もう一方の大将、上杉顕定は敵中深く切り込んだ上に、率いる諸士も過半が討死して城に戻ることもかなわず、敵中を突破して信州妻有の長森原の城にたどり着いて、追々集まって来た敗将を収容したところに、早くも長尾.高梨勢が押し寄せて長森城を十重二十重に取り囲んだ。山をも崩すような攻城軍の鬨の声、だが上杉方もこれに負けじと矢を放てば、一矢も外すことなく高梨兵を射て殺す。高梨の兵は城門をこじ開けようと攻め立てるが、上杉軍は近くによる敵を寄せまいと逆襲する、そのすさまじさに高梨軍は辟易し浮足立ったそこに「いまぞ!」と上杉軍は門を開いて打って出る、これによって高梨勢は散々に打ち破られたが、小勢の上杉方は深追いせず軽々と城内に引き上げた。長尾、高梨は軍議を開いた、このままここに長居すれば、下越後から上杉方の宇佐美ら諸将が後詰に...「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた(93)長尾家6