前々回はネパールの、そして前回は古代の丸木舟について見たので、今回は現代の丸木舟を見てみよう。とはいっても、まわりには現役の丸木舟が見られないため、展示に限ったものなのですが。 ● アイヌの丸木舟と川漁 / 北海道博物館 2015年撮影(2015年に改称された) この年(2015)から博物館の名称も旧北海道開拓記念館より北海道博物館と改称され。アイヌに関する展示が一新し、アイヌへの教育普及の上でもより親しみやす...
古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。
どこか昭和を感じさせる生活道具や民具が好きです。”雑閑”では日々の雑記・展覧会・読書・映画・フリマ・骨董市などでの感想を、”モノがたり”では部屋のガラクタを、”一枚の写真”では昔の旅写真などを載せています。つたないモノコトの紹介ですがお愉しみください!
● 種紙 350×225ミリ1から28までの数字がずらりと並んだこれは、閏年の2月の暦かと思いきや。蠶(かいこ)の卵を産み付けた「種紙(たねがみ)」というもの。かっての日本の殖産興業の要ともいえた養蚕は、良質の絹糸を製造するのに多大な技術投入がもたらされ、明治時代にはこんな種紙を生みだし、厳重な管理のもと丈夫な毛蠶(けご)を孵化させた。件の種紙は二化性五大洲という蠶のもので、大正6年 長野県植科郡の種屋による製...
● シクロと自転車 ヴェトナム、フエ 1995年3月30日うだるような炎天下、路上にあったジュース屋でココナッツを割ってもらい飲んでたら。配送のシクロがココナッツ満載でやってきた。「あっあぶない!」と思いきや、シクロと自転車が正面衝突。自転車は無惨にも前輪がぼっきり折れてしまいシクロの勝ち。烈火の如く激しい口論がなされるが、店主をはじめだれも自転車のおばちゃんをフォローせずに完全無視。...
● 湯たんぽ 150×230×高さ105ミリ冬将軍到来、今年も湯たんぽの活躍です。プラスチック製、ブリキ製の湯たんぽをダメにしていらい、すっかり陶製湯たんぽ派となりました。蒲団のなかでの取り回しは重く不便ながらも、慣れるとこれはこれで結構使い勝手がよいです。骨董市で100均の山に埋もれていたものなので、なかにゴミがみっちり詰まっていて閉口しましたが、洗えば新品同様にきれいになり一向に問題なし。錆びた清酒瓶の栓...
● しめかざり 北海道旭川市 2009年12月『藁を綯い、春を寿ぐ しめ飾り 造形とその技法』 ことほき 誠文堂新光社 2019年『しめかざり 新年の願いを結ぶかたち』 森須磨子 工作舎 2017年新年を迎える寿ぎにふさわしく「しめかざり」本が図書館にあったので、こんな2冊を借りてみる。こうして本書をみていくと、しめかざりには地方ごとに実にさまざまなかたちのものがあり驚かされる。そして藁を束ね綯うことによって生まれ...
● 刷毛 幅89×長さ235×45ミリ年末のこの季節、家庭用餅搗き機が普及しだすその前までは、田舎の祖父の家の土間に臼を置き一家総出で餅搗きをしていた。朝からストーブを丸形の大型のブリキ製のものに替えて、そこに角蒸籠を何段も積んで米を蒸しての一日作業。腰をいれて杵をめいいっぱい振り下ろし、臼にべたつく餅を水をつけてはなだめる合いの手が入った。こうしてできた搗きたての餅はおもしろいぐらいコシがありよく伸びた...
● 人参飴箱 池山製菓古風な食品ラベルにどこか惹かれてしまう。図書館の新着本にあった『木箱ラベルの時代 昭和のくだもの』を開いてみると、自分の世代よりも古いものが多いながらも、どうしてこれだけ懐かしくかんじてしまうのだろう。柿も柑橘類も育たぬ北国では、たしかにリンゴは大鋸屑に詰められた木箱に納まり、本書にあるような素朴なイラストの褄ラベルが貼られていた。ミカン箱のほうは気付くとすでに段ボールの時代...
● 塵取 幅300×長さ485×270ミリそろそろ年末大掃除の季節。外掃きで活躍するのが、ちょいと長柄のこんなくたびれた塵取。ブリキの器体には桜のエンボス模様、木棒を雑多に釘付けしている。柄は経年変化で少し曲がってはいるけれど、実用使いには問題なし。ちまたに販売されている塵取はたしかに性能に優れ便利だけど、箒同様になかなかコレといった品物がみつからない!こちらは座敷用につかっている塵取 ↓ブログ№520 ...
● 聖母像 イタリア 径50×高さ125ミリ幼稚園はカトリックの聖母幼稚園、百合組。小さなころは手をあわせ、こんな聖母像に祈っていた。ひさしく教会へも行っていないなぁ。こちらも実家にあった聖母子像。 ↓ブログ№618モノがたり _053 聖母像 ● こちらは父の葬儀の際に出会った聖像よろしければ、こちらもクリック下さい! 励みになります。...
● 腰カゴ タイ、ホワイカローク 1992年2月8日なんとなくカゴに興味をもちだした頃。メーホンソン県にトレッキングへ出かけ、村でいらなくなったカゴをいくつか譲っていただいたりした。さらにメーソッドまで下り、ミャンマーとの国境までてくてく歩いていくと。偶然出会った村がカレン族の村ホワイカロークだった。素朴なこの村はどうやら新しくできた...
● 農夫 タイ、メラナー 1992年2月8日さきに観たの美大の『運ぶ』展では鉈カゴや砥石入れの類が数点出品されており。なかで1点海外の鉈カゴが紹介されていた。ラオスのもので素材にトウ(籐;ラタン)を折り曲げ仕上げていた。タケよりもトウのほうが柔軟性があり、材をならべその部材を縫い繋げば裂けて割れることもなく、このようなカゴづくりが可能である。クッション性もあるから、蛮刀ともいえるスタイルの鉈を放りこむの...
● 楊枝 92×7×厚み3ミリ本年も残すところあとわずか。クリスマス、忘年会のアイテムに「パーティを楽しく演出する・・・・・・」こんな昭和チックな楊枝はいかがだろうか。デッドストックの綴じ紙には“Family Party”と書かれ、ケーキを前に子ども達がほくそ笑んでいる。あのころはこんなバタークリームのホールケーキは超高級品だったなぁ。値札のシールは高島屋で、80円。まずは外形をこのようなナイフ型に削り、それから金太郎飴方式...
● 茶店 ネパール、ガンドルン 1991年2月トレッキングの最中に立ち寄ったグルン族の茶店。小屋のような薄暗い室内には、鍋釜などの雑多な道具が散らばっていた。中央の炉に設置されているのは酒の蒸留器。出されたロキシー(焼酎)は、薪で燻され濁り水のように薄く味気ない。さらに汚れたコップのなかには、円い胴に針金のような脚がつくザトウグモが沈んでいた。これまで試したロキシーでは最悪の部類だけど、それでも一時暖...
● 缶切り2種 大;72×50×20ミリ 小;68×40×20ミリ前回はイタリアの缶切りを紹介したけれど。 ↓ブログ№975 モノがたり _221 缶切りまるで切れなかったその理由は、ある方のコメントで紹介された動画より刃を水平に当て奥へ向けて押し切る、思いもしなかったその使い方が目から鱗であった。その点この2点の缶切りは、日本人ならだれでも馴染みのかたちの缶切りだろうか。刃を垂直に当て、手元に向けて引...
● 籃胎漆器づくり ミャンマー、ニューパガン 1994年11月19日以前ミャンマーのインワでの、籃胎漆器(らんたいしっき)の素地づくりを紹介したけことがあったけど。 ↓ブログ№694 一枚の写真 _089 籃胎漆器今回は加飾場面の写真です。使っているのは、V字型の蝙蝠傘の傘骨を加工した刀。そんな小さな刀を用いて、室内で女工さんが細かな装飾模様を熱心に彫り込んでいる。小学生ぐらいの歳から始めると、...
● 缶切り イタリア 幅38×165×18ミリ安物買いの銭失い!学生時代の初めての海外貧乏旅行、食費を安く納めようと、イタリアのスーパーでこんな缶切りを買った。なぜか同じものでも、これだけ半額だったのでラッキーと飛びついたまでは良かったけれど、結果は惨々たるものとなった。ともかく切れない、切り口が恐ろしいぐらいに毛羽立って危うく手を切りそうになる。半値だったのはどうやら左効き用だったのだろうか・・・・・・・・。捨...
さきごろ観た『運ぶ』展では、頭額帯をもちいる運搬籠が幾種類か紹介されていましたが。今回はそれに因んでネパールの頭額帯運搬の写真です。 ● スレートを運ぶ ネパール、ビグ 1990年12月カトマンドゥ盆地を東に超えたチャリコットから、かってはチベットまで続く塩街道だった山道を歩いていたら、尼僧院のあるビグ近辺で、屋根に葺く鉄平石のスレートを運ぶひととすれ違った。いくら薄いスレートといえどもそこは石である。...
● 『運ぶ 文化とかたち』 武蔵野美術大学民俗資料室近所の美大の民具展で運ぶ道具を観てきました。小さな空間ながら厳選された民具がならび、実際に民具が使われている様子を見るのとはまたべつものながら、道具としてのかたちがうまく浮かび上がるような、美大ならではのビジュアル重視のよくできた展示方法でした。 ● 頭で運ぶ、背負う、担ぐ、腰に下げる、手で運ぶ、風呂敷で運ぶと6分類をテーマに、各々の運搬の違いと道...
● 通り ネパール、ブンガマティ 1998年3月28日カトマンドゥ盆地内にあるこの小さな集落は、こんな細い路地が目抜き通りとなっていた。通りには平たい石のスレートが敷き詰められ、煉瓦造りのネワール族の伝統的な3階家が向きあっている。おりしも昼下がり、戸口の前に筵を敷いて座り、糸紡ぎなどして各々作業にいそしんでいる。どこか雑然と荒廃したそのたたずまい...
● 盆 径285×高さ20ミリ 蓋もの 72×80×高さ65ミリ先ごろ輪染み跡で黒く汚れた茶盆をいただいた。古いものではないけれど、これもいちおうは樺細工といえるだろうか。秋田出身の方だったらしく、郷里の物産を長らく愛でたのかもしれない。苦労して汚れを落としてみたら、磨かれたヤマザクラ特有の樹皮の光沢が甦った。合板を木地に圧着プレス成形した半ば工業製品ではあるけれど、樺皮自体は天然素材であり、家の生活...
● やきもの屋 韓国、慶州 1994年3月26日 米不足のこの年、来日していたネパール人を訪ねに宮崎へ行った。“青春18きっぶ”で挑戦してみたものも余りに長く、途中で息抜きにフェリーに乗って韓国へ寄ってみた。韓国はお隣の国とはいえ発酵食品などの食文化がまるで異なっていて驚かされた。もうすぐ4月とはいえ、異常に乾燥して底冷えが激しくインフルエンザにかかりダ...
● 蒐集家を真似てルーペごしに切手を覗く一枚の小さな紙標に、結晶のように緻密に描かれたさまざまな図柄。 そんな切手をただながめているだけで、どこか心がときめいてしまう。 ● 『 女王の肖像 切手蒐集の秘かな愉しみ 』 四方田犬彦 工作舎 2019 “THE WORLD OF DONALD EVANS” EISENHART 1980 2冊の本の合間に、 かっての旅で使いそびれた切手を散りばめて!さきごろ読んでみた『 女...
知らない人のお家に片づけの手伝いへ。現れたのが、昭和歌謡のレコードの山。歌番組全盛の昭和時代、そんな歌謡曲を聴く趣味はまるでなかったけれど。それでもラジオやテレビ、町のどこからか流れくる曲を聴き、あの歌のフレーズがなぜか耳に色濃く焼きついて離れない。こうして数あるジャケットを手にして眺めていくと、昭和歌謡は時代を如実に映し出す鏡のようでどこか憎めない気分となってしまった。 ● 端やんのギターは、 ...
● 得度式 タイ、シーサッチャナライ 1992年4月7日集落へ入る橋を渡っていたら、こんもりと大きなものが・・・・。やはり象のものだったのかと、その道先に着飾った少年を乗せた象が歩んでいた。白塗り化粧に黒のグラサンスタイルでちょっと意表をつかされるけど、これも仏教国タイのハレの日の入僧修養ファッションということで、よかれとしよう。 ...
● 缶切り 長さ35×15×13ミリとるに足らないような小物がときにおもしろい。そんなひとつに、こんな指先大のとても小さな缶切りがある。初期の時代の缶詰めは、まだ専用の缶切りなどがなく、鏨(たがね)で叩き切って開封したときく。それがいまやプルトップ式の開封が標準となり、さらに開け口の処理がなされた安全構造となり、誤って指を切って血をみることもなくなりつつある。この缶切りは、缶詰にそのまま付随させて流通させ...
● 読経 中国、西蔵自治区 ラサ 1997年9月6日ラサ市内の小寺を訪ねてみたら、香がたゆたう薄暗い院内で、2列に向きあいちょうど読経の最中であった。低く唸る声明の合間に入る鈴や太鼓、銅鑼の音に、どこかチベット仏教の密教がもたらすところの荘厳さを感じてしまう。頭に載せた被り物は、ブッダのような螺髪の冠に、観音菩薩にみるような装飾的な冠飾り、そして三つ編みにした付け髪を脇に垂らし併せたもの。 ● 不明の小片...
● 飯カゴ ラオス 190×215×高さ200ミリ前回紹介したミャンマーの飯カゴとおなじタイプのラオスの飯カゴです。竹製の網代編み、高台、被せ蓋、乳(ち)に紐通しと構成要素はおなじです。それでも、蓋のつまみや高台などにみられる装飾が微妙にことなるの点が、作り手のちがいを反映していてどこかおもしろいと思います。こちらは、かってタイで収集した飯カゴです。№135(左上)はカレン族のもの、ほかは荒物屋などで求めたもので...
● 背中当て 富山県五箇山 1997年頃育った時代と土地により、それまで民具とはまるで縁のない来し方をしてきた。あのときは民具資料整理のバイトをしていながらも、資料室の慰安旅行でこの地に訪れて、背中当てを使っている人の姿に初めて出逢った。同行されていた、高度経済成長期の末期に、日本各地の竹細工を探訪されていたKさんが、背中当てを着けたこの老人に声を掛けた。すると雪がとけだすようにするすると、民具を通し...
● 飯カゴ ラオス 80×162×高さ82ミリラオスの飯カゴで、一人前の大きさの弁当箱といえるもの。被せ蓋で楕円形のこの形状は、日本では木製の曲物のワッパや、キコリベントウの容器としてお馴染みだけど。こちらは竹の網代(あじろ)編みで天と底板は木製で側を縫いつけて仕上げている。網代の向きを変えることにより表面に模様を浮かび立たせている。側は折り返して厚みをもたせた二重編みとなっており、そこがクッション性を高...
● ストーブの展示 旧北海道開拓記念館 2000年頃むかしの汽車の客車を半割にした展示。「ガッシャン、ガッシャン、 ヒュ~ 今晩もしばれますのぅ~」とセンサーが勝手に反応して飛び出すフレーズに、同行の友が苦笑していた。季節は蝉時雨の真夏であったからだ・・・・・・。いま見ると床に置かれた汽車ストーブの円さとかたちがなんとも美しい。子どもの頃の北海道の冬はともかく寒かった。遊びから帰ってきて...
● 飯カゴ ミャンマー 径110×高さ216ミリシャン州のメイミョで求めたのが、こんな一人前の小さな蓋付の飯カゴ。蓋と肩に紐通し用の乳(ち)がつき、底には木製の高台がつく。持ち歩き携帯性に優れているので、弁当箱ともいえるもの。よく似た飯カゴはモチゴメを食す、北部タイやラオスなどで竹編みのものなどがみられるけれど。随一異なる点は、これが竹を素地に漆を塗った籃胎漆器(らんたいしっき)である点。製作地はシャン州...
● 七五三 ネパール、ナラ 1998年3月15日すっかり忘れていたけれど、お宮参りの季節だったのですね。時期はまるでことなるけれど、こちらは“イー”という女児の儀礼で、いわばネパールの七五三にあたるもの。ナラはカトマンズ盆地の外れにある丘陵の村で、諏訪の御柱祭りのようにネパールでの柱立て神事のための木を切り出し、曳行するための起点となる場所。村にある仏教寺院を訪ねてみるとちょうど仏教徒のネワール族のなかの...
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前々回はネパールの、そして前回は古代の丸木舟について見たので、今回は現代の丸木舟を見てみよう。とはいっても、まわりには現役の丸木舟が見られないため、展示に限ったものなのですが。 ● アイヌの丸木舟と川漁 / 北海道博物館 2015年撮影(2015年に改称された) この年(2015)から博物館の名称も旧北海道開拓記念館より北海道博物館と改称され。アイヌに関する展示が一新し、アイヌへの教育普及の上でもより親しみやす...
これまで幾つかの縄文講座を聴講後、土器などに見るいかにも縄文然とした造形とはまた別に、一見地味に写る木製品の遺物についても、それがどのように加工され使われてきたのであろうかと想像を巡らせ、次第に興味を持つようになってきた。 となりまち東村山ふるさと歴史館のロビーには、下宅部遺跡出土の縄文時代の未製品の丸木舟がむき出しのままどーんと置かれており、当初はその大きさに圧倒されたものの、次第に慣れっこに...
● 丸木舟 ネパール、ナラヤンガート 1989年8月 撮影 丸木舟と裸ん坊の子どもたちが戯れた、そんな一枚があったなと探してみる。残念ながら見つけたのは、試しプリントの焼き縞が残った欠片のみ。逆光で子どもの表情が潰れており、川のスケール感もまるでとれていないけれど。それでも川面に舟を運び出す、あの時の子どもたちがはしゃぐ姿が活き活きと甦る。 ● 丸木舟の渡し ネパール、ラニガート 1989年8月 撮影 これま...
“読むを読む”と二重動詞のタイトルがつくこの本っていったいなんだろう?ということで元本である『土偶を読む』のいささかセンセーショナルな副題「130年間解かれなかった縄文神話の謎」をも踏まえ、『土偶を読むを読む』とを互読してみた。 まるで知らなかったけれど、『土偶を読む』は人類学者の竹倉史人が箸した、名のある学芸賞も受賞し、各界の知識人にも認められた一大ベストセラー本であった。これまで考古学者が土偶を考...
● 新宿区立「林芙美子記念館」 / 東京都新宿区中井 この建物は『放浪記』『浮雲』などの代表作で知られる作家・林芙美子が昭和16年(1941)8月から昭和26年(1951)6月28日にその生涯を閉じるまでに住んでいた家である。大正11年(1922)に上京して以来、多くの苦労をしてきた芙美子は、昭和5年(1930)に落合のこの地に移り住み、昭和14年(1939)12月にはこの地を購入して、新居の建設を始めた。 新居建設当時、建坪制限があったため、...
「世界の言葉でこんにちは!」博物館の懐かしもの展示に、日本万国博EXPO`70のチケットなどが並んでいた。なかでも企業パビリオンのリーフレットに、「明日の生活環境への試み」として、当時流行っていたSF映画にみるようなスペースデザインを取り込んだ、暮らしのシステムユニットが目を惹いた。日本の技術の粋を賭けた夢ある未来、全自動洗濯機よろしく、健康と美容に効果をあげる未来の浴槽「ウルトラ・ソニック・バス」なんていう製...
先日観た、プラハ在住の絵本作家『出久根育展』<武蔵野市立吉祥寺美術館> では、副題の「チェコからの風 静寂のあと、光のあさ」 とあるとおり、画面を通じて未踏の地チェコの物語や風物に触れ、はじめてながらもどこか優しく懐かしく、とてもあたたかい気持ちとなった。 エントランス・ロビー部分は写真撮影可能で、以前読んだ作家のエッセイ『 チェコの十二ヵ月 -おとぎの国に暮らす- 』の原画が展示されていた。原画の細部...
● 『葛と日本人』 有岡利幸 八坂書房、2022年 下:「大和国葛の粉製図」 本書より 酒井抱一の「夏秋草図屏風」の表紙が目を惹いたこの本には、よくみると秋草のなかに紫色の花をつけたクズが美しく描かれている。 本書では、クズの植物誌、古典文学や詩に詠まれた葛、葛の民俗、葛布、はたまた異常な速度で繁茂して現代の生活を脅かすクズ害についてなどと、あらゆる側面から葛と日本人の関わりについて紹介し考察している...
● 『そば猪口の文様 絵解き辞典』より 図書館の新着本にあったのが『そば猪口の文様 絵解き辞典』。そういえばうちにもあるなと、食器棚より出してみる。 ● うちの「そば猪口」 家のそば猪口は、簡素な模様のシンプルなタイプばかりで。そのうち無地のものを2点含み、実はこれが一等気に入っている。無地ゆえにコップのような器形の美しさが際だち、清酒を入れて光にかざすと微妙に磁肌に透けて見える光景がたのもしい。本書...
先日観た清瀬市郷土博物館の民具展示では、布裂(ぬのきれ)がおもしろかった。いまのくらしではほとんど死語となり、どこかしら汚ならしくすら思えてしまう“ボロ(襤褸)”ながら。こうしてガラスケースに展示され、視点を変えてしげしげと一枚一枚を観察すると、一片の裂のなかに、さまざまな要素が凝縮されて見えてきてとても興味深かった。ボロの展示では、かって浅草にあった「アミューズ ミュージアム」の展示が一風変わっていて印...
数値にレバーを合わせ、ハンドルを回すと「ガラガラガラチン!」と鳴る機械式計算器は、地域の博物館の「むかしの道具」コーナーなどで、ときどきお目にかかる道具である。いまではそのアナログ的で一風変わったかたちが、子どもたちの目を惹く人気のアイテムとなっている。 機械式計算器での計算は、ソロバンでの珠算のように特別な習熟は必要とせず、誰しもが直感的な感覚でもって基本操作さえ行えば、難なく正確に答えを導くこと...
● テンバコ 675×405×高さ80ミリ 何故か家にあるのが、「地質學教室」の焼き印が押されたこんな古風なテンバコ。 90年代後期に東大・本郷キャンパスにて開催された「ヴンダーカンマー・驚異の部屋」展では、東大の所蔵する膨大な学術資料・標本を高名な海外デザイナーが参入し、「古きに新しさを見る」とでもいうのだろうか、古風な物品が現代風にお洒落にアレンジされた展示構成で、当時はその演出がとても斬新で魅力的...
となり町の図書館への道すがら、葬儀店のウィンドウにずらりと並んだ骨壺見本が気になっている。いつかしっかり見比べてみたいと思いつつ今回も見送ってしまった。普段は気にもとめない“葬い”もの、図書館にこんな本があり読んでみる。 ● 『葬いとカメラ』 金セッピョル、地主麻衣子 編 左右社 2021年 文化人類学・宗教学・社会学の研究者、映像アーチスト・彫刻家などが集い、“葬い”にちなんだ映像作品を視聴しての対談集...
家で使っているのが、こんな箒(幅180×230ミリ)と塵取(幅225×350ミリ)です。とあれ本来はそれぞれ別ものとして作られた道具です。小さな手箒はゴヨウマツの葉を束ねたヴェトナムのもの。韓国の道具にも、ゴヨウマツの葉を円錐形に束ねた刷毛のようなものを見たことがありますが。こちらはヴェトナムの木版画「ドンホー版画」の刷りに用いられる撫で刷毛で、いわばバレンのように使うもの。2分れ3カ所を結び竹箆で押さえ平らにさせた末...
台湾の歴史的建造物にみられる和製マジョリカタイルを考察した、台湾人著者によるこんな一冊をみつけた。副題には「台灣老花磚的建築記憶」とある。 ● 『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』 康鍩錫 TWO VIRGINS 2023当初は英国のヴィクトリアン・タイルの模倣品として製造された日本のビクトリアン風彩色タイルは、通称和製マジョリカタイルともよばれ。後に海外への輸出品へと販路を拡大し、それぞれの地域への市場に向けてさま...
● バングラデシュのリキシャ 『うるおうアジア』展<中村研一記念 小金井市立 はけの森美術館>にて 日本発祥の人力車とリヤカーの長所を、自転車にうまく纏めた“自転車型力車”は、東南アジアや南アジアなどの地で、いまでも庶民の足として大活躍している。先月観た福岡アジア美術館収蔵作品の巡回展『うるおうアジア』展<中村研一記念 小金井市立 はけの森美術館>でも、数ある作品のなかで一番目を魅かれたのが、このバング...
この新春はひさしぶりに昭島の拝島大師の“だるま市”へ行ってみました。コロナ禍も幾分落ち着き、初詣の凄い人混みにすっかり押され、今回は系統立てた「だるま分析」はいまひとつ振るいませんでした。近年ではアマビエをアレンジしただるまも登場したとのことですが、そちらは確認できず終い、それでもいくらか新種の変わりだるまがありました。こちらは前回のときの“だるま考察”の記録です。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2...
● 『鍵盤ハーモニカの本』 南川朱生(ピアノニマス) 春秋社 2023年 自分もこの写真の時代は小学生だったはず。 ** 鍵盤ハーモニカのかわりにトンボ・ハーモニカを添えて** モラトリアムな時代のあの日、不思議ちゃん女子がくれたカセットには“曲:ピアニカ前田”と書かれていた。小学生の音楽の時間、黒い唄口や蛇腹のホースをくわえ、演奏の度に内部で結露した唾液を吐きだすピアニカが、どこか不潔で嫌だった。「トホホ、...
前回は鷹匠の道具について触れてみたけれど、鷹狩りはどのように行われるのかについては、まったくもって知識ゼロの状態。そんな理由で図書館にあった書籍や動画にあたってみた。日本の鷹狩りの伝統は徳川幕府の下、各大名が庇護し研磋琢磨を重ね粋を究めたものの。幕府解体後それらのシステムが一旦崩壊し、明治を迎えあらたに宮内省が鷹狩りを管理するようになる。 そんな天皇の鷹匠をされていた諏訪流の鷹師の方の伝記本や、...
上京した頃の最寄り駅は、江戸幕府の鷹場(たかば)の名残りをとどめる「鷹の台」という場所だった。東京の西域多摩地区にはかって幕府の広大な鷹場が拡がっており、近在の博物館の近世の歴史展示にも鷹場に関するコーナーが設けられている。とはいえ鷹狩りに関わる鷹匠(たかじょう)が用いる道具についてはこれまで一度も見たことがなかった。この度 瑞穂町郷土資料館にて『オオタカ -鷹とその文化- 』展があり、江戸時代には尾...
● アイロン 120×55×55ミリ先日 友人の引越の手伝いで冷蔵庫を塗り替えた。部屋の中でどこか浮いていた白もの家電が、ぐっと渋くマットなブルーグレイに甦った。プラスチックの素材感 カラーリングなど、いまの家電は機能は優れていても、触手をくすぐられるものが余りない。それに反して製品の質は劣るも、ひところの昭和家電のデザインに好きなものがおおい。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-503.htmlこ...
巷に溢れる便利グッズって、実のところどれほど便利なのだろう・・・・ ● 木柄にボルトとナットで仕上げたミャンマーの栓抜き 25×175×30ミリミャンマー土産で頂いた栓抜きは、モアイのような木彫りの把手になんとボルトとナットで仕上げている。なんともふざけた風情で自分ではまず選ばないような栓抜きながら、このかたちが意外と便利と知る。梃子の力点と作用点の兼ね合いから、王冠を抜いてもまったく疵がつかないのである。...
● 『戯れる江戸の文字絵』 ヤン ショオジェ著 マール社 2022年「へのへのもへじ」のように、画面のなかにその人物をしめす仮名文字がたくみに組み込まれた図絵に見入っている。原本は十返舎一九『文字の知画(もんじのちえ)』登場人物は、江戸の町で働く商人や町人を中心に、花街の人々や旅人、武士、また町中をあてもなく彷徨う者など、老若男女総勢41人に犬1匹・・・・・・・当時の庶民にとっては当たり前に読めた、ただの平仮名の...
● 『アジア「窓」紀行』 田熊隆樹 著・写真 草思社 2022年図書館の新着本にあった一冊は窓の写真のオンパレード、その名も『アジア「窓」紀行』副題の -上海からエルサレムまで- とあるとおり若き建築学徒が撮ったアジア各地の建物の魅力的な窓の写真で溢れている。かって自分が歩いたアジアの地域と重なる場所は少ないのだけどそれでもイランのエスファハンの金曜モスク内を撮った一枚は自分も同じようなアングルの写真(...
● 刀杼 595×60×厚み32ミリ仲間と離れぽつりと古物に流れていた機具(はたぐ)が目を惹いた。古いかたちの杼の刀杼(とうひ)である。一枚の布をしっかり織りあげるには、いったい幾度こんな杼を往復させるのであろうか。ぴんと糸を張り長らく打ち込みつづけたものか杼にはその証しのように糸目の痕跡がしっかりと刻まれている。タイのカレン族の村でみた地機織りの様子を参考に添えて・・・・・ ● 地機 タイ、メイホンソン州 1989年...
● 小皿 ヴェトナム 155×高さ33ミリ桜が散ると一気に新緑が萌えはじめ淡い緑が眩しいヴェトナムのバッチャン焼のうつわは友人からの土産品ちょっと前の屋台でも使われていたものだろうか焼が甘く貫入もほどよくはいり使い古された地肌の風合いは好みだけれど器面には日本のやきものではちょっと見かけないような大胆な筆致と彩色でもって花が描かれている咲き始めた山吹を添えて・・・・・・...
● 栓抜 85×40ミリ散りゆく花のもとコップに泡をそそぐ相棒のヱビスの瓶じゃないけれど福の神にあやかりこんなかたちの栓抜で!...
● 計数枡 220×120×45ミリ 覗き窓四角い枡を押しつぶしたような歪な菱形のこんな枡がある。なにかの余材を転用したようなアルミっぽい鋳込みの合金製。1層100個、5層で500個を数える覗き窓が側面につく。まるい玉を計るにはざくっと掬い、鋭角の隅よりきれいに放てるこの形状が理に適っていたのだろう。この枡も日本の娯楽文化ならではで独自に生まれたかたちかもしれない。1発打ちのあの時代、この1枡でいったいなにに替...
● 角皿 173×132×高さ25ミリ近所の農家へ野菜を買いに行ったはずが、こんな角皿があったのでチャリンと100円入れて連れ帰る。郷里の祖母の家にあったようななんとも昭和チックなうつわです。今日から4月の新シーズン、とはいえ昨日とまるで変わりばえしないスタート。せっかくだから新シリーズとして、モノが生み出す“模様”に特化していきたい。描かれた舟のように、帆に風をおおきくはらみ新たな海原へ歩みだそう・・・...
● 『賢明』 ピーテル・ブリューゲル 224×298㎜、ペンとインク、1559年 ブリュッセル王立美術館蔵ブリューゲルの目玉作品『バベルの塔』を東京都美術館で観たのはもう6年も前のこと。蟻粒大の人々が建設現場で蠢くその筆致の緻密さに目を奪われた。とはいえそれは3DCC映像(拡大複製画)によるもの、視力の落ちた肉眼ではいくら実物を前にしても到底無理であった。それに反して同時に出展されていたペン画や版画の数々は...
お酒を持って一人お花見へ、めざすはとなり町の都立東大和南公園。満開の桜に囲まれて、花壇や周囲に巨大な碍子(がいし)がオブジェ風に配置されたシンボル的な建物がある。旧日立航空機株式会社変電所の建築で、戦中に戦闘機からの機銃掃射を受けた悲しいほどにあばた顔の外観である。それは東大和市指定文化財(戦災遺産)とされたこんな建物である。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-357.html絶縁器具の陶磁器...
● へら 18×長さ175ミリ朝のラジオで片付けコーディネーターが「検索すれば済むことでしょう・・・捨てましょう!」とさかんに“検索”を連発。たしかにネットは便利で一理あるけれど。やはり紙もの資料はとっておきたいし、モノとの出会いや取捨選択は効率だけではつまらないと思っているから、“何でも捨てましょオバサン”のその発言が気になった。しょぼけた道具ながらも、前回は“○”のかたちだったので、今回は“-”ものの紹介です。...
● 芯切り 径70×9ミリお酒を持ってひとり花見の予定が今日の雨で流れてしまった。ストーブもそろそろしまうつもりだったけど今日は寒いからひさしぶりにたいてみよう。むかしの灯油ストーブはシンプルなつくりながらメンテナンスにはこんな綿芯切りが必要だった。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1178.htmlわずか1インチ芯用のこんな小物をネットが普及していなかったころさがしだすのに随分苦労した。ブ...
先日のタイル展では導入口にあった世界のタイルの変遷でイスラームタイルの一群が目を惹いた。 ● イランの旅でみたタイルの数々 1997年撮影かって駆け足で見学したイランの旅では、モスクなどに多用されている装飾タイルの華麗さに目を瞠った。まるで万華鏡を覗くように、精緻な幾何学文に草花文、コーランの聖句が記された流麗なアラビア文字が複雑に絡み合い一体となり生まれる装飾タイルによる絵曼陀羅。プルシャンブルー、...
いよいよ花見の季節の到来です。今年はいち早く開花のもよう、ぽかぽかの陽気に誘われて久しぶりに江戸時代からの桜の名所、小金井公園の江戸東京たてもの園へ行ってみました。目指すは大好きな建築のオーナメントともなるタイル『 日本のタイル100年 -美と用のあゆみ- 』展です!(2023年3月14日) ● 『日本のタイル100年 -美と用のあゆみ-』展 江戸東京たてもの園 / 東京都小金井市 会期 2023/3/11-8/30本展は、...
子どもの頃実家の玄関には父が蒐めた古銭の額が飾られていた。楕円形の天保通寶以外は、いずれもドラマで銭形平次が飛ばす投げ銭のようなどこか冴えない一文銭の類である。父亡きあとは物置に放されており、いつだか帰省の折に持ち帰ってみた。ながらく部屋に放っぽったままだったけれど、図書館に寛永通寶の本があり、この度よい機会と借りて軽い気持ちで分類してみるも、素人にはあまりに複雑でハードルが高すぎてお手上げだ。 ...
● ケロシンストーブ ネパール 220×276×高さ139ミリ前回は、珈琲とスェーデン製のクラッシックなケロシンストーブの紹介でしたが。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1224.htmlこちらはおなじ加圧式でも、どこかチャイが似合う、ネパールのもう少し雑多な造りのもの。カトマンドゥでは王宮前のバサントプルを定宿とし、毎朝広場の路上で飲む一杯のチャイを無上の喜びとした。そんな熱々の本式のチャイ...
● リュックサック チェコお気に入りのチェコ映画にイジー・メンツル監督『英国王給仕人に乾杯』 2007年 がある。ホテルのレストランで給仕される料理の数々、食器やカトラリーのいずれもが素晴らしく。食の映画としても充分楽しめるおもしろい作品だ。 この度、原作であるボフミル・フラバルの『わたしは英国王に給仕した』 を読んでみた。「これからする話しを聞いてほしいんだ」に始まり「満足してくれたかい? ・・・おしまい...
今日はたのしいひな祭り~♪実家にあった五段飾りのお雛様を飾っていたのは、姉が小学生の頃までだったか。晴れ着姿の着物にぱちくりと化粧されて得意げのポーズできめた姉の写真がむかしのアルバムに納まっていたはずだ。あのお雛様はすでに家には無いはずだけどいったい何処へやったのだろう・・・・・・いつだかの市で、古いお雛様が出されていたことがあった。江戸時代のものだろうか時を経てここまで辿り着くまでにいったいどういう...
● 小平市ふれあい下水道館 東京都小平市わが町の博物館は一風変わったテーマの地下潜行型で『ふれあい下水道館』という。その名のごとき地下5階は府中街道真下にある下水道に直結しもわっと饐えた臭いの下水道(直径4.5m)を間近に体感できる。 博物館の特別展では、やはりそんな下の関連でかため「トイレグッズコレクション」 展が開催されていた。あの有名な中国のおまる“馬桶(マートン)”をはじめ世界各国のおまるがずらりと並...