前々回はネパールの、そして前回は古代の丸木舟について見たので、今回は現代の丸木舟を見てみよう。とはいっても、まわりには現役の丸木舟が見られないため、展示に限ったものなのですが。 ● アイヌの丸木舟と川漁 / 北海道博物館 2015年撮影(2015年に改称された) この年(2015)から博物館の名称も旧北海道開拓記念館より北海道博物館と改称され。アイヌに関する展示が一新し、アイヌへの教育普及の上でもより親しみやす...
古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。
どこか昭和を感じさせる生活道具や民具が好きです。”雑閑”では日々の雑記・展覧会・読書・映画・フリマ・骨董市などでの感想を、”モノがたり”では部屋のガラクタを、”一枚の写真”では昔の旅写真などを載せています。つたないモノコトの紹介ですがお愉しみください!
● アイロン 120×55×55ミリ先日 友人の引越の手伝いで冷蔵庫を塗り替えた。部屋の中でどこか浮いていた白もの家電が、ぐっと渋くマットなブルーグレイに甦った。プラスチックの素材感 カラーリングなど、いまの家電は機能は優れていても、触手をくすぐられるものが余りない。それに反して製品の質は劣るも、ひところの昭和家電のデザインに好きなものがおおい。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-503.htmlこ...
巷に溢れる便利グッズって、実のところどれほど便利なのだろう・・・・ ● 木柄にボルトとナットで仕上げたミャンマーの栓抜き 25×175×30ミリミャンマー土産で頂いた栓抜きは、モアイのような木彫りの把手になんとボルトとナットで仕上げている。なんともふざけた風情で自分ではまず選ばないような栓抜きながら、このかたちが意外と便利と知る。梃子の力点と作用点の兼ね合いから、王冠を抜いてもまったく疵がつかないのである。...
● 『戯れる江戸の文字絵』 ヤン ショオジェ著 マール社 2022年「へのへのもへじ」のように、画面のなかにその人物をしめす仮名文字がたくみに組み込まれた図絵に見入っている。原本は十返舎一九『文字の知画(もんじのちえ)』登場人物は、江戸の町で働く商人や町人を中心に、花街の人々や旅人、武士、また町中をあてもなく彷徨う者など、老若男女総勢41人に犬1匹・・・・・・・当時の庶民にとっては当たり前に読めた、ただの平仮名の...
● 『アジア「窓」紀行』 田熊隆樹 著・写真 草思社 2022年図書館の新着本にあった一冊は窓の写真のオンパレード、その名も『アジア「窓」紀行』副題の -上海からエルサレムまで- とあるとおり若き建築学徒が撮ったアジア各地の建物の魅力的な窓の写真で溢れている。かって自分が歩いたアジアの地域と重なる場所は少ないのだけどそれでもイランのエスファハンの金曜モスク内を撮った一枚は自分も同じようなアングルの写真(...
● 刀杼 595×60×厚み32ミリ仲間と離れぽつりと古物に流れていた機具(はたぐ)が目を惹いた。古いかたちの杼の刀杼(とうひ)である。一枚の布をしっかり織りあげるには、いったい幾度こんな杼を往復させるのであろうか。ぴんと糸を張り長らく打ち込みつづけたものか杼にはその証しのように糸目の痕跡がしっかりと刻まれている。タイのカレン族の村でみた地機織りの様子を参考に添えて・・・・・ ● 地機 タイ、メイホンソン州 1989年...
● 小皿 ヴェトナム 155×高さ33ミリ桜が散ると一気に新緑が萌えはじめ淡い緑が眩しいヴェトナムのバッチャン焼のうつわは友人からの土産品ちょっと前の屋台でも使われていたものだろうか焼が甘く貫入もほどよくはいり使い古された地肌の風合いは好みだけれど器面には日本のやきものではちょっと見かけないような大胆な筆致と彩色でもって花が描かれている咲き始めた山吹を添えて・・・・・・...
● 栓抜 85×40ミリ散りゆく花のもとコップに泡をそそぐ相棒のヱビスの瓶じゃないけれど福の神にあやかりこんなかたちの栓抜で!...
● 計数枡 220×120×45ミリ 覗き窓四角い枡を押しつぶしたような歪な菱形のこんな枡がある。なにかの余材を転用したようなアルミっぽい鋳込みの合金製。1層100個、5層で500個を数える覗き窓が側面につく。まるい玉を計るにはざくっと掬い、鋭角の隅よりきれいに放てるこの形状が理に適っていたのだろう。この枡も日本の娯楽文化ならではで独自に生まれたかたちかもしれない。1発打ちのあの時代、この1枡でいったいなにに替...
● 角皿 173×132×高さ25ミリ近所の農家へ野菜を買いに行ったはずが、こんな角皿があったのでチャリンと100円入れて連れ帰る。郷里の祖母の家にあったようななんとも昭和チックなうつわです。今日から4月の新シーズン、とはいえ昨日とまるで変わりばえしないスタート。せっかくだから新シリーズとして、モノが生み出す“模様”に特化していきたい。描かれた舟のように、帆に風をおおきくはらみ新たな海原へ歩みだそう・・・...
● 『賢明』 ピーテル・ブリューゲル 224×298㎜、ペンとインク、1559年 ブリュッセル王立美術館蔵ブリューゲルの目玉作品『バベルの塔』を東京都美術館で観たのはもう6年も前のこと。蟻粒大の人々が建設現場で蠢くその筆致の緻密さに目を奪われた。とはいえそれは3DCC映像(拡大複製画)によるもの、視力の落ちた肉眼ではいくら実物を前にしても到底無理であった。それに反して同時に出展されていたペン画や版画の数々は...
お酒を持って一人お花見へ、めざすはとなり町の都立東大和南公園。満開の桜に囲まれて、花壇や周囲に巨大な碍子(がいし)がオブジェ風に配置されたシンボル的な建物がある。旧日立航空機株式会社変電所の建築で、戦中に戦闘機からの機銃掃射を受けた悲しいほどにあばた顔の外観である。それは東大和市指定文化財(戦災遺産)とされたこんな建物である。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-357.html絶縁器具の陶磁器...
● へら 18×長さ175ミリ朝のラジオで片付けコーディネーターが「検索すれば済むことでしょう・・・捨てましょう!」とさかんに“検索”を連発。たしかにネットは便利で一理あるけれど。やはり紙もの資料はとっておきたいし、モノとの出会いや取捨選択は効率だけではつまらないと思っているから、“何でも捨てましょオバサン”のその発言が気になった。しょぼけた道具ながらも、前回は“○”のかたちだったので、今回は“-”ものの紹介です。...
● 芯切り 径70×9ミリお酒を持ってひとり花見の予定が今日の雨で流れてしまった。ストーブもそろそろしまうつもりだったけど今日は寒いからひさしぶりにたいてみよう。むかしの灯油ストーブはシンプルなつくりながらメンテナンスにはこんな綿芯切りが必要だった。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1178.htmlわずか1インチ芯用のこんな小物をネットが普及していなかったころさがしだすのに随分苦労した。ブ...
先日のタイル展では導入口にあった世界のタイルの変遷でイスラームタイルの一群が目を惹いた。 ● イランの旅でみたタイルの数々 1997年撮影かって駆け足で見学したイランの旅では、モスクなどに多用されている装飾タイルの華麗さに目を瞠った。まるで万華鏡を覗くように、精緻な幾何学文に草花文、コーランの聖句が記された流麗なアラビア文字が複雑に絡み合い一体となり生まれる装飾タイルによる絵曼陀羅。プルシャンブルー、...
いよいよ花見の季節の到来です。今年はいち早く開花のもよう、ぽかぽかの陽気に誘われて久しぶりに江戸時代からの桜の名所、小金井公園の江戸東京たてもの園へ行ってみました。目指すは大好きな建築のオーナメントともなるタイル『 日本のタイル100年 -美と用のあゆみ- 』展です!(2023年3月14日) ● 『日本のタイル100年 -美と用のあゆみ-』展 江戸東京たてもの園 / 東京都小金井市 会期 2023/3/11-8/30本展は、...
子どもの頃実家の玄関には父が蒐めた古銭の額が飾られていた。楕円形の天保通寶以外は、いずれもドラマで銭形平次が飛ばす投げ銭のようなどこか冴えない一文銭の類である。父亡きあとは物置に放されており、いつだか帰省の折に持ち帰ってみた。ながらく部屋に放っぽったままだったけれど、図書館に寛永通寶の本があり、この度よい機会と借りて軽い気持ちで分類してみるも、素人にはあまりに複雑でハードルが高すぎてお手上げだ。 ...
● ケロシンストーブ ネパール 220×276×高さ139ミリ前回は、珈琲とスェーデン製のクラッシックなケロシンストーブの紹介でしたが。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1224.htmlこちらはおなじ加圧式でも、どこかチャイが似合う、ネパールのもう少し雑多な造りのもの。カトマンドゥでは王宮前のバサントプルを定宿とし、毎朝広場の路上で飲む一杯のチャイを無上の喜びとした。そんな熱々の本式のチャイ...
● リュックサック チェコお気に入りのチェコ映画にイジー・メンツル監督『英国王給仕人に乾杯』 2007年 がある。ホテルのレストランで給仕される料理の数々、食器やカトラリーのいずれもが素晴らしく。食の映画としても充分楽しめるおもしろい作品だ。 この度、原作であるボフミル・フラバルの『わたしは英国王に給仕した』 を読んでみた。「これからする話しを聞いてほしいんだ」に始まり「満足してくれたかい? ・・・おしまい...
今日はたのしいひな祭り~♪実家にあった五段飾りのお雛様を飾っていたのは、姉が小学生の頃までだったか。晴れ着姿の着物にぱちくりと化粧されて得意げのポーズできめた姉の写真がむかしのアルバムに納まっていたはずだ。あのお雛様はすでに家には無いはずだけどいったい何処へやったのだろう・・・・・・いつだかの市で、古いお雛様が出されていたことがあった。江戸時代のものだろうか時を経てここまで辿り着くまでにいったいどういう...
● 小平市ふれあい下水道館 東京都小平市わが町の博物館は一風変わったテーマの地下潜行型で『ふれあい下水道館』という。その名のごとき地下5階は府中街道真下にある下水道に直結しもわっと饐えた臭いの下水道(直径4.5m)を間近に体感できる。 博物館の特別展では、やはりそんな下の関連でかため「トイレグッズコレクション」 展が開催されていた。あの有名な中国のおまる“馬桶(マートン)”をはじめ世界各国のおまるがずらりと並...
抽斗の角よりほじくり出した小さなもの2点。江戸時代の貨幣制度では金貨は数量貨幣で数をかぞえ、1両=4分(ぶ)=16朱=4,000文対して銀貨は秤量貨幣で重さをはかり、1貫=10,000匁=100,000分(ふん)であると知った。改めてみると、先日観た「そろばん博物館」の展示にあった、算盤の新旧の作りと算術の仕方の違いではないけれど、金貨の数量の単位は4の倍数、銀貨の秤量の単位は10の倍数と、それぞれの単位のしくみが異なる点がどこ...
『キャンプで淹れるおいしい珈琲』 小林キュウ 2022年日常から離れ野外で淹れる一杯のコーヒーは見るからに美味しそう。フレンチプレス、パーコレーター、ペーパーフィルター・・・・豆のエキスを抽出する器具もいろいろで、淹れ方のスタイルも楽しめそう。さらに捲るとクッキーの缶のようなケースにパーツが収まるプレヒートでポンピングさせるレトロなケロシンストーブが紹介されていた。キャンプでは火力の扱いも重要なネックとなる...
「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ。-インド」藤原新也の写真集『祈り』を見ていたら。かってコマーシャルにも使われたガンジスの中洲にて人喰らう犬、あの衝撃的な一枚が載っていた。写真集のあの時代よりいくらか遅れて旅にでて、憧れのガンジスの中洲を踏んでみた。犬には出会わなかったけれど、のっぺりとした大地の柔らかさを楽しんだ。ヴァラナシで飲んだチャイは素焼のうつわが用いられとても濃厚で美味しかった。だけど目...
ディパックひとつに荷をよせて、簡素な歩みを旨とした。それでも街の市場や荒物屋でお気に入りのものと出会うとその都度旅装の衣が増していく・・・ ● 『旅がくれたもの』 蔵前仁一 旅行人 2021年旅の仕様はちがえども未知なるものとの出会いはおもしろい。本書では「旅がくれたもの」たち<工芸、絵画、布・服・絨緞イカット、焼き物と食器、アフリカ小物&その他の物>であふれ、旅の具材にスパイスを効かせている。そして『失わ...
● 金銅仏の鋳込み工程 ネパール、パタン 1992年前回に引きつづき、 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1220.html今回もネパールの鋳造仏の製造工程、「鋳込」です。窯で外子の型を燃焼し脱蝋させて内部を空洞に。脱蝋した外子の型に、銅をベースに併せた合金(真鍮)を坩堝(るつぼ)で熔解させて流し込む。坩堝の固定には長柄の棒が用いられ2人がかりの作業となる。冷めたタイミングを見計らって外子の型を叩き...
● 鋳造仏の外子づくり ネパール、パタン 1989年民家のベランダにこんな不思議なかたちをした土饅頭が乾されていた。これだけでは、まるで何か知れないけれど、鋳造仏づくりのための外子<雌型>である。この外子を窯で焼いて中にある原形の蝋を溶かし、その隙間にうまく金属を流し込むための湯道が巧みに施されている。型の原料には、畑から掘り出した良質な土と籾殻をまぜ、そのつなぎにスイギュウの糞が用いられている。母屋...
● 多摩全生園内(上) 描かれた園の未来の構想図(下)となり町の東村山には多摩全生園(たまぜんしょうえん)というハンセン病療養施設がある。 ● 博物館でのコーナー展示 / 東村山ふるさと歴史館(上) 全生園にある『あん』関係者の植樹記念碑(下)園内には国立ハンセン病資料館が建ち、市の博物館でも全生園にちなんだコーナー展示がみられる。 ● 園内通用券 多摩全生園 / 東村山ふるさと歴史館病を患う(罹患)と...
● そろばんの製作工程とそろばん箪笥 / 白井そろばん博物館にて ● ポーランドのそろばん(上)カラフルな珠を組み合わせてオリジナルそろばんも(下) / 白井そろばん博物館にて先日見学した「白井そろばん博物館」では古今東西さまざまなそろばんが紹介されていた。 ● 視覚障害者用そろばん / 白井そろばん博物館にて ● 視覚障害者用そろばん<武田式> (下のもの) / 白井そろばん博物館にて代表的な日本の視覚障害者用そろ...
● 毛糸の靴下 3種寒波到来この冬も大活躍! ● 毛糸の靴下 母作1号青っ鼻小僧だった子ども時代毛糸を幾度もほぐしなおしての手編みものは、どこか貧乏くさくて嫌だった。帽子、マフラー、セーター、毛糸のパンツ(女児専用)、紐つきミトン、脚絆、靴下と頭の天辺から足元までまだら毛糸でもっこも子だった。そんなあの頃がいまとなっては懐かしく、帰省の際母にリクエストしてみたら、やはりほぐし毛糸の中途半端なバランスの...
年末に引っ越したS君を訪ね千葉へ遊びに行きました。 ● 懐かしのククリラムと素敵な部屋がお迎えかっては彼の知人の親が使っていたという一軒家へ引っ越ししたS君。新居は部屋数も独り者にとっては十分なはずながら、前住人が残していったままの物とリミックスされて、なんとも微妙な空間がうまれていた。仕込棚のなかには子どもの縫いぐるみや食初め碗などに混じり、彼のコレクション品のインドから日本へ里帰りしたクリシュナ...
● 『宮本常一の旅学 観文研の旅人たち』 福田晴子著 宮本千晴監修 八坂書房 2022年観文研とは㈱近畿日本ツーリスト旧日本観光文化研究所の略。昭和最後の夏より平成にかけての半年あまりのアルバイトは。この研究所の閉所にちなむ引っ越し作業で松戸にあったプレハブの民具収蔵庫に通い日々民具の梱包作業にあけくれていた。ご指導して下さったのは宮本先生の勧めで日本全国の竹細工収集をされた所員のK氏。扱った民具は、やき...
よくある草鞋や草履の履き物、ぱっとイメージするその素材はもっぱら稲藁で編んだものだけど八重山の竹富島でみたものはいろいろな植物の名前を冠せたものが並んでいた。よくみたら、草鞋のかたちや紐の掛けかたも少し違っている。「そうかこの植物が、こんな履き物になるのだなぁ・・・・」 こちらは知人が編纂した『西表島 手わざ帖』島の植物利用の民具とその作り方が紹介されています。 ↓http://utinogarakuta.blo...
● ハナ(小正月の飾りもの) 2019年小正月のこの季節に祀られる、秩父や上州の小正月飾りのケズリカケ・ケズリバナなどを竹細工のSさんが探訪し自らそのかたちを再現した展示「ハナをめぐる旅」を見てから4年が過ぎた。ミズキやコウゾなどの生木を、鋭利な刃物で削り生まれた断面は螺旋状のみごとな渦をなし、ひらひらとした軽やかさとともにかすかに匂いたちその白さがなんとも眩しかった。お洒落なクラフトを並べたいつものち...
● 祝い棒 福井県嶺南地方新春のこの季節の寿ぎでこんな棒を手にした子どもたちが地区内の各家を門付けし、戸口で唄をうたい棒をトントンと叩いて祝言を述べる戸祝いの行事が若狭一帯にみられます。棒にはなにやら招福をまねく文字や吉祥にちなむ図柄がたくさん描かれています。そんな棒が興味深く、昨年は博物館にある棒の数々を見せて頂きました。元来は青年となる前の男児を対象としたこの行事が近年は少子化により女児や幼...
● イナラ<粟刈鎌> 竹富島・喜寶院蒐集館 2003年木柄にわずかな刃が付いたこんな鎌がある。粟を刈るための穂摘み専用のものである。「粟の穂を刈るには30-40㎝程の長さに選んだ穂先を鎌で掬い採るように刈り、手前に倒すようにしてもってきて左手で穂の束を受ける。刈り取った粟穂を積んで保存用のシラ(穀倉)を作った。穂を搗くときは左手で穂の束を握り木臼に入れイナッキ(竪杵)を用い一人で搗いた・・・・・」と島の古老か...
前回の二枚貝にひきつづき貝の道具です。今回は石垣島沖に浮かぶリーフの小島、竹富島・喜寶院蒐集館の民具です。貝の種類が南の海らしく、シャコガイ、ホラガイ、スイジガイ、ヤコウガイなどと巻き貝を併せ大きく変わりますが、こちらもほとんど加工をされぬまま道具として活用されています。 ● ブラヤクン(ホラガイの薬罐) シャコガイ製鍋と貝柄杓大型の貝はそのまま鍋や薬罐に転用できる。ブラヤクンには木蓋にフガラ(ク...
● イタヤガイの貝匙 武蔵野美術大学民俗資料室 戦時中のホタテの代用鍋 恵庭市郷土資料館「こんなところにかいがおちているぅ~」窓の外から響く元気な園児の声。いやいや落ちて(捨てて)いないから。ホタテの殻を野晒しにして、食器にしようという魂胆だったのだが・・・・二枚貝は殻のかたちをそのまま活かし、容器をはじめちょっとした道具に転用することが可能である。子どもの頃の駄菓子には、蛤の殻にニッキ飴が盛られ...
● 『世界の音 楽器の歴史と文化』 郡司すみ 講談社学術文庫 2022年図書館の新着にあった一冊は、表紙になにやらいろんな楽器が散りばめられている。セルパン、メイ、ポロン、ダフ、ルール、小鼓、ハーディガーディ、シュン、ルードヴィーナ1990年代当時、著者が館長をされていた音大の楽器学資料館に美大出の友だちのK君が、なぜか楽器の実測図を描くアルバイトをしていた。作図のための参考資料として彼に貸したのが...
● 注連縄(しめなわ) 沖縄県八重山地方 2004年撮影八重山の厩に祀られた注連縄にはよくみたらなにやら黒いものがついている。なんだろうと近寄ってみたら炭だった。この地方の注連縄にはどうやら炭がつくらしい・・・・年の瀬より新春にかけてのこの季節限定で全国津々浦々、注連縄・注連飾りをもとめ、探訪の旅へ発つ知人がいる。長年にわたる旅の成果が実を結び蒐められた注連縄・注連飾りの展示をみたことがある。 ↓http:/...
● 八重山の民具館で 2003年八重山の波間にうかぶ小島の民具館へ幾度か通いお掃除に明け暮れたことがある。あれから20年が過ぎ、世代の推移と開発の波が一起に押し寄せて、いま島の民具は崩壊の危機にあると、そんな憂いの言葉が賀状に一筆添えられていた。 ● ティッカサー(糸かご) 沖縄県八重山地方“ティッカサー”とは土地の言葉で「手の司」真摯な女性の手技を褒め称えるこの名前が、民具の糸かごについている。竹が自...
2023年、新年おめでとうございます!片付けをしていたらこんなのが出てきた。沖縄のおもちゃを並べたときの藁細工。新年らしく鶴亀の寿(ことほぎ)ということで!ちなみに編み方はこんなぐあいです。...
● 民具絵はがき・被り物 神奈川大学日本常民文化研究所“民具絵はがき”のなかにあった、中世の絵巻物の被り物尽くしの1枚。高貴な方の烏帽子のようなものから、庶民の笠、頭巾の類が確認できる。現代では祭礼や時代劇のなかでしか見かけないような被り物もある。さきに紹介した“履き物尽くし”の絵はがき同様に、絵巻物はどのような場面なのだろうか。被り物からわずかに覗く髪型や、顔の表情も様々で興味深い。 ● 『アジアの笠...
履き物シリーズ最後は草履です。こちらも個性をかんじさせますね!1 タケノカワゾーリ L240/W100 竹皮、布 福島県耶麻郡西会津町野沢本町2 ヌノゾウリ L220/W85 稲藁、布 新潟県佐渡郡小木町3 ゾウリ L225/W85 稲藁、木綿布 新潟県佐渡郡小木町4 ゾウリ L230/W85 蒲、稲藁、布 新潟県十日町市赤倉5 タケカワジョウリ L150/W80 竹皮、布 長野県下伊那郡清内路村6 ワラゾウリ L230/W90 稲藁、布 長野県北佐久郡浅科...
● 編み具民具絵はがきにあった謎の道具およその見当はつけてはいたけれど・・・・赤坂憲雄『山野河海まんだら』のなかに同じものを発見。草履表を編む写真のなかで縄の掛け具として使われている。ただ絵はがきのほうの腕木は2本だけど、こちらはどう見ても1本である。この違いは何だろう・・・・・『日本再発見 芸術風土記』の皮切りに、岡本太郎が秋田県八郎潟町を撮った写真(1957年)をつぶさに見直してみる。厩のある土間に坐りこみ...
● 『日本全国タイル遊覧』 吉田真紀 書肆侃侃房 2022年図書館にあったタイル本開いてみたらおなじタイルが載っていた。本書のなかでも一等地味な、民宿となった元銭湯「民宿 浜の湯」ところは、あんこうが名物の茨城は大洗。英国のビクトリアンタイルをまねて作り、かってはさかんに海外へも輸出された。国産の日本製“マジョリカタイル”と呼ばれるもの。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-128.html風呂場に...
先回は藁沓を紹介しまいたが、今回は草鞋(わらじ)です。こちらもよく観るとそれぞれ微妙に違っています。ウシノクツ、ウマノクツはおまけまで ・・・・・ 1 草鞋 L210/W90㎜ 2 草鞋 L240/W85㎜ 3 ワラジ L230/W80㎜ 岩手県岩手郡雫石町西安庭 4 オソフキワラジ L230/W110㎜ 福島県南会津郡下郷町大内 5 ワラジ L190/W65㎜ 東京都 6 ワラジ L220/W70㎜ 東京都 7 ワラジ L215/W70㎜ 山梨県北都留郡上野原...
● 不思議のメダイ 17×10ミリ小指の先にのせても余る小さなメダイを肌身離さず身に付けていた。聖母マリアが描かれた“不思議のメダイ”である。いつしか留金がはずれ、赤い七宝もすっかりかせてしまい、長らくしまい込んだままだった。今日の聖夜にあやかり久しぶりに出してみる。メダイの表には地球(全世界)に乗り、蛇(悪霊)を踏み砕くマリア像。指先から発する光線が四方に輝く。「聖寵にして穢れなく宿りし聖マリア、我ら...
自分が生まれた世代・地域より藁を用いた道具にはまるで無縁のまま育った。それでもとくに冬場のこの季節にはなぜか藁編みの道具に、温もりと親しさを覚えてしまう。浅草の「かまわぬ」で『藁の道』展をみてから丁度4年が過ぎた・・・・・・ ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-434.htmlこの間折りに触れ、藁の民具を観たけれど。そのなかには草鞋や草履など藁で編まれた履き物もいくらかあった。この秋の小石川植物園の...
今回も引き続き駒沢女子大学の『履き物』展(2009)より下駄やサンダルなど。近年は現代的にアレンジされた下駄やサンダルが流行っているのか各メーカーとタイアップしてさまざまな製品が紹介されていた。普段は気にとめない女性の現代の履き物もこうして見比べてみるとそのデザイン性がなかなか多彩で愉しかった。 ● ビーチサンダル 駒沢女子大学『履き物』展(2009)よりハワイアナスのビーチサンダルは、カラーバリェーション...
ひきつづき駒沢女子大学『履き物』展(2009)より今回は足をすっぽりと覆うタイプの“沓”です。神事で神主が履く沓はときどき見かけますがそれ以外のものはなかなか目にする機会がない珍しい履き物ばかりです。 ● 海外の沓 駒沢女子大学『履き物』展(2009)より 上; タイの布製沓北部タイのチェンセーンでもとめたラフ族のもの。底は布を幾重にも重ねた刺し子仕上げ、側には刺繍、爪先がおおきくカーブしたかたち。展示につか...
先に中世の絵巻図絵にみる履き物を紹介しましたが。今回は、藁で編んだ草履や草鞋(わらじ)など現代のものです。2009年度駒沢女子大学祭の学芸員実習展示でみた、『履き物』展より抜粋してみます。民具のたぐいのものから、若者らしく現代流行のハイファッションのシューズやサンダルまで履き物を幅広くとらえて紹介したとても斬新で愉しい展覧会でした。 ● 草履や草鞋など 駒沢女子大学『履き物』展より上;栗野下駄木下...
● 履き物尽くし 中世の絵巻物より前回紹介した、中世の絵巻物絵はがきにあった履き物尽くしの一枚。下駄や草履、草鞋に沓とさまざまな履き物が並んでいる。腰から下のクローズアップだから周囲の場面や履き物を履く人がどのような階級・諸職なのか判然としないものもある。それいにしても、足元が描く姿はなんと多様なんだろうつい、みえない絵巻物の描かれた画面を、どこか愉もしく想像してしまう。そのなかで右上端の一枚は...
レターセットのなかから現れたのが、こんな5葉の絵はがき。以前、神奈川大学日本常民文化研究所主催の民具の記念講演会で頂いたもの。上の4葉は絵巻物に載った生活の場面や民具を拡大したもの。下の市松模様に民具尽くしは、民具研究会の記念品として配布された染め抜きの手拭いなどを写したものだろうか。日本の民具研究の父、渋沢敬三は辞典の「字引」のように平安・鎌倉・室町時代の主要な絵巻物の絵図から庶民生活が描かれた場...
● 馬鈴 径65×25、75×35ミリじゃがたらいものジャガイモを“馬鈴薯”と記すのを小学百科事典に載ったゴッホの画ではじめて知った。つまり新大陸からこのイモが伝搬する遥か以前に馬鈴があったのだった。幼少のころは、まだかろうじて残飯を回収したり石炭を運んでくる荷馬車が走り、蹄鉄を打つ鍛冶屋も近所にあったような記憶が残る。それでも馬がシャンシャンと共に音を運んできた記憶が一切ない。先日観た横浜市歴史博物館の展...
立川へ向かう道すがら「オーロラでも見よっか」と友だちと寄ってみた国立極地研究所の“南極・北極科学館”!科学館とはこんな施設です ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-35.html ● 国立極地研究所、南極・北極科学館コロナとなって以来久しぶりの訪館です。件のオーロラシアターは感染対策で暗幕は開けっぴろげのまま、幕間から覗きみる10倍速の記録画像の5分間。背後に流れる幻想的な喜多郎風のBGMを聴きながら...
『民具のデザイン図鑑』の後期展示がはじまりました。今回あらたに入れ替わったものが、ざっと以下の資料です。ただ残念なが、図鑑にはある、箕、背負い袋、頭額帯運搬籠などの編組品。夜着や風呂敷、絵馬などが一切見られず、図鑑にあるものを全部紹介と、ぐっと思い切った展示替えをして頂きたかった。それでも前期展示とは雰囲気も若干変わり、まあ新鮮というとことで・・・・・・。こちらは過去に観た絵馬展より ↓ http://utin...
● 『活字・近代日本を支えた小さな巨人たち』 横浜市歴史博物館博物館で手にした一枚のちらし。鉛を溶かしてつくった活字組のデザインがなんとも洒落ている。若き日の父は新聞社で写植(写真写植)工をやっていた。紙型版からおこされた鉛版が巨大なドラムにセットされ、新聞が次々に刷り上がっていくそのさまに感動した。印刷物の多くが、いまのようにオフセット印刷でなかった時代まだまだ町工場のように小さな活版植字...
本年も寒さ増したるこの季節、懐中にこんな小瓶を忍ばせてちびりちびりやってます。円と角、どちらが使いやすいか?円いタイプはイギリス製、90×30×高さ140ミリ彼の地の労働者が日々用いたものか、瓶に付属のピューターの杯は使い込まれてガバガバです。酒飲みの神様に育てられ、雰囲気こそはバッチシながら、難点は瓶・杯ともに置けない点。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-590.html・・・・・ ということで、ち...
さきに日本の“カルイ”という背負籠を紹介しましたが。こちらはかってのラオスと中国・雲南省の旅で見かけたカルイとよく似た編みの背負籠。側面のジグザグに見える六ッ目くずしの編みのパターンはそれなりに似てはいるけれど、いずれの背負籠の底面も地べたにしっかり置けるように四辺形をしており、カルイのように一文字の底面ではない点が大きくちがっている。またそれぞれの民族による背負かたの好みなのだろうか。肩紐でもって...
前回は日向地方独特の扁平な背負籠“カルイ”の拡大部分を紹介しましたが。カルイのつくり方が載っていましたので今回はその紹介まで。 白黒写真の廣島一夫による製作工程の図版はかたりべ文庫 職人の手仕事『竹細工 廣島一夫』2009年 より。 廣島一夫は宮崎県日之影町の名人といわれた竹細工職人。これまで近江八幡、白山の展示で2度にわたり、廣島一夫が手がけた端正な竹細工の数々を見る機会を得ました。こちらはそのときのもよう...
● 背負籠(カルイ) 512×326×高さ413ミリ 真竹、稲藁 宮崎県西臼杵郡日之影町 一度目にしたらわすれられないとても扁平で綾なすジグザグな編み目が美しい、カルイとよばれる背負籠。九州のこの地域にみられる、日本でも独特のかたちをしたカゴである。「独特のくびれがユニークな背負い籠。側面と底部は大きめの竹で内と外から補強されている。農家が収穫物を入れて運んだほか、農作業時の弁当入れ、買物籠とし...
『民具のデザイン図鑑』展出品の水嚢(すいのう)は本書には一切記載がない資料で、再度見学した際に、その部分に注視してみた。先にも一度紹介してみたけれど、 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1170.htmlあらためて部分を拡大してみたらこんなかんじです。 ● スクイ 長野県上水内郡戸隠村 木、竹 480×200×50ミリ1本の木の枝をU字型に折り合わせた柄をもつ水嚢。竹ヒゴは皮竹面を外側に編む。網面...
● トリノス(背負籠) 木、稲藁、蔓 W632×D510×H695ミリ 広島県山県郡戸河内村 (現・安芸太田町)『民具のデザイン図鑑』展に出品されていた、このU字型の木の枝を枠に組んで仕上げた一風変わった背負籠にはこんな解説がつく。「中国山地中部では、稲藁やつるを木の枝に巻き付けた背負い籠が使われている。当資料は『トリノス』(鳥の巣)の名の通り、すき間をあけた編み目が魅力で、藁の背中当てとの組み合わせは竹籠にない...
「民具のデザイン図鑑」展 本日で前半展示期間終了 昨日観に行ってみたらこんなチラシを発見すでに定員オーバーで参加できずで残念無念とほほ・・・・・・・ ● ワークショップのちらし ● ちらしのデザインは、 この熊手に触発されたのだろうなぁ ● 酉の市もそろそろ終い ● 最後の〆で開運にっこにこ!...
図書館の新着本にあった食品本。ただのチーズ本と思いきや、ええっ、よく見たらなんと“ダニ”チーズである。ダニのイメージは、アレルギー性のハウスダストなどを引き起こす要因となる不快なもので、さらにもぞもぞと蟲がわいて蠢くその様にうず痒さをおぼえるような嫌なものばかり・・・・・・・・。ところがダニを活用し、美味しくしあげるチーズが、ドイツとフランスにあるらしい。動物分類学・ダニ学・昆虫を含む節足動物学の広範囲な...
このところ写真に撮られた蓑・背中当をみています。今回は『宮本常一と写真』コロナ・ブックス 2014年より宮本常一による「東北各地へのオシラサマ調査旅行」昭和15年(1940)の戦中の貴重なスクラップブックよりピックアップしてみました。小さな一枚ですがよくみると、時代的にも現代のような新素材の着衣が浸透する以前のワラ細工の民具が労働着として活躍しています。 ● スクラップブック 宮本常一『宮本常一と写真』コロナ・ブ...
さきに写真家・濱谷浩が1956年に撮った新潟・十日町の雪蓑<ミノボシ>を紹介しましたが。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1174.htmlその後いろいろな本をみていくと、おなじ時期に岡本太郎が撮った秋田の写真のなかに、よく似たものがありました。芸術家としての堅固なイメージの太郎ですが、戦前はフランスで民族学(文化人類学)を学んでいます。そして1957年よりの、芸術新潮「芸術風土記」の連載では...
● 灯油ストーブ 径265×高さ520ミリ 「VALOR №207」小さなストーブに、本年も薬罐をのせてスタンバイ! ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-595.html ● 灯油ストーブ「VALOR №207」 小さな1インチ芯は、 この季節ならではのすぐれもの。 青いブルーフレイムの炎です ● 灯油ストーブ「VALOR №207」 内部タンクは着脱式 ● 灯油ストーブ「VALOR №207」 このカラーリングと小ささが気に入ってます。...
酉の市の季節です。残すところは二酉:11月16日(水)三酉:11月28日(月)コロナ以来人混みを避けて、とんとご無沙汰だったけど。活気とご利益にあやかりにいさしぶりに出かけてみようかな! ● 『民具のデザイン図鑑』より 現実との交わり 福箕・熊手 解説 「日常生活で用いる道具の中には、ものをすくったり、集めたりするものがたくさんあります。そうした道具は現実の液体や穀物などを入れるだけではありません。目に見えない...
● 木地玩具・嬰児籠 『民具のデザイン図鑑』より日本語の“かわいい” が、世界のことばとなって歩みだした現在。今回の図鑑の解説にも、その造形のもつ“かわいさ”について若干触れている。そんな表現が記された項目が、木地玩具と嬰児籠である。木材をロクロ成形でもって仕上げた玩具“木地玩具(きじがんぐ)”には、独楽や車、単純なからくりでもって素朴に遊ぶもの、幼児などちいさな子どもの姿を写したものがおおい。そして図...
前回述べた新潟県十日町の雪蓑<ミノボシ、クラノカブリモノ>は、フードを被るという点では、笠と蓑を兼ね合わせた被りものといえる。被り物のなかには頭に被る以外にも、背中をすっぽりと覆うように被るものもみられる。ネパールや台湾のこれらの民具は、労働の際に背に着ける雨除けも兼ねた日よけ蓑の類ながら、カゴのようにかちりと編んでいるから、むしろ“背笠”とよべるものだろうか。柔軟な草編みの蓑よりは、このように笠状...
● おなじかたちの雪蓑が!久しぶりに昭和の子供を撮った写真集をみていたら ↓★162 『写真家が捉えた 昭和のこども』先日観た『民具のデザイン図鑑』展にあった、№002 新潟・十日町の蓑蓑帽子<クラノカブリモノ=蔵の被り物>とまるでおなじかたちの雪蓑が写っていた。濱谷浩 撮影 新潟県・十日町猿蔵 昭和31年(1956) 「小正月の旧暦1月14日の夜、新しいミノボシと雪沓で、いそいそとホンヤラ洞(かまくら)に向かう」図鑑で...
白樺の並木が身近にあった子どもの頃。祖父の家の五右衛門風呂の焚き付けには白樺の皮が混じってみられ、紙のように薄く皮を剥いでは遊んでいた。 ● 『カバノキの文化誌』より薄く剥がした樹皮を、古くより紙代わりに使用した。『カバノキの文化誌』 アンナ・ルウィントン著 原書房 2022年 を読んでいて薄く剥いだカバノキの樹皮を、古来より紙がわりに用いたことが知れた。 ● 『カバノキの文化誌』よりアイスマン「エッツ...
『民具のデザイン図鑑』と、その展示をみていて、やはり蓑などの着衣の民具は、実際に使われている写真が一枚添えられてさえいれば身に着けた様子もすんなりわかるのに・・・と思ってしまった。ということでいつもの合わせ癖今回展示されていた4点の蓑・背中当て(図版)とそれに該当する使用例の写真(モノクロ)を、『忘れえぬ戦後の日本』薗部澄写真 神崎宣武解説 ぎょうせい 1988年より探してみました。ひさしぶりに開いた写真集昭...
● 箕6種 本日11月3日は、語呂合わせの響きよく「いい箕の日」。5年前には東京文化財研究所にて、「箕サミット」なるシンポジウムが開催され、箕研究会が発足した。毎月3日は“箕の日”にしようというYさんの提唱のもと、これまで簡易ながらもいくどか箕にふれてきた。『民具のデザイン図鑑』を開くと、こんな6種類の箕が紹介されていた。皮箕、藤箕、竹箕、ほかにも木質のイタヤカエデ、マタタビを主素材とする箕がならんでいる...
先日観た美大の『民具のデザイン図鑑』展の2会場の導入口にはこんな水嚢(すいのう)が並んでいた。「水嚢とは:柄のついた笊(ザル)。手付き笊、水切り笊、麺揚げ笊、揚げ水嚢などと呼ばれ、竹や木を曲げた枠と柄に、竹籠や金網装着して製作します。」の一文はあるものの図録もキャプションも、資料データーや写真の記載が一切ないので、これはどこのものかとしかたなく民俗資料のデーターベースにあたってみた。水嚢は、笊に柄が...
● 『民具のデザイン図鑑』展 武蔵野美術大学 美術館展示室1 編前回にひきつづき美大での民具展。今回は美術館の会場でのようすです。民俗資料室ギャラリーの展示での着用具、竹製品、やきものなどとは異なりこちらでは縁起物、玩具など鮮やかなものが多く民具の映像も多用され、よりダイナミックな演示方法です。また美術館では、彫刻展も同時開催中でした。 ● 『民具のデザイン図鑑』展 展示風景バナー写真(下)は民具...
● 『民具のデザイン図鑑』展 武蔵野美術大学 民俗資料室ギャラリー/美術館展示室Ⅰ東京都小平市前期10/24-11/20、後期12/5-12/24 <* 水曜休館>『民具のデザイン図鑑』の刊行にちなみ、二会場で開催している美大収蔵の民具の数々。民俗資料室ギャラリーの会場では小展示ながら、おもにカゴ類ややきもの、労働での着用の民具を展示している。その多くは収集後ゆうに半世紀を経ており、とくに竹や藁などの自然素材の民具では人々...
● 飯能さんぽしてみました。 2022年10月23日比較的近場とはいえ、飯能に来るのもほんとうにひさしぶり。前のときには自転車で手早く巡ったけれど、今回のように少し歩いてみたら、町の雰囲気も多少なりとも良く分かりしっくりとくる。町をぶら歩く愉しみは、やはり昔を感じさせる町の面影を見つけること。明治44(1911)年の大通りと、現在の街並みを比較してみたらどうだろうと、博物館の古写真に見入ってみる。 ● 町なかにみ...
● みちくさあん・小石川植物祭連動企画「いと になった くさ と き」展 文京区白山 gallery KEIAN にてみちくさあん(山本あまよかしむ)の小石川植物園でのワークショップと兼ねた企画。今回は、植物園内で採れる8種類の植物で繊維にし、その糸で編んだ作品の展示即売会。ギャラリーではその8種類の標本を番号付けして、植物園内にある実物を探してみるというもの。選ばれた8種類はいずれも衣服や道具などに実用とされる...
● 茶鋏 映画『そして、私たちは愛に帰る』よりトルコ系ドイツ人 ファティ・アキン監督の映画『そして、私たちは愛に帰る』は、ドイツとトルコを跨ぐ、すれ違いの物語である。映画の最後のシークエンスでは茶畑が登場し、茶摘みする女性が大きな袋が付いた茶鋏を使っていた。トルコと日本、国は異なっていても茶摘みに使う茶鋏はまるで同じかたちをしている。ただトルコのそれは、お手製のチェック柄の袋がどこか可愛らしく目を...
● 『夜行列車』 イエジー・カワレロウィッチ監督 ポーランド 1959年むかしのポーランド映画を視ていたら、車掌が首から提げている安全灯が気になった。筐体に被さる熱除けの丸屋根、光源を前面に拡散させる円形の反射板、空気取りの小孔など、家にあるカンテラにどこか通じるかたちである。イエジー・カワレロウィッチが撮った『夜行列車』は、夜行列車の閉鎖的な車内に乗り合わせた者の人生模様を描いた作品である。彼...
● 木の名の漢字先日寄った「家具の博物館」の解説シートにあったのが、こんな“木の名の漢字”表。「あなたは、いくつ読めますか」と記されていた。なんだか小学生の漢字ドリルのような気分で挑戦する。オウチヌルデ、オウチ、ヒサカキ、ムロの4種はまったくはじめて知る樹種。それ以外は、どこかで聞いた名前のものばかり。道具の部材や建材、そのほか人の生活にまつわる様々な木の名の漢字に、しげしげと見入る。通常認識している...
● 家具の博物館 東京都昭島市コロナ以来ひさしぶりにフランスベッドの家具の博物館へ。開催されていたのは『西日本の衣裳箪笥』展。松本、名古屋、武生、三国、京都、大阪、近江、三重、出雲、石見、山陰、広島、大川、北九州などの和箪笥(江戸末期~昭和時代)が23棹セレクトされていた。杉、欅、桐、樅、黄肌、黒檀、桑、クサマキ、黒柿などさまざまな材の用い方とともに、飾り金具などの意匠に地域性がかんじられ、どれも...
● 液温計 長さ150ミリセィフティーライトの赤い光りの元、時計の秒針とにらめっこ。空白の紙面にうっすらと像が現れ、しだいにくっきり定着していく。どこまで押すかが勝負どころ。現像液のバットにはこんな液温計が沈んでいた。露光・時間・温度の3要素が複雑に絡み合い、1枚のプリントが完成する。暗闇のなかで過ごすひとときは集中を要し、時計の秒針の進み具合も、ときには速くときにはずいぶん間延びしてと、けっして一様...
● 金唐紙 (再現品) 140×230ミリオランダ渡りの革製品金唐革(きんからかわ)をヒントに、日本で素材を紙に置き換えて独自に発展させた金唐紙(きんからかみ)という擬革紙がある。明治期には産業化し欧米へも盛んに輸出され、昭和初期に工場とともにその技術も消失する。 ● 旧日本郵船株式会社小樽支店 貴賓室の壁紙には金唐紙がつかわれているいまでもときどき古い洋館などの壁紙に、金唐紙がつかわれているのを目にするこ...
● 『アーツ・アンド・クラフツとデザイン』 府中市美術館コロナ以来ひさしぶりに府中市美術館へ。本日はフリー・デー、開催されていたのが『アーツ・アンド・クラフツとデザイン』展“ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで”というもの。アール・ヌーヴォー的なデザインも好きなので、英国のおなじ頃のデザイン運動にも興味がある。インスタ映えを狙ったものか、会場のサインボードなど結構趣向を凝らしてお...
● ウィローパタンの皿 映画『フレンジー』よりヒッチコックの映画『フレンジー』では、事件の確信に迫る警部と、その妻との食卓でのやりとりがおもしろい。料理に凝る妻が仕上げた豚足料理の取り皿は、よくみたらウィローパターンの皿だった。 ● 料理を褒めつつも口のなかの豚足がもたつき、 妻の居ぬ間に皿に吐き出してしまう警部。 映画『フレンジー』よりシノワズリーのブームが興った19世紀初頭の英国で、東洋由来...
● 袋 インドネシア 130×130×高さ240ミリスマトラのカバンジャヘの市場では、こんな葉編みの袋が買物で使われていた。素材はなんだろう? ヤシの類ではあるとおもうけど・・・・網代でもって緻密に編まれ、米粒ひとつ逃がさない。 ● カバンジャヘの市場(1992年撮影)と袋。網代編み角底で、こんなふうに畳んで販売されていた。あれから30年、市場で幾つも求めたこの葉編みの袋も、いま手元に残るのはこの小さな一枚きり。スーパー...
● 雁爪(がんづめ) 巾165×長さ190×165ミリだれが名付けたものか、鳥の名前がついたこんな農具がある。アイアン・クロウ まさに 鉄の爪。4本爪、備中鍬にも似ているけれどこちらは手鍬の類。特徴的なのは、柄が極端に短く掌の握り幅しかないところ。柄が抜けないように“こみ”先を柄尻で折り曲げ、しっかり固定している。手がもつ“掻く”という機能をそのままトレースしたようなかたちである。畝間の中耕や除草では、細かくポイ...
● 箸置 67×33×高さ21ミリなんとも小さなものだけど、箸置ひとつあるだけで、普段のつましい食事もどこかしゃんとする。そして箸包みを捨てずに、その場で折り紙にして箸置を作ってしまう。食器の端に掛け置くのもありだけど、やはり卓上で箸を直置きしないささやかな抵抗として、このわずかな高さに安心する。木製で根付のように細かくリアルに仕上げた瓢箪の箸置である。瓢箪のおしりのぼっちや、蔓のとれた口の表情もじつに...
今回はサムネイルを散らしてみました。 ● 金属の物品や木製品Face Book のグループ 『昔の道具民具たち』に参加するようになって丁度まる2年となりました。それ以来このブログもそのグループ投稿に連動させ、それ以前のように、書きたいものを決めてから書面を仕上げていくのとは異なり。まずは写真を撮ってから、4コマ漫画のように写真を編んで、吹き出しをつけるかんじで簡潔な文を載せるスタイルに変わりました。グループ参...
● ペン先各種中学生の頃小遣いをやり繰りし、月にひと壜、W&N社のカラーインクを揃えていた。そして高校の美術では、レタリングが上手く描けず泣かされた。あの頃蒐めたインクはいつしか消失してしまうも、こんなペン先だけはまだ手元に残っている。いまでは一切使うことがないけれど、筆記具としての特性なのか、ペン先で描かれた文字のかたちがどこか美しく好きだ。 ● 『カリグラフィーのすべて 西洋装飾写本の伝統と美』...
● 屋根裏部屋の玩具コレクション アチック・ミューゼアム所蔵写真より屋根裏部屋に所狭しと郷土玩具が飾られた古写真がある。日本の民具研究の礎を築いた、渋沢敬三主宰、戦前の「アチック・ミューゼアム」コレクションである。一枚の写真から、郷土玩具の情報をどれだけ読み取れるだろうかと、この屋根裏写真の再現展示のサポートした。現存する資料は、オレンジ色の蛍光ペンでまずはマーク。消失した資料は、それがどこの郷土...
● 碌残美術館にて今朝、ラジオで流れていたのが、高村光太郎作詞による歌曲だった。四半世紀前の青春18切符の旅で、信州の碌山美術館へ行ったことがある。尖塔のある教会のような煉瓦造りの美術館に展示された、柔らかな皮膚をかんじさせる光太郎の彫刻も素晴らしかったけれど。それよりはむしろ、どこか東欧の民家を思わせる、離れのログハウスの佇まいが素敵だった。そして、そこには妻智恵子が病床で制作したという紙絵が飾...
● 容器 123×74×高さ80ミリ「敬老の日」、ごはんを食べていたら歯がぽろり。歯医者へ行くと差し歯に決まる。老化の歯目摩羅には抗えません。小さな施術台には、銀ピカのコットン容れが並んでいた。蓋がとれてはいるけど、この古びた医療容器も、そんな類のものだろうか。取り出し口は角と円。なかはバネ仕掛け底がせり上がるつくりです。よろしければ、こちらもクリック下さい! 励みになります。...
● (挟み?) 270×100ミリゴミを捨てに行ったはずなのに、連れ帰って来たものにこんなものがある。なんだか屑拾いの方御用達のような、何かを挟む道具である。いったい何に使うものなのだろう?歯先は一方が二股となり、3点でもってしっかりと固定するかたち。試しにチェブラーシカを摘んでみたら、お茶の子さいさい。 ↓ブログ№050 イメージの定着 チェブラーシカカメラの三脚や三っ脚椅子のように、3点支持は凸凹面で...
● ナイフ インドネシア 全長280<刃渡110×20> ミリいつだかバリ土産に頂いたのが、こんな片刃のナイフ。刃は切先にむけて微妙に反りがあり、柄の握りが随分長い。木彫に使うものと聞いたような気もするけれど、実用としてはどうなのだろう。ときどき調理に使ってます。アジアものの刃物では、なかには自動車の板バネなどを鍛えて作るものもあるというけれど、このナイフはどうなのだろうか。 ● 刃物 チベット、パボンカの...
● 錘 径35×40ミリ木製の糸巻に鉄芯が嵌ったこんな錘(スイ、おもり)がある。大きさは単2、重さは単1の乾電池ほどといったところ。放出された1点には金糸が残り、訊くと「組紐」で使われたものという。家ではお役改め、ペーパーウェイトとして活用している。 ● さまざまな組紐台 東京農工大学科学博物館 にて 中国雲南省の組台には、日本ではみられない陶製の錘がつく。学生時代の「文明論」の先生が、江戸時代よりつづく組紐...
● 四角い太鼓?その昔ある日の整理で現れたのが、得体の知れないこんなもの。太い木枠の桟に、革が片面鋲打されている。これって太鼓だろうか、そしてなぜこんな四角形なのかなぁ。現代でいうところの射的場だろうか、弓で的を射ってあそぶ“揚弓場”(ようきゅうば)<関東では“矢場”>では、的の背後に太鼓を設え、射抜くと音が鳴る“揚弓太鼓”なるものがあったと聞くけれど、これもそんな太鼓?のひとつだろうか。『喜遊笑覧』...
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前々回はネパールの、そして前回は古代の丸木舟について見たので、今回は現代の丸木舟を見てみよう。とはいっても、まわりには現役の丸木舟が見られないため、展示に限ったものなのですが。 ● アイヌの丸木舟と川漁 / 北海道博物館 2015年撮影(2015年に改称された) この年(2015)から博物館の名称も旧北海道開拓記念館より北海道博物館と改称され。アイヌに関する展示が一新し、アイヌへの教育普及の上でもより親しみやす...
これまで幾つかの縄文講座を聴講後、土器などに見るいかにも縄文然とした造形とはまた別に、一見地味に写る木製品の遺物についても、それがどのように加工され使われてきたのであろうかと想像を巡らせ、次第に興味を持つようになってきた。 となりまち東村山ふるさと歴史館のロビーには、下宅部遺跡出土の縄文時代の未製品の丸木舟がむき出しのままどーんと置かれており、当初はその大きさに圧倒されたものの、次第に慣れっこに...
● 丸木舟 ネパール、ナラヤンガート 1989年8月 撮影 丸木舟と裸ん坊の子どもたちが戯れた、そんな一枚があったなと探してみる。残念ながら見つけたのは、試しプリントの焼き縞が残った欠片のみ。逆光で子どもの表情が潰れており、川のスケール感もまるでとれていないけれど。それでも川面に舟を運び出す、あの時の子どもたちがはしゃぐ姿が活き活きと甦る。 ● 丸木舟の渡し ネパール、ラニガート 1989年8月 撮影 これま...
“読むを読む”と二重動詞のタイトルがつくこの本っていったいなんだろう?ということで元本である『土偶を読む』のいささかセンセーショナルな副題「130年間解かれなかった縄文神話の謎」をも踏まえ、『土偶を読むを読む』とを互読してみた。 まるで知らなかったけれど、『土偶を読む』は人類学者の竹倉史人が箸した、名のある学芸賞も受賞し、各界の知識人にも認められた一大ベストセラー本であった。これまで考古学者が土偶を考...
● 新宿区立「林芙美子記念館」 / 東京都新宿区中井 この建物は『放浪記』『浮雲』などの代表作で知られる作家・林芙美子が昭和16年(1941)8月から昭和26年(1951)6月28日にその生涯を閉じるまでに住んでいた家である。大正11年(1922)に上京して以来、多くの苦労をしてきた芙美子は、昭和5年(1930)に落合のこの地に移り住み、昭和14年(1939)12月にはこの地を購入して、新居の建設を始めた。 新居建設当時、建坪制限があったため、...
「世界の言葉でこんにちは!」博物館の懐かしもの展示に、日本万国博EXPO`70のチケットなどが並んでいた。なかでも企業パビリオンのリーフレットに、「明日の生活環境への試み」として、当時流行っていたSF映画にみるようなスペースデザインを取り込んだ、暮らしのシステムユニットが目を惹いた。日本の技術の粋を賭けた夢ある未来、全自動洗濯機よろしく、健康と美容に効果をあげる未来の浴槽「ウルトラ・ソニック・バス」なんていう製...
先日観た、プラハ在住の絵本作家『出久根育展』<武蔵野市立吉祥寺美術館> では、副題の「チェコからの風 静寂のあと、光のあさ」 とあるとおり、画面を通じて未踏の地チェコの物語や風物に触れ、はじめてながらもどこか優しく懐かしく、とてもあたたかい気持ちとなった。 エントランス・ロビー部分は写真撮影可能で、以前読んだ作家のエッセイ『 チェコの十二ヵ月 -おとぎの国に暮らす- 』の原画が展示されていた。原画の細部...
● 『葛と日本人』 有岡利幸 八坂書房、2022年 下:「大和国葛の粉製図」 本書より 酒井抱一の「夏秋草図屏風」の表紙が目を惹いたこの本には、よくみると秋草のなかに紫色の花をつけたクズが美しく描かれている。 本書では、クズの植物誌、古典文学や詩に詠まれた葛、葛の民俗、葛布、はたまた異常な速度で繁茂して現代の生活を脅かすクズ害についてなどと、あらゆる側面から葛と日本人の関わりについて紹介し考察している...
● 『そば猪口の文様 絵解き辞典』より 図書館の新着本にあったのが『そば猪口の文様 絵解き辞典』。そういえばうちにもあるなと、食器棚より出してみる。 ● うちの「そば猪口」 家のそば猪口は、簡素な模様のシンプルなタイプばかりで。そのうち無地のものを2点含み、実はこれが一等気に入っている。無地ゆえにコップのような器形の美しさが際だち、清酒を入れて光にかざすと微妙に磁肌に透けて見える光景がたのもしい。本書...
先日観た清瀬市郷土博物館の民具展示では、布裂(ぬのきれ)がおもしろかった。いまのくらしではほとんど死語となり、どこかしら汚ならしくすら思えてしまう“ボロ(襤褸)”ながら。こうしてガラスケースに展示され、視点を変えてしげしげと一枚一枚を観察すると、一片の裂のなかに、さまざまな要素が凝縮されて見えてきてとても興味深かった。ボロの展示では、かって浅草にあった「アミューズ ミュージアム」の展示が一風変わっていて印...
数値にレバーを合わせ、ハンドルを回すと「ガラガラガラチン!」と鳴る機械式計算器は、地域の博物館の「むかしの道具」コーナーなどで、ときどきお目にかかる道具である。いまではそのアナログ的で一風変わったかたちが、子どもたちの目を惹く人気のアイテムとなっている。 機械式計算器での計算は、ソロバンでの珠算のように特別な習熟は必要とせず、誰しもが直感的な感覚でもって基本操作さえ行えば、難なく正確に答えを導くこと...
● テンバコ 675×405×高さ80ミリ 何故か家にあるのが、「地質學教室」の焼き印が押されたこんな古風なテンバコ。 90年代後期に東大・本郷キャンパスにて開催された「ヴンダーカンマー・驚異の部屋」展では、東大の所蔵する膨大な学術資料・標本を高名な海外デザイナーが参入し、「古きに新しさを見る」とでもいうのだろうか、古風な物品が現代風にお洒落にアレンジされた展示構成で、当時はその演出がとても斬新で魅力的...
となり町の図書館への道すがら、葬儀店のウィンドウにずらりと並んだ骨壺見本が気になっている。いつかしっかり見比べてみたいと思いつつ今回も見送ってしまった。普段は気にもとめない“葬い”もの、図書館にこんな本があり読んでみる。 ● 『葬いとカメラ』 金セッピョル、地主麻衣子 編 左右社 2021年 文化人類学・宗教学・社会学の研究者、映像アーチスト・彫刻家などが集い、“葬い”にちなんだ映像作品を視聴しての対談集...
家で使っているのが、こんな箒(幅180×230ミリ)と塵取(幅225×350ミリ)です。とあれ本来はそれぞれ別ものとして作られた道具です。小さな手箒はゴヨウマツの葉を束ねたヴェトナムのもの。韓国の道具にも、ゴヨウマツの葉を円錐形に束ねた刷毛のようなものを見たことがありますが。こちらはヴェトナムの木版画「ドンホー版画」の刷りに用いられる撫で刷毛で、いわばバレンのように使うもの。2分れ3カ所を結び竹箆で押さえ平らにさせた末...
台湾の歴史的建造物にみられる和製マジョリカタイルを考察した、台湾人著者によるこんな一冊をみつけた。副題には「台灣老花磚的建築記憶」とある。 ● 『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』 康鍩錫 TWO VIRGINS 2023当初は英国のヴィクトリアン・タイルの模倣品として製造された日本のビクトリアン風彩色タイルは、通称和製マジョリカタイルともよばれ。後に海外への輸出品へと販路を拡大し、それぞれの地域への市場に向けてさま...
● バングラデシュのリキシャ 『うるおうアジア』展<中村研一記念 小金井市立 はけの森美術館>にて 日本発祥の人力車とリヤカーの長所を、自転車にうまく纏めた“自転車型力車”は、東南アジアや南アジアなどの地で、いまでも庶民の足として大活躍している。先月観た福岡アジア美術館収蔵作品の巡回展『うるおうアジア』展<中村研一記念 小金井市立 はけの森美術館>でも、数ある作品のなかで一番目を魅かれたのが、このバング...
この新春はひさしぶりに昭島の拝島大師の“だるま市”へ行ってみました。コロナ禍も幾分落ち着き、初詣の凄い人混みにすっかり押され、今回は系統立てた「だるま分析」はいまひとつ振るいませんでした。近年ではアマビエをアレンジしただるまも登場したとのことですが、そちらは確認できず終い、それでもいくらか新種の変わりだるまがありました。こちらは前回のときの“だるま考察”の記録です。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2...
● 『鍵盤ハーモニカの本』 南川朱生(ピアノニマス) 春秋社 2023年 自分もこの写真の時代は小学生だったはず。 ** 鍵盤ハーモニカのかわりにトンボ・ハーモニカを添えて** モラトリアムな時代のあの日、不思議ちゃん女子がくれたカセットには“曲:ピアニカ前田”と書かれていた。小学生の音楽の時間、黒い唄口や蛇腹のホースをくわえ、演奏の度に内部で結露した唾液を吐きだすピアニカが、どこか不潔で嫌だった。「トホホ、...
前回は鷹匠の道具について触れてみたけれど、鷹狩りはどのように行われるのかについては、まったくもって知識ゼロの状態。そんな理由で図書館にあった書籍や動画にあたってみた。日本の鷹狩りの伝統は徳川幕府の下、各大名が庇護し研磋琢磨を重ね粋を究めたものの。幕府解体後それらのシステムが一旦崩壊し、明治を迎えあらたに宮内省が鷹狩りを管理するようになる。 そんな天皇の鷹匠をされていた諏訪流の鷹師の方の伝記本や、...
上京した頃の最寄り駅は、江戸幕府の鷹場(たかば)の名残りをとどめる「鷹の台」という場所だった。東京の西域多摩地区にはかって幕府の広大な鷹場が拡がっており、近在の博物館の近世の歴史展示にも鷹場に関するコーナーが設けられている。とはいえ鷹狩りに関わる鷹匠(たかじょう)が用いる道具についてはこれまで一度も見たことがなかった。この度 瑞穂町郷土資料館にて『オオタカ -鷹とその文化- 』展があり、江戸時代には尾...
● アイロン 120×55×55ミリ先日 友人の引越の手伝いで冷蔵庫を塗り替えた。部屋の中でどこか浮いていた白もの家電が、ぐっと渋くマットなブルーグレイに甦った。プラスチックの素材感 カラーリングなど、いまの家電は機能は優れていても、触手をくすぐられるものが余りない。それに反して製品の質は劣るも、ひところの昭和家電のデザインに好きなものがおおい。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-503.htmlこ...
巷に溢れる便利グッズって、実のところどれほど便利なのだろう・・・・ ● 木柄にボルトとナットで仕上げたミャンマーの栓抜き 25×175×30ミリミャンマー土産で頂いた栓抜きは、モアイのような木彫りの把手になんとボルトとナットで仕上げている。なんともふざけた風情で自分ではまず選ばないような栓抜きながら、このかたちが意外と便利と知る。梃子の力点と作用点の兼ね合いから、王冠を抜いてもまったく疵がつかないのである。...
● 『戯れる江戸の文字絵』 ヤン ショオジェ著 マール社 2022年「へのへのもへじ」のように、画面のなかにその人物をしめす仮名文字がたくみに組み込まれた図絵に見入っている。原本は十返舎一九『文字の知画(もんじのちえ)』登場人物は、江戸の町で働く商人や町人を中心に、花街の人々や旅人、武士、また町中をあてもなく彷徨う者など、老若男女総勢41人に犬1匹・・・・・・・当時の庶民にとっては当たり前に読めた、ただの平仮名の...
● 『アジア「窓」紀行』 田熊隆樹 著・写真 草思社 2022年図書館の新着本にあった一冊は窓の写真のオンパレード、その名も『アジア「窓」紀行』副題の -上海からエルサレムまで- とあるとおり若き建築学徒が撮ったアジア各地の建物の魅力的な窓の写真で溢れている。かって自分が歩いたアジアの地域と重なる場所は少ないのだけどそれでもイランのエスファハンの金曜モスク内を撮った一枚は自分も同じようなアングルの写真(...
● 刀杼 595×60×厚み32ミリ仲間と離れぽつりと古物に流れていた機具(はたぐ)が目を惹いた。古いかたちの杼の刀杼(とうひ)である。一枚の布をしっかり織りあげるには、いったい幾度こんな杼を往復させるのであろうか。ぴんと糸を張り長らく打ち込みつづけたものか杼にはその証しのように糸目の痕跡がしっかりと刻まれている。タイのカレン族の村でみた地機織りの様子を参考に添えて・・・・・ ● 地機 タイ、メイホンソン州 1989年...
● 小皿 ヴェトナム 155×高さ33ミリ桜が散ると一気に新緑が萌えはじめ淡い緑が眩しいヴェトナムのバッチャン焼のうつわは友人からの土産品ちょっと前の屋台でも使われていたものだろうか焼が甘く貫入もほどよくはいり使い古された地肌の風合いは好みだけれど器面には日本のやきものではちょっと見かけないような大胆な筆致と彩色でもって花が描かれている咲き始めた山吹を添えて・・・・・・...
● 栓抜 85×40ミリ散りゆく花のもとコップに泡をそそぐ相棒のヱビスの瓶じゃないけれど福の神にあやかりこんなかたちの栓抜で!...
● 計数枡 220×120×45ミリ 覗き窓四角い枡を押しつぶしたような歪な菱形のこんな枡がある。なにかの余材を転用したようなアルミっぽい鋳込みの合金製。1層100個、5層で500個を数える覗き窓が側面につく。まるい玉を計るにはざくっと掬い、鋭角の隅よりきれいに放てるこの形状が理に適っていたのだろう。この枡も日本の娯楽文化ならではで独自に生まれたかたちかもしれない。1発打ちのあの時代、この1枡でいったいなにに替...
● 角皿 173×132×高さ25ミリ近所の農家へ野菜を買いに行ったはずが、こんな角皿があったのでチャリンと100円入れて連れ帰る。郷里の祖母の家にあったようななんとも昭和チックなうつわです。今日から4月の新シーズン、とはいえ昨日とまるで変わりばえしないスタート。せっかくだから新シリーズとして、モノが生み出す“模様”に特化していきたい。描かれた舟のように、帆に風をおおきくはらみ新たな海原へ歩みだそう・・・...
● 『賢明』 ピーテル・ブリューゲル 224×298㎜、ペンとインク、1559年 ブリュッセル王立美術館蔵ブリューゲルの目玉作品『バベルの塔』を東京都美術館で観たのはもう6年も前のこと。蟻粒大の人々が建設現場で蠢くその筆致の緻密さに目を奪われた。とはいえそれは3DCC映像(拡大複製画)によるもの、視力の落ちた肉眼ではいくら実物を前にしても到底無理であった。それに反して同時に出展されていたペン画や版画の数々は...
お酒を持って一人お花見へ、めざすはとなり町の都立東大和南公園。満開の桜に囲まれて、花壇や周囲に巨大な碍子(がいし)がオブジェ風に配置されたシンボル的な建物がある。旧日立航空機株式会社変電所の建築で、戦中に戦闘機からの機銃掃射を受けた悲しいほどにあばた顔の外観である。それは東大和市指定文化財(戦災遺産)とされたこんな建物である。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-357.html絶縁器具の陶磁器...
● へら 18×長さ175ミリ朝のラジオで片付けコーディネーターが「検索すれば済むことでしょう・・・捨てましょう!」とさかんに“検索”を連発。たしかにネットは便利で一理あるけれど。やはり紙もの資料はとっておきたいし、モノとの出会いや取捨選択は効率だけではつまらないと思っているから、“何でも捨てましょオバサン”のその発言が気になった。しょぼけた道具ながらも、前回は“○”のかたちだったので、今回は“-”ものの紹介です。...
● 芯切り 径70×9ミリお酒を持ってひとり花見の予定が今日の雨で流れてしまった。ストーブもそろそろしまうつもりだったけど今日は寒いからひさしぶりにたいてみよう。むかしの灯油ストーブはシンプルなつくりながらメンテナンスにはこんな綿芯切りが必要だった。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1178.htmlわずか1インチ芯用のこんな小物をネットが普及していなかったころさがしだすのに随分苦労した。ブ...
先日のタイル展では導入口にあった世界のタイルの変遷でイスラームタイルの一群が目を惹いた。 ● イランの旅でみたタイルの数々 1997年撮影かって駆け足で見学したイランの旅では、モスクなどに多用されている装飾タイルの華麗さに目を瞠った。まるで万華鏡を覗くように、精緻な幾何学文に草花文、コーランの聖句が記された流麗なアラビア文字が複雑に絡み合い一体となり生まれる装飾タイルによる絵曼陀羅。プルシャンブルー、...
いよいよ花見の季節の到来です。今年はいち早く開花のもよう、ぽかぽかの陽気に誘われて久しぶりに江戸時代からの桜の名所、小金井公園の江戸東京たてもの園へ行ってみました。目指すは大好きな建築のオーナメントともなるタイル『 日本のタイル100年 -美と用のあゆみ- 』展です!(2023年3月14日) ● 『日本のタイル100年 -美と用のあゆみ-』展 江戸東京たてもの園 / 東京都小金井市 会期 2023/3/11-8/30本展は、...
子どもの頃実家の玄関には父が蒐めた古銭の額が飾られていた。楕円形の天保通寶以外は、いずれもドラマで銭形平次が飛ばす投げ銭のようなどこか冴えない一文銭の類である。父亡きあとは物置に放されており、いつだか帰省の折に持ち帰ってみた。ながらく部屋に放っぽったままだったけれど、図書館に寛永通寶の本があり、この度よい機会と借りて軽い気持ちで分類してみるも、素人にはあまりに複雑でハードルが高すぎてお手上げだ。 ...
● ケロシンストーブ ネパール 220×276×高さ139ミリ前回は、珈琲とスェーデン製のクラッシックなケロシンストーブの紹介でしたが。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1224.htmlこちらはおなじ加圧式でも、どこかチャイが似合う、ネパールのもう少し雑多な造りのもの。カトマンドゥでは王宮前のバサントプルを定宿とし、毎朝広場の路上で飲む一杯のチャイを無上の喜びとした。そんな熱々の本式のチャイ...
● リュックサック チェコお気に入りのチェコ映画にイジー・メンツル監督『英国王給仕人に乾杯』 2007年 がある。ホテルのレストランで給仕される料理の数々、食器やカトラリーのいずれもが素晴らしく。食の映画としても充分楽しめるおもしろい作品だ。 この度、原作であるボフミル・フラバルの『わたしは英国王に給仕した』 を読んでみた。「これからする話しを聞いてほしいんだ」に始まり「満足してくれたかい? ・・・おしまい...
今日はたのしいひな祭り~♪実家にあった五段飾りのお雛様を飾っていたのは、姉が小学生の頃までだったか。晴れ着姿の着物にぱちくりと化粧されて得意げのポーズできめた姉の写真がむかしのアルバムに納まっていたはずだ。あのお雛様はすでに家には無いはずだけどいったい何処へやったのだろう・・・・・・いつだかの市で、古いお雛様が出されていたことがあった。江戸時代のものだろうか時を経てここまで辿り着くまでにいったいどういう...
● 小平市ふれあい下水道館 東京都小平市わが町の博物館は一風変わったテーマの地下潜行型で『ふれあい下水道館』という。その名のごとき地下5階は府中街道真下にある下水道に直結しもわっと饐えた臭いの下水道(直径4.5m)を間近に体感できる。 博物館の特別展では、やはりそんな下の関連でかため「トイレグッズコレクション」 展が開催されていた。あの有名な中国のおまる“馬桶(マートン)”をはじめ世界各国のおまるがずらりと並...