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日々これ好日 https://shirane3193.hatenablog.com/

57歳で早期退職。再就職研修中に脳腫瘍・悪性リンパ腫に罹患。治療終了して自分を取り囲む総てのものの見方が変わっていた。普通の日々の中に喜びがある。スローでストレスのない生活をしていこう、と考えている。そんな日々で思う事を書いています。

杜幸
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2023/03/09

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  • 甲斐からの山・スノーシューの入笠山

    甲斐からの山・スノーシューの入笠山

    ・入笠山 1955m 長野県富士見町、伊那市 我が家の目の前には南アルプス北端の尾根が東西に伸びている。真正面には「鉄驪ノ峰・碧芙蓉」と漢詩にも詠まれた海抜2966メートルのくろがねが屹立している。甲斐駒ケ岳だ。その左手は鳳凰三山が高さを競う。そんな尾根の東端を辿れば、稜線が日本のヘソともいえる諏訪湖に落ちる手前に入笠山がある。1995メートルの山だ。 入笠山は山頂近くまでスキー場のゴンドラが伸びる。その終着駅からスキーやスノーボードに戯れるざわめきを離れて西に向かうと手頃なバックカントリーエリアになる。といっても今は木がうるさくなってしまいスキーには不向きだろう。入笠山にはもう二十年も前にス…

  • 卒業証書

    卒業証書

    帰宅したら緩衝材に包まれた正方形の封筒が届いていた。何だろうと手に取り裏面を見て驚いた。と同時にとても嬉しかった。授業料という謝礼の代わりに一回当たり時間の許す限り、そして何度も教えていただいた。言ってみれば先生と生徒という関係だったのだ。学びたいから教わる。求められたから自分の知ることや技を教える。代金を支払い受け取る。これ以上も無いドライな関係でもあるが、そこは血の通った人間同士の話なのだからどうしてもウェットになるのだろう。 教え子と名乗るには出来が悪すぎるのだが、いま「それは誰に習ったの?独学?」と聞かれるならば胸を張って答えるだろう。「ヨシ先生に教わりました。先生の弟子なんです。一番…

  • 革靴の試練

    革靴の試練

    晴天の朝だった。気温は氷点下で北西からの風もあったがこの季節は仕方がない。今日を有意義にしよう。近くの山で軽い雪山登山をしよう、そう考えて準備を始めた。 するとスマホにメッセージが届いた。「細板と革靴でこれからゲレンデに行きませんか?」と。おお、スキーの誘いか。スノーハイキングは何時でもできるな。参加の意を伝えた。二つ返事だった。 そんな友人は我が家から車でニ十分程度の場所に住んでいる。彼とは上信越国境のとある山頂で全くの偶然に出会った。そこは「山スキー」と呼ばれるスキー登山をする者にとっては有名な山だった。ブナの森が続きその中を滑り止めを板の裏に貼って踵の上がるスキー板で登る。山頂に着いたら…

  • 勇気百倍

    勇気百倍

    勇気百倍、そう言って飛んでくる。顔が濡れると力がなくなる。と「新しい顔よー」といいながらなぜか此方から焼きたての顔が飛んできて入れ替わる。すると悪の計らいごとをする悪いやつはパンチを受けて飛んでいく。バイバイキーンと言いながら彼方に消えていく。 初めての子供は生まれてからしばらくの間、彼が好きだった。彼女はそのグッズを見ると喜んだのだからすぐにそのキャラクターグッズで我が家は埋まった。彼女が初めて覚えた日本語はそのキャラクターの名前の冒頭、ひらがな4文字だった。そのアニメはなかなか面白く自分もすぐに虜になった。あげく大きな声で歌い踊るのだった。ちょっとした子供の集いがある。誰もが大騒ぎだがこの…

  • 従業員募集

    従業員募集

    そこはとあるパン屋だった。ここ八ケ岳山麓はパン屋が多い。ガイド本も出ているほどの激戦区ともいえるだろう。ブランジェリーを目指したものから一般的なベーカリーまで。天然酵母にこだわる店、動物性材料を使わない店。多くの店は森の中にひっそりとたたずんでいて知らないと通り過ぎるだろう。それらを探訪するのも楽しいものだ。 そんな中、県道沿いの店に立ち寄った。二度目の訪問だった。バゲットを探していたのだがそれ以外のパンにも目移りした。入り口に「パート・アルバイト従業員募集」との張り紙があった。奥から出てきた店主は「いらっしゃいませ」と低い声で言うのだった。 会計を済ませて聞いてみた。あの、扉の従業員募集です…

  • 冬晴れ

    冬晴れ

    昼食を家内と食べていた。その日は会社の創業記念日で午前中で仕事は終わりだった。たまには昼飯でもと家内と出かけた場所は横浜の中華街だった。食べかけの頃に電話が鳴った。「家内が亡くなりました」と。 それは義兄からだった。その前年の夏過ぎに、姉が不治の病にかかっていると知った。癌が治療可能な病となった今、不治の病とは何だろう。 その数か月前に近所のスーパーで姉を見かけた。姉夫婦は偶然だったろうか自分と同じ町に住んでいた。姉は買い物かごを下げた自分を見てはそのまま目の前を素通りしていった。しかし笑顔だった。そして数分後に目の前をまた通りすぎた。今度は自分を認識したようだったがそのまままた去って行った。…

  • 二十年以上前の靴

    二十年以上前の靴

    まだまだ綺麗な靴だった。防水ワックスをしっかりと塗り込んだ。靴先のコバが長くて出っ歯なのには理由がある。その裏面は三つのピン穴が開いている。そこに三つのピンをうまくはめ込み上から金属のブレードで抑え込むのだった。それはテレマークスキーの締め具だった。スプリング式のシリンダーのついたワイヤーを引っ張り上げることで靴の踵を押さえ込むこともできるが、つま先の三つのピン穴に板の出っ張りをはめて靴の母指球までを押さえ込むことも出来る。前者の方が板と靴の一体感は高まるが後者は歩行感覚が軽い。 テレマークスキーセットを初めて買ったのは2003年だった。なぜそんな事がわかるかと言えばその板に販売店のシールが貼…

  • ドキドキそしてワクワク

    ドキドキそしてワクワク

    いや、それちょっと違うんじゃないかな。そう言われるのではないかと不安もあった。全くの自己流だからそれも仕方ないなと。しかしまあやってみよう。手のひらに乗る小さなケースをギターケースのポケットにしのばせた。スタジオで隠れるようにポケットを開けた。プラスチックのケースに大切に包まれている。ケースの中から出てきたのは穴が10個のハーモニカ。小学生が手にする上下二段のものではない。俗に言うブルースハープだった。 バンドの課題曲の一つにカントリー色豊かな曲がある。ザ・ローリング・ストーンズはロンドンの下町で生まれた。追体験でしかないが1960年代はブルースやリズムアンドブルースの影響を受けたバンドがロン…

  • 遠い二十五メートル

    遠い二十五メートル

    初めて泳げたのは小学校何年生だったか。ただ仰向けに浮かんで足を動かしたら動いたのだった。「泳げる」のうちにも入らないだろう。子供のころから喘息があり水から上がるとなぜか発作が出るのだった。そんなこともあり体育の授業の水泳の時間はいつもお休みだった。泳げないまま大人になってしまった。 25メートルプールでしっかり泳ぐ、そんな事を再開したのは50年振り以上だが全く泳げなかった。しかし三度、四度と足を運ぶと少しだけ上達したように思う。しかし全くの無手勝流なのだから25メートルのうち何度も足をついた。浮きロープで区切られた隣のレーンのご夫婦は上手かった。奥様は平泳ぎで、旦那様はクロールだった。もう一つ…

  • あら、増えている

    あら、増えている

    リビングには薪ストーブがある。40センチ程度の薪を三本いれて火を付ければ三十分もすれば部屋は温まってくる。外は氷点下だ。さすがにTシャツ一枚で済むとはならない。家の吹き抜けを多く設計したのが災ってか熱効率は少し悪い。それでも遠赤外線とは強力だ。薪ストーブの表面温度が二百度を越えれば快適になる。寒い土地だが昼間は十度以上の室温があるので薪ストーブは使わない。朝晩だけの出番だった。 自分の書斎の扉も開けておけばじきに暖まるのだが最近加齢のせいか妙に寒がりだ。エアコンも付いているが物足りない。しかたなく石油ファンヒーターを書斎に入れた。書斎というかそこは楽器から本などが無秩序に置かれた趣味部屋だった…

  • アップデート

    アップデート

    インドネシアから来たお客様だった。 自分がその国に行ったのはもう三十五年は前だった。そこに当時新しく取引を始めた会社があり、自社製品の教育に行ったのだった。それは技術者がトレーナーであり営業の自分は通訳担当。初めての海外だった。南シナ海の上を香港発のガルーダ・インドネシアが飛んでいく。機内からみた海は静かだったが夕暮れが近く時折雷が光っていた。シルクの生地のように重く輝く海を見ながら何故だろう自分は涙が出た。かつてここで日本と米国や英国・豪国の飛行機が空中戦をして多くの命が散って行った。飛行機と戦記物が好きだった自分にとって太平洋とはそんな感傷を感じさせた。 出張前に取引先から予め連絡があった…

  • 匂う人相書き

    匂う人相書き

    テレビの時代劇。父親が好きなのでつられて見た。水戸黄門はあまりにも明快で少しひねったものが自分は好きだった。父の贔屓は東京12チャンネル・現テレ東の「大江戸捜査網」だった。公儀隠密の手慣れな四人組。浪人や町人を装っているが江戸を揺るがす陰謀に正体を伏せたまま立ち向かう。見栄を切る際に我は隠密同心だと名乗る。ここで鳴る効果音に痺れていた。これまた勧善懲悪の極みだが配役と隠密の性格付けもよかった。 そんな時代劇のワンシーンでよく出てくるのが「人相書き」だろう。泥棒や人斬りなど「下手人」の似顔絵だ。時代劇ばかりではなく都内の駅や交番などでやはりそんな人相書きを見るのだった。もちろん似顔絵ではなく本人…

  • 甲斐からの山・雪だより 八島湿原

    甲斐からの山・雪だより 八島湿原

    車の中は自分にとって大切なオーディオルームだ。クラシックからソウル、ロック、フュージョン、ポップス、自分の好きな音楽はSDカードに入るだけフォルダ別に入れて再生する。たいしてよいカーステレオではないので音はチープだが、馴染の曲が限りなく流れるのでこれほど素敵な空間はない。時として片手運転になってしまい空いた手は左足の膝・スネアドラムを叩くし、曲が変われば手を変えて右手で指揮棒をもってしまう。エアドラム、エア指揮なのだから全く危険だ。 しばらく猛威を振るっていた低気圧も去ってしまったようだ。ここ数日なぜか背中を押されるような気がしている。「ああ、わかったよ。これを聞けばよいのだね。」そこで通勤の…

  • ハイブリッド

    ハイブリッド

    時々悩む。アナログとデジタルのどちらが良いかと。そして自分はセコいのだろうかと。 久しぶりに泊まりがけで横浜に行く機会があった。それはバンドの練習で、どうせその後は果てしなく皆で飲むだろう。初日の昼には次女夫妻とランチを取った。三人それぞれ好きな定食を、それも同じ金額のセットを選び具を分け合った。そしてバンドへ。スタジオで三時間、みっちり全体像を確認して細部を詰めて楽しんだ。まとまりの悪かった曲もバンドサウンドにまとまってくる。それが誰しも楽しいのだから席は盛り上がり酒と料理がたくさん出てくる。想定通りに果てしない。翌日は長女と初孫に会った。ランチはこれまた好きなメニューを選びお互いの皿を突つ…

  • え、それって誰?

    え、それって誰?

    友人の家に時々立ち寄る。自分より一回り以上年上の方だった。いつも歓迎して下さる。友人は多趣味で器用なのだから自分は何時もそこで何らかの刺激を得る。美味しい珈琲が、そして奥様お手製のケーキが出てくる。時にそれは友人の焼いたベーグルでありパンでもある。ふらりと立ち寄ってもご馳走になるのだから菓子なりパンなりを常時焼かれているのだろうかとも思う。笑顔が印象的な奥様とお話しすると家内は自分と同じく何かのヒントを貰うようだった。 登山、アウトドア、カメラ、手作りオーディオ、鉄道模型とプラモデル、音楽・楽器演奏、自転車、車はジムニー、アマチュア無線、ガーデニング、料理、彼の趣味の範囲は不思議なほどに自分と…

  • ゆめ

    ゆめ

    とあるコンビニの前の道路を通るといつも目についていた。気になっていたというべきだろう。それは軽自動車のバンだった。 車に関しては昔からスズキ・ジムニー一択だった。三台乗り継いできた。いつからブームが起きたのか分からないが今の車は納期一年だった。数週間前に5ドアが発表された。メーカーの想定受注数を大幅に超えてしまいわずか数日で受注停止になったというからその人気ぶりが窺える。軽自動車というユニットが好きなので普通車のジムニーには個人的には興味が無いが、アウトドア好きなファミリー世代には文句なく刺さる事だろう。 山梨県にせよ山間部ではジムニーは生活必需車だ。雪国のパトカーはジムニーだ。狭い林道、農道…

  • 素敵な贈り物

    素敵な贈り物

    自分の好きな街は何処だろうと考える。高校生の頃は紙屋町だった。それは広島市の中心地だった。大型書店、家電量販店、少し離れて楽器屋があったのだから。大学生の頃は住んでいた神奈川県中央部の町。そこには片想いの素敵な女性が居たから。そして楽器屋と登山道具・古本屋の街、御茶ノ水と神保町。さらに渋谷と下北沢。そこには通った大学があり友人達の家があった。レコード屋とカルチャーがあった。どの路地も我が街だと思っていた。今そんな街は特にない。長く住んだ横浜には新鮮味も無いが中華街からセンスの良い元町そして港を望む山手・根岸辺り一帯の風景はやはり素敵に思う。転居して今住んでいる高原には人は少ないが、澄んだ空気が…

  • あしあと

    あしあと

    氷点下三度の朝だった。強い北西からの風が吹いている。そんなに吹いたら北西から空気が消えてなくならぬかといらぬ心配をする。この風が無ければ過ごせるのだがまっすぐに立っていられぬほど寒風に吹かれたらなんだか凍り付いてしまう。そんなせいか、路肩に積もった一センチにも満たない雪が何日も残っている。 犬の散歩が必要だった。彼はよほどのことが無い限り排泄は外でやるのだから忘れるわけにはいかない。もっともトイレに行きたくなると扉の前で座わりこむのだからすぐにそれとわかる。 今日のルートは・・。湧き水がとうとうと湧く森の神社にしてみよう。車を降りるとすぐに排泄をしてくれた。参道を歩いて神社についた。この水はと…

  • モノクロの世界

    モノクロの世界

    現像に出していたモノクロフィルムが戻ってきた。カラーは一足先に戻ってきた。二台のニコン、絞り優先自動露出のFG20、マニュアル露出のFM2。それぞれにモノクロとカラーネガを装填し二台を首から下げて撮影した。もうモノクロ写真に拘る必要もないだろう。その気になればカラー写真とてPCがあればモノクロになるのだから。しかしモノクロフィルムで写し取れば何かそれ以上のものが見えないものが見えまいか。 フィルムはフジのネオパンASA100。未だに売られているのだから嬉しい。これを装填したFG20はレンズの絞りリングを回してボケかパンフォーカスかを決めるだけでシャッター速度はそれに呼応して自動に変わるのだから…

  • グルーブの師匠

    グルーブの師匠

    SNSを何気なく見ていて、あっ、と声が出た。お元気だったのか。見覚えのある方がタグ付けされている。ライブハウスのステージに上がっていますと。還暦を越えた自分の胸はときめいた。「友達申請」のボタンを押した。 あの頃。課題曲を前にして少し迷っていた。どうも今一つだと。フレーズは聞き取れるし音もなぞれる。しかし何かが違うのだった。六年間日本を離れて帰国したらなぜだか無性にバンドをやりたかった。ロックを演奏したいという気持ちはもう無かった。ロックの元となったブラックミュージックに興味があった。ソウル、そしてブルースだった。そこでネットのメンバー募集の掲示板をしばらく繰っていた。 ベースの募集があった。…

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