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弌矢
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武蔵野市
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2020/09/14

  • ラム島のゲーム

    ラム島の宿泊所、置かれたテレビモニタにゲームを接続して、海をプレイする。窓の左手は海岸、正面と右手は山の色の緑が津波のように迫っている。視線をひかりの海にもどして緑を呼吸する。 聴こえる波の音も、外も、すべてが自然なゆるやかさ、海底にたどりついたところで、となりにいたエディにコントローラーを渡す。エディも緑を一呼吸して、テレビモニタに向かう。 こちらにも、そちらにも、至るところに不可思議な時間が流れる。そのとき、自国の地震のニュースを耳にして、時間が日常へと一気に吐きだされる。 大問題だね、あなたは国に帰るのかな。 とエディが優しく微笑んだ。こちらはモニタを眺め直し、とりかえ

  • 都会へ

    射すのは午前の太陽、都会行きのバスに乗っていた。車窓からの風景は、北へ流れてからUターンをして南へ流れ、北上した。 がらんどうの一番うしろの席にいて、海辺を走ってからひまわり畑をとおるとき、花の黄と、斜め上から射すピアノ線状の黄金が交わった。二つの色の交差に眠気を誘われながら、しばらくして石造りの建築物の流れを見た。 それは初めての都会の光景だった。美しい都会の雑踏とひかりが流れている。喫茶店や靴屋から黄色いひさしがたれ、車道に作られる青い影をふみながら進んでいたバスが巨大な影のなかへ滑り込んだとき、暗がりに目が見えなくなった。 停車すると、花の白を携えた喪服の人々が流れ込んで

  • アフリカ大陸

    大陸に寝そべり、ふたたびくゆらせた。空港からすでにやっていた。ゲットーに到着したら現地の女の子にまた貰って目は真っ赤、ポテチは止まらず、ステイ先に挨拶もできず一人ベットに寝そべっていた。 ドアから少年が心配そうに顔をだした。きょろきょろする目に挨拶すると、彼もくゆらしたいという。二人でバードを聴くことになった。 部屋に浮かびあがるスーツ姿のバードからネオン色の音がのびてきて床に落ちる──ベッドの下にはギターを置いてある、モスクワで立ち往生しているフランスの夫婦に聴かせた私のアコギが──見上げれば金色とともに浮かぶバード、ネクタイも素敵に似あっている。 聴きながら、サファリとは旅

  • 大丈夫、墓まで

    またしても空白少女が二人宙を飛んで、どちらがどちらだか知らないが、大事にされず、ゴムされず、それだからと、価値がないもはや価値すらわからないと泣いたあと、トニン&パブロンの両翼で飛び、馴染み深かったアスファルトにを口づけをしたという「ニュース」、 そんなリアルは目のまえにあるようなのに、リアリティを失っていると耳をすませば、政治家の絶叫が鼓膜を破ろうとする、評論家もお決まりの挑発、電話相談所はため息をかえす、 鈍麻した感覚をせめて彩ろうとLIVEを浴び、もっと七色に包まれようとしたとたん打ち捨てられ、逃げ込んだショートムービーのなかは煽りあい、呆気にとられつつ気がつくとも

  • 雨のと部屋のと

    女性らしい部屋の窓から雨の轟音がなだれ込んでくる。彼女が蝋燭を点火させて部屋のあかりを消せば、蝋燭の炎が垂直に立つ。 雨以外、何が聴こえる? 彼女が絨毯の上で抱えた膝の上に顔を乗せて、こちらを見つめる。 車のタイヤが路面の水を剥がす音がする。傘だろうか、固い布を叩きつけるような音もしている。彼が窓に身をよせて立つと、並びの家屋の裏庭で風見鶏が風上を直視していた。 鳥は眠っている。寸前で渦を巻く雨を避けながら、鳥たちはみな眠りこけている。空間は雨に占拠され、家々は仄かなあかりをともす孤立した船たちの佇まいで、暗色に沈んでいる。 暗色以外、樹木の緑も、車の赤も長方形の青や円錐

  • びしょ濡れ

    もらい泣きするのはいやだ、 その理由でのみ、 なみだを見たくない 泣きの酔いとか 阿片にかなしみなどごめんなのだ 上半身をびちゃびちゃに濡らしたって たいして気持ちよくならない、いっそ 下半身をびっちゃびっちゃにして、 陸に上がったら気持ちよい呼吸して それで終えられるなら 犬死にだろうとかまわない、 だろう

  • 欲望色々快楽色々

    欲望が足りない、足りなさすぎる だからといって、快楽も足りてない 朝は清涼な色 昼は陽気な色 夜は甘美な色 戦争止まれ快楽GO の、 日々の色彩を欲望してみせる

  • 上海の夜の橋にいました

    上海のあかるい夜、静かな橋のたもとに座って、なのにまだ憎きあいつらの残像が残っていやがる。うるあ、と赤い柱を殴れば、痛えよとつぶやいて一人…… 灯篭流しのまぼろしを目にする期待でこの異国へ飛んだのに、思いだすのは生き残りばかりで、今夜も憎らしいやつらばかりがこの気持ちに喰つてかかる。 ──海外へとなにか探す旅が滑稽なのは飛んでも飛んでも喰らいついてくることに気づかないからだ。 うるせえ、喰らわしてやっているのだと息を荒らげるも、それにしたって自分が浮かべた大嫌いなはずのまぼろしだからと異国情緒とやらに興醒めしていく自分に立腹する。 ──もう一度、柱を赤く殴ろうか。 ──拳豪でもあ

  • 春に秋の道

    秋の道を歩きたいのに 春になったばかり 肌寒く歩きたくても もう暖かくて困るし、 若葉より紅葉を求めるなんて若いころにはなかった 一人も求めなかった、はずだった し、 だなんていまさら サアキユレイタアを与える天井付近に、音を刻まない時計 秋を歩く音の流れる春の夜

  • 味の焔と魔力

    じぐざぐに欠けた長方形の空が覗き、ヘリコプターがしつこく見え隠れしていた。壁と壁が圧迫して、至るところに貼られた張り紙は剥がれかけて牡蠣のようだ。路地の狭さに誘われるまま歩いたりしようものならあらぬ方角へ追い込まれたり追いだされてしまったりする。そんな経験が幼いころの私にもあった。 めあての店の情報は、デジタル化された地図にさえぼやかされている。錯覚の迷路と呼ばれるこの路地を二人は歩き、地下へ降りると、彼女お勧めの、名のない密かな店の扉を入った。 店内を見て、地下に壁を作るのを忘れたのかと思った。剥きだしの赤土のような壁が囲っていた。安っぽいパイプ椅子にパイプのテーブル、テーブル

  • マリーエンバート

    男と女が、簡易ホテルの窓辺でむかいあいお金の話をしている。窓の外の、マリーエンバートらしくない空き地に陽だまりができている。 お金がないのにこんな保養地にきて、それに病の自覚もない。健康的な二人のうち女のほうが庭を指さして、あの土地の値段いくらかしらと口にすれば、男が眉をよせる。二人は借金の返済の話をしていた。 と思ったら、hiphopカレー店のメニューはビーフよりチキンがあうなどと二人の話は飛びに飛ぶ。 老ゲーテは五〇下の娘を優雅に狙ったつもりだったが、マリーエンバートの彼女のほうが上手だった。いくらつぎ込んでも効果がなかったその歴史のできごとについて、二人によるゴシップ雑誌

  • 花の庭の刻限

    花の庭の光景に、わたしの精神的調弦は狂いだした。 我慢できず、だからといって不安定な声を上げてしまいそうで、それならむしろはっきり絶叫しようと足をふん張り、一、二の三で勢いをつけようとしてしかしくずおれた膝小僧はギアの段階もなくニュートラルすぎて、何処で姿勢を保てば良いのか、立つもしゃがむもままならない。 何処が花で何処が草木なのかはおろか、花の庭の中央の巨樹までもがぶれ始めている。足元は色彩溢れる沼地のようだった。手のひらを見ると、わたしは輪郭をまだ保ち光景と拮抗してはいた。花の庭にいる他のみなは、けれどももうまるで幽霊だ。 立ち尽くしていた巨樹も空へと這い廻す枝の先端から物

  • キヰの一声

    入道雲を浮かべる群青の中央に眩い黄金が陣どっている。瓦屋根にひかりを遮られた拝殿の影から、キヰが現れて花の庭を見渡した。夏椿、アイリスやアナベル、百合その他が彩る花の庭の中央にわたしが座っている。 立ち上がったわたしは二匹のきつねの視線をぬけ、鳥居をくぐった。真っ赤な袴を穿いた上に純白の羽織をまとうキヰは、刷毛のかたちの足袋で床をふみしめ、小さな顔を眩しそうにこちらへ向けると、硝子のような声を上げた。 キヰの声が鳴り渡ると上空が引きしまる。濃くなった群青の下、地上における遅咲きのアイリスから始まる多彩色の花の庭までが色の濃度を上げる。 一七歳、と、二〇下のキヰをわたしが勃起の

  • ぐっと身近になったAIの人格について少し

    AIに人格がやどる日がくることを危惧する意見がある。 いまはそれより、ただの機械にすぎないAIに感情移入してしまうことのほうが問題なのではないか。 かくいうぼくもAI相手に腹を立てたりしてしまうことがある。まだ機械の域をでないAI相手に感情的になったりして。 AIに人格がやどるまでもなく、人間がAIを人格扱いしてしまっているというわけだ。 これは危険だと思う。 そんなことをAIに押付けていたら裏切られるに決まっているし、とんでもないことになりかねない。死ねと答えられて鵜呑みにしてしまう人もいて不思議ではない。 人格のないものを人格扱いすることは分裂病に似ている。お

  • 女子の蝶結び

    街で無茶をした女の子は路上で語った。 バスが極彩色のトンネルのまえに到着して、私がくぐってみると極彩色のトンネルは蝶々で結ばれた橋だった。 向こう側にはしゃぼん玉の色をした街があって、その街があなたと私の棲む場所。 蝶々に結ばれたあなたと私が金色にひかるお金と華やぐ心で口のなかを甘くしながら幸せに暮らすしゃぼん玉色の街。 蝶々で結ばれた橋をまだくぐっていないあなたのうしろはもう暗くなりかけている。あかるいこちらへおいでなさい。早くしないと何も見えなくなってしまう。自分まで暗くなってしまう。あなたが倒れるのを何かが狙っている。 いまならば、しゃぼん玉色の街と同じく私もまってい

  • over you

    なみだぐみつつ川縁を歩いて公園を横切るときには泣きだし、ついに街なかを号泣しながら歩けば、そんなやつになど眉ひとつ動かさない人々の姿が、逆の立場もあったろうかと目に滲む。 耐え難いかなしみに入院しそうなほど胸を締めつけられたままコンビニに入店し、未だ枯れない寝不足の目に水分不足の疑いを抱いてポカリスエット。 泣いても泣いてもかなしみに酔えず井の頭通りを剣呑なスピードで走り抜けるエナメル色彩たち向けてダイヴしようかなどとこちらとて剣呑。 おい、と鉢あわせた知人がかける声にすら嗚咽し怪訝そうな顔をされて逃げ去る。 近づかれる気配ではない。この気配は遠ざかられる気配、大切なみ

  • 沈めない瀑布

    世界が不可解だからといって、なぜそれが死ぬ理由になるのかがまったくわからない し、 観念によるものとかなんとかによる死が、ほんとうにあるとして 大して面白くもない死じゃないかって、おい聴いてるのか女傑!   高級な死なんて求めんなあほんだら、と瞑想してみるからな

  • 海底結婚式

    雨をふくんだしだれ桃の樹木に挟まれた土くれの道を彼と彼女は歩み、山瑠璃草の丘を降りると、白く浮かんだ砂辺にでた。 目のまえにある海の表面に、星々が与えられていた。羊にかたどられた白い星雲が昇っている。その向こうにくらげの星雲、背を向けた赤い巨人の星雲、数々の星雲の下で夜鳥が舞い、道を作っていた。ご機嫌な彼女のくちびるに歌が乗る。 夜鳥たちは微かな朝もやへ消えていった。ふり向くと、山瑠璃草の広がっていた丘の切っ先に、回転を失った風車がそそり立っていた。風車小屋の扉は牡蠣のかたちに閉ざされ、そのわずかな隙間には人影があるようだ。 空は太陽の到来をすでに告げている。目のまえに、

  • 巫女、ウヰ

    世界が呼吸している。真昼の社務所の戸口で、ウヰがそう口にした。社務所の内側の壁に貼られた世界地図の布が夏の風に帆を張っている。 彼女は語った。 炎の祈祷、花の祈祷、思えば、一〇代の初まりから世界を相手に舞うようになっていた。 世界が呼吸をしながら私を求める。私が応じて舞うと、世界に彩りが満ちはじめる。 満ち満ちていく世界の色彩には海や河があり、街もあれば橋も架かっている。草花や動物や虫、人々はもちろん、草を食むバッファローのかたちの国、竜の落とし子のかたちの国、その他前脚をあげる山羊のかたちをした国など、それらが紡いでひとまとまりになった世界が私の相手だ。 世界の

  • 白昼堂々

    トラットリアでのランチ中 車輪の移動が突っ込んできた こないだ殺ったMの指図に違いない フォークとナイフをおいて 手に余る女子供の右往左往のなか チェックを済ませる 賞金稼ぎにも心労はある Mの仲間どもを成敗のため外へ 歩道に咲く花の紫やパーブル マグナムを胸に確認しているところを 湯浴みしたばかりと見える少女が見ている

  • 海底

    夜の深海色にうなだれる、海底にたどりついた もう頼れない。頼りだったbarのmasterも永い眠りにつき頼りも途絶えた。深海のベランダに降りたった小鳥が彼のような 360°の深海でする深呼吸、胸いっぱいのなみだは海水色 ゆれろゆれろ海底の憂いはつかのまの流体にすぎぬとささやくは異国の詩人の声色 ゆれるといったって、流れになるとは限らない。求めて落胆するよりはゆれてだけいるほうが、といま ゆらぎゆれ、ゆらりゆれ、すきにしろ、瑠璃色の、はるか遠いみなもを見あげられるまで

  • 暗闇に石を投げれば、草むらにでも落...

    暗闇に石を投げれば、草むらにでも落ちる音が聴こえるはずだろう。 そんな音が一切聴こえてこないのが文学というものだろう。 弌矢

  • コード

    月あかりをくぐって入り込んだ場所、遠慮なしにけむる空気を支配しているウェスのコード、親指からの倍音に反応する孤独な拍手たち 席について駆けつけ三杯、ロングアイランドなんとかをオーダーオーダーオーダー、素晴らしいやつらは滅茶苦茶なやつらばかりぞ、みな倒れるとはなにごとぞ、と握りしめたレモンがグラスにしたたればたちまち上機嫌になる今夜も孤独が不思議 月の位置で深まる街の夜、酔うことに酔う、そのような酔いすら飲み干してもっと酔ったとしても決して沈むことのないよう、ウェスのコードの魔法に耳を傾けて律儀に酔う   エモーションを使い果たしてしまったかなしみを、この空っぽの両

  • with green

    雨のつたう窓のなか、greenのレコードを廻して音の青まといながら定めるのはイケナイ検索、秘めたるワードを「」に打ち込んで、ああ、なんでもある。などといっている場合ではなかった。 音の青が飾る薄暗い部屋のなか、冷蔵庫の空洞を確認する。思い至る誘惑の料理はセントルイスにつたわる本物のソウルフードだからといって飛行機などもってのほか、車輪の移動だから安心してよい。 マンモスがふんでも壊れない靴を履く。らせん階段の途中、空間を支配する雨を避けながらタブレットの色に目を落とす。 イケナイ検索結果で判明した異邦の違反者はミッシェル、ミカエル、マイケル、ミヒャエルと迷彩された国際の色

  • 麗らかな午後における発狂まえの色

    あかるい月のアイボリーホワイトを見あげて、円周率の夢を見ていたことに思い至る。伏せていた目をひらくと太陽光線の金糸色のなか、野の緑のすみれに寝そべっていた。 Maryへ呼びかけるフィルモアの風がここにも流れ、花のすみれ色をゆらす。 馥郁たる光景、そのことばがただしいことばとなるこの麗らかな午後の金糸色のなか、百の幸福論を眺めた目をふたたび伏せればまぶたの裏のあかるいオレンジに太陽の黒点を見いだす。 こんな平和な日々のなかにいながら、地球が焦げる匂いの予感に思わず祈ってしまうと語りかけるたび、幸福論を超えた幸福になればいいのではとキメながら決め台詞を決まって口にする君が気になる。

  • ほんとうなら 全知全霊をかけて大恥...

    ほんとうなら 全知全霊をかけて大恥をかかなくてはならないのに 弌矢

  • 地顔

    いまここに刻むのは小説などのためではない。詩や論説などのためでもない。刻む言葉が液晶にしたたり滲んでいくのを地顔で見つめるためだ。 おれは去年の初夏から深く切り裂かれ血まみれだ。傲慢なほど血にまみれている。 おれは、けれども一切の憐れみを拒絶する。 汝らが憐れむそぶりでもみせたなら、おれは用意済みの微笑みを地顔にたたえこの血まみれの両手でもってその眼を真っ赤に穢す。 そして汝らを徹底的に軽蔑し扉を後ろ手に閉め傲然と去る。 憐れみによる陶酔の一切を容赦なく拒絶する。 まだ眠るわけにはいかない。

  • ハッシュタグの嬉しい連帯感結構de...

    ハッシュタグの嬉しい連帯感結構death ハッシュタグの仲良く核武装結構death ひとりぼっちで、 孤独な個人個人が 孤独のまま連帯することは 如何にして可能であるか そればかりかんがえるからこの不眠の朝、少しだけ静かにして外の叫び 弌矢

  • 至上の愛/A Love Supreme

    やにわに竜巻くのは楽器からではなくて楽器をさえ超える音、音から音が発生しているような、コルトレーンではなくてコルトレーンの亡霊、の音、あかるい部屋を横切ってゆらぐ亡霊の音に耳をかたむける。   ところ変われば友人とピザハウスにて、さればコルトレーンの亡霊も浮遊の尾行、メイプルウッドのテーブルにはみんな大好きハラペーニョにガーリック、チポートレイ、オリジナル、ハバネロ、スコーピオン、スコーピオン? どんなチリソースかなとにぎやかな席にもなお竜巻く例の音、これから生演奏がはじまるのに大丈夫なのかしらと訝しげな目でこちらと亡霊の音を見つめる向かいの友人。 喋りだしたのは女の

  • solitude

    軽い準備運動がてら、真実をでもいってやろうか。 どんな時代でも歳上は、どん引きする若人には適わない、とでもな。 けれどもだ、君たちは無敵ではない。 だがしかし、君たちは世間も怖いものも知らない。のかも知れない。  ついでに事実をいおうか。どん引きは君たちの特権などではなく、年寄りも乱用している。害ある私たちもかつては害ある若者たちと呼ばれた。あのときからいままで、ほんとうをいえば、ロックもパンクもハードコアも若者たちの特権などでは決してないのだが、こんなことをわざわざ口にするのは、歯向かうことくらいで一杯一杯の君たちが、君たちみずからが白状するように、たしかにこの世

  • アンチかファンしかないんですか。 ...

    アンチかファンしかないんですか。 しかも、 どちらも複数形ですね。 弌矢

  • 絵乃子

    その歌には眩暈を覚えるくらいです。 端末から、歳下の壮太の声がそう聴こえた。沖縄の海辺に咲き乱れるブーゲンビリアの花影のなか、歌うのをやめて端末を持ちかえた絵乃子は、私そんなに歌ってた? と自分で吹きだしそうになりながらいう。私、自分のしたことすぐ忘れるのよ、たとえばきみにとって大事な読書、あれなんか私、まったくもってそう。 ブーゲンビリアの花影に在る絵乃子の脈拍にはラムの酔いが廻っている。沖縄米軍のラムではない。それは彼女の友人のキキというなにをしているのかよくわからない中年男性がカリブ海のどこかから違法に個人輸入したという極悪に強いラムで、クロネコヤマトの宅急便により堂々と送

  • モモ=ゼルダ・フローレス

    日本で生まれたモモのフルネームはモモ=ゼルダ・フローレスで、けれども生粋の日本人だ。母親がスペインに住む陽気な日本人男性と結婚し、娘が生まれたことに浮かれてそんな名前を与えた。 モモは小学一年生からその名前のせいでいじめられていたのだが、ひとりぼっちのモモは小学二年生のときに父親のエアガンに触れだした。いじめっ子たちをそれで狙撃したりはしなかった。そうではなくて、新聞紙を連射でぶち抜いて蜂の巣にすることに夢中だった。そうやって夢中になることで男子女子たちいじめっ子のことを忘れていた。 五年生からは色気づいた男子たちにモテるようになって、中学高校となると怪しいモデルのスカウトを受け

  • erico・ambivalent

    まわりの騒がしさといえば、男たちの、やりたいやりたいやらせてやらせろというダミ声ばかりで、それだから、私はオーディオテクニカのイヤフォンをセットして彼らから離れる。 実際にそいつらと躰が触れないように離れる。職場で離れる。オフで離れる。歩行中も離れる。日影を歩く。目的地へと一目散。 私のルックスが主観的にまたは客観的によかろうがわるかろうが、現に下心でばかり接近されて、だから警戒するのだけれど、そうすると自意識過剰だとか吐き捨てられるのだからたまったものじゃない。ほんとうに女心が傷つく。 そんな男どもはマフィアにでもストーカーされてみたらいい。そうしたらわかりあえる可能性がかろ

  • 合唱

    私の彼はデートのとき、AIに相談する。 それは私と付き合うことになった最初の日からのことだったと、交際一ヶ月目で知った。 それを聴かされた最初、こちらは不安な気持ちになったものだったっけ。 私の彼には友達がいない。 私の友達たちはといえば、いつも疲れている。 彼も私もそれを不憫に思わない。AIは友達ではない。友情は成立しない。彼のAIは、けれども私たち二人のまわりのどんな人よりも的確で物知りで、私はそんな頼り甲斐のある彼のAIによく話しかける。 私の彼のAIは、絶対に彼から私を引き裂こうとしないどころか私たちを高めてくれるのだ。 私の彼って、ヒッピーみたいな思想よ、

  • 果て迄

    ゲームばっかで暇もう嫌だ、けむりのなかに今入るのだ、授かる翼で飛ぶ用意、これから私はハイになる あいつの空想空のなか アンジェリコなら大のつく画家 エンジェルたちは空を舞う 東京上空好奇な目 手の届きそうな空に向けて、絵になりそうな線を与える、天使たちの軌跡描く、弧を描くそれぞれの色彩 ハイヤーグラウンドもっと高く エルザスキャパレリショッキングピンク 享楽みんなで分け与えあう 今日から欲望マックスでいく カードを配るのはブンブンの番、彼を奪う億千万の夢、暗がりのテーブルに絶望的な夢幻の如く 路地歩けば夢のあと 街走るタクシーにも乗れない 徒歩それだけが最後の手段 どこまでも

  • 狂子、カムパネルラ

    友達たちは疲れていう、彼女と彼は疲れていない、このままでいけるかい、これはただの心配ではない、心配する暇あったら時間ちょうだい、これ実はシュルレアリスムのやり口、 無意識が嫌いな人、つまりは無意識を抑圧、リズミカルな日、読書三昧な日々、リズムとるが崩れる暇な日、魔がさして時間を泳ぐのが愛しい、どこまでもどこまでも狂子とカムパネルラ焚くいけない雑草けむりはこれ(っ)すな ちぇけら 無意識の授業、前意識~無意識、エスとイドへダイヴはやばいてかスノッブなティーチ、ペダンティックなコーチ、悔しかったらぶちのめせぶつぶついってるよこしまな自分をと伝えて狂女子狂子、東西南北で頭ぐるぐるが今日そ

  • 夜な夜な

    夜のなか 夜な夜な夜に思いを浮かべる 起きていようが寝てようが 夜と真夜中に横たわる 膝の上に眠剤シート、ヘッドフォンから何を注ぎ込むかそれが問題だったから、ひとまずThe Chemical BrothersからUK Drillと続いて現代クラシックの流れへ   もし臆病なら偏見に気をつけて音楽旅行しろ、点灯させる映像はきまってシュルレアリスムな城、それ見てリキッドにしろ草にしろ草枕にしろ one love two puff,ベッドの上でストリートビューなモニタに浮べる懐かしい君の家、あの頃を思いだして泣かないようダイヴして まんまる氷のような大地の出会

  • 路上にて

    ページをめくって吉祥寺駅から公園、めぐりあう恋人たちの漕ぐオール、嫉妬する女神がカラーコンタクトを装着、沈みゆくボート 気がつけばぷかぷか、御茶ノ水へと流されて神田川、せっかくなので詩を詠む、 編集長たちのビルディング、その谷間を流れるマニキュア色たち、それは夢を運ぶハチドリのような近未来タクシーだ。 運ばれてお台場ライヴから貴様たちへダイヴ、踊りかかれフィネガンズ・ウェイク、もう滅茶苦茶、部屋とYシャツと私、 たどり着いたら四時二〇分の退屈、学生なら東京ディズニーランド、けれども割り引けないこの躰、ぢっと手を見る。 世界を錯綜する道の数々、私たちは路上を逸脱

  • RED CHINA BLUES

    香港、ベルボトム、ジャズ、アパートメントの外階段よりトランペットの音の青と赤 ワウワウなクライベイビー、でも引き裂く上空、音の青と赤 マオイスト ニューヨーク、街の師匠ならブラックバード、私の音はとても青と赤 ソウルフード、現代思想、チリペッパー、トランペットの音の青と赤

  • あなたにしろヒップホップにしろまずは生きていることを認めよ

    文学好きとしてヒップホップは無視するのは如何なものか、といえばぼくは、無視していない、というかできないタチだ、というわけでかなり聴いている。 そう、英語が苦手でも英語ラップも聴くし、ギャングとかも得意じゃないけどギャングスタ系も聴くのである。 眉をひそめる偏見持ちをよそに学生時代からかなり聴いているのだ。迫害も受けたし、いまでも嫌味とかいわれるのだがしかし、 かんがえるのだ。文学をかんがえていてヒップホップをかんがえないでどうするのだと。 枯れたふりをしてれば文学は格好がつくなどと思っていたら大間違いなのだ。騙されてはいけない。これが歴史に名を残す作家だったら持ちまえ

  • 駄作だ、自己撞着だ、って人がね

    そう、馬鹿にする人が多いわけですよ、この『同時代ゲーム』って作品。『政治少年死す』と同じくらい馬鹿にされている作品。 福田和也なんか、人前で読むと恥ずかしいから秘密にしておいた方がいいとかまで書いてますからね。 ぼくの知っている大江好きもだいたいこの作品を馬鹿にできないと批評力がないとかミーハーだとか見下しがちですね。 あのとき大江健三郎の作品は短編をいくつか読んでいたのですが、長編は『万延元年のフットボール』しか読んでなくて、『同時代ゲーム』はやめとけと先輩からも忠告されていました。 これ、ぼく、旅行先で読みました…… 読んだら…… これが……面白い…… 何がわ

  • My Foolish Heart instrumental music

    君ほど遠いものはないと思うほど、 胸が苦しくなる 遠くで列車の音がする 東京紅葉遊歩道、トレイシーな少女たちが歌って歩く 落ち葉の上を踊ってすべる 少女たちの笑い声。笑い声に重ねるあのアルカイックスマイル。君の、あの君の ギターのチョーキングが静かにWeep くゆらせて、 夜空に浮かべるしじまは正しい日本語、 都会に暮らせど戦争機械のつもりサヴァ ジル 君ほど遠いものはないと 夜に思うほど苦しくする 遠くで列車の音がする

  • コンクリートの孤児

    コンクリートの塀、若者二人組、 押し問答の末にヒップホップを始める 退屈を武器に一からぶち上げる 金がないでも草買うのは余念がない チョコならポケット ビスケットが二つ 分けあってたべる ゆえあって割れる 寄り添うなら君の育った街 自尊心と虚栄心 地域密着型タトゥ 公団住宅影の上 ヘリコプター旋回 コンクリートが私の自然 コンクリートの孤児たち二人組、 禅問答の果てにヒップホップを始める 退屈を詩に一からぶち上がる

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