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日々の栞 https://plutocharon.hatenablog.com

本、映画、について気ままに書くブログ。理系の元書店員。村上春樹や純文学などの小説について考察や感想を書いていきます。

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2022/04/14

  • 村上春樹の幻の小説「街と、その不確かな壁」を読む方法

    街とその不確かな壁 作者:村上 春樹 新潮社 Amazon その街に行かなくてはならない。なにがあろうと――〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行される。待ちきれない人も多いのではないだろうか。『一人称単数』といった短編集は出版されてきたが、新作の長編小説は久しぶりだ。長編だと、2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる。 『街とその不確かな壁』の発売を受けて注目を集めている村上春樹の中編小説…

  • ミステリ界の一発屋!?一作だけの幻のミステリ作家まとめ

    一時的にのみ活躍を見せた歌手や芸人を一発屋と読んだりする。一発屋というと芸人のイメージが強いかもしれない。 だが、ミステリ作家にも一発屋はいる。インパクトのあるトリックでデビューしたものの、その後の作品が続かない作家のことだ。 この記事では、デビュー作で爪痕を残したものの次回が出ていない作家を紹介する。 『消失!』 / 中西 智明 消失! (講談社文庫) 作者:中西 智明,菊地 信義,辰巳 四郎,Yoshi 講談社 Amazon 高塔市―赤毛の人々が数多く住む奇妙な街で、その事件は起こった。美しい赤毛の持ち主ばかりを次々に殺害し、忽然と「消失!」する黒ずくめの男の謎。痕跡ゼロ、関連性ゼロの完全…

  • 意外すぎる!?芥川賞を受賞していない有名作家まとめ

    芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 実力のある作家に賞を与えて世に送り出してきた芥川賞だが、一部の作家は正当に評価できていなかったという声もある。実力はあるが、意外にも芥川賞を受賞していない作家もいるのだ。 かつて選考委員だった池澤夏樹は、「かつて芥川賞は村上春樹、吉本ばなな、高橋源一郎、島田雅彦に賞を出せなかった。」というコメントを残している。 そんな実力があるが芥川賞を受賞してない有名作家を紹介したい。 芥川賞とはどんな文学賞? 芥川賞を受…

  • 社会現象にも!話題になった芥川賞受賞作品まとめ

    芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 芥川賞は文学賞の中でも特に有名なこともあり、受賞作がベストセラーになったり、社会現象になったことも数多くあった。 歴代の芥川賞受賞作品の中でも、特に話題になった受賞作品について紹介したい。 芥川賞とはどんな文学賞? 社会現象にもなり、話題になった芥川賞受賞作品の紹介 太陽の季節 / 石原 慎太郎 されどわれらが日々 / 柴田 翔 赤頭巾ちゃん気をつけて / 庄司 薫 限りなく透明に近いブルー / 村上 龍 僕…

  • 『街とその不確かな壁』が待ちきれない人におすすめの村上春樹作品5選

    街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行される。待ちきれない人も多いのではないだろうか。『一人称単数』といった短編集は出版されてきたが、新作の長編小説は久しぶりだ。長編だと、2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる。 『街とその不確かな壁』は、1200枚の書き下ろし新作長編小説であるようで、今から読むのが楽しみである。Twitterなどでは、村上春樹新作長編のニュースで祭り状態になっていた。 刊行が待ちきれない人のために、『街とその不確かな壁』に向けておすすめの村上春樹作品を五つ紹介…

  • 村上春樹の新刊『街とその不確かな壁』を予想する試み

    www.nikkei.com 村上春樹の新作長編小説『街とその不確かな壁』が2023年4月13日(木)に刊行される。2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる書下ろし長編である。 街とその不確かな壁 作者:村上春樹 新潮社 Amazon 『街とその不確かな壁』は、1200枚の書き下ろし新作長編小説であるようだ。 村上春樹ファンのあいだでも話題になったのだが、村上春樹の幻の作品「街と、その不確かな壁」とタイトルがほとんど同じなのだ。新作長編の題名は、読点が一つ抜かれたものである。この点からも内容を予想できそうである。 また、新しい試みとして村上作品の長編では初めて刊行と同日に電子書…

  • 村上春樹の新刊が発売!『村上春樹新作長編(仮)』が楽しみすぎる件について

    www.nikkei.com 読書界隈をざわつかせるビックニュースが入ってきた。村上春樹の新作長編小説が2023年4月13日(木)に刊行されることが決定したのだ。新潮社から発表されたこのニュースは本好きに衝撃を与えた。 村上春樹新作長編(仮) 作者:村上 春樹 新潮社 Amazon 『村上春樹新作長編(仮)』は、1200枚の書き下ろし新作長編小説であるようだ。2017年2月刊行の『騎士団長殺し』以来、6年ぶりとなる書下ろし長編である。タイトルや物語のテーマはまだ公表されていない。やれやれ。 また、新しい試みとして村上作品の長編では初めて刊行と同日に電子書籍も配信するようだ。 今から読むのが楽し…

  • 翻訳家としての村上春樹!ハルキが翻訳した海外小説まとめ

    村上春樹といえば『ノルウェイの森』や『ねじまき鳥クロニクル』、『1Q84』などの小説で知られている日本を代表する小説家だ。 それだけでなく海外小説の翻訳も手掛けており、海外文学の紹介や翻訳を手がけるといった一面も持っている。村上春樹が手掛けた翻訳は、『ティファニーで朝食を』といった名作が多い。そこで、村上春樹が翻訳を手掛けた名作小説をまとめてみた。 グレート・ギャツビー / スコット・フィッツジェラルド 最後の大君 / スコット・フィッツジェラルド キャッチャー・イン・ザ・ライ / J.D.サリンジャー 心は孤独な狩人 / カーソン・マッカラーズ 結婚式のメンバー / カーソン・マッカラーズ …

  • 失った恋を取り戻そうとした男 /『グレート・ギャツビー』 スコット・フィッツジェラルド

    豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビー。彼の胸にはかつて一途に愛情を捧げ、失った恋人ディジーへの異常な執念が育まれていた……。第一次世界大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきな情熱に駆られた男の悲劇的な生涯を描き、何度も映画化された20世紀文学最大の問題作。滅びゆくものの美しさと、青春の憂愁を華やかに謳いあげる世界文学の最高峰。 女を二文字重ねて女々しいと書くけれど、本当に女々しいのは男の方ではないかと思う。 恋の思い出を、男は名前を付けて保存、女は上書き保存とよく言うが、かなり的を得ている。back numberの曲の歌詞のように、古今東西女々しい男はとこと…

  • 意外すぎる!?芥川賞を受賞していない有名作家まとめ

    芥川賞といえば純文学の登竜門的な賞だ。 純文学で優れた新人に与えられる賞で、安部公房や大江健三郎、中村文則、平野啓一郎、川上未映子、綿矢りさ、阿部和重など数多くの有名作家が受賞してきた。 実力のある作家に賞を与えて世に送り出してきた芥川賞だが、一部の作家は正当に評価できていなかったという声もある。実力はあるが、意外にも芥川賞を受賞していない作家もいるのだ。そんな実力があるが芥川賞を受賞してない有名作家を紹介したい。 芥川賞とはどんな文学賞? 芥川賞を受賞していない作家 太宰 治 中島敦 三島由紀夫 津島佑子 村上春樹 高橋源一郎 島田雅彦 山田詠美 吉本ばなな 松浦理英子 星野智幸 舞城王太郎…

  • 小説家の視点で名作古典作品を読みなおす / 『小説の読み書き』 佐藤 正午

    佐藤正午が名作古典を読みなおす 小説を読むことは、小説を書くことに繋がる。小説を読む中で、読者はそれぞれの解釈を行い、そのつど新たな解釈が生まれてくる。文字通り、読者の数だけ解釈がある。 この『小説の読み書き』では、佐藤正午の目線から名作古典を読みなおし、小説家視点からの小説の書き方を考えていく。読みなおす小説は夏目漱石『こころ』や川端康成『雪国』、太宰治『人間失格』、谷崎潤一郎『痴人の愛』といった有名どころの小説から、横光利一『機械』や永井荷風『つゆのあとさき』といった有名ではないが文学好きなら知っているマイナーな小説までと様々だ。それぞれの小説の文体を中心に読み解いていく。 永井荷風『つゆ…

  • バルセロナでの情熱的な恋愛模様 / 『それでも恋するバルセロナ』 ウディ・アレン

    『マッチポイント』・『タロットカード殺人事件』につづいてスカーレット・ヨハンソンを主役に据えたウディ・アレン監督の恋愛映画。一筋縄では行かない大人の恋愛模様を描いた恋愛映画。人生のほろ苦さや現実を突きつけてくる、ウディ・アレン監督らしい映画だ。舞台はスペインで、観ているとスペイン観光をした気分にもなれる。ここ最近、ウディ・アレン監督はイギリスやスペイン、フランスと映画を撮る場所が映画によって違うな。 いろいろややこしい大人の恋愛模様 この映画を簡単に要約すると、ひとりのスペイン人男性・アントニオを四人の女が奪い合うという話だ。こう書いてみると、昼ドラの30倍ぐらいドロドロした映画に思えるが、実…

  • 人生は同じところを回り続ける観覧車 / 『女と男の観覧車』 ウディ・アレン

    同じところを回り続ける観覧車 映画『女と男の観覧車』本国オリジナル予告編(日本語字幕) ウディ・アレンの映画を観ていると、何故か観覧車を思い浮かべることがある。 ストーリーの中で、主人公の人生に劇的な出来事が起こるけれど、最終的には収まるところに収まって、結局のところ元通りになっている。そのストーリーは、素晴らしい景色が見える場所に運んでくれるが、元の場所に戻ってくる観覧車のよう。人生は簡単に変わらないという諦念を示しているのかもしれない。ウディ・アレンの最新作『女と男の観覧車』は、タイトルに観覧車とあるように、どこにもたどり着くことのできない男女とその人生の行き詰まりを描いた映画だ。軽妙なジ…

  • ともにW受賞!第168回芥川賞・直木賞の受賞作が決定!

    第168回芥川賞・直木賞の受賞作が1/19に決定した。 芥川賞は井戸川射子の「この世の喜びよ」(群像7月号)と佐藤厚志の「荒地の家族」(新潮12月号)のW受賞に決まった。 直木賞は小川哲の「地図と拳」と千早茜の「しろがねの葉」に決まった。こちらもW受賞だ。 各受賞作の詳細について紹介したい。 第168回芥川賞の受賞作の紹介 第168回芥川賞候補作は、安堂ホセ『ジャクソンひとり』、井戸川射子『この世の喜びよ』、グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』、佐藤厚志『荒地の家族』、鈴木涼美『グレイスレス』の5作品だ。 5人中4人が初のノミネートで、フレッシュな顔ぶれがそろう。複数回候補になっているのは、鈴…

  • セックスレスが題材になった小説まとめ

    奥様はクレイジーフルーツ / 柚木 麻子 奥様はクレイジーフルーツ (文春文庫) 作者:麻子, 柚木 文藝春秋 Amazon 結婚して三年ほどの三十歳の主婦、初美。編集者の夫とは仲が良く、優しい彼に不満はないが、夜の営みが間遠に。欲求不満で同級生の男と浮気をしそうになったり、義弟に妄想、浪人生を誘惑、果ては乳房を触診する女医にまで発情する始末。夫婦はエロさから遠ざかる? 幸せとセックスレスの両立は難しい? よるのふくらみ / 窪 美澄 よるのふくらみ(新潮文庫) 作者:窪美澄 新潮社 Amazon 同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと、圭祐、裕太の兄弟。圭祐と同棲しているみひろは、長い間セ…

  • 売れない劇作家の不器用な恋 / 『劇場』 又吉 直樹

    売れない劇作家の青春と焦燥と挫折 高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった──。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。 歴代の芥川賞受賞作の中でも、『火花』は一番話題性があったと思う。その当時僕は書店で働いていて、又吉フィーバーを実感していた。売れないことで有名な文芸誌でさえ、「火花」が載った文學界の在庫は無くなっ…

  • 感傷家であると同時に小説家 / 『女について』 佐藤正午

    彼女はぼくと同じ18歳だった。初めての女性だった。好きかと尋ねられて頷いた―家族以外の女性についた初めての嘘。嘘を重ねるために他の女性を拾い、途切れ途切れに続いた彼女との関係も、ぼくが街を出ることで終止符が打たれた―。そして長い時を経て、ぼくは再び彼女と出逢った。(「糸切歯」)青春のやるせなさ、ほろ苦さを瑞々しい感性で描く秀作集。 面白さと一般的な知名度が相関していない作家といえば佐藤正午だと思う。実際、かなりの小説好きなら佐藤正午の作品の素晴らしさを知っている人が多いが、ライトな小説読者層には知名度がないように思う。 佐藤正午はジャンプから読み始めたのだけれど、すぐに佐藤正午の魅力に取り憑か…

  • 私小説とフィクションの間 / 『夏の情婦』 佐藤 正午

    佐藤正午初期の短編集 佐藤正午が好きな作家の一人だ。 ふとしたことで佐藤正午のジャンプを読み始めて、すっかりはまってしまった。もともと村上春樹や大崎善生のような感傷的な小説が好きだったので、佐藤正午はピンポイントではまってしまった。 好きなところは色々ある。過去の淡い恋愛を感傷的に描いたところや、私小説とフィクションの間のようなところ、洒脱な会話、練られた構成などなど。長編小説では時系列がシャッフルしていたりと構成が凝っている。一方で短編小説では私小説とフィクションの間ともいえるような身近な恋愛話が綴られることが多い。佐藤正午の短編を読むたびに思うことは、私小説として読めそうなフィクション。佐…

  • 佐藤正午のデビュー作 / 『永遠の1/2』 佐藤 正午

    佐藤正午のデビュー作 どんな小説家にも、一つだけ、アマチュアとして書いた小説があると佐藤正午はいう。その小説が人目に触れ、本になるとデビュー作と呼ばれ、書いた人は小説家と呼ばれるようになる。佐藤正午がアマチュアとして書いたのがデビュー作『永遠の1/2』だ。佐藤正午は『永遠の1/2』で第七回すばる文学賞を受賞し、プロの小説家となった。そして、『ジャンプ』や『Y』、『鳩の撃退法』などの名作を生み出し、『月の満ち欠け』で直木賞を受賞するに至った。長崎から出ることなく、小説を書き続けている。(直木賞の授賞式にも来なかった)僕は大学生になってから佐藤正午にはまり、著作を読みふけった。軽妙でユーモアあふれ…

  • スペインの雨はどこに降る?/ 『スペインの雨』 佐藤 正午

    『月の満ち欠け』で直木賞を受賞し注目を集める佐藤正午の短編集 知る人ぞ知る作家・佐藤正午が直木賞受賞で注目を集めている。直木賞の授賞式は欠席したらしいが。『スペインの雨』はそんな佐藤正午の短編集だ。佐藤正午本人を思わせるような小説家を主人公に据えた短編が収録されている(「ジョン・レノンが撃たれた日」、「恋」、「木にのぼる猫」、「コンドーム騒動」、「ほくろ」、「ルームメイト」)。私小説のようなテイストの短編が多く収録されている。その他には「いつもの朝に」、「クラスメイト」、テレクラを通じての人妻との出会いと別れを「スペインの雨」が収録されている。感傷的な雰囲気が漂う短編集。 小説が生まれる舞台裏…

  • 佐藤正午の隠れた名作 / 『取り扱い注意』 佐藤 正午

    佐藤正午の隠れた名作 佐藤正午自身余り知名度がないのだけど、その佐藤正午の小説の中でも取り扱い注意は知名度が低い。この小説はとにかく変則的だ。時系列はバラバラになっているし、出てくる登場人物も普通からは縁遠い人たちだ。会話がとにかく秀逸なのである。 取り扱い注意 (角川文庫) 作者:佐藤 正午 KADOKAWA Amazon

  • ウディ・アレンのコメディミステリー / 『マンハッタン殺人ミステリー』 ウディ・アレン

    肩の力を抜いて観れるコメディタッチのミステリー www.youtube.com ふと、ウディ・アレンの映画が観たくなるときがある。疲れているから重い映画は見たくないけれど、軽いコメディは見たい。そんなときは間違いなくウディ・アレンの映画をみる。ウディ・アレンの映画はストーリーを楽しむというよりも、登場人物たちの軽妙な掛け合いを楽しみたいから観ているような気がする。ウイットに富んだウディ・アレン節を味わいたいときがしばしば訪れるのだ。 『マンハッタン殺人ミステリー』はそんな肩の力を抜いて観れるコメディタッチのミステリーだ。ちょうどタロットカード殺人事件と同じような感じだ。登場人物たちの掛け合いは…

  • 池田満寿夫記念館に行ってきた

    画家、版画家、陶芸家、作家、映画監督として活躍した芸術家を知っているだろうか? 多才さを発揮したこの芸術家は、池田満寿夫だ。エロスの作家とも呼ばれ、官能的な作風の作品を多く残した。 エーゲ海に捧ぐ (中公文庫) 作者:池田 満寿夫 中央公論新社 Amazon 小説で言えば、『エーゲ海に捧ぐ』はその前衛性と官能性で話題になった。サンフランシスコのアトリエにいる彫刻家に日本の妻から国際電話がかかってくるのだが、彫刻家の目の前には白人女性たちが痴態を繰り広げるという話だ。あらすじからして、センセーショナルなことが分かってもらえると思う。 この作品で池田満寿夫は第77回芥川賞を受賞したのだが、あまりに…

  • 人生は何でもあり! / 『人生万歳』 ウディ・アレン

    www.youtube.com 人生はなんでもありだなと思わせてくれる映画がある。それがウディ・アレンの『人生万歳!』という映画だ。比較的最近のウディアレンの映画で、知名度はあまりないかもしれない。どちらかというと秀作の部類に入るのではないか。 ウディアレンの映画らしく、ちょっとひねくれたアレン節が炸裂したドタバタコメディになっている。肩の力を抜いて楽しめる映画だ。いつも通り人生への諦念に満ちてはいるけど、吹っ切れた感じもあり人生を肯定してくれるような映画だ。 主人公は偏屈な物理学者ボリス。かつてはノーベル賞物理学賞の候補になっていたが、今は落ちぶれている。そんなボリスはひょんなことから、家出…

  • 二本の直線のように交わる人生 / 「石のまくらに」 村上 春樹

    村上春樹の小説世界では、すんなりと男女が関係を持つ。それはもう息を吸うように。「石のまくらに」という短編も村上春樹にありがちな男女が流れで関係を持つ系の話だ。この短編は最新刊の短編集『一人称単数』に収録されている。元は文學界に掲載された「三つの短い話」のくくりで発表されている。この短編集全般に言えることだけど、人生を俯瞰して過去の話を思い返すというスタイルの短編が多い。これは村上春樹が年をとったからなのかなとちょっと思っている。 『一人称単数』というタイトルのように、人称は「僕」が使われている。数ある人生の可能性の中から、一人称単数として選んできた人生を振り返る意味合いなのではないかと思う。村…

  • 『〇〇夫人』と言うタイトルの小説はほとんどが不倫の話になっている説

    〇〇夫人というタイトルを聞くと幼い頃にちらっと見た『真珠夫人』のことを思い出す。このドラマは、the昼ドラと言えるような内容だった。『真珠夫人』には原作小説があって、菊池寛が同名タイトルで小説を書いている。 こんな感じで小説には〇〇夫人というタイトルのものがいくつかある。これは自説なのだが、〇〇夫人というタイトルの小説は大体が人妻の貞操に関しての小説になっている。 自説を検証するべく、〇〇夫人というタイトルの小説を紹介したい。

  • おしゃれ映画の代名詞!ウディ・アレン監督のおすすめ映画10選

    多くの人に愛されているウディ・アレン作品 『映画と恋とウディ・アレン』予告編 ある時は人生の不条理をコミカルに描き、ある時はラブストーリーをロマンチックに演出してきたウディ・アレン監督。アカデミー賞に何度もノミネートされ、今でも精力的に映画を撮り続けている。人生の不条理や人生への皮肉を描いてきたウディ・アレンの映画は多くの人に愛されてきた。 BGMのジャズや、気の利いたジョークや洒脱な会話といい、ウディ・アレンの映画はおしゃれ映画の代名詞だ。最近では、ウディ・アレン監督自身のスキャンダルで逆風が吹いているけれども、ウディ・アレンの映画の面白さは変わらないと思う。個人的におすすめの10作品を紹介…

  • 待ち人来ず!待っていてもこない不条理小説まとめ

    小説の中には、待っているものや人が来ないということを題材とした小説がある。個人的に、これらの小説を待ちぼうけ小説と勝手に読んでいる。 眠れる森の美女は王子様が来るまで眠りながら待ち続けているが、来るかわからないものを待ち続けるというのは不条理なことだ。 気になる女の子をデートに誘ったけど、やってこない時にでも読んでみてほしい(絶対に違う)。冗談はさておいて、待つことの不条理を扱った小説・戯曲を紹介していきたい。 ゴドーを待ちながら / サミュエル・ベケット タタール人の砂漠 / ブッツァーティ シルトの岸辺 / ジュリアン・グラック 夷狄を待ちながら / クッツェー ゴドーを待ちながら / サ…

  • 考察のお供に!夏目漱石『こころ』の解説本・評論を紹介する!

    夏目漱石の『こころ』といえば、男女の三角関係を描いた名作小説だ。 高校の国語で扱うことが多いと思うが、『こころ』の解釈は想像以上に多数ある。 そんな時に役に立つのが、研究者や文芸評論家が書いた研究本や解説本だ。数多くある夏目漱石『こころ』の解説本・評論本・研究書の中でおすすめを紹介したい。

  • 徹底考察「羅生門」 / 作中の季節・時代は何か?

    芥川龍之介の名作短編小説として有名なのが「羅生門」だ。 高校の授業で扱うこともあり、読んだことがある人は多いだろう。 役人が門の上で死人の髪を盗んでいる老婆を見つけ、老婆の衣を奪って去るという衝撃的な内容だ。 この記事では、「羅生門」の時代設定や季節、時刻について説明したい。 結論を先に書くと、作中の季節は冬に近い秋頃で、時代は平安時代末期、 時刻は午後5時から6時~7時から8時ごろの夕刻だと推定される。 「羅生門」とは? 作中の舞台設定について(時代・季節・時間帯) 作中の季節が秋である理由 「羅生門」とは? 羅生門 作者:芥川 竜之介 Amazon 芥川龍之介の名作「羅生門」は、下人が門の…

  • 第168回芥川龍之介賞の受賞作を予想する!

    2023年が始まって数日が経ったが、そろそろ気になってくるのが芥川賞の受賞予想だろう。 大半の人は気になっていないかもしれないが、芥川賞受賞作を予想していこうと思う。年末年始に候補作を読んだので感想も合わせて書きたい。 皆さんご存知かもしれないが、第168回芥川賞候補作は、安堂ホセ『ジャクソンひとり』、井戸川射子『この世の喜びよ』、グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』、佐藤厚志『荒地の家族』、鈴木涼美『グレイスレス』の5作品だ。 5人中4人が初のノミネートで、フレッシュな顔ぶれがそろう。複数回候補になっているのは、鈴木涼美だけで、今回が2回目のノミネートだ。 この記事では、各候補作品/候補者の…

  • 栄冠は誰の手に!?第168回直木賞の候補作を紹介する!

    1月の中旬には芥川賞・直木賞の発表がある。 当ブログでは芥川賞メインで紹介してきたのだが、今回から直木賞も紹介するようにした。 そもそも私は直木賞をそんなに信用していない。なぜ権威が高い直木賞を信頼していないのかというと、ある作家の扱いにある。まずそれを先に書いておこう。 直木賞を受賞していない超有名作家は数多くいる。伊坂幸太郎や森見登美彦、万城目学がそうだ。いずれも直木賞を受賞してそうな面々だ。まあ、文学賞を受賞しているかどうかは作品の良さに関係するわけではないと思っている。 その中でも、僕が個人的に憤慨しているのは佐藤正午という作家の扱いだ。佐藤正午はもうすでに『月の満ち欠け』で直木賞を受…

  • 読書好き必見!文豪が愛した温泉旅館を紹介!

    文豪と温泉には深い関係がある。川端康成などの文豪は旅館に泊まりながら執筆することが多かった。今も読まれ続ける名作の誕生の裏には、日本の温泉地があったのだ。 僕も温泉に浸かり旅館で優雅に在宅勤務をしたい…そんな僕のささやかな夢は叶いそうにないので、文豪が宿泊した温泉旅館を紹介していこうと思う。 川端康成が『雪国』を執筆した宿 / 越後湯沢温泉 雪国の宿 高半 川端康成が伊豆の踊子を執筆した宿 / 湯ヶ島温泉 湯本館 志賀直哉が「城の崎にて」を執筆した宿 / 城崎温泉 登録有形文化財の宿 三木屋 川端康成が『雪国』を執筆した宿 / 越後湯沢温泉 雪国の宿 高半 越後湯沢湯元 卵の湯 雪國の宿 高半…

  • 卯年に読みたい!タイトルにウサギが入る小説まとめ

    年が明けましたね。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 今年は平和で良い年になってほしいな。 元旦なのでお正月らしい記事を書いてみようと思う。 今年は卯年なので、タイトルにうさぎと入る小説を紹介したいと思う。 『楽隊のうさぎ 』 / 中沢 けい 『ホワイトラビット 』 / 伊坂 幸太郎 『ラビット病』 / 山田 詠美 『兎の目』 / 灰谷 健次郎 『うさぎパン』 / 瀧羽 麻子 『悪いうさぎ』 / 若竹 七海 『モモコとうさぎ』 / 大島 真寿美 『ウサギの乱』 / 霞 流一 (adsbygoogle = window.adsbygoogle []).push({…

  • 2022年のブログを振り返る

    特別お題「わたしの2022年・2023年にやりたいこと」ということで、この記事では2022年の当ブログについて振り返っていこうと思う。今年は昨年に比べてブログに力を入れてきたのでその結果について紹介したい。 あとは2023年の抱負やブログの目標、やりたいことなどを書いていきたいと思う。 2022年の振り返り 2022年のアクセス数の推移 はてなブックマーク砲を初めて経験 ブログの収益について 2023年の抱負・目標・やりたいこと 月間30万PVを目指す! 1月は毎日記事投稿する 来年は村上春樹、夏目漱石、近代文学の考察記事を重点的に書く ブログに紐付けたInstagramを稼働させる (ads…

  • 小説で今年を振り返る!2022年話題になった小説まとめ

    2022年もあと少しで終わる。 年初には新型コロナの流行が収まって回復の年になるかと思っていたが、蓋を開けてみればロシアのウクライナ侵攻や安倍元首相の殺害事件と混迷の一年となった。また、各国でインフレが止まらず、日本においては円安が止まらなくなり生活が苦しくなる辛抱の一年だった。 来年こそは良い一年になってほしい。来年の年末には笑顔で良い一年だったねと言える一年になればいいなと思う。 混迷を極めた2022年だが、話題になった小説で振り返ってみたいと思う。芥川賞や直木賞、三島由紀夫賞、本屋大賞の受賞作や候補作など、話題になった小説をまとめてみた。

  • Audible(オーディブル)で聴ける伊坂幸太郎作品を紹介!

    鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めている伊坂幸太郎。 巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。時系列がバラバラであったりと小説の構成が凝っていて、どんでん返しなどが仕掛けられた小説が多い。 伊坂幸太郎の魅力のひとつが、ウィットに富んだ文体だ。登場人物たちのウィットに富んだセリフが伏線にもなっていて、伊坂幸太郎おそるべしとしか言いようがない。特に「陽気なギャング」シリーズは伊坂作品の中でも会話のユーモアが多くてオススメだ。登場人物たちの洒脱でユーモアに溢れた会話が心地よすぎて、何度も読んでしまう。 そんな伊坂幸太郎の小説だが、いくつかはAudible(オーデ…

  • 映画でムラカミワールドを堪能!村上春樹原作の映画まとめ

    日本を代表し、世界中で読まれている村上春樹作品。卓越した比喩と、謎めいたストーリー、ムラカミワールドとしか形容のできない唯一無二の世界観、村上春樹の魅力を語り出すとキリがない。 村上春樹作品が持つ雰囲気は映像化するのが難しいと思うのだが、これまでにいくつか映画化されている。映画によっては忠実に映画化したものと独自の脚色を加えたものがある。村上春樹原作の映画を紹介しよう。 風の歌を聞け 100%の女の子・パン屋襲撃 森の向う側 トニー滝谷 神の子どもたちはみな踊る ノルウェイの森 バーニング ハレナイ・ベイ ドライブ・マイ・カー 番外編 『ドリーミング村上春樹』 番外編 『村上春樹 映画の旅』 …

  • 意外と三角関係が多い?夏目漱石のおすすめ小説5選!

    夏目漱石の前期三部作・後期三部作について解説した記事です。前期三部作の三四郎・それから・門、後期三部作の彼岸過迄・行人・こころの内容についても解説してます。

  • 第168回芥川龍之介賞の候補作を紹介する!

    本日早朝(朝五時)に、第168回芥川賞の候補作が発表された。 なぜこの時間帯なのかと毎回思う。話を戻そう。 第168回芥川賞候補作は、安堂ホセ『ジャクソンひとり』、井戸川射子『この世の喜びよ』、グレゴリー・ケズナジャット『開墾地』、佐藤厚志『荒地の家族』、鈴木涼美『グレイスレス』の5作品だ。 5人中4人が初のノミネートで、フレッシュな顔ぶれがそろう。複数回候補になっているのは、鈴木涼美だけで、今回が2回目のノミネートだ。 安堂ホセさんは、今年の文芸賞を受賞したデビュー作で候補入り。人を属性でカテゴライズすることの暴力性を描いた。 候補作は、佐藤厚志さんは17年デビュー。仙台市在住で、「災厄」を…

  • 子どもたちから公園を奪ったのは誰か? / 「公園」 三崎 亜記

    「子どもがうるさい」との住民の苦情により、子どもたちが利用する公園が廃止されることになったというニュースが話題を集めている。 廃止となったのは長野市にある青木島遊園地。市側は改善を続けたが、住民から騒音の訴えは変わらず、公園を利用する子どもはほとんどいなくなったようだ。公園には草刈りなどの維持費が必要だ。また、民間から借りている土地なので借地料もかかるので、利用者のいなくなった公園は廃止せざるを得ない状況に追い込まれていたのだ。 子どもの時に公園で散々遊んだ僕としては、子どもの遊び場を奪ってしまうのはどうかと思うが。 これは極端な事例だと思うが、苦情によって公園が姿を帰るというのはよくあること…

  • 白色って200色あるねん!表紙が白い本をまとめてみた

    皆さんご存知だろうか、白には200色あるということを。 某アンミカさんによると白色には200色の違いがあるようだ。(出典:2021年8月20日『人志松本の酒のツマミになる話』) この名言は、テレビ番組でアンミカさんの「小っちゃい物の良い所をコップ一個でもタオル1個でも探すのが好き」という発言に対し、千鳥のノブが「そのタオルも褒めれます?」と尋ねたことが発端だ。その後にアンミカさんの歴史的な名言、「白って200色あるねん」が生まれたのである。 私自身、白色に200色もあると思っていなかった。 白色を200色見極める能力を1アンミカと定義すると、私の能力はおそらく0.05アンミカ程度だろう。 話が…

  • 友情と恋愛、どちらを取る?/ 『友情』 武者小路実篤

    『友情』というタイトルから、友情の素晴らしさを描いた小説だと思った人は多いだろう。僕もそうだった。しかし、武者小路実篤の『友情』という小説は、爽やかな青春小説の対極にあるような、友情と恋愛の間での葛藤を描いた恋愛小説だ。夏目漱石の『こころ』や『それから』のような三角関係を描いた内容となっている。作中でも『それから』が出てきていて、夏目漱石の作品へのオマージュが散りばめられている。夏目漱石の作品と違うのは、主人公が好きな人を友人に取られるという点だ。『こころ』では主人公が友情と恋愛どちらを取るか悩むが、『友情』では主人公の立場が友人に裏切られる側である。 「人は、友のへの義理(友情)よりも、自然…

  • 奇々怪々!世にも奇妙な物語みたいな短編小説10選

    「世にも奇妙な物語」をご存知だろうか? 「恐怖系」、「コメディ系」、「感動系」 、「意味不明系」といった奇妙なテイストのオムニバスドラマだ。ストーリーテラーのタモリが印象的なフジテレビのご長寿シリーズである。 この記事では、「世にも奇妙な物語」に似たテイストの短編小説をストーリーテラーのタモリさん風に紹介したい。 あなたも小説を読んで奇妙な世界に迷い込んでみませんか? 『鼓笛隊の襲来』 / 三崎 亜記 『バスジャック』 / 三崎 亜記 『ニセモノの妻』 / 三崎 亜記 『ZOO』 / 乙一 『失われる物語』 / 乙一 『超・殺人事件』 / 東野 圭吾 『殺人出産』 / 村田 沙耶香 『パン屋再…

  • ビター&スイートな大人のおとぎ話 / 『カフェ・ソサエティ』 ウディ・アレン

    ウディ・アレン監督の新たな21世紀ベスト作品! お洒落なBGMが流れ、真っ暗なスクリーンにタイトルが浮かび上がるオープニング。このウディ・アレン印のオープニングを観ると、今年もウディ・アレンの映画を観れると顔がにやついてくる。前作の『教授のおかしな妄想殺人』(日本語タイトルが微妙だと思っている)は、『恋のロンドン狂騒曲』みたいにかなりシニカルで皮肉が効いている映画だったので今年はどうなるのかと思っていたけど、『カフェ・ソサエティ』ウディ・アレンの21世紀ベスト作品じゃないか!他のウディ・アレン監督作品に例えると『ミッドナイトインパリ』の甘美なノスタルジーと『アニー・ホール』の恋愛のほろ苦さを足…

  • まさに変化球!一風変わったポストモダン野球小説まとめ

    野球をモチーフにした小説と言えば何を思い浮かべるだろうか? 大抵の方は、『バッテリー』といった王道の野球青春小説を思い浮かべるかもしれない。だが、個人的に野球小説といえば一癖も二癖もあるポストモダン的な野球小説が思い浮かぶ。『バッテリー』が王道の野球小説、いわばストレートとすれば、変化球のようなクセのある野球小説を紹介したい。 ニーズがあるのかは分からないのだけれど(多分無い)、参考になれば幸いだ。 ユニヴァ―サル野球協会 『 素晴らしいアメリカ野球』 / フィリップ・ロス 『優雅で感傷的な日本野球』 / 高橋 源一郎 『オブ・ザ・ベースボール』 / 円城 塔 ユニヴァ―サル野球協会 ユニヴァ…

  • 現実離れしたトリックが魅力!おすすめのバカミス12選

    バカミスというミステリのカテゴライズをご存知だろうか? この「バカ」だが、決して小説をバカにした意味合いではなく、「そんなバカな!」という驚きの意味を込めたものだ。思わず「そんなバカな!」と驚いてしまうほどの意外性のあるトリックや、現実性をガン無視したアクロバティックなトリックが特徴だ。人によっては起こってしまうかもしれない。 「普通のミステリじゃ満足できない」「意外性のあるトリックに驚きたい」という人にこそバカミスを薦めたい。バカミスは意外性・娯楽性を過剰に追求した結果、ありえない展開が多々起こるがそこは多めにみてほしい。 普通のミステリに満足できなくなり、バカミスをこよなく愛している僕が厳…

  • 文学界を揺るがした「こころ論争」とは?

    夏目漱石の『こころ』といえば男女の三角関係を描いた名作小説だ。高校の国語の授業で扱われるので、読んだことがある人が大半なのではないかと思う。 夏目漱石『こころ』だが、その解釈を巡って「こころ」論争と呼ばれる文学論争があったのはご存知だろうか?夏目漱石『こころ』の解釈をめぐって論争が起こったのである。1980年代の出来事である。 『こころ』論争とは、小森陽一や石原千秋らのテクスト論派と、三好行雄といった作品論派の間に起きた夏目漱石『こころ』の解釈をめぐる論争である。テクスト論を活用した現代文学理論派と、作品論が中心の守旧派との対立だ。テクスト論派が、「私」は先生の死後にお嬢さんと共に生きている…

  • デタッチメントという観点からの考察 / 「TVピープル」 村上 春樹

    「TVピープル」は、タイトル通りTVピープルという不思議な小人が登場する村上春樹の短編小説だ。世にも奇妙な物語にありそうなストーリーだなと思う。短編集『TVピープル』の表題作でもあるので、村上春樹の短編の中でも有名ではなかろうか。 『ノルウェイの森』・『ダンス・ダンス・ダンス』執筆後のスランプ後に書かれた短編小説が「TVピープル」であった。村上春樹自身も、それが復帰の瞬間だったと語っている。 どこかマジックリアリズムぽさがある「TVピープル」だが、人間関係の希薄さや疎外感がテーマになっているように思う。村上春樹作品の主人公は周囲から距離を置く傾向があるが、「TVピープル」ではかなりその傾向が強…

  • 伊坂幸太郎の最高傑作を独断で選出する

    伊坂幸太郎は日本で大人気の作家の一人だと思う。 緻密に張り巡らされた伏線、個性的なキャラクターと軽妙な語り口、ウィットに富んだ文章が魅力だ。 特に巧みすぎる伏線回収には毎回驚かせられる。作中に張り巡らされた伏線が、後半にかけて回収されていく様はとても鮮やかで気持ちがいい。小説の構成も凝っているものが多く、どんでん返しが仕掛けられた小説もある。『ホワイトラビット』や『アヒルと鴨のコインロッカー』には本当に驚かされた。 数多くの名作を生み出している伊坂幸太郎だが、最高傑作は何だろうか? 「あれも面白かったし、あの作品も捨てがたい」と、名作が多すぎてなかなか1つの作品に絞ることができなかった。かなり…

  • 森鴎外『舞姫』を読むならちくま文庫版を推したい件について

    森鴎外の『舞姫』といえば、知識人(エリート)の挫折と苦悩を描いた名作だろう。 高校国語で勉強するので、大抵の人は読んだことがあるはずだ。 ドイツでエリスと恋に落ち、エリスに子どもを身篭らせるも、ついにはエリスを捨てて日本に帰国した豊太郎には賛否が分かれるだろう。いや、否定の方が圧倒的に多いか。 文学作品には女性の妊娠が鍵となる小説が数多く描かれている。文芸評論家の斎藤美奈子の言葉を借りれば「妊娠小説」だ。森鴎外の『舞姫』は日本の「妊娠小説」の系譜の祖と言えるような小説だ。 また文章が文語体で書かれているのも特徴で、読むに苦労した人も多いことだろう。筆者は高校の時に現代文の授業で「舞姫」を受けた…

  • フィクションは人生に必要か? / 『カイロと紫のバラ』 ウディ・アレン

    人はなぜ映画を観るのだろう? 人生における映画(フィクション)の役割とは何か? そんな問いに答えるのがウディ・アレンの隠れた名作『カイロの紫のバラ』だ。この映画では、映画そのものが題材になった作品だ。劇中では、映画の画面から登場人物が出てくるというメタフィクション的な演出がなされている。 主人公のセシリアは惨めな生活と愛のない夫婦生活から逃れるようにして、映画に夢中になっている。セシリアが夢中になっていたのは「カイロと紫のバラ」という映画。ある時、「カイロと紫のバラ」から主人公・トムが第四の壁を破り、現実世界に出てきてしまう。映画の中も大騒ぎになり、セシリアはトムと逃避行することになるのだが.…

  • 村上春樹とゴダール

    村上春樹作品にはよく映画が登場する。映画そのものが登場するときもあれば、比喩表現として登場するときもある。村上春樹作品は映画から多大なる影響を受けていると言われることも多い。最近では村上春樹と映画の関係について考察した「村上春樹 映画の旅」という展覧会も開催されていた。 村上春樹と関係がありそうな映画監督としてはジャン=リュック・ゴダールが思い浮かぶ。 ジャン=リュック・ゴダールは、新しい表現技法を追求したフランス映画の潮流・ヌーヴェルヴァーグの巨匠だ。ジャンプカットや手持ちカメラ、書物から引用、原色を多用した色彩の演出が特徴である。「小さな兵隊」や「勝手にしやがれ」、「女は女である」、「アル…

  • 謎解き『すずめの戸締まり』 / 村上春樹「かえるくん、東京を救う」から考察する

    www.youtube.com 今年の11月11日に新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が公開される。 水溜りの上にある扉の印象的なビジュアル、観るものを圧倒する華麗な情景描写。予告を観ただけでも期待が高まる。 音楽は、『君の名は。』と『天気の子』に引き続きRADWIMPSが担当する。映画の予告映像で流れている「すずめ」は、RADWIMPSが作詞作曲で女性ボーカルの十明(とあか)が歌唱している。また、主題歌の「カナタハルカ」はRADWIMPSが歌唱している。 ネタバレしない程度に簡単に書くと、『すずめの戸締まり』は天災に真っ向から向き合ったロードムービーだ。これまで新海誠監督は『君の名は。』…

  • 「みみずくん」との戦い / 「かえるくん、東京を救う」 村上 春樹

    村上春樹の小説には動物をモチーフとした個性的なキャラクターが登場する。『羊をめぐる冒険』の羊男が有名だろう。あるいは、「かえるくん、東京を救う」に登場する「かえるくん」も印象に残るキャラクターだろう。 村上春樹の「かえるくん、東京を救う」は連作短編集『神の子どもたちはみな踊る』に収録された短編小説だ。『神の子どもたちはみな踊る』という連作短編集は元々「連作『地震のあとで』」という通しタイトルで発表された作品だ。 「地震のあとで (After the quake)」とあるように、『神の子どもたちはみな踊る』は1995年1月17日の阪神淡路大震災に影響を受けて書かれた作品だ。しかし舞台は神戸ではな…

  • 父親と戦争 / 『猫を棄てる 父親について語るとき』 村上 春樹

    ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた―――村上文学のあるルーツ 『猫を棄てる 父親について語るときに僕の語ること』は、村上春樹が自らの父について語ったエッセイだ。確か、初出は『文藝春秋』2019年6月号だったと思う。今回、エッセイ+イラスト+あとがきという形で出版された。 イラストを描いたのは、台湾のイラストレーター・漫画家の高妍(ガオ イェン)。約100ページほどの本である。大作ではないが、これまでの村上春樹作品に新たな解釈を与えるヒントや驚きに満ちた作品である。 村上春樹はこれまでにも色々なエッセ…

  • 謎解き『すずめの戸締まり』 / 日本神話・天岩戸隠れから考察する

    www.youtube.com 今年の11月11日に新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が公開される。 水溜りの上にある扉の印象的なビジュアル、観るものを圧倒する華麗な情景描写。予告を観ただけでも期待が高まる。あと音楽を誰が担当するのかも気になるところだ。 11月の公開まで待ちきれなかったので、8月に発売された『すずめの戸締まり』のノベライズを一足先に読んでしまった。 新海誠監督は自作品をノベライズを行うことが多く、『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』、『君の名は。』、『天気の子』は新海誠監督自らがノベライズを行なっている。感傷的なモノローグが得意な新海誠監督だけあってか、小説の文章もす…

  • 中島敦『山月記』を読むならちくま文庫版を推したい件について

    中島敦の『山月記』といえば、自意識にとらわれた男の苦悩を描いた名作だ。 高校の国語で勉強するので、大抵の人は読んだことがあるはずだ。 「臆病な自尊心」や「尊大な羞恥心」とキラーワードは、何者かになろうとしてなれなかった人には突き刺さるフレーズだろう。『山月記』は現代にも通じる普遍的なテーマを扱った作品だ。 中島敦の『山月記』だが、色々な出版社から文庫本が発売されている。 例を挙げてみると、新潮文庫、角川文庫、岩波文庫、文春文庫、ちくま文庫と5つの出版社から文庫本が販売されている。 「内容は同じ『山月記』なんだからどれも同じじゃないのか?」と思うかもしれないが違うのだ。特に解説の内容が違っていて…

  • 驚きが止まらない!伊坂幸太郎のどんでん返しおすすめ小説5選

    鮮やかな伏線回収、魅力的なキャラクター、ウィットに富んだ文章で人気を集めている伊坂幸太郎。伊坂幸太郎は人気ミステリ作家の代表格だろう。 巧みな伏線が仕掛けられた伊坂幸太郎のミステリには毎回驚かせられる。特にあっと驚くようなどんでん返しが仕掛けられたミステリも数多い。巧みな構成で読者を騙し、驚きに導くのだ。 この記事では、伊坂幸太郎のミステリの中でも特にどんでん返しが凄い作品を紹介したい。

  • 最近読んで面白かった本をざっくり紹介する

    今週のお題「最近おもしろかった本」 今週のお題が「最近おもしろかった本」ということで、ここ数ヶ月読んだ中で面白かった本を紹介したい。小説・新書とジャンルは様々だ。 『すずめの戸締まり』 / 新海 誠 『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』 / 岡田 斗司夫 『外国語学習の科学ー第二言語習得論とは何か』 / 白井 恭弘 『損する結婚 儲かる結婚』 / 藤沢 数希 『すずめの戸締まり』 / 新海 誠 小説 すずめの戸締まり (角川文庫) 作者:新海 誠 KADOKAWA Amazon もうすぐ新海誠の新作が公開ということで、小説版を先に読んでみた。これまで新海誠監督が取り組んで…

  • あなたも騙される!東野圭吾のどんでん返しミステリ6選!

    東野圭吾は、大人気のミステリ作家だ。ガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞し、『白夜行』など有名作品を次々に送り出してきた東野圭吾。ガリレオシリーズや加賀シリーズなど人気が高いシリーズも多い。これまでに数多く作品を執筆しており、その数は100作品を超えている。 東野圭吾の作品は映画化もよくされている。特にガリレオシリーズはTVドラマ・映画にもなりみた人も多いんじゃないだろうか。 この記事では、東野圭吾作品の中でも特にどんでん返しがすごい作品を紹介したい。 仮面山荘殺人事件 ある閉ざされた雪の山荘で 回廊亭殺人事件 白馬山荘殺人事件 十字屋敷のピエロ 容疑者Xの献身 仮面山荘殺人事件…

  • 夏目漱石の最後の作品『明暗』について紹介

    日本の国民的作家といえば夏目漱石だろう。 『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』、『三四郎』、『こころ』などの多くの名作を夏目漱石は生み出した。『こころ』や『夢十夜』は高校の国語で扱われることが多いので、読んだことがある人は多いはずだ。 夏目漱石は三角関係を題材とした小説を数多く残した。後期三部作の『彼岸過迄』、『行人』、『こころ』では人間のエゴイズムや知識人の苦悩を描いた。 そんな国民的作家・夏目漱石だが、最後の作品が何かご存知だろうか? 夏目漱石の最後の作品は『明暗』という小説だ。この小説は未完で終わっている。 この記事では、最後の小説『明暗』について紹介したい。 夏目漱石の最後の作品『明暗』…

  • ノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーってどんな作家?

    2022年のノーベル文学賞の発表があり、受賞者はフランスの作家アニー・エルノー(Annie Ernaux)だと発表された。 ブックメーカーのノーベル文学賞予想のオッズではかなり上位にいた作家だ。 案外、ブックメーカーは当たるのかもしれない。 最近、アニーエルノー原作の映画が話題を集めていたことも要因の一つにあるのだろうか。 www3.nhk.or.jp

  • なぜ村上春樹はノーベル賞受賞に近い作家と言われるようになったのか?

    10月になってノーベル賞が発表される季節になった。 こうなると話題になるのが、「村上春樹ノーベル文学賞受賞なるか」だ。テレビでハルキストの集まりが中継され、受賞者発表後に落胆するという光景が秋の風物詩となっている。 毎年ブックメーカー(賭け屋)で、受賞者予想の上位に村上春樹が食い込んでおり、ノーベル文学賞候補と騒がれるようになったのだ。ちなみにブックメーカーのオッズが高いからといってノーベル文学賞候補であるわけではない。 村上春樹は現代日本を代表する作家だ。『羊をめぐる冒険』や『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥クロニクル』、『海辺のカフカ』、『1Q84』などの代表作で知られている。 毎回思うのだ…

  • 一番売れているのは?村上春樹の売上・発行部数ランキング

    現代日本文学を代表する作家といえば村上春樹だろう。 その人気は日本にとどまらず、世界中で広く読まれている。 村上春樹作品には、洒脱な表現や比喩、巧みなストーリーテリング、ミステリアスな登場人物やストーリー展開など魅力が詰まっている。 最近ではノーベル文学賞の候補だとかなんだかで騒がれたりと話題が絶えない村上春樹だが、村上春樹の作品の中で一番売れた本が気にならないだろうか? 『海辺のカフカ』や『1Q84』、『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥クロニクル』など話題作がいくつかあるが、その売上ランキングとなると公開されていない。 この記事では、過去に公開されている発行部数を参考にして売上・発行部数ランキ…

  • 今年も村上春樹が人気?ブックメーカーを参考にして2022年ノーベル文学賞を予想してみた

    news.yahoo.co.jp 「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というニュースを見かける季節になった。 もう10月になったんだなと思う。「村上春樹、今年こそノーベル賞受賞なるか?」というのはもはや秋の風物詩だ。 産経新聞によると、村上春樹は今年もブックメーカー(賭け屋)において人気が上位らしい。毎年村上春樹はブックメーカーの予想上位に入っているのだが、今年もどうやら人気は衰えていないようだ。話題になっている各種ブックメーカーのオッズや予想記事を参考にして、ノーベル文学賞を予想してみた。 ラドブロークス (Ladbrokes)のオッズが見つからない 産経新聞によると村上春樹は二番人…

  • 夫婦間のディスコミニュケーション / 「TVピープル」 村上 春樹

    「TVピープル」は、タイトル通りTVピープルという不思議な小人が登場する村上春樹の短編小説だ。世にも奇妙な物語にありそうなストーリーだなと思う。短編集『TVピープル』の表題作でもあるので、村上春樹の短編の中でも有名ではなかろうか。 どこかマジックリアリズムぽさがある「TVピープル」だが、人間関係の希薄さや疎外感がテーマになっているように思う。村上春樹作品の主人公は周囲から距離を置く傾向があるが、「TVピープル」ではかなりその傾向が強い。 この記事では、疎外感や人間関係の希薄さという観点から考察・解説していく。 また、人間関係の希薄さについては「デタッチメント」というキーワードと絡めて解釈してみ…

  • さよなら、ジャン=リュック・ゴダール

    昨日の夕方、衝撃的なニュースが入ってきた。 www.nikkei.com あのゴダールが死んだ。それはもう衝撃だった。 医師処方の薬物を自ら使用する「自殺ほう助」により亡くなったそうだ。スイスでは安楽死が認められている。お疲れ様と伝えたい。 ゴダールの映画は僕の大学生時代を彩ってくれた。『小さな兵隊』に『勝手にしゃがれ』、『アルファヴィル』、『気狂いピエロ』と浴びるようにゴダール作品を観た。いまいち理解できない作品も多かったけれど、その当時の僕にとってゴダールの映画を見ることは文化的背伸びだった。ゴダール映画を見ることは大学時代の僕にとって憧れでもあったのだ。 ジャン=リュック・ゴダールは、新…

  • 人生にゴールはあるのか? / 「ゴール」 三崎 亜記

    三崎亜記の「ゴール」は人生の意味や到達点について考えさせられるショートショートだ。 日常に非日常が溶け込んだような作品で世にも奇妙な物語のテイストのような小説だ。ちょっと不思議で、三崎亜記らしい作品だと思う。 この「ゴール」だが、高校の国語の教科書にも収録されている。教科書で言うと安部公房のようなシュールリアリズム枠での採用だろうか。 これまでは単行本などに未収録だったのだが、この度『名もなき本棚』と言う短編集に収録された。 この不思議な短編について考察・解説を書きたいと思う。 「ゴール」を目指す 「ゴール」を待つということ 実存は本質に先立つ 「ゴール」を目指す 主人公は「ゴール」に出会う。…

  • 個人的に面白かった新書を10冊紹介してみる

    今回は個人的に面白かった新書を10冊ほどピックアップして紹介したいと思う。 新書は幅広いジャンルの知識を養うのにとても役立つ。専門家と言うよりかは一般向けに書かれているものが多いので、初心者にも優しい。幅広く読んでみて自分の興味があるのもが見つかれば、新書の参考文献を辿っていけば知識が広がるだろう。 この記事では、ビジネスから外国語、人文、アート、文学など幅広いジャンルから知的好奇心をくすぐる本を紹介したいと思う。 『ユーチューバーが消滅する未来 2028年の世界を見抜く』 / 岡田 斗司夫 『外国語学習の科学ー第二言語習得論とは何か』 / 白井 恭弘 『現代ロシアの軍事戦略』 / 小泉 悠 …

  • 天災に真っ向から向き合ったロードムービー / 『すずめの戸締まり』 新海 誠

    www.youtube.com 今年の11月11日に新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が公開される。 水溜りの上にある扉の印象的なビジュアル、観るものを圧倒する華麗な情景描写。予告を観ただけでも期待が高まる。あと音楽を誰が担当するのかも気になるところだ。 11月の公開まで待ちきれなかったので、8月に発売された『すずめの戸締まり』のノベライズを一足先に読んでしまった。ここ最近、新海誠作品が公開される時は映画のノベライズが先に出版されるのが恒例だったのだが、今回も映画公開より先に『すずめの戸締まり』の小説が出版された。 新海誠監督は自作品をノベライズを行うことが多く、『秒速5センチメートル』や…

  • 喪失からの再生と人生の肯定 / 「ドライブ・マイ・カー」 村上 春樹

    村上春樹の短編集『女のいない男たち』に収録された「ドライブ・マイ・カー」は、主人公が亡くなった妻の秘密や自分が負ってきた心の傷に向き合う小説だ。濱口竜介監督によって映画化もされ、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞するという快挙も成し遂げている。 『女のいない男たち』は、何かしらの理由で女を失ってしまった男たちを描いた、コンセプトアルバムのような短編集だ。この短編集に収録されている、「イエスタディ」、「独立器官」、「木野」では、様々な形で主人公が「女」を失っている。「ドライブ・マイ・カー」はこの短編集が生まれるきっかけともなった小説だ 「ドライブ・マイ・カー」という短編小説では、妻が座っていた助手…

  • 真夏のピークは去ったけれど『サマータイム・マシン・ブルース』が観たい

    猛暑日も少なくなって段々と過ごしやすくなってきた。 真夏のピークが去ったのかもしれない。天気予報士がテレビで言っていたかどうかは知らない。 涼しくなることに嬉しさを感じる一方で、まだ夏っぽいことしてないなと寂しくなってしまう自分もいる。花火もしていないし、かき氷もまだ食べていない。そうめんはかろうじて食べた。夏の風物詩でビンゴで例えたら、ビンゴはほど遠くリーチにも届いていないと言った感じだろうか。 ある年齢を超えると、夏があっという間に過ぎ去ってしまうような感覚に囚われることが多くなった。大学生の時は夏休みが無限のように感じたのに。あの頃は終わりの見えない夏休みに退屈を感じて、早く大学が始まる…

  • もはや注釈がメイン!?注釈が多い小説まとめ

    小説や評論などで、補足のために注釈が付けられていることはよくあることだ。 しかし、本文よりも注釈がメインになっている小説があるといえば驚くだろうか? ポストモダン*1小説と言われる小説には、既存の発想にとらわれない様な小説が数多くある。 その中には注釈が本文よりも多くなってしまい、もはや注釈の方がメインじゃないかと思う様な小説が幾つかある。注釈を使って新しい文学表現を切り開いた小説たちだ。 この記事では、注釈が多すぎる一風変わった小説を紹介したい。 *1:「ポストモダン」とは「近代(モダン)以後」を意味する。

  • 濃密に漂う死の匂い / 「ニューヨーク炭鉱の悲劇」 村上 春樹

    村上春樹の「ニューヨーク炭鉱の悲劇」は、濃密な死の匂いが立ち込める小説だ。 話の意味するところや、構成の意図するところが分からなくても、作中に漂う「死の匂い」を感じ取った人は多いんじゃないかなと思う。この小説では、主人公の周りで多くの人が死んでいく。まるで、死神に死の世界へと引き込まれるかのように。 自分自身の経験から言っても、友人や恩師が次々に死んでいってしまう時期があった。そういの時は自分の身の回りに死がぽっかりと口を開けて待っているかのように感じたことを覚えている。小説に話を戻そう。 小説全体としては解釈するのが難しい部類の村上春樹作品だと感じる。特に、炭鉱に閉じ込められた人々の描写が唐…

  • 夏目漱石『こころ』の遺書が長すぎる件について

    こころ (ちくま文庫) 作者:夏目 漱石 筑摩書房 Amazon 夏目漱石『こころ』といえば、男女の三角関係を描いた不朽の名作だ。 「友情をとるか、恋愛をとるか」という普遍的なテーマを扱った『こころ』は、同じようなことを経験したことがある人なら深く心に刺さるだろう。 高校国語の定番小説なので、大抵の人は読んだことがあるはずだ。 さて、高校の授業などで『こころ』を読んだときに奇妙なことに気付かなかっただろうか? 「先生の遺書、長すぎない?」 『こころ』という小説の中心は、先生の遺書にあると考えられてきた。なので高校国語の教科書でも先生の遺書の一部が抜粋されているのが普通だろう。それにしても遺書部…

  • 現代の戦争!戦後生まれの作家が描いた戦争小説まとめ

    戦争の形は時代とともに移り変わる。 こんな時代だからこそ、現代作家が描いた戦争小説を紹介したい。 『となり町戦争』 / 三崎 亜記 『小隊』 / 砂川 文次 『わたしたちに許された特別な時間の終わり』 / 岡田 利規 『ヨハネスブルグの天使たち』 / 宮内 悠介 『指の骨』 / 高橋 弘希 『その日東京駅五時二十五分発』 / 西川 美和 『同志少女よ、敵を撃て』 / 逢坂 冬馬 『ベルリンは晴れているか』 / 深緑 野分 『となり町戦争』 / 三崎 亜記 となり町戦争 (集英社文庫) 作者:三崎亜記 集英社 Amazon 現代的戦争の恐怖。ある日、突然に始まった隣接する町同士の戦争。公共事業と…

  • ホラーすぎる!?人間の怖さを描いた芥川賞受賞作品まとめ

    純文学の新人賞として知られている芥川賞。 受賞作品は、恋愛や青春、親子関係など様々なテーマを描いている。 人間の内面を深く描いた作品の中にはホラーにも匹敵するくらい怖いものもある。 芥川賞受賞作品の中から、ホラーすぎる人間の怖さを描いた小説を紹介したい。 『爪と目』 / 藤野 可織 (第149回芥川賞) 『むらさきスカートの女』 / 今村 夏子 (第161回芥川賞) 『おいしいごはんが食べられますように』 / 高瀬 隼子 (第167回芥川賞) 『土の中の子供』 / 中村 文則 (第133回芥川賞) 『夜と霧の隅で』 / 北 杜夫 (第43回芥川賞) 『爪と目』 / 藤野 可織 (第149回芥川…

  • 夏目漱石『こころ』を読むならちくま文庫版を推したい件について

    こころ 作者:夏目 漱石 Amazon 夏目漱石の『こころ』といえば、男女の三角関係を描いた不朽の名作だろう。 高校の国語で勉強するので、大抵の人は読んだことがあるはずだ。 「友情をとるか、恋愛をとるか」という普遍的なテーマを扱った『こころ』は、同じようなことを経験したことがある人なら深く心に刺さるだろう。 夏目漱石の『こころ』だが、色々な出版社から文庫本が発売されている。 例を挙げてみると、新潮文庫、角川文庫、岩波文庫、文春文庫、集英社文庫、ちくま文庫と6つの出版社から文庫本が販売されている。 「内容は『こころ』なんだからどれも同じじゃないのか」と思うかもしれないが違うのだ。 表紙・解説の内…

  • 心を揺さぶる!感傷的でエモい恋愛小説をまとめてみた

    「エモい」という言葉は、英語の「emotional(エモーショナル)」が由来の若者言葉だ。 ニュアンスとしては、「感情が揺り動かされる」・「切ない」といった感じかな。昔でいうところの「をかし」かもしれない。いや違うか。 この「エモい」というフレーズは小説や音楽、映画などを形容する時に使われたりする。「この音楽めっちゃエモい」みたいな。 小説で言ったら、エモいと形容されるのが多いのは恋愛小説だろうか。 この記事では、感傷的で「エモい」恋愛小説を紹介していく。

  • 幾何学的な形の「坊っちゃんの塔」を見てきた

    東京の飯田橋には東京理科大学がある。 理系の人なら知っているであろう有名な私立大学だ。 大学名に「理科」が入っているということで文系とは無縁な感じがするが、校内には文学にちなんだものがある。 それは「坊っちゃんの塔」だ。 下に実際の写真を貼っておこう。「坊っちゃん」と名前がついているので人の形でもしているのかなと思ったら、なんとも幾何学的なフォルム。さすが東京理科大学。 その幾何学的な形状は、鏡映対称な一対の五面体「ペンタドロン」を最少単位の「個」とし、組み合わせて構成されているとのこと。もう何のことやら。 「坊っちゃん」という名前だが、由来は夏目漱石の小説『坊っちゃん』だ。 坊っちゃん (新…

  • 考察のお供に!村上春樹の解説本・評論書・研究書を紹介する!

    村上春樹作品といえば謎めいた内容が特徴だろう。 村上春樹作品だと謎が多いために内容がよく分からないという人は多いのではないだろうか。また、村上春樹作品を色んな視点から読み解きたい、もっと深く読み解きたいという人も多いのだろうではないか。 そんな時に役に立つのが、研究者や文芸評論家が書いた研究本や解説本だ。数多くある村上春樹についての解説本・評論本・研究所の中でおすすめのものを紹介したい。

  • 夏目漱石の前期三部作と後期三部作って何?

    日本の国民的作家・夏目漱石。 『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』、『こころ』などの多くの名作を生み出した。 夏目漱石には前期三部作と後期三部作というものがあることをご存知だろうか? 前期三部作は『三四郎』、『それから』、『門』の3作品だ。 それに対し後期三部作は『彼岸過迄』、『行人』、『こころ』の3作品だ。 それぞれ同時期に作られ、とある共通点を持つ作品たちだ。 この記事では、各三部作についての説明となぜ三部作として言われるようになったか解説する。 前期三部作とは 『三四郎』 『それから』 『門』 後期三部作とは 『彼岸過迄』 『行人』 『こころ』 前期三部作とは 前期三部作は、『三四郎』(1…

  • かけがえのない他人を求めて / 「N/A」 年森 瑛

    年森瑛の「N/A」は、安易なカテゴライズを嫌い、何ものにも該当しない純粋な関係性を希求した小説だ。「彼氏」ではなく「かけがえのない他人」を求めていた。 「N/A」は文學界新人賞を受賞したデビュー作で、選考委員が満場一致で受賞を決定したという話題作でもある。もちろん芥川賞候補にもなった。あんまり単行本化しないことで有名な文學界新人賞だが、「N/A」は芥川賞候補作が発表される前に単行本化が決定している。これからも文藝春秋の力の入れようが分かるだろう。 タイトルにもなっている「N/A」とは、該当なしを意味する “Not Applicable”、または、無効を意味する “Not Available” …

  • 母から娘に与えられたもの / 「ギフテッド」 鈴木 涼美

    鈴木涼美の「ギフテッド」はキャバクラや風俗など「夜の街」に生きる女性たちを圧倒的なリアリティで描き、母と娘の関係性をテーマにした王道の純文学作品だ。第167回芥川賞の候補作品にもノミネートされている。 鈴木涼美は、『「AV女優」の社会学』、『体を売ったらサヨウナラ』などの著作で知られている。読んだことがある人も多いんじゃないだろうか。「ギフテッド」は鈴木涼美の小説デビュー作である。デビュー作品とは思えないぐらい完成度が高い。文体は装飾がなく、荒涼とした主人公の内面を描写するのにぴったりだと思う。 「ギフテッド」のあらすじを簡単に説明すると、歓楽街のビルに暮らすホステスの「私」が、死に場所を求め…

  • 第167回芥川龍之介賞の受賞作品を予想する!

    7/20に選考会が開催され、第167回芥川賞の受賞作が発表される。 それに先立って、どの作品が芥川賞を受賞するのか予想したい! 芥川賞を簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番知名度がある賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の五大文芸誌に掲載された作品が候補の対象となる。候補の作品となる小説の長さは中編程度が多い。 今回の候補作は以下のの5作品だ。 小砂川チト「家庭用安心坑夫」(群像 6月号) 鈴木涼美「ギフテッド」(文學界 6月号) 高瀬隼子「おいしいごはんが食べられます…

  • 語りによるトラウマの克服 / 「土の中の彼女の小さな犬」 村上 春樹

    「土の中の彼女の小さな犬」は、『中国行きのスロウ・ボート』に収録されている村上春樹の短編小説だ。この小説では、自らの「トラウマ」を語ることによって「トラウマ」に向き合い、回復する過程が描かれている。 村上春樹にしてはオーソドックスなプロットになっていて分かりやすい小説だなと思う。 自らのトラウマを語り、トラウマから解放されるという構造は「七番目の男」といった他の村上春樹作品にもみられる。 主人公の「僕」は、彼女がトラウマから回復するのを助けるような役割を負っている。それだけでなく、「僕」自身も彼女との交流を通じて自らの人間関係に向き合おうとするのだ。 それでは「土の中の彼女の小さな犬」について…

  • 小人の謎を考察する / 「踊る小人」 村上 春樹

    この記事では、村上春樹の不可思議な短編「踊る小人」を考察・解説していきたい。 この「踊る小人」はファンタジー色が強く、童話テイストなのだが、どこか不気味な雰囲気が漂う小説だ。踊る小人というと「白雪姫」の7人の小人が思い浮かぶのだが、その小人と違って「踊る小人」に登場する小人には邪悪なところがある。この記事では、「小人」は『羊をめぐる冒険』の「羊」のように邪悪な存在として解釈してみたい。 また、この小説では「象工場」や、「革命」といった謎めいたキーワードが散りばめられている。そのキーワードについても掘り下げて考察していく。

  • ブログ再開。アクセス数に大事件が…

    皆さん、お久しぶりです。なおひとです。 ブログを再開しました。 特に病気などになったわけでなく、シンプルに忙しかったので、なかなかブログを更新できずにいました。 ブログを書いてなかったのは2週間ぐらいかな?それまでは忙しい中でも毎日更新してたのだけれど、一度気が緩んでしまうともうダメだめだった。 ここ最近は、報告会に出張、顧客面談、実験、試作、特許作成など業務がてんこ盛りだった。 ブログを書く時間的余裕も心の余裕もなかった。 ようやく落ち着いてみたので、ぼちぼち更新していこうと思う。 村上春樹の小説の考察や芥川賞候補作品の考察、芥川賞予想もしていこうと思っている。 なかなかブログを更新できない…

  • 超上級者向け!現代文のおすすめ参考書4選

    現代文が得意あるいは現代文を強みにしたいという人に向けておすすめの現代文参考書を紹介したい。 『ライジング現代文ー最高レベルの学力養成』 ライジング現代文―最高レベルの学力養成 作者:内野 博之 桐原書店 Amazon タイトルに「最高レベルの学力養成」とあるが、タイトルに嘘偽りはない。 受験生向けの参考書の中でこの本が一番レベルが高かったと思う。残念ながら絶版になっているようだ。Amazonではあり得ないぐらい価格が高騰していて笑ってしまった。やっぱり名著として評価されているんだなとしみじみ思った。 『教養としての大学受験国語』 教養としての大学受験国語 (ちくま新書) 作者:石原 千秋 筑…

  • 華やかなセレブの裏側は? / 『セレブリティ』 ウディ・アレン

    www.youtube.com 作家志望の芸能記者リーは、なんとかセレブリティの仲間入りをしようと、女優、モデル、人気俳優に近づくが、ことごとく振り回される。その彼と離婚した元妻ロビンは、自分の生きかたをマイペースで貫き、いつのまにかセレブリティの仲間入りを果たす。 『セレブリティ』は、有名人の人間模様を皮肉たっぷりに描いたウディ・アレンのコメディ映画だ。モノクロがお洒落感を醸し出している。映画のポスターを見た感じ、主演がレオナルド・ディカプリオだと思っていたがそうではなかった。ディカプリオが実際に出ているのは20分ぐらいだろうか。まあ、ディカプリオの知名度を押し出して売り出そうとしたのだろう…

  • Audible(オーディブル)で聴ける芥川賞受賞作品をまとめてみた

    最近、聴く読書ことAudible(オーディブル)が話題になっている。聴くことができる本がどんどん増えており、ジャンルの幅広い。 Audible(オーディブル)で聴くことができる本の中から、芥川賞を受賞した作品をまとめてみた。オーディブルライフの参考になれば幸いだ。 Audible(オーディブル)って何? Audible (オーディブル)とは、「本を聴く」という新しい読書体験だ。スマホのアプリを使えば、いつでもどこでも耳で読書ができる。本は、プロのナレーターや俳優、女優によって読み上げられていて、通勤時間や家事の合間、お休み前など、日常のあらゆる時間に読書を取り入れることができる。 Audibl…

  • パリは移動祝祭日 / 『ミッドナイト・イン・パリ』 ウディ・アレン

    www.youtube.com 『ミッドナイト・イン・パリ』は、ヘミングウェイのエッセイ『移動祝祭日』で描かれている1920年代のパリを舞台にしたロマンチックファンタジーだ。ウディ・アレン監督の作品の中でもベスト3に入るんじゃないかなと思う。 あらすじは、主人公が黄金時代のパリにタイムスリップしてしまうという話だ。作家志望の主人公・ギルは1920年代のパリにタイムスリップしてしまい、色んな芸術家と交流するようになる。ヘミングウェイはもちろん、フィッツジェラルドやピカソ、マン・レイ、ダリなどが登場する。 1920年代のパリにタイムスリップしたギルはそこでアドリアナに恋をするのだが... この映画…

  • 前進しないサメは死んでしまう / 『アニー・ホール』 ウディ・アレン

    Annie Hall Official Trailer #1 - Woody Allen Movie (1977) HD - YouTube ウディ・アレン監督作品の代表作といえば、『アニー・ホール』だ。ちなみに、この『アニー・ホール』は1977年アカデミー賞の主要4部門を受賞している。 数々のおしゃれな恋愛映画を作ってきたウディ・アレンだが、その原点は『アニー・ホール』にあると思う。 『アニー・ホール』は、ニューヨークを舞台に、都会に生きる男女の恋と別れをユーモラスに綴ったラブ・ストーリーだ。ウディ演じるコメディアン・アルビーは、知り合った美女アニーと意気投合して同棲生活を始める。最初はうま…

  • 第167回芥川龍之介賞の候補作を紹介する!

    第167回芥川賞の候補作が発表された。有力視されていた作品が候補になったり、意外な作品が候補になっていた。芥川賞の候補予想は難しい。 候補作は、小砂川チト「家庭用安心坑夫」(群像 6月号)、鈴木涼美「ギフテッド」(文學界 6月号)、高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」(群像 1月号)、年森瑛「N/A」(文學界 5月号)、山下紘加「あくてえ」(文藝 夏号)の5作品だ。 芥川賞を簡単に説明すると、新人作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。文学賞の中で一番知名度がある賞だろう。純文学というと定義が難しいのだけれど、芥川賞に限っていえば、「文學界」・「新潮」・「群像」・「すばる」・「文藝」の…

  • ウディ・アレン監督はどのようにして生まれた? / 『映画と恋とウディ・アレン』

    『アニー・ホール』や『ミッドナイト・イン・パリ』など数々の名作を残してきたウディ・アレン監督。多作な映画監督として知られるウディは、アカデミー賞に何度もノミネートされ、今でも第一線で映画を撮り続けている。名作を生み出し続けてきた彼の映画作りはどのようなものなのだろう?ウディ・アレン監督の素顔や映画の舞台裏に迫ったのがこの『映画と恋とウディ・アレン』だ。

  • 本棚は自分の興味関心の「地層」 (あるいはチバニアンと孫氏の兵法)

    本棚は自分の興味関心の「地層」だと思う。 本棚に本が山ほど積み上がっているから地層に見えたのかというとそうではない。 そうでもないと言ったが、3割ぐらいはその理由もあるかもしれない。 じゃあ、残り7割の理由は何かというと、本棚の中身を見ているとその当時の自分の興味関心が本の束として確認できるからだ。その興味関心の傾向を示した本の束が地層のように思えたのだ。 地層というのは、粘土や砂、礫、火山灰などが、自然の力によって運搬され堆積されて出来たものだ。1つの層はある特定の組成で構成されている。また、化石などがあればその地層がいつ頃に形成されたのかが分かる。最近で有名な日本の地層といえば「チバニアン…

  • 村上春樹をオーディオブックで聞こう!Audible(オーディブル)で配信予定の村上作品を紹介!

    Amazonの「耳で聴く」読書、Audible(オーディブル)が、2022年1月から聴き放題に移行したのに伴い、村上春樹の作品が10作品オーディオブック化されるが決定した。 村上春樹作品は海外ではオーディオブック化されていたが、日本でオーディオブック化されるのはこれが初めてだ。 今後制作予定の10作品は、『1Q84』、『ねじまき鳥クロニクル』、『騎士団長殺し』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、『海辺のカフカ』、『螢・納屋を焼く・その他の短編』、『東京奇譚集』、『神の子どもたちはみな踊る』、『職業としての小説家』、『辺境・近境』の予定だ。 今回第一弾として7つの作品が配信される。…

  • 「映える」本棚を求めて (あるいは岩波書店とみすず書房の徳の高さについて)

    僕は本を買うとき、頭のどこかで「映える」本棚を意識しているように思う。 ここで言う「映える」本棚というのは、Instagramで沢山の「いいね」がもらえるお洒落な本棚のことではない。 逆にインスタ映えする本棚が見てみたい。蔦屋書店のような間接照明を活用した本棚だろうか。 脱線したが、僕が言う「映える」本棚というのは「中身が映える」本棚のことだ。 頭に?が浮かんでいる人が多いと思う。 僕が考える中身が映える本棚というのは、堅めの哲学書や学術書、古典作品が置かれている本棚を思い浮かべる。もしかしたら本好き界隈では、インスタ映えするのかもしれない。 やっぱり、本棚に『カラマーゾフの兄弟』や『アンナ・…

  • 春樹のススメ!初心者におすすめしたい村上春樹の短編小説集5選

    今や日本を代表する作家・村上春樹。その人気は日本にとどまらず、世界中で読まれている。洒脱な表現や比喩と、巧みなストーリーテリング、魅力的な謎解き要素などの魅力が詰まった村上春樹作品。これから村上春樹を読むという人のために、初心者におススメの小説を紹介!

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