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  • 煮物の香り

    久しぶりなので、あまり筆が乗りません。暫くはエッセイを続け、腕鳴らししたいと思います。昨日、近くのスーパーの物産展で竹輪を購入。厚揚げや大根と共にそれを煮込んで、昨日の夕飯にしました。今朝もそれを温め直して、美味しく頂きました。大量生産の安価な品物とは違い、確りとした食感の練物でした。噛み締めるその味に、昔ながらのお店の品質を感じていました。その後、2階で用事を済ませ、階下に降りて来た時の事です。私は廊下に漂う煮物の残り香に出逢いました。ほんわりとして温もりのある香気です。『懐かしい…、』、これは何処かで嗅いだ事がある匂いだと、私は直ぐに気付きました。私の臭覚の記憶にある香り。そうして直ぐに合点しました。『これは母の里の台所の香りだ。』。私はよくこの香りに出逢いました。母の実家にいて、台所に足を踏み入れた...煮物の香り

  • 2024年3月ですね

    昨夏からの久々の投稿です。今年もよろしくお願い致します。さて、長く続いたコロナ禍が漸く過ぎたようだ、と思っていたところ、今年は新年から能登地震があり、過去数年同様に、今年も今迄のところ忙しなく過ぎて参りました。特にこの1年は個人的な家庭の事情もあり、尚更に世話しなく落ち着かない日々でしたが、皆様には如何お過ごしでしたでしょうか。本当に、3月になってホッと一息ついた私です。私ももう高齢です。知人の訃報を目にすることが多くなりました。厄災や災害ばかりでなく、明るいニュースも聞きたいところです。身近なニュースなら尚更です。辰年に期待したいですね。2024年3月ですね

  • 猛暑の夏2

    母と私はサイズも違うので、当然合わないものなのですが、Fサイズというものや、中には着苦しいからと、母が通常着るより大きいサイズを指定していた物も有り、私もどうやら着る事が出来る衣類が有ります。その中から、私は、着てみようかなと思い、今夏幾つか着用したのでした。やはり一寸ときついかなと思い、私も太ったものだと若かりし頃を懐かしく思い、私の幼い頃の、若かりし母の顔を思い出したりしていました。さて、気付いた方もおられる事でしょう。いくら親子といっても、私が無断で母の衣類を借用しない人間である事や、その他一寸した我が家の異変から、母の変化を感じ取った方がおられるでしょう。そう、その勘は正しいです。今年、母は父の元へ旅立ちました。猛暑の夏2

  • 猛暑の夏

    今年は毎日がそうでしたね。猛暑、地球沸騰化なんて言葉も聞きました。本当に、クーラーの部屋に居ても息苦しい時ありました。そうしたのだろうと思ったくらい、身体にきつい夏でしたが、朝夕少しずつ涼しくなって行くようです。さて、今夏、私は折々母の服を着用していました。元々母と私は性格が合わず、当然好みも違うので、服の嗜好も違っていました。私は安価でカジュアル、落ち着いたイメージの服が多く、暖色系でも単色等、そんな感じの服でした。母はというと、フェミニンな衣服が多く、何処かファッショナブルで個性的、自分を主張していながら、上品な婦人服が多かったものです。そんな女性2人の関係でしたから、私もそうですが、母も時折私のセンス?、に目が向いたようです。機会があれば、私が選んだ母の服を買ってきて欲しい、などと言ったものです。確...猛暑の夏

  • 母校のグランド4

    この草丈なら。スカートの裾に触れないだろう、そう考えた私は、グランドを対角線上に横切りました。横切りながら、目新しい遊具への新鮮さや、無くなってしまった遊具への喪失感等、様々な感情に触れていました。この間、私の足に触れたであろう雑草への接触感や、不快感は、不思議に思うくらい私にはありませんでした。通り過ぎたグランド。校舎の影に入る場所になると、私はホッと一息吐いたものです。難所を1つ超えた気持ちになりました。日傘をさしていても、ムッとした外気が感じられる。そんな正午前の夏の戸外で、私は日射病への不安を思いながら、まぁ歩けるものだぁと、妙な感慨を胸に抱いて歩いていました。目的を果たすと、帰路は狐の嫁入り、パラパラと天気雨です。日傘をさしてきてよかった。傘の内側の骨組みを見上げ、華奢なパラソルに身を屈め、熱気...母校のグランド4

  • 母校のグランド3

    正午前、カンカン照りの校庭。パラソルを差した私は影の恩恵で涼を取っていることを感じ、グランドの白んだ砂から、この場所が真夏の熱気にむせ返っているのを感じるのでした。それにしても、私は自身の目に映ったこの光景をどう表現したものか。今に至っても巧く表現出来ない事をもどかしく思っています。今回、語彙の不足を感じてしまいます。さて、この草叢の灌木林、とでも書いてお置きましょうか、10数センチ程の高さの草が織りなす緑のパノラマに、私は足を踏み入れるべきかどうか、迷いました。人が通った気配が無い事、は勿論、何かが心に掛かります。草叢といえば虫、それは直ぐに頭に浮かんだのですが、否、もっと違う何かが有った…、と思うのです。思い付かない儘、私は校庭を見回し、体育館の開いた扉にも注意を向け、この後の進路をどう取ろうかと、再...母校のグランド3

  • 母校のグランド

    この時の私は、引き返すという考えが浮かんで来ませんでした。遥か校庭の対角線上の向こう側、そちらの出口を見詰めていました。グランドを渡る事しか考えていなかったのです。そこでグランドの校舎に沿って向こう側へ渡るか、母校のグランド

  • 母校のグランド

    先日の事、近道をしようと、昨春廃校になった母校のグランドへ足を踏み入れました。対角線上に進路を取る訳です。目的地は近隣の銀行、介護保険料の振込手続きが目的です。この時、私は他にも所要があり、とても急いでいました。全体の歩く行程でも、ほぼ全ての道は斜めに横切って歩いていました。そこで、このグランドでも、広く斜めに横切る事にした訳です。これはちょっと勇気が入りました。さて、自宅を出て、懐かしい小学校の校舎、その裏に差し掛かると、子供時代、プールへ通った通用口、その扉が開いていました。何時もは閉じている様でしたから、私はびっくりしました。夏休み…?、は、季節柄直ぐに連想しました。しかし、未だ早いかな、と、思い直しました。実際にはその日、小学校は一学期の終業式だった様です。勿論新しい学校でです。開いた通用口は、プ...母校のグランド

  • もう夏ですね

    7月に入り、もう直ぐに本格的な夏ですね。今年ももう折り返しに入りました。1年の後半地点です。同様に私の人生も今や後半地点、毎日暑いです、無理せずにを心掛けています。さて、相変わらず家のパソコンは壊れたままです。今回は携帯で書いてみます。…書いている途中で、電話でした。中学校の同級生から、同窓会へのお誘いの電話でした。私の方へは、同窓会の通知が来てい無かったので、この件については彼女の電話が初耳でした。私は、「毎回欠席してきたので、私への通知はもう来ないのだろう。」と、話し、やはり今回も欠席、同行出来無いから、と、ごめんねと謝って置きました。彼女に限らず、こういうのは連れ立って行きたいものですものね、誠に申し訳無いです。友達甲斐の無い私でした。ということで、聞いてみるからと、私の方から別の同級生に電話です。...もう夏ですね

  • 4月

    4月、私の誕生月になりました。昨日今日と良いお天気です。今年は、考えれば昨年末から、極めて多忙な日が過ぎて来ました。落ち着いたかと思うと忙しくなるという、バタついた冬、春を迎える事となりました。これはひとえに私事からの事、私事なので致し方ないという所です。私は元々せっかちな方なので、する事は早めに仕上げてしまいた性分です。なので多分人より早目に動いてしまうのでしょう。空回りしているなぁと思う事が多いものです。でも、昨年は、のんびりし過ぎて間に合わなかったという事がありました。これは、私にしても遅過ぎて後悔する事が有るのだ、という自身の人生においての真っ新な発見となる出来事でした。今後、今年はどの様な出来事があるのだろうか?と、私は不思議な予感めいたものを感じて不安でもあり、期待もして過ぎた先月でした。4月

  • 今日は雨

    「うの華」を、お休みしながら、近況を書き出した私です。本格的な続編投稿への復帰は、4月からにしたいと考えています。私事で忙しい最中だからです。さて、長い休暇の後、急にここへ来たのは健康診断を受けたからでした。椅子に座って運動し、やはり長い運動不足を解消しようという、そんな目的を得たからでした。健康診断で歩行を勧められた私の、先ず頭に浮かんだのが不調な膝でした。速歩は膝に無理が掛かるだろう、普通に歩けばその分歩行時間が延びるしと、負担を受ける膝の健康を気遣い、如何しようかと迷いながら考えていた私に、椅子に座って踵を上げ下げするだけでも、歩行運動の代わりになりますよと、椅子に座ってする踵の上げ下げ運動を勧められました。椅子に座って…、する事といえば、と、先ず脳裏に浮かんだのがこの長年の記事投稿。それを行ってい...今日は雨

  • 久しぶりの投稿

    長く投稿期間が開きがちでした。スランプかというと、そうだったのかもしれません。主な原因は、パソコンの故障です。使えなくなり、新しく購入を考えたのですが、この三年間のコロナ禍で、品質や価格の安定しないもの商品を買うよりは、世の中が落ち着いてから、新品のパソコンを買おうと考えていました。ところが、今度は世界情勢が危機的状況になり、私も年齢を重ねてて、パソコンは要らないんじゃないか、と、判断されそうです。そうですね、今からだと、年賀用、と、ブログ書き込み、趣味のゲーム程度しか使わないかもしれません。と、思っていましたが、世の中よく出来ていますね、公的な書類作成にも使える様になって来た様です。これもテレワークのお陰なのでしょう。今後は、定時収入の出る仕事に使えるとよいなぁ。ですね。久しぶりの投稿

  • 2023年度の春

    3月、春のお彼岸になりました。お昼少し庭の片付けをして、草や古い鉢の整理をしました。庭の門は年々幅が狭まり扉が閉まらなくなり、今では鎖で縛り開くのを防いでいます。今日改めて見直してみると、より一層幅が狭まり、この先どうなって行くのかと、門の両側に在る支柱を眺めていました。傾いているのだろうと思い、家の壁と見比べると、やはり両者は全くの平行に並んでいない、壁と門の支柱でした。この家が建ってから四半世紀が過ぎました。家も古くなったのだなぁと思います。今日は思い切って、庭に長年存在していた水仙を抜きました。水仙は母が好きで、人から貰った球根を植えていたのですが、ある年から植えられていた場所の、庭の反対方向へ引っ越しをし始め、徐々に違う株の水仙も混在し始め、母は不審がっていました。「お前が植え替えたの?。」と、私...2023年度の春

  • 謹賀新年

    今年もよろしくお願い致します。皆様のご健勝とご多幸を祈念致しております。謹賀新年

  • うの華4 56

    「おい。」私の背後から声がした。やや怒った様な声だった。「お前何処へ行くつもりだ。」父が私に声を掛けて来た。私が振り返ると、父は私に不愉快そうな視線を送って来た。「そんな所へ何しに行くんだ。」何って、私は思った。家の中に、こんな奥まで知らない人が来て、お父さんは自分の家の事が気にならないのかしら?。そこで私は父に答えた。「変な人が家の中にいるみたいだから、何をしているのか見に行くんじゃないか。」すると父は何故かホッとした様に微笑した。この父の表情の変化は私には不思議な出来事だった。そこで私は父の心情について考え出した。『お父さんは私の事を怒っていた。』それは確かだ。怖い顔で睨んでいた。では、お父さんは私の何を怒っていたんだろう?。私にすると特に変な事をしたという気持ちは無かった。寧ろ父は私の事を自慢して良...うの華456

  • うの華4 55

    私は思った。幾ら客といっても、家の奥の奥に当たるこんな裏口に迄遣って来るなんて、妙な客だな。と。それで家内にいる声の人物達に不審感を持った。又、家内にいる筈の自分の家族、祖父母の身を案じた。そうして母の事も、私には少しは気に掛かった。年寄りの祖父母はか弱く、今いる侵入者に対して力負けしたとしても、若い母はもう少し抵抗出来たのではないか。家の奥に迄侵入者を許すなんて…、と、私は家族では若い身の母の事を不甲斐無く感じた。それが自分の女親と思うと尚更に口惜しく思えた。すると、ポソポソと小声で話すらしい声が家から聞こえて来た。彼等は何の話をしているのだろう?。興味を持った私は彼等の話に自分の耳を傾けた。彼等の話がよく聞こえるには、と、私は家に近付く事を考え、裏口に向けて自分の歩を踏み出そうとした。すると、私の前方...うの華455

  • うの華4 54

    あれの事で思い煩うのはお止め。夫はパシっとした声で妻に命じた。この声に妻は言葉も無く夫を見詰めた。彼女は何か言いたくてモゴモゴと口を動かした。が、彼女の口から何かしらの言葉は出てこず、頭にさえ、どんな考えもさっぱり浮かんでは来なかった。『今日は如何してこんなにも頭が働かないものか?。』彼女自身、自ら不思議に思った。「本当に嫌な奴だ。人の嫌気の壺を心得ているとしか思えない。」彼は言った。「あの言葉を聞くとね、私はカッと頭に血が昇って来てね、目の前さえ赤く見える位なんだよ。」神経を境撫でされる様な気持ちとは、この事なんだね。正にそう言う気持ちになっているんだよ、私は。この時夫は普段と語調を変えていた。彼が商売等で各地に出歩く時の、如何にも他所行きの声音と口調であった。彼の妻は思った。夫は彼等の孫の智に、彼等の...うの華454

  • 敬老の日

    今年の敬老の日は、母にフラワーバスケットを送りました。16日にはもう届いた様です。年寄りの目には色が濃いめに映る、暗い色に映る様だ。と以前聞いた、お花屋さんのアドバイスを受けて、明るく薄い色目の花材の物を選びました。喜んでくれるといいのですが。さて、母ももう高齢です。食べられる物も限られて来ました。食品は安易に送れないと思うと、あとは衣類か小物等ですが、今年は花だけにしました。夏にはアイスクリームが喜ばれた様子でしたが、又アイスクリームを送って良いかどうか、母の食事ペースが分からないので、アイスクリーム店のウインドウも眺めていたのですが、今回はアイスクリームは取り止めにしました。他にも、母への敬老の日プレゼントが届いていると、大変ありがたいです。敬老の日

  • 今年のお盆が過ぎて

    今年もお盆が過ぎました。今年は新型コロナも3年目のお盆、というせいもありますが、外出自粛にも慣れてしまい、ポツポツ買い物、そして家でのんびりという、私にすると落ち着いた感じのお盆となりました。そこで、お盆の過ごし方について、暇に任せて検索する余裕も出て来ました。覗いた記事によると、お盆は余りあれこれとせずに、先祖供養の事だけを考えて過ごせば良いそうでした。細かく書けば、殺生をしないということは勿論、海や川で泳がない、釣りをしない等の禁止行為が有りました。そこで成る程ねと、私も今年はこの検索結果に合わせ、家で先祖供養に専念してみました。家にご先祖様達を迎えてもよい様、掃除。玄関や廊下を簡単ですが掃き清め、仏壇への供え物等を少々しました。そうして、お経のCDを流し、ながら族。座敷に寝転んでみたり、所在無く昼寝...今年のお盆が過ぎて

  • うの華4 53

    何をぶつぶつ言っているんだい。夫が彼女の顔色を見て心の内を言い当てる様に口にした。「ならぬ堪忍も堪忍袋の緒が切れるという事があるよ。」「お前さんもいい加減に見限ったら如何だい。あれの事は。」私はあれと違って無学だが、あれ程性根は悪く無いつもりだ。幾らお前さんにとって馬鹿に映ろうとね。おや、と、妻は思った。「何故お父さんが馬鹿なんです?。」私がそんな事言いましたかしら?。言って無いと思いますがなぁ。妻は合点がいか無いと言うと首を捻って考え込んだ。すると彼女のその仕草を見ていた夫は、あら、と、思わず嬉しい笑みを零した。「してみると、」夫は言った、私の誤解だね。この夫の声に、あれこれと考え込んでいた妻が我に返った。えっ?と、夫の言葉に聞き返すと、すっかり機嫌の治ってしまた夫はあっさりと笑顔で彼女に言ったものだ。...うの華453

  • うの華4 52

    夫は常に自分には愛想が良い、愛妻家の鏡の様な人物としてこの長年来たものだ。だと言うのに、一体如何したというのだろうか、何だか何時もと勝手が違う…。妻は夫の様子を不審に思った。「子は可愛いものでしょう。」細々とした声で、遠慮勝ちに妻は夫に念押ししてみる、が、夫から妻への同意の言葉、相槌等は全く返って来無かった。彼女は再び同じ言葉を夫に掛けたが、結果は同じだった。彼は黙した儘身じろぎもせずにそこに立っていた。妻は夫のそんな様子を見詰め、やや考えていたが言った。「あなたはは子供が可愛く無いんですか。」一寸言葉尻に批判めいた響きを効かせてみる。すると夫の表情が心持緩んだ様子に見えた。彼女は気持ちを強くした。そこでこの機に自分の立場を常の優位な状態に戻そうと奮起すると、そうなんですね、と断定する様にきつい感じで言っ...うの華452

  • うの華4 51

    「如何したんだい。」反射的に夫は妻に声を掛けた。「ずいぶん顔色が悪い様だが…。」そう言いつつ夫はハッと思い当たった事が有った。「あれだね、またあれが悪い風を吹かせたんだ。」我が家に、この家に、何時も悪い風を吹き込むんだ。あいつは逆風の様な奴だのう…。最後は夫の声も嘆息気味となり、か細く土間に向けて落ち途切れた。勝手口はシンとした切り、裏庭の方からも特に物音は聞こえて来無い。夫がこうなると妻は気落ちしていられない。彼女は一応庭に気を配ってみたが、如何したの?等、子供の声が洩れ聞こえて来ても、彼女の息子が孫に答える声が細々と聞こえて来ても、そんな事、もう向こうに気など配っていられ無いと彼女は思った。今は夫の事だけをかんがえるのだ、自分の子である息子はもう人の親、子の事は親に任せれば良いんだ。彼女は決意して、庭...うの華451

  • うの華4 50

    おいおい。声に気付いて振り向くと、彼女の背後敷居の上に、何時戻って来たのか彼女の夫が立っていた。「親も馬鹿は無いだろう。」私はお前の夫だよ。夫の私が馬鹿なら妻のお前も馬鹿だろう。彼はそう言うと明らかに機嫌を損ねた顔付きになった。不機嫌そうに目を吊り上げている。この顔は夫が可なり立腹した証しだった。『何か気に食わ無い事が有ったのだ。』瞬間妻は悟った。不味い事になったわね。彼女は思った。夫の不機嫌を宥めるには如何したら良いだろうか。一方で裏庭の様子を気に掛けながらも、彼女は眼前の夫の尋常で無い様子から、今の場合こちらの方が自分にとっては重大事だと受け取った。僅かな間に何が自分の夫の心情にこれだけの影を落としたのだろうか。彼女は彼女の視線を繁々と夫に注ぎ彼を気遣いながら、一方では彼の背後の家の内の気配をそれと無...うの華450

  • うの華4 49

    否、いるんだ。誰かいる。戸口の影になった部分だ。誰か人が隠れているのだ。彼は思った。『誰だろう?。』。父だろうか?、一旦その場を去った後、父は再びここへ戻って来て、戸口の影からこちらの様子をそっと窺っているんだろうか?。それが父だと思うと、彼は何時父がこちらへ飛び出して来て、ゴン!とばかりに自分に拳を振り下ろすのかと、いい知れぬ恐怖に襲われた。ブルル…、っと彼には身震いが起きた。それからゾォーっと背筋に寒い物が走る。安堵の後の恐怖に、彼はヨロヨロ…と、思わず2、3歩勝手口の戸口から遠ざかった。背後に注意を向けつつ数歩歩いた彼は、ここまで来れば一安心、一呼吸置ける間合いの場と自身が判断出来る場所に来た。すると彼の目に子供が円な瞳を開いて不思議そうに彼の顔を見上げているという丸い顔が映った。はたと、気が付いて...うの華449

  • うの華4 48

    もしかしたら。彼はハッとした。『こちらの様子に合わせて彼等は口を閉じたのだろうか。』彼は推察したのだった。機嫌を損ねたかな。親の話を盗み聞きするとは。自分は親から子としてはした無く思われたんだろうか。思わず彼の頬は赤らんだ。恐る恐る屋内の気配の様子を見ながら、彼は反らしていた顔の方向、自分の家の母家へと自らの体の向きを変えた。そうして具に彼の家の勝手口を窺った。すると家の内直ぐの場所から彼の父の好きにしろとの声が上がった。続いてバタバタと去っていく足音が聞こえ、その足音は小さくなると聞こえ無くなくなった。あの様子では父さんは家の面方向に向かったのだ。と彼は察知した。危うい危機は去ったなと、彼は安堵したが、また一方ではガッカリもした。怒った父から叱られる事が無く、折角の彼の父の息子に対して行われる修羅場を、...うの華448

  • うの華4 47

    この家の裏庭では、この屋の若旦那であるらしい男性が焦ったく思いながら苛々していた。彼は一旦は彼の親に虚勢を張ってみた物の、その結果酷い目に遭うだろう事も予想していた。なので彼は直後から、内心ハラハラとその場を動かずに狼狽えていた。が、彼が恐れる様な親の反応は、彼に対して一向に起こって来無かった。彼の親がこの庭に現れ出た気配も無い。ましてや彼を咎める声さえも無かった。『出たは出たんだろうか。』彼は親が庭に姿を現す事だけはしているのかと考えた。しかし彼の背後ではこそりとも音はし無かった。その割には後方が静か過ぎるなと考えた彼は、『黙って睨み付けられているんだろうか?。』とも思った。裏口に背を向けていた彼には、自分ではその様子が把握出来無い事から、彼の前方で自分の方を向いている彼の子供の顔付きから、自分の背中の...うの華447

  • うの華4 46

    「また以前の失敗を繰り返すんですか。」一郎の時に懲りたでしょう。幼い子の前でその親を怒鳴ったり、乱暴したりと、お父さんの怒った姿を見せたら、あの子はその後如何なりました。妻は夫に切々と訴えた。それ迄はよく慣れた、とても可愛い子だったのに…。「それっ切り。お父さんは勿論、お父さんの連れ合いの私に迄、それはもう、他所他所しくなって…、あの子あれ以来変わりました。始終気を張って、遠慮して…。「ここを出てからは、今じゃ寄り付きもしない。」あの子はあれ以降、親に付いた切りだったんですよ。お父さん、今もあの時と同じ、酷く怖い顔してますよ。もしそんな怖い顔で今出ていけば、お父さん、本当にあの子もそれっ切りですよ。あの子も親にくっ付いて、あの孫同様私達祖父母にはもう慣れてもくれ無くなりますよ。…。「今から思えばあれが境目...うの華446

  • 「平日」

    平日は日常一寸好い物御馳走と言う人も実際、食もある、衣食住気付いたら良い場所人も声も歌もある、相和す合奏実際、営みがある、喜怒哀楽目覚めると善い所だった今はそう感じる町並み、通り、抜けて行くと開けた場所から望む、山、また山の連なり実際、草花が見え、緑に青、群青と藍青色が帯を引き広大遥かに山、峰、頂き、中腹に木立の影、窪み蒼天は紺碧に上空空色と青、白、通常の天空日常は平日…囃子詞…2022年母の誕生日によせて祝「平日」

  • うの華4 45

    子供の父の方は自分の両親がいる場所、彼の後方に向いて意識が向いていた。彼はフンという態度で以って屋内にいる自分の父の言葉を受け流した。「何も分かってない年端の、子供を育てている真っ只中の、文字通りに親の気持ちが、君達なんかに分かるもんか。」彼は腕組みなどして、この庭に向けて開いている母家の入り口には背を向けた儘、如何にも大層に言ってのけた。「共に無学な人間くせに、私は大学と名の付くところを出た人間なんだ。」もう勘弁ならん!。お父さん堪えて、孫の、小さい子供の前ですよ。と、屋内は何だかバタバタと騒々しくなった。庭にいた子の父である彼も、その家内の騒動の様子に内心穏やかでは無かった。彼の親に、否、目の前の自分の子供の手前だろう、かもしれないが、彼は一旦虚勢を張ってみた物の、その実この横柄な言葉を口にした瞬間か...うの華445

  • うの華4 44

    さて、それと無く庭の周囲を見回した彼は、特にここには如何という異常も無い様だがと思う。そこで彼は自分の子に向かって言った。「智ちゃん、何が有るんだ。」お父さんが見る所、ここには、裏庭にはだが、何も不思議な物は無さそうだがなぁ。彼は子に向かって普段通りの、彼の平生の声音で言った。しかし彼の内心にはイライラが募って来ていた。『あー、イライラする。』。さて、これより遥か前の事だが、彼は両親から子育ての極意は気長になる事と教えられていた。「なぁにが気長にだ。」彼は呟いた。もう怒りの尾がブッツン!と、と彼はそう思うと、「切れそうだ。」と言葉に出した。そうしないと、「こっちがおかしくなりそうだ。」フン!と、彼は鼻息荒く口にした。「修行が出来てない父親ね。」母家から如何にも呆れたという様な女性の声がした。本当だね、両親...うの華444

  • うの華4 43

    お父さんが、呼んでいた?。私の事を?。私は父の言葉を繰り返した。すると父は私の事を、おやと、何事か気付いたように眺め始めた。「お父さん、私の事を呼んでたの?。」もしかしたらと、私は父に問い掛けた。父が黙ったまま怪訝そうに頷くので、私はそうだったのかと、自分のその少し前の状態を思った。確かに、私は自分の目前に有る奇妙な何物かに心奪われていた。その為だろう父が裏庭に現れた事にも気付いていなかった。普段なら自分が気付くだろうその彼の足音や気配さえ、何時今彼が立つその場へ来たのかさえも私は気付けないでいたのだ。多分父の私への声掛けにも気付かなかったのだ。そうか、それで父は怒っているのだ。私は漸く彼の怒りの元に合点した。それだけ私の意識は私が感じた奇妙な事に集中していたのだ。私は自身の周囲への意識がここに無く、所謂頭がお...うの華443

  • うの華4 42

    「お前こんな所で何をしている?。」私は父の声に気付いてハッとして振り返った。「人が聞いたら直ぐに返事をする様言ってあるだろう。」父は不機嫌な声でそう言うので、私は父の顔を注視した。やはり、私が父の声音から読み取った通りに父の表情は機嫌が悪い様相を呈していた。否、機嫌が悪いのを通り越して怖い顔をしている。私はぼうっとした頭で苦笑いをした。父が私の訳の分からない事で怒っているのは今回が初めてじゃ無い、そう思うと、私は思わず合点した様に苦笑してしまったのだ。「何をニヤついてるんだ。」父の声は相変わらず怒声を含んでいる。父の怒りが長引いているのは珍しい事だ。何を怒っているのだろう?。私は父の声が恐ろしくもあったが、その彼の声音を発する原因にも興味が湧いた。そこで私はおずおずと、彼が何を怒っているのかと尋ねてみた。「お父...うの華442

  • うの華4 41

    誰もいなくなった裏庭の光景。私はその空虚な庭の光景を1人眺め遣った。庭には見る程の花も無いのだ。『ああ、少し赤っぽく色付いた物が有る。花かな?。』紅系の花々が私の目に映った。向こうの盛り土の方向で何箇所かに群れて点在している様子だ。何の花だろう?、私は思った。そこでおずおずと私は歩み出し、気持ちを落ち着けながらその植物に近付いて行った。結局、近付いてみるとその燻んだ赤い色は花では無かった。「葉だ。葉の先が赤っぽくなっている。」何だろうこの葉は?と、私はひょっとその植物に心を留めた。今迄私が目にした様でしていなかった様な物だ。改めて関心を持って眺めて見る葉の形に色。「花じゃ無い様なのに先だけ赤い色だ。」どう見ても、やっぱはりこれは葉っぱだなと私は再度思った。何だろう?。不思議な草だと漠然と感じながら、私は暫く無言...うの華441

  • うの華4 40

    『この儘この子を家の中に返したら、後からどんなに両親が自分を責めるだろうか。下手をすると父に折檻を受けるかもしれない。』我が子に嫌われる事よりも、実際に彼はその事を恐れていた。子と仲良くせよと、今現在の両親は推奨するのだが、昔の彼等はというと、親としては子である自分達に厳格そのものだった。しかも長兄ともいえる兄には相当厳しかった。特に母のスパルタ教育とくればその凄まじい事、幼い頃から自分は兄の苦境を目の当たりにして来たのだ。そに都度自分は震え上がった物だった。自分自身の経験を取ってみてもそうだ。怒った父から暗い蔵の中に押し込められ閉じ込められた事がある。その儘一夜を明かしたのだ。その時の事は今でも思い出す。暗く湿っぽいカビと土の臭いを嗅ぎながら、これから自分は如何なるのだろうと心細く将来への不安を抱き、自分を押...うの華440

  • うの華4 39

    「お母さんと一緒じゃ無かったんだね。」子供が父に語り掛けた。相変わらず父からは返事は無い。が、子からは見えない父の顔に、ああんという感じで彼の顎が突き出されるのを子は感じた。変な事を言ったかしら?、考えながら子は自分の父に歩み寄って行く。すると、どうやら父は喫煙中らしいという事がこの子には分かって来た。父の顔の向こうに、すうっと細く、微かに白い煙が上空へと立ち上ったからだった。「お父さん、タバコを吸ってるの。」煙い煙という物を放つ煙草に、最近頓に嫌悪感を募らせ始めていたこの子は、何と無く今言った言葉の中に、その嫌悪感と自分からの父に対する非難めいた物を匂わせて置いた。するとそれまで無反応だった父の背が揺らいだ。彼の肩がピクンと上がったのだ。彼は振り向いて自分の子を改めて眺めそうな気配になったが、それを堪えてその...うの華439

  • うの華4 38

    家の奥、台所に来ると父の姿は見え無かった。変だなぁ。子は思った。この子にすると父はてっきり台所にいるものだと思っていたのだ。しかし、台所にいると思っていた子の母でさえ玄関の方から姿を見せたのだ。『父も玄関にいるのもしれない。』子は思った。そこで、今迄自分がいた居間迄戻ろうかと子は考えたが、それでもと思い直すと、子は台所をもう一度隅から隅まで見回して自分の父の不在を確認してみた。『やっぱりいないや。』と子は思った。それでも、子は今一度と念を押して、台所に向かいお父さんと声を掛けた。「いないの?、お父さん」こう声を掛け掛け、子は台所の奥へと進んで行く。何処からも全く返事は無い。『やはり玄関だ。』父も母と同じく玄関に回ったのだ。子は思った。『母も最初はここにいたのだ。』子は納得し、母が玄関から姿を現した理由をこうこじ...うの華438

  • うの華4 37

    突然、ガラガラ…、ドン!っと、家の玄関上り口の方向で、小さな雷鳴が轟いた。『家の中で雷が鳴る?、なんて…。』私はその事を意外に思った。雷神に対する己が臍の喪失という恐怖よりも、屋内での雷発生という摩訶不思議な現象への不思議が私の内で勝った。『何だろうか?』私は祖父母と共に、居間の隣、階段の部屋に向けて開け放たれている居間の入り口を見守った。私達3人が見守る中、居間の開いた入り口から見える位置に、漸う姿を現した人物というと、それは私にとっては意外な人物、私の母であった。おやと私は思った。てっきり彼女は現在私の父と共に台所にいるものだとこの時迄私は思っていたからだ。隣の間にいる人物を、本当に母だろうかと私が目を凝らして見つめてみると、彼女は見るからにくたびれたぼろっとした感じの姿だった。そうしてそんな伏し目がちの母...うの華437

  • うの華4 36

    そうですか、そう祖母は言うと、それでも視線は祖父に向けた儘で、ゆうるりと彼女は私の方へと膝を向け始めた。彼女は飽く迄自分の夫の様子が気掛かりなのだ。その後も私の祖母はこちらに向き果せ無いでいた。私は祖母に声を掛けた。「お祖父ちゃん、怒ってるの?。」「そ、そうだね。その様だね。」祖母は声だけ私に向けて喋っていた。「何を怒ってるの?。」私は問い掛けた。これは祖母に向けての問い掛けだった。えっ?、さっ、さあ?。祖母は未だ祖父の方を向いて言い淀んでいたが、私が祖父の背に目を向けてみると、この頃には祖父の背中から角が取れて来ていた。夫の背が丸くなった様な気配に、もう良いと判断した私の祖母は、遂に彼女の顔を私の方へと向けた。「お前分かるかい。」祖母は私の顔を真面目な顔で見詰めながら問い掛けて来た。私は首を縦に振った。「お祖...うの華436

  • うの華4 35

    「そうだったのか。あの男、そんな男だったのか。」夫は顔を曇らせて唸った。「今まで騙されていたとは、私も迂闊だった。」夫は顳顬に青筋を立てて怒りの表情を浮かべた。が、彼は相変わらずしんみりと元気無い様子で正座した儘の妻の姿に気付くと、彼女を気遣ったのか、直ぐにうっすらとした笑みを彼の頬に浮かべ、彼女に優しく視線を送ると物言いたげに口を蠢かせた。彼はそのままで暫し妻の様子を見守っていた。静かに、彼は優しく彼の妻に言葉を掛けた。「お前、大丈夫なのかい。」彼の妻は物思いに耽っていた。過去の幾つかの出来事が彼女の瞼に走馬灯の様に過ぎると、思わず彼女は「大丈夫かしら。」とぽそりと呟いた。だが未だ瞳は伏せられた儘だった。夫の方は静かに妻を見守った儘だったが、その表情には明らかに不快な感情が浮かべられた。彼は妻から視線を外すと...うの華435

  • うの華4 34

    「いやぁ、修羅場だったね。」食卓にしている黒っぽいちゃぶ台を前に、そこに座した私の祖父が目を細くすると微笑を作り、その場に居た家族皆の寡黙に幕を引く為か至ってさり気ない口調で口火を切った。私は自分の茶碗の中、それ迄せっせと口に運び込んでいた白いお米の粒、見詰めていたその艶めいた粒の塊から思わず視線を上げた。そうして、私はそういえば今日の夕飯は皆静かだなと思った。それ迄はご飯を食べる事に夢中でいた私だったが、今になって気付いてみると、この食事時間は我が家の普段の食事中とは違う様子だった。食卓回りは妙な雰囲気を醸し出していた。平生の我が家の食卓の様に、家族の誰彼が発する陽気な声を今回私は聞いていなかったのだ。つまり、食事が始まってからそれ迄の間、皆が殆ど声を発してしていなかったのだ。私はちゃぶ台の側に座す人々を見回...うの華434

  • うの華4 33

    「智ちゃん、お父さんには朝ご飯が少し遅れますって、言っておいてね。」母は私に父への言付けをした。いいよと答えた私は、それも変だなと思った。ご飯の準備の話なら、『お祖母ちゃんにじゃないのかな?。』。聞き間違えかと思った私は、家に足を向けながらその旨を彼女の背向けて確認した。「お祖母ちゃんにじゃないの?、お父さんはご飯を作らない人、…だから。」すると、路地に戻り掛けて私に背を向けていた母が振り返った。その顔にふくれっ面をして、もうっと言うと彼女は渋い顔を作った。彼女は私の側までスイっと戻って来ると、腰を屈めて私の顔に彼女の顔を近付けると、まるで内輪の話をヒソヒソするように言った。「お祖母ちゃんに直接じゃ、通らないんだよ。」お父さんを通してじゃ無いとね。そう言うと、「お前と言う子は、何も判じられないんだからね。云々。...うの華433

  • うの華4 32

    危ない!妻の声だ。が、もう彼は振り返って背後にいる人物を見ていた。「おやっ!?。」彼は意外に思った。未だ幼い子供の姿が彼の目に入ったからだ。『子供じゃ無いか。』彼は内心呟いた。次に彼は、妻の言った言葉、「危ない」という言葉が妙に気に掛かってきた。何だろうか?、自分の傍に何か危険な物がいるんだろうか?。今自分の彼の目に映っている、あの子が危険なものだとは思えないが。『まさか、あの子が妖怪の類いとか…。』そんな事を思うと、ぶるる…。思わす武者震い、否、単なる震えだ、寒いからだ。そんな風に考えてみる彼だったが、やはり恐怖に襲われた彼だった。が、妻の手前、ここで逃げ出しては夫の沽券に関わと、漸くの事で彼は玄関に踏み留まっていた。そんな彼は、目の前の子供にやはり腑に落ちないものを感じていた。何故あんな幼い子がこんな所に?...うの華432

  • うの華4 31

    彼は自分の心臓に手を遣った。ドキンドキンと大きな鼓動が伝わって来る。そうしてそれは段々と音を増し、今や早鐘のようだ。カンカンカン…この時彼は故郷の村、過去にそこで聞いた半鐘の光景を思い出していた。彼の目の前に危険が迫っているのだ。彼の目の前の相手はその顔を渋面として彼ににじり寄って来る。彼はハッとして思わずその相手の顔を見た。額には古参の皺が刻まれている。両の頬には複数の皺が丸く弧を描いて盛り上がり、それは深い溝を刻んで顎に落ちていた。『熟練の兵、正に名うてのハンターの容貌そのものだ。』彼は思った。そうしてそのハンターの目は今やガッシリと自分の獲物を見据え、その獲物を仕留めるべく相手との距離を縮めているのだ。その見覚えのある狩人の表情。そうだ!、彼は狩人の狙う獲物が何かと興味を持ち、それを知ろうとして自分の後方...うの華431

  • うの華4 30

    「お母さん、痛いじゃ無いか。」屈み込んだ智は直ぐに顔を上げ、空かさず彼の母に抗議した。「何もしてい無いの打つなんて…。」如何いうつもりなんだ。という訳である。「したんだよ。」智の母は自分の子から顔と背を背けるとぽそっと言った。こんな時間に他所のお家を訪問したりするから…。そう彼女は口にしながら、「申し訳もございません。」と、取って付けたような大きな声と愛想良い笑顔を、共にこの屋の階段へと向けた。階段の方では物怖じしたような顔付きで、控え目ながらに玄関に立つ夫、彼女の横、自分の夫の方を気にする気配を彼女に見せる素振りをした。『えっ!、ええ。』と、彼女は階段の方の意向を直ぐに判じた。『全く、こんな取るに足ら無いような男に…。どこが良くって、彼女ともあろう人が結婚したのかしら。』彼女は内心不満を口にしながら、階段にい...うの華430

  • うの華4 29

    蝶よ花よとされて裕福に育った2人は世間知らず。これが彼女達の共通点だった。この点共に彼女達の心中に相通じる物が有った。勿論実家が裕福とはいっても、当然両家の間には雲泥の差が有った。その差がある事で、返って清の母の胸の内には智の母に対する敵対心が湧かずにいた。寧ろそこは彼女を素朴で微笑ましいと見る感情に包まれていた。智の母の方にしても、清の母が口にした親戚が裕福なのだ、それを真似ているのだの言葉に、内心では半信半疑に思いながらも、彼女自身が実際にそうなのだから、相手の羨望する気持ちが思い遣られて同病愛憐れむ事と感じ入っていた。彼女にするとじんわりと嬉しい共感の思いが湧き、話のピッタリ合う友人が出来たと離れ難く思っていた。2人は幸い子も同い年、親戚という話題以外にも話す事柄に共通点が多かった。また、智の母は清の母の...うの華429

  • うの華4 28

    お前がこんな所にいるから…。何て言おうかと彼女は思い迷った。この家の亭主と自分の子の両方を上下と見ながら、彼女は今後の方策を練った。彼女の腕は既に下ろされていたので、その拳も緩んで開いていたが、一旦緩み掛けた彼女の拳が再び握り締められた。『親の対面とご近所付き合いの板挟み。この奥さんとは袂を分かちたく無いから。ずうっと仲良くしていたいから…。』彼女は苦慮した。眉間に皺が寄った。変な顔だなと、彼女の子の智は母の顔を見上げて思っていた。子供の遊び仲間の内、この清の母親は彼女にとって特別だった。彼女の憧れる都、その上の手に住む上流の人々の雰囲気、そういう物をこの清の母親から嗅ぎ取っていた。もちろん、清の母とて表立ってそういう雰囲気を匂わせているのでは無い。が、隠してみても育ちというのは出る物らしい。さっきの電話もそう...うの華428

  • うの華4 27

    階下に降りて部屋の様子を窺うと、果たして、自分の夫と近所の若奥さんの間には険悪な空気が漂っていた。「子供が時間を間違えるのは当たり前でしょう。」憮然とした荒い声と表情で、奥さんは訪問先の主人を睨んだ。あーあ、やっちまったね、と、彼女は内心で舌打ちした。『家のは張子の虎だからね。』そう思うと、この家のお上は夫の加勢に入るタイミングを窺い始めた。そうでしょう。家の子の何処が悪いの、…。と早朝の訪問者はこの家の主人に詰め寄った。口から飛び出す言葉と共に、訪問者の顔は紅潮し、その掌を握り締め、拳となった彼女の手の先を主人の目の高さ迄に持ち上げた。「危ない!。」他所でこの場面の先を見た事のあるお上は思わず声を上げた。ハッとした感じで智の母は動きを止めた。一瞬誰の声かと考えた彼女は、それがこの家のお上、自分とは気心の合うご...うの華427

  • うの華4 26

    おやっ?。彼女は一瞬自分の目を疑った。息子が自分に怒るという事象に彼女は合点が行かなかったからだ。しかも、部屋の向こう隅にぽつんと有る小さな豆粒程の彼女の息子の小さ仁王顔である。その小さな形相、まるでお面の様なその顔の周縁には、チロチロと面を彩る炎さえ彼女は見える心地がした。勿論、彼女は子が何をそんなに憤慨しているのかと感じ取った。が、その子の母である彼女の気持ちの中には、息子の怒髪天の形相に大した恐れは湧かなかった。それでも、ちらりと彼女の心に畏怖の影が差した。が、それは違和感程度の物で済んだ。彼女は胸に湧いたほんの小さな蟠りにふっと吐息を吐いた。ふふふ、息子を嘲る様に清の母は笑声を洩らして清に言った。「あんた、この母親の私に何か不満でもあるの?。」母は笑顔を息子に向けたが、この笑顔はやはり先程の彼女の息子の...うの華426

  • うの華4 25

    なんて嫌な気分だろう。海泥の底どころか、ドブにでも沈んだ心地だよ。こんな嫌な気分になるなんて…。「子を持つんじゃ無かった。」彼女はこの言葉を飲み込んだ。と、思っていた。微かに母の口から零れた言葉。沈んだ自分の母の表情を目にしながら、清はハッと我に返った。思わずキョロキョロと辺りを見回した。何時もの自分の家の寝床である。部屋の隅に台所の流しが有り、母がいる。母の服装はこの地方の家にいる時のそれだ。『ここは家だな。』彼は思った。時折、両親の実家に旅して寝泊まりする。そんな数日の入れ替わり立ち替わりに、幼い清は対応出来ない時があった。今現在の自分がどの世界にいるのか把握出来無くなるのだ。差目覚めた時、友達と遊ぶ時、場面や言葉が重なる時、同じ様な状態に自分が置かれると、彼は過去の記憶が現在の意識と重なってしまうのだった...うの華425

  • うの華4 24

    無言の背を向ける母に、今は固まって動かない小さな山の連なりの様なその母の両肩を目にしながら、彼は意を決して口を開いた。「そんな癖の悪い電話、ほっとけばいいんだ。」それでも、清の母は極めて静かに、自分の子を拒絶する様に彼に背を見せた儘だった。「何かあったの?。」如何かしたのかい、と、清は自分の母に尋ねた。彼の母は依然変わらず彼に彼女の背中を見せて立っていた。が、その手は微かに動いた様だ。それから彼女の肩が小刻みに揺れ始めた。この時になって漸く、彼女のその背が彼を拒絶する壁の様に清の目に凛とした広がりを以て映り始めた。『何を怒ってるんだろう?。』彼は思った。母さんは何を怒ったのかな?。自分は彼女の機嫌を損ねるようなどんな事をしたかしらと、彼は今し方の自分の言動を振り返り始めた。機嫌を直そうとこうやって笑顔を作ってい...うの華424

  • うの華4 23

    「母さん、智ちゃんとこが来たみたいだよ。」一心不乱に電話と格闘する彼女は息子の声掛けに気付かない様子だ。彼はもう少し洒落た言い方をしようと言葉を変えた。お母さんと声を大きくして母を呼んだ。が、母の方はそれでも彼の呼び掛けに気付かなかった。はぁっと清は嘆息して、部屋の隅に身を寄せている彼の母の背に近付いた。小刻みに揺れている彼女の肘に手を伸ばすと、チョンチョンとその袖を引いた。母さん、母さんと数回声も掛けてみた。漸く息子の呼び掛けに気付いた母は、ハッとして自分の子の声に耳を傾け始めた。「何だい?。」、息子に問い掛けながら、やはり手元の黒い捻れが気になってしまう彼女だった。『もう少しなのだ。』、後一捻り。彼女は完璧に元通りの、整った綺麗な螺旋形の形にコードを戻したかった。『もう一寸なのに。』『五月蝿い子だ。』、何時...うの華423

  • 今日は立春

    長らく休んでいる内に、もう今年は立春です。この間体調不良だったのでは無く、別の事に興味を奪われていました。暦の春と共に、また、ブログ再開です。😊のんびりとですが。今日は立春

  • うの華4 22

    早く、早く…。遂には焦れて、私はうんうん、もう、と声に出すと、玄関で地団駄段を踏んだ。そんな私の様子に、店中にいた清ちゃんの母はその異変に気付いた様だ。彼女はこちらに背を向けた儘、振り向きもせずしんとして佇んでいたが、背中越しに頃合いを伺うと、そそっと階段に登り口に移動した。「向こうさんに早く来いって。」そう言っておくれ、と彼女は憚る様な言い方で2階に声掛けした。2階からは何かしら返事があったのだろう、苛ついた雰囲気に変わった彼女は、次にきっとした感じで上を見上げると、「本格的におかしくなって来てる。」、「私と変わって。」、等、上を見上げる顔付きにも懇願する様子が見られた。私はと言うと、そんな清ちゃんの母の様子を垣間見ながら自分の抱え込んでいる問題に悩み続けていた。う〜ん、う〜ん…。頭を抱え込んで唸る私の姿に、...うの華422

  • うの華4 21

    私はそんな彼女の逡巡として元気を無くした姿の向こう、壁に有るだろう、何時もそこに存在している筈の壁時計を見遣った。そこには機嫌を損じた彼女に対する私の出すべき答えが有るのだ。玄関にいる訪問者の子供の視線に、この家の子の母は背後の時計を振り返った。彼女はおやっと思った。時間が…。そう呟いた彼女は店の時計が止まっていることに気付いた。時計の長針が先ほど見た時と寸分違わぬ同じ位置にあったからだ。じゃあ、彼女は思った。『この時計は違っているんだ。』。そう考えると、彼女はきちんとした答えの出せ無い問い掛けをこの他所の家の子にした事だと、俄に罪悪感さえ湧いて来た。如何しよう、こんな事問い掛けるのでは無かった。と後悔しても今更始まら無い彼女だった。「口から出した言葉は戻ら無い。」気不味くなったその場を取り繕う様に、彼女は口に...うの華421

  • うの華4 20

    時間?、私はキョトンとした。私にはおばさんの言わんとする所が分から無かった。そうして私達2人の意思疎通が急に絶たれた事に戸惑っていた。何だろう、今までおばさんと気持が通じ合っていたと思っていたのに…。私は如何にも他人だという様に鼻白んだ素振りで、平然と固まった白い顔付きの目の前のおばさんの顔を見上げた。何か言葉を発したくても何と言って良いのかわから無い。すると『時間』私の心の中におばさんの言った一単語がクローズアップされて来た。「時間…」。『時間…、…そう言えばさっきおばさんは、時間が何とかと言っていたっけ。』私は時間時間と、この言葉を脳裏に繰り返した。私はパラパラと自分の記憶を早送りする事で今日ここに来てからの私達2人の言動についてを翻った。そうする事でその脳裏に浮かぶ映像を鑑みてみた。すると、「今何時かな?...うの華420

  • うの華4 19

    「おや、智ちゃん笑ったね。」清ちゃんの母の言葉に私は驚いた。自分の母さえ私の感情には無頓着、てんで気付かないというのに、あれえと、私は半ば口を開いて目の前のおばさんを見上げた。今度はおばさんがニコッと目を笑わせた。おやっと私は思った。『おばさんは喜んでいる。』私はおばさんの目に湛えられた柔和な感情をこう読み取った。このおばさんは清ちゃんのお母さん、私の実のお母さんでは無いのに。私とこの心の交流をおばさんも喜んでいるのだと、私はこの時感じ取った。『不思議だ。』私は思った。私はかつて母とこうなった事が無い。今の場面の様な気持ちの交流を感じる様な母子関係になった事が無かった。私にとって自分の母はあれせよこれせよと指図ばかりする人だったのだ。穏やかに慈しむ、そんな瞳で微笑まれた事等、私の記憶の中にいる母には皆無だった。...うの華419

  • うの華4 14

  • 謹賀新年

    昨年はお世話になりました。今年もよろしくお願い致します。皆様のご健康とご多幸を祈念致しております。😊謹賀新年

  • 良いお年を!

    早々ですが、年末休みに入ります。皆様良いお年をお迎えくださいませ。🎍良いお年を!

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    年末なのであれこれと忙しく、作品の毎日アップは難しい状態です。早々とですが、皆様よいお年をお迎えください。...>続きを読む昨年も今年も、同じことですね。明日から寒くなりそうです。今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 17

    「そうだよ、時計の針を見てご覧。」『こんな小さい子に本当に時計の針が読めるもんか。』内心きっと目尻を上げて、彼女は猜疑心を含む目付きで自分の子と同い年の訪問者を見下ろした。それから、彼女はさっと玄関正面に掛けられた時計の下迄進むと、自分の正面、今しも眼下になった小さな訪問者の顔に悠然と笑って言った。「お八つの時間だろう。」さて、彼女と玄関の子供の母親は、普段から同い年の子を持つ母親同士、よく自分の子供の成長具合についてお喋りしていた物だ。家の子はあれが出来る、またはこれが出来る様になった。家もよ、または、え、まぁもう、等言い合えば、別の日には、そんな事がね、家はサッパリ。困ったものね、家の子には、等言ったりする。ある時はいいわねぇと相手を持て囃し、自分の表面を取り繕いながら、その実内心では密かに嫉んだりしていた...うの華417

  • うの華4 16

    「そうだよ、お八つの時間だ。」そうだよ、その手があったんだよ。と、おばさんは顔を明るくすると背筋を伸ばし、思わず彼女の手を打った。如何にも妙案という風情である。おばさんは笑顔になると私に向き直り立ち上がった。少し前、この家のお上である彼女はこう考えたのだ。如何してこんな暗い時間にこの子はやって来たのだろう。これが日中のことなら、全然問題ないのに。家の子だって喜んで遊ぶ時間だろうに。『家もとんだ疫病神に取り憑かれたもんだ。』彼女は俯いた儘溜息を吐いた。そうして階段にいた彼女は腰を踏み板に落とした儘、身を捩らせて店内の時計の針を見た。『一体今何時なんだろう?。』。玄関正面の壁に掛けられた白く丸い枠、モダンなこの家の掛け時計の時刻を見て、現在時を理解した彼女は思った。やっぱりね!。はぁぁと彼女は再び溜息を吐いた。これ...うの華416

  • うの華4 15

    その途端、ハッとした様に階段にいた彼女は身を起こした。彼女は振り返ると階上に向かって身を伸ばし、2階にいる彼女の夫に向けて声を掛けた。「向こうさんに電話して。先方から引き取りに来る様に言って。」私は仕事の話だと思った。この家の商売の或事を、清ちゃんの家のおばさんは思い出したのだ。それで2階にいる清ちゃんのおじさんに仕事先の先方に電話しろと言ったのだ。私はそう解釈した。「これ以上は預かれないって。」「そうそう毎回送って行くのも…、」ここでおばさんは言い淀んだ。俯いて彼女は考え込んでいたが、抱えても、抱っこしても…、重くて。もう私の方では、家の方では手に負えないって言っておくれ。「事情は分かるけどね。と。」そう言ってくれ、と、階段に佇んだ儘でやや腰を折った姿勢のおばさんは2階に向けて言い放った。『おばさん、何だかご...うの華415

  • うの華4 15

    その途端、彼の目前で彼に背を向けていた息子が振り返った。ここぞとばかりに彼は父に向かって言った。「身に余る女性を貰ったんだろうに。」「これ以上何の不足があるというんだ。」この声音は、この子供本来の物だった。子の父も直ぐにそうだと分かった。『自分の息子の言葉だ。』彼は思った。そうして、この言葉は彼の妻側の親族の言葉であるに違いない。その言葉を、今現在は目の前にいる子が自分に向けて言っているのだ。自分の家族の言葉として言っているのだ。彼はこの時、父として、夫として、この自分の家族を守り決して不幸にしてはいけない、と自覚した。「そうだ、俺は何をいじけていたのだろう。」愛する女性を妻にしたというのに。彼は自嘲気味に口ビルの片端を上げて微笑んだ。なぁ、彼は目の前の息子に笑顔を向けると話し掛けた。「なぁ、何を父さんは思い悩...うの華415

  • うの華4 13

    「いけないと思うよ。」子は言った。「もう済んだ話でしょう、蒸し返すの止めたら。」。父に背を向けて、子は窓の向こうを眺めると言った。「無用な詮索は止めなさい。」父は驚いた。妻の父、義父の声音である。口調もそっくりその儘だった。彼は、息子がこの義父の言葉を義父自身が口にするのを聞いたのだ、と容易に想像がついた。が、何時聞いたのだろう?。彼は疑問に思った。かつて自分がこの言葉を、義父自身の口から聞いた事は確かに有った。だが、部屋には2人っきりだった。確かにそうだった。彼はその時の場面を思い出してみた。「確かにそうだ。」彼は口にした。子供の方は彼に背を向けた儘、自分の後ろにいる父の様子を探る様な目付きで頃合いを計っていた。「何時聞いたにしろだ、」父は考えていた。清が自分にこんな事を言うところを見ると、自分の態度は問題に...うの華413

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    うの華382祖父は偉いなぁ、私は素直に感動出来た。私の事を厭う視線を彼から受けていながら、私は彼に対して敬愛の念を込めて微笑んだ。そんな私の視線が分かったのだろう、彼は一寸横を向いてか......>続きを読む12月のはじめは雨の水曜日。今年ももう最終月です。年末になって今年を振り返ってみると、祖父の50回忌の年でした。私はてっきり来年だとばかり思っていました。命日にはお経だけでも懇ろにと考えていましたが、命日月は過ぎてしまったので、どうしようかと思いましたが、このままですね。故人の供養は遅れてするものでは無いといいますからね。幸いというか、四年前の祖母の回忌の時に、四年の差ならと祖父母夫婦の回忌を合わせ、家にお寺さんを招き、ごく内輪だけで回忌を済ませました。なので、家にすると祖父母の50回忌法要は既に済んでいる...今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 12

    おばさん、泣いているの?。感じた通り、自分の目に映った通り、当たり前の事を当たり前に私はおばさんに問い掛けた。その涙が余りにも美しかったからだろう。子供の目にも彼女の涙に烟る瞳は美しく煌めいて感じた。その煌めきには宝石の様な鉱物の美しさが宿っていた。おばさんは答えなかった。ただ静かに自分の頬を濡らす雫を手の甲で拭った。その後彼女は顔を私から隠す様にしてその身を逸らした。そこで私が大丈夫?と、彼女に声を掛けようとした所でおばさんは彼女の夫の控えている階段へと歩み出した。夫の方もそんな彼女の様子を黙認して、寡黙にじいっと眺めていた。ごめんね、あんた。おばさんの声が聞こえる。と、彼はいや、いいんだと答えていた。私はおばさんの方が悪かったのかと漠然と思った。見るとおじさんは彼の妻の顔から視線を外し、彼の傍へとその視線を...うの華412

  • うの華4 11

    おばさん何かあったんだ。子は自分の友人の母の瞳の色を読み取ると言った。「おばさん、何か悲しい事が有ったんだね。」丁度、かつての一等近しい人の死の場面をその瞳に思い浮かべていた彼女はハッとした。幼さ故に無防備だった目の前の子供に、思わず自分の心の隙を突かれた様で。その幼い瞳に、自分が一番に大切に思う思いを仕舞い込んであった胸の奥底へと行成ズンと踏み込まれた様で、紛れも無い自分の真実を読まれた様で、そんな一種の恐怖を伴う嫌悪感が彼女を襲った。彼女は自分の子の友人に対して、今迄その子の身の上を親身に庇う様に寄せていた彼女の半身を起こし自分の身を退いた。それから彼女は何か言おうとしたが、何も言葉が浮かんで来ない。頭は真っ白になった儘、その儘で、平時の様に彼女に機転を効かせて来ない。こんな時は焦ってみるとピンと来るのだが...うの華411

  • うの華4 10

    「竹馬の友」彼女の唇から、この言葉とほうっとした微かに白く見える様な溜息が零れた。妻の言葉に階段の奥の空気が暗く淀んだ。彼女は慈しみのある微笑みを浮かべ玄関先へと静かに近付いて行った。玄関では子供がその淀んだ闇に気付いていた。子の意識は階段の暗がりが気に掛かる様子だ。自ずと視線もその闇へと向かい勝ちになり、友人の母親越しに子はチラチラと後を見遣るのだった。「気に入らないんだよ。」彼女は子に唐突に言葉を掛けた。「おじさんはこの言葉が嫌いなのさ。」彼女も気に入らなさ気に口にした。顔段の夫はどキリとした様子で背筋を伸ばした。そうしてその暗い雰囲気はみるみる改善した。「俺にはそういった事が分からないんだ。」彼は言い訳の様に口にした。そういう友達が俺にはい無かったから…。彼は言葉少なにそう言うと、静かに妻の方を見ながら立...うの華410

  • うの華4 9

    「友達だよ。友達は、友達だ。」あの子からそう聞いているよ。とここで夫の後ろになっていた妻の声が入りました。「ありがとう」囁くような声で、後方に目を遣ると夫は妻にか細く応じたのでした。ここでバトンタッチ、声の出なくなった夫を見越して、彼の妻はその顔に笑みを作ると前方に身を乗り出して来ました。夫は強張った体をずらす様にして妻とその位置を入れ替わりました。そうしてその直後に、ストンと、項垂れた彼は妻の真後ろの階段の隙間にまるで吸い込まれる様に腰を落とすと、項垂れた儘座り込んでしまうのでした。妻の方はそんな夫の姿に一瞥をくれると、直ぐに彼女の面を目の前の子に向けるのでした。彼女は恐る恐る子に語りかけます。彼女は努めて自分の相好を崩した儘にして置きました。「友達だよね、智ちゃんと家の清。」目の前の子供は相槌を打って、ウン...うの華49

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華101こんな古めかしい木のせいで怪我するところだった。「もう!」と私は床を掌でバシバシと打った。「痛!。」私は新しい痛みに声を上げた。床を打った掌を仰向けてみると、赤い血......>続きを読む雨の今朝。寒くなったせいか、はたまた暗いせいか、今日の目覚めは頗る悪かったです。何だか不安な近頃。スマホが不調になった頃から、何だか段々と不安感が増してくる感じです。何かの悪い兆しでなければよいのですが。私の悪い予感は当たりやすいので、不安。😓今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 8

    「えっ!」「ええっ!!」2人同時に大きく目を見開いた。彼等が揃って驚愕の声を上げた様は、流石に鴛鴦夫婦の体であった。玄関に立つ子供にすると、その夫婦の驚きの仕方といったらなかった。彼等は正に絵に描いたような仰天の仕方をしたのだ。彼等は揃って腰を引いた、というか、上半身を折る様な形で前に身を乗り出した。こちらに飛び出す様にして見開かれた眼。その眼の大きい事、丸い事といったら、如何にもその頃の4コマ漫画にでも出て来そうな驚きの構図だった。子供の目にも正にそれその物だった。そんな彼等の仕草に対比を見せて、冷静沈着、全く動き無く夫婦を見守っていた子供だったが、内心にはふっと湧き上がって来る可笑し味を覚えていた。目の前の階段という舞台で繰り広げられた、遊び友達の親が演じた夫婦漫才、そんな一場面を見る様な心地がしていたのだ...うの華48

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華98「縁側を見ているんだよ。」私は素直に答えた。私自身が興味のある物を祖母に知ってもらう事は、私に取ってとても嬉しい事に思えたからだ。「縁側?。」祖母は何やら不思議な面持......>続きを読む日の出が遅くなりました。お天気が悪いのか暗い朝です。午後は雨になり、祝日の明日からは寒くなりそうです。洗濯物が乾かなくて困ります。洗濯物を室内で長く置くと、生乾き臭くなり再度洗う事に。二度手間です。サンルームが欲しいなと、過去に考えたりしました。建物の敷地が増えると、固定資産税も増すんですって、ほんの僅な事なのに、へーっと思ってしまいました。乾燥機の電気代の方が、それよりは安いという話でした。それで、サンルームは没になりました。そう言われながら、その後乾燥機も買ってないですね、家は。今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 7

    空気を震わせる、妻の凛としたこの声を聞いた夫は眉を顰めた。彼は彼女を労う様に、「縁起でも無い。」と呟くと、あの子は何だってこんな時間にこの家へやって来たんだ。と、迷惑そうに呟いた。実際に、迷惑な、拠りにも拠って、家だなんて、と、口にした。『しんみりとした雰囲気は変わらないなぁ。』私は思った。折角おじさん達が話し始めたのに、その後は相変わらずの沈黙の時が訪れていたのだ。私はこの彼の家の店先の重い雰囲気に焦ったくなって来た。もう帰ろう、否、清ちゃんを誘わずに1人で遊びに行ってしまおう。私は決意した。と、天井でバタバタと動きのある音がした。2階に近い位置にいたおじさんが何だと驚いた声を出した。如何したんだ、何かあったのかと上に声を掛けた。2階から返事は無い。様子を見て来ると妻に言うと、おじさんは階段から2階へと消えた...うの華47

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    うの華374彼は興味深気な顔付きをして私を見た。面白そうに私の口元を眺めていたが、よく回る口だなと呆れた様に嘆息した。祖父は、「分からないなぁ。」、そう呟くと、不思議そうな目をした私に、「......>続きを読むよいお天気でした。久しぶりのアップです。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    卯の花372いやぁ全く驚いたなぁ、本当に。お前にこんな芸当が出来るとは。それもここ迄やるとは、なんともはやだ。玄人はだしというものだよ。大した役者も顔負けという物だ、何しろ階段から落ちて迄見......>続きを読む今日はまあまあのお天気てしたね。相変わらず題名は漢字で、誤字のまま。悪意を感じます。今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 6

    ミシリミシリと、おじさんは妙に視点を何処かに据えて、強面の顔のみ私に向けながら階段を降りて来た。私の方はその顔が清ちゃんの父親の顔と分かると、にっこりとして彼に挨拶の声を掛けた。しかし私の声掛けにおじさんは特に表情を変えなかった。そうして無言でゆっくりと自分の顔を妻の方へと向けた。そうやって私の視線からようようと自分の顔を外した。彼はおずおずと、向かい合った彼の妻の肩に自分の片手を掛けた。そうして案じる様な調子で、大丈夫なのかと、溜息混じり、密やかな言葉を彼女に掛けた。そんな夫に妻の方は顔も上げず、静かに彼より下の階段に佇んでいた。俯いた儘、彼女は自分の横に立つ夫に心持ち身を寄せたように見えた。伏し目がちの妻、そんな眼下の彼女を彼女の横方向から見下ろす夫。階段に佇む2人の周りには、急にしんみりとした空気が漂い始...うの華46

  • うの華4 5

    おばさん、泥棒?…。私は小声で清ちゃんの母親に問い掛けた。そうなのだろうか?。2階には暗躍中の泥棒が?。私はこの家がとんだ取り込みの最中、危難にあっている時に折悪しく気合わせたのだろうか。否、『折良くだ!』、私は思い直した。「おばさん、泥棒が入っているんだね。」、私は緊張に頬を紅潮させ、2階には聞こえない様、階段に踏み留まっている静ちゃんの母親に小声で囁き掛けた。するとおばさんの顔にも緊張が走った。私が見守る中おばさんの顔には影が差した。やはりそうなのだ、私は思った。緊急に迫られているこの家を、私の友達の清ちゃん一家を、折よく気合わせた私が救ってあげなければ。私は如何したら良いだろうかと考えを巡らせ始めた。その時2階の階段の降り口から声がした。「やっぱりおかしいんだろう。」そう上から階上のおばさんに掛けられた声...うの華45

  • うの華4 4

    仕事って、と、おばさんは不服そうな顔付きで少々口を尖らせ物言いをした。「こちとらは、はぁ、ご飯も未だだっていうのに…。」ご飯?、ああ、昼ごはんか。私は思った。続けて、『随分遅い昼ご飯だなぁ。』私は思った。私など昼食の後の昼寝まで終えて、その後にここ迄来ているというのに。やや呆れた目付きでおばさんを見上げると、おばさんは如何いう物か怒った顔を見せずに、今までの緊張がほぐれた様にふうと肩を落とすと、如何にもほっと安らいだ様子で優しい笑顔を私に向けた。何時もの智ちゃんだね。自分に言い聞かせる様にそんな事をしんみりと言うと、この家の2階に向かって、何時もの智ちゃんだよ、治った様だよ、等言った。一瞬ええっと驚きの声が上がったが、シイっとそれを抑えるような声と気配が伝わってくる。如何するんだ、如何って、等、その後も話は続い...うの華44

  • うの華4 3

    この間やや間があったが、遂に階段の女性はおずおずと私に顔を見せた。それは果たして清ちゃんの母、彼女の顔に相違なかった。彼女の顔は何だか緊張気味で、私に対して何時もの様に愛想の良い笑顔を見せていなかった。が、その瞳はじいっと私の顔を覗き込み、その内優しい視線を私の顔に注いで来た。「今日は、おばさん。」私はいつもの様に笑顔で午後の挨拶をした。昼寝から覚めた後の外遊びには、何時もこの午後の挨拶が欠かせないのだ。と、私は理解していたので、いかにもしたり顔で悠然と微笑んだ。そんな私に彼女も目を細くして微笑んだ。何時もの智ちゃんだね、彼女はホッとした様に声を出した。「病気はもういいの?。」おやっ?と私は思った。暫く風邪は引いていない、な。と思った。私が風邪を引くのは冬だ。もう夏も近いというのに、何だろうと思った。この頃の私...うの華43

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    卯の花368「お祖父ちゃんは…、長く生きて来て、…商売も上手いし…。」如何いったらよいのだろうか、私は未だ自分の言いたい事がよく分からず悩んでいた。「お金だって沢山儲けたんでしょう。」思わ......>続きを読むよいお天気でした。明日は雨になるようです。寒くなるかしら。相変わらず、誤字の題名が続く昨年の作品。昨年は、パソコンが前回の文字を記憶して変換候補が表示されていたので、それをクリックしただけでしたが、こんなに漢字が続いているなんて、と、妙に感じます。何時もひらがなを見て、クリックしていましたからね。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    卯の花367この世界に生まれ出て未だそう間もない私だもの。この世を長く過ごして色々な経験を持った大人の祖父や父、他の我が家の家族やこの世の中の様々な人々は、当然こういった祖父の物言いや遣り取......>続きを読むよいお天気でした。また「うの華」が、誤字になっている回です。毎回気を付けていたのですが、この作品の題名は、ウツギの花ともおからとも関係ありません。単に「うの華」です。うは、うしとみしよぞ、というべきでしょうか、そんなうの字の華です。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華92父について、祖母または祖父が何を如何云ったのか私は知らないが、彼等が親の心構えとして何かしらの忠告や助言をしてくれたのは確かだった。何故なら父は、それ迄の様な私を疑う......>続きを読むよいお天気の、11月最初の土曜日。もう、小春日和と言ってもよい時期でしょうか。未だ早いかもしれません。昨日の事、年賀印刷の申し込みをしていました。宛名印刷の入力中、11件ほど入力したところでアプリが開いていないという通知が画面に出て、閉じるしかなく😞💨がっかりでした。時間と労力の無駄使いでした。母の年賀から始めていたので、出さなくてよい、無駄になる、という予兆かと、嫌な予感というものでした。それで今日、早速母に見舞いのカードを出して来ました。元気になります、良かったね、というものでした。今日の思い出を振り返ってみる

  • うの華4 2

    如何したのだろう?、家の奥からは何の返事も無い。何時もならばはーいと、清ちゃんの元気の良い声か、彼の両親の何方かの、智ちゃん遊びに来たの、等、明るく愛想の良い声が返って来る筈の家なのだが。如何した物かその日はシンとしていて、その家の屋内には全く人の気配が感じられなかった。妙だなぁ。私は首を捻った。この界隈にこぢんまりと佇んでいる家とはいえ、これでも清ちゃんの家は商売屋なのだ。大体、店に当たるここ玄関先に誰もいないのも妙だった。また、たとえ店にこの家の人間が誰もいないとしても、この家の店先である筈の玄関に誰か訪問した人物が立ち、声を掛ければ、それだけでもそれ客が来たとばかりにハイハイと、店の主人である彼の父だけでも顔を出してきそうな物だ。商売は主として清ちゃんの父が行ってはいたが、普段彼の父が忙しい時は彼の母も客...うの華42

  • うの華 4

    気が付くと、過去に題名の「うの華」のうが、卯になっている回を幾つか発見した。1つ直してみたがきりが無い。これは単純な変換ミスなのだ。そこで、ここでお知らせ迄と伝え置く事にした。さて、いよいよ「うの華4」、起承転結の「結」の部に入る。正直、我ながらこの物語が最後迄行き着き、上手く1つの話として纏まるかどうかと甚だ不安に思っている。この物語を書き出した最初の1話、「起」から筆を起こした理由がこの4で明らかになる予定なのだが、私はそれをきちんと書き尽くせるかどうかとやはり甚だ不安に感じるのだ。それは今になると当時の記憶が極めてあやふやである事や、又、その動機自体を無理に書く事も無い様な気がする為だ。元々私が成す事も無い事なのだ、当時もそう私の方は言われていたのだから。無理する事も無いのだ。が、当時、私が大人になって、...うの華4

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    卯の花364暫くして、私はあまりスッキリしない状態を不思議に感じていた。が、しゃがんでいた足が疲れて来た。それに何時迄もこの場所にはいられないなと、この場所に見切りをつけた。体調の不調を不......>続きを読む曇り空の今朝。スッキリしない空色が続く気がするここ数日です。選挙が終わって落ち着いた空気を感じる朝です。今からは晩秋に向かって行く季節、四季の移り変わりを感じています。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華89何処の家庭でも相関図と言うのは有るのだろう。元々私の祖父と父は相性が悪かったらしい。そこに祖母と私の母、私が加わると、矢印への書き込みは多岐に渡り始める。長年の犬猿の......>続きを読む曇り空が多かったように思う日曜日。今日は選挙投票日ですね。近年、大抵は投票に行かずに過ぎたここ何年かでした。今回は当日どころか、期日前投票してきた私です。前以て投票してしまうと時間的な余裕があって良いものですね。ほっとした気分でいられました。忙しない選挙カーの声や電話が、難なく余所事になってしまう。投票を終えて仕舞うと、そんな普段の環境が私的に戻って来ていました。今回のように、期日前に投票したは初めての経験でした。新鮮で、一寸嬉しい発見でした。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華88お、お前なぁと、父は真剣な顔で私に迫って来た。とその時、「四郎!」襖の向こう側から父の名を呼ぶ祖父の声が響いた。その時の祖父の声は怒りを帯びていた。「ちょっとこっち......>続きを読む良いお天気の土曜日です。午前は買い物に出掛けていました。天気が良いと気分も良い物です、また外に出掛けたくなります。さて、先日の給湯器の不具合の時、中に鼠が入った様子があると聞いてから、家にネズミ用の忌避剤を買って来てありました。給湯器周りにその薬剤を設置せずに何日か過ぎていました。今日漸く外に設置して、その匂いの強烈な事に驚いていました。手袋をしていましたが、手に匂いが移っています。部屋で設置の準備をしたので、部屋の中も臭いです。これでは鼠も給湯器の周りに近づけない事でしょう。納得の臭さで...今日の思い出を振り返ってみる

  • 酣の秋

    昨日の事、秋の深まりと、その次に来る冬の季節を思い浮かべると、自然『冬来りなば春遠からじ』の言葉が思い浮かんで来ました。この言葉を言う一歩手前の季節、それが今だなぁと考えていました。その後、こんな事を現在考えたのも、今現在の母の入院が起因であると感じた事です。このコロナの時期です、母に直接会ってこういった言葉を掛け、病に対して励ますという事は出来ませんが、この言葉は本当に、今の場合に有効な言葉だなぁとしみじみと感じ入っていました。ゆっくりと養生して、春には元気になるだろうか?。そんな事を考えていました。母の入院が決まって、思い浮かんだのが父の時の事です。父の時はもう最後という時でした。殆ど入院した事の無い父でしたから、具合が悪く、ほぼ寝たきりとなった身になると、自らに可成り不安だった事でしょう。認知症でもあった...酣の秋

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    卯の花360あゝまたか。やはりあの人の息子である、と私は思う。今回の私は、分かっているのに引き止めるという言動が、あの今し方階段の方でそれを行っていた、祖父という人の子である事と、横に来た......>続きを読む日の出が遅くなりました。廊下が朝焼けに朱に染まるのを見ると、日差しの弱くなった事を感じます。さすが、もうすぐ霜月ですね。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華86その年の居間の障子襖が1度張り替えられて以降、気候の良い時期、日々私は盛んに外遊びに興じていた。毎日のように近所のお寺へも頻繁に遊びに出かけ、近隣を走り回り、日増しに......>続きを読むよいお天気でした。玄関先の鉢の冬支度をしていました。午後は疲れて一休みです。😌今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    うの華357ほうっと息を吐いて、危ない危ない。真顔でそう漏らす祖父に、私は彼が階段から落ちかけたのは芝居では無く、如何やら本当の事だったらしいと気が付いた。「大丈夫、お祖父ちゃん?。」如何......>続きを読む午前は良いお天気でしたが、午後は曇ってきました。何だか気だるい感じの土曜の午後です。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華82この時の祖母は、私の両親が、お互いに喧嘩したのだと勘違いしていた。私が彼女に、父がこうなった経緯について順に説明し出すと、「お母さんと喧嘩したんじゃないんだね。」と了......>続きを読む午前は良いお天気でした。午後は雨になる気配です。10月も下旬に入り、街路樹が色付いているのを感じます。秋の深まりと共に、陽の落ちるのも早くなってきました。最近、家の鉢花から零れたらしい花が、隣の駐車場に咲いていました。摘み取った方が良いでしょうね。庭にでも持って行きましょうか。今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    うの華354『あともう少しで部屋だ。』私はホッとした途端、寝室に入る1歩手前の場所で、如何いう物か突如として尿意に襲われた。私は愕然とした。そうだ、暫く行っていないと思った。それからこんな......>続きを読む今日は良いお天気になりました。日差しが暖かいです。昨日は寝起きの具合が悪く、風邪かと心配しましたが、日中気温が上がるに連れて体調が良くなり、ここ数日の寒さで冷えたのかなと考えていました。そこで午後から部屋にコタツの用意をしました。ちょっと掃除してコタツを据えるだけのつもりでしたが、ついついあちらもこちらもと片付けて、結構あれこれと動き回り、洗濯、掃除機、配置換えと、長時間動いてしまいました。これだけ動けるから風邪でも無かった、と、ホッとしたり。それでも時に頭痛を感じると、やっぱり風邪気があると思い直し、...今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華80「世の中、『助長』という言葉が有る。」翌日の朝、父は私に言った。階段のある部屋でだった。「助長だぞ。そういう言葉が世の中には有るんだ、覚えて置け。」「これから伸びると......>続きを読む昨年はパソコン不調でお休みになっていました。早いですね、もう一年が経つ様です。年賀状作成時期に合わせて、そろそろ新しいパソコンが必要かもしれません。プリンターも古くなっているので、同時に買い替えすると良いのかもしれません。寒くなってきたせいでしょう、朝の目覚めが悪くなってきました。喉に違和感や、頭が重く感じられたりします。風邪を引いたのかと思うくらいです。熱は無いので、日中迄様子を見て家にいます。出掛けたいのですが、体調が悪い時の外出は控えた方が良い、という判断は出来ます。今日の思い出を振り返ってみる

  • スマホ修理中

    先日の事、私のスマホ画面が開かなくなり、とうとう初期化の事態になってしまいました。今修理中なので、もしかしたらその間連絡の不具合があり、迷惑をかけているかもしれません。よろしくご了解ください。一応代車ならぬ代スマホを借りて使っています。この様な具合で、給湯器の後はスマホと電化製品の不具合が続いている私です。どれも幸いな事に新品と買い替えにならずに過ぎて来ました。経済的に過ぎて行く様なのでホッとします、が、私のスマホは購入後2年が過ぎていたので、この機会に買い換えても良かったかなと思ったりしました。購入した時点で既に古い機種のスマホでした。その為お値段もショップでの最安値であり、ガラケーからの乗り換えに、私には慣れないスマホ操作になるからと、安価な物でよいというのがこのスマホにした第一理由でした。ショップであれこ...スマホ修理中

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    うの華353思わずゾ―ッとした。きっと私の顔も青ざめていた事だろう。すかさず寝室に戻ろうとした私の足は、竦んで動けなくなっていた。困ったと思ったが、身動きできないのだから致し方ない。そこで......>続きを読む今日は長袖では暑いくらいでした。夜になって雨が降り出し、明日は涼しくなりそうです。最近はこちらのコロナの波も落ち着いて、連日買い物に行く事が多くなりました。こんな時、以前は母の所へ差し入れにしようと考えて、何れにしようかと店頭に並んでいる季節の果物を眺めていました。その内手に取って物色です。また、普段は母の好物を安価な時に買い求めたりしていました。そうしてそれらを母の所へ持って行くのが楽しみでも有りました。現在、高齢になった母は食べられる物が限られてきました。以前の様に何でもパクパク、持って行く食品は何...今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華75「父と息子でこの違い。」そう父は茶化したように言って、その実、内心の不満をちらりと覗かせているのが私にも分かった。その日の夕餉は明るく賑やかだった。祖母も明るい表情......>続きを読むよいお天気になりました。夏日になるそうです。朝は10月それなりの涼しさでしたから、電気ポットの試運転をしました。これで秋が深まってもOKです。さて、先日引き取って来た母の荷物、少しずつ片付けていますが、お風呂道具をどうしようかと思い、割合目に付く場所に放置したまま、10日程過ぎました。この風呂道具、眺める度に何か思うものです。それと分かる程でも無い、しみじみとした感情が湧いて来るのを感じます。やはり母娘、よく入浴時間を共にしたせいでしょう。母の背中、肌の質感等脳裏に彷彿として、瞼に母の温も...今日の思い出を振り返ってみる

  • 今日の思い出を振り返ってみる

    今日の思い出を振り返ってみるうの華74「お前あの時妙な笑い方したなぁと思ったんだ。」それでかと言いながら、父は縁側にいる私の所へとやって来た。その日私は変な夢を見る事無く朝の目覚めを迎えホッとしていた。......>続きを読む今朝は雨空です。暗い感じ、日の出も遅くなってきました。母の事が一段落したと思ったら、給湯器の不具合です。基盤が悪くなっていたとか。次から次へとしなければならない事が出て来て、慌ただしい今秋です。なんでも、お湯のタンクの下にネズミの糞が有ったとか、驚きでした。野鼠がいるのかもしれないとのことです。自然化、野生化、過疎化と、目にする物も変化しそう。近年はムカデ、蛇、野鳥、と、今度は鼠かと、家に買ってくる忌避剤の種類も増えて行きます。さて、給湯器は明日まで使えそうにありません。まだお湯は出るよう...今日の思い出を振り返ってみる

  • 10月も中旬

    早くも中旬になった10月。朝から雨です。母が施設を変わったこともあり、あれこれといそがしかった先月今月。最近目につくのが電化製品の故障や不調です。思えば、昨年暮れに壊れたパソコンから始まり、今年は8月末に洗濯機が、そして現在は湯沸し器のコントローラーが不調です。画面の表示が全く出ていなくて、全体が真っ暗な儘です。前触れもなく、昨晩急に表示が消えたようでした。少し前迄は点いていたのに、と、昨晩は家族皆で不思議がっていました。パソコンは10年以上、洗濯機も10年以上、そして、湯沸かしも10年経ちます。これらの電化製品が家に来た頃は、父も元気でした。湯沸かしの頃はもうボケていましたが、元気は元気でした。懐かしい気がします。家の電化製品にも改めて年年歳歳を感じています。10月も中旬

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Jun日記(さと さとみの世界)
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