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  • 近くあれば見ねどもあるを・・・巻第4-609~610

    訓読 >>> 609心ゆも我(わ)は思はずきまたさらに我(わ)が故郷(ふるさと)に帰り来(こ)むとは 610近くあれば見ねどもあるをいや遠く君がいまさば有りかつましじ 要旨 >>> 〈609〉私は思いもよりませんでした、再び故郷に帰ってこようとは。 〈610〉近くにいればお逢いできなくとも耐えられますが、さらに遠くなってしまったので、生きていけそうにありません。 鑑賞 >>> 笠郎女が、家持と別れた後で贈ってきた歌。609の「心ゆも」の「ゆ」は、発する場所を表す、~より。「故郷」は、平城遷都後はふつう飛鳥・藤原京の地域をさしますが、郎女の故郷でもあったのでしょう。家持に対して抱いている長い間の…

  • 【為ご参考】『万葉集』について

    『万葉集』が、いつ誰によって編集されたか正確には分かっていません。序文も跋文もなく、同時代のほかの文献にも『万葉集』について書かれたものがないからです。 作歌年月が明記されている歌で最も新しいのは、天平宝字3年(759年)正月一日の大伴家持の作です。したがって、今の形の『万葉集』が759年以降に成立したのは間違いありません。それでは、それ以後のいつであるかとなると、平安時代初期まで下る説もあってはっきりしません。だいたい奈良時代の末と見る説が有力となっています。 編者についても、橘諸兄とする説、大伴家持とする説、橘諸兄と大伴家持であるとする説があります。『万葉集』は全20巻からなっていますが、…

  • 庭に降る雪は千重敷く・・・巻第17-3960~3961

    訓読 >>> 3960庭に降る雪は千重(ちへ)敷(し)くしかのみに思ひて君を我(あ)が待たなくに 3961白波の寄する礒廻(いそみ)を漕(こ)ぐ舟の楫(かぢ)取る間なく思ほえし君 要旨 >>> 〈3960〉庭に降る雪は幾重にも積もりました。けれども私は、そんな程度ぐらいにあなたのお帰りをお待ちしていたのではありません。 〈3961〉白波が寄せてくる磯のあたりを漕ぐ舟が、梶を操る手を休める間もないほど、ひっきりなしに思い続けていたあなたです。 鑑賞 >>> 題詞に「相(あい)歓(よろこ)ぶる」とある大伴家持の歌。家持が赴任した越中には、幸いなことに、彼の下役に同族の大伴池主がいました。池主との詩…

  • 馬並めていざ打ち行かな・・・巻第17-3953~3954

    訓読 >>> 3953雁(かり)がねは使ひに来(こ)むと騒(さわ)くらむ秋風寒みその川の上(へ)に 3954馬(うま)並(な)めていざ打ち行かな渋谿(しぶたに)の清き礒廻(いそみ)に寄する波(なみ)見に 要旨 >>> 〈3953〉雁たちは都へ使いに行こうと鳴き騒いでいるようだ。秋風が寒くなってきたので、あの川べりで。 〈3954〉さあ、馬をつらねて行こうではないか、あの渋谿の清らかな磯へ寄せる波を見に。 鑑賞 >>> 大伴家持の歌。天平18年(746年)3月の人事で、29歳の家持は宮内少輔に任命され、次いで6月に越中国守に任命されました。当時の越中国は、射水・礪波・婦負・新川郡のほか、羽咋・鳳…

  • 防人の歌(20)・・・巻第20-4429~4432

    訓読 >>> 4429馬屋(うまや)なる縄(なは)絶(た)つ駒(こま)の後(おく)るがへ妹(いも)が言ひしを置きて悲しも4430荒(あら)し男(を)のいをさ手挟(たはさ)み向ひ立ちかなるましづみ出(い)でてと我(あ)が来る4431笹(ささ)が葉(は)のさやぐ霜夜(しもよ)に七重(ななへ)かる衣(ころも)に増(ま)せる子ろが肌(はだ)はも4432障(さ)へなへぬ命(みこと)にあれば愛(かな)し妹(いも)が手枕(たまくら)離(はな)れあやに悲しも 要旨 >>> 〈4429〉馬屋の縄を切って飛び出す馬のように、私も一緒に行くと言ってすがった妻を置いてきたのが悲しい。 〈4430〉勇ましい男が矢を手挟…

  • 東歌(30)・・・巻第14-3574~3576

    訓読 >>> 3574小里(をさと)なる花橘(はなたちばな)を引き攀(よ)ぢて折らむとすれどうら若(わか)みこそ 3575美夜自呂(みやじろ)のすかへに立てるかほが花な咲き出(い)でそね隠(こ)めて偲(しの)はむ 3576苗代(なはしろ)の小水葱(こなぎ)が花を衣(きぬ)に摺(す)りなるるまにまに何(あ)ぜか愛(かな)しけ 要旨 >>> 〈3574〉小里に咲く橘の枝を引き寄せて折り取ろうとするのだが、あまりに若々しいので、どうしようかとためらわれる。 〈3575〉美夜自呂の海沿いの砂地に生えているかおが花よ。人目につくようにぱっと咲き出ないでくれ。こっそりと愛したいから。 〈3576〉苗代に交…

  • 水鳥の鴨の羽色の・・・巻第8-1451・1616

    訓読 >>> 1451水鳥(みづどり)の鴨(かも)の羽色(はいろ)の春山(はるやま)のおほつかなくも思ほゆるかも 1616朝ごとに我(わ)が見る宿(やど)のなでしこの花にも君はありこせぬかも 要旨 >>> 〈1451〉水鳥の鴨の羽色のような春の山が、ぼんやり霞んでいるように、あなたのお気持がはっきりと分かりません。 〈1616〉毎朝私が見る庭のナデシコの花が、あなたであってほしい。 鑑賞 >>> 笠郎女が大伴家持に贈った歌。1451の「水鳥の」は「鴨」の枕詞。上3句は「おほつかなくも」を導く序詞。不安な気持ちを、霞がかかってぼんやりとしか見えない春の山に喩えています。詩人の大岡信は、「郎女の特…

  • 餓鬼の後に額づくがごと・・・巻第4-608

    訓読 >>> 相(あひ)思はぬ人を思ふは大寺(おほてら)の餓鬼(がき)の後(しりへ)に額(ぬか)づくがごと 要旨 >>> 互いに思い合わない人をこちらで思うのは、大寺の餓鬼の像を、それも後ろから拝むようなものです。 鑑賞 >>> 笠郎女が大伴家持に贈った歌。「大寺」は、奈良四大寺の大安寺・薬師寺・元興寺・興福寺。「餓鬼」は、仏教による三悪道の第二の餓鬼道に落ちた亡者のこと。欲深の報いとして飢餓に苦しむといい、仏像の足元に踏みつけられた姿があります。いくら待っても一向に通ってこようとしない家持を強烈に皮肉り、また、自分は餓鬼の像の後ろから一心にお祈りをするようなことをしていると言って、報われない…

  • 寝よとの鐘は打つなれど・・・巻第4-607

    訓読 >>> 皆人(みなひと)を寝よとの鐘(かね)は打つなれど君をし思へば寐(い)ねかてぬかも 要旨 >>> みなさん、寝る時間ですよと鐘は打たれるけれど、あなたのことを思うと、とても眠れません。 鑑賞 >>> 笠郎女が大伴家持に贈った歌。「皆人を寝よとの鐘」の「鐘」は、当時の都にあった陰陽寮(おんみょうりょう)という役所が時刻を知らせるために鳴らしていた鐘のこと。寝る時刻の鐘は、亥の刻(午後10時)に鳴らされていたかといわれます。

  • 何処にか我が宿りせむ・・・巻第3-274~277

    訓読 >>> 274我(わ)が舟は比良(ひら)の港に漕ぎ泊(は)てむ沖へな離(さか)りさ夜(よ)更けにけり 275何処(いづく)にか我(わ)が宿(やど)りせむ高島(たかしま)の勝野(かちの)の原にこの日暮れなば 276妹(いも)も我(あ)れも一つなれかも三河なる二見(ふたみ)の道ゆ別れかねつる 277早(はや)来ても見てましものを山背(やましろ)の高(たか)の槻群(つきむら)散りにけるかも 要旨 >>> 〈274〉この船は比良の港に停泊しよう。夜も更けているので、岸から遠く離れないように。 〈275〉今夜は何処に宿ろうか。高島の勝野の原にこの日が暮れてしまうというのに。 〈276〉お前も私も一…

  • 橘のにほへる香かも・・・巻第17-3916~3921

    訓読 >>> 3916橘(たちばな)のにほへる香(か)かも霍公鳥(ほととぎす)鳴く夜(よ)の雨にうつろひぬらむ 3917霍公鳥(ほととぎす)夜声(よごゑ)なつかし網(あみ)ささば花は過ぐとも離(か)れずか鳴かむ 3918橘(たちばな)のにほへる園(その)に霍公鳥(ほととぎす)鳴くと人(ひと)告(つ)ぐ網(あみ)ささましを 3919あをによし奈良の都は古(ふ)りぬれどもと霍公鳥(ほととぎす)鳴かずあらなくに 3920鶉(うづら)鳴く古(ふる)しと人は思へれど花橘(はなたちばな)のにほふこの宿(やど) 3921杜若(かきつばた)衣(きぬ)に摺(す)り付け大夫(ますらを)の着襲(きそ)ひ狩(かり)す…

  • 中臣宅守と狭野弟上娘子の贈答歌(17)・・・巻第15-3782~3785

    訓読 >>> 3782雨隠(あまごも)り物思(ものも)ふ時に霍公鳥(ほととぎす)我(わ)が住む里に来(き)鳴き響(とよ)もす 3783旅にして妹(いも)に恋ふれば霍公鳥(ほととぎす)我(わ)が住む里にこよ鳴き渡る 3784心なき鳥にぞありける霍公鳥(ほととぎす)物思(ものも)ふ時に鳴くべきものか 3785霍公鳥(ほととぎす)間(あひだ)しまし置け汝(な)が鳴けば我(あ)が思(も)ふ心いたもすべなし 要旨 >>> 〈3782〉雨のために家にこもって物思いをしていると、ホトトギスが私の住む里にやって来て鳴き立てる。 〈3783〉旅先にあってあの人に恋い焦がれていると、ホトトギスが、この里に一人住む…

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