創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
「大丈夫だ。力仕事なのだろう?しかも1トンもの重さなのだから直ぐに身体も温まる。それにこれ以上着込んで汗をかいてしまったら、体温が下がってしまうのでこれで充分だ」 咄嗟の判断力に――と言ってもこの人の場合医学的な知識でしか発揮されることがない――脱帽して彼
「え……。ええと……」 最愛の人は舞台の上でセリフを忘れた――と言っても祐樹は舞台鑑賞をした経験はなかったけれども――主役の役者といった表情を浮かべていた。「祐樹に向かってそんな言葉を言うことなど想定していなくて……」 困惑めいた溜め息を零す彼を力付ける
「えと……、差し上げた手袋の色、お気に召しませんでしたか?」 最愛の人が用意していたのは普段通勤にも使っている――何しろミリ単位で手を動かす仕事なので以前何かで読んだ「手専用のモデルの日常」のように気を遣うのは当然だろう。ただ、最愛の人の場合は「手のモデ
「そうだな。ただ、西ケ花さんの場合はマンションの部屋でウーバーからの食事を待っている可能性が高いだろう?または森技官の行ったクラブ程度しか行く場所がなさそうだから、いきなり訪ねた方(ほう)が良いような気がする。アポを取ると身構えてしまうだろうし、心の準備と
「祐樹も知っての通り、私は高校の修学旅行も院長先生に悪いと思って参加していなかった。当時の私にとって修学旅行費は大金だったし……。それに同級生との旅行にもそれほど興味もなかったので断った。 今思えば院長先生が負担してくれる金額は一食のフルコースディナー程
『それは良いですね。お時間が出来たら是非とも私の小さな城に寄ってください。楽しみにしています。え?オレのスマホにも香川教授や田中先生が『友達』として入っているかだって?入っているに決まっているだろ?バカじゃないのか』 ……最愛の人と祐樹が名付けた通称薔薇
「今夜は最高の夜でした。何だかいつも以上に忙しかった仕事が終わってココが元気になってしまって困っていたのです。聡がお眠りだったら一人でこっそりと処理しようと思って帰って来たのですけれども……。天国のような悦楽を与えて下さって有難うございました」 繋がりを
「あのう、呉先生にお電話を替わって頂いても宜しいでしょうか?」 最愛の人が遠慮がちな感じで言葉を紡いでいる。『はい。それは構いませんが……』 電話の向こうで「香川教授がお話したいそうです。その代わりスマホ貸してください」という声が微かに響いてきている。『
繋がった箇所から淫らで湿った音が奏でられる。 祐樹が腰を進めるとその音がより一層の熱を帯びてきた。「聡の凝った蕾……。先端部分に当たってコリコリとした感触が……堪らなく良いです……」 比較的浅い部分で抜き差しを繰り返すと、最愛の人が自ら弄っていると思し
『田中先生のお気持ちも分かるのですけれども、出来ることと出来ない……えっ?どうしてそんなに怒って……?』森技官の困惑した感じの声がスマホ越しに聞こえた。「怒って」というのは祐樹のことではなくて恋人の呉先生のことだろう。祐樹はお願いしただけで全く怒ってはい
「ゆ……祐樹っ……ソコはっ……とてもっ……感じっ」 上半身に纏っているシルクよりも艶やかな声が寝室に響いている。 花園の中の凝った蕾を軽く強く指で叩くとしなやかな背筋が反ってシーツの上に上半身が触れる格好になる。そして凝った蕾と直結している尖りをシーツに
「お電話替わりました。田中です。西ケ花さんは森技官もご存知のように――その節はご協力頂きまして有難うございました。心よりお礼申し上げます――」 ムッとしたような雰囲気がスマホ越しに漂ってきた。 弱みを握って交渉を有利に進めるのは森技官の得意技だけれども、
今でこそ思ったことや感じたことを言葉で表現してくれる最愛の人だけれども、初めて結ばれた時には言葉が極端に少なかった。だから強引に身体を開いて我を忘れさせて本音を紡がせようと必死だった。 後で聞いたら、何を言えば全く分からなかったという不器用さのせいだっ
「こういうふうになったからには、一気にけりを付けたいのです。西ケ花桃子さんが黒に果てしなく近いグレーですよね。最初は定時上りで貴方と一緒に行動出来る良い機会だと思って引き受けたのも事実なのですが……」 向かい側に座った人は白皙の頬が薄紅色の微笑みを浮かべ
猫がミルクを舐めているような音が静謐な寝室に濡れた彩りを添えていく。 サラリとした髪の毛の感触も捨て難かったものの、やはり祐樹の最も敏感な場所を舌で愛して貰っている快楽と、そして心の充足感の方が勝ってしまっている。 最愛の人が大きく頭を動かしてくれて前
「電話をして確認しますね。えっと」 スマホを出して資料の紙の束を探そうとしたら最愛の人の唇が仕事モードといった感じで知性的な怜悧な感じを漂わせている。「番号なら覚えているので今から言う……」 こういう点「も」祐樹が敵わないと思っている。「お願いします。と
「これはマズい……」 午前三時の病院の職員専用の門の所で立ち止まって踵(きびす)を返して灰皿の有る所まで戻って取り敢えず煙草を吸った。 底冷えの京都の街しかも雪まで降っているので早く最愛の人が待つマンションへと帰りたかったのだが、今夜は息つく暇もないほどの
花園の中の凝った蕾を指で愛したせいだろうが、直結している尖りが可憐に存在を主張している。 ただ、直接愛撫したわけではないので普段の愛の交歓時のような深紅ではなく桜色なのが初めての夜を想起させてとても良い。 薄紅色の肢体とかすっかり育った花芯の先端から水
「コレステロールの二つの数値に注目して見てくれたら、分かると思う」 最愛の人ほどの卓越した暗記力を持ち合わせていないため、応接用の机にプリントアウトした紙を並べて見比べた。「えと、異常値が突出して多いのが奇数月ですね……。逆に偶数月は低くなっているという
「やっと、二人きりになれましたね……」 客室の木の扉が音もなく閉まったのを合図に最愛の人の花よりも綺麗な唇に口づけを落とした。 何時ものように舌を絡ませるわけでもなくて薄紅色の唇が紅色に煌めくように、やや薄い唇を甘くきつく吸い上げる。重なった唇が奏でる濡
赤字部門を埋めるために果たした通称香川外科の功績は大きい。それは病院の誰もが認めている事実だ。 それだけでも次期病院長選挙では充分な票を集めることが出来ると踏んでいたけれど、付加価値としても充分にあるだろう。経費削減は必要だが医師や看護師に負担を強いる
大輪の花のような風情(ふぜい)の恵まれた容姿を持っている人なだけに黙っているだけで声を掛けられるだろうと踏んでいた。そして二人のような性的嗜好を持っている人達はクローズドの世界の中では割と奔放に振る舞っている人間が多いのも祐樹は知っていたし、聞いた話では
先ほどから最愛の人は自分の考えに沈んでいるという感じだったのは直哉さんと瑠璃子さんに何らかの不審な点でもあったのだろうか?「お言葉に甘えて良いのでしょうか?」 最愛の人の大好物なので貰う気は満々だったけれども、一応遠慮してしまう。「どうぞ、ご遠慮なく。
空気を読んだのか、それとも森技官の好みの男性を口説きたいと思っているのか謎だったけれども、最愛の人は先ほどの言葉に酔ったような感じで上の空といった風情だった。 祐樹は別に深く追求する積りもないし。そういうことに過敏に反応するタイプの最愛の人の関心は森技
「そうですか。まあ、亡くなったからこそ美点も見えてくるかと思います」 それにもう瑠璃子さんに対して酷いことも出来ないので直哉さんにとってはプライベートでも安心だろうし、会社の経営も思うようにリーダーシップが執れるようになるのだから良いコトなのだろう。しか
「えと。お酒を奢る意味はもう既にお分かりでしょう?あわよくばと狙っている男性が貴方には15人、あちらの方は6人です」 祐樹の噛んで含めるような説明を聞いて杉田弁護士が心の底から可笑しそうな声で笑っている。これほどまでに明確なエビデンスが出されないと自分の
まあ、愛人を囲う――祐樹はそういう行為をしようとは全く思っていないけれども――お金は普通、お小遣いから出すモノで会社の経費で落とそうとは思わない。 病院内のウワサでは愛人を囲っている某教授とかが実(まこと)しやかなに流れるけれども、給料の中とか実家の資産
「取り敢えず、この店の客であり、かつ男性から声を掛けやすい男性で香川教授と似たようなタイプを選びました。あそこの男性です」 黒髪の森技官は見慣れていたものの、黄色寄りの茶色の頭とかネクタイをワザとだらしなく崩してエジプトのツタンカーメンを彷彿(ほうふつ)と
最愛の人は沈思黙考をしていたのかは祐樹にも読めない。祐樹好みの端整で優し気な容貌の持ち主だが、表情はあまり変わることがなくて――それでも以前よりはかなり表情が豊かになったのは確かだけれども――難しい症例の手術(オペ)などの具体的手順を熟考中なのかと思いき
「15杯と記憶している……」 そんなに呑んだのかと――しかも各々が異なったお酒を奢ったのは何となく分かる――所謂(いわゆる)チャンポンは酔いが回る可能性が高いし、祐樹と第二の愛の巣でのデートでは最愛の人はシャンパンならシャンパンで統一しているので酔いが回っ
この件を無茶振りした森技官も実家は産婦人科のクリニックで、後継ぎだと目されて教育は受けたらしいし、性格はともかく頭が良かったためにТ京大学の医学部に入学したと聞いている。クリニックと自宅が離れた所にあったために父親の仕事が具体的にどういうものか分からず
懐かしい扉を開けると、今日はパーティとかイベントの日か?と思うほど広い店内は大入り満員といった感じだった。 この店がゲイバーとしてどの程度の知名度なのかは知らないが、女性客がうっかり来店すると店のスタッフも客も冷たい対応しかしないので、そそくさと退店し
「それはそうだと思いますよ……。実は病院を管轄する厚労省に知人が居まして、その人に太田医院のことは書面にして提出したいと思っています」 最愛の人にしてみれば同業者の恥といった感じなのだろう。だから部外者というか患者さんのご遺族に対して「内輪の恥」というよ
パラリーガルだか事務員だか知らないけれども、杉田弁護士は女性の耳を気にしていることだけは確かだ。「元カレ」と言いかけて慌てて言葉を変えたのもそのせいだろう。スピーカー機能で話しているのなら祐樹の声もその事務員の女性には筒抜けのハズで、男性の祐樹の元カレ
「その使い込みが発覚したのは何時でしょうか?」 最愛の人も気になったらしくて直哉さんに怜悧な眼差しを向けている。「それが……父の急死する10日前でして……。トラブルを最小限に留めるために色々と奔走している最中(さいちゅう)にあんなことになってしまって。です
『寄っても良いが、一体どういった風の吹きまわしかな?』 杉田弁護士の飄々(ひょうひょう)とした声に僅かに不審さが混じっている。 最愛の人をゲイバー「グレイス」から遠ざけてきたのは――そして必然的に祐樹も随分とご無沙汰している――他ならぬ祐樹自身だったので、
「貴方、お義母様からそういうのは絶対に控えるようにと厳命されていたでしょう……。貴方が60歳で亡くなったらと思うと心配で心配で……。絶対にダメです!!」 瑠璃子さんが断固とした表情と口調でまるで判決文を言い渡していると裁判官といった感じで宣言している。
時計を見ながらイライラと会話をした。会話というか交渉という方(ほう)がこの通話には相応しい気がした。取り敢えず祐樹の提案が妥結した時には掌の汗でスマホが滑るくらいになっていた。 もう一本電話をしたいところだが、もうタイムアウトだ。仕方ないので手術(オペ)が
「最初は主人にも言えなかったのですけれども、信頼関係が出来たと判断した時点で打ち明けましたの。 でも、子供はなかなか授からなくって一緒に病院に参りました。原因は私ではなくて主人の方(ほう)にあると分かってからお義母様にはそう伝えました。ただ、全く授からない
「今夜久しぶりに街でデートをしませんか?カウンター割烹のお店、予約出来たら良いのですが……」 最愛の人が患者さんから差し入れられた豪華な仕出し弁当の箸を止めて祐樹の顔を嬉しそうな笑みを浮かべている。「良いのか?今夜は救急救命室勤務だと思っていたが……」
「その件ですの……。遅くして授かったものですから、とてもとても残念でしたし、気落ちもしましたけれど……、直哉さんもお義父さんも特に何にも言わずに労わってくれたので随分救われた思いでした。それに昔は女性側に問題が有ると言われて来たのですわよね?」 直哉さん
「お節(せち)料理は既にお重箱(じゅう)に詰めているので、お雑煮だけ作ればいいのだが……」 一応新年に相応しい身支度を済ませてからキッチンへと向かった。 新年用のお箸を――ちなみに名前は最愛の人の流麗な筆跡で既に書いてあった――並べていると小さな鍋にお餅が煮
「あのう、私考えたのですけれども、その西ケ花さんに弱みでも握られていたのではないかしら……と思うのですが……」 一斉に視線の集中砲火を浴びた瑠璃子さんはそれでも怯(ひる)まずに三人を見渡している。 こういう凛とした態度で自説を述べる人なので故長楽寺氏の非道
「その小説の作者の虚構(フィクション)も入っているとは思うのだが……。愛人というのはそんな考えを持ちながら抱かれているのだなと……。私は私とは全然異なるなと思いながら読んでいたので、殊(こと)更(さら)に印象深い記述だった。私は年越し蕎麦を一緒に食べている時と
「それが妥当でしょうね。ただ、税務署の監査が入った場合は認められないことの方が多いです。接待交際費は1万円前後が妥当だとの見解が確か税理士協会のガイドラインに載っていましたから。色々突(つつ)かれると厄介なことになりませんか?」 最愛の人がそんな知識も持って
「脚……そんなに開いて痛くないですか?」 本来ならばこの愛の姿勢は向き合って求め合うには向いていない。だから聞いてみたのだけれど……。「大丈夫……。とても悦(い)いっ……普段……届かない所まで……愛してっ……貰えるのでっ……」 腰を緩く回すと繋がった場所か
「瑠璃子、もう毒を食らわば皿までだ。今まで言っていなかったことを経済や会社経営にも詳しそうな香川教授と田中先生の前で言ってもいいかな?会社のことは家庭に持ち込みたくなくてさ、瑠璃子には伝えていなかった……」 祐樹まで経済や会社経営に詳しそうというカテゴリ
赤と白という新年の寿ぎに相応しい色に最愛の人の肢体を染め上げたいという欲求が昂(たかぶ)ってくる。「承りました。愛する聡の尖りもルビーよりも紅く染めて差し上げます」 慎ましやかに存在を主張する小さな尖り全体を舌で宥めるように転がした。もう片方は指で優しく
直哉さんはそれなりに整った顔をしているので、女性が放っておかないレベルだしK應大学生・商社マンというブランド力も相俟ってモテたことは容易に想像出来る。「ただ価値観がこんなにぴったりと合ったのは瑠璃子だけです。父が嬉しそうに写真を見せてくれた時には、正直
「分かった……。ただ、これはそれほど美味しくはないし……匂いも……。私にとっては最高に美味なのだが、それは主観的というか……。祐樹のだからで……」 優秀な外科医の適性でもある即断即決の最愛の人が珍しく言い訳じみた言葉を紡ぐのも祐樹の前だけだと思うと愛しさ
「幼稚舎からですか……。しかし、ウチの母校にも医学部は有りますけれど……?幼稚舎組は資産家とか政治家とかの比率もとても高いのでハイブランドが当たり前という風習は根強いものがあるといった印象を受けましたけれど……」 直哉さんが疑問に思うのも尤もだった。もし
最愛の人が床に跪いてベッドに腰を下ろした祐樹の半ば育った欲情と愛情の象徴を紅に染まった唇が括(くび)れの部分を挟み込んで舌全体が先端部分を満遍(まんべん)なく舐めてくれる。 その健気で淫らな奉仕に視覚と触覚が紅色の火花を散らすような錯覚を覚えた。小さな、そ
「色々有りますが、父の第一の問題点は経費の使い過ぎが目に余るほど酷かったことですね……。あの人の経費乱用をまず止めて銀行に融資を頼むならまだマシだったのですが、そういう経営のスリム化を一切せずに拡大路線でしたから。銀行に対してウチの会社は与信枠がかなりあ
「お節(せち)料理は元旦の朝に祝うものだと思っていた……」 最愛の人が幸せそうに善哉(ぜんざい)の中に入っているお餅を薄紅色の唇へと入れて美味しそうに食べている。 善哉の上に載っていたせいで小豆(あずき)色に染まっていない白いお餅と花のような唇のコントラストに
多分、実母の佳世さんの紹介とはいえ初対面の人間二人にこう明(あ)け透(す)けに直哉さん夫婦が他聞を憚(はばか)る話をしてくれたのは、誰にも言えない類いの話でもやはり誰かに言ってしまって心を軽くしたいという気持ちからなのだろう。 それに最愛の人や祐樹は職業柄か
「祐樹お待たせして申し訳ない」 最愛の人が大きめのトレーを持ってリビングに入って来た。「いえ、私こそお手伝い出来なくて申し訳ありません」 キッチンに手伝いに行こうとしてつい画面を見てしまって弄っていたスマホをテーブルの上……ではなくソファーの肘掛けに置い
「心の中で思うのは個人の自由ですからね」 最愛の人が怜悧な口調で淡々と相槌を打った。ただ相手が何らかの感情で心に荒波を立てている時は事務的に話を進める方(ほう)が良いと経験則で知っているのだろう。「それは確かにその通りです。しかし父の場合は接待で遅くなった
「いや、感謝をしてから今年はこういうことをしますから見守ってくださいとお願いするのが最も神様に喜ばれるお祈りの方法だと書いてあった。だから多分祐樹のお願いは聞いて下さるだろうな……。それはそうと何をお祈りしたのだ?」 無神論者の祐樹だったが、そう言われる
すみません、とうとうブログ更新用に使っているパソコンが壊れたっぽいのです😭新年早々すみませんが、小説だけはWordで書いているので更新出来ません🙇♀️🙇♀️なるべくネカフェとかで更新したいと思いますが、今夜から明日の午後までネカフェ行けません。気長に待っ
「初めまして。いらして頂けて光栄です。香川教授、田中先生」 マンションのオートロックを解除してくれた瑠璃子さんが玄関先で笑みを浮かべている。「こちらこそお会い出来て光栄です」 最愛の人が笑顔で挨拶しているやや後ろに立って瑠璃子さんを見た祐樹は強い既視感を
「ねぇ、神様にお年玉をたくさん貰えますようにって祈ったら叶うんかなぁ」 子供のはしゃいだ声が静謐な夜の闇を弾んだものに換えている。「いい子にしてたら考えんでもないな。あ、明けましておめでとうございます」 家族三人でお詣りに来たという感じの父親に声を掛けら
「……それほどストレスの多い仕事ではないので、故長楽寺氏とは異なるかも知れないが……」 最愛の人がようやく考えが纏まったという感じで言葉を紡いだ。 祐樹的には最愛の人だって文字通り他人の命を預かっている仕事なのでストレスは甚大ではないかと密かに思ってしま
大学時代から京都市内に住んでいるが、同級生と年越しをするといっても単に飲み会をする程度だったし、ゲイバー「グレイス」に通うようになった後は単なるお祭り騒ぎのカウントダウンパーティで盛り上がった後に意気投合した相手と「姫初め」と称した欲望の発散をしてきた
旧年中は小説を読みに来てくださったり、ランキンポチで応援頂きまして有難うございました。今年もなるべく休載などせずに更新を頑張りますので変わらぬご愛顧を切にお願い致します。読者様の今年のご多幸をお祈り致しております。 こうやま みか拝にほんブログ村小説(
足の指から膝の裏まで微細に舌を動かしながら強く吸う動きに焦れたのか、最愛の人は花芯から幹へと水晶の雫を零している場所を紅色の指で示している。「聡がお望みなら……。ただその前に……」 両の足を大きく開く。「少し腰を上げてください……」 祐樹の淫らな唆(そそ
それに目の前には最愛の人が作ってくれた年越し蕎麦がホカホカと幸せそうな湯気を立てている中で他愛のない会話を交わすのが心が弾んでしまう。そして紅白歌合戦を見ながら食べていた蜜柑の香りも懐かしさと爽やかさを二人の親密な空間に彩りを加えるようだった。「324
最愛の人が楽しみにしていた帰省がなくなったわけだし、今年は旅行の予約もしていなかったのでお正月のイベントは皆無になってしまった。そして今から予約を取ろうと試みても人気の有る旅館とかホテルは埋まっているだろうし。「いや、お母さまに会えないのは残念だけれど
「掛けても良いですか?」 一応許可を取って通話をタップした。『聡さん本当に申し訳ないと思っています』 最愛の人のライン通話で掛かって来たのだから祐樹が電話したとは思っていなかったのだろう。何だか凄く申し訳なさそうな声が聞こえてきた。「母さん、重大な話って
最愛の人が愛の交歓の余韻を微かに残した薄紅色の首を優雅に縦に振っている。どうやら合っていたようで何となく嬉しい。「銀行保有分が5%と佳世さんは言っていたけれど、担保として株を持っているだけで株主総会の議決権は付与されていないのが普通だな。万が一付与され
予めイメージしていた執刀の手順――こういうイメージトレーニングが重要だと教えてくれたのは言うまでもなく最愛の人だ――よりもスムーズに手術(オペ)は終了した。「お疲れ様です。皆様がお気づきの点が有りましたら是非ともお教え下さい」 第一助手から順番に表情を見
「謝って欲しいわけでは全くないです。貴方の笑顔を拝見するだけで一晩の疲労など吹っ飛んでしまいます。それに私が好きでしていることなので……。それはそうと、夫婦で共有出来ない類いの問題は愛人の西ケ花桃子さん関係でしょうか?」 仮の話として祐樹の浮気を出したこ
弾んだ声と表情で聞いて来る最愛の人を惚れ惚れと見詰めてしまった。「いえ、京都ではこんな雪は体験出来ないでしょうから、お連れしただけですよ。愛の交歓で身体が温まったとはいえ、急に冷やし過ぎるのも風邪の元だと思います。もう人が居ない時間だと思われますので一
「祐樹!雪が降っている……!!」 最愛の人のフルートグラスを持った薄紅色の指に祐樹が見惚れていると弾んだ声が空気を金色に染める感じで知らせてくれる。「え?本当ですか?」 祐樹もガラスに目を遣ると確かに牡丹雪が風に舞っている。しかもこのクラブラウンジは高層
「私は祐樹とこういう行為をするのが至上の悦びなので……、祐樹が憂さ晴らしの積りでいてもそれは構わないのだけれど。野上さんは二年前、長楽寺氏に普段以上に関係を強いられたと言っていただろう?あれがずっと引っ掛かっていて。祐樹が太田夫人から受けたストレスは多分
最愛の人の下半身はパレオ状態にしたスカーフで隠されていて、しどけなく開いているであろう花園の門すら見えない。 見えないからこそ余計に想像力が増して良いが。「あっ……」 最愛の人の小さくそして淫らな声がペルシャ絨毯の上に零れたかと思うと先端部分を一気に迎
祐樹の気持ち、いや欲望を見抜いたように甘く蕩けた言葉を紡いでくれた。「聡の口とか喉『も』絶品ですからね。是非お願いします……」 リビングのソファーに身を横たえながら言った。こんなことならベッドで……とも思ったが窮屈(きゅうくつ)な分だけ密着感も味わえるし
「私自身が……綺麗かどうかは……分からない……。けれど、スカーフと、そして、祐樹に……愛されている身体だと……思うと……とても愛おしくて……嬉しいとは……思う……」 面食いだと自他共に認める祐樹が一目惚れした最愛の人だし、誰が見ても恵まれた容姿だと思うだ
「取り敢えず、今日分かったことを整理してみますね。貴方も隣に座って下さい。その方(ほう)がノートも見やすいでしょうから」 最愛の人手作りの食事を済ませて薫り高いコーヒーを一口飲んでノートを広げる。「そうだな……。それはそうと長楽寺佳世さんが淹れてくれた紅茶
少なくとも10枚以上のシルクのスカーフが入っていた。 しかも赤い薔薇模様が大きく描かれているスカーフが圧倒的に多い。「祐樹のリクエストに応えてみた……。ただ、どうやって身に纏えば良いのか分からないので、その点は任せるけれども……」 最愛の人は祐樹の首に
パティシエさんがラム酒と思しきモノを掛けると青い炎がぼわっと上がる。そしてクレープの表面には「メリークリスマス」の英文が濃いキツネ色で浮かび上がった。 どういう仕組みになっているのかサッパリからないけれど。「まさにクリスマススペシャルですね……」祐樹が
「うん!美味しい……!!」 最愛の人がフォークとナイフを器用かつ優雅に使ってサーモンを切り分けて薄紅色の唇に収めると弾んだ声で言った。 重厚でシックな部屋の空気も二人の醸し出す親密な空気でクリスマスカラーに染まっているような感じだった。「美味しいですね。
電話でアポイントメントを取るよりも佳世さんからの紹介の方が良いような気がした。それに直哉氏だって母親を苦しめた愛人と相続額が同じというのは納得し難いモノがあるに違いないし。「分かりました。少し失礼して……」 眼鏡を――おそらく老眼鏡だろう――ケースから
ベルベッドと思しき箱を開けるとプラチナのシンプルな指輪が入っていた。 小さいが極上の煌めきを放つダイヤが一つと控えめなブランドの頭文字が金色で刻印されている点がアクセントになって指輪の高級感を増しているような感じだった。「嬉しいですし是非身に着けたいと
「これは紅茶のリキュールが入っているのか……。美味しいし身体が温まるな……。祐樹有難う」 満足そうな笑みの花が唇から零れている。「リキュールと言っても紅茶と変わらない味だとお店の人が言っていましたが、ちなみにこれもリキュールです。それほど好みではないので
「二年前ですか?有りましたわ。瑠璃子さんが待望の赤ちゃんを授かったのですが、残念ながら流産してしまって……」 直哉さんの妻の瑠璃子さんは現在34歳だと森技官から貰った記録にあった。 ということは32歳の年の出来事だ。「それは……お察し致しますとしか申し上
「長岡先生曰(いわ)く『普段はお高くとまっているディスプレイもクリスマスカラーの天鵞絨(ビロード)とかリボンに飾られることによって客に媚びを売っているように見えてとても面白い』と。そういう着眼点は全くなかったので……」 最愛の人は祐樹を見上げるようにして話し
「お待たせ致しまして申し訳ありません」 最愛の人が応接室の扉をノックした後に開けて深々とお辞儀をしている。家族性高脂血症持ちの佳世さんにとっては――今のところは血液検査でも正常値の範囲内らしいが――最愛の人の手技のお世話になる可能性が他の人よりも高いので
「それでしたら、このホテルから大阪駅に向かう道の途中も綺麗です。更に大規模なのは阪急梅田駅の近くの阪急インターナショナルホテル近辺も見応えが有りますね」 最愛の人はバリバリの京都弁ではないものの大阪の人のアクセントとは若干異なるので――東京の人には区別が
「祐樹、珍しく荷物が多いな……」 クリスマスイブの土曜日の前日は救急救命室に搬送される患者さんの数もキャパオーバーではないかとここの勤務に慣れている祐樹なども思ってしまうほどの大混雑だった。 忘年会とか学生の飲み会などは不況にも関わらず――いや不景気だか
経済的に恵まれた生活を粉砕された上に望まない関係までを強いられて野上さんが故長楽寺氏に恨みを抱いていた可能性は捨てきれない。 コレステロールの高い食べ物などは調べれば直ぐに分かるだろうからそういう物を作って食べさせていたとしたら殺意までは抱かなくても、
「どうやら男性同士が……こういうコトをしている場面だったみたいで……。大きなルビーを中央にセットしたダイヤモンドのネックレスを……そのう……」 そういう類いの本が女性向けに売られていることは知っていた。そして性的な描写が有ることも。そして最愛の人が言いた
野上さんの場合、他の支払いがなければ丸々25万円が好きに使える身分だ。 彼女は相当裕福な家庭に生まれたようなので本人的には不満だらけなのかも知れないが。だから佳世さんへの細(ささ)やかな当てつけとしてハリーウィンスト〇の指輪が買えたのかも知れない。 まあ
「いつもながらとても感じた……」 祐樹の胸元に紅色の頬を寄せて最愛の人が咲き切った花のような満足げな声がした。 祐樹は愛の交歓の余韻ですっかり湿った髪にチュッとキスした後に汗の雫を纏った若干華奢な肩を抱き締める。「愛しています、聡。堪能したのは肢体だけで
野上さんは最愛の人の言葉が進むにつれて大粒の涙から、滝のように流れる涙へと変わっていって最後は肩を震わせながらの大号泣といった感じだ。 幾らこの屋敷が広いとはいえ、佳世夫人の耳に入ったら大変なことになると判断してドアを固く締めた上に祐樹の身体で防音の役
「是非参りましょう。ただ、こういう場所は気軽に行けないですよね……。停年後ということになりますが……」 最愛の人が潤んだ眼差しで祐樹と視線を合わせている。「その歳になった場合、貴方への愛は変わらないと約束出来ますが、身体では聡を満足させられるかどうか分か
「そうよっ!!奥様には絶対内緒という口止め料も兼ねてね。お金だけじゃ足りない時はあのアクセサリーを貰ったわ。長楽寺の先代のお嫁さんの遺品で……。奥様はアクセサリーとか宝石に興味のない人だから先代が亡くなった時に『要らない』って言って放置されていたモノをリ
「言葉では上手く表現出来ないな……。この世の物とは思えないほど綺麗な青い色と白い塩の結晶がどこまでも広がる世界なのだけれども……」 そんな場所が有るなら是非行ってみたい、もちろん最愛の人と一緒に。「ドキュメンタリー番組を録画してあるのだけれど、デザートを
「これらは何ですか?」 最愛の人の細く長い指が野上さんの手首を掴んでいる。しなやかな指だが世界的な認知度を誇る心臓外科医だけあって握力は人並み以上だ。 造花が引き抜かれた大きな花瓶が転がっていて、その中にはダイヤやルビーなどの指輪やネックレス、そして一万
「自宅に送って頂くか紙袋はこの百貨店のものに変えられませんか?」 ブランドに興味の有る人が見れば一目瞭然の紙袋を持って歩くのは避けたい。何だかこんな嵩(かさ)高いオレンジの紙袋を持って歩くのはチンドン屋並みに目立ってしまうだろうし、ナースなどに見られたら病
「あれは直哉が瑠璃子さんとの結婚が決まってからです。瑠璃子さんのことを大変に気に入ったあの人が『うちにお嫁に来るからには相応の家を建てないと』と珍しく張り切りまして……。瑠璃子さんに相応しい瀟洒(しょうしゃ)かつ豪華な家にしたいと……。元々あそこはあの人の
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