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創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
座り心地の良い椅子に座っているので視線は低い。 祐樹の筋肉質の長い脚がリズミカルに動いている。普段も職業柄か速足だけれども病院に居る時以上の速度だった。 それに顔を上げるとゆったりとした笑みを浮かべた端整な顔が待ち人を探すように動いていて、その「待ち人
小児科のナースが嬉々として「お化粧」をしようとしてくれたが、コンタクトレンズに縁のない祐樹は恐怖以外の何物でもなかった。 仕事柄、目を酷使しているにも関わらず視力は良いので。 同僚がコンタクトレンズを装着しているところを見て、あんな怖いことを事も無げに
スーツケースも羽根が生えているように軽く感じるのはもう直ぐ祐樹と会うことが出来るからだろう。 イギリスの貴族の館というよりも、テレビで観たベルサイユ宮殿の絢爛華麗さが際立った廊下を歩んでティルームに着いた。「ようこそいらっしゃいました。奥のお席へご案内
着物だって救急救命室で暇潰しに観る時代劇では帯に煙管(きせる)を差したり襟口に大きな懐紙や書物を入れていたりする。襟口といっても帯に近い部分だが。 アカデミックガウンも学生が余計な荷物を手に持つことがないようにポケットというか収納部分は工夫されているのだ
「お口に合って本当に良かったです! 日本の方(かた)は繊細な味付けを好むと聞いていますので、とても心配していました」 ルイス君は安堵したように笑みを浮かべている。 この英国貴族の邸宅の趣味の良い主人の私室みたいな空間に居るのがルイス君ではなくて最愛の人だと
「見事な借景(しゃっけい)になっている、な……」 愛の交歓の甘い残り香と余韻を余すところなく纏った薄紅色の肢体に純白のシルクが映える最愛の人も祐樹の傍らに立って潤んだ目を瞠っている。「そうですね。見事な日本式のお庭の灯篭の間に『五山送り火』の一つの『大』の
「では、フロントにいらしてください」 以前はホテルに入ると内線電話は繋がったし、何なら外からでも通話出来たのだけれども、個人情報漏洩とかそういう観点から見直されたのかも知れない。「はい、宜しくお願いします」 別に疚しいこともないのでボーイさんに付いて行っ
そうだ、黒木准教授に手術の成功と、何だか物凄く思い入れの有りそうなオクスフォード大学のアカデミックガウン姿のルイス君の画像を送ろうとスマホを操作した。 LINEに大学関係者からの連絡がないのは時差の関係もあるだろうが、皆が遠慮しているのだろう。 そう言
呉先生が北教授に続いて海外の学会に何度も招聘されるとなれば、それでなくとも呉先生を買っている斎藤病院長覚えがますます目出度くなるだろう。 北教授も救急救命室の責任者だが、災害医療の第一人者として病院に居ないことの方(ほう)が多い。大規模災害が起これば現地
「勿論です。ね、スタンリー先生も是非京都にいらして下さい。『チーム・セイブ』の一員ですから」 やっと無事に国際公開手術の術者を務め上げたという実感がわいてきて、肩の荷が下りた爽快な気分だった。 最愛の人と肩を並べることが出来る外科医に一歩近付けたという胸
「人工心肺は貴方みたいに手技の劣る外科医御用達のモノだということをご存知ないのですか?それに脳梗塞や腎不全などの合併症を引き起こしやすいというのは常識ですよ。 この会場でそんな馬鹿なことを言っている暇があるならアメリカの南部の田舎町に帰って手技を磨くこと
質問者の顔は見えないがアメリカ英語の彼は絶対に額に青筋を立てているか顔を真っ赤にしている語気の荒さだ。尤もそんな顔は見たくもないし、見る時間も勿体ない。「人間の手というのは不思議なものなのです。ホチキス(ステープラー)も広義では機械ですよね?狭義では道具
チケットを見て自分が乗るべき車両を見ると赤色だった。 ロンドン行がその色で統一されているのか偶々(たまたま)なのかまでは調べていなかったが、自分が惹かれて止まない祐樹の太陽のオーラは赤色と黄色だ。 そして日本の百貨店で祐樹にと選んだバーバリーのスーツに合
「その通りです。これ以上肥大が進行しないためにも壁を作る必要が有るのです。 肥大を防ぐために網目状(あみめじょう)に編んだフィラメント糸を被せる術式も有りますが……?」 依然として祐樹の目は周りのあらゆるものがゆっくりと進行していくように見える。そして、何
シャルルドゴール空港の近未来的な建物は流石「芸術の都パリ」の玄関口に相応しいと感心してしまう。 一部分しか見ていないしさほど興味が有るわけでもなかったが、日本だと反対意見も多く出て結局無難な建物になるのは想像に難くない。 テレビで観たルーブル美術館もガ
「メス」 バーキング看護師が鶺鴒(せきれい)のように渡してくれた。 手に馴染んだ大きさではないものの、先程から必死に見ていたし、イメージトレーニンはミラー先生の助太刀のお蔭で充分過ぎるほど補完出来たので違和感は抱かなかった。 祐樹の脳裏に患者さんの心臓を撮
いくらファーストクラスのスーツケースが優先されるとしても、時間はもっと掛かると踏んでいたし、入国審査も多めに見積もっていた。 故に時間はたっぷり残されている。 コウシケとやらは殿下に関係するらしい……となると、皇嗣家のことだろうか……? そして皿婆……
「そろそろ種明かしをしてくれても良いだろう?この患者さんにどういう術式で臨むんだい?」 何だか祐樹を囲む全てが遅くなったように感じる。 そして自分の手術(オペ)が今までイメージしてきたよりも簡単に出来るような感覚を抱いた。 ミラー先生とバーキング看護師の連
食事を終えてコーヒーを飲む。 祐樹は誤解しているようだが、自分が飲むコーヒーはインスタントでも全く構わない。 インスタントコーヒーの粉に単に熱湯を注ぐよりも、2割の湯を注いで粉を入れてスプーンで100回混ぜた方(ほう)が美味になると聞いてから実行している
……といっても、この国賓とか王族などが報道陣の前に姿を現すまでの休憩所とか、マスコミに漏れてはいけない国際問題について密談を交わすために設えられた場所のようだ。 先ほどのある(・・)一定の年齢の女性が運んで来てくれた、自分がずっと祐樹のために作りたいと思
ミラー先生とバーキング看護師が時間を稼いでくれていたお蔭でようやく祐樹にも道具類の微細な差が手と脳にインプット出来た。 国際公開手術の第一助手に選ばれるだけの力量の持ち主のミラー先生は祐樹も非の打ち所がない手技の冴えを見せてくれていた。 きっと数年後に
「ラウンジから軽食をお持ち致しました」 パリ大学で講演会の講師を務める呉先生に自宅マンションで教えていた通りのフランス語訛(なま)りの英語を紡いでいたのはフランス語で言うところのある(・・)一定の年齢の女性だ。 自分も呉先生に同じような発音で呉先生の原稿で、
……スタンリー先生が操作している注射針のサイズは祐樹が普段馴染んでいる物とはサイズがミリ単位であるが異なっている。 この太さは飛行機の中でドクターコールに応えた時に点滴で見たモノと同じだろう。 ということはメスや血管を挟んで仮に止血するペアン鉗子(かんし
「長旅でさぞお疲れでしょう。どうぞ、お部屋でお寛ぎ下さい」 特に疲れてはいなかった。何しろ長いフライトの80%以上は呉先生から貰った薬で寝ていた。 自分はインターネットカフェなるものに行ったことはなかったものの、テレビで紹介されていた。寝泊りする人も多い
自己紹介を延々としていても全く面白みがないし、祐樹の居る場所が明るすぎるせいで相対的に暗く感じる観客席に座っている外科医達は皆祐樹の経歴など知っているだろう。 気が利いたことを一分以内で話そう。咄嗟に判断して口を開いた。 この観客席のどこかに居る最愛の
「お風邪は如何ですか?ごゆっくりお休みになられましたでしょうか?」 飛行機を降りる直前に親身そうに、そして何だか眩しそうに聞かれた。「お陰様ですっかり治ったようです。お世話になりまして有難う御座います。 ご配慮とご厚意を感謝致します」 大学病院で眩し気な
待機所に行くと、先程よりも真剣な表情ながらどこか親身そうな笑みを皆が浮かべて出迎えてくれた。 祐樹はスポーツをしないが何だかチームメイトに接するような感じだ。 その頼もしい人たちに混じって見ない顔が一人混じっていた。「田中先生、スタッフのジョージ・カー
世界に冠たるオックスフォード大学が手術準備室の個室デビューか……。 手術室、いや今回は多分無菌シートに覆われた透明な空間になるだろう。ベルリンの時もそうだったので、テント状に覆われた中で執刀を行うことになることは知っていた。 その最後の準備がこういう重
バーキング看護師は祐樹の息とか手の動きをシンクロさせている。既に準備モードに入ったのだろう。「開胸している時間が短いほど患者さんへの身体の負担は減りますよね。ですから……」 この頼もしいチームには祐樹の意図は完全に伝わったらしい。目の輝きがそれを証明し
「いや、全然。京都は地下に水が多く含まれている盆地だろう。 だから名水として名高い滝などはあるけれども、温泉が出るとは思っていなかった。 湯冷めどころか未だ身体が火照っている……」 レモン入りの水を一口飲むと紅色の喉が扇情的に動くのを見ているだけで幸せな
例えごくごく小さなことであっても一仕事終わらせたという達成感を味わって少し気分が浮上したようだ。 ただ、自分には読書や映画鑑賞などの視覚情報よりも、手先を動かすという触覚情報の方(ほう)が向いているということに気付いた。 そう言えば、定時に上がって自宅に
その祐樹の一言で全員の表情がスイッチを切り替えたようにガラリと変わった。 先ほどまでは余計な一言が祐樹の気に障ったバーキング看護師も祐樹の口元を一言も聞き漏らずまじといった感じの瞳だし、そして何より祐樹の息を合わせるように努めているのが分かった。 流石
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「祐樹……、この二人だけの愛の空間……。本当にこの屋上が最も高いのだな……。祐樹の高校の屋上もこんな感じだったのか?」 キスの合間に紡がれた、艶やかな中にも無垢さを含んだ言葉が紡がれている。最愛の人の高校時代も教室から出ることもなく読書をしているか、定期
いつもご覧いただきありがとうございます。これまでブログの更新はパソコンで行っていたため、スマホでの表示について深く意識していませんでした。ところが先日、珍しくスマホから自分のブログを見てみたところ、うっかり広告をタップしてしまい、まったく興味のない外部
「あ!オレ、いや私までも真殿教授は、とても不本意そうな顔で、『なぜFacebookをしないのか』と言ってきたことがあります。まだ医局にいた頃です。大喧嘩をする前も一触即発といった感じが漂っていたのですが、それでも誘ってくるのですから、イエスマンばかりの医局員は皆F
「――先に答えを言ってしまったら、興が削がれるでしょう?」 最愛の人の薄紅色の唇を祐樹の唇で封印した。そしてサマーセーターを着ていても先ほどピーチフィズを零したせいで可憐に尖った胸を指先で弾いた。愛の交歓の前奏曲としてはちょうどいいだろう。このエレベータ
そういえば、最愛の人も祐樹も「心臓外科」の医師一覧に載っているが、同じような「理知的で誠実な、そして控え目な笑みを浮かべてください」と広報室の人に言われた記憶がある。だからきっと同じ指示が医師全員に行き渡っているのだろう。「私が特定不可能な以上、森技官
確かにその通りだろうなと思った。脳外科のアクアマリン姫こと岡田看護師と付き合ったことで、久米先生はゲームという二次元から普通の恋愛にシフトしていて、以前ほどのめり込んではいない。しかし、顔は清楚なのに胸が異様に大きい美少女のセーラー服を一枚一枚脱がして
「別に私はガンジーのような非暴力主義者ではない。祐樹が久米先生の頭を叩いているのを見た時、その行為を彼自身が喜んでいると判断したので、敢えて干渉しようとは思わなかった。医局員全員も、あれは『愛のあるイジり』だと理解していると柏木先生が言っていた」 柏木先
「ウチの病院のサイトに、精神科所属の医師の顔写真は載っていましたっけ?」 最愛の人が淡い笑みを浮かべて頷いている。誰が聞いているかも分からない職員用の食堂で呉先生を揶揄する医師二人は、たとえ親真殿派ではなくても呉「教授」に反対するはずだ。 二人で暮らして
うっかり布地越しとはいえ、胸の尖りを晒してしまった最愛の人のリアクションも非常に気になった。そういう情事に触れられると、普段の最愛の人は顔を紅色に染めて目を伏せていた。しかし今夜はそうではなかったので内心、意外だった。 祐樹と二人きりの時には、大輪の紅
特筆すべきは最愛の人の麗しい筆跡のみで、祐樹には縁のない名前の羅列に過ぎない。森技官が、あたかも国家機密のように大切に抱えていたその紙を、祐樹はテーブルに広げ、何の演出もなくスマホで撮影し、LINEで清水研修医に送信した。一応「極秘でお願いします」とだ
「また始まった」 呉先生がぼそりと漏らした。諦めと愛情が絶妙なバランスで同居した、乾いた呟きだった。しかし、それ以上何かを言うことなく、呉先生は無言で森技官に視線を向けていた。祐樹もつられて視線を向ける。 森技官が言う「備考欄」には、最愛の人の達筆が静か
最愛の人はどこか誇らしげなセピア色の口調とまなざしだった。杉田弁護士は極上の生クリームを心行くまで舐めたチェシャ猫のような表情だ。何しろ祐樹に「香川教授が今『グレイス』に来ていて、多数の男たちから奢られている」と知らせてくれたのは彼だった。「グレイス」
四個の洋菓子は既に食べてしまっている。呉先生は最愛の人よりも華奢な身体なのにどこに収まったのだろうか?まあ、洋菓子効果で呉先生の決意がさらに固まったなら祐樹としては喜ばしいのでスルーしよう。「――新しいかどうかまでは分からないですよ。ただ、その看護師が
最愛の人も男性器は見慣れているはずだ。といっても大学の講義の一環や医学部生の時にボランティアとして参加していた救急救命室での経験に限られていただろう。身体を重ねた相手は祐樹が二人目で祐樹のソレはともかく初めての相手のはそうまじまじと見ていないような気が
「教授教えて下さって有難うございます。あ!お前が軽躁の入り口に立っているかと思った。本気大道芸だったからな、あれはさ」 森技官は一瞬だけアルマーニがこよなく似合う肩を落とした。恋人の言葉は妙に効くらしい。祐樹に言われたなら、きっと三倍返しで皮肉を返してい
最愛の人の怜悧な声は相変わらず淡々としていて、まるで「地球は丸いのです」という自明すぎることを話しているようだった。その静謐な口調が胸の奥に染み入り、祐樹の心は、まるで水面に沈んでいく光の粒のように最愛の人の言葉に全て吸い込まれていく気がした。ただ、二
最愛の人は固まり、呉先生は呆れ果てたスミレの花といった感じで単に咲いている。祐樹は身体を動かすと笑いの発作が再発しそうで、身じろぎすら出来なかった。 精神的には一時間、実際には五分くらいだろうか?ナゾの空白の時間だけが、ただ過ぎていった。 最愛の人がし
ナツキは一瞬だけスマホに目を落とした。多分、両親の待つ家に帰ろうかと思ったのだろう。しかし、今の祐樹は「グレイス」の常連ではない。 今宵訪れたのは最愛の人とのデートの一環で、こんなに長居をするつもりもなかった。最愛の人も祐樹に誘われたから足を運んだだけ
祐樹が洗面所で顔を拭きながら深呼吸を一つ二つと行い、ようやく笑いの発作を収めてキッチンに戻った瞬間、祐樹は一瞬、時空が歪んだのかと思った。 テレビの中でしか見たことのないはずの――学生運動、アジ演説、安田講堂の熱狂。それなのにそこに居たのは、アルマーニ
「いや、業績が悪いというわけでもないな……」 薄紅色のしなやかな指がグラスを持っているだけで絵になる。グラスを傾けている彼は最適解を導き出しているような感じで少し考えに耽っている表情だ。そんな彼の怜悧な様子は病院でも見て来たけれども、そちらは数秒で答えを
「祐樹……」 ビルの狭間にあるごく狭い路地だった。殺風景な空間に甘く蕩けた声が艶やかな空気の欠片となって周りに飛び散っていくような錯覚を抱いた。瞳を閉じた顔がキスを強請るように上に掲げられている。薄紅色の唇も祐樹の接吻を待ち焦がれたような切なさで咲き誇っ
この話の輪に居る錚々たる外科医が爆笑した理由は、手術の時に妬み混じりのヤジを飛ばして来た外科医に鮮やかな反論をした森技官と呉先生の苦手というか生理的嫌悪感まで抱いてしまう話題になったのだろうかなと予想してみた。「で、大出血した心臓のリカバリーを具体的に
「非の打ちどころのない性格ですよ。具体的にはいつも私のことを最優先に考えて下さったり想って下さったりしていますよね。関西空港で初めて(・・・)会った時に一目惚れをしたのは事実ですが、内面を知るにつれて徐々に好きになっていきました。聡の性格がもし異なっていた
これは突っ込んで聞いた方が良いのか?それとも大爆笑に合わせるべきかという、いかにも日本人らしい控え目な思考が頭を過(よぎ)って最愛の人と困惑した視線を絡ませた。アッシュベリー先生も突然の大爆笑に面食らった表情を浮かべている。何だか躁めいた笑いだと思ってし
「あの薬品保管室は香川外科の医局の人間しか知らない部屋です。ですから隙を見て侵入して密会に使っている人間は限定されます。そのことが表沙汰になれば香川外科の不名誉として病院内の評判失墜になるでしょう?発見した時には教授にご相談をしようと考えたのですが、あま
「そろそろ、ホテルに戻りましょうか……?」 教授職の最愛の人は妥当だが、祐樹は一介の医局員に過ぎない祐樹は国際公開手術推薦のためのオマケだったとしても心臓外科医学会の理事という肩書なので、ホテルは学会が準備してくれている。普通の配慮なのかまでは分からない
特に臭いだった。汗とか精液の入り混じった独特の……。これはこの部屋に入って性行為を仕出かしている男女が居たということだろう。長岡先生はプライベートの時には香水をつけているのは知っている。ちなみに祐樹が内心驚くような大きなダイヤモンドの指輪とその指輪のデ
病棟巡りを終えて医局に帰った祐樹は、自分の机のパソコンのキーボードの上に上質な紙の封筒を見つけた。良く来るダイレクトメールみたいに住所や宛名が書いていないのを不審に思って裏返すと「長岡」と綺麗な字で書いてあった。香川外科唯一の内科医の彼女には当然LIN
「私から説明致します。京都は観光地としても有名なのは皆様もご存知のことかと思います。昔はメインの仕事、つまり男性に肌を許すことでしたが、今ではお酌をしたり話し相手になったりすることの方(ほう)が多いらしいです。しかし普通の女性では『鬼退治アニメ』のような恰
オレンジ色の照明は落としてあるとはいえ、スマホの画面は充分に見える。「え?100株保有していれば500円サービス券が4枚貰えて200株だと10枚、つまり5千円分が実質無料で食べることが出来るのですか?呉先生が泣いて喜びそうですね」 呉先生は可憐な野のス
「TNT爆薬というのが最も破壊力が大きいとどこかで読みました。あれなら大正時代にもあったと思いますが、タイミング良く爆発させるのは難しいですね。少しの衝撃で爆発まではしないらしいですし……。そういえば、狭心症に劇的に効くニトログリセリンはダイナマイトの原
「明石教授も優れた外科医なのだけれども、英語力がイマイチと言うか……。いや日常会話レベルは完璧だよ?しかし、細かい点で通じないことが多くて教わる場合はそこがネックになる。その点田中先生はそういう点もなさそうだ。だからセイブ術を教わる語学の壁もないと判断し
「死滅回遊魚な……」 祐樹の肩に凭(もた)れ掛かった首を少しだけ上げた最愛の人は夜目にも澄んだ瞳を祐樹に向けた。地元の京都では定番のデートコースでもある鴨川の河川敷で、四条大橋から遠い場所でもこれほどの積極性は見せてくれなかったので何だか嬉しい。 東北とい
「セイブ術も明石教授を上回る出来だったと思います」 意外な言葉に口に含んでいたロマネコンティを吹き出しそうになった。しかし、大変高価なワインなので勿体なさ過ぎて必死に堪えた。最愛の人は大ぶりのワイングラスを細く長い指で持ったまま瑞々しい花のような笑みを浮
「そうだ。6,626円×100がミニ株を使わなかった場合の金額だ。上ったり下がったりしているだろう?」 オレンジ色の灯りで照らされた指がスマホを操作している。性格が最も好みだが、彼の顔や肢体も祐樹は大好きだ。しかし、凱旋帰国の前に見せられた彼の手技のビデ
公立の高校は詳しくは知らないけれども、全国で同じ仕様になっているのかもしれない。 と言っても祐樹の通った高校しかサンプルデータはないので定かではない。 最愛の人も公立高校を卒業しているので聞いてみようかとも思った。 自転車が遠ざかっていくと彼の頭が元通り祐
彼が祐樹の肩から頭を上げたと同時に自転車のライトと思しき光が近づいて来た。この近くの住民だろう。最愛の人が軽やかに立ち上がって祐樹との距離を友達のパーソナルスペースに戻す。幾ら「多様性」が重視されていると謳われている現代でも男性二人が密着して座っていれ
「サトシ、久しぶりだな?日本に籠り切りで何をしていたのかと思っていたが、年上(・・)の指導をずっとしていたのかい?」 いかにも親しそうに肩を叩いているアメリカ人と思しき人に少しムッとした。アメリカ人のパーソナルスペースは日本よりも近いことは知っていたにも関
一気に買うよりも上策な方法というのは何だろうと疑問に思ったが最愛の人の薄紅色の唇が紡ぐ言葉に聞きほれてしまう。「株式は良さげな銘柄(めいがら)、つまり会社をおいおい選ぶとして……」 三好看護師の同僚兼友達が「銀行でNISA口座を開設してしまったら投資信託