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日々の栞 https://plutocharon.hatenablog.com

本、映画、について気ままに書くブログ。理系の元書店員。村上春樹や純文学などの小説について考察や感想を書いていきます。

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2022/04/14

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  • 館シリーズ完結作『双子館の殺人』はどんな内容?

    長きにわたりミステリーファンを魅了してきた綾辻行人の「館」シリーズだが、まもなく完結する。館シリーズは全十作品の予定であり、次の作品で10作品目となる。シリーズ最終作のタイトルは『双子館の殺人』だ。現在、メフィストで連載中だ。 この記事では館シリーズ最終作の『双子館の殺人』について詳細を紹介したい。 綾辻行人の「館シリーズ」とは? 十角館の殺人 水車館の殺人 迷路館の殺人 人形館の殺人 時計館の殺人 黒猫館の殺人 びっくり館の殺人 奇面館の殺人 シリーズ最終作『双子館の殺人』とは? 綾辻行人の「館シリーズ」とは? 十角館の殺人〈新装改訂版〉 「館」シリーズ (講談社文庫) 作者:綾辻行人 講談…

  • ノーベル文学賞を受賞した韓国のハン・ガンってどんな作家?

    2024年のノーベル文学賞の発表があり、受賞者は韓国の作家ハン・ガン(Han Kang)だと発表された。韓国として初のノーベル文学賞受賞であり、アジア人女性として初のノーベル文学賞受賞でもある。

  • 村上春樹?多和田葉子?ブックメーカーを参考にして2024年ノーベル文学賞を予想してみた

    また今年もノーベル賞発表の季節になった。 「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というニュースを見かけるのは年々減っているのではと感じる。毎年の恒例行事なので、ブックメーカーのオッズ等を参照して今年のノーベル文学賞を予想したいと思う。 街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 昨年の村上春樹は、村上春樹が新作長編『街とその不確かな壁』を出版するなど、活動的な一年だった。ヨーロッパで最も権威がある賞の1つと言われている、スペインのアストゥリアス王女賞の文学賞を受賞するという快挙も達成している。 今年もブックメーカー(賭け屋)において村上春樹の人気がどうなのか確認してみた。 …

  • 第171回芥川龍之介賞の候補作を紹介する

    第171回芥川賞の候補作が発表された。候補作は下記の五作品だ。 朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」(新潮5月号)尾崎世界観「転の声」(文學界6月号 )坂崎かおる「海岸通り」(文學界2月号)向坂くじら「いなくなくならなくならないで」(文藝夏季号)松永K三蔵「バリ山行」(群像3月号) ノミネートされた5名のうち、朝比奈秋、坂崎かおる、向坂くじら、松永K三蔵は初めて候補に選ばれ、尾崎世界観は2回目のノミネートとなっている。 芥川賞をざっくり簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番有名な賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界…

  • 第37回三島由紀夫賞候補作品の紹介と受賞作予想

    今年も三大純文学新人賞の1つ、三島由紀夫賞の季節がやってきた。 芥川龍之介賞に比べると知名度が大きく下がる三島由紀夫賞だけれども、受賞作の前衛性は芥川賞を超えると思っている。これまでに三島由紀夫賞は舞城王太郎や佐藤友哉、中原昌也など芥川賞では評価されにくい尖った才能を見出してきた。個人的に一番好きな純文学新人賞だ。 今回の候補作が公開されたが、芥川賞と違って独自色が強いなって思う。 候補は下記通り。 ・久栖博季「ウミガメを砕く」 ・小砂川チト「猿の戴冠式」 ・鈴木涼美「YUKARI」 ・大田ステファニー歓人「みどりいせき」 ・間宮改衣「ここはすべての夜明けまえ」 今回の三島由紀夫賞ではデビュー…

  • 久しぶりの投稿、ブログ再開

    みなさんお久しぶりです。なおひとです。 仕事が忙しく、バタバタしておりブログが更新できていない時期が続いておりました… 少し仕事が落ち着いてきたので投稿を再開して行きたいと思います。 最近は忙しくて、なかなか小説が読めない日々が続いている。 なんか『花束みたいな恋をした』の麦みたいな感じを想像してもらったら分かりやすいかもしれない。 そんなバタバタの日々を過ごしておりますが、大好きな佐藤正午先生の新刊『冬に子供が生まれる』をちびちびと読んで過ごしているのが今日この頃かな。 ブログの書き方も忘れつつあるが、ぼちぼちと再開したいと思います。 今更ですが、今年もよろしくお願いいたします。 冬に子供が…

  • 朝比奈秋「あなたの燃える左手で」と九段理江「しをかくうま」が第45回野間文芸新人賞を受賞した件について

    三大純文学新人賞の一つである第45回野間文芸新人賞の受賞作が発表された。 受賞作は、朝比奈秋「あなたの燃える左手で」と九段理江「しをかくうま」の2作だ。 特に朝比奈秋は今回の受賞で新人賞三冠にリーチとなった。 この記事では第45回野間文芸新人賞の受賞作について」紹介したい。

  • 没入感がすごい!物語世界に浸れるイマーシブな小説8選

    最近、イマーシブというキーワードがエンタメを賑わせている。 イマーシブ(immersive)とは、没入感を意味する言葉で日本でも流行りつつある。 現実にいながら物語や芸術の世界に入り込むイマーシブエンタメが大流行中である。 日本だと、印象派やポスト印象派の絵画に入り込む体験ができる「イマーシブミュージアム」やイマーシブシアターなどがある。かわりどころだと、話題になった「友達がやってるカフェ」もある種のイマーシブ体験かもしれない。他にも「Syn : 身体感覚の新たな地平」などがある。また、没入型エンタメ施設として「イマーシブ・フォート東京」がお台場にオープンするという話もある。 エンタメではイマ…

  • ノーベル文学賞を受賞したヨン・フォッセの日本語で読める作品は?

    ヨン・フォッセ(Jon Fosse)というノルウェーの劇作家が2023年のノーベル文学賞を受賞した。 日本では知名度がないかもしれないが、ヨン・フォッセはノルウェーを代表する劇作家で、グローバルに大きな関心を集めている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とする演劇で国際的に高く評価されている。 「イプセンの再来」や「21世紀のベケット」と呼ばれ、2023年のノーベル文学賞を受賞した。 この記事では、ヨーロッパ現代演劇を代表するヨン・フォッセの日本語で読める小説を紹介したいと思う。 ヨン・フォッセ (Jon Fosse)ってどんな作家…

  • 圧倒的レンガ!鈍器すぎる分厚い小説15選(文庫編)

    鈍器本という言葉をご存知だろうか?凶器として使えそうなぐらい分厚い本は鈍器本と言われている。ハードカバーの本に分厚い本が多いイメージがあるかもしれないが、文庫本にも分厚い本がある。 この記事では、特に文庫本の中で特に分厚い小説を集めてみた。特に、京極夏彦などの小説が多いが、超重量級文庫を紹介する。 魍魎の匣 / 京極 夏彦 虚実妖怪百物語 序破急 / 京極 夏彦 絡新婦の理 / 京極 夏彦 匣の中の失落 / 竹本 健治 白夜行 / 東野 圭吾 幻夜 / 東野 圭吾 5 / 佐藤 正午 有限と微小のパン / 森 博嗣 細雪 / 谷崎 潤一郎 夜光虫 / 馳 星周 アポトス / 島田 荘司 哲学者…

  • 川端康成が中国で流行っている件について

    雪国(新潮文庫) 作者:川端康成 新潮社 Amazon 「国境のトンネル」でお馴染みの作家といえば川端康成だ。 日本で初めてノーベル文学賞を受賞した作家であり、代表作の『雪国』や『伊豆の踊り子』は非常に有名だ。 川端康成だが、今中国でブームになっているらしい。数多くの川端康成の作品が中国語に翻訳されている。特に『雪国』は、20以上の中国語訳バージョンがあるようだ。最近ニュースでも、中国で川端康成の作品が流行しているというのを見かけるようになった。 この記事では、中国で川端康成が流行っている理由について書こうと思う。 中国で広がる「川端康成ブーム」 なぜ川端康成がブームになっているのか? 理由①…

  • 『秒速5センチメートル』が好きな人におすすめの恋愛小説

    www.youtube.com 新海誠の最高傑作は何かという問いがあったら、僕は間違いなく『秒速5センチメートル』をあげる。 『秒速5センチメートル』は、美しすぎる初恋の呪いに囚われてしまった男性を、圧倒的な映像美で描いた名作アニメーション映画だ。新海誠監督の代表作の一つだ。 過去の感傷に陶酔している姿を、叙情的な映像と内省的なモノローグで極限まで美しく描いた作品であり、エモーショナルな内容は多くの人を惹きつけている。特に、過去の恋愛に名前をつけて保存する系男子が多いと思うが。 この記事では、『秒速5センチメートル』が好きな人におすすめしたい恋愛小説を紹介したい。どの作品も忘れられない恋愛を描…

  • 知る人ぞ知る?オーストラリアを代表する作家ジェラルド・マーネインを紹介する

    ジェラルド・マーネイン(Gerald Murnane)という小説家を知っているだろうか? ジェラルド・マーネインはオーストラリアの小説家で、知る人ぞ知る作家だ。世界的に有名な作家ではないが、一部でカルト的な人気を得ている。 最近では、ノーベル文学賞も受賞するのでは言われており、ブックメーカーのノーベル文学賞受賞者の予想として名前が上がることが多い。 日本では知名度はないと思うが、オーストラリアを代表するジェラルド・マーネインを紹介したいと思う。

  • 中国のカフカ!?現代中国文学を代表する作家・残雪について紹介する

    残雪 (Can Xue)という作家を知っているだろうか? 中国を代表する現代作家で、非常に独創的な作風が特徴だ。その独創的な作風から、カフカやピンチョンと並び称される作家である。 日本では知名度は低いかも知れないが、現代中国文学を代表する残雪を紹介したいと思う。 残雪(Can Xue)ってどんな作家? 残雪の作品を紹介する 黄泥街 蒼老たる浮雲 カッコウが鳴くあの一瞬 突囲表演 最後の恋人 (adsbygoogle = window.adsbygoogle []).push({}); 残雪(Can Xue)ってどんな作家? 残雪(Can Xue)は中国を代表する現代作家だ。 名前の読み方…

  • ノルウェーを代表する現代劇作家ヨン・フォッセについて紹介する

    ヨン・フォッセ(Jon Fosse)という劇作家を知っているだろうか? ノルウェーを代表する劇作家で、グローバルに大きな関心を集めている。ヨン・フォッセは、イプセンに続き最も頻繁に上演されるノルウェー人劇作家である。ミニマリズムを特徴とする演劇で国際的に高く評価されている。 「イプセンの再来」や「二一世紀のベケット」と呼ばれ、ノーベル文学賞も受賞するのでは言われている。 日本では知名度はないと思うが、ヨーロッパ現代演劇を代表するヨン・フォッセを紹介したいと思う。 ヨン・フォッセ (Jon Fosse)ってどんな作家? ヨン・フォッセの作品を紹介する だれか、来る (Someone Is Goi…

  • 村上春樹の人気は?ブックメーカーを参考にして2023年ノーベル文学賞を予想してみた

    もうそろそろ「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というニュースを見かける季節になると思うので、一足先にブックメーカーを参照して今年のノーベル文学賞を予想したいと思う。 「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というのはもはや秋の風物詩だ。 街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 特に今年は、村上春樹が新作長編『街とその不確かな壁』を出版するなど、活動的な一年だった(まだ今年は終わっていないが)。また、ヨーロッパで最も権威がある賞の1つと言われている、スペインのアストゥリアス王女賞の文学賞を受賞するという快挙を達成している。 もうこれは、今年もマスメディアで「村上春…

  • まさに裏技!絶版本を探す方法

    本好きあるあるだと思うけど、読みたい本が絶版になっているってよくあることだと思う。本屋でバイトしていた経験から言うと、十年前に出版された本でも結構絶版になっていた。読みたいだけなら図書館で借りればいいけれど、手元に置いておきたい本や棚に並べたい本なら買うしかない。けれど、絶版本をどうやったら手に入れることができるのか?新刊本と古本とに分けて、僕がやっている方法を説明しようと思う。 新刊で手に入れたい場合 1.ジュンク堂をフル活用 2.個性派書店を攻める 3.個人経営の書店を攻める 4.復刊ドットコムでリクエスト 古本で手に入れる場合 1.ブックオフに行く 2.古本まつりに行く (adsbygo…

  • 読まないと!伊坂幸太郎の隠れた名作小説4選

    鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めているのが伊坂幸太郎だ。 巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。時系列がバラバラであったりと小説の構成が凝っていて、どんでん返しなどが仕掛けられたミステリ小説が多い。 伊坂幸太郎の魅力のひとつが、ウィットに富んだ文体だ。登場人物たちのウィットに富んだセリフが伏線にもなっていて、伊坂幸太郎おそるべしとしか言いようがない。特に「陽気なギャング」シリーズは伊坂作品の中でも会話のユーモアが多くてオススメだ。登場人物たちの洒脱でユーモアに溢れた会話が心地よすぎて、何度も読んでしまう。 伊坂幸太郎といえば、『重力ピエロ』や『ゴールデ…

  • 映像化不可能と言われていたが映画化されたミステリ小説まとめ

    ミステリ小説の中にはトリックの性質がゆえに映像化できないと言われてるものがいくつかある。映像化してしまうとトリックがばれてしまうからだ。だが、趣向をこらすことによって映像化不可能と言われていたけれど、映画化に成功した作品もある。この記事では、映像化不可能と言われていたけど、映画化されたミステリ小説を紹介したい。 ハサミ男 / 殊能 将之 イニシエーション・ラブ / 乾 くるみ アヒルと鴨のコインロッカー / 伊坂 幸太郎 ある閉ざされた雪の山荘で / 東野 圭吾 ハサミ男 / 殊能 将之 ハサミ男 (講談社文庫) 作者:殊能将之 講談社 Amazon 美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き…

  • 読まないと!村上春樹の隠れた名作8選

    村上春樹といえば日本を代表する現代作家だ。村上春樹作品は日本だけでなく世界中で読まれており、多くの人を惹きつけている。 村上春樹の名作といえば『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥クロニクル』、『海辺のカフカ』、『1Q84』などがあるだろう。 それ以外にも、村上春樹作品には面白い作品がある。この記事では村上春樹の隠れた名作を紹介したい。 ダンス・ダンス・ダンス 国境の南、太陽の西 スプートニクの恋人 神の子どもたちはみな踊る 図書館奇譚 遠い太鼓 夜のくもざる 夢で会いましょう ダンス・ダンス・ダンス ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫) 作者:村上 春樹 講談社 Amazon 『羊をめぐる…

  • 『逆転美人』の両肩読みの仕掛けとは?

    最近、紙ならではのトリックが仕掛けられたミステリ小説が話題を集めている。 一つ例を挙げてみると、杉井光の『世界でいちばん透きとおった物語』などがあるだろう。 この小説は、紙ならでは仕掛けが話題になり、ベストセラーとなった。 この他にも藤崎翔の『逆転美人』も紙ならではの仕掛けが施されていると話題になった。 この記事では、『逆転美人』に仕掛けられた「両肩読みの仕掛け」を解説したい。 下記には『逆転美人』のネタバレが含まれるので、未読の人は注意してほしい。 『逆転美人』とは 『逆転美人』の本当の著者は? 「両肩読みの仕掛け」とは? (adsbygoogle = window.adsbygoogle …

  • 東野圭吾『仮面山荘殺人事件』が映画化される件について

    prtimes.jp 東野圭吾の小説は数多く映画化されているけれど、中には意外とまだ映像化されていないのだなと思うものがいくつかある。 その一つが『仮面山荘殺人事件』だ。 『仮面山荘殺人事件』は東野圭吾のどんでん返しの名作としてあげられる作品である。『ある閉ざされた雪の山荘で』と並んで、東野圭吾のどんでん返しの名作だ。『ある閉ざされた雪の山荘で』の方は映像化できないのだが、『仮面山荘殺人事件』の方は映像化できるタイプのどんでん返し小説だ。 今回、『仮面山荘殺人事件』が2023年に舞台化されるようだ。これにはかなり驚いた。 この記事では、舞台化される『仮面山荘殺人事件』について紹介したいと思う。…

  • 電子書籍化できない?紙媒体ならではの仕掛けが施された小説7選

    皆さんは本を読むときは紙派だろうか?それとも電子書籍派だろうか? 最近ならオーディオブック派もあるかもしれない。 最近は利便性ゆえに電子書籍を愛用している人が増えてきているかもしれないが、紙の本には電子書籍にはない魅力がある。ページをめくる感覚、質感や匂い、本棚に並べて眺められるという点などなど。 今回は紙の本の魅力を伝えるために、紙媒体ならではの仕掛けが施された小説を紹介したい。電子書籍化ができない小説や、紙媒体の方が良い小説を紹介する。 今回紹介する小説の魅力は実際に紙媒体で読まないとわからないので、ぜひ紙の本で読んでみてほしい。

  • 『世界でいちばん透きとおった物語』の献辞に書かれているA先生は誰のことか

    prtimes.jp 最近、電子書籍化不可能ということで話題になっている小説がある。 その作品が、杉井光の『世界でいちばん透きとおった物語』だ。この小説には、紙ならでは仕掛けが施されている。この仕掛けを電子書籍化することは不可能だろう。 この本の献辞では、A先生について言及されている。このA先生って誰のことと思っている人が多いと思う。 この記事では著者の杉井光が衝撃を受けたA先生が誰なのかについて書きたいと思う。 『世界でいちばん透きとおった物語』とは? 献辞に書かれているA先生は誰のことか? 泡坂妻夫の代表作品 しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術 / 泡坂 妻夫 生者と死者 酩探偵ヨ…

  • 一番売れているのは?東野圭吾の売上・発行部数ランキング

    東野圭吾は、ガリレオシリーズや加賀恭一郎シリーズでお馴染みの大人気ミステリー作家だ。知らない人は恐らくいないだろう。 東野圭吾は、ガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞している。ガリレオシリーズは福山雅治主演でドラマ化され、かなり話題になった。他に有名な作品を列挙してみると『白夜行』とか『秘密』がある。映画化もよくされていて、『真夏の方程式』や『ラプラスの悪魔』が公開されている。 そんな大人気作家・東野圭吾だが、著作の国内累計発行部数が1億部を突破した。国内累計発行部数は2023年時点で1億77,380部である。 また、東野圭吾作品の人気は国内にとどまらず、海外でも幅広く翻訳されて…

  • 東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』が映画化される件について

    happinet-phantom.com 東野圭吾の小説は数多く映画化されているけれど、中には「この小説は絶対映像化できないだろう」と思うものがいくつかある。 その一つが『ある閉ざされた雪の山荘で』だ。『ある閉ざされた雪の山荘で』は東野圭吾のどんでん返しの名作としてあげられる作品である。この作品は映像化できないだろうと思っていたのだが、なんと2024年に映画化されるようだ。これにはかなり驚いた。 主演は、重岡大毅(ジャニーズWEST)だそう。隠遁して読書生活している私にとってはどんな俳優なのかはわからない。きっと有名な人なのだろう。 この記事では、映像化される『ある閉ざされた雪の山荘で』につい…

  • 名曲とミステリ!音楽や音楽家が題材になったミステリ小説まとめ

    クラシックやジャズ、Jポップなどの音楽が作中に登場する小説はたくさんある。 その中でも名曲や音楽家が重要な役割を握っているミステリを紹介したい。 ミステリだけではなく、ドビュッシーやラフマニノフといった有名な音楽家についての知識が学べるミステリだ。ぜひ音楽を聴きながら読んでほしい。 シューマンの指 / 奥泉 光 さよなら、ドビュッシー / 中山 七里 おやすみラフマニノフ / 中山 七里 モーツァルトは子守唄を歌わない / 森 雅裕 シューマンの指 / 奥泉 光 シューマンの指 (講談社文庫) 作者:奥泉光 講談社 Amazon 音大のピアノ科を目指していた私は、後輩の天才ピアニスト永嶺修人が…

  • 人生の交差路!空港や飛行機が舞台のおすすめ小説

    小説の舞台として空港が魅力的に感じるのは私だけだろうか? 新天地へのスタート地点やたくさんの人が行き交う空港や飛行機は小説の舞台としてうってつけだと思っている。 この記事では、空港や飛行機を舞台にした小説を紹介したい。 空港にて / 村上 龍 あの空の下で / 吉田 修一 空港時光 / 温 又柔 あぽやん / 新野 剛志 空港にて / 村上 龍 空港にて (村上龍電子本製作所) 作者:村上 龍 村上龍電子本製作所 Amazon コンビニ、居酒屋、公園、カラオケルーム――どこにでもある場所でおきた8つの希望の物語。クリスマスイブの夜、新宿を1人で歩きながら「いつかモロッコへ行こう」と言った男性の…

  • ドキドキが止まらない?恋愛ミステリ小説6選を紹介

    小説にはいろんなジャンルがある。 例を挙げてみると、ミステリやSF、ファンタジー、純文学、恋愛小説、歴史といったところか。中にはいくつものジャンルを横断した小説もある。 この記事では恋愛小説とミステリを組み合わせた恋愛ミステリ小説を紹介したい。 イニシエーション・ラブ / 乾 くるみ セカンド・ラブ / 乾 くるみ パラレルワールド・ラブストーリー / 東野 圭吾 真夜中の五分前 / 本多 孝好 完全恋愛 / 牧 薩次 葉桜の季節に君を想うということ / 歌野 晶午 (adsbygoogle = window.adsbygoogle []).push({}); イニシエーション・ラブ /…

  • 第169回芥川龍之介賞の受賞作を予想する

    第169回芥川賞の候補作が発表された。候補作は下記の五作品だ。 石田夏穂「我が手の太陽」(群像5月号)市川沙央「ハンチバック」(文學界5月号)児玉雨子「##NAME##(ネーム)」(文藝夏季号)千葉雅也「エレクトリック」(新潮2月号)乗代雄介「それは誠」(文學界6月号) ノミネートされた5名のうち、市川沙央、児玉雨子が初の候補入りだ。石田夏穂は2度目、千葉雅也は3度目、乗代雄介は4度目のノミメートとなっている。 芥川賞をざっくり簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番有名な賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新…

  • クリストファー・ノーラン監督の新作『オッペンハイマー』についてまとめてみた

    www.youtube.com クリストファー・ノーラン監督が新作映画『オッペンハイマー』が今年公開される。キリアン・マーフィー主演で、原爆の父として知られるロバート・オッペンハイマーを描いた映画だ。 公開が待ちきれないので、現状分かっている映画情報やロバート・オッペンハイマーについてまとめている。 第二次世界大戦における原子爆弾の開発・製造計画、「マンハッタン計画」を主導した人物ロバート・オッペンハイマーを描く本作では、原爆の開発から、後に彼が核兵器の国際管理の必要性を訴え、水素爆弾への抗議活動を行うに至るまでの変化を映像化する。 クリストファー・ノーラン監督の新作はオッペンハイマーについて…

  • 驚きの連続!?どんでん返しが凄いミステリまとめ

    ミステリの醍醐味の1つと言えるどんでん返し。 今まで見ていた世界がひっくり返る感覚は面白いものだ。ミステリにはどんでん返しが秀逸なことで有名な作品が数多くある。そんなどんでん返しがすごいミステリを紹介したい。

  • 第169回芥川龍之介賞の候補作を紹介する

    第169回芥川賞の候補作が発表された。候補作は下記の五作品だ。 石田夏穂「我が手の太陽」(群像5月号)市川沙央「ハンチバック」(文學界5月号)児玉雨子「##NAME##(ネーム)」(文藝夏季号)千葉雅也「エレクトリック」(新潮2月号)乗代雄介「それは誠」(文學界6月号) ノミネートされた5名のうち、市川沙央、児玉雨子が初の候補入りだ。石田夏穂は2度目、千葉雅也は3度目、乗代雄介は4度目のモニメートとなっている。 芥川賞をざっくり簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番有名な賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新…

  • 梅雨に読みたい!雨がタイトルに入るおすすめ小説5選

    梅雨の時期になり、ジトジトとした雨の日が続くようになってきた。こんな日には家でゆっくり本を読むのがいいだろう。 雨が降るのを眺めながら読書に耽るのは趣があっていいかもしれない。この記事では、梅雨時に読みたい、タイトルに雨が入ったな小説を紹介したい。

  • 名前をつけて保存?忘れられない恋愛を描いた恋愛小説まとめ

    男女間での恋愛に対するスタンスの違いを示す表現として、男性は『名前を付けて保存』、女性は『上書き保存』という言葉がある。 一般論として、女性よりも男性の方が過去の恋愛を引きずりがちなのではないだろうか。 男性にとって忘れられない過去の女性というのは重要な存在で、中には過去の記憶に絡め取られて動けなくなってしまう人もいる。切実な問題なのだ。 あるいは、女性でも忘れられない男性がいるという人もいるかもしれない。 この記事では、恋愛を名前をつけて保存する系男子あるいは女子(少数派かもしれないが)に向けて、忘れられない恋愛を描いた恋愛小説を紹介していく。

  • 村上春樹がアストゥリアス皇太子賞の文学部門賞を受賞した件について

    www.jiji.com 村上春樹がアストゥリアス皇太子賞の文学部門を受賞したというめでたいニュースが入ってきた。スペインの文学賞・アストゥリアス皇太子賞は、ヨーロッパで最も権威がある賞の1つで、日本人作家が文学部門で受賞したのは初めてのようだ。 この記事では、村上春樹が受賞したアストゥリアス皇太子賞について書きたい。

  • 第169回芥川龍之介賞の候補作を予想する

    六月になったということで、もうすぐ芥川賞の候補作が発表される。恒例行事にはなってきたが、芥川賞の候補作を予想してみた。上半期で印象に残った小説や推したい小説を中心に挙げている。 芥川賞をざっくり簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番有名な賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。候補の作品となる小説の長さは中編程度が多い。 結論から言うと、千葉雅也「エレクトリック」、朝比奈秋「あなたの燃える手で」、永井みみ「ジョニ黒」、乗代雄介「…

  • 『街とその不確かな壁』の理解を深めるためにおすすめの村上春樹作品5選

    街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が発売された。『一人称単数』といった短編集は出版されてきたが、新作の長編小説は久しぶりということもあり、発売当初は大きな注目を集めた。 発売から時間が経ったので、読んだ人も多いのではないだろうか。この記事では、『街とその不確かな壁』の理解を深めるためにおすすめの村上春樹作品を紹介したい。『街とその不確かな壁』に内容が近い村上春樹作品がいくつかあるので、読解の参考になるのではないかと思う。

  • 文學界6月号が豪華すぎる件について

    文學界2023年6月号(創作 乗代雄介「それは誠」 九段理江「しをかくうま」 文藝春秋 Amazon いつもの恒例行事として5大文芸誌の内容を見ていたのだが、文學界の6月号のラインナップがとても豪華だったので紹介したい。 注目したいのは、乗代雄介「それは誠」、九段理江「しをかくうま」だ。 乗代雄介と九段理江ともに芥川賞候補になっている注目の若手作家だ。 乗代雄介は「旅する練習」や「本物の読書家」といった作品を出版している。 今回文学界で発表した「それは誠」は下記の内容であるようだ。 地方の高校生・佐田は修学旅行で訪れた東京で同級生とある冒険に挑む。青春のきらめきを描く、著者の集大成 高校生たち…

  • 90分deシネマ / 90分で観れる雰囲気がおしゃれな映画

    映画はストーリーに入り込むことで、驚きや楽しみ、ワクワク、ドキドキ、などの色んな感情を体験できる優れたエンターテイメントだ。だが、時間に追われる現代社会では2〜3時間の映画を見ている余裕がないという人も多いだろう。なので大体90分程度で観れる映画をテーマに合わせて紹介していきたいと思う。今回はセンスが抜群のおしゃれな映画を紹介したい。

  • コミカルなウディ・アレン流サスペンス / 『タロットカード殺人事件』 ウディ・アレン

    『マッチポイント』を観た後に鑑賞したので、こちらもシリアスなサスペンスかと思いきや、シニカルなユーモアに溢れたいつものウディ・アレン作品だった。まさにコミカルなウディ・アレン流サスペンス。主演女優は『マッチポイント』に引き続き、スカーレット・ヨハンソン。スカーレット・ヨハンソンは『マッチポイント』・『タロットカード殺人事件』・『それでも恋するバルセロナ』と立て続けにウディ・アレン作品に登場している。スカーレット・ヨハンソンはこの頃のウディ・アレンにとって新たなミューズだったのかもしれない。ここ最近では『マジック・イン・ムーンライト』・『教授のおかしな妄想殺人』でエマ・ストーンが起用されている。…

  • 90分deシネマ / 90分で観れるモノクロ映画

    映画はストーリーに入り込むことで、驚きや楽しみ、ワクワク、ドキドキ、などの色んな感情を体験できる優れたエンターテイメントだ。だが、時間に追われる現代社会では2〜3時間の映画を見ている余裕がないという人も多いだろう。なので大体90分程度で観れる映画をテーマに合わせて紹介していきたいと思う。今回はセンスが抜群のモノクロ映画を紹介したい。 コーヒー&シガレッツ(97分) コーヒーをめぐる冒険(85分) フランシス・ハ(86分) 勝手にしやがれ(95分) 5時から7時までのクレオ (90分) 去年マリエンバードで(94分)

  • 村上春樹『街とその不確かな壁』の感想を徒然なるままに書く

    村上春樹の最新作『街とその不確かな壁』を読み終えた。早く読みたい気持ちとじっくりと味わいたい気持ちがせめぎ合う中での読書だった。 村上春樹の最新長編を発売直後にリアルタイムで読むのは、何気に初めてかもしれない。『騎士団長殺し』の時は数週間遅れて読んだように記憶している。リアルタイムで読むことである種のお祭り気分を味わえた。出版不況といわれて久しい中、数多くの小説で発売日をカウントダウンして楽しめる作家というのは村上春樹ぐらいしかい。たまには、こういう祭り(フェト)があってもいいのかもしれない。 話を元に戻そう。読了し終わったばかりで、とっ散らかっている部分があるが、『街とその不確かな壁』につい…

  • 案外知らない!?東野圭吾の隠れた名作ミステリ3選

    東野圭吾は、ガリレオシリーズや加賀恭一郎シリーズでお馴染みの大人気ミステリー作家だ。知らない人は恐らくいない。 東野圭吾は、ガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞している。『容疑者Xの献身』は本当に傑作だ。他に有名な作品を列挙してみると『白夜行』とか『秘密』がある。映画化もよくされていて、『真夏の方程式』や『ラプラスの悪魔』が公開されている。 そんな大人気作家・東野圭吾だが、世間的にはマイナーだけど面白い小説を紹介していこうと思う。本格ミステリが好きな人に特におすすめしたい。 仮面山荘殺人事件 ある閉ざされた雪の山荘で 名探偵の掟 仮面山荘殺人事件 仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)…

  • 夫婦の危機をどう乗り越える?セックスレスが題材になった小説まとめ

    セックスレスは、夫婦やカップルにとって重大な問題だろう。体のコミュニケーションがなくなってしまったら、二人の関係も冷え込んでしまう。セックスレスの問題を抱えながら、日々を悶々と過ごしている人は多いと思う。 だが、非常にセンシティブな問題故に相談しにくいという問題があるように思う。そんな時はセックスレスをテーマにした小説を読めば、解決の糸口を見つけることができるのではと思う。 セックスレスの苦しさや、夫婦の問題を乗り越えようとする姿を描いた小説を紹介したい。 奥様はクレイジーフルーツ / 柚木 麻子 奥様はクレイジーフルーツ (文春文庫) 作者:麻子, 柚木 文藝春秋 Amazon 結婚して三年…

  • 村上春樹の世界観をオーディブルで味わう!Audibleで聴ける村上春樹作品まとめ

    村上春樹作品が待望のAudible化!『1Q84』、『ねじまき鳥クロニクル』、『騎士団長殺し』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、『海辺のカフカ』、『螢・納屋を焼く・その他の短編』、『東京奇譚集』、『神の子どもたちはみな踊る』、『職業としての小説家』、『辺境・近境』の10作品が配信予定だ。

  • 村上春樹の幻の小説「街と、その不確かな壁」を読む方法

    街とその不確かな壁 作者:村上 春樹 新潮社 Amazon その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行される。待ちきれない人も多いのではないだろうか。『一人称単数』といった短編集は出版されてきたが、新作の長編小説は久しぶりだ。長編だと、2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる。 『街とその不確かな壁』の発売を受けて注目を集めている村上春樹の中編小説…

  • ミステリ界の一発屋!?一作だけの幻のミステリ作家まとめ

    一時的にのみ活躍を見せた歌手や芸人を一発屋と読んだりする。一発屋というと芸人のイメージが強いかもしれない。 だが、ミステリ作家にも一発屋はいる。インパクトのあるトリックでデビューしたものの、その後の作品が続かない作家のことだ。 この記事では、デビュー作で爪痕を残したものの次回が出ていない作家を紹介する。 『消失!』 / 中西 智明 消失! (講談社文庫) 作者:中西 智明,菊地 信義,辰巳 四郎,Yoshi 講談社 Amazon 高塔市―赤毛の人々が数多く住む奇妙な街で、その事件は起こった。美しい赤毛の持ち主ばかりを次々に殺害し、忽然と「消失!」する黒ずくめの男の謎。痕跡ゼロ、関連性ゼロの完全…

  • 意外すぎる!?芥川賞を受賞していない有名作家まとめ

    芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 実力のある作家に賞を与えて世に送り出してきた芥川賞だが、一部の作家は正当に評価できていなかったという声もある。実力はあるが、意外にも芥川賞を受賞していない作家もいるのだ。 かつて選考委員だった池澤夏樹は、「かつて芥川賞は村上春樹、吉本ばなな、高橋源一郎、島田雅彦に賞を出せなかった。」というコメントを残している。 そんな実力があるが芥川賞を受賞してない有名作家を紹介したい。 芥川賞とはどんな文学賞? 芥川賞を受…

  • 社会現象にも!話題になった芥川賞受賞作品まとめ

    芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 芥川賞は文学賞の中でも特に有名なこともあり、受賞作がベストセラーになったり、社会現象になったことも数多くあった。 歴代の芥川賞受賞作品の中でも、特に話題になった受賞作品について紹介したい。 芥川賞とはどんな文学賞? 社会現象にもなり、話題になった芥川賞受賞作品の紹介 太陽の季節 / 石原 慎太郎 されどわれらが日々 / 柴田 翔 赤頭巾ちゃん気をつけて / 庄司 薫 限りなく透明に近いブルー / 村上 龍 僕…

  • 『街とその不確かな壁』が待ちきれない人におすすめの村上春樹作品5選

    街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行される。待ちきれない人も多いのではないだろうか。『一人称単数』といった短編集は出版されてきたが、新作の長編小説は久しぶりだ。長編だと、2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる。 『街とその不確かな壁』は、1200枚の書き下ろし新作長編小説であるようで、今から読むのが楽しみである。Twitterなどでは、村上春樹新作長編のニュースで祭り状態になっていた。 刊行が待ちきれない人のために、『街とその不確かな壁』に向けておすすめの村上春樹作品を五つ紹介…

  • 村上春樹の新刊『街とその不確かな壁』を予想する試み

    www.nikkei.com 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行される。2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる書下ろし長編である。 街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 『街とその不確かな壁』は、1200枚の書き下ろし新作長編小説であるようだ。 村上春樹ファンのあいだでも話題になったのだが、村上春樹の幻の作品「街と、その不確かな壁」とタイトルがほとんど同じなのだ。新作長編の題名は、読点が一つ抜かれたものである。この点からも内容を予想できそうである。 また、新しい試みとして村上作品の長編では初めて刊行と同日に電子書…

  • 村上春樹の新刊が発売!『村上春樹新作長編(仮)』が楽しみすぎる件について

    www.nikkei.com 読書界隈をざわつかせるビックニュースが入ってきた。村上春樹の新作長編小説が2023年4月13日(木)に刊行されることが決定したのだ。新潮社から発表されたこのニュースは本好きに衝撃を与えた。 村上春樹新作長編(仮) 作者:村上 春樹 新潮社 Amazon 『村上春樹新作長編(仮)』は、1200枚の書き下ろし新作長編小説であるようだ。2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる書下ろし長編である。タイトルや物語のテーマはまだ公表されていない。やれやれ。 また、新しい試みとして村上作品の長編では初めて刊行と同日に電子書籍も配信するようだ。 今から読むのが楽し…

  • 翻訳家としての村上春樹!ハルキが翻訳した海外小説まとめ

    村上春樹といえば『ノルウェイの森』や『ねじまき鳥クロニクル』、『1Q84』などの小説で知られている日本を代表する小説家だ。 それだけでなく海外小説の翻訳も手掛けており、海外文学の紹介や翻訳を手がけるといった一面も持っている。村上春樹が手掛けた翻訳は、『ティファニーで朝食を』といった名作が多い。そこで、村上春樹が翻訳を手掛けた名作小説をまとめてみた。 グレート・ギャツビー / スコット・フィッツジェラルド 最後の大君 / スコット・フィッツジェラルド キャッチャー・イン・ザ・ライ / J.D.サリンジャー 心は孤独な狩人 / カーソン・マッカラーズ 結婚式のメンバー / カーソン・マッカラーズ …

  • 失った恋を取り戻そうとした男 /『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド

    豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビー。彼の胸にはかつて一途に愛情を捧げ、失った恋人ディジーへの異常な執念が育まれていた……。第一次世界大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきな情熱に駆られた男の悲劇的な生涯を描き、何度も映画化された20世紀文学最大の問題作。滅びゆくものの美しさと、青春の憂愁を華やかに謳いあげる世界文学の最高峰。 女を二文字重ねて女々しいと書くけれど、本当に女々しいのは男の方ではないかと思う。 恋の思い出を、男は名前を付けて保存、女は上書き保存とよく言うが、かなり的を得ている。back numberの曲の歌詞のように、古今東西女々しい男はとこと…

  • 意外すぎる!?芥川賞を受賞していない有名作家まとめ

    芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 実力のある作家に賞を与えて世に送り出してきた芥川賞だが、一部の作家は正当に評価できていなかったという声もある。実力はあるが、意外にも芥川賞を受賞していない作家もいるのだ。そんな実力があるが芥川賞を受賞してない有名作家を紹介したい。 芥川賞とはどんな文学賞? 芥川賞を受賞していない作家 太宰 治 中島敦 三島由紀夫 津島佑子 村上春樹 高橋源一郎 島田雅彦 山田詠美 吉本ばなな 松浦理英子 星野智幸 舞城王太郎…

  • 小説家の視点で名作古典作品を読みなおす / 『小説の読み書き』 佐藤 正午

    佐藤正午が名作古典を読みなおす 小説を読むことは、小説を書くことに繋がる。小説を読む中で、読者はそれぞれの解釈を行い、そのつど新たな解釈が生まれてくる。文字通り、読者の数だけ解釈がある。 この『小説の読み書き』では、佐藤正午の目線から名作古典を読みなおし、小説家視点からの小説の書き方を考えていく。読みなおす小説は夏目漱石『こころ』や川端康成『雪国』、太宰治『人間失格』、谷崎潤一郎『痴人の愛』といった有名どころの小説から、横光利一『機械』や永井荷風『つゆのあとさき』といった有名ではないが文学好きなら知っているマイナーな小説までと様々だ。それぞれの小説の文体を中心に読み解いていく。 永井荷風『つゆ…

  • バルセロナでの情熱的な恋愛模様 / 『それでも恋するバルセロナ』 ウディ・アレン

    『マッチポイント』・『タロットカード殺人事件』につづいてスカーレット・ヨハンソンを主役に据えたウディ・アレン監督の恋愛映画。一筋縄では行かない大人の恋愛模様を描いた恋愛映画。人生のほろ苦さや現実を突きつけてくる、ウディ・アレン監督らしい映画だ。舞台はスペインで、観ているとスペイン観光をした気分にもなれる。ここ最近、ウディ・アレン監督はイギリスやスペイン、フランスと映画を撮る場所が映画によって違うな。 いろいろややこしい大人の恋愛模様 この映画を簡単に要約すると、ひとりのスペイン人男性・アントニオを四人の女が奪い合うという話だ。こう書いてみると、昼ドラの30倍ぐらいドロドロした映画に思えるが、実…

  • 人生は同じところを回り続ける観覧車 / 『女と男の観覧車』 ウディ・アレン

    同じところを回り続ける観覧車 映画『女と男の観覧車』本国オリジナル予告編(日本語字幕) ウディ・アレンの映画を観ていると、何故か観覧車を思い浮かべることがある。 ストーリーの中で、主人公の人生に劇的な出来事が起こるけれど、最終的には収まるところに収まって、結局のところ元通りになっている。そのストーリーは、素晴らしい景色が見える場所に運んでくれるが、元の場所に戻ってくる観覧車のよう。人生は簡単に変わらないという諦念を示しているのかもしれない。ウディ・アレンの最新作『女と男の観覧車』は、タイトルに観覧車とあるように、どこにもたどり着くことのできない男女とその人生の行き詰まりを描いた映画だ。軽妙なジ…

  • ともにW受賞!第168回芥川賞・直木賞の受賞作が決定!

    第168回芥川賞・直木賞の受賞作が1/19に決定した。 芥川賞は井戸川射子の「この世の喜びよ」(群像7月号)と佐藤厚志の「荒地の家族」(新潮12月号)のW受賞に決まった。 直木賞は小川哲の「地図と拳」と千早茜の「しろがねの葉」に決まった。こちらもW受賞だ。 各受賞作の詳細について紹介したい。 第168回芥川賞の受賞作の紹介 第168回芥川賞候補作は、安堂ホセ『ジャクソンひとり』、井戸川射子『この世の喜びよ』、グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』、佐藤厚志『荒地の家族』、鈴木涼美『グレイスレス』の5作品だ。 5人中4人が初のノミネートで、フレッシュな顔ぶれがそろう。複数回候補になっているのは、鈴…

  • セックスレスが題材になった小説まとめ

    奥様はクレイジーフルーツ / 柚木 麻子 奥様はクレイジーフルーツ (文春文庫) 作者:麻子, 柚木 文藝春秋 Amazon 結婚して三年ほどの三十歳の主婦、初美。編集者の夫とは仲が良く、優しい彼に不満はないが、夜の営みが間遠に。欲求不満で同級生の男と浮気をしそうになったり、義弟に妄想、浪人生を誘惑、果ては乳房を触診する女医にまで発情する始末。夫婦はエロさから遠ざかる? 幸せとセックスレスの両立は難しい? よるのふくらみ / 窪 美澄 よるのふくらみ(新潮文庫) 作者:窪美澄 新潮社 Amazon 同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと、圭祐、裕太の兄弟。圭祐と同棲しているみひろは、長い間セ…

  • 売れない劇作家の不器用な恋 / 『劇場』 又吉 直樹

    売れない劇作家の青春と焦燥と挫折 高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった──。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。 歴代の芥川賞受賞作の中でも、『火花』は一番話題性があったと思う。その当時僕は書店で働いていて、又吉フィーバーを実感していた。売れないことで有名な文芸誌でさえ、「火花」が載った文學界の在庫は無くなっ…

  • 感傷家であると同時に小説家 / 『女について』 佐藤正午

    彼女はぼくと同じ18歳だった。初めての女性だった。好きかと尋ねられて頷いた―家族以外の女性についた初めての嘘。嘘を重ねるために他の女性を拾い、途切れ途切れに続いた彼女との関係も、ぼくが街を出ることで終止符が打たれた―。そして長い時を経て、ぼくは再び彼女と出逢った。(「糸切歯」)青春のやるせなさ、ほろ苦さを瑞々しい感性で描く秀作集。 面白さと一般的な知名度が相関していない作家といえば佐藤正午だと思う。実際、かなりの小説好きなら佐藤正午の作品の素晴らしさを知っている人が多いが、ライトな小説読者層には知名度がないように思う。 佐藤正午はジャンプから読み始めたのだけれど、すぐに佐藤正午の魅力に取り憑か…

  • 私小説とフィクションの間 / 『夏の情婦』 佐藤 正午

    佐藤正午初期の短編集 佐藤正午が好きな作家の一人だ。 ふとしたことで佐藤正午のジャンプを読み始めて、すっかりはまってしまった。もともと村上春樹や大崎善生のような感傷的な小説が好きだったので、佐藤正午はピンポイントではまってしまった。 好きなところは色々ある。過去の淡い恋愛を感傷的に描いたところや、私小説とフィクションの間のようなところ、洒脱な会話、練られた構成などなど。長編小説では時系列がシャッフルしていたりと構成が凝っている。一方で短編小説では私小説とフィクションの間ともいえるような身近な恋愛話が綴られることが多い。佐藤正午の短編を読むたびに思うことは、私小説として読めそうなフィクション。佐…

  • 佐藤正午のデビュー作 / 『永遠の1/2』 佐藤 正午

    佐藤正午のデビュー作 どんな小説家にも、一つだけ、アマチュアとして書いた小説があると佐藤正午はいう。その小説が人目に触れ、本になるとデビュー作と呼ばれ、書いた人は小説家と呼ばれるようになる。佐藤正午がアマチュアとして書いたのがデビュー作『永遠の1/2』だ。佐藤正午は『永遠の1/2』で第七回すばる文学賞を受賞し、プロの小説家となった。そして、『ジャンプ』や『Y』、『鳩の撃退法』などの名作を生み出し、『月の満ち欠け』で直木賞を受賞するに至った。長崎から出ることなく、小説を書き続けている。(直木賞の授賞式にも来なかった)僕は大学生になってから佐藤正午にはまり、著作を読みふけった。軽妙でユーモアあふれ…

  • スペインの雨はどこに降る?/ 『スペインの雨』 佐藤 正午

    『月の満ち欠け』で直木賞を受賞し注目を集める佐藤正午の短編集 知る人ぞ知る作家・佐藤正午が直木賞受賞で注目を集めている。直木賞の授賞式は欠席したらしいが。『スペインの雨』はそんな佐藤正午の短編集だ。佐藤正午本人を思わせるような小説家を主人公に据えた短編が収録されている(「ジョン・レノンが撃たれた日」、「恋」、「木にのぼる猫」、「コンドーム騒動」、「ほくろ」、「ルームメイト」)。私小説のようなテイストの短編が多く収録されている。その他には「いつもの朝に」、「クラスメイト」、テレクラを通じての人妻との出会いと別れを「スペインの雨」が収録されている。感傷的な雰囲気が漂う短編集。 小説が生まれる舞台裏…

  • 佐藤正午の隠れた名作 / 『取り扱い注意』 佐藤 正午

    佐藤正午の隠れた名作 佐藤正午自身余り知名度がないのだけど、その佐藤正午の小説の中でも取り扱い注意は知名度が低い。この小説はとにかく変則的だ。時系列はバラバラになっているし、出てくる登場人物も普通からは縁遠い人たちだ。会話がとにかく秀逸なのである。 取り扱い注意 (角川文庫) 作者:佐藤 正午 KADOKAWA Amazon

  • ウディ・アレンのコメディミステリー / 『マンハッタン殺人ミステリー』 ウディ・アレン

    肩の力を抜いて観れるコメディタッチのミステリー www.youtube.com ふと、ウディ・アレンの映画が観たくなるときがある。疲れているから重い映画は見たくないけれど、軽いコメディは見たい。そんなときは間違いなくウディ・アレンの映画をみる。ウディ・アレンの映画はストーリーを楽しむというよりも、登場人物たちの軽妙な掛け合いを楽しみたいから観ているような気がする。ウイットに富んだウディ・アレン節を味わいたいときがしばしば訪れるのだ。 『マンハッタン殺人ミステリー』はそんな肩の力を抜いて観れるコメディタッチのミステリーだ。ちょうどタロットカード殺人事件と同じような感じだ。登場人物たちの掛け合いは…

  • 池田満寿夫記念館に行ってきた

    画家、版画家、陶芸家、作家、映画監督として活躍した芸術家を知っているだろうか? 多才さを発揮したこの芸術家は、池田満寿夫だ。エロスの作家とも呼ばれ、官能的な作風の作品を多く残した。 エーゲ海に捧ぐ (中公文庫) 作者:池田 満寿夫 中央公論新社 Amazon 小説で言えば、『エーゲ海に捧ぐ』はその前衛性と官能性で話題になった。サンフランシスコのアトリエにいる彫刻家に日本の妻から国際電話がかかってくるのだが、彫刻家の目の前には白人女性たちが痴態を繰り広げるという話だ。あらすじからして、センセーショナルなことが分かってもらえると思う。 この作品で池田満寿夫は第77回芥川賞を受賞したのだが、あまりに…

  • 人生は何でもあり! / 『人生万歳』 ウディ・アレン

    www.youtube.com 人生はなんでもありだなと思わせてくれる映画がある。それがウディ・アレンの『人生万歳!』という映画だ。比較的最近のウディアレンの映画で、知名度はあまりないかもしれない。どちらかというと秀作の部類に入るのではないか。 ウディアレンの映画らしく、ちょっとひねくれたアレン節が炸裂したドタバタコメディになっている。肩の力を抜いて楽しめる映画だ。いつも通り人生への諦念に満ちてはいるけど、吹っ切れた感じもあり人生を肯定してくれるような映画だ。 主人公は偏屈な物理学者ボリス。かつてはノーベル賞物理学賞の候補になっていたが、今は落ちぶれている。そんなボリスはひょんなことから、家出…

  • 二本の直線のように交わる人生 / 「石のまくらに」 村上 春樹

    村上春樹の小説世界では、すんなりと男女が関係を持つ。それはもう息を吸うように。「石のまくらに」という短編も村上春樹にありがちな男女が流れで関係を持つ系の話だ。この短編は最新刊の短編集『一人称単数』に収録されている。元は文學界に掲載された「三つの短い話」のくくりで発表されている。この短編集全般に言えることだけど、人生を俯瞰して過去の話を思い返すというスタイルの短編が多い。これは村上春樹が年をとったからなのかなとちょっと思っている。 『一人称単数』というタイトルのように、人称は「僕」が使われている。数ある人生の可能性の中から、一人称単数として選んできた人生を振り返る意味合いなのではないかと思う。村…

  • 『〇〇夫人』と言うタイトルの小説はほとんどが不倫の話になっている説

    〇〇夫人というタイトルを聞くと幼い頃にちらっと見た『真珠夫人』のことを思い出す。このドラマは、the昼ドラと言えるような内容だった。『真珠夫人』には原作小説があって、菊池寛が同名タイトルで小説を書いている。 こんな感じで小説には〇〇夫人というタイトルのものがいくつかある。これは自説なのだが、〇〇夫人というタイトルの小説は大体が人妻の貞操に関しての小説になっている。 自説を検証するべく、〇〇夫人というタイトルの小説を紹介したい。

  • おしゃれ映画の代名詞!ウディ・アレン監督のおすすめ映画10選

    多くの人に愛されているウディ・アレン作品 『映画と恋とウディ・アレン』予告編 ある時は人生の不条理をコミカルに描き、ある時はラブストーリーをロマンチックに演出してきたウディ・アレン監督。アカデミー賞に何度もノミネートされ、今でも精力的に映画を撮り続けている。人生の不条理や人生への皮肉を描いてきたウディ・アレンの映画は多くの人に愛されてきた。 BGMのジャズや、気の利いたジョークや洒脱な会話といい、ウディ・アレンの映画はおしゃれ映画の代名詞だ。最近では、ウディ・アレン監督自身のスキャンダルで逆風が吹いているけれども、ウディ・アレンの映画の面白さは変わらないと思う。個人的におすすめの10作品を紹介…

  • 待ち人来ず!待っていてもこない不条理小説まとめ

    小説の中には、待っているものや人が来ないということを題材とした小説がある。個人的に、これらの小説を待ちぼうけ小説と勝手に読んでいる。 眠れる森の美女は王子様が来るまで眠りながら待ち続けているが、来るかわからないものを待ち続けるというのは不条理なことだ。 気になる女の子をデートに誘ったけど、やってこない時にでも読んでみてほしい(絶対に違う)。冗談はさておいて、待つことの不条理を扱った小説・戯曲を紹介していきたい。 ゴドーを待ちながら / サミュエル・ベケット タタール人の砂漠 / ブッツァーティ シルトの岸辺 / ジュリアン・グラック 夷狄を待ちながら / クッツェー ゴドーを待ちながら / サ…

  • 考察のお供に!夏目漱石『こころ』の解説本・評論を紹介する!

    夏目漱石の『こころ』といえば、男女の三角関係を描いた名作小説だ。 高校の国語で扱うことが多いと思うが、『こころ』の解釈は想像以上に多数ある。 そんな時に役に立つのが、研究者や文芸評論家が書いた研究本や解説本だ。数多くある夏目漱石『こころ』の解説本・評論本・研究書の中でおすすめを紹介したい。

  • 徹底考察「羅生門」 / 作中の季節・時代は何か?

    芥川龍之介の名作短編小説として有名なのが「羅生門」だ。 高校の授業で扱うこともあり、読んだことがある人は多いだろう。 役人が門の上で死人の髪を盗んでいる老婆を見つけ、老婆の衣を奪って去るという衝撃的な内容だ。 この記事では、「羅生門」の時代設定や季節、時刻について説明したい。 結論を先に書くと、作中の季節は冬に近い秋頃で、時代は平安時代末期、 時刻は午後5時から6時~7時から8時ごろの夕刻だと推定される。 「羅生門」とは? 作中の舞台設定について(時代・季節・時間帯) 作中の季節が秋である理由 「羅生門」とは? 羅生門 作者:芥川 竜之介 Amazon 芥川龍之介の名作「羅生門」は、下人が門の…

  • 第168回芥川龍之介賞の受賞作を予想する!

    2023年が始まって数日が経ったが、そろそろ気になってくるのが芥川賞の受賞予想だろう。 大半の人は気になっていないかもしれないが、芥川賞受賞作を予想していこうと思う。年末年始に候補作を読んだので感想も合わせて書きたい。 皆さんご存知かもしれないが、第168回芥川賞候補作は、安堂ホセ『ジャクソンひとり』、井戸川射子『この世の喜びよ』、グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』、佐藤厚志『荒地の家族』、鈴木涼美『グレイスレス』の5作品だ。 5人中4人が初のノミネートで、フレッシュな顔ぶれがそろう。複数回候補になっているのは、鈴木涼美だけで、今回が2回目のノミネートだ。 この記事では、各候補作品/候補者の…

  • 栄冠は誰の手に!?第168回直木賞の候補作を紹介する!

    1月の中旬には芥川賞・直木賞の発表がある。 当ブログでは芥川賞メインで紹介してきたのだが、今回から直木賞も紹介するようにした。 そもそも私は直木賞をそんなに信用していない。なぜ権威が高い直木賞を信頼していないのかというと、ある作家の扱いにある。まずそれを先に書いておこう。 直木賞を受賞していない超有名作家は数多くいる。伊坂幸太郎や森見登美彦、万城目学がそうだ。いずれも直木賞を受賞してそうな面々だ。まあ、文学賞を受賞しているかどうかは作品の良さに関係するわけではないと思っている。 その中でも、僕が個人的に憤慨しているのは佐藤正午という作家の扱いだ。佐藤正午はもうすでに『月の満ち欠け』で直木賞を受…

  • 読書好き必見!文豪が愛した温泉旅館を紹介!

    文豪と温泉には深い関係がある。川端康成などの文豪は旅館に泊まりながら執筆することが多かった。今も読まれ続ける名作の誕生の裏には、日本の温泉地があったのだ。 僕も温泉に浸かり旅館で優雅に在宅勤務をしたい…そんな僕のささやかな夢は叶いそうにないので、文豪が宿泊した温泉旅館を紹介していこうと思う。 川端康成が『雪国』を執筆した宿 / 越後湯沢温泉 雪国の宿 高半 川端康成が伊豆の踊子を執筆した宿 / 湯ヶ島温泉 湯本館 志賀直哉が「城の崎にて」を執筆した宿 / 城崎温泉 登録有形文化財の宿 三木屋 川端康成が『雪国』を執筆した宿 / 越後湯沢温泉 雪国の宿 高半 越後湯沢湯元 卵の湯 雪國の宿 高半…

  • 卯年に読みたい!タイトルにウサギが入る小説まとめ

    年が明けましたね。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 今年は平和で良い年になってほしいな。 元旦なのでお正月らしい記事を書いてみようと思う。 今年は卯年なので、タイトルにうさぎと入る小説を紹介したいと思う。 『楽隊のうさぎ 』 / 中沢 けい 『ホワイトラビット 』 / 伊坂 幸太郎 『ラビット病』 / 山田 詠美 『兎の目』 / 灰谷 健次郎 『うさぎパン』 / 瀧羽 麻子 『悪いうさぎ』 / 若竹 七海 『モモコとうさぎ』 / 大島 真寿美 『ウサギの乱』 / 霞 流一 (adsbygoogle = window.adsbygoogle []).push({…

  • 2022年のブログを振り返る

    特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと」ということで、この記事では2022年の当ブログについて振り返っていこうと思う。今年は昨年に比べてブログに力を入れてきたのでその結果について紹介したい。 あとは2023年の抱負やブログの目標、やりたいことなどを書いていきたいと思う。 2022年の振り返り 2022年のアクセス数の推移 はてなブックマーク砲を初めて経験 ブログの収益について 2023年の抱負・目標・やりたいこと 月間30万PVを目指す! 1月は毎日記事投稿する 来年は村上春樹、夏目漱石、近代文学の考察記事を重点的に書く ブログに紐付けたInstagramを稼働させる (ads…

  • 小説で今年を振り返る!2022年話題になった小説まとめ

    2022年もあと少しで終わる。 年初には新型コロナの流行が収まって回復の年になるかと思っていたが、蓋を開けてみればロシアのウクライナ侵攻や安倍元首相の殺害事件と混迷の一年となった。また、各国でインフレが止まらず、日本においては円安が止まらなくなり生活が苦しくなる辛抱の一年だった。 来年こそは良い一年になってほしい。来年の年末には笑顔で良い一年だったねと言える一年になればいいなと思う。 混迷を極めた2022年だが、話題になった小説で振り返ってみたいと思う。芥川賞や直木賞、三島由紀夫賞、本屋大賞の受賞作や候補作など、話題になった小説をまとめてみた。

  • Audible(オーディブル)で聴ける伊坂幸太郎作品を紹介!

    鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めている伊坂幸太郎。 巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。時系列がバラバラであったりと小説の構成が凝っていて、どんでん返しなどが仕掛けられた小説が多い。 伊坂幸太郎の魅力のひとつが、ウィットに富んだ文体だ。登場人物たちのウィットに富んだセリフが伏線にもなっていて、伊坂幸太郎おそるべしとしか言いようがない。特に「陽気なギャング」シリーズは伊坂作品の中でも会話のユーモアが多くてオススメだ。登場人物たちの洒脱でユーモアに溢れた会話が心地よすぎて、何度も読んでしまう。 そんな伊坂幸太郎の小説だが、いくつかはAudible(オーデ…

  • 映画でムラカミワールドを堪能!村上春樹原作の映画まとめ

    日本を代表し、世界中で読まれている村上春樹作品。卓越した比喩と、謎めいたストーリー、ムラカミワールドとしか形容のできない唯一無二の世界観、村上春樹の魅力を語り出すとキリがない。 村上春樹作品が持つ雰囲気は映像化するのが難しいと思うのだが、これまでにいくつか映画化されている。映画によっては忠実に映画化したものと独自の脚色を加えたものがある。村上春樹原作の映画を紹介しよう。 風の歌を聞け 100%の女の子・パン屋襲撃 森の向う側 トニー滝谷 神の子どもたちはみな踊る ノルウェイの森 バーニング ハレナイ・ベイ ドライブ・マイ・カー 番外編 『ドリーミング村上春樹』 番外編 『村上春樹 映画の旅』 …

  • 意外と三角関係が多い?夏目漱石のおすすめ小説5選!

    夏目漱石の前期三部作・後期三部作について解説した記事です。前期三部作の三四郎・それから・門、後期三部作の彼岸過迄・行人・こころの内容についても解説してます。

  • 第168回芥川龍之介賞の候補作を紹介する!

    本日早朝(朝五時)に、第168回芥川賞の候補作が発表された。 なぜこの時間帯なのかと毎回思う。話を戻そう。 第168回芥川賞候補作は、安堂ホセ『ジャクソンひとり』、井戸川射子『この世の喜びよ』、グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』、佐藤厚志『荒地の家族』、鈴木涼美『グレイスレス』の5作品だ。 5人中4人が初のノミネートで、フレッシュな顔ぶれがそろう。複数回候補になっているのは、鈴木涼美だけで、今回が2回目のノミネートだ。 安堂ホセさんは、今年の文芸賞を受賞したデビュー作で候補入り。人を属性でカテゴライズすることの暴力性を描いた。 候補作は、佐藤厚志さんは17年デビュー。仙台市在住で、「災厄」を…

  • 子どもたちから公園を奪ったのは誰か? / 「公園」 三崎 亜記

    「子どもがうるさい」との住民の苦情により、子どもたちが利用する公園が廃止されることになったというニュースが話題を集めている。 廃止となったのは長野市にある青木島遊園地。市側は改善を続けたが、住民から騒音の訴えは変わらず、公園を利用する子どもはほとんどいなくなったようだ。公園には草刈りなどの維持費が必要だ。また、民間から借りている土地なので借地料もかかるので、利用者のいなくなった公園は廃止せざるを得ない状況に追い込まれていたのだ。 子どもの時に公園で散々遊んだ僕としては、子どもの遊び場を奪ってしまうのはどうかと思うが。 これは極端な事例だと思うが、苦情によって公園が姿を帰るというのはよくあること…

  • 白色って200色あるねん!表紙が白い本をまとめてみた

    皆さんご存知だろうか、白には200色あるということを。 某アンミカさんによると白色には200色の違いがあるようだ。(出典:2021年8月20日『人志松本の酒のツマミになる話』) この名言は、テレビ番組でアンミカさんの「小っちゃい物の良い所をコップ一個でもタオル1個でも探すのが好き」という発言に対し、千鳥のノブが「そのタオルも褒めれます?」と尋ねたことが発端だ。その後にアンミカさんの歴史的な名言、「白って200色あるねん」が生まれたのである。 私自身、白色に200色もあると思っていなかった。 白色を200色見極める能力を1アンミカと定義すると、私の能力はおそらく0.05アンミカ程度だろう。 話が…

  • 友情と恋愛、どちらを取る?/ 『友情』 武者小路実篤

    『友情』というタイトルから、友情の素晴らしさを描いた小説だと思った人は多いだろう。僕もそうだった。しかし、武者小路実篤の『友情』という小説は、爽やかな青春小説の対極にあるような、友情と恋愛の間での葛藤を描いた恋愛小説だ。夏目漱石の『こころ』や『それから』のような三角関係を描いた内容となっている。作中でも『それから』が出てきていて、夏目漱石の作品へのオマージュが散りばめられている。夏目漱石の作品と違うのは、主人公が好きな人を友人に取られるという点だ。『こころ』では主人公が友情と恋愛どちらを取るか悩むが、『友情』では主人公の立場が友人に裏切られる側である。 「人は、友のへの義理(友情)よりも、自然…

  • 奇々怪々!世にも奇妙な物語みたいな短編小説10選

    「世にも奇妙な物語」をご存知だろうか? 「恐怖系」、「コメディ系」、「感動系」 、「意味不明系」といった奇妙なテイストのオムニバスドラマだ。ストーリーテラーのタモリが印象的なフジテレビのご長寿シリーズである。 この記事では、「世にも奇妙な物語」に似たテイストの短編小説をストーリーテラーのタモリさん風に紹介したい。 あなたも小説を読んで奇妙な世界に迷い込んでみませんか? 『鼓笛隊の襲来』 / 三崎 亜記 『バスジャック』 / 三崎 亜記 『ニセモノの妻』 / 三崎 亜記 『ZOO』 / 乙一 『失われる物語』 / 乙一 『超・殺人事件』 / 東野 圭吾 『殺人出産』 / 村田 沙耶香 『パン屋再…

  • ビター&スイートな大人のおとぎ話 / 『カフェ・ソサエティ』 ウディ・アレン

    ウディ・アレン監督の新たな21世紀ベスト作品! お洒落なBGMが流れ、真っ暗なスクリーンにタイトルが浮かび上がるオープニング。このウディ・アレン印のオープニングを観ると、今年もウディ・アレンの映画を観れると顔がにやついてくる。前作の『教授のおかしな妄想殺人』(日本語タイトルが微妙だと思っている)は、『恋のロンドン狂騒曲』みたいにかなりシニカルで皮肉が効いている映画だったので今年はどうなるのかと思っていたけど、『カフェ・ソサエティ』ウディ・アレンの21世紀ベスト作品じゃないか!他のウディ・アレン監督作品に例えると『ミッドナイトインパリ』の甘美なノスタルジーと『アニー・ホール』の恋愛のほろ苦さを足…

  • まさに変化球!一風変わったポストモダン野球小説まとめ

    野球をモチーフにした小説と言えば何を思い浮かべるだろうか? 大抵の方は、『バッテリー』といった王道の野球青春小説を思い浮かべるかもしれない。だが、個人的に野球小説といえば一癖も二癖もあるポストモダン的な野球小説が思い浮かぶ。『バッテリー』が王道の野球小説、いわばストレートとすれば、変化球のようなクセのある野球小説を紹介したい。 ニーズがあるのかは分からないのだけれど(多分無い)、参考になれば幸いだ。 ユニヴァ―サル野球協会 『 素晴らしいアメリカ野球』 / フィリップ・ロス 『優雅で感傷的な日本野球』 / 高橋 源一郎 『オブ・ザ・ベースボール』 / 円城 塔 ユニヴァ―サル野球協会 ユニヴァ…

  • 現実離れしたトリックが魅力!おすすめのバカミス12選

    バカミスというミステリのカテゴライズをご存知だろうか? この「バカ」だが、決して小説をバカにした意味合いではなく、「そんなバカな!」という驚きの意味を込めたものだ。思わず「そんなバカな!」と驚いてしまうほどの意外性のあるトリックや、現実性をガン無視したアクロバティックなトリックが特徴だ。人によっては起こってしまうかもしれない。 「普通のミステリじゃ満足できない」「意外性のあるトリックに驚きたい」という人にこそバカミスを薦めたい。バカミスは意外性・娯楽性を過剰に追求した結果、ありえない展開が多々起こるがそこは多めにみてほしい。 普通のミステリに満足できなくなり、バカミスをこよなく愛している僕が厳…

  • 文学界を揺るがした「こころ論争」とは?

    夏目漱石の『こころ』といえば男女の三角関係を描いた名作小説だ。高校の国語の授業で扱われるので、読んだことがある人が大半なのではないかと思う。 夏目漱石『こころ』だが、その解釈を巡って「こころ」論争と呼ばれる文学論争があったのはご存知だろうか?夏目漱石『こころ』の解釈をめぐって論争が起こったのである。1980年代の出来事である。 『こころ』論争とは、小森陽一や石原千秋らのテクスト論派と、三好行雄といった作品論派の間に起きた夏目漱石『こころ』の解釈をめぐる論争である。テクスト論を活用した現代文学理論派と、作品論が中心の守旧派との対立だ。テクスト論派が、「私」は先生の死後にお嬢さんと共に生きている…

  • デタッチメントという観点からの考察 / 「TVピープル」 村上 春樹

    「TVピープル」は、タイトル通りTVピープルという不思議な小人が登場する村上春樹の短編小説だ。世にも奇妙な物語にありそうなストーリーだなと思う。短編集『TVピープル』の表題作でもあるので、村上春樹の短編の中でも有名ではなかろうか。 『ノルウェイの森』・『ダンス・ダンス・ダンス』執筆後のスランプ後に書かれた短編小説が「TVピープル」であった。村上春樹自身も、それが復帰の瞬間だったと語っている。 どこかマジックリアリズムぽさがある「TVピープル」だが、人間関係の希薄さや疎外感がテーマになっているように思う。村上春樹作品の主人公は周囲から距離を置く傾向があるが、「TVピープル」ではかなりその傾向が強…

  • 伊坂幸太郎の最高傑作を独断で選出する

    伊坂幸太郎は日本で大人気の作家の一人だと思う。 緻密に張り巡らされた伏線、個性的なキャラクターと軽妙な語り口、ウィットに富んだ文章が魅力だ。 特に巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。作中に張り巡らされた伏線が、後半にかけて回収されていく様はとても鮮やかで気持ちがいい。小説の構成も凝っているものが多く、どんでん返しが仕掛けられた小説もある。『ホワイトラビット』や『アヒルと鴨のコインロッカー』には本当に驚かされた。 数多くの名作を生み出している伊坂幸太郎だが、最高傑作は何だろうか? 「あれも面白かったし、あの作品も捨てがたい」と、名作が多すぎてなかなか1つの作品に絞ることができなかった。かなり…

  • 森鴎外『舞姫』を読むならちくま文庫版を推したい件について

    森鴎外の『舞姫』といえば、知識人(エリート)の挫折と苦悩を描いた名作だろう。 高校国語で勉強するので、大抵の人は読んだことがあるはずだ。 ドイツでエリスと恋に落ち、エリスに子どもを身篭らせるも、ついにはエリスを捨てて日本に帰国した豊太郎には賛否が分かれるだろう。いや、否定の方が圧倒的に多いか。 文学作品には女性の妊娠が鍵となる小説が数多く描かれている。文芸評論家の斎藤美奈子の言葉を借りれば「妊娠小説」だ。森鴎外の『舞姫』は日本の「妊娠小説」の系譜の祖と言えるような小説だ。 また文章が文語体で書かれているのも特徴で、読むに苦労した人も多いことだろう。筆者は高校の時に現代文の授業で「舞姫」を受けた…

  • フィクションは人生に必要か? / 『カイロと紫のバラ』 ウディ・アレン

    人はなぜ映画を観るのだろう? 人生における映画(フィクション)の役割とは何か? そんな問いに答えるのがウディ・アレンの隠れた名作『カイロの紫のバラ』だ。この映画では、映画そのものが題材になった作品だ。劇中では、映画の画面から登場人物が出てくるというメタフィクション的な演出がなされている。 主人公のセシリアは惨めな生活と愛のない夫婦生活から逃れるようにして、映画に夢中になっている。セシリアが夢中になっていたのは「カイロと紫のバラ」という映画。ある時、「カイロと紫のバラ」から主人公・トムが第四の壁を破り、現実世界に出てきてしまう。映画の中も大騒ぎになり、セシリアはトムと逃避行することになるのだが.…

  • 村上春樹とゴダール

    村上春樹作品にはよく映画が登場する。映画そのものが登場するときもあれば、比喩表現として登場するときもある。村上春樹作品は映画から多大なる影響を受けていると言われることも多い。最近では村上春樹と映画の関係について考察した「村上春樹 映画の旅」という展覧会も開催されていた。 村上春樹と関係がありそうな映画監督としてはジャン=リュック・ゴダールが思い浮かぶ。 ジャン=リュック・ゴダールは、新しい表現技法を追求したフランス映画の潮流・ヌーヴェルヴァーグの巨匠だ。ジャンプカットや手持ちカメラ、書物から引用、原色を多用した色彩の演出が特徴である。「小さな兵隊」や「勝手にしやがれ」、「女は女である」、「アル…

  • 謎解き『すずめの戸締まり』 / 村上春樹「かえるくん、東京を救う」から考察する

    www.youtube.com 今年の11月11日に新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が公開される。 水溜りの上にある扉の印象的なビジュアル、観るものを圧倒する華麗な情景描写。予告を観ただけでも期待が高まる。 音楽は、『君の名は。』と『天気の子』に引き続きRADWIMPSが担当する。映画の予告映像で流れている「すずめ」は、RADWIMPSが作詞作曲で女性ボーカルの十明(とあか)が歌唱している。また、主題歌の「カナタハルカ」はRADWIMPSが歌唱している。 ネタバレしない程度に簡単に書くと、『すずめの戸締まり』は天災に真っ向から向き合ったロードムービーだ。これまで新海誠監督は『君の名は。』…

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