ヤマトタケルの自伝 15 そして駿河の国までやってきた。 ここでわたしはオトタチバナヒメと落ち合った。彼女は大和に居たときわたしが見初めた娘である。わたしを追ってこの駿河までやってきたのであた。 「オトタチバナヒメ・・・女の足で、よくぞここまで来てくれた!」 「ああ、ヤマトタケルさま・・・お会いできてうれしゅうございます」 そしてわたしはオトタチバナヒメを連れていくことにした。 もしかしたら足手まといになるかもしれにが、それよりも女の身でここまでわたしを慕ってきたことがうれしかったのだ。 そしてわたしは国造(くにのみやつこ/古代の地方長官)の屋敷を訪ねた。わたしはオトタチバナヒメと従者ともども…
ヤマトタケルの自伝 14 わたしは叔母のヤマトヒメと別れて、尾張の国に来ていた。 尾張の国造(くにのみやつこ/古代の地方長官)は、わたしを歓迎してくれた。わたしは国造の屋敷にしばらく滞在していた。 ところで国造には一人の娘がいた。名をミヤズヒメという。 ミヤズヒメは一目見たら忘れられないほどの、絶世の美人であった。 数日滞在するうちにわたしはミヤズヒメに魅かれるものを感じていた。 ・・・それはミヤズヒメも一緒であった。そう、我々は互いに恋に落ちてしまったのだ。 しかし、わたしは東征の途中である。その使命を放り出してここでミヤズヒメと一緒になるわけにはいかない。 「無事に東国を平定して戻ってきた…
ヤマトタケルの自伝 13 わたしは叔母のヤマトヒメを目の前にして、泣き崩れてしまった・・・ 「ちょっと、ヤマトタケル!どうしたの?」 「ああ、叔母上・・・父の天皇は、わたしが死ねばいいと考えているのでしょうか・・・」 「え・・・ヤマトタケル、どうしたの?何があったの?」 「わたしは父の命により、西国の朝廷に服していない者どもを平定して帰ってまいりました。しかしそれからまだ時もたっていないというのに、今度は東国の平定をしろと命を受けました・・それも軍勢もつけずに・・・ ・・ああ、やっぱり父の天皇は、わたしに死ねと思っているに違いない・・・」 わたしはヤマトヒメの前でいつまでも泣いていた。ヤマトヒ…
ヤマトタケルの自伝 12 わたしは父の命を受け、東国に向かっていた。足取りは重かった・・・ なんだろう、あの父の冷たい態度は・・・伴につけてくれたキビノタケヒコなんてどんな人物かさえもわからない。ましてやヒイラギの鉾なんて、儀式に使うもので実戦で役立つ武器ではないのだ・・・ そして伊勢の国まで来た。わたしはここで、叔母のヤマトヒメを訪ねた。 クマソタケルの征伐では、ヤマトヒメから借りた着物のおかげでうまく奴らを打ち取ることができたのだ。そのお礼も言い語った。 ヤマトヒメは伊勢神宮を創始してアマテラス大御神を祀っている。今はアマテラス大御神にその御杖代(みつえしろ)として仕えている。 「伯母上、…
ヤマトタケルの自伝 11 わたしは西国を平定して大和に戻ってきた。 宮殿に戻ると、わたしは何よりも先に父である天皇に奏上した。何よりも父が喜ぶ顔が見たかった・・・いや、父に認めてもらいたかたったのである。 「父上、九州の熊襲をはじめ、西国の朝廷に服していない部族をことごとく征服してまいりました!これでもう、西国はすべて朝廷の支配下であります!」 父の顔を見るとうれしさがこみあげてきた。そして、わたしは優越感にひたっていた・・・父上はわたしを評価して、朝廷の中でも重要な役職につけてくれるかも・・・そんなことまで考えていた。 しかし、父の天皇から返ってきたのは、冷たい一言だった。 「そうか・・・西…
ヤマトタケルの自伝 10 イズモタケルの屋敷に滞在して数日。イズモタケルはわたしをすっかり信用し、わたしは偽りの友情関係を築き上げていた。 そんな、ある日のことである。わたしとイズモタケルは、斐伊川で連れ立って水浴びをしていた。 そして水から上がり、服を着て、イズモタケルが自分の剣を腰に差そうとしたとき、わたしは言った。 「イズモタケルさん、立派な大刀をお持ちなんですね!」 「おう、これか!この斐伊川では昔から製鉄が盛んでな、良質な砂鉄がここでは取れるんだ。その鉄を鍛えて作った極上の大刀なんだ! これがあれば、大和の朝廷なんざ、敵じゃないさ!ははは!! ・・・おう、オウス!そういうお前も、なか…
ヤマトタケルの自伝 9 九州の熊襲でクマソタケルの兄弟を討伐し、肥の国では土蜘蛛を討伐した。そしてわたしは出雲に来ていた。 この地のイズモタケルもまた、大和の朝廷に服属していなかったのだ。わたしはイズモタケルも討伐してから大和に帰ろうと考えたのだ。 もちろん、軍勢もなく単身で来たわたしには、軍事をもって攻め立てるわけにはいかない。そこでわたしは、まずは策略をもってイズモタケルに接近することにした。 わたしはイズモタケルの屋敷に出向き、面会を求めた。わたしはイズモタケルの前に通された。 イズモタケルの前で膝まづき、わたしは言った 「イズモタケルさま、お初にお目にかかります。オウスと申します。」 …
ヤマトタケルの自伝 8 クマソタケルの兄弟を討ち、ヤマトタケルとなったわたしは、熊襲国を離れ肥の国に来ていた。 肥の国のある村を訪ねたときのことである。クマソタケルをわたしが討伐したという話はその村にも既に伝わっており、村人はわたしを歓迎して迎え入れてくれた。わたしは村の長老に案内されて用意された仮宮に向かっていた。 そのとき、わたしの目に留まったのは、天を突くような立派な楠(くすのき)だった。 ≪佐賀市・印鑰神社の楠≫ わたしは思わず言った 「おおっ・・・これは立派な楠だな!!」 長老は答えて言う 「はい、この楠は朝日が照らせば影は杵島郡(きしまのこおり)の蒲川山まで届き、夕日が照らせば養父…
ヤマトタケルの自伝 7 ふいにクマソタケルの兄の動きが止まった。兄はわたしの身体に違和感を覚えたのだろう。そして言った 「お前、女ではないな・・・・・お前・・・」 しかしその言葉を言い終えることはなかった。 わたしはその時、隠し持っていた短剣で、クマソタケルの兄の急所を刺していたのである! 兄はうめき声をあげる間もなく、大量の血を吹き出し、瞬時に絶命してしまった。 この時、酒に酔っていて騒がしく大声が飛び交っていた宴席は、凍り付き・・・ ・・・そして混乱した皆は、我さきにと逃げ出した! 兄の返り血を大量に浴びた、少女の姿で鬼々と迫るわたしの姿・・・皆、相当な恐怖を感じたに違いない。 そして、ク…
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