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  • 考察・村上春樹著『謝肉祭(Carnaval)』ヴィーナスの醜さ

    今回は「一人称単数」より『謝肉祭(Carnaval)』を考察します。この短編では、主人公の友人としてF*氏という40歳代の女性が登場します。彼女は「とても醜い女性」で、最後には詐欺事件の犯人として逮捕されます。ネットでは「モデルは誰か?」と犯人捜しが行われています。 短編集「一人称単数」ではエッセイ形式で書かれていますので、著者の実体験のように読むことが出来ますが、基本的には創作として扱った方が良いと私は思っています。そうしないと「品川猿」が実在してしまいます。なので私は、『謝肉祭(Carnaval)』主人公は著者の等身大の架空の人物として読んでいます。 この短編では、女性の美醜がテーマのひと…

  • 考察・村上春樹著『イエスタデイ』 歌詞の改作

    短編集「女のいない男たち」より『イエスタデイ』を考察します。 こちらの短編は、主人公である語り手(谷村)の友人である木樽の恋愛事情がメインのストーリーです。 木樽は生まれも育ちも東京なのに、関西弁を習得したり、ビートルズの「イエスタデイ」を関西弁バージョンに替え歌を作ったり、自分の恋人と主人公とを付き合わせようとするなど、かなりトリッキーな行動をします。 しかし、これらは木樽の特異性を示すエピソードです。主題とは関係がありません。 yesterday 女のいない男たち (文春文庫 む 5-14) 作者:村上 春樹 文藝春秋 Amazon

  • 考察・村上春樹著『ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles』ビートルズと自殺者達

    短編集「一人称単数」より、『ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles』を考察します。簡単に言うと、この短編はかなり危険な作品です。 ”そう、1960年代の後半には、思想の行き詰まりから人が自らの命を絶つこともあったのだ。”ーP.93 ”そう、ビートルズの音楽は僕らの周囲を隈無く取り囲んでいたのだ。”ーP.94 「ウィズ・ザ・ビートルズ」という題名は、もちろんビートルズのLPのタイトルから来ているのですが、「ビートルズと共に」とは、著者の青春時代がビートルズ一色であったのと同時に、自殺者に溢れていたことを同列に扱っている短編です。 そう、だからこそ同じ言い回しを利用しています。 …

  • 考察・村上春樹著『ハナレイ・ベイ』自然はしばしば人の命を奪う

    今回は村上春樹著、短編集「東京奇譚集」より、『ハナレイ・ベイ』を考察します。こちらは吉田羊さんの主演で映画化された作品です。映画のほうはだいぶ前に見たのでうろ覚えですが、ハワイの素敵な映像と、なんと言っても吉田羊さんの素晴らしい演技が印象に残っています。 原作と映画とでは少し違っている部分もありましたが、双方ともに素晴らしい作品です。 Hanalei Bay ハナレイ・ベイ 吉田羊 佐野玲於 村上虹郎 佐藤魁 栗原類 Amazon

  • 考察・村上春樹著『羊をめぐる冒険』のプロットと主題

    この物語では、星羊の足跡を追うと、「日本人がどこで何をしていたのか?」が分かるようになっています。星羊に思惑や善悪なんてありません。

  • 考察・村上春樹著『「ヤクルト・スワローズ詩集」』すみません。黒ビールです。

    短編集「一人称単数」より、『「ヤクルト・スワローズ詩集」』を考察します。こちらの本はエッセイ形式で語られているのですが、私は基本的にフィクション(創作)として読んでいます。 本作でも、著者は小説家としてデビューして間もないころ、「ヤクルト・スワローズ詩集」なるものを500部ほど自費出版で販売したと語っていますが、調べてみるとこのエピソードはウソのようです。 前回の記事で「カキフライ理論」について触れましたが、こちらの作品はそのカキフライ理論で書かれています。著者の好きな「ヤクルト・スワローズ」をネタにして、自分自身を明らかにする文章です。 The Yakult Swallows Poetry …

  • 村上春樹の「牡蠣フライ理論」 自己とは何か?

    「至急!急ぎ!急募です!村上春樹のカキフライ理論を使って自己紹介文を書いてみようという課題があるのですが、どう書いたら良いのか分かりません。」 どんだけ急いでいるのでしょうかw?4月になると質問投稿サイトにこんな質問があふれます。新たなクラスで親睦を深めるために現代文の授業で自己紹介がてら「カキフライ理論」を利用するようです。 簡単な概要を説明すると、「自分自身を紹介する」よりも、「自分の好きなモノを熱く語る」ことによって、自分はどんな人物であるか?知ってもらう理論です。 村上春樹 雑文集(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『石のまくらに』 生き延びた短歌と言葉

    短編集「一人称単数」より、『石のまくらに』を考察します。「一人称単数」は既に何編か考察していますが、テーマとなっているのは「わたしとは誰か?」だと思って読んでいます。本作では「創作物とは何であるか?」著者が創作に臨む態度が正直に語られています。 著者の描く不思議な物語の源泉である、「冷ややかな石の枕」の秘密が書かれています。 一人称単数 (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon

  • 考察・村上春樹著『騎士団長殺し』のプロットと主題

    今回は長編『騎士団長殺し』のプロットに挑戦してみました。かなり長い作品なのでプロットもそれなりのボリュームになってしまいました。 単行本では「顕れるイデア編」と「遷ろうメタファー編」の二部構成の二冊で、文庫本では全4冊編成になっています。第一部の冒頭で「プロローグ」から始まっているのに、「エピローグ」がないまま物語が終わっているので、ネットでは第三部の発売が期待されました。 ですが、物語の冒頭に配置された「プロローグ」が、時系列的な内容としては「エピローグ」になっています。なので、全部読み終えた後で、もう一度はじめから読み直すと「プロローグ」が「エピローグ」に変化する仕組みになっています。 騎…

  • 考察・村上春樹著『クリーム』② クレム・ド・ラ・クレム

    村上春樹著、短編集「一人称単数」より『クリーム』を考察します。こちらの短編は個人的にとても面白く感じましたので、記事を二つに分けて考察しています。 前回の記事では「中心がいくつもあり、外周を持たない円」について考察しました。そして、今回は物語のプロットから物語の統一性を読み解きたいと思います。 一人称単数 (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon

  • 考察・村上春樹著『クリーム』① 中心がいくつもあって外周を持たない円

    短編集「一人称単数」より『クリーム』を考察します。こちらの短編は面白かったので2回に分けて考察します。 物語全体の考察は次回の記事でします。まず、この物語で読者の疑問となるのは「中心がいくつもあって外周を持たない円」です。本記事ではこの円について、二つほど答えとなるモデルを思い付きましたので、先に示しておこうと思います。 一人称単数 (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon

  • 考察・村上春樹著『品川猿の告白』 名前を盗む猿

    短編集「一人称単数」より、『品川猿の告白』を考察します。 こちらの短編集はエッセイのような文体で、主人公も著者自身と思われるような語り口で物語が進んでいきます。しかし、明らかに現実では起こり得ない展開が待っていますので、現実(エッセイ)と非現実(フィクション)がシームレスに移行していく不思議な物語も楽しめます。 こちらの短編集のテーマは全体として「一人称単数」のタイトルに表れているように「私とは誰か?」というアイデンティティの模索です。 ”テーマ?そんなものはどこにも見当たらない。ただ人間の言葉をしゃべる老いた猿が群馬県の小さな町にいて、温泉宿で客の背中を流し、冷えたビールを好み、人間の女性に…

  • 考察・村上春樹著『品川猿』 猿よりも劣る

    短編集「東京奇譚集」より、『品川猿』を考察します。先日文庫化された短編集「一人称単数」に、「品川猿の告白」という後日譚が収録されていました。そこで今回は、順番に一作目の『品川猿』について考察したいと思います。 東京奇譚集(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『一人称単数』 「わたし」とは誰か?

    短編集「一人称単数」が文庫化されました。今回は表題作『一人称単数』を考察します。 一人称単数とは、私・あたし・オレ・自分など自分自身を指し示す言葉です。一人称複数になると、私たち・我々など自分を含めた複数を指し示します。「あなた」が二人称で、三人称は語り手・聞き手以外の話題に挙がった人・物・名詞です。 世界の言語と比べると、日本語は主語(人称)を省略して話すことが多い特殊な言語です。これは、日本語が「相手の同意を求めながら」コミュニケーションをしていることにも関係があると私は考えています。「私はこう思いますが、あなたもそうですよね?」と、同調圧力を含んでいます。 諸説あるようですが、「おはよう…

  • 考察・村上春樹著『パン屋再襲撃』 ワーグナーの呪い

    村上春樹著、短編集「パン屋再襲撃」より表題作の『パン屋再襲撃』を考察します。 主人公は学生時代に金欠で食べるものにも困ったときに、当時の相棒(パートナー)と共にパン屋を襲撃した過去があります。十年後、主人公は就職・結婚して、まともな社会人になっているのですが、深夜に極度の空腹感で目を覚まします。何故か奥さんも異常な空腹で眠れなくなり、主人公は過去の失敗を奥さんに告白します。 するとどういう訳か、奥さんはパン屋襲撃を成功させなければならないと主人公に説き、夫婦で再襲撃を企てますが、深夜営業のパン屋がなかったので仕方なくマクドナルドを襲うというお話です。 パン屋再襲撃 (文春文庫) 作者:村上春樹…

  • 考察・村上春樹著『1Q84』のプロットと主題

    村上春樹著『1Q84』を、プロットを示しながら考察します。単行本では全3巻・3冊なのですが、文庫本では全3巻・6冊となっており、かなりボリュームのある長い作品です。 あらすじを細かく書こうとすると、元々が大作なのでかなり大変です。かなり乱暴な要約になりますが、コンパクトなプロットでまとめてみました。しかし、あくまでも私個人の「読者のプロット」で、「作者のプロット」ではありません。私が掴んだ主題と対応する読み方ですので、一般的な「あらすじ」との違いを楽しんでいただければと思います。 1Q84(BOOK1~3)合本版(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon

  • 新人ブロガー暗中模索!「にほんブログ村のアンケートに回答する」の巻

    今週のお題「あったかくなったら」 前回までのあらすじ♪ 先日、「にほんブログ村」様からアンケートの回答を依頼する謎メールが届いたワタシ♂。「詐欺メールかな?」と警戒したのですが、調べてみると実際にアンケート依頼をしている様子。 「ブログの楽しさ魅力を伝える文章」を求めているようです。そういえば登録したまま放置中だったなぁ…と思い、書式フリーの自由回答だったので、書いてみることにしました。 ブログ開設からもう少しで一年になります。始めた頃を思い出しながら書いてみると、だんだんとノリノリになってくるワタシ。ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ もしかしたら「登録・放置中のブログ」を対象に、再利用を促すメールだっ…

  • 考察・村上春樹著『猫を棄てる 父親について語るとき』 一滴の雨水

    今回は村上春樹著『猫を棄てる 父親について語るとき』を考察します。こちらの作品は副題にある通り、著者が自分の父親について語るエッセイとなっています。 著者の父親・千秋氏は京都の安養寺(浄土宗)の次男として生まれ、勉強が好きで京大の大学院まで進学します。しかし学生時代に戦争になり、召集の度に勉学を中断しなければなりませんでした。大学院に進んでからも、結婚と子供(春樹氏)を授かったのを機に学問を諦め、高校の国語教師となりました。 私のブログはネタバレ全開で考察するので、せめて文庫本になるのを待って記事にしようと思っていました。そして、私の知らない間に文庫化されていました。 猫を棄てる 父親について…

  • 考察・村上春樹著『猫を棄てる 父親について語るとき』 一滴の雨水

    今回は村上春樹著『猫を棄てる 父親について語るとき』を考察します。こちらの作品は副題にある通り、著者が自分の父親について語るエッセイとなっています。 著者の父親・千秋氏は京都の安養寺(浄土宗)の次男として生まれ、勉強が好きで京大の大学院まで進学します。しかし学生時代に戦争になり、召集の度に勉学を中断しなければなりませんでした。大学院に進んでからも、結婚と子供(春樹氏)を授かったのを機に学問を諦め、高校の国語教師となりました。 私のブログはネタバレ全開で考察するので、せめて文庫本になるのを待って記事にしようと思っていました。そして、私の知らない間に文庫化されていました。 猫を棄てる 父親について…

  • 考察・村上春樹著『野球場』人間の行為を決定する主体

    短編集「回転木馬のデッド・ヒート」より、短編『野球場』を考察します。小説家としてデビューした著者の元には、小説家志望の人たちが勝手に原稿を送りつける事が多かったようです。普段は取り合わないそうですが、今回は著者の好奇心から物語が発展します。 回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon

  • 考察・新海誠監督『すずめの戸締まり』と村上春樹作品との関係

    新海誠監督『すずめの戸締まり』を考察します。最近になって村上春樹著・短編「かえるくん、東京を救う」の考察記事へのアクセスが増えました。また、Google先生も強調スニペットで、キーワード「かえるくん、東京を救う みみずくん」での検索を、私の記事に誘導してくれているようです。 これは、新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』で、ミミズが地震を起こすので、「かえるくん、東京を救う」との関連を調べているようです。 新海誠監督は過去作でも村上春樹作品のオマージュが多いのですが、今回は『すずめの戸締まり』と村上春樹作品について、私なりに考察してみたいと思います。ちなみに私は映画は未鑑賞です。

  • 考察・村上春樹著『飛行機ーーあるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか』

    短編集「TVピープル」より、『飛行機ーーあるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか』を考察します。 私は短編集の表題作となっている「TVピープル」については、「我々はテレビを通して、構造主義的に社会に取り込まれ、自分が思っているほど自由に考え行動できない」と考察しました。 今回、短編「飛行機(Aeroplane)」では、飛行機を (Aero)plane=平面、水準、平坦 と読んでいます。 本短編は三人称で、登場人物の彼(20歳)と彼女(27歳、既婚者で子供もいる)の不倫関係にある二人が、彼が時々口にする「独り言」について語るお話です。 Aeroplane: Or, How He …

  • 考察・村上春樹著『タクシーに乗った男』カロ・タクシージ(良い旅を)

    短編集「回転木馬のデッド・ヒート」より、『タクシーに乗った男』を考察します。記事にするために再読していたのですが、この短編はかなり面白い作品であることを再発見しました。 著者は、まだ作家になったばかりのころ、ペンネームを使って美術誌のために画廊探訪の仕事をしていたそうです。そのときに、40歳前後の女性オウナーから「心に残っている一枚の絵」の話を聞くという内容です。 回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『レーダーホーゼン』離婚原因は半ズボン

    短編集「回転木馬のデッド・ヒート」より「レーダーホーゼン」を考察します。レーダーホーゼンとは、ドイツ伝統の吊りベルト式の半ズボンです。 ざっくりとしたお話の流れは、著者が著者の奥さんの友人(30歳過ぎの独身女性)の、「半ズボンが原因で、母が父を捨てた」という体験談を聞いているというものです。その時に(当時大学二年生)、語り手の女性もついでのように母親から捨てられてしまうお話です。 回転木馬のデッド・ヒート (講談社文庫) 作者:村上 春樹 講談社 Amazon

  • 村上春樹作品とLGBTQ+

    村上春樹作品では、性的マイノリティのキャラクター達が何人も登場しています。今回は村上春樹作品で活躍した彼・彼女たちについてご紹介します。 最近ではSDGsの目標としても話題に挙がることも多いLGBTQ+ですが、著者の作品ではかなり以前から、当たり前のように活躍していた人物達です。

  • 考察・村上春樹著『緑色の獣』 正体不明の獣

    短編集「レキシントンの幽霊」より、『緑色の獣』を考察します。英訳タイトルが「The Little Green Monster」となっています。本短編を考察することが、一体誰の特になるのか?需要があるのか分かりませんが、ネタ切れなので記事にしてみました。 レキシントンの幽霊 (文春文庫) 作者:春樹, 村上 文藝春秋 Amazon

  • 考察・村上春樹著『中国行きのスロウ・ボート』そして誇りを持ちなさい

    短編集「中国行きのスロウ・ボート」より、表題作の『中国行きのスロウ・ボート』を考察します。著者にとって初の短編集の表題作となっています。短編ながらも全5章からなり、何が言いたいのか?さっぱり分からない作品です。ジャズに「slow boat to China」という曲があるのですが、「自分にとって中国とは何か?」著者が回想する物語です。 中国行きのスロウ・ボート (中公文庫) 作者:春樹, 村上 中央公論新社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『独立器官』本人の意思と他律的な作用

    短編集「女のいない男たち」より、『独立器官』を考察します。ざっくりとあらすじを説明すると、50歳を過ぎても独身を貫く美容整形外科の開業医をしている男性・渡会が、恋煩いで拒食症になりそのまま絶命するお話です。 短編集に収められた順番からすると、「イエスタデイ」『独立器官』「シェエラザード」となっています。「イエスタデイ」と『独立器官』では、同一人物・谷村が語り手として登場します。 また、「シェエラザード」ではヤツメウナギが主題となっているのですが、私の考察では、「独立器官 = ヤツメウナギ」として読んでいます。 女のいない男たち (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon

  • 考察・村上春樹作品におけるメタファー、記号と象徴、擬人化の例

    今回は村上春樹作品におけるメタファー、擬人化、記号と象徴について、わかりやすく例を示して説明したいと思います。 「○○は××のメタファー」という考察記事をよく目にします。一部の読者の間では、著者の比喩表現を一様にメタファーとする傾向がありますが、村上春樹作品以外の小説に慣れ親しんだ読書好きの皆さんには抵抗があろうかと思います。 本記事ではそれらの誤解を明らかにしたいと思います。

  • 考察・村上春樹著『UFOが釧路に降りる』箱の中身

    短編集「神の子どもたちはみな踊る」より、『UFOが釧路に降りる』を考察します。こちらの短編集は阪神淡路大震災を扱った作品とされているのですが、地震のあとで地下鉄サリン事件が起きています。 同短編集は連作「地震のあとで」が元となっていることから、本短編は「カルト宗教による勧誘プロセスが描かれている」との読みが示されています。(評論家の加藤典洋さんです。村上春樹イエローページで有名です。) しかし、小説の読み方は自由なので、私は違った読み方をしてみたいと思います。 神の子どもたちはみな踊る(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『ドライブ・マイ・カー』 演じる生き方

    村上春樹著『ドライブ・マイ・カー』を考察します。短編集「女のいない男たち」に収録されている短編ですが、映像化作品がいくつもの賞を受賞しているそうです。私は未視聴なのですがネットから得た情報によると、原作とは違う部分があったり、同短編集に収められている「シェエラザード」や「木野」がエピソードとして挿入されているとのこと。 映像化作品は別物として、私は原作のみで考察します。映画しか見ていない人もその違いを楽しんでください。 ドライブ・マイ・カー インターナショナル版 [Blu-ray] 西島秀俊 Amazon

  • チェーホフ著『ワーニャ伯父さん』と村上春樹著「ドライブ・マイ・カー」

    今回はチェーホフの『ワーニャ伯父さん』をご紹介します。本当は記事にするつもりはなかったのですが、面白かったので単体で取り扱うことにしました。本当は当時のロシアの情勢や、結婚事情、恋愛観など内容が盛りだくさんの悲劇ですが、今回はただ一点、村上春樹著「ドライブ・マイ・カー」との繋がりについて考察します。 かもめ・ワーニャ伯父さん (新潮文庫) 作者:チェーホフ 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『タイランド』 石に変わる言葉

    短編集「神の子どもたちはみな踊る」より『タイランド』を考察します。主人公のさつきは甲状腺の病理医で、世界甲状腺会議なる専門医が集まる会議に招かれており、今回の会場となったのがタイだったので、物語の舞台がタイになっています。 こちらの短編集は阪神淡路大震災をきっかけに執筆が始まった連作「地震の後で」が元になっています。 タイランド (HARUKI MURAKAMI 9 STORIES) 作者:村上 春樹,Jc ドゥヴニ,PMGL スイッチパブリッシング Amazon

  • 考察・村上春樹著『神の子どもたちはみな踊る』かえるダンスの意味

    今回は短編集「神の子どもたちはみな踊る」より、表題作『神の子どもたちはみな踊る』を考察します。日本では今、「政治とカルト教団」に揺れていますが、こちらの短編でもカルトを扱った作品になっています。 四段プロット あらすじの代わりに 主人公の善也(25歳)は出版社に勤めており、生まれたときから父親が居らず母子家庭で育ち、就職後も43歳の母親と二人で暮らしていた。母親は高校生で妊娠・堕胎を経験し、産婦人科の先生に避妊について指導を受けた数ヵ月後に再び妊娠し、同じ先生に怒られるといったエキセントリックでバイタリティのある生き方をしていた。その後どういうわけか、母親はその産婦人科の若い先生と付き合うよう…

  • 考察・村上春樹著『TVピープル』 テレビは真実を伝えているか?

    村上春樹著『TVピープル』を考察します。本作は短編集「TVピープル」の表題作となっていて、短編集の持っている全体的なムードを示す作品となっています。小説『1Q84』に登場した「リトルピープル」へと続く邪悪な系譜なのですが、こちらを「邪悪」としてしまうのは注意が必要です。と言うのも、どのような物事であっても、不都合や不条理を作り出し、呼び寄せているのは、他の誰でもない我々だからです。 TVピープル (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon

  • 考察・村上春樹著『どこであれそれが見つかりそうな場所で』

    短編集「東京奇譚集」より、「どこであれそれが見つかりそうな場所で」を考察します。なかなか惹かれるタイトルです。主人公は45歳の独身で、特殊な状況で失踪してしまった人を専門に探すボランティアをしています。そんな主人公のもとに依頼人が訪れるところから物語が始まります。 東京奇譚集(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『蜂蜜パイ』 地震男がふたを開く

    今回は短編集「神の子どもたちはみな踊る」より『蜂蜜パイ』を考察します。こちらの作品は『かえるくん、東京を救う』と並んで、とても人気のある短編で、ストレートで分かりやすい物語になっています。 主人公は短編『日々移動する腎臓のかたちをした石』で登場した、短編小説家の純平です。『日々移動する~』では、キリエというミステリアスな女性に促されて執筆を進めました。本作では、学生時代から親交の続く親友の娘・沙羅を喜ばそうと、『蜂蜜パイ』という童話を創作するお話です。 神の子どもたちはみな踊る(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『女のいない男たち』水夫は風を捉えて進む

    短編集『女のいない男たち』の表題作を考察します。まえがきでは「女のいない男たち」というモチーフで短編をいくつか書いたあとで、単行本のための表題作を書こうと思い立ったと語っています。また本作については、「そうだ、こういうものを書こう」という着想を得てからは、一気に書き上げたとのことです。 女のいない男たち (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon

  • 『星の王子さま』 その本は魔法の言葉で書かれている

    大人になってこの本を知ると、「何でもっと前にこの本を読まなかったのだろう!」と後悔し、幼すぎると「変な本…」で終わってしまう。初めて手に取ったときに感動したエピソードは、再読するとその輝きを失い、今度は別のエピソードが心を締め付ける。 星の王子さま (集英社文庫) 作者:サンテグジュペリ 集英社 Amazon

  • 村上春樹作品を読み解くキーワード一覧

    村上春樹作品では著者が独自に考案した様々な用語が使われています。今回はそれらのキーワードやキー・センテンスについて、短い文でまとめてみたいと思います。長編作品を思い付く限り全部盛りです。言い切ります。

  • 今週のお題「SFといえば」 ワタシのベスト3

    今週のお題「SFといえば」 こんにちは♪今日はお題に挑戦してみたいと思います。SFと一口に言っても、小説・映画・マンガ・アニメと様々で、サイエンス・フィクションなのか?それともスペキュレーティブ・フィクション(思索的小説)とするのか?調べてみるとたくさんありました。今回はワタシが思いつくままにジャンル別にマイベストを考えてみました。

  • 考察・風の歌を聴け ②「ジョン・F・ケネディ」に答える読み方

    村上春樹著『風の歌を聴け』を考察します。皆さんは都市伝説はお好きでしょうか?今回は都市伝説風に、怪しい読み方を示してみたいと思います。前回は純粋にプロットから「風の意味」について考えてみましたが、今回はキーワード群を「Happy Birthday and White Christmas」からイエス・キリストに結びつける読み方をして、主題を導きだします。 Happy Birthday and White Christmas Hear the Wind Sing Wind/Pinball: Two novels (English Edition) 作者:Murakami, Haruki Vinta…

  • 考察・風の歌を聴け ①「風の意味」に答える読み方

    村上春樹著『風の歌を聴け』を考察します。本作は群像文学新人賞への応募作で著者のデビュー作です。もう既に様々な読み方があるのですが、「主人公=鼠」とする読み方、「レコードショップの女の子は鼠の恋人」だったりです。私も本作から二つの主題を読めたのですが、今回は純粋に「風の意味」をプロットから考察します。 Hear the Wind Sing Happy Birtday and White Christmas 風の歌を聴け (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『木野』 ザグレウスの心臓 全力考察

    短編集「女のいない男たち」より、『木野』を考察します。以前にも『木野』は記事にしたのですが、そのときは考察が中途半端になってしまいましたので、リトライしたいと思います。猫と柳、そして、「心臓を隠す蛇」についても考察したいと思います。 ポスター ディオニソスのグスタフクリムト祭壇詳細 A3サイズ [インテリア 壁紙用] 絵画 アート 壁紙ポスター MAK060KFT Amazon

  • 村上春樹著『アフターダーク』のあらすじとプロット ネタバレの是非

    村上春樹著『アフターダーク』のあらすじ・プロットです。考察は別記事に書きました。

  • 考察・村上春樹著『シェエラザード』 やつめうなぎ的な主題

    短編集「女のいない男たち」より、『シェエラザード』を考察します。社会との関わりを絶って「ハウス」で隠遁生活を送る男性・羽原と、その彼を支援する「連絡係」の女性・シェエラザードの物語です。 シェエラザード (HARUKI MURAKAMI 9 STORIES) スイッチパブリッシング Amazon

  • 考察・村上春樹著『土の中の彼女の小さな犬』

    短編集「中国行きのスロウ・ボート」より、『土の中の彼女の小さな犬』を考察します。主人公はインタビュー記事やルポを書いているライターで、宿泊先のホテルで知り合った女性にコールド・リーディングを行う話です。 コールド・リーディングとは、インチキ占い師の用いる手法で、会話と観察によって事前情報無しに相手のことを言い当てる読心術のようなものです。

  • 考察・村上春樹著『かえるくん、東京を救う』

    短編集「神の子どもたちはみな踊る」より、『かえるくん、東京を救う』を考察します。著者の短編の中でもかなり人気のある作品です。こちらの短編集では、収められている短編同士がキーワードを共有するので、単体で取り出すのが少し難しいです。レコードやCDアルバムのように、流れと関連を持っています。

  • 考察・村上春樹著『はじめに・回転木馬のデッド・ヒート』 おりと澱と檻

    今回は短編集の序文となっている、『はじめに・回転木馬のデッド・ヒート』を考察します。こちらの序文では「小説とは何ぞや?」という著者の思いが短くまとめられています。『1973年のピンボール』と、全く同じことが書かれています。 Ничья на карусели. (回転木馬のデッドヒート 短編集全9篇 ロシア語版) 作者:村上 春樹 Эксмо Amazon

  • 新人ブロガー暗中模索! 「修復されてしまったフェルメールの巻」

    前回までのあらすじ♪ カラフルな色を使ったブログに吸い込まれる傾向があるワタシ♂。読者様の記事を巡回しながら「キレイだな~…」なんて、色彩を欠いた自身の考察ブログにヘコむ。(´ω`) 「考察ブログだから色を抑えてシンプルに!」とも思うのですが、カラフルなブログを指を咥えておとなしく眺めているワタシ♂。 (((ヾ(*′Д`*)ぃぃなぁぁ(*′Д`*)ノ゙))) しかし、どうにも我慢ができず、脱線を思い付く。記事数もまだ少ないのに迷走してばかり…。 でも、頑張れワタシ♂!負けるなワタシ♂! o(*≧∀≦)ノ

  • 考察・村上春樹著『螢』「死」が捉えたのは誰か?

    短編集「螢・納屋を焼く・その他の短編」より、『螢』を考察します。こちらの作品は『ノルウェイの森』の原型になっている短編なのですが、単体でも十分に読みごたえのある、別物と捉えてよい完成品です。 『ノルウェイの森』では、主人公の「混乱」を描こうとしていますので読者も混乱しますが、短編は「自分の置かれた状況を正確に見定めることが出来ない」と、かなりシンプルに読みやすい作品になっています。 蛍(螢・納屋を焼く・その他の短編)(中国語) (村上春樹文集) 作者:村上 春樹 上海訳文出版社 Amazon

  • 考察・『七番目の男』 初めての読む「村上春樹」に最適な短編

    短編集「レキシントンの幽霊」より、『七番目の男』を考察します。こちらの作品は村上春樹作品のなかでも特に読みやすく・分かりやすいとされている短編です。メッセージもかなりストレートで、「著者が小説で描きたいこと」が端的に現れています。 語り手(主人公)は”部屋の中に丸く輪になって座った人々”の七番目に語り始めた人物で、グループ・セラピーか?怪談話か?恐怖体験?を交互に披露する場の、最後の発表者です。 七番目の男 (HARUKI MURAKAMI 9 STORIES) 作者:村上 春樹,Jc ドゥヴニ,PMGL スイッチパブリッシング Amazon

  • 考察・村上春樹著『レキシントンの幽霊』 ある種のものごと

    村上春樹著『レキシントンの幽霊』を考察します。短編集の表題作となっている本作ですが、高校の現代文で幾つかの教科書に採用されています。主人公(語り手)は著者自身で、マサチューセッツ州レキシントンでの体験で、「人物の名前だけは変えたけど、それ以外は事実だ」とした上で、物語が始まります。 レキシントンの幽霊 (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon

  • 考察・村上春樹著『踊る小人』 象工場の意味

    村上春樹著『踊る小人』を考察します。短編集「蛍・納屋を焼く・その他の短編」収録。主人公は「象の水増し」を行っている象工場に勤めている青年という、かなりぶっとんだ内容のお話です。 The Dancing Dwarf 【中古】英語で読む村上春樹4 2014年04月 世界のなかの日本の文学:「踊る小人」THE DANCING DWARF/ NHK出版価格: 700 円楽天で詳細を見る

  • 考察・1973年のピンボール 自己変革を目的とした小説

    村上春樹著、長編『1973年のピンボール』を考察します。本作は著者にとって二作目の長編です。「喪失感」という言葉を使わずに考察します。

  • 考察・村上春樹著『午後の最後の芝生』 成長する自己を刈る

    今回は、村上春樹作品の中でも特に人気のある短編『午後の最後の芝生』をご紹介します。私にはあまり印象がなかった作品なのですが、調べてみると、とにかく大人気でした。こちらの短編は業界人にも人気のある作品のようです。 The Last Lawn of the Afternoon イラストレーターの沢野ひとしさん、思想家の内田樹さん(村上春樹解説本を多数執筆)、小説家の小川洋子さん、映画監督の市川準さん(映画『トニー滝谷』の監督)、イラストレーターの安西水丸、元『文學界』編集長の湯川豊さん、村上陽子夫人 など、wikiより ほとんど著者の身内じゃないか?とも思いましたが、アーティスティックな創作活動を…

  • 考察・村上春樹著『午後の最後の芝生』 成長する自己を刈る

    今回は、村上春樹作品の中でも特に人気のある短編『午後の最後の芝生』をご紹介します。私にはあまり印象がなかった作品なのですが、調べてみると、とにかく大人気でした。こちらの短編は業界人にも人気のある作品のようです。 The Last Lawn of the Afternoon イラストレーターの沢野ひとしさん、思想家の内田樹さん(村上春樹解説本を多数執筆)、小説家の小川洋子さん、映画監督の市川準さん(映画『トニー滝谷』の監督)、イラストレーターの安西水丸、元『文學界』編集長の湯川豊さん、村上陽子夫人 など、wikiより ほとんど著者の身内じゃないか?とも思いましたが、アーティスティックな創作活動を…

  • 考察・村上春樹著『めくらやなぎと(、)眠る女』 風を視覚化する柳

    こちらの作品はふたつのバージョンがあり、ひとつはオリジナルの『めくらやなぎと眠る女』と、それを短くした改稿版の『めくらやなぎと、眠る女』です。それぞれ、「蛍、納屋を焼く、その他の短編」と「レキシントンの幽霊」に収録されています。

  • 考察・村上春樹著『夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について』

    短編集『夜のくもざる』に収録された短編です。短編と言うよりはショートショートに分類されるぐらいのとても短いお話です。こちらの短編集は、ほとんどが意味不明でふざけた?内容のショートショートばかりなのですが、『夜中の汽笛~』だけがトーンが違います。 『~物語の効用について』となっていますので、著者が物語に求めているモノが何であるか?分かりやすく書かれています。

  • 新人ブロガー暗中模索! 「人気の無い考察ブログと、彼の無駄なあがき」

    前回までのあらすじ♪ 村上春樹作品の考察に特化したブログを作ろうと、はてなブログを始めたワタシ♂。 当然アクセス数は伸び悩み、検索流入もないまま低空飛行を続けていた。しかし最近になって、少しずつ検索でヒットされているのを確認するも、流入はほとんど無い… (´・ω・`)? ナゼ…。 でも、頑張れワタシ♂!負けるなワタシ♂! o(*≧∀≦)ノ

  • 考察・村上春樹著『納屋を焼く』 同時存在するモラリティ

    村上春樹著『納屋を焼く』ですが、当初、映像化する権利はNHKが持っていたそうで、NHK版と「劇場版 バーニング」の二種類が存在するようです。 考察に関しては主流なのが二種類あり、ひとつは「彼」によって彼女(納屋)が殺されて(燃やされて)しまったという読み方と、もうひとつは彼女が異世界に行ってしまったと読むものです。 螢・納屋を焼く・その他の短編(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『日々移動する腎臓のかたちをした石』

    村上春樹著、『日々移動する腎臓のかたちをした石』を考察しています。腎臓石を「行き場を失った想い」と読んでいます。

  • 三つの異界めぐり 死者の国からの生還

    春です。私の住んでいる地域ではやっと桜が満開になったかと思ったら、雨で散らされてしまいました。地面に落ちた花びらの絨毯もキレイだったりするのですが、桜色以外の花もたくさん見ることができる季節になりました。 今回は、三つの異界めぐりについて三つの本をご紹介したいと思います。

  • 村上春樹の『二重メタファー』 二重構造の認識システム

    村上春樹の『二重メタファー』とは、人間が生物として生得的に備えていた認識システムを、新たに獲得した「社会の認識システム」で覆い隠してしまったために生じた弊害を指しています。

  • 考察・村上春樹著『偶然の旅人』 昼間の打ち上げ花火は見えない

    短編集「東京奇譚集」より、『偶然の旅人』を考察します。本作ではとても珍しく、著者本人が冒頭で登場し、「フィクションではなく、実際に本人から聞いた話だ」と断りを入れてから、話が進められます。 村上春樹作品には、中性的なキャラクターが良く登場します。本作は調律師をしているゲイの男性のお話です。

  • 🔍️ 「村上春樹 気持ち悪い」 で検索!

    最近になって、ごく数件ではありますが、Bing検索からの流入を確認できました。結構新しい記事もクリックしてくれているようでとても嬉しいです。 気になったのが、「村上春樹 気持ち悪い」というキーワードの検索でインプレッション数が伸びていることでした。(クリックはゼロです。) なので、著者の「気持ち悪さ」について考えてみようと思います。

  • 考察・村上春樹著『トニー滝谷』 中身の不在を補う

    短編集「レキシントンの幽霊」より、『トニー滝谷』を考察します。不思議なタイトルの本作ですが、映像化もされている作品です。 生まれてすぐに孤独な少年時代を過ごし、最愛の人とめぐり逢うも、再び孤独になることから、「孤独、深い愛、喪失」をテーマとした読み方が主流となっている作品です。

  • お花見と治水の歴史 日本はナゼ水害が多いのか?

    皆さんのお住まいの地域の桜の開花状況はいかがでしょうか?今日は治水の歴史に関する本をご紹介したいと思います。お花見と治水にどんな関係が?と思われた方もいるかもしれません。また、日本は本当に水害の多い国なのでしょうか?

  • 考察・村上春樹著『木野』 村上春樹的メタファーとプロット

    短編集 村上春樹著「女のいない男たち」より『木野』を考察します。しかし、今回は考察に失敗しており、著者の主題を見つけることが出来ませんでした。もう少し時間をかければ何とかなったかもしれませんが、この作品を読んでいると別のことに気を取られて、違うことを書きたくなってしまったことも理由のひとつです。 女のいない男たち (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon

  • 考察・村上春樹著『アイロンのある風景』 アウトサイダーはアイロンを神聖視する

    短編集『神の子どもたちはみな踊る』より、「アイロンのある風景」を考察します。本短編集は連作『地震のあとで』をまとめたものに、書き下ろし作品を加えたものになってます。著者の短編のなかでも特に人気の高い『蜂蜜パイ』と『かえるくん、東京を救う』が二つとも収録されています。 日本文学100年の名作 第9巻 1994-2003 アイロンのある風景 (新潮文庫) 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『ふしぎな図書館』

    可愛らしい表紙の絵本になっていますが、内容はダークファンタジーです。日本語版はイラストレーターの佐々木マキさんの絵ですが、海外版はカット・メンシックさんという方のイラストの他に、国により複数の絵本が存在します。私は初出である『カンガルー日和』より、「図書館奇譚」を元に考察します。 ふしぎな図書館 作者:村上 春樹 講談社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『象の消滅』 象の象徴するモノ

    奇想天外なストーリーに定評のある著者ですが、この短編はその中でも飛び抜けて意味不明です。この物語に著者の主題やメッセージはあるのでしょうか?アメリカではこの『象の消滅』を表題作とした短編集『The Elephant Vanishes』が大変な人気となり、長編作家としてのイメージが強かった著者が、短編作家としても再評価されるきっかけとなった作品となっているそうです。 「象の消滅」 短篇選集 1980-1991 作者:村上 春樹 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『沈黙』 ゾンビ的な傍観者の畜群

    高校2、3年生向けの「集団読書テキスト」なるものに採用されたそうです。いじめがテーマになっており、大変良い教材だと思います。被害者側にも非を持たせ、また、加害者の人柄は被害者側から一方的に評価されていることも、より深い考察を必要とされる作品です。 沈黙 (集団読書テキスト (第2期B112)) 作者:村上 春樹 全国学校図書館協議会 Amazon

  • 新人ブロガー暗中模索! 「僕はつい さぶろぐ君を 触ってしまう♪」

    前回までのあらすじ♪ 有名な小説をパロってタイトルにする遊びを覚えてしまったワタシ。しかし、本好きの端くれとして気が咎め、前回予告したタイトルをこっそり変えてしまう。 そして、自分の記事を再読し、一人称がカタカナ表記の「ワタシ」だと、自分が女性に思われる可能性もあるかも?と心配になり、こっそりプロフィールにもオス♂であることを追記する。 (書評の方では男性であることを隠していませんが、カスタム記録しか読まない人には、誤解を与えたかもしれません。人称を変えたのはテンション高めの別人格で、楽しい文章を心掛けたためです) ٩( ᐛ )و 404 not found さぶろぐ君

  • 考察・村上春樹著『バースデイ・ガール』 後悔のない人生

    二十歳の誕生日に、風変わりな老人から「ひとつだけどんな願い事でも叶えてあげる」と言われた女性のお話。 中学三年生の教材として採用されている作品です。主人公である30代の既婚女性が、親しい関係にある「僕」と、おそらくバーカウンターでお酒を飲みながら話しています。大人な雰囲気ですが、中学生にイイんでしょうか?(でもきっと、喫茶店のアイスティーです。) バースデイ・ガール 作者:春樹, 村上 新潮社 Amazon

  • 考察・村上春樹著『鏡』 心(主観)が作り出す幻

    高校の教科書に載っているらしく、課題に悩んでいる生徒たちが質問サイトに投稿しているのが目立ちます。本作の主題や著者の伝えたかったことは何だったのでしょうか?全力で考察します。 『カニッツァの三角形』 出典;北岡明佳教授による作図 「錯視のカタログ」より引用

  • 考察・村上春樹著『眠り』 傾向的に消費される主婦の人生

    主人公は30歳の専業主婦。あるとき不思議な夢を見たことをきっかけに「不眠症のようなもの」になり、十七日間も眠れない日々が続く。 ねむり 作者:村上 春樹 新潮社 Amazon

  • 考察・羊をめぐる冒険 羊男の正体

    テーマあるいは出発点 近代から現代に至るまでの日本を、二・二六事件、学生運動、三島由紀夫事件をターニングポイントと捉え、日本人がいかに羊(家畜)に成り下がったか?あるいは、そうなることを回避できたか?検証する物語。

  • 新人ブロガー暗中模索! 「あいつ、CSS捨てるってよ」の巻

    前回までのあらすじ 思い付きで、ブログのカスタム記録を投稿しながら勉強しようと思ったワタシ。しかし、書き始めるとノリノリで ₍₍ (ง ᐛ )ว ⁾⁾ 、楽しくなってきた自分に気づく。勢い余って次回予告までしてしまう。

  • 一冊の本が3万円!?私の『ヘルマン・ヘッセ』 コレクション

    今週のお題「わたしのコレクション」 初めてブログに写真を付けてみました。きれいに見えているでしょうか?ドキドキ。「お題」にも初めて挑戦します。ドキドキ。 私のヘッセ・コレクションの一部です。写真にあるものは、ほとんどが絶版で入手困難なものです。ひとつだけ右端に教科書の挿し絵のようなものが写っていますが、「ようなもの」ではなく、本当に教科書です。「少年の日の思い出」という短編なのですが、高橋健二訳の作品は市販されておらず、この挿し絵も含めてヘッセファンには大変貴重なものになっています。

  • 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

    テーマあるいは出発点 人間は社会的な生き物なので、社会に則して自己を変化させながら生きていかなければならない。その時、自己の変化に合わせて自我も影響を受けているが、個としての純粋な願望を叶えることの出来ない自我を慰める為に、心の本来的な有り様の一部を生け贄にしてはいないだろうか?例えばそれを、古い夢(自分の中にかつてあった個としての純粋な希望・願望)として。

  • 新人ブロガー暗中模索! 「ライバルはお料理系サイト!?」の巻

    書評を書きたくてブログを始めたのですが、『パスタを茹でている間に』というイキったブログ名を付けたため、自分でGoogle検索してみたらお料理系サイトと競合してしいることに気づく…ヽ(*´∀`*)ノ どうする?ワタシ!?

  • 若い読者のための短編小説案内 作家は何を描きたいのか?

    若い読者のための短編小説案内 (文春文庫) 作者:春樹, 村上 文藝春秋 Amazon 偏見の柱 ”読書というものはもともとが偏見に満ちたものであり、偏見のない読書なんてものはたぶんどこにもないからです。逆な言い方をするなら、読者がその作品を読んで、そこにはどのような仮説(偏見の柱)をありありと立ち上げていけるかということに、読書の喜びや醍醐味があるのではないかと僕は考えるのです。”ーP.25

  • 「緑」ノルウェーの森(教養小説)

    この作品は二通りの読み方が出来ましたので、二つの考察を掲げてみます。 ひとつは、純粋に「恋愛小説」として読み、ひとつは「ビルドゥングスロマン」として読みます。 それぞれを「赤」ノルウェイの森(恋愛小説)と、「緑」ノルウェーの森(教養小説)としてみました。 ノルウェイの森 下 (講談社文庫) 作者:村上 春樹 講談社 Amazon

  • 考察・「赤」ノルウェイの森(恋愛小説)

    この作品は二通りの読み方が出来ましたので、二つの考察を掲げてみます。 ひとつは、純粋に「恋愛小説」として読み、ひとつは「ビルドゥングスロマン」として読みます。 それぞれを「赤」ノルウェイの森(恋愛小説)と、「緑」ノルウェーの森(教養小説)としてみました。 ノルウェイの森 上 (講談社文庫) 作者:村上 春樹 講談社 Amazon

  • 読書のお供系 インストBGM♪

    皆さんは読書の際にBGMは何か流してますでしょうか? 読書以外にも、家事や掃除、ちょっとした作業、他にもブログを書いているときとか?私は音楽を聞き始めるとしっかり聞いてしまうタイプなので、やりたいことが全然はかどりませんw(その内ハミングしてみたり…) 今日はそんなわけで、最近個人的にハマっている「やりたいことを妨げない系」のインスト曲を集めてみました。 それから、私はPCではなくてタブレット環境で書いているのですが、Spotifyの埋め込みコードはPC環境でないと出来ないとの記事がありましたので、何とかタブレットのみで出来る方法を調べてみました♪

  • 考察。ダンス・ダンス・ダンス 6番目の白骨

    ダンス・ダンス・ダンス (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon テーマあるいは出発点 ”「とても濃密な影なんだ。死がすぐそばまで迫っているような気がする。腕がすっと伸びてきて、今にも僕の足首をつかみそうな気がするんだ。でも怖くはない。どうしてかというと、それはいつも僕の死じゃないからだ。その手がつかむのはいつも別の誰かの足首なんだ。でも誰かが死んでいくたびに僕の存在が少しずつずれていくような気がする。どうしてだろう?」 (中略) 「それがたぶんあなたの鍵なんじゃないかしら?あなたは死というものを通して世界と繋がっているのよ、きっと」ー下巻P.162 著者の解決あるいはメッセージ …

  • 新人ブロガー奮闘中!

    何とかブログを開設して、記事を書いて投稿するまでには至りましたが、はたしてこのまま独りよがりな記事を連投していて良いものか?ふと立ち止まって考えてみることにしました。

  • 考察・国境の南、太陽の西 ヒステリア・シベリアナ症候群

    国境の南、太陽の西 (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon あらすじ 主人公は以前に交際していた女性の従姉妹と浮気をし、彼女(イズミ)を深く傷つけてしまった。主人公はそれっきり元カノに会えずに謝罪も出来ず後悔していた。しかし、大人になって結婚した主人公は懲りずに不倫をし、奥さんを傷つけるが、今度は何とか許してもらえるというヒドイお話。

  • 考察・ねじまき鳥クロニクル 「自由」猫と「エンパシー」バット

    ねじまき鳥クロニクル(第1部~第3部)合本版(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon テーマあるいは出発点 ”「綿谷ノボルは、(中略)テレビやメディアを通して、その拡大された力を広く社会に向けることが出来るようになった。そして彼は今その力を使って、不特定多数の人々が暗闇の中に無意識に隠しているものを、外に引き出そうとしている。それを政治家として自分のために利用しようとしている。(中略)彼の引きずりだすものは、暴力と血に宿命的にまみれている。そしてそれは歴史の奥にある一番深い暗闇までまっすぐ結びついている。それは多くの人々を結果的に損ない、失わせるものだ」”ー第3部P.459 著者の解…

  • 考察・スプートニクの恋人 付け加えられた「にんじん」

    スプートニクの恋人 (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon テーマあるいは出発点 人は時に、双眼鏡を使って自身の部屋を覗き見るように、自身の欠陥や空白を拡大し引き延ばし客観視してみなければならない。自身の歪みが発生する予兆として、そこでは何かが燃えだし煙を上げているかもしれない。 著者の解決あるいはメッセージ ”しかしそういう歪みは、外見からはなかなか予測しにくいものなんです。あるいはまた、行為そのものを行為として単独で取り上げて、しかるべき罰を与えて、それですぐに治るというものでもありません。根本的な原因を探し出して、それを正していかない限り、あとになってまた違うかたちで問題が…

  • 考察・海辺のカフカ 笛を吹くジョニー・ウォーカー

    海辺のカフカ(上下)合本版(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon テーマあるいは出発点 うつろな人間たちが世界に不条理をもたらす。そんな不条理な世界の中で私たちは如何に生きていくべきか? 著者の解決あるいはメッセージ 世界が不条理に満ちていたとしても、私たちは自身のアイデンティティを自己の内側だけでなく、他者との関わりの間に求め、現実を喰らっていく覚悟を持たなければならない。

  • 考察・アフターダーク 暗闇のあと

    アフターダーク (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon テーマあるいは出発点 テレビが夢を奪う。深夜営業の店や会社が、本当なら夢(無意識)の世界に居る人たちを現実に縛り付ける。本来なら抑制されている欲望が現実に吹き出し、あちこちで衝突する。マリはそんな危険な深夜(深部)の世界で、夢を見ている時間の中で、不思議な出来事や出会いを通し、自身の本当の願いに気づく。 著者の解決あるいはメッセージ 自分の願望や欲望を実現可能な代替品で叶えるのではなく、本当の自分の願いを自身で理解し、現実の世界で実現しよう。

  • 考察・1Q84 空気さなぎの正体

    1Q84(BOOK1~3)合本版(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon テーマあるいは出発点 あなたは誰か(何か)に対して自我の一定の部分を差し出して、その代価としての「物語を」受け取ってはいないだろうか?私たちは何らかの制度=システムに対して、人格の一部を預けてしまってはいないだろうか?もしそうだとしたら、その制度はいつかあなたに向かって何らかの「狂気」を要求しないだろうか?あなたの「自律的パワープロセス」は正しい内的合意点に達しているだろうか?あなたが今持っている物語は、本当にあなたの物語なのだろうか?あなたの見ている夢は本当にあなたの夢なのだろうか?それはいつかとんでもない悪…

  • アンダーグラウンド

    アンダーグラウンド (講談社文庫) 作者:村上春樹 講談社 Amazon 空気さなぎの正体 アンダーグラウンドのあとがき「目じるしのない悪夢」にこんなことが書かれています。 ”あなたは誰か(何か)に対して自我の一定の部分を差し出して、その代価としての「物語を」受け取ってはいないだろうか?私たちは何らかの制度=システムに対して、人格の一部を預けてしまってはいないだろうか?もしそうだとしたら、その制度はいつかあなたに向かって何らかの「狂気」を要求しないだろうか?あなたの「自律的パワープロセス」は正しい内的合意点に達しているだろうか?あなたが今持っている物語は、本当にあなたの物語なのだろうか?あなた…

  • 考察・色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 犯人は誰か?

    色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫) 作者:村上春樹 文藝春秋 Amazon テーマあるいは出発点 人間は生きている限りは肉体(ソーマ)という牢獄(セーマ)から抜け出せず、自分の身の回りで起こっている出来事に正しい理解や認識に至ることが出来ない。 著者の解決あるいはメッセージ 自分の心の暗部が誰かの心の暗部と繋がり、それが現実に不幸な形で顕れるとしても、自身の中にある傷や苦しみを他者のなかにも認めることにより、凍りついてしまった心を、互いの温もりによって溶かしていくことができる。理解しがたい出来事も、受け止めがたい出来事も、分からないままに。

  • 考察・騎士団長殺し 二重メタファーとは何か?

    騎士団長殺し(第1部~第2部)合本版(新潮文庫) 作者:村上春樹 新潮社 Amazon テーマあるいは出発点 キリング・コマンダー(我々人間に殺し合いを命じる存在)があるとするならば、我々はどのようにそのような存在から身を守ることができるか? 著者の解決あるいはメッセージ 子供たちがとても危険な現実の相に迷い込んでしまっている。子供たちを救い出すために、大人がイデアを否定しメタファー通路に飛び込み、関連性によって物事が生じる世界の中でその責めを受け、胎内くぐりの試練を経て生まれ変わらなければならない。そうすることによって、危険な現実の中にある子供たちを、比較的まともで安全な現実に戻してあげるこ…

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