めとして日本には「三つの何某」が多いがその謂れはこれか。戦後史ではこう習う。洗濯機、冷蔵庫、掃除機が家電製品での三種の神器であると。1960年代にこの三つの電化製品種類は世に出てそれは家庭の主婦の生活を大きく変えたという。WEBを見ればデジタル家電三種の神器というのもあるようだ。デジタルカメラ、DVDレコーダー、薄型テレビらしい。確かにそうだろう。いずれも2000年以降に出現し、アナログカメラ・ビデオテープ、ブラウン管テレビを放逐したから。デジタルの特徴はデ…

  • 肌身離さず

    今はそんな人は見ないだろう。首からお守りをぶら下げた姿など。映画・男はつらいよの寅さんくらいだろうか。が、これがロザリオとなると話は違うだろう。カトリック教徒ならば誰もが首から下げている。住んでいた横浜の街に数棟の大きな公団住宅があった。そこには中国人もインド系の方も居れば中東系やトルコ人もいらしたが特にフィリピンから来た女性が多く住んでいた。近くの公園で数組の親子が遊んでいた。タガログ語だろうか自分にはわからぬ言葉を喋るお母さんの首元に光るものがあった。それはロザリオだった。そうだった、フィリピンはクリスチャンの国だった。ああ、やはり十字架は肌身離せないのだな、とその時思ったのだった。 ミサ…

  • 遊びに来たよ

    仕事をしていた。お客様と一緒に工場見学のツアーだった。すると同僚が言うのだった。「お友達が来ているよ」と。誰だろうか?と頭を捻った。自分がこの職場で働いていることを知っている人は多くない。ましてやフットワークよくここに来るとは?横浜時代の自転車仲間か山仲間か。少なくともアウトドアの好きな彼らなら腰が軽いだろう。バンド仲間かもしれない。リードボーカルの彼女は旦那様と共に昨年も車に乗ってふらりとやって来たから。学生時代の友なら何人か候補がある。やはり昨年遊びに来てくれたから。地元の友人、予期せぬ家族もあるかもしれない。 Aさんですか? Bさんですか? 色々聴いてみたが彼もしっかりと名前を憶えていな…

  • 知らない街

    5月連休がやってきた。高速道路から国道、県道、市道そして脇道までも他県ナンバーで溢れるのだった。さすがに農道には来ないだろうが。 高原はこの何日か知らない街になった。ホームセンターには知人が働いているが前掛けをつけた彼女は汗をぬぐいながら言うのだった。「今日は本当に大変」と。地元民のためのスーパーもドラッグストアも、道の駅も、山の湧き水も他県ナンバーばかり。夕餉の食材を買おうと立ち寄ったら普段は見ない野菜セットや大きなパックの肉もある。そしてバーベキューグリル網や炭、長いトングまで。スーパーはこの一週間はアウトドア用具店に思える。そしてレジには長い列ができて店員さんもてんてこ舞い。連休後半の夜…

  • 甲斐からの山・山スキーの鍋倉山

    ・鍋倉山 長野県飯山市・新潟県妙高市 1289m わずか海抜にして1289メートルの山だ。関東甲州人にとりわかりやすく書けばそれは丹沢で言えば鍋割山と、奥多摩で言えば大岳山と、富士山エリアでいえば山中湖北岸の大平山と、道志・笹子エリアならば大月市北の扇山と、そんな山々と大して変わらぬ標高になってしまう。 そんな山々も冬は積雪を纏うが雪に埋もれることはない。唯一、2014年は例外だった。その2月14日辺りから南関東から甲信越では雪が降り続いた。記録的豪雪と言う事でその一週間後に試しにと山中湖北岸の大平山をスキーに滑り止めシールを付けて登った。一メートル近い積雪があり低い山ながら山スキーを楽しんだ…

  • カワイイ中年・福之記15

    ああ、自分も中年になったな。そう思ったのは四十歳の誕生日だった。少しばかり寂しくややショックでもあった。四十歳などすべてくたびれてしまい、腹が出て息が臭い。そんなただのオヤジだと思っていたのだ。口臭には気を使い仕事中はガムをかんだり息清涼剤カプセルを噛んだりとしていた。しかし腹が出ていることは防げなかった。なにせこの過剰な脂肪には小学生からの歴史があるのだから。 実際四十になって何が変わっただろうか?会社生活では役職が上がったことか。しかし組織と人様を管理し、組織目標を立てて遂行するには今思っても自分では役不足だった。色々悩んだ年代が四十代だった。「四十にして惑わず」とは孔子の言葉だったか。ま…

  • 残照に丹沢

    都心から西に向かう列車に乗った。都心から西に向かう列車とは私鉄以外は東海道線か東海道新幹線か中央線しかない。山梨に住む自分が乗るのは中央線だった。 西日が傾く。それを追うように西に向かう。しかしそれなりの速度で走っていても落ちる太陽に追いつくことは決して出来ない。少しづつ暗くなる。ビルばかりだと思っていた中央線沿いの車窓も気づけばそれは駅の周辺だけで駅間は思ったよりも建物の背が低い。それはそうだ。この辺りは武蔵野なのだから。国木田独歩が歩いたのもこのあたりか。太宰治が愛人とともに自らの終焉の地としてこの辺りを選んだのもたぶん昔ならばわかるように思う。のどかで美しく素朴な田園風景があったことだろ…

  • 憧れ

    車に乗るときはいつも音楽を聴く。クラシックの時も70年代迄のブラックミュージック・ソウルの時もある。今日はロックのフォルダをプレイした。するとあのがむしゃらで直線的で、しかしなぜかノレるスリーピースの音が聞こえてきたのだ。それはギター一本、ベース一本、ドラムス一セット。三人編成はバンドの最低ユニットだろう。歌はギタリストがぶっきらぼうに歌いベースはツボを押さえたハモリを聴かせる。 このバンドに夢中になったのは18歳だった。歯切れ良いリズムのおかげか歌い方なのか英語の歌詞が聞き取りやすい。ロンドンの交通の酷さを揶揄し、若者の考えを理解しない政府、核兵器やフォークランド紛争での厭世観、そんなマーガ…

  • 漏水

    「影のない女」、そんなタイトルを目にした時に何を自分は思ったのだろうか。一体どんな女性だろうかと。きっと美しいのだろうと。美しすぎて光を集め、そこに影はないのだろう。しかしこうも解釈できる。まるでヴェールを被ったように彼女の存在は誰にも気づかれない。しかし一旦ヴェールを脱ぐととても美しい・・。人はこんなふうに二律背反した表現方法を目の前にすると、なぜか惹かれるのだ。 影を失くして行動する。となると潜水艦を思い出す。相手に気づかれることもなく密かに海の下を進む。武器は船を沈める魚雷、今なら加えて大陸間弾道ミサイル。影がないくせにハチの一刺しだ。視界の効かない海底をどうやって行先を見つけるのだろう…

  • 積る塵、生まれるノリ

    何事もそうだろう。若い頃は集中度が高い。勉強にせよ恋愛にせよ驚くべきパワーで燃焼する。燃焼、緊張、弛緩。そんなサイクルを人間は経る。 バンドの練習は月に1回。ひと月は短くもあるが随分と久しぶりに思えた。練習曲の数は十曲か。親しんできたソウルやロックのイディオムとは違う曲に今回は挑んでいる。新しいことは難しいが見知らぬ楽しみをくれる。今までバンドサウンドに加わったことのない楽器も入るし自分もまた新しい楽器にチャレンジする。 月に一度のスタジオでは前回の決め事も忘れてしまう。終わり方はこうしよう、などと話していたのだが、あれ?っとなる。しかしそれでもみんな無理やり合わせてしまうのでそこは共にプレイ…

  • 生みの苦しみ

    自分には姪っ子達がいる。姉の娘達だ。その姉は難病にかかり七年前に六十歳を待たずして他界した。今存命ならば自分の母親も今と違う老後を過ごしていたかもしれぬ。それはきっと母にとっては良い事だっただろう。そんな姉が初めの子を産んでからしばらくして彼女に聞いたことがある。それは丁度妻が妊娠した頃だった。「お産はつらいのか?」と。するとこう言うのだった。「痛いのよとても。大きな本当に大きなうんちが出る時みたいよ。」僕はため息をついた。 数日前に友人と会った。盛大な乾杯をして大きく笑った。そしてちょっと、いやかなり暴飲した。暴飲には暴食が伴う。つまりたくさん飲んでたくさん食べた。さすがに若い頃のような量で…

  • 甲斐からの山 町田八王子市境尾根・草戸山

    ・草戸山 東京都町田市・八王子市 364メートル 2025年4月26日 仲間との山登りで久しぶりに八王子に出かけた。もう引退された会社員時代の上司と、自分達と同じ会社の女性社員との、計四名。上司とは言えいまや上下もない。もちろん人生の先輩として敬意を払っている。何のわだかまりもなくこうして山歩きやその後の飲み会にもご一緒させていただけるのだからありがたい。昔の上司など会いたくなければ会わない。こうしてよく会っているのは彼と会っていて楽しいからだ。また現役の彼女たちの仕事の話も楽しい。 メンバーの中では自分が一番登山歴が長い。と言っても特に山に長けているわけでもなく体力があるわけでもない。むしろ…

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