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  • うの華4 12

    おばさん、泣いているの?。感じた通り、自分の目に映った通り、当たり前の事を当たり前に私はおばさんに問い掛けた。その涙が余りにも美しかったからだろう。子供の目にも彼女の涙に烟る瞳は美しく煌めいて感じた。その煌めきには宝石の様な鉱物の美しさが宿っていた。おばさんは答えなかった。ただ静かに自分の頬を濡らす雫を手の甲で拭った。その後彼女は顔を私から隠す様にしてその身を逸らした。そこで私が大丈夫?と、彼女に声を掛けようとした所でおばさんは彼女の夫の控えている階段へと歩み出した。夫の方もそんな彼女の様子を黙認して、寡黙にじいっと眺めていた。ごめんね、あんた。おばさんの声が聞こえる。と、彼はいや、いいんだと答えていた。私はおばさんの方が悪かったのかと漠然と思った。見るとおじさんは彼の妻の顔から視線を外し、彼の傍へとその視線を...うの華412

  • うの華4 11

    おばさん何かあったんだ。子は自分の友人の母の瞳の色を読み取ると言った。「おばさん、何か悲しい事が有ったんだね。」丁度、かつての一等近しい人の死の場面をその瞳に思い浮かべていた彼女はハッとした。幼さ故に無防備だった目の前の子供に、思わず自分の心の隙を突かれた様で。その幼い瞳に、自分が一番に大切に思う思いを仕舞い込んであった胸の奥底へと行成ズンと踏み込まれた様で、紛れも無い自分の真実を読まれた様で、そんな一種の恐怖を伴う嫌悪感が彼女を襲った。彼女は自分の子の友人に対して、今迄その子の身の上を親身に庇う様に寄せていた彼女の半身を起こし自分の身を退いた。それから彼女は何か言おうとしたが、何も言葉が浮かんで来ない。頭は真っ白になった儘、その儘で、平時の様に彼女に機転を効かせて来ない。こんな時は焦ってみるとピンと来るのだが...うの華411

  • うの華4 10

    「竹馬の友」彼女の唇から、この言葉とほうっとした微かに白く見える様な溜息が零れた。妻の言葉に階段の奥の空気が暗く淀んだ。彼女は慈しみのある微笑みを浮かべ玄関先へと静かに近付いて行った。玄関では子供がその淀んだ闇に気付いていた。子の意識は階段の暗がりが気に掛かる様子だ。自ずと視線もその闇へと向かい勝ちになり、友人の母親越しに子はチラチラと後を見遣るのだった。「気に入らないんだよ。」彼女は子に唐突に言葉を掛けた。「おじさんはこの言葉が嫌いなのさ。」彼女も気に入らなさ気に口にした。顔段の夫はどキリとした様子で背筋を伸ばした。そうしてその暗い雰囲気はみるみる改善した。「俺にはそういった事が分からないんだ。」彼は言い訳の様に口にした。そういう友達が俺にはい無かったから…。彼は言葉少なにそう言うと、静かに妻の方を見ながら立...うの華410

  • うの華4 9

    「友達だよ。友達は、友達だ。」あの子からそう聞いているよ。とここで夫の後ろになっていた妻の声が入りました。「ありがとう」囁くような声で、後方に目を遣ると夫は妻にか細く応じたのでした。ここでバトンタッチ、声の出なくなった夫を見越して、彼の妻はその顔に笑みを作ると前方に身を乗り出して来ました。夫は強張った体をずらす様にして妻とその位置を入れ替わりました。そうしてその直後に、ストンと、項垂れた彼は妻の真後ろの階段の隙間にまるで吸い込まれる様に腰を落とすと、項垂れた儘座り込んでしまうのでした。妻の方はそんな夫の姿に一瞥をくれると、直ぐに彼女の面を目の前の子に向けるのでした。彼女は恐る恐る子に語りかけます。彼女は努めて自分の相好を崩した儘にして置きました。「友達だよね、智ちゃんと家の清。」目の前の子供は相槌を打って、ウン...うの華49

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華101こんな古めかしい木のせいで怪我するところだった。「もう!」と私は床を掌でバシバシと打った。「痛!。」私は新しい痛みに声を上げた。床を打った掌を仰向けてみると、赤い血......>続きを読む雨の今朝。寒くなったせいか、はたまた暗いせいか、今日の目覚めは頗る悪かったです。何だか不安な近頃。スマホが不調になった頃から、何だか段々と不安感が増してくる感じです。何かの悪い兆しでなければよいのですが。私の悪い予感は当たりやすいので、不安。😓今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 8

    「えっ!」「ええっ!!」2人同時に大きく目を見開いた。彼等が揃って驚愕の声を上げた様は、流石に鴛鴦夫婦の体であった。玄関に立つ子供にすると、その夫婦の驚きの仕方といったらなかった。彼等は正に絵に描いたような仰天の仕方をしたのだ。彼等は揃って腰を引いた、というか、上半身を折る様な形で前に身を乗り出した。こちらに飛び出す様にして見開かれた眼。その眼の大きい事、丸い事といったら、如何にもその頃の4コマ漫画にでも出て来そうな驚きの構図だった。子供の目にも正にそれその物だった。そんな彼等の仕草に対比を見せて、冷静沈着、全く動き無く夫婦を見守っていた子供だったが、内心にはふっと湧き上がって来る可笑し味を覚えていた。目の前の階段という舞台で繰り広げられた、遊び友達の親が演じた夫婦漫才、そんな一場面を見る様な心地がしていたのだ...うの華48

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華98「縁側を見ているんだよ。」私は素直に答えた。私自身が興味のある物を祖母に知ってもらう事は、私に取ってとても嬉しい事に思えたからだ。「縁側?。」祖母は何やら不思議な面持......>続きを読む日の出が遅くなりました。お天気が悪いのか暗い朝です。午後は雨になり、祝日の明日からは寒くなりそうです。洗濯物が乾かなくて困ります。洗濯物を室内で長く置くと、生乾き臭くなり再度洗う事に。二度手間です。サンルームが欲しいなと、過去に考えたりしました。建物の敷地が増えると、固定資産税も増すんですって、ほんの僅な事なのに、へーっと思ってしまいました。乾燥機の電気代の方が、それよりは安いという話でした。それで、サンルームは没になりました。そう言われながら、その後乾燥機も買ってないですね、家は。今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 7

    空気を震わせる、妻の凛としたこの声を聞いた夫は眉を顰めた。彼は彼女を労う様に、「縁起でも無い。」と呟くと、あの子は何だってこんな時間にこの家へやって来たんだ。と、迷惑そうに呟いた。実際に、迷惑な、拠りにも拠って、家だなんて、と、口にした。『しんみりとした雰囲気は変わらないなぁ。』私は思った。折角おじさん達が話し始めたのに、その後は相変わらずの沈黙の時が訪れていたのだ。私はこの彼の家の店先の重い雰囲気に焦ったくなって来た。もう帰ろう、否、清ちゃんを誘わずに1人で遊びに行ってしまおう。私は決意した。と、天井でバタバタと動きのある音がした。2階に近い位置にいたおじさんが何だと驚いた声を出した。如何したんだ、何かあったのかと上に声を掛けた。2階から返事は無い。様子を見て来ると妻に言うと、おじさんは階段から2階へと消えた...うの華47

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    うの華374彼は興味深気な顔付きをして私を見た。面白そうに私の口元を眺めていたが、よく回る口だなと呆れた様に嘆息した。祖父は、「分からないなぁ。」、そう呟くと、不思議そうな目をした私に、「......>続きを読むよいお天気でした。久しぶりのアップです。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    卯の花372いやぁ全く驚いたなぁ、本当に。お前にこんな芸当が出来るとは。それもここ迄やるとは、なんともはやだ。玄人はだしというものだよ。大した役者も顔負けという物だ、何しろ階段から落ちて迄見......>続きを読む今日はまあまあのお天気てしたね。相変わらず題名は漢字で、誤字のまま。悪意を感じます。今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 6

    ミシリミシリと、おじさんは妙に視点を何処かに据えて、強面の顔のみ私に向けながら階段を降りて来た。私の方はその顔が清ちゃんの父親の顔と分かると、にっこりとして彼に挨拶の声を掛けた。しかし私の声掛けにおじさんは特に表情を変えなかった。そうして無言でゆっくりと自分の顔を妻の方へと向けた。そうやって私の視線からようようと自分の顔を外した。彼はおずおずと、向かい合った彼の妻の肩に自分の片手を掛けた。そうして案じる様な調子で、大丈夫なのかと、溜息混じり、密やかな言葉を彼女に掛けた。そんな夫に妻の方は顔も上げず、静かに彼より下の階段に佇んでいた。俯いた儘、彼女は自分の横に立つ夫に心持ち身を寄せたように見えた。伏し目がちの妻、そんな眼下の彼女を彼女の横方向から見下ろす夫。階段に佇む2人の周りには、急にしんみりとした空気が漂い始...うの華46

  • うの華4 5

    おばさん、泥棒?…。私は小声で清ちゃんの母親に問い掛けた。そうなのだろうか?。2階には暗躍中の泥棒が?。私はこの家がとんだ取り込みの最中、危難にあっている時に折悪しく気合わせたのだろうか。否、『折良くだ!』、私は思い直した。「おばさん、泥棒が入っているんだね。」、私は緊張に頬を紅潮させ、2階には聞こえない様、階段に踏み留まっている静ちゃんの母親に小声で囁き掛けた。するとおばさんの顔にも緊張が走った。私が見守る中おばさんの顔には影が差した。やはりそうなのだ、私は思った。緊急に迫られているこの家を、私の友達の清ちゃん一家を、折よく気合わせた私が救ってあげなければ。私は如何したら良いだろうかと考えを巡らせ始めた。その時2階の階段の降り口から声がした。「やっぱりおかしいんだろう。」そう上から階上のおばさんに掛けられた声...うの華45

  • うの華4 4

    仕事って、と、おばさんは不服そうな顔付きで少々口を尖らせ物言いをした。「こちとらは、はぁ、ご飯も未だだっていうのに…。」ご飯?、ああ、昼ごはんか。私は思った。続けて、『随分遅い昼ご飯だなぁ。』私は思った。私など昼食の後の昼寝まで終えて、その後にここ迄来ているというのに。やや呆れた目付きでおばさんを見上げると、おばさんは如何いう物か怒った顔を見せずに、今までの緊張がほぐれた様にふうと肩を落とすと、如何にもほっと安らいだ様子で優しい笑顔を私に向けた。何時もの智ちゃんだね。自分に言い聞かせる様にそんな事をしんみりと言うと、この家の2階に向かって、何時もの智ちゃんだよ、治った様だよ、等言った。一瞬ええっと驚きの声が上がったが、シイっとそれを抑えるような声と気配が伝わってくる。如何するんだ、如何って、等、その後も話は続い...うの華44

  • うの華4 3

    この間やや間があったが、遂に階段の女性はおずおずと私に顔を見せた。それは果たして清ちゃんの母、彼女の顔に相違なかった。彼女の顔は何だか緊張気味で、私に対して何時もの様に愛想の良い笑顔を見せていなかった。が、その瞳はじいっと私の顔を覗き込み、その内優しい視線を私の顔に注いで来た。「今日は、おばさん。」私はいつもの様に笑顔で午後の挨拶をした。昼寝から覚めた後の外遊びには、何時もこの午後の挨拶が欠かせないのだ。と、私は理解していたので、いかにもしたり顔で悠然と微笑んだ。そんな私に彼女も目を細くして微笑んだ。何時もの智ちゃんだね、彼女はホッとした様に声を出した。「病気はもういいの?。」おやっ?と私は思った。暫く風邪は引いていない、な。と思った。私が風邪を引くのは冬だ。もう夏も近いというのに、何だろうと思った。この頃の私...うの華43

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    卯の花368「お祖父ちゃんは…、長く生きて来て、…商売も上手いし…。」如何いったらよいのだろうか、私は未だ自分の言いたい事がよく分からず悩んでいた。「お金だって沢山儲けたんでしょう。」思わ......>続きを読むよいお天気でした。明日は雨になるようです。寒くなるかしら。相変わらず、誤字の題名が続く昨年の作品。昨年は、パソコンが前回の文字を記憶して変換候補が表示されていたので、それをクリックしただけでしたが、こんなに漢字が続いているなんて、と、妙に感じます。何時もひらがなを見て、クリックしていましたからね。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    卯の花367この世界に生まれ出て未だそう間もない私だもの。この世を長く過ごして色々な経験を持った大人の祖父や父、他の我が家の家族やこの世の中の様々な人々は、当然こういった祖父の物言いや遣り取......>続きを読むよいお天気でした。また「うの華」が、誤字になっている回です。毎回気を付けていたのですが、この作品の題名は、ウツギの花ともおからとも関係ありません。単に「うの華」です。うは、うしとみしよぞ、というべきでしょうか、そんなうの字の華です。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華92父について、祖母または祖父が何を如何云ったのか私は知らないが、彼等が親の心構えとして何かしらの忠告や助言をしてくれたのは確かだった。何故なら父は、それ迄の様な私を疑う......>続きを読むよいお天気の、11月最初の土曜日。もう、小春日和と言ってもよい時期でしょうか。未だ早いかもしれません。昨日の事、年賀印刷の申し込みをしていました。宛名印刷の入力中、11件ほど入力したところでアプリが開いていないという通知が画面に出て、閉じるしかなく😞💨がっかりでした。時間と労力の無駄使いでした。母の年賀から始めていたので、出さなくてよい、無駄になる、という予兆かと、嫌な予感というものでした。それで今日、早速母に見舞いのカードを出して来ました。元気になります、良かったね、というものでした。今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 2

    如何したのだろう?、家の奥からは何の返事も無い。何時もならばはーいと、清ちゃんの元気の良い声か、彼の両親の何方かの、智ちゃん遊びに来たの、等、明るく愛想の良い声が返って来る筈の家なのだが。如何した物かその日はシンとしていて、その家の屋内には全く人の気配が感じられなかった。妙だなぁ。私は首を捻った。この界隈にこぢんまりと佇んでいる家とはいえ、これでも清ちゃんの家は商売屋なのだ。大体、店に当たるここ玄関先に誰もいないのも妙だった。また、たとえ店にこの家の人間が誰もいないとしても、この家の店先である筈の玄関に誰か訪問した人物が立ち、声を掛ければ、それだけでもそれ客が来たとばかりにハイハイと、店の主人である彼の父だけでも顔を出してきそうな物だ。商売は主として清ちゃんの父が行ってはいたが、普段彼の父が忙しい時は彼の母も客...うの華42

  • うの華 4

    気が付くと、過去に題名の「うの華」のうが、卯になっている回を幾つか発見した。1つ直してみたがきりが無い。これは単純な変換ミスなのだ。そこで、ここでお知らせ迄と伝え置く事にした。さて、いよいよ「うの華4」、起承転結の「結」の部に入る。正直、我ながらこの物語が最後迄行き着き、上手く1つの話として纏まるかどうかと甚だ不安に思っている。この物語を書き出した最初の1話、「起」から筆を起こした理由がこの4で明らかになる予定なのだが、私はそれをきちんと書き尽くせるかどうかとやはり甚だ不安に感じるのだ。それは今になると当時の記憶が極めてあやふやである事や、又、その動機自体を無理に書く事も無い様な気がする為だ。元々私が成す事も無い事なのだ、当時もそう私の方は言われていたのだから。無理する事も無いのだ。が、当時、私が大人になって、...うの華4

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    卯の花364暫くして、私はあまりスッキリしない状態を不思議に感じていた。が、しゃがんでいた足が疲れて来た。それに何時迄もこの場所にはいられないなと、この場所に見切りをつけた。体調の不調を不......>続きを読む曇り空の今朝。スッキリしない空色が続く気がするここ数日です。選挙が終わって落ち着いた空気を感じる朝です。今からは晩秋に向かって行く季節、四季の移り変わりを感じています。今日の思い出を振り返ってみる

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Jun日記(さと さとみの世界)
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