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弌矢
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武蔵野市
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2020/09/14

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  • ミクロネシアの記憶

    海の上を走るボートの舳先に立って詠む。独りよがりな愛を詠む。ミクロネシアの広がりが美しい。 海上の路をゆきながら/一握の愛を受けとる 世界の誰からなのか皆目見当がつかない/そんな半端な背中をボートが轢いて/走り去って グッドバイ ふり向いて、操縦席を横切り、一番後ろでノートにまた詩を書きつける。書き殴ったそれを持ってふたたび舳先まで歩く。西脇順三郎を意識しながら詠み直す。 大気の青のただなか/ 空中戦の機体の銀にゆがみ映る/敵であるあなたのエンジン/まざまざと/行為を受ける機体の銀 ところで、私は詩人の西脇順三郎に以前会った記憶を持っていた。ミクロネシアの島でちょうど

  • 秘密の森、病める少女

    東京の西のはずれ、トランキライザーをポケットに、少女が秘密の森のなかに入る。暗い道は樹木に囲われ、呼吸は次第に楽になっていく。道の先にあるのは大小様々な石がストーンヘンジ状に囲う池。 覗き込む池のおもては、少女の顔だけを映す鏡色。月あかりのなかをドラゴンフライが飛んでいる。さまよう少女のまなざしは見上げる狼の星座、南のかんむり。 近くにそびえる電波塔と遠い山の電波塔をつなげる電波は、少女でさえ懐かしく傍受できる。電波は生き物を誘う。みみずくかふくろう、そしてその他の夜鳥の声。 鵺の声もしてくる。リコーダーのような声を発しながら近づいてくる。樹木の陰、樹冠から、月あかりへ向けて生物

  • 案ずることなき子供たちは異郷を目指す

    幼少のころ、親に乗せられた車の窓からすぎ去っていく場所を見ていた。国道を走る車の外を、いつも同じ場所が流れていた。樹木に囲われた巨大な球体ガスタンク、複数のアンテナを伸ばしたUFO型の建物が工場のような建物と連結。それらが緑の茂みに隠れるように食い込んでいた。 いつもその場所は流れ去った。流れ去るその場所にさしかかるたびに、私はそこに降り立ってみたいと思っていた。通過するだけのその場所には神秘が隠されているに違いないと眺めていた。 小学生の頃にはすでに一人で電車にも乗れるようになっていたし、あまり遠出をしなければ何処にでもいってよいと母親からいわれていた。電車に乗ってもよい

  • 傷心で徘徊する

    失恋したその足で頑張って呪文を唱えながら白昼の月の下を歩けば、いとけないパイナップルの売り子、その背後に店店店、店の老獪な売り手は魔法の蜜をふり撒く。 恋愛流行歌謡曲に思わず耳をふさぎ、急ぎ足で、立ちどまる黄赤、青に歩き出せば白線の外側、車道、路地、ギャンブリングセンターの物陰に浮き沈みする真昼のつき。 桃源郷に入って耳から手を離すと硬貨の音を足下に聴きとった。硬貨は裏表の裏を見せて落ちていた。五〇〇円ぶんのつき、このつきは失恋の成果のせいか。つきが裏目に出ないよう呪文を唱え続ける。 入り込んだ桃源郷から駅へふり向けば風俗嬢の波、流れてくる華やかな波は自由恋愛を建前に務めることに

  • Electric Ladyland

    イーハトーブで、流氷というものを初めて見た。ベーリングからくる流氷。流氷から誘うジョバンニが着ているのは魔法のピーコート。飛び乗る。 教会のような室内。壁にしつらえられた本棚。テーブルを挟んでジョバンニと向かいあって座る。Electric Ladylandと刻まれた分厚い本を膝に立てたジョバンニと一緒に北半球から南半球を周遊する。 そして流氷はアラビア海の南、Electric Lady landに入った。Electric Ladylandは宝石のたくさん採掘される島だが、宝石そのものには価値がない。光度と彩度にこそ価値は宿る。それが宿るなら、たとえ硝子の破片だとしても、と、ジョバン

  • イース、雨、現象

    降る雨の音のなか、あかりを消せば、部屋のなかで星座を描く待機電力の赤と緑、青。浮かび上がるフレームの向こう側のモニタァの発光。イースのIC音。 こちら側とあちら側を区切るフレーム、それが交差させる夢の世界地図──草原、森、湿地、流れる川にまどろむモンスタァ。方向性はダンジョンへ。 進行せよ。トーチの範囲で見る丸い世界に幻獣たちを見出しながら、雨に囲われた部屋のなかで気を配るのは魔術の値。 買い物なら装備と毒消し草。店を出ると降ってくる雨、かすむ空間を歩いて宮殿に入ればブルーとイエローの彫刻。石像を動かして息が切れ、外に出て快復するなら雨をしのぐ宿の床。 部屋の外の住宅街は空間を

  • 神の草の集落まで、キリマンジャロ方面の丘

    神の草の集落まで、無人の高速道路を時速二〇〇キロで走る。タクシーはナイロビの西、キリマンジャロへの方角に向かっていた。二〇〇キロの速度は雨雲のなかに入る。巨大な雨粒たちが目前に出現しては容赦なくフロントガラスを叩く。雨は上からではなく前方から降ってくるのだ。 道のりはまだまだ残されている。神の草により召喚される神を見るまであと何時間もある。雨雲から出ると、一時停車した。運転手が外に出て口笛を吹いた。うつらうつらしていたぼくも外にでる。 丘の上だった。白くけむって見えない下を見つめて、霧が晴れていくのを待っていると、緑が広がった。山の下の起伏の緑に、白骨死体のような飛行機の残骸が見え

  • 磁場のエリア

    駅まえの女神が水の両手を広げる正午にいる。巨人の手のファザードの手まえにあるロータリーを車のエナメル色彩が入り込み、警察が警笛を鳴らした。 足をふみ込んで女神とすれ違い、幻惑のパサージュを歩けば左右にはマテリアルの密林。大昔、ここは森林の緑に覆われていたのだ。と、舞う紋白蝶を見た。思わず追いかける。 足をとめる。上空へ向けて飛んでいく蝶々の視界には、工事現場の建て増す鉄塔、巨大なクレーンの色はストライプの赤と白、巨大ディスプレイ。 国際ニュースが映っている。白旗を絶対に上げない決意で赤旗でもって突進しあう戦争の映像、その真下の歩道には幼稚園児たち。 「先生、チョコレートを頬張り

  • コンクリートの孤児

    おれたちは路上によりどころを与えられるコンクリートの孤児だ。都会のインフラに安らぎを見出すコンクリートの孤児だ。 列をなす象の足が支える武蔵野の高架線の下、コンクリートの孤児たち二人はトリックの練習をしていた。彼らのテリトリーであえるこの高架下、電車の通過の真下で飛び跳ねる。 移動するときも彼らは高架下に沿って移動した。昨日はこの武蔵野から高円寺まですべった。Zの撮影があって、それに参加するためだった。 ご多分にもれず、Zは金の匂いをさせていた。ヒップホップといっても色々ある。コンクリートの孤児たち二人はジャジーなものを好み、その他、たとえばニルヴァーナも聴いた。スティーヴ・ライ

  • 恍惚の玉のショッキングピンク

    休日まえの深い夜、一週間のバケーションのため新宿の西口、ココ・シャネルのまえで売人と話している。こっちは太客だぞ、何度買ったと思うんだとかえせば、あいにくスタンプカードなどはないんでね、贈与はないよとのこたえ。たちまち激しい口調で応酬。 買おうとしているのは玉一週間分。数個喰って死んだのもいたなと、ゴシップ記事を検索。ああそうだ、この男女だ、ピンクな関係だったのに残念だなと呟く。純度については自信があると売人は言った。その言葉をまったく信じないまま玉のショッキングピンクを一週間分購入した。 突然、売人もろとも覆いかぶさる人混みに呑まれた。ココ! と手を差し伸べるが嫉妬に燃え上がる彼

  • 現実逃避のグライダー

    午前四時の埠頭、神話的な東京上空、一日の始まりを目撃していた。月はないが、星々がまだいくつかあった。 過去、友人は二一世紀のアンフェタミンを炙り、現実逃避のグライダーに乗った。離陸させた現実逃避のグライダーで、七つの海を渡ろうとしていたらしい。 そんな記憶を呼び起こして、午前四時から二〇分経っていた。けむりを呼吸する。 ふたたび仰ぎ見れば、神話的な東京上空は紫とパープルにあかるむドーム状の大気として広がり、早朝の飛行機がいくつか浮遊していた。瞳孔のひらいた過去の友人が背後から忍び寄る気配に気づきながら、目のまえを朝の船が横切ったのを目撃したとき、前景がフリーズした。 前景が無限

  • 重力の弱い街

    夜を運ばれて、終点で吐き出される乗客たちもろごとコンクリートの枠をくぐり、渋谷駅の外 人々、心細い待ち合わせの犬を中心にしてまで、まだかまだかと足踏みしたりよそ見したり、あえて心ここにあらずだったり 移動のための街、通過点としての街 暗がりのスクランブルに織りなす人々は青の横断、看板の数々はモザイク状に空間を埋めている。不快なもの、快楽のもの、速度主義者たちのポートレイト、 が、 カラフルなモザイク状をなして空間を埋めている 幻想のあかりに眩暈を覚える十字路 街角、多動症のプッシャーが虚空を睨む 虚空にあるのは人波、よせてはかえす人波 とどまることを知らない大移動 国際色豊

  • 墓地より

    墓地にたどりつけば、高層ビルが取り巻いている。 高層ビル街区のど真ん中に、穏やかな場所をしめている。 日中は蝉の声、夜は虫の音、 昼夜を問わず、 ただようのは自然の空気、優しい気配だ。 苔の黄緑が覆う墓石の列が自然をつむぐ。 与えられた花の紫と青、線香の深緑には無音の火が宿っている。 お供え物を拝借して乾杯する。上向きで飲む。上空の天色の中央、輝く白金色から熱力が降りそそぐ。高層ビルたちが立ち並ぶその高さ、立ちどころにくらくらする。 いまいちど、墓石がとり囲む謎めく道を歩いて廻る。ざらついた石、磨かれた石、それらが壁となる道は、パックマンの迷宮と似ているが、追いかけてくるお化け

  • 刻印

    書物の集まる世界的な街 書店のコーナーでうとうと 目をとじたまま 南の書物に刻印された南を暗唱 イルカの銀色 メラネシアの青緑 みな太陽の黄金の下にある 常夏を、オレンジが横切る 緯度、三五 中央線のオレンジが横切った 夏の花咲く神田川、緑したたる公園 萌えているクローバーの上 輪舞する色鮮やかな蜜蜂 色彩の南北をもくくる書物 書物に刻印されるのは呪文である 書物たちの集まる街 眼鏡をして目をとじている 目をとじて見ている まだ見ている

  • 即興で

    玉川上水を眺めてかんがえていた。どう生きていくべきか。らちがあかない。歩き出す。 健康のための散歩ではない。そんなことのためだなんて、貧しいことぢゃないか。ウォーキングという言葉も効率主義者どもが使いそうな言葉ぢゃないか。 コースを歩かない。散歩コースなどに従わない。歩数も気にしない。そんなもの、タスク管理に余念がないノイローゼどもに任せておけ。 したいのは散策だ。徘徊だ、ほっつき廻る、ラウンド・ミッドナイト、うろつく。 即興で歩く。 即興で生きていけたなら、と、 即興で歩く。  

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