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母はふるさとの風 https://blog.goo.ne.jp/hanao-hajime

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 <br>ここはささやかな、ポエムの部屋です。

waremokou736
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2019/09/29

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  • コスモス 宇宙の花

    この花園にくると空に心は跳び青い空に向かい駆けてゆくだけ青い空の果ては暗い宇宙宇宙は暗くても地球の空はあおくてあかるくて地上はいきものの息吹き色彩の波形の祭りこの庭を花でうずめ幸せの形を与え誰かがどこかでまた新しい計画を立てだす哀しみを幸せに替え溢れてくるもの花のひとつひとつに解けない何かがひっそりと宿り毎年やってくる季節を祝っているコスモス宇宙の花

  • 夏の忘れ物

    夏の忘れ物遠い夏の忘れていたたより絵日記の仔馬のしっぽみたいなトウモロコシの毛が赤くもつれて黄色いカンナの丈は高く9月になると赤とんぼが物干し竿などに休みに来る高原の初秋少し疲れた鳳仙花の種がはじけて乾いた大地にころころ転がったいきなり高くなった空には巻雲うろこ雲季節を知らせて夕暮れは静かに早まる高い山の向こうまだ入道雲の子供たちが太陽のご機嫌を伺っているいつか見た秋のはじまりうつくしい季節の交差点夏の忘れ物

  • 茄子

    小さな茄子曲がった茄子それでも茄子涼しかった夏のベランダで紫の花をつけ実った茄子がありました猫はなんだなんだとやってきてふんふんと匂いを嗅ぎ首をかしげて去りました月日去り茄子を植えても蒸れて育たずねこも老いてなくなりましたやさしかった日本の快適な夏よあの日の小さな茄子とねこがけなげに涼風を運びます茄子

  • 花火

    遠い花火雷鳴のように響く遠い花火部屋の灯りを消すと光が空に謳って散る花火に友は父を見るといういつもいつも短く散った父を見るという花火は夜の祭り夏の夜の祭りは亡き人人の蘇りか宴か夏は還ってくる子供の頃のゆめ果たされずに終わった望みたち亡き人々の優しいまなざしやこえラジオ体操ヒグラシの夕べ遠い花火家々の上に大きく広がり瞬く間に消えゆく夏の夜の心なぐさめるひかりの宴花火

  • はちく

    剥いた破竹のきれいな細身を糠で茹でカツオの出汁やみりんとおさとう昆布だしなどもさらりとかけ日本酒などもさっと振り掛け鉄板で焼きこんがりおこげの色を確かめ白い皿にのせて私は食べる外は少し蒸し暑い梅雨の空遅いタケノコの味をことしもほくほく味わいながら厳しい太陽の季節の前の幸せなひとときを過ごしますはちく

  • 東京タワー

    赤い鉄塔の東京タワー子供の頃のヒーロー東京タワーは今も私のヒーロー芝の森を従えて聳える私の宝ものどんな立派な建物よりハイテクノロジーのビル群よりもこころを波たたせる赤い鉄塔優しかった東京の面影宿る大好きな東京タワー時々そばに来て仰ぎ見る富士山のような私の赤い鉄の塔ふるさとのような東京タワー昭和のヒーロー東京タワー

  • 白鷺の城

    白鷺の城は五月の青空突風吹き抜ける天守の足元で人は夢を見るのです何度もいざなわれやがて天守閣の階段を昇り切れなくなっても白いお城は心の中に過ぎる時間を刻みますこのみどりの風の中を吸い込まれるようにたくさんの人々が白鷺の姿を追い絶えず訪れ去って行くつばさ広げる鳥のように石垣たちに護られ羽ばたこうとする白い城はもののふの心きりりと百年後も聳える美しい城塞白鷺の城

  • 青葉の季節白い花

    白いアイリスが咲いた白いアイリスは父の形見畑に咲いていた白いアイリス紫菖蒲の花の群れに真白い花が離れて咲いてた無垢の姿漂うほのかな香りいつくしむと花は応えて青い空の下で微笑していた父の姿瓦の波みな無くなっても私の庭できりり咲いてる白いアイリス青葉の季節白い花

  • はる

    はるは沢山のいのちがやってくるはるは暖かい日差しにさそわれちいさないのちが産まれてくるつぶらな目ひたむきなまなざしそのいくつかは陽を浴びずに去ってもゆく幸せになるため生まれても天に愛されずに消えてゆくもの奇跡の星にはなぜか不幸せのさだめがあるこの世に永らえず沢山の命がどこかで果ててゆく頂いた小さな命を楽しみ歓びやがてみな静かに去ってゆく花は咲き空は青く陽炎がゆれる毎年やってくるいのちよ春の日のはる

  • てまりうた

    てまりうた(わらべうた)てんてんてん天神様のお祭りでてんてんてまりを買いましたてんてんてまりはどこでつく梅のお花の下でつく下でつくてんてんてん天神様の石段はだんだん数えていくつあるだんだん数えて二十段段の数ほどつきましょうつきましょうhttps://www.youtube.com/watch?v=JRGbCymN_TMてまりうた

  • 空き地で梅は香る

    よこみち通りの空き地の古い梅の木をわざわざ見に来る人はいない空き地は枯草もまばら誰の土地かもわからない閉店したばかりのパン屋のビルは空き地のそば午後の陽を浴びているささやかな空き地にも春の花は何時かは咲くだろうそ知らぬ顔で折々通る人を見下ろす沢山の花に纏われた大きな幸せの木よ人影も少ない空き地で梅の大樹は辺りに香りを漂わせ力強く丈高く立つ空き地で梅は香る

  • 雪降りつむ

    雪三好達治太郎を眠らせ太郎の家に雪降りつむ次郎を眠らせ次郎の家に雪降りつむ雪降りつむ

  • いのち菜の花

    食べるため買った葉みどり瑞々しい葉から黄色い花が伸びる菜の花はいのちかけた春の花南の海辺の街は日差しが射し気の早い菜の花が春を告げようとするが北の海辺は哀しみばかりこの花をじっと見つめると細長いたおやかな私たちの国の島影その島の中にあるささやかな営みのあった街街雪に悶える哀しい家が浮かぶ春を運ぶ黄色い花にいのちの喜びと悲しみが交差する蜜の匂いのする花に何の罪もないが黄色い菜の花が凍り付くような如月いのち菜の花

  • 新年

    まどろんで私は暖かい陽を浴びて眠っていた風のない静かな真昼今年という年がすでに始まり陽は天中高く少し傾き青い空には凧の上がる気配はなかったコンコン羽子板つく音もなかったラジオからきこえるにぎやかな笑い声ふわりこころに浮かぶ「お正月」は夢の中に溶け消えていた南天の赤い実が春の陽に光って揺れた今年の元旦新年

  • 高村光太郎の冬の詩

    冬が来た高村光太郎きっぱりと冬が来た八つ手の白い花も消えいちょうの木も箒になったきりきりともみこむような冬が来た人にいやがられる冬草木に背かれ、虫類に逃げられる冬がきた冬よ僕に来い、僕に来い僕は冬の力、冬は僕の餌食だしみ透れ、つきぬけ火事を出せ、雪で埋めろ刃物のような冬が来た高村光太郎の冬の詩

  • 白秋の詩 落葉松

    落葉松北原白秋からまつの林を過ぎてからまつをしみじみと見きからまつはさびしかりけりたびゆくはさびしかりけりからまつの林を出でてからまつの林にいりぬからまつの林にいりてまた細く道は続けりからまつの林の奥もわが通る道はありけり霧雨のかかる道なり山風のかよう道なりからまつの林の道はわれのみかひともかよいぬほそほそと通う道なりさびさびといそぐ道なりからまつの林を過ぎてゆえしらず歩みひそめつからまつはさびしかりけりからまつとささやきにけりからまつの林を出でて浅間嶺にけぶり立つ見つ浅間嶺にけぶり立つ見つからまつのまたそのうえにからまつの林の雨はさびしけどいよよしずけしかんこ鳥鳴けるのみなるからまつの濡るるのみなる世の中よあわれなりけり常なけどうれしかりけり山川に山がわの音からまつにからまつのかぜ白秋の詩落葉松

  • 青い空の下で

    青い空の下で風がそよぎ花が咲く赤い色は命の色黄色は裏切りの色とヒトは言う何も語らず花は咲き風に揺れる秋の空は高く青く野原は眠くなるように平和だ清涼な空気の中で咲き乱れる花たち生きる喜びの形と色に溢れる花たち世界のどこかで花の匂いも忘れ争う人々哀しみを痛みを絶望をこの花たちはひそかに知っている世界中に同じ青い空が広がっている青い空の下で

  • 秋の月 詩人のこころ

    白月三木露風照る月の影みちて雁がねのさをも見えずよ吾が思う果ても知らずよただ白し秋の月夜は吹く風の音冴えて秋草の虫がすだくぞ何やらむ心も泣くぞ泣き明かせ秋の月夜は秋の月詩人のこころ

  • 疲れた日は畳の上で

    思いっきり疲れた日は青い畳の上に寝転がってあっちごろごろこっちごろごろそして腹ばいになり四肢を思いっきり伸ばして子供の頃のように猫のように人目はばからずに伸びをしてまた仰向けになり天井の見知らぬ模様を眺めたり窓からそよいでくるほのかな風をほほに感じながら生きた今日の時間をなぞり大の字になって目を閉じてふっと笑いまた伸びをして畳の柔らかい厚みの上で思いっきり息をして人間をまた続ける気力をいただくのです疲れた日は畳の上で

  • 夏の朝の花

    まだ熱の冷めやらぬあけぼのの薄い光の中に咲く朝顔は日の出とともに輝きしっかり主張し伸び伸びと開き真昼を過ぎるとはなびらを静かに閉じてゆく夏の夜明け太陽の登り切るまでの短い時間そして訪れる晩秋の冷ややかな大気にも負けず咲いて細い幹が凍って枯れるときまで青紫の美しい色と形で咲きつづける絹のように薄いあさがおの花夏の朝の花

  • 青春の真ん中にいるときは

    青春の真ん中にいるときは何にも見ていなくて過ぎ去る時間の重さも知らない青春の真ん中にいるときは流れる汗も勝手に落ちて疲れるということを知らない青春の真ん中は台風の眼周りの嵐は見えなくて遠い世界をめざすだけ夏の空海の匂い湧水の山の小道はつづく青春は何処にもいて爽やかな景色に埋もれていた描きかけの絵をたくさん持ちキャンバスの白さにときめいて色を探していたミストの時代忘れかけた青春の真ん中夏の面影のシルエット青春の真ん中にいるときは

  • 蓮のうてなに

    蓮の葉が繁り蓮の花が咲く薄い紅いろの花が開く蓮のうてなにじいちゃんが載って行った遠い日ねこたちが葉に載っていったあの日蓮の葉は池を青く覆い生き生きと呼吸する広い葉の上にじいちゃんも猫たちもいまは見えない姿になり住んでいる蓮は夏の空をめざしここちよい葉を広げるすがた無くしてにぎやかにいきるいのちを抱えて青い空を仰ぐ鯉や塩辛トンボらをいつくしみ夏の池は青い蓮の葉に埋もれる蓮のうてなに

  • 青い花

    雨に咲く青い花空と海を映す青い花それは心の平安を呼ぶ色切り取り花瓶に差すとはなは少し寂しそうに天を仰ぎそよぐ風落ちる雨語る仲間を探して少し体よじり運命を知って黙ってさくだけ切り取った花の声が聞こえ少し悲しい人間は青い花を傍らにみどりの茶をすするだけ青い花の優しさを感じながら青い花

  • 青い実

    可愛い小粒の実山椒の実るころふるさとは青に埋もれはじめヨシキリが梅の木に子育てを始める季節青い実大きなヒバの木の根元にさやさやと山椒の葉は茂り太陽の光がやわらかに差し込む山麓に太陽の季節が来る山椒の実に塩をまぶし透けるガラス瓶に入れみどりの色を楽しみ想い出す青葉若葉の父母の家青い実

  • 五月の海・灯台

    灯台はすっかり老いてしまいましたそして今はうとうと昼寝の毎日行き交う船は増え続けても灯台はもう働くこともせず丘の上でのんびりと生き続けているのです白いコスチュームに包まれた若い王子様のような姿があまりに美しく遠くから人びとも訪れ眺めたり写真に撮って楽しんだりするので灯台はまんざらでもないのです目を細め伊達男のように襟を正しポーズしてはふっと微笑みやがて寝たふりなどするのです初夏の風そよぎ皐月の空の青に海の青明るく光る若葉の高台に灯台は昔を忍びもせず今を楽しみちょっと粋で幸せな余生をドライに生き続けているのです五月の海・灯台

  • 花は千両役者

    桜が散れば牡丹の庭古い町の寺の庭で待っていましたと開く大きな赤い花は回り舞台の華やかな人気役者この季節の主人公多くの画人の心を乱し姿を佳人になぞらえ絵に残され痛快なほど快活に謳い舞うつややかなその花この世の春を謳歌して香りを振りまくかぐわしい大輪の牡丹花は千両役者

  • 天平の寺に

    弥生の空薄紅の花天平の寺跡は春の陽にあふれる短い春をめでて人はさくらにほのかに寄せる想い幸せの時間空は天平の青空千年を超えても空は青く風はそよぎ今はない伽藍にこころ寄せ生きることを楽しむ日楡の大木は手を広げ人と共に憩う天平の寺国分寺跡天平の寺に

  • 菜の花は黄色

    菜の花は黄色菜の花が呼ぶ春菜の花はふくふくと香る菜の花を見るとこころが躍る歳かさねても明るい黄色はこころに幸せを運び青春が蘇る柔らかな時代無垢のこころを誰もがまだ持っている菜の花が呼び覚ます幾山川の光る春菜の花は黄色風に載る菜の花の香り甘き菜の花は黄色

  • ねこの日石ねこ

    ねこの日石ねこ石ねこのねこの日顔寄せひそひそ語りあう座蒲団に載った石ねこ陽の当たる縁側で石ねことすごせば浅い春の陽が傾く猫はいつも何処からきて何故遠くに行くの猫は単独を好み騒音を嫌い老いた人の優しさと静けさを好み幼子らをやさしさで慈しみ暖かい体で寂しい人間をなぐさめるねこの日を石ねこと過ごすと旅に出たいとしい猫たちの歌う声が聞こえる如月の二月ねこの日石ねこ

  • 冬の陽に猫は人とまどろむ

    冬の陽にまどろむねこねこも怒りねこも喜びねこも驚きねこも悲しみねこも怖がり哺乳類のからだを持つじっと眼をみつめはなし声を判定し次にそなえて賢く生きる綺麗な肢体のなかま生・老・病・死の運命に乗りやがてはひともねこも全てを受容れいつかは去りゆく脚が二本でも四本でも息づかいを楽しみ生きてきた愛しい時間を想う冬の陽だまり冬の陽に猫は人とまどろむ

  • スタンド アローン 『坂の上の雲』より

    小さな光が歩んだ道を照らす希望のつぼみが遠くを見つめていた迷い悩むほど人は強さをつかむから夢を見る凛として旅立つ一朶(いちだ)の雲をめざしあなたと歩んだあの日の道を探すひとりの祈りが心をつないでゆく空に手を広げ降り注ぐ光集めて共に届けと放てば夢かなう果て無き想いを明日の風に乗せて私は信じる新たな時がめぐる凛として旅立つ一朶の雲をめざし*東京オペラシティコンサートホール森麻季2023.1.24スタンドアローン『坂の上の雲』より

  • 冬の詩 高村光太郎「冬が来た」

    冬が来た高村光太郎きっぱりと冬が来た八つ手の白い花も消えいちょうの木も箒になったきりきりともみこむような冬が来た人にいやがられる冬草木に背かれ、虫類に逃げられる冬がきた冬よ僕に来い、僕に来い僕は冬の力、冬は僕の餌食だしみ透れ、つきぬけ火事を出せ、雪で埋めろ刃物のような冬が来た冬の詩高村光太郎「冬が来た」

  • 食パン

    2つめの停留所でバスを降りるとそのパン屋があるグーチョキパンという名の店ではないが郊外の農家の隣のコロッケやのその隣にある小さな建物週に三日だけ開く店なのだ1.5斤のずっしり重い食パンを抱いて私の平凡な午後は嬉しく過ぎるそばの柿の木に朱色の実が残り野鳥がそれを見つめているむかし給食のコッペパンを焼く店の前を通ると既に焼くパンの香りが流れていた思い出にあるあのパンの匂い食べることは生きること戦いのない平和な国の有難いおいしい健康食パン食パン

  • 落葉松 高原の晩秋詩

    落葉松北原白秋からまつの林を過ぎてからまつをしみじみと見きからまつはさびしかりけりたびゆくはさびしかりけりからまつの林を出でてからまつの林にいりぬからまつの林にいりてまた細く道は続けりからまつの林の奥もわが通る道はありけり霧雨のかかる道なり山風のかよう道なりからまつの林の道はわれのみかひともかよいぬほそほそと通う道なりさびさびといそぐ道なりからまつの林を過ぎてゆえしらず歩みひそめつからまつはさびしかりけりからまつとささやきにけりからまつの林を出でて浅間嶺にけぶり立つ見つ浅間嶺にけぶり立つ見つからまつのまたそのうえにからまつの林の雨はさびしけどいよよしずけしかんこ鳥鳴けるのみなるからまつの濡るるのみなる世の中よあわれなりけり常なけどうれしかりけり山川に山がわの音からまつにからまつのかぜ落葉松高原の晩秋詩

  • 宿場の晩秋

    秋来れば空高く水清らかに山深く旅人の宿りの場蜜垂れるやわらかき餅をはむ在りし日の人の往き交うを思ひ地酒汲み山の獣の肉を焼き風の音を近く耳にし小寒い夜を寝明かす辺りは漆黒にも空に星人は皆眠りにつき人恋し旅の宿晩秋宿場の晩秋

  • いにしへ 日本の慕情

    ふるさとの三木露風ふるさとの小野の木立に笛の音のうるむ月夜やおとめごは熱き心にそをば聞きなみだ流しき十年(ととせ)へぬおなじこころに君泣くや母となりてもいにしへ日本の慕情

  • 秋刀魚の歌 佐藤 春夫の秋

    秋刀魚の歌佐藤春夫あはれ秋風よ情(こころ)あらば伝えてよ―――男ありて今日の夕餉にひとりさんまを食(くら)ひて思ひにふけると。さんま、さんまそが上に青き蜜柑の酸(す)をしたたらせて秋刀魚を食ふはその男がふる里のならひなり。そのならひをあやしみなつかしみて女はいくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。あはれ、人に捨てられんとする人妻と妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、愛うすき父を持ちし女の児は小さな箸をあやつりなやみつつ父ならぬ男にさんまの腸(わた)をくれむと言ふにあらずや。あはれ秋風よ汝こそは見つらめ世のつねならぬかの団樂(まどい)を。いかに秋風よいとせめて証せよかの一ときの団樂(まどゐ)ゆめに非ずと。あはれ秋風よ情あらば伝へてよ、夫に去られざりし妻と父を失はざりし幼児とに伝へてよ―――男ありて今日の...秋刀魚の歌佐藤春夫の秋

  • 日本の愛の詩人 室生犀星

    永遠にやって来ない女性室生犀星秋らしい風の吹く日柿の木のかげのする庭にむかひ水のやうに澄んだそらを眺めわたしは机にむかふそして時時たのしく庭を眺めしほれたあさがほを眺め立派な芙蓉の花を讃めたたへしづかに君を待つ気がするうつくしい微笑をたたへた鳩のような君を待つのだ柿の木のかげは移つてしつとりした日ぐれになる自分は灯をつけてまた机に向ふ夜はいく晩となくまことにかうかうたる月夜であるおれはこの庭を玉のやうに掃ききよめ玉のやうな花を愛しちひさな笛のやうなむしをたたへ歩いては考へ考へてはそらを眺めそしてまた一つの塵をも残さずおお掃ききよめきよい孤独の中に住んで永遠にやつて来ない君を待つうれしさうに姿は寂しく身と心とにしみこんでけふも君をまちまうけてゐるのだああそれをくりかへす終生にいつかはしらず祝福あれいつかはし...日本の愛の詩人室生犀星

  • 立原道造の詩界―珠玉の抒情ー

    のちのおもひに立原道造夢はいつもかへって行った山の麓のさびしい村に水引き草に風が立ち草ひばりのうたひやまないしずまりかへった午さがりの林道をうららかに青い空には陽が照り火山は眠っていた―――そして私は見て来たものを島々を波を岬を日光月光をだれも聞いてゐないと知りながら語りつづけた...夢はそのさきにはもうゆかないなにもかも忘れ果てようとおもひ忘れつくしたことさへ忘れてしまったときには夢は真冬の追憶のうちに凍るであらうそしてそれは戸をあけて寂寥の中に星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう立原道造の詩界―珠玉の抒情ー

  • 九月 花と月

    小さな家の小さな秋満月が訪れる日の小さな野花ムラサキと濃い赤と黄色の九月の花は芒の穂の下夜となれば外は煌々の月明かり人の世の争いや欲望や果てない渦と何ら関わりなく花は咲く月は輝く瑞々しい色ふくよかな花びら辛い炎暑を過ぎ花たちはささやかに届く神様からの贈り物九月花と月

  • 佐藤春夫の詩 『海の若者』

    海の若者佐藤春夫若者は海で生まれた。風を孕んだ帆の乳房で育つた。すばらしく巨きくなつた。或る日海へ出て彼はもう帰らない。もしかするとあのどつしりした足どりで海へ大股に歩み込んだのだ。とり残された者どもは泣いて小さな墓をたてた。佐藤春夫の詩『海の若者』

  • じいちゃん

    旧盆が来たら提灯飾ろう爽やかな秋草の私の盆提灯明かりを入れる夕べじいちゃんが還るほのかなあかりに面影見える旧盆が来るから提灯飾ろう水色のふんわり提灯ふるさとは遠く墓守も絶えたじいちゃんの優しい声読経する後ろ姿思い出の夜餅つく父母雲のように自由に変ってゆくこの世に生まれじいちゃんに愛された楽しい日々大家族は消え去りしきたりも途絶えそれでも旧盆には提灯飾り優しいじいちゃんと過ごす私の夏八月じいちゃん

  • 夏越しの大祓

    武蔵の国の大国魂神社北から続く長い参道には欅の大樹その古樹の祠幾たびか雷に打たれ雨風にさらされいま永い眠りの中境内に大銀杏のご神木武蔵の国の国衙に並び長い時間民を護り世の平らけきことを願い静かに祈り樹々に囲まれておわす社酷暑の昼夏越しの大祓の茅の輪凛として夏越しの大祓

  • あかひれ

    小さな水槽で泳ぐあかひれどこでうまれてどこでそだち魚だってものを考えたまに怒りたまに喜びしてさすらいを受け止め青いマリモを友とし人の目を喜ばせていることも気付かず餌の合図にヒレを振って寄ってくるいとしい姿のあかひれ小さなな水の妖精あかひれ

  • フェンネルは咲く

    フェンネルは伸びに伸びお空をめざして咲いた黄色い小さな花細い枝の先で楽しそうに揺れ揺れ咲いたフェンネルの種は薬草湯として袋に入れられ暖かい湯船のなか人間と一緒に欠伸して湯あみしてやがて袋から出され土に捨てられた捨てられたけどそ知らぬ顔で芽を出し伸びて蕾を開くのだなんという逞しさフェンネルは賢いフェンネルは美しい不敵に健康で悩みがないたおやかに背を伸ばし風に揺れそ知らぬ顔で初夏の空をめざし咲いた黄色い花フェンネルフェンネルは咲く

  • 花の香

    花にはほのかに香りあり心に残る香りあり花の香りはいのちの香いきものの命の源から出るもの命の源はこの宇宙のうつくしく優しき永遠のもの生きる幸せを知らせるものにこころ離れたときは不幸せ香りはひそかで謙虚であるこの天上の香心和む花の香を争う人に届けたい一輪の白い花を届けたい荒ぶる人が人を取り戻す花の香り涙こぼれる優しい香りをどうしても届けたいこの馨しい一輪の花の香りを花の香

  • 日本の抒情詩 『少年の日』島崎藤村

    少年の日島崎藤村野ゆき山ゆき海辺ゆき真昼の丘べ花を敷きつぶら瞳の君ゆえに愁いは青し空よりも翳多き林をたどり夢深きみ瞳を恋い悩ましき真昼の丘べ花を敷き哀れ若き日君が瞳はつぶらにて君が心は知りがたし君を離れてただ一人月夜の海に石を投ぐ日本の抒情詩『少年の日』島崎藤村

  • ブログ開設から5000日

    2003年から始めた趣味のホームページが14年たち、HP時代もおわりかけ、プロバイダーのサービス終了まじかと並行しGooブログを開きました。しかし数年間放置したまま、ほぼ忘れかけていたブログでしたが”詩”のみの発表の場、としてここ数年続けてまいりました。気が付くと5,000日、何かの区切りのようにも感じます。ここでご縁を頂いた皆さまからは様々な未知の世界、美しいものたちや知識をたくさん得させていただき教えていただくことができました、とても有難く、感謝しております。貴重な記事と写真等は、時間が許す限り訪問し拝読していますが、毎日訪問しすべてを読み通すこともなかなか、となり申し訳なく残念でなりません。丁寧に読みまわれるフォロワー数は今が限度かと思いますが、今後もどうぞよろしくお願いいたします。そろそろ第二詩集として...ブログ開設から5000日

  • さくら月

    はる祭りの夜陣痛に耐え五番目の子供を産んだ母昼からのどかに神楽が聞こえ辺りの桜は満開に遅い高原の春の夜産婆は五番目には油断して祝いの部屋で酒と馳走に囲まれはや中年の産婦を忘れ酒と祭りに酔うありさまこれも桜の魔力なのか辛かったお産の思い出を桜見ながら話した母はそれでもあなたは可愛かったと私に何度も言い聞かせた一斉に春の花の咲く明るい卯月みんなが憂さを忘れてさくらに酔う世界に何でかぴょんと飛び出した日のことなど思い浮かべエンドウ豆の花と菜の花と御神楽の単調な音色と亡き母のふっくら手の甲を思い浮かべる桜の夜さくら月

  • うめのはな香る

    どこからか漂う梅の香り浅き春の道野辺にまだ寒きに咲くはなは声小さく花びらもちいさくミツバチさえも眠る季節に空に映え咲く足元にはわずかに芽ぐむハコベひるさがり深くただよう梅のかおり厳寒の季節忍んでつぼみを抱きあかるい光を浴び春を知らせ開くはなぴんくいろの明るい木の花うめのはなめぐりくる花の季節に先がけ微熱のように蜜のように小さく咲き大きく群れるひそかに賑わうはなはなのかおり楽しきうめのはな香る

  • 冬の猫唄

    ☆今はもう使うことなき診察券猫の体温なつかしむ冬☆遥かはるか高みで舞います黒猫よ思い出してね雪のふる日は☆歳月はかくのごとくにながれても窓枠に爪痕白く残りて☆南天の赤き実に来る野の鳥の何か慕わしうぶ毛のあたり☆黒い帽子座ぶとんに置き回り来ては黒猫のひる寝かとおりに戸惑う☆ぴかぴかと光る金色黒猫の目はエドガ・アラン・ポーのものの語り部☆ドアを開け漆黒の闇に消えるわが猫は今夜の集会に呼び出されてく☆ねこはまたねこ同志の用があるのだと母は真面目な顔で説いたり☆黒い色は深い緑に輝いて獣毛妬ましき人肌のかろさ☆いのち輝き姿は天使か猫族の歩きしなやかリズム楽しや冬の猫唄

  • どうぶつ物語

    わたしのすきないきものたちはいつもむじょうにさってゆくわたしのすきなうまたちははしってそのままいきなり息絶えもするわたしのすきなねこたちはいっしょにあそびおとなになればおおいそぎで去ってゆくそれはどこかにあるかれらの憩いのねぐらかぐやひめのように戻ってゆくどうぶつたちのふるさとでしょうかいなくなったどうぶつたちいっしょに生きたどうぶつたちその可愛い目がわすられず涙あふれるふゆのごごですどうぶつ物語

  • 新しき年

    あたらしき朝ひかり射しこむ聞し召せ麗しの楽の音しめやかに晴れやかにこの新しき春を迎えるをよろこべやもろびと雅の旋律透ける絹衣ずれよ舞姿若水のきよらにくちびるに漏れる言の葉今年を祝いめでるその詩新しき年

  • 日本の詩人 佐藤 春夫『海辺の恋』

    海辺の恋ー殉情詩集『同心草』よりー佐藤春夫こぼれ松葉をかきあつめをとめのごとき君なりき、こぼれ松葉に火をはなちわらべのごときわれなりき。わらべとをとめよりそひぬただたまゆらの火をかこみ、うれしくふたり手をとりぬかひなきことをただ夢み、入り日のなかに立つけぶりありやなしやとただほのか、海べのこひのはかなさはこぼれ松葉の火なりけむ。日本の詩人佐藤春夫『海辺の恋』

  • 白い色に還る

    人は生まれて様々な色を知る人は彩にあこがれ色に染まり人はひとの彩を着る空の色海の色風の色この世に色は美しすぎ人は何時か彩に疲れる疲れ傷つき人は末枯れて静かに静かに眠りにつく思い出を語る色は白いカーネーションか人は人の心に多くを残し悲しみ色の白を残す純粋とはあなたのためにある亡き人よ秋の夕暮れひそかに咲くあなたの人生今は白く咲け純白に黙す花よ白いチャペルのいとしきカーネーション白い色に還る

  • 深まる秋へ

    季節は廻りあさがおの葉っぱがちぎれる秋の暮れ風は足音を連れてきますねこの足音はただ静かでそばだてた耳にだけ聞こえてくるぱたぱたぽんねこがしなりと通り過ぎるところ小さな風が立ち騒ぎぱたぱたぽん撫でるように空気が動く聴きたい耳に聞こえてくるちいさなねこの足音やってくる秋小さな秋小さな音小さな思い出が心の小道にきこえます振り返るねこの瞳が光ります深まる秋へ

  • 秋のあさがお

    あさがおはいとしやちぎれた葉疲れた枝に支えられ力を絞り十月の朝咲くあさがおはかなしや小さなつぼみ冷える夜耐えて朝の陽もとめ天を仰ぐあさがおは空より青く忘れられぬ灼熱を語り名月にひそかに歌うまだ残る大きな花びら色褪めた小さな花の背つどう庭季節の宴あさがおのいのち尊しまだ咲きたいとうごめくつぼみたちに射しくる朝の陽秋のあさがお

  • 九月-秋の黒猫

    真っ赤な鶏頭青い空どこから漂うか金木犀の甘い香虫たちが吾が世と合唱する九月半ばはぴかぴか光る黒い猫の季節ですひだまる庭石の上に寝そべるとアキアカネがそばに来る蝶やトンボを追いかけた電光石火の子猫の時代は過ぎ去ってライオンキングのレオのように立派な男の子になりました九月の涼風が高原の家にまた秋を運びぬくぬく猫はほんに秋冬もの暖かさ身に染む体温ふっくら重い丸い体金色の大きなまるい瞳は神さまからの贈り物黒猫は秋へ向かう季節の人間たちの宝もの九月-秋の黒猫

  • おしろい花

    おしろい花は夕べに開くおしろい花は夜明けに閉じる花の種がポロリと落ちる黒い小さい硬い種が軒先にころころ転がるつぶした種には白い実があるお鼻のてっぺんに塗ると乾いてお白いになるおしろい花の本当の名は今も知らないおしろい花は静かな夕べ枝を広げてにぎやかに咲きだす日が落ちるとみんなで楽し気な宴会を繰り広げるそして昼のなごりの大気の中言い得ない気品ある香をほのかに漂わす百合のようにダリアのように真昼の太陽の庭で主張しないおしろい花おしろい花はしかしいちばんにマゼンタ色の花と香りとともに少女の時代を思い出させる夏の庭にいつも溢れてたおしろい花小さなはなおしろい花

  • 今年の夏

    雷鳴が終わり雨空が開くとまぶしい夏がやってくる炎の夏酷い夏容赦なく襲う太陽梅雨の葉っぱたちはうなだれ紫陽花は色褪せ海山がぎらぎら残酷に輝く夏の到来ミクロの生命に怯えヒトは自由を奪われてもセミたちは素知らぬ顔で啼き声を響かせるミンミンゼミの声に載って正気をとりもどしヒトも又この暑い季節を一歩一歩泣いて越えるいつものように啼くアブラゼミの声が何故か嬉しいことしの夏セミのChorusに励まされてヒトの物語が始まる夏今年の夏

  • 梅の実

    しとしと雨降りヨシキリが鳴く梅の畑に梅の実落ちる梅の実は匂うほんのり匂う梅の畑ヨシキリの巣を忍ばせて梅の枝に樹に雨はしとしとヨシキリの巣にヨシキリの雛頭のぽやぽや柔らの毛がのぞくあの日も今日も6月の雨しとしと降る雨は毎年おなじしとしと降る雨梅雨の畑梅は匂い雨は降る老いた梅の木に実はまばら廃家に雨降り住む人はない毎年聞こえたヨシキリのキチキチキチの声も消えて梅の実

  • 日本の詩人 佐藤 春夫

    少年の日佐藤春夫野ゆき山ゆき海辺ゆき真昼の丘辺花を敷きつぶら瞳の君ゆえに憂いは青し空よりも蔭多き林を辿り夢深きみ瞳を恋い悩ましき真昼の丘辺花を敷き哀れ若き日君が瞳はつぶらにて君が心は知り難し君を離れてただひとり月夜の海に石を投ぐ君は夜な夜な毛糸編む銀の編み棒に編む糸はかぐろなる糸赤き糸そのランプ敷き誰がものぞ日本の詩人佐藤春夫

  • 五月の猫みどりの庭

    五月の庭はみどりの庭黒猫の好きな花の庭スズランが咲き牡丹が咲き山吹色に日が暮れて群青色に山暮れて窓に明かりが灯るとき生きものはみな今日の憩いの湯気のなか安らぎの寝息をたてるのですゆらゆら夢の中に落ちるのです五月の家はみどりの庭生きる幸せに溢れ色いっぱいの季節のなかで黒猫の散歩道みどりの庭五月の猫みどりの庭

  • 甃のうへ ー詩人の春の詩界ー

    甃のうへ三好達治あはれ花びらながれをみなごに花びらながれをみなごしめやかに語らひあゆみうららかの跫音〔あしおと〕空にながれをりふしに瞳をあげて翳〔かげ〕りなきみ寺の春をすぎゆくなりみ寺の甍〔いらか〕みどりにうるほひ廂〔ひさし〕々に風鐸〔ふうたく〕のすがたしづかなればひとりなるわが身の影をあゆまする甃〔いし〕のうへ甃のうへー詩人の春の詩界ー

  • 柔らの春

    ヒヤシンスほのかに匂い蕗の薹首伸びてもやもやと土手に草は若みどり昼下がりの積み藁に陽炎ゆらゆら太陽がやってくると大地は大急ぎでゆっくり蠢くとんがる茅の芽ほの紅いスカンポはこべ草にまたホトケノザみんなむっくり目覚める原やってくる暖かい春新しいいのちが毎年はじけて産まれる何も変わらず何かが替わり何かが変わる今年咲く花は今年の花忘られぬ面影つれて訪れる春柔らの春哀しい春楽しい春今年の春のあかるい陽光柔らの春

  • 冬句

    ☆雪待ちて遠い地平を眺めおり☆雪降りて空を見つめて昇った日☆牡丹雪南天の実にお辞儀させ☆牛乳の白さ吐く息冬は白☆いささかも短日散歩はかどらず☆家籠もりおととしの日記読みふける☆土めくり押すは花の芽覗きの目☆藪柑子霜降る庭に愛おしく☆きさらぎの三色すみれと辿る道冬句

  • 南天の家

    南天の家と言われた家広い植え込みの庭を南天が林のように取り囲んで赤い南天がたわわに実った家幸せの赤い実健康な小さ葉っぱたち沢山の人間が育ち沢山の人間が巣立った家悲しみ楽しみ笑い声悔し涙生活のひとつひとつが大黒柱に刻まれた家沢山のヒトが訪れ賑やかに長いが流れた家南天はいまもたわわの赤い実を付けるか雪の日も晴れの日も厳冬の青い空に南天の実たちは光り二月になれば飢えた野鳥たちが美味しい実を食べたいと集ってきた庭大きな家想い出の赤い実幸せの赤い実冬の物語が赤い南天に宿り野の鳥は南天の林でにぎにぎのおしゃべりをして厳しい冬をひととき楽しんで過ごすだろう南天の家

  • 冬のりんご

    りんごのまろさりんごの赤さ冬の陽木枯らし赤い熾き炬燵櫓にまるまって猫は冬の日をすごしてた手に触るネコ毛の温みりんごが語る冬ごもりりんごの蜜が透き通る冬は冬の楽しみに日本の季節がひろがって青い空がみつめてるりんごりんごりんご剥いては来し方をふと思い振り返る赤い可愛いちいさなりんご冬のりんご

  • 上方唄 “京の四季”

    春は花いざ観にごんせ東山色香あらそう夜桜や浮かれ浮かれて粋も無粋もものがたい二本差しなら和らごう祇園豆腐の二軒茶屋いざいざ夏はうち連れて河原に集う夕涼みヨイヨイヨイヨイよいやさ真葛が原にさやさやと秋は色なす華頂山しぐれを嫌う唐傘に濡れてもみじの長楽寺思いぞこもる丸山に今朝も来てみる雪見酒エエそしてやぐらの差し向かいヨイヨイヨイヨイよいやさ上方唄“京の四季”

  • たまご

    たまごは遠くからやってきてたまごは遠くに去って行く温かい丸みほんわりする形たまごはいつも平和でたまごはいつも眠っている眠っているけれど生きて呼吸をする朝早くめんどりは声高く叫ぶ目覚まし時計のように正確に朝の光の中でめんどりの日課の歓喜の声私が産んだの今産んだの早く来て見に来てわたしのたまごめんどりの体温のままに生きて呼吸するたまごはふわり初めての呼吸をするまるいたまごやさしいかたち青草を食み土壌の生き物を食べこの世に生まれ来るたくさんのたまごそしてどこかにいつの間にかひっそり去って行ってしまうもの言わぬ愛しいたまごたまご

  • 十五夜の猫

    十五夜の月は涼し十五夜の月は愛し秋の風ほほをなで吹く青い深い夜の空に金色の丸い月こそごきげんよう十五夜お月さんごきげんよう優しかったひとたちごきげんよう元気ネコたちつまみたいとんがり耳よ年ごとの十五夜の夜は耀き瞬くまるい月を仰ぎなつかしいいきものたちのいまも聞こえる懐かしい鼓動見つめる瞳永遠の命ごきげんようことしの十五夜お月さん遙かな空青い夜十五夜の猫

  • 「夏は過ぎ去った」エミリー・ディキンソンの詩界

    夏は過ぎ去ったエミリー・ディキンソン(アメリカ)悲しみのようにひそやかに夏は過ぎ去ったあまりにもひそやかでついには裏切りとも思えないほどに―もうとうに始まったたそがれのように蒸留された静けさまたはみずから引きこもって午後を過ごしている自然夕暮れの訪れははやくなり朝の耀きはいつもと違う立ち去ろうとする客人のようにねんごろでしかも胸の痛むような優美さこのようにして翼もなく船に乗ることもなく私たちの夏はかろやかに逃れ去った美しきものの中に「夏は過ぎ去った」エミリー・ディキンソンの詩界

  • 吾亦紅考

    昼下がりラジオから流れた歌「吾亦紅」離婚したばかりの男が母の墓に参るそれもやっと別れたのを褒めてくれと語りかける複雑な人間の生き様が晩秋の墓地線香の香りが流れる中に浮かんでくる男は長い不義理を悔やみ母に詫び高原の冷ややかな風を体いっぱい受ける母たちはだまってあの世にいても我が子の総てを受け入れる誰にもある悔いのその多さ悲しさ虚しさそれにしてもわれもこうは吾も恋うワレも乞う生きている勝手な時間を誰に乞う母たちは先に世界を分かち大空の中をせいせいとして飛び回っている慎ましい高原の花吾亦紅赤い小さな母のような花花吾亦紅考

  • 火鉢に咲く花

    渡り鳥や回遊魚のようには自由にねぐら探せぬわたしたちなんとか住処と狩り場を見つけ知恵絞り精一杯生きようとするわたしたちひと見ればその豊かさにひそかに悲しみ貧しい人見ればおのれにまた羞恥覚えそれは短い浮き雲のながれのよう姿変え色を変え夕闇にミストとなり消えゆく与えられた場所で咲く花他を知らずに過ごす一生花も猫も私たちみな誰かに選ばれいのちの幸せ探しを課せられたもの火鉢に咲く花

  • 詩人の 詩 西条八十

    詩人西条八十流れてやまぬ人の世を花の姿にたとふれば詩人は岸に佇みて花摘む人に似たるかな摘みて浮ぶる花びらの花の行方を問うなかれ水面を飾るうたかたのいのちに我は生きてこそ詩人の詩西条八十

  • エネルギー充電

    長袖の羊の毛のセーター別珍の赤い足袋眠るときは舞妓さんの冬の定番の腕カバーレッグウオーマー古い帯揚げ襟に巻き引っ張り出す羽毛ケットせめて庭の萩を一輪差しお汁粉に甘酒大蒜たっぷり甘めの豚ロース焼これらに護られそれでも背中だけは丸めずとんでもなく寒い梅雨冷えの日を決して若くない体を引っ張り励まし姪たちにしょぼしょぼと用件のみの文したため張っていたものみんな緩めネコたちの体温想いうっすらと目を閉じヒトは生きる日があるのです嗚呼エネルギー充電

  • みいちゃん

    みいちゃんと呼ばれた気がしたみいちゃん顔上げても誰もいない幼い日がよみがえる昼下がりみいちゃん呼んでくれたひとたちはいまみんな何処にどの辺りに居るのだろう歳月は止まらず星々は流れ今年の青葉若葉は目に沁み繁りに繁り静かな日が続き今日も人は回り灯籠のように面影を残し舞台を変える振り返る“みいちゃん”花畑黒猫の躍った火山灰大地の郷みいちゃん

  • 小さき花スズラン

    黒猫の庭に白いスズラン歩む猫の足をなでたちいさなスズラン頭上には淡い紫リラの花揺れ高原の春は初夏に移り変わる花の香りはきよらか花の香りは漂いながらすこしの毒を吐く生き物の悲しいさだめの悪徳をどこかに潜ませ野の花木の花妖しい黒猫怪しい人間の住む地上地上はアダムとイブ抑えきれぬ欲望の膨らみソドムとゴモラ静かすぎる青葉の庭にも潜むのだろうか背徳罪と罰白いスズランに尋ぬれど答えなく小さき花スズラン

  • 星野哲郎 昭和の歌

    あふれるものを星野哲郎作詞遠藤実作曲草になれよと誰かが言ったそれもそうだと思っていたよ風がふいたら風ままになびくつもりがなびけずに折れる心を支えて生きた熱い涙を頼りに生きたもう戻れない戻れないただ歩くだけ川の畔で小どもが歌う歌につながる故郷もあった何時か迎えに行くからと待たせ待たせたあの人もいつか遠くへ嫁いでいった風の便りが泣かせるけれどもう戻れない戻れない少年の日よ春の訪れどこかで聞いた秋の匂いもどこかで聞いた一つ選んだ道のため五つ六つと捨ててきた夢を数えりゃ夜風も寒い苦い酒だなあ明日を託すもう戻れない戻れないただ進むだけ(歌北原健二https://www.youtube.com/watch?v=6Dik9VGkaQ0)星野哲郎昭和の歌

  • 春の祈り

    ふわりやさしい春の風心弾む春の音この柔らかさの中を生まれてくるいのちと去って行くいのちとが挨拶をするわかれみちその辺りには黄色い花の咲く野原甘美すぎてねむくなり交差して光と風永遠の中にいて気づかずに過ぎていく時間春の祈り

  • 相棒

    疲れた相棒はげ落ちた色金のペン先だけがいつもの光変わらぬ姿降る年月いつもいっしょ働いて貰われて使う主も亡くなるとまた戻ってきた旧い相棒老いた指が毎日握りしめた汗と想いはげ落ちても残る想い羊の皮ヒトの汗母の汗私の若い日の望みをけなげに受け止めた18金愛しい猫の脚愛しい筆相棒

  • 新年

    海の底から白い二枚貝大地の岩の中から透き通る水晶大空を翔る鳥実るのは木の実そして地上に沢山の動きまわるいきものたち地球が廻り太陽が燃え季節めぐらせことしもまた新年がやってきた止まらず上がる太陽その光り浴びてことしもまたいのちを磨いてゆく初めての二度と来ないたった一つの年新年新年

  • 冬至

    お日様深く差しこんで家にぬくぬく赤い花赤い花は燃える色真冬の部屋はストーブ色薪の匂いもないけれど北風吹いても窓際でストーブ色に咲いているクリスマスを彩ってねこと太陽を彩ってことしも家にはポインセチアが窓際で明るく開くのです冬至

  • 木の葉の宴

    秋が暮れるいのちのなごりの木の葉が舞うダンサーのように舞いながら木の葉はかすかに音を奏でる私の歌がきこえますかと木の葉はおのおののドレスを薄くまとい歌い奏でるもの言わぬ木々の控えめな宴静寂の中で精一杯主張する丁寧に織られた織物のように輝く色彩秋を彩りながら消えていく宝石のような木の葉木枯らしの前の心ときめく宴木の葉の宴

  • 黒猫びより

    秋の温もり黒猫びより胸がときめく猫びよりいきなり走り回るのはなんのため飽きずに探検するはなんのため小さな王様は自らパトロール何を見ても眼が広がり何を言っても寄ってきてヒトの足に纏いつき爪立てる歯がかゆいと歯を立てる黒い嵐が襲い来て秋はとっても忙しい痛くても王様には逆らえない王様のトイレは家のなか王様の食卓は居間の中央王様は偉そうにひげをひくひくお食事する足りないと召使いのごはんまでも欲しいという木枯らしの夜は布団に乗りちいさな牢名主のように威張っている北風がそのうち菊もサザンカも散らして冬になり黒猫はまんまるに肥え脚も伸び春に外にでかけてゆくのでしょう暖かい午後の日差しに黒猫は天使の顔でねむります晩秋陽の耀き黒猫日和黒猫びより

  • 去りし猫へのバラード

    きみと過ごした四年間はつかの間の幸せの日々きみは人の子よりよくなついてほとんど悪さもしない子だった去る年の文化の日やった来たきみよちよち歩きの幼猫だったきみ全身真っ黒で金色のひとみがやけに大きかったきみ行く末短くなった老人たちの茶の間に舞い降りた聖ミカエルのように笑い声を呼び戻してくれた翼の無いエンジェル成人したきみはとても静かで優雅にさえ見えるその立ち居振る舞いに人間たちは時に息を呑ほどだった四つ目の秋四度目の誕生日の直前にきみは帰ってこなくなった老人たちの目を涙であふれさせ巷に黒猫の姿を尋ねさせること数十日きみは冷たい骸となって木犀香るいつもの庭に帰ってきた高原の秋風は無情に冷たく七キログラムの体は再びは遊び回った花の庭を風のように走ることはなくなった悲しみは語り尽くせず思い出は数えきれずひとつのいのちは天...去りし猫へのバラード

  • 秋の愁いは

    紫苑が咲けば母を思い菊が匂うと父を思う大地に優しさと安らぎいのちの実りが戻る季節どこかで家を失った人々どこかで家族を失った人たちがおなじの空の下で泣いている愛の輪に囲まれ幸せに日を過ごしていた自然な暮らしがある日突然壊され別世界の中に放り出されそれでも生きてゆかねばならない誰もいなくなった家のその跡地で切なさをこらえ生きてゆかねばならない人は喜び悲しみ当たり前に自然に日々を過ごし知らぬ間に老いて消えてゆくその間際のときにだけ人間の何が神の怒りに触れたのかふと思い天を仰ぐ真上に輝く太陽はやがて傾く夜を与え又朝陽をくれる私たちは過ちを犯しながら顧みることなく生が続くと信じ必ず独りで消えてゆく天上の父母たちは地上の花の精になり永遠の謎を黙って見護っている秋の愁いは

  • 秋のオリオン

    大嵐の去った夜の夜更けの空は青い青い空に白い雲が幾つかのんびり浮かび昼のように明るい空に金色の月が傾いた東の空には冬の夜を飾るオリオンが真四角にきりりと現れて夜もあかりにまぶされる都市の空の下で見つめている人間に静かに挨拶をくれたようだった星は遠い向こうはるかな宇宙の果てから傷ついた星に友情の光を届け人人の寝静まった青い夜空で瞬き何をか語りかけていたのだろうか秋のオリオン

  • 赤とんぼ

    かすれた夏が村の外れ分か去れの古い石の上に腰掛けて遠い雲と空を眺めていた濃い青い空に夏の面影はあっても季節は今年も少しずつ少しずつ動いて行った道の端山桑の木の枝の枯れたてっぺんにアキアカネが止まり大きな目を動かして風を見ていた人も道も時の中に変化してゆくけれど野の草花と赤とんぼは人の目には移ろう秋への季節をのんびりと跳び揺れて舞うのでした赤とんぼ

  • 鮎はメロンの香りがして

    鮎はメロンの香りがして魚でないと訴えるか川の魚海の魚魚はさかなの匂いがするが鮎は山の水の中で植物のように生きるのか川石に付く苔を食べ冷たい雪解け水や湧く水を飲み天使のように暮らしているのかメロンも知らず苔のそよぐ川の中で鮎は泳いで一生を終える手に取るとやはりメロンの香りがして火に焼かれても恨みもいわず清流に生きたままの姿で消えてゆく鮎よメロンの香りよ清流に生きる美しい魚よ鮎はメロンの香りがして

  • 野辺の夏の扉

    桔梗は青むらさきミソハギはマゼンタの紅ガラスの器に野花を活ける主張しない花は過ぎた時を思い出させる振り返れば花の気配口数少なに色を示してガラスに透ける水の色ミソハギと桔梗夏の扉は開く誰も知らず気づかぬを霧雨の煙る日野辺の夏の扉

  • 青い花雨の街

    しとしとの雨青い花濡らす雨青い花青い花青い花は青空の向こうからやってきて雨の日は花屋の軒にこんもり揺れ群れる花びらのかさね青い花は透き通る水のよう山の上の静かなちいさな湖のさざなみしとしとの雨水玉模様の傘の色あの日の私の白いレインシューズはどこに行った静かに煙る水蒸気の街ひとびとの歩む街の通り青い花雨の街

  • にんじんの花

    梅雨の雨に濡れる細い茎細い葉夏に向かい花開いたにんじんの花は花屋の店先のレースフラワーのよう柔らかに繁ったにんじんの葉を朝のサラダのトッピングにしその新鮮な緑を香草をたのしみいま咲き出す三本の白い花レースのように清潔に可憐あのにんじんまるまる甘いグラッセにして千切りきんぴらごぼうといっしょに紅花油でカラリ天ぷらに身を捨ててなおいのちをつなぐにんじんはいとおし梅雨の午後は雨のひとしきりしぶく軒の鉢に濡れている白いちいさな花の一群にんじんの姿ほっそりゆれるにんじんの花

  • 初夏への句

    ☆ニンジンの芽から花咲くいとおしさ☆甘き芋食べ残しにまた葉の茂る☆新緑の眩しき道を歩み往く☆杜若白と紫並ぶ家☆ふとひとの吐息漏れ来る空き家なり☆いくたりの人逝きてなお山の稜☆空を行く雲のごとくに春流れ☆吾が家の長き歩みよ墓静か☆黒猫の骨埋めたる祖霊の地☆母の墓ことしの赤きカーネーション☆甲斐駒の残雪の麓揺られ行く初夏への句

  • 青葉の中で

    森の中に青春うすみどりの若葉の波に埋もれ吹き渡る風に身を任せ沸き上がる白い雲のように過ごしていたその日日夢は果てもなく広い海原に憧れは彷徨いすんなりの四肢は跳ねて踊っていたこの世に生まれてきた喜びに浸り綿毛に包まれいのちはやがて傷つくとも知らず輝いていた青春よぎるちいさな不安を軽くいなし産毛のように過ごし来た不思議の時代青葉の中で

  • 花のむこう

    花の向こうに人は何を見る空を埋める桜の花に心があるなら毎年やってくるにんげんの心の騒ぎを花は知るのだろう老いた桜を若い桜を山陰に1本咲く桜を人はいとおしむ遠く去った日の数知れぬ想い出を春を埋めることしの桜の花のひとひらひとひらに視て彩度をいや増す短い季節花のいのちの語り花のむこう

  • 三色すみれ

    三色すみれは冬超えてことしも陽だまりに安らぐ三色すみれは暑い日より寒い日にこそ色冴える三色すみれを胸に抱いてあの子の住んだ街を訪ねる三色すみれは春風にゆれまだ明けぬ春のなかにいる三色すみれのいとしさよ忘れられぬ想い出が蘇る三色すみれをみつめると花の瞳がゆれゆれる冬の寒風を過ぎて早春の冷たい空気の中になお健気なちいさな姿春の愁いゆえもなく寂しさ色に甘える三色すみれ

  • ひな様のまつり

    ひな様は真昼はうとうと眠っておいでです喧噪のこの世ではひなさまはゆっくりお話もできませんテレビジョンの音は金属的で心安まる時もありませんひな様のお好きな笙の音色もお正月くらいしか聴けません美しい言葉は荒々しい会話に変わり時は忙しく空しくあっという間に流れ去るだけたべものは過ぎるうまみに味が変わり濃い味もすぎると辛くひな様は少しの塩だけどなんでもおいしいと欲望を離れ自然のままおられますひな様の横顔は何時も静か怒りを見せず哀しみを見せず傍に居る人をただ和ませ聞こえぬ天上の音色のなか春の宵をゆっくり流れる時間の中においでですひな様は夜更けは眠ることなく時の流れを振り返り想い出をなぞりふたりでそっと語り合われる白酒をすこし口にされたり黄色と桃色の花の色を愛でられ朝まで今年もおふたりの短い早春のまつりを楽しまれておいでで...ひな様のまつり

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