前々回はネパールの、そして前回は古代の丸木舟について見たので、今回は現代の丸木舟を見てみよう。とはいっても、まわりには現役の丸木舟が見られないため、展示に限ったものなのですが。 ● アイヌの丸木舟と川漁 / 北海道博物館 2015年撮影(2015年に改称された) この年(2015)から博物館の名称も旧北海道開拓記念館より北海道博物館と改称され。アイヌに関する展示が一新し、アイヌへの教育普及の上でもより親しみやす...
古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。
どこか昭和を感じさせる生活道具や民具が好きです。”雑閑”では日々の雑記・展覧会・読書・映画・フリマ・骨董市などでの感想を、”モノがたり”では部屋のガラクタを、”一枚の写真”では昔の旅写真などを載せています。つたないモノコトの紹介ですがお愉しみください!
● 皿 径210×高さ32ミリひさしぶりに訪れた骨董市で、こんな皿とであった。焼きが甘く、全面に貫入がはいっているため瑕疵物とされ価値は二束三文であった。揃えの組物として大量につくられた皿ながら、いちおうは手描きの染付でよくみられる意匠とはいえ、お一人様にとってはじゅうぶん普段遣いできていいかもと連れ帰ってみた。桜と水紋がある意匠はなんだろう「吉野川」?7寸ちょい欠けのこのサイズ感が、なにを盛っても一人...
● カゴを選ぶ 中国、雲南省 沙坪 1996年4月8日大理郊外のこの月曜市では、多くの人々が集い賑わいをみせていた。近郊の白族をはじめ、さまざまな民族衣装を纏った人たちを眺めているだけでも、どこかこころが踊る農具市である。箒、唐棹、箕、蓑、蒸籠など・・・・・・数ある道具のそれぞれを、みな真剣な表情で選んでいた。ここではちょうど背負籠を手に取り選んでいる。亀甲のなかに一本余分にヒゴ通ししたカゴ目編...
● おろし金 幅92×136×10ミリありふれたおろし金といっても、こちらは白磁でできたやきもの製。おろす食材に金気が一切おびない一点は、金属製のおろし金よりは幾分優っているといえようか。さらに、すりおろした薬味などそのままこれにのせて食卓に出してみても、素材がやきものだからお皿のようなかんじで、違和感なく使えてしまう長所もある。赤(銅)のおろし金とどこか雰囲気が似ているのは、たぶん戦時中の資源不足のさい...
● 大釜 中国、西蔵自治区 ラサ近郊 1997年8月27日ラサ近郊の名刹セラ寺の中庭にて、こんな大きな釜が2つ置かれていた。背後で獣毛を洗う人と比較してみても、これだと数人で一緒に入れる五右衛門風呂ほどの大きさがある。釜の肩には耳がいくつも付き、縁にはチベット仏教の吉祥文の装飾がある。これっていったい何につかうものなのか、その大きさともに謎である!よろしければ、こちらもクリック下さい! 励みになります。...
● 燗器 幅62×170×高さ125ミリだれが考案したものか、2筒の容器をただ繋いだようなこんな不思議なかたちの注器がある。むかしのブリキ職人がどこか暇つぶしに仕上げたにしては、銀付箇所があまりに甘く雑多な仕上げのもので、いかにも素人然とした雰囲気の容器である。注ぎ口がつく前の筒の内側は熱伝導率の高い銅を張り側が中空となっている。蓋がつく後ろの筒に酒を入れ、前筒に火鉢などからとった火種を仕込むと。ふたつの筒...
● 甕酒 ラオス、アタプー県 1995年4月甕に仕込んだ濁酒(どぶろく)を細竹のストローを挿して吸っている。この飲み方だと個別の容器が不要であるし、甕の底に沈んだ澱(おり)を乱さずに上澄みのお酒を美味しくたのしめる。細竹は周囲に自生しているので、その度新しい物に替えて使い捨てでき衛生的でもある。火入れや搾りの工程を要しない濁酒は、原料の成分をそのまま味合え、醸し具合によってはとても美味ではあるが、なん...
● 容器 チベット 径100×高さ260ミリラサの骨董屋へ不要な物品を持ち込みした人から直接求めた、金箍(かなたが)をはめた結物であるこの小型の樽は、いったいなににつかったものだろうか。天板には液体を入れるための小孔と注ぎ口がみられ、側に革紐をつけ手にとるかたちとなっている。以前石洞美術館でブータンの漆器展をみたときに、おなじ容器がみられ、“ジャドム(Jadom)”という名で蒸留酒(アラ)のものとして紹介され...
● パイプを喫う女性 タイ、パイ近郊 1989年9月前回のミャンマーのパイプに引きつづき、今回はタイのカレン族の集落でみた土製パイプ。カレン族はタイ北部からミャンマーに亘ってみられる少数民族。ここは近年の開墾で生まれたような数軒の集落で、屋根・床ともにすべてが竹でできた高床式の家屋だった。パイプは土製の火皿に細竹の管を挿したもの。こちらはとくにパイプ自体に加装らしきものはみられないが、ミ...
● パイプ2種 ミャンマー 長さ70(茶)、65(灰)ミリパガンでパガン王朝(1044-1314)時代の上座部仏教遺跡郡を訪ねたあとに寄った、名もなき小さな村では、ちょうど王朝時代の遺構の考古発掘の真っ最中であった。発掘現場の脇にひろがる畑にて、靴先で土を掘り起こしてみたらこのようなパイプの破片がいくつも現れた。ただ残念なことに、そのかたちを美しく保っているものは意外や少ない。それもそのはず、村の悪童が作業現場の...
● 耳たぶに大きな穴のあく老女 ラオス、アタプー県 1995年4月9日さきにふんどし姿の老人を紹介したけれど、おなじ村のパイプや葉巻をくわえた老女たちの顔面には入れ墨が施され、その耳たぶには大きな耳飾りを嵌めていたのだろうか、大きく裂けており驚かされた。そういえば縄文時代の考古遺物のなかには、現代人からするとありえないような大きな耳飾り(ピアス)が数多く出土している。この南ラ...
● 腰カゴ ラオス 幅240×高さ180ミリ 1994年収集籐<ラタン>が自生する東南アジアのカゴは、籐のもつ素材の柔軟性もあってか、日本のカゴとはまた別の面で細工が細かい。この竹カゴはルアンパバンで古物で求めたので、用途が一切不明ながら。ぺたんと平べったく3箇所付く乳(ち)に紐を通し、その大きさから考察...
長らく久里浜で暮らした友人が、来月里帰りするにあたり。引越前の部屋の片付けの手伝いへ行ってきました。(2021年11月14日~17日) ● 晩秋の久里浜久里浜を訪れるのも久しぶり、いつもは5月の連休や夏でしたがこの季節の来訪ははじめてです。JR久里浜駅前のシンボルとっもいえるプラタナスの樹をしげしげと眺め納めて・・・・・ ● 居酒屋でねぎらいの夕飯一つ処に20年、家財道具もさすがにカオス的な量に膨らみ、片付け作業は相当...
● ふんどし姿の老人 ラオス、アタプー県 バンガン 1995年4月9日ヴェトナム中部山岳地帯と背合わせのラオスのアタプー県。知り合った英国人の医療NGOの方の、ヘルスケアに便乗させていただき付近の集落を訪ねてみた。ヴェトナムでは儀礼用のふんどしを手に入れたけど、この村にて実際にふんどしを着けた老人とはじめて出遭った。栄養失調のため...
● ふんどし ヴェトナム、ジャライ族 幅300×長さ4350ミリ旅先で偶然布好きの旅行者に出逢ったのが、布に興味をもつきっかけとなった。バンメトート近辺におもしろい布を見たよという情報を得て、さらに先のコンツムまで行くと、まちの市場にこんなジャライ族の儀礼用のふんどし(褌)が放出されており手に入れた。藍地に赤い縞がアクセントとなっているこのふんどしの裾まわ...
● 船内での食事 ラオス、パクベン 1994年12月17日メコンに面した湊町パクベンには幾艘もの船がもやわれていた。5人乗りのスピードボートのチケットは購入済みではあったけど。ためしに大型のスローボートの船内を覗くと皆さん食事中で、どうぞ一緒にということで御相伴にあやかった。船尾にある焜炉で調理しているのは船主のおかみさん。竹編みの飯カゴから、各々つまんだ餅米を一口大の団子にし、唐辛子の効いた辛いおかずと...
● 皮むき 幅51×198×17ミリ昭和レトロなこんな皮むきがある。収穫の秋、この乾燥した冷涼な気候を活用し、ちかごろはまっているのが干し野菜づくり。お日様の光りに晒すだけで、野菜の旨味もほどよく濃縮され食感もすこぶるよくなる。画になるようにと、この皮むきを使ってはみたものの、ハッキリいってよく切れません。写真はイメージで。というわけで、正直なところほとんど包丁で済ませてしまいゴメンなさい!よろしければ、...
● 薬売り ネパール、ティミ 1992年やきものを観に行ったこの村に、人集りの黒山ができていた。いったいなにが起きたのだろうかと輪に歩むと、なかにこんなお兄ちゃんが一人居座り、洗面器にあけた粉薬を調合している最中だった。娯楽が少ないということは幸せなのか否なのか、大人から子どもまでが真剣な表情で、薬売りの口上に聞き入っている。言葉が判らないから判断する術が一切ないものの、やはり香具師につきものの大...
● 土器 径190~205×高さ333ミリ真偽のほどは定かではないが、部屋にあるもっとも古いうつわがこの土器だろうか。突きでた部分に目玉のように大きな二穴。縁まわしに十字とワラビのような渦をまく模様がつく以外は装飾がなく、いたってシンプルなタイプの土器である。たぶん出土されたピースを、パズルのように組み合わせ不足箇所を補填し仕立てたものを、後に誰かが落として割ったのか、素人直しでなんとホットボンドで接着さ...
● 飴細工 中国、雲南省 1996年縁日で見かけた鼈甲飴売り溶かした飴をヘラ捌き巧みにぺたぺたと躍動感ある鯉のできあがり!よろしければ、こちらもクリック下さい! 励みになります。...
● 古銭 インドいつの時代のものだろうか、アラビア文字が刻まれた不揃いの肉厚なコインである。銅の合金らしく、ところどころ緑青が粉を吹いている。イスラームの支配下の時代に流通したものだろうか?なかに一枚人物が刻まれたものがあり、手になにかを持っているように見えるのは鎌だろうか、それともアラビア文字の“ラーム”がただ重なってしまっただけだろか。切手とならびむかしから不動のコレクターアイテムとされて位置...
● リヤカー 中国、雲南省 麗江 1996年 肉屋に卸すのか、解体した山羊をリヤカーに積んで押している。日本で発明されたリヤカーは、牽くからリア・カーなんだろうけど。この荷車は押すタイプなのか、それとも下り坂にさしかかって逆向きにさせテンションをかけているのか、そこのところが判然としない。いま住んでいる部屋には、一人でリヤカーをつかって引っ越しした。平成の御時世の真っ昼間に夜逃げならぬ、家財道具...
● 刷毛 幅65×180×15ミリむかしの荒物屋にあったような、デッドストックものの刷毛を10数年来使っていたら、そろそろ穂先がちびてきた。さきほど穂先を切りそろえてみたら、頗る具合がよい。チープなアルミの側は釘を打ち曲げてとめてあり、そんな質朴な作りがどこか物資が乏しかった時代をかんじさせる。これとまったく同じタイプの刷毛が、子どもの時に祖父の家のストーブまわりで使われていた。石炭ストーブを載せたモザイク...
コロナ渦で2月、4月、8月と流れにながれて、4度目の正直でやっと愉しみにしていたライブを聴きにいけました。 ● インド古典舞踊&音楽ライブ 東京都東村山市/ Bresson にて今回のメインはなんといってもカタックダンスです。もうずいぶんと昔に一度、足に鈴をつけて激しく舞うカタックを観てはいるのですが、あのときはどなたかの邸宅の落成式の催しで、屋外から屋内を舞台にしつらえて眺めるような一風変わった演出でし...
● 路上のやきもの売り 中国、ラサ 1997年8月30日ポタラ宮の裏手にあったなにもない広場に、なぜかこんなやきものがずらりと並び販売されていた。甕、焜炉、茶を煎じる注器、壷、炭火運び、灯明器などが確認できる。こちらもそのとき求めた注器。 ↓ブログ№660 一枚の写真 _072 注器などとともに、そのときは土堝とそしてこんな灯明具までハンドキャリーで持ち帰ってみた。 ● 灯明坏(酥油坏) 径128×高さ137ミリ鉛釉を薄...
● 椅子 東京都東大和市/ 旧吉岡家住宅にて先日見学した日本画家・吉岡堅二 旧宅。主屋の玄関で出迎えていたのがこんな椅子。大は脚長で金輪を嵌めて補強したつくり、小の座面は革張り鋲とめ。いずれもどこか鞍を連想させる座面。画伯は遺跡調査団員としてトルコへ行っているから。どこの国かは解らない椅子ながらも、その辺りのものかも。三っ脚は、四っ脚にくらべ、ひとつあたりの脚への加重は増すけれど。土間などの平らな床...
● 行平 150×122×高さ75ミリ秋も深まりなべ物の季節を迎えます。寄せなべ用の土なべは、土製の堝(なべ)ならではのじっくりとした熱の伝導と保熱効果があり。蓋を開けた瞬間に白く煙る湯気すらも、どこかこの季節ならではの風情で味わい深いもの。よくあるところの陶製の行平(ゆきひら)なべながら、 「大は小を兼ねる」 もその逆はありえないような、こんな小さな急須サイズのものを、いつだかのフリマでみつけ連れ帰りま...
● 赤ちゃんと椅子 中国、西蔵自治区 ラサ 1997年9月4日薄暗闇に豆のような赤ちゃんが写っている。掌の大きさから察するにまだまだ乳飲み子だろうか、まだ首がすわっていなくぺたりと臥している。穴にすっぽり納めるこのようなタイプの赤子用の家具は、いったいいつ頃からあるものなのだろうか? ● 上; 歩行器...
● ザル 230×170×高さ30ミリかってはどこの家にもあったような昭和のひと頃の時代をかんじさせる皿ザル。縁を籐(とう)で周し、さらに内側を染め竹のヒゴを当てている。タマゴ形のかたちのザルに突きでたつまみがアクセントとなっており、こんな部分にもなにかの蔓素材を用いきちんんと巻いて仕上げている。食器としてのこのようなザルは、ときにやきものの皿に盛るよりも食品映えするものがある。この季節の生落花生は、ほく...
● 円座<THAI KON> ミャンマー 径425×厚み35ミリぐるぐると蜷局(とぐろ)を巻いたよくあるかたちの円座ながら。これはマコモのように、茎のなかの繊維が海綿状の構造をもつ水草<MYET>で編んだもの。シャン州のインレー湖畔の町ニャウンシュエの市場で、タバコ屋のおばちゃんの尻に敷かれていたものを譲り受けた。編まれたばかりの青々とした円座は、おなじ物でも厚さは優に倍はあったけど、これはお...
● 七味缶 径40×高さ65ミリ甘党か辛党かと問われれば、やはり甘いものよりは辛いものが好きな性分である。とくに酒の肴には甘いものよりは断然辛いものが口に合う。定番で使っている七味唐辛子は、信州善光寺の絵がついた八幡屋礒五郎のもの。このレトロなデザインの缶がお気に入りで、中を詰め替え長らく愛用している。こういった七味缶はいつ頃からあるものか、信州の大衆食堂のデコラ張りのテーブルには使い込まれたこの缶が...
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前々回はネパールの、そして前回は古代の丸木舟について見たので、今回は現代の丸木舟を見てみよう。とはいっても、まわりには現役の丸木舟が見られないため、展示に限ったものなのですが。 ● アイヌの丸木舟と川漁 / 北海道博物館 2015年撮影(2015年に改称された) この年(2015)から博物館の名称も旧北海道開拓記念館より北海道博物館と改称され。アイヌに関する展示が一新し、アイヌへの教育普及の上でもより親しみやす...
これまで幾つかの縄文講座を聴講後、土器などに見るいかにも縄文然とした造形とはまた別に、一見地味に写る木製品の遺物についても、それがどのように加工され使われてきたのであろうかと想像を巡らせ、次第に興味を持つようになってきた。 となりまち東村山ふるさと歴史館のロビーには、下宅部遺跡出土の縄文時代の未製品の丸木舟がむき出しのままどーんと置かれており、当初はその大きさに圧倒されたものの、次第に慣れっこに...
● 丸木舟 ネパール、ナラヤンガート 1989年8月 撮影 丸木舟と裸ん坊の子どもたちが戯れた、そんな一枚があったなと探してみる。残念ながら見つけたのは、試しプリントの焼き縞が残った欠片のみ。逆光で子どもの表情が潰れており、川のスケール感もまるでとれていないけれど。それでも川面に舟を運び出す、あの時の子どもたちがはしゃぐ姿が活き活きと甦る。 ● 丸木舟の渡し ネパール、ラニガート 1989年8月 撮影 これま...
“読むを読む”と二重動詞のタイトルがつくこの本っていったいなんだろう?ということで元本である『土偶を読む』のいささかセンセーショナルな副題「130年間解かれなかった縄文神話の謎」をも踏まえ、『土偶を読むを読む』とを互読してみた。 まるで知らなかったけれど、『土偶を読む』は人類学者の竹倉史人が箸した、名のある学芸賞も受賞し、各界の知識人にも認められた一大ベストセラー本であった。これまで考古学者が土偶を考...
● 新宿区立「林芙美子記念館」 / 東京都新宿区中井 この建物は『放浪記』『浮雲』などの代表作で知られる作家・林芙美子が昭和16年(1941)8月から昭和26年(1951)6月28日にその生涯を閉じるまでに住んでいた家である。大正11年(1922)に上京して以来、多くの苦労をしてきた芙美子は、昭和5年(1930)に落合のこの地に移り住み、昭和14年(1939)12月にはこの地を購入して、新居の建設を始めた。 新居建設当時、建坪制限があったため、...
「世界の言葉でこんにちは!」博物館の懐かしもの展示に、日本万国博EXPO`70のチケットなどが並んでいた。なかでも企業パビリオンのリーフレットに、「明日の生活環境への試み」として、当時流行っていたSF映画にみるようなスペースデザインを取り込んだ、暮らしのシステムユニットが目を惹いた。日本の技術の粋を賭けた夢ある未来、全自動洗濯機よろしく、健康と美容に効果をあげる未来の浴槽「ウルトラ・ソニック・バス」なんていう製...
先日観た、プラハ在住の絵本作家『出久根育展』<武蔵野市立吉祥寺美術館> では、副題の「チェコからの風 静寂のあと、光のあさ」 とあるとおり、画面を通じて未踏の地チェコの物語や風物に触れ、はじめてながらもどこか優しく懐かしく、とてもあたたかい気持ちとなった。 エントランス・ロビー部分は写真撮影可能で、以前読んだ作家のエッセイ『 チェコの十二ヵ月 -おとぎの国に暮らす- 』の原画が展示されていた。原画の細部...
● 『葛と日本人』 有岡利幸 八坂書房、2022年 下:「大和国葛の粉製図」 本書より 酒井抱一の「夏秋草図屏風」の表紙が目を惹いたこの本には、よくみると秋草のなかに紫色の花をつけたクズが美しく描かれている。 本書では、クズの植物誌、古典文学や詩に詠まれた葛、葛の民俗、葛布、はたまた異常な速度で繁茂して現代の生活を脅かすクズ害についてなどと、あらゆる側面から葛と日本人の関わりについて紹介し考察している...
● 『そば猪口の文様 絵解き辞典』より 図書館の新着本にあったのが『そば猪口の文様 絵解き辞典』。そういえばうちにもあるなと、食器棚より出してみる。 ● うちの「そば猪口」 家のそば猪口は、簡素な模様のシンプルなタイプばかりで。そのうち無地のものを2点含み、実はこれが一等気に入っている。無地ゆえにコップのような器形の美しさが際だち、清酒を入れて光にかざすと微妙に磁肌に透けて見える光景がたのもしい。本書...
先日観た清瀬市郷土博物館の民具展示では、布裂(ぬのきれ)がおもしろかった。いまのくらしではほとんど死語となり、どこかしら汚ならしくすら思えてしまう“ボロ(襤褸)”ながら。こうしてガラスケースに展示され、視点を変えてしげしげと一枚一枚を観察すると、一片の裂のなかに、さまざまな要素が凝縮されて見えてきてとても興味深かった。ボロの展示では、かって浅草にあった「アミューズ ミュージアム」の展示が一風変わっていて印...
数値にレバーを合わせ、ハンドルを回すと「ガラガラガラチン!」と鳴る機械式計算器は、地域の博物館の「むかしの道具」コーナーなどで、ときどきお目にかかる道具である。いまではそのアナログ的で一風変わったかたちが、子どもたちの目を惹く人気のアイテムとなっている。 機械式計算器での計算は、ソロバンでの珠算のように特別な習熟は必要とせず、誰しもが直感的な感覚でもって基本操作さえ行えば、難なく正確に答えを導くこと...
● テンバコ 675×405×高さ80ミリ 何故か家にあるのが、「地質學教室」の焼き印が押されたこんな古風なテンバコ。 90年代後期に東大・本郷キャンパスにて開催された「ヴンダーカンマー・驚異の部屋」展では、東大の所蔵する膨大な学術資料・標本を高名な海外デザイナーが参入し、「古きに新しさを見る」とでもいうのだろうか、古風な物品が現代風にお洒落にアレンジされた展示構成で、当時はその演出がとても斬新で魅力的...
となり町の図書館への道すがら、葬儀店のウィンドウにずらりと並んだ骨壺見本が気になっている。いつかしっかり見比べてみたいと思いつつ今回も見送ってしまった。普段は気にもとめない“葬い”もの、図書館にこんな本があり読んでみる。 ● 『葬いとカメラ』 金セッピョル、地主麻衣子 編 左右社 2021年 文化人類学・宗教学・社会学の研究者、映像アーチスト・彫刻家などが集い、“葬い”にちなんだ映像作品を視聴しての対談集...
家で使っているのが、こんな箒(幅180×230ミリ)と塵取(幅225×350ミリ)です。とあれ本来はそれぞれ別ものとして作られた道具です。小さな手箒はゴヨウマツの葉を束ねたヴェトナムのもの。韓国の道具にも、ゴヨウマツの葉を円錐形に束ねた刷毛のようなものを見たことがありますが。こちらはヴェトナムの木版画「ドンホー版画」の刷りに用いられる撫で刷毛で、いわばバレンのように使うもの。2分れ3カ所を結び竹箆で押さえ平らにさせた末...
台湾の歴史的建造物にみられる和製マジョリカタイルを考察した、台湾人著者によるこんな一冊をみつけた。副題には「台灣老花磚的建築記憶」とある。 ● 『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』 康鍩錫 TWO VIRGINS 2023当初は英国のヴィクトリアン・タイルの模倣品として製造された日本のビクトリアン風彩色タイルは、通称和製マジョリカタイルともよばれ。後に海外への輸出品へと販路を拡大し、それぞれの地域への市場に向けてさま...
● バングラデシュのリキシャ 『うるおうアジア』展<中村研一記念 小金井市立 はけの森美術館>にて 日本発祥の人力車とリヤカーの長所を、自転車にうまく纏めた“自転車型力車”は、東南アジアや南アジアなどの地で、いまでも庶民の足として大活躍している。先月観た福岡アジア美術館収蔵作品の巡回展『うるおうアジア』展<中村研一記念 小金井市立 はけの森美術館>でも、数ある作品のなかで一番目を魅かれたのが、このバング...
この新春はひさしぶりに昭島の拝島大師の“だるま市”へ行ってみました。コロナ禍も幾分落ち着き、初詣の凄い人混みにすっかり押され、今回は系統立てた「だるま分析」はいまひとつ振るいませんでした。近年ではアマビエをアレンジしただるまも登場したとのことですが、そちらは確認できず終い、それでもいくらか新種の変わりだるまがありました。こちらは前回のときの“だるま考察”の記録です。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2...
● 『鍵盤ハーモニカの本』 南川朱生(ピアノニマス) 春秋社 2023年 自分もこの写真の時代は小学生だったはず。 ** 鍵盤ハーモニカのかわりにトンボ・ハーモニカを添えて** モラトリアムな時代のあの日、不思議ちゃん女子がくれたカセットには“曲:ピアニカ前田”と書かれていた。小学生の音楽の時間、黒い唄口や蛇腹のホースをくわえ、演奏の度に内部で結露した唾液を吐きだすピアニカが、どこか不潔で嫌だった。「トホホ、...
前回は鷹匠の道具について触れてみたけれど、鷹狩りはどのように行われるのかについては、まったくもって知識ゼロの状態。そんな理由で図書館にあった書籍や動画にあたってみた。日本の鷹狩りの伝統は徳川幕府の下、各大名が庇護し研磋琢磨を重ね粋を究めたものの。幕府解体後それらのシステムが一旦崩壊し、明治を迎えあらたに宮内省が鷹狩りを管理するようになる。 そんな天皇の鷹匠をされていた諏訪流の鷹師の方の伝記本や、...
上京した頃の最寄り駅は、江戸幕府の鷹場(たかば)の名残りをとどめる「鷹の台」という場所だった。東京の西域多摩地区にはかって幕府の広大な鷹場が拡がっており、近在の博物館の近世の歴史展示にも鷹場に関するコーナーが設けられている。とはいえ鷹狩りに関わる鷹匠(たかじょう)が用いる道具についてはこれまで一度も見たことがなかった。この度 瑞穂町郷土資料館にて『オオタカ -鷹とその文化- 』展があり、江戸時代には尾...
● 裁断機 幅195×305×高さ45ミリ近ごろとんと出番がなくなった道具にこんな裁断機がある。A4のレターケースの抽斗にすっぽり納まる小さなもの。この小回りの効く大きさが要となり、自製の名刺作りなどの小物作りに活躍した。規格サイズのガイドを作り、連続して裁断する流れ作業の仕上げに向いている。かっては、写真の印画紙、画用紙などを切るのに、大型の裁断機もよく使ったものだった。そのような押し切り式の長刃のものは...
● 『フェルメールと天才科学者 17世紀オランダの「光りと視覚」の革命』 ローラ・J・スナイダー著 原書房 2019年 下;本書口絵より、レーウェンフックの単レンズ式顕微鏡 部屋型カメラ・オブスクラ、アタナシウス・キルヒャー画(1646年)17世紀のネーデルラント(オランダ)の小都市デルフトで1週間ちがいで生を享け、それぞれ芸術と科学に不滅の足跡を残した、ふたりの天才についての物語“Eye of the Beholder:Jhoh...
● 『名画のティータイム』創元社 2022 の“サモワール” 《お茶を飲む》 ミハイル・ペトロヴィッチ・クロット画 1889年、カレリア共和国美術館蔵紅茶の文化誌を絵画に読み解く『名画のティータイム』の一項目に、サモワールが紹介されていた。ときは帝政ロシア時代、イコンが架けられた室内で民族衣装姿の女性がお茶を飲む場面、 《お茶を飲む》 ミハイル・ペトロヴィッチ・クロット画(1889)である。卓上にはもう...
● 臼 タイ 径103×高さ75ミリむかし旅をしたてのころ現地でつかわれている台所道具がおもしろく、タイではクロックと呼ばれるこんな搗き臼を求めた。ハンドクラッシャーの小さなものながらも、臼はそれなりに重く手荷物として持ち帰るのがなかなか大変だった。タイの東北地方(イサーン)の名物料理にソムタムという青いパパイヤのサラダがある。あっさりとさわやかな青いパパイヤをおろし金で千切りにして、そこに唐辛子をベ...
● アイロン 120×55×55ミリ先日 友人の引越の手伝いで冷蔵庫を塗り替えた。部屋の中でどこか浮いていた白もの家電が、ぐっと渋くマットなブルーグレイに甦った。プラスチックの素材感 カラーリングなど、いまの家電は機能は優れていても、触手をくすぐられるものが余りない。それに反して製品の質は劣るも、ひところの昭和家電のデザインに好きなものがおおい。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-503.htmlこ...
巷に溢れる便利グッズって、実のところどれほど便利なのだろう・・・・ ● 木柄にボルトとナットで仕上げたミャンマーの栓抜き 25×175×30ミリミャンマー土産で頂いた栓抜きは、モアイのような木彫りの把手になんとボルトとナットで仕上げている。なんともふざけた風情で自分ではまず選ばないような栓抜きながら、このかたちが意外と便利と知る。梃子の力点と作用点の兼ね合いから、王冠を抜いてもまったく疵がつかないのである。...
● 『戯れる江戸の文字絵』 ヤン ショオジェ著 マール社 2022年「へのへのもへじ」のように、画面のなかにその人物をしめす仮名文字がたくみに組み込まれた図絵に見入っている。原本は十返舎一九『文字の知画(もんじのちえ)』登場人物は、江戸の町で働く商人や町人を中心に、花街の人々や旅人、武士、また町中をあてもなく彷徨う者など、老若男女総勢41人に犬1匹・・・・・・・当時の庶民にとっては当たり前に読めた、ただの平仮名の...
● 『アジア「窓」紀行』 田熊隆樹 著・写真 草思社 2022年図書館の新着本にあった一冊は窓の写真のオンパレード、その名も『アジア「窓」紀行』副題の -上海からエルサレムまで- とあるとおり若き建築学徒が撮ったアジア各地の建物の魅力的な窓の写真で溢れている。かって自分が歩いたアジアの地域と重なる場所は少ないのだけどそれでもイランのエスファハンの金曜モスク内を撮った一枚は自分も同じようなアングルの写真(...
● 刀杼 595×60×厚み32ミリ仲間と離れぽつりと古物に流れていた機具(はたぐ)が目を惹いた。古いかたちの杼の刀杼(とうひ)である。一枚の布をしっかり織りあげるには、いったい幾度こんな杼を往復させるのであろうか。ぴんと糸を張り長らく打ち込みつづけたものか杼にはその証しのように糸目の痕跡がしっかりと刻まれている。タイのカレン族の村でみた地機織りの様子を参考に添えて・・・・・ ● 地機 タイ、メイホンソン州 1989年...
● 小皿 ヴェトナム 155×高さ33ミリ桜が散ると一気に新緑が萌えはじめ淡い緑が眩しいヴェトナムのバッチャン焼のうつわは友人からの土産品ちょっと前の屋台でも使われていたものだろうか焼が甘く貫入もほどよくはいり使い古された地肌の風合いは好みだけれど器面には日本のやきものではちょっと見かけないような大胆な筆致と彩色でもって花が描かれている咲き始めた山吹を添えて・・・・・・...
● 栓抜 85×40ミリ散りゆく花のもとコップに泡をそそぐ相棒のヱビスの瓶じゃないけれど福の神にあやかりこんなかたちの栓抜で!...
● 計数枡 220×120×45ミリ 覗き窓四角い枡を押しつぶしたような歪な菱形のこんな枡がある。なにかの余材を転用したようなアルミっぽい鋳込みの合金製。1層100個、5層で500個を数える覗き窓が側面につく。まるい玉を計るにはざくっと掬い、鋭角の隅よりきれいに放てるこの形状が理に適っていたのだろう。この枡も日本の娯楽文化ならではで独自に生まれたかたちかもしれない。1発打ちのあの時代、この1枡でいったいなにに替...
● 角皿 173×132×高さ25ミリ近所の農家へ野菜を買いに行ったはずが、こんな角皿があったのでチャリンと100円入れて連れ帰る。郷里の祖母の家にあったようななんとも昭和チックなうつわです。今日から4月の新シーズン、とはいえ昨日とまるで変わりばえしないスタート。せっかくだから新シリーズとして、モノが生み出す“模様”に特化していきたい。描かれた舟のように、帆に風をおおきくはらみ新たな海原へ歩みだそう・・・...
● 『賢明』 ピーテル・ブリューゲル 224×298㎜、ペンとインク、1559年 ブリュッセル王立美術館蔵ブリューゲルの目玉作品『バベルの塔』を東京都美術館で観たのはもう6年も前のこと。蟻粒大の人々が建設現場で蠢くその筆致の緻密さに目を奪われた。とはいえそれは3DCC映像(拡大複製画)によるもの、視力の落ちた肉眼ではいくら実物を前にしても到底無理であった。それに反して同時に出展されていたペン画や版画の数々は...
お酒を持って一人お花見へ、めざすはとなり町の都立東大和南公園。満開の桜に囲まれて、花壇や周囲に巨大な碍子(がいし)がオブジェ風に配置されたシンボル的な建物がある。旧日立航空機株式会社変電所の建築で、戦中に戦闘機からの機銃掃射を受けた悲しいほどにあばた顔の外観である。それは東大和市指定文化財(戦災遺産)とされたこんな建物である。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-357.html絶縁器具の陶磁器...
● へら 18×長さ175ミリ朝のラジオで片付けコーディネーターが「検索すれば済むことでしょう・・・捨てましょう!」とさかんに“検索”を連発。たしかにネットは便利で一理あるけれど。やはり紙もの資料はとっておきたいし、モノとの出会いや取捨選択は効率だけではつまらないと思っているから、“何でも捨てましょオバサン”のその発言が気になった。しょぼけた道具ながらも、前回は“○”のかたちだったので、今回は“-”ものの紹介です。...
● 芯切り 径70×9ミリお酒を持ってひとり花見の予定が今日の雨で流れてしまった。ストーブもそろそろしまうつもりだったけど今日は寒いからひさしぶりにたいてみよう。むかしの灯油ストーブはシンプルなつくりながらメンテナンスにはこんな綿芯切りが必要だった。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1178.htmlわずか1インチ芯用のこんな小物をネットが普及していなかったころさがしだすのに随分苦労した。ブ...
先日のタイル展では導入口にあった世界のタイルの変遷でイスラームタイルの一群が目を惹いた。 ● イランの旅でみたタイルの数々 1997年撮影かって駆け足で見学したイランの旅では、モスクなどに多用されている装飾タイルの華麗さに目を瞠った。まるで万華鏡を覗くように、精緻な幾何学文に草花文、コーランの聖句が記された流麗なアラビア文字が複雑に絡み合い一体となり生まれる装飾タイルによる絵曼陀羅。プルシャンブルー、...
いよいよ花見の季節の到来です。今年はいち早く開花のもよう、ぽかぽかの陽気に誘われて久しぶりに江戸時代からの桜の名所、小金井公園の江戸東京たてもの園へ行ってみました。目指すは大好きな建築のオーナメントともなるタイル『 日本のタイル100年 -美と用のあゆみ- 』展です!(2023年3月14日) ● 『日本のタイル100年 -美と用のあゆみ-』展 江戸東京たてもの園 / 東京都小金井市 会期 2023/3/11-8/30本展は、...
子どもの頃実家の玄関には父が蒐めた古銭の額が飾られていた。楕円形の天保通寶以外は、いずれもドラマで銭形平次が飛ばす投げ銭のようなどこか冴えない一文銭の類である。父亡きあとは物置に放されており、いつだか帰省の折に持ち帰ってみた。ながらく部屋に放っぽったままだったけれど、図書館に寛永通寶の本があり、この度よい機会と借りて軽い気持ちで分類してみるも、素人にはあまりに複雑でハードルが高すぎてお手上げだ。 ...