ヤマトタケルの自伝 6 わたしは女装して、新築祝いの準備のために屋敷に出入りする下男下女にまぎれこんで、クマソタケルの兄弟の屋敷に忍び込むことに成功した。 そして、その夜・・・ 屋敷の一室では、新築祝いの宴がにぎやかに開かれていた。 上座にはクマソタケルの兄弟が座り、ぞの周りを来客として招かれた豪族が取り囲む。そして下男下女が忙しく料理や酒を運んでいた。 すっかり酔いの回ったクマソタケルや豪族たちは、大声で騒ぎまくっている。 そんな中、わたしは酒をもって、クマソタケルのもとへ近寄っていった。クマソタケルはいい気分でわたしが差し出した酒を飲み干す。 と、その時、兄が言った 「おう、お前、かわいい…
ヤマトタケルの自伝 5 マソタケルの兄弟の討伐の命クを父の天皇から受けたわたしは、伊勢に立ち寄り叔母のヤマトヒメから着物を借りて、西国に向かっていた。 さて、クマソタケルが住む地、九州の熊襲まで長い旅の末たどり着いた。クマソタケルの屋敷を訪ね歩く。そこはすぐにわかった。 熊襲を支配するクマソタケルの屋敷。とてつもない大きな家で、その周りは兵士が三重に取り巻いて守っていた。 軍勢もなく単身で来たわたしである。 屋敷を守る兵士をかいくぐって中に入りクマソタケルを暗殺することなど、とても無理だろう・・・ ただ、幸いなことに、クマソタケルの屋敷は新たに新築したばかりだった。そして今日、新築祝いの宴が開…
ヤマトタケルの自伝 4 わたしは伊勢に来ていた。そして叔母のヤマトヒメを訪ねていった。 ヤマトヒメは伊勢神宮の斎宮としてアマテラス大御神に仕えている。 「伯母上、お久しぶりです」 「あら、オウス!しばらく見ない間に大きくなったわね!元気してた?!」 ヤマトヒメはわたしを歓迎してくれた。神に仕える身として独身を貫かねばならないヤマトヒメは、甥であるわたしをまるで我が子のようにかわいがってくれている。 わたしはヤマトヒメに言った 「伯母上、実は父上から、西国のクマソタケルの兄弟を征伐するよう命令されまして・・・それでこれから九州に行くんです」 「あら、そうだったの・・・それにしても、まだみずらも結…
ヤマトタケルの自伝 3 父の天皇から兄のオオウスに、朝夕の食膳への参列について「ねぎ教え諭しなさい」(丁寧に教え諭しなさい)と言われた翌朝。 わたしは夜のうちに兄オオウスの屋敷に忍び込み、便所の陰に隠れ、朝になるのをまった。 そして、朝になった・・・日が昇り、目が覚めたオオウスが朝の用足しにやってきた。オオウスが便所に入った。その時! わたしは便所の戸を開けた。 「なんだ!・・・オウスか、何事だ!」 びっくりしたオオウスが叫ぶ。しかし、わたしは兄のその声を無視し、便所にはいった。そして、オオウスをとっつかまえると、まずその右手をねぎった!(ひきちぎった) 「ぎゃー!!!」 兄の悲鳴が響き渡る。…
ヤマトタケルの自伝 2 わたしはその日、父の天皇(すめらみこと)に呼ばれた。そしてこう言われたのだ。 「そなたの兄のオオウスが朝夕の食膳の席に出てこないのはどういうことだろう。朝夕の食膳は神に供える大事な儀式だというのに・・・」 そう、兄のオオウスは最近、宮中に出廷していなかった。 理由はわかっている。オオウスは父の天皇と顔を合わせるのが気まずいのだ。 天皇は美濃の国造の娘、エヒメ・オトヒメの姉妹が絶世の美人という話を聞き、自分の妃にすべくオオウスを使いにやった。しかしこともあろうにオオウスはこの姉妹を自分の妃にしてしまったのだ。 オオウスは天皇のもとに、美濃のエヒメ・オトヒメと偽って、背格好…
ヤマトタケルの自伝 1 わたしの名はヤマトタケル。 もっともヤマトタケルというのは成人してからの名で、幼少期はオウスと呼ばれていた。 わたしはオオタラシヒコの天皇(すめらみこと)の皇子として生まれた。父のオオタラシヒコは初代神武天皇から続く第12代目の天皇である(景行天皇)。 母の名はイナビノオオイツラメ。第10代崇神天皇の御代に四道将軍のひとりとして派遣されたキビツヒコの娘である。わたしは父と母との間に、5人兄弟の三男として生まれた。 そんな、わたしがオウスと名乗っていたころ、数え年15歳となった、ある日のことだった・・ 次>>> ヤマトタケルの自伝 目次 rakuten_design="s…
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