飯田木工所の赤木さん--6
その朝、兄は本来休日だったが臨時で出てもらえないかと頼まれていると言って出勤した。幸平はやや起きるのが遅かったので父も母もは既に朝食を済ませていた。母は庭に出ているようで、父はぼんやりとテレビを眺めていた。食事はもう済んだのかと声をかけたが聞こえないのか返事はなかった。 母が作ったみそ汁とその辺のもので勝手に食べていると、父がフラッと、まるで空気のように軽い感じで物音もせず縁側から出て行こうとしていた。いつものように買い物用のリュックを背負って靴を履いている最中だった。ふと気付いて「散歩か、気を付けて」と背中に向かって声をかけたが、返事もなくそのままノソノソと出て行った。
2024/07/04 05:42