「はい、拡張……、それはともかく術式は……」 具体的な説明をしようとしたら、個人的には悔しいが苦み走った整った顔にドロドロと青色の簾(すだれ)が下りていくようだった。 普段の祐樹ならもっと具体的かつ生々しく説明するところだ。 しかし、かの「一力(いちりき)亭
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
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「はい、拡張……、それはともかく術式は……」 具体的な説明をしようとしたら、個人的には悔しいが苦み走った整った顔にドロドロと青色の簾(すだれ)が下りていくようだった。 普段の祐樹ならもっと具体的かつ生々しく説明するところだ。 しかし、かの「一力(いちりき)亭
祐樹行きつけの、つまり救急救命室から最も近いコンビニは店員さんがバーコードだかを読み取る仕組みだった。 ちなみに、高校生まで過ごした実家だったら未だに値段を書いた小さなシールという店もある。 実家に帰る時は実の息子の祐樹よりも母に気に入られている最愛の
「その言葉は単なる営業トークでしょうね。 マンションをローンで購入した場合、銀行は抵当権を付けるのが普通です。 要は担保でして、万が一、ローンの返済が滞って返済不可になった場合はその部屋を売却してローンの残債に充てることが出来ます。 仮想通貨は詳しくは存
アメリカには借金が返せなくなった人の代わりに肩代わりする連帯保証人という制度はない。 自分の知る限り日本独自の慣習のようで、生粋のアメリカ人のコナーズ教授が良く知っているなと逆に感心した。「借金を肩代わりして下さるなら、そうですね。 ハロッズを一棟丸ご
「ローン返済中に遠藤先生に万が一のことが有ったり、三大疾病(しっぺい)に罹ってしまったりした場合には保険の契約形態にも因りますが、それ以降のローンは保険が利いて支払いは免除されます。 つまりそのマンションは相続される方(かたの財産になるということになります。
クロテッドクリームの油分が付いた薄い唇がより艶めきを放っている。 その唇が瑞々しい花のように大輪の笑みを浮かべている、華やかに。「美味しいですよね」 最愛の人と笑い合って同じ物を食べる時は常に最高の味だけれども、手術の達成感のせいかより一層美味だ。「ク
「ローンを完済した時には私の固定資産になって、その後の収益はまるまる手に残るという話でしたが?」 最愛の人は切れ長の目に澄んだ光を宿して遠藤先生と祐樹を交互に見ている。 祐樹も最愛の人をずっと見ているので視線が絡まるのは心が弾む出来事だ。 教授執務室に来
支配人が何だか探るような視線を向けているのは気のせいだろうか? 不審者を見る警察官のような眼差しのような気がする。尤もそんな場面はテレビの中だけでしか知らないのだけれども。 嘘を吐(つ)くという心に疚しいことをしているせいで疑心暗鬼を生じているだけだと信
「はい、それでお願いします。 ところで空腹ではありませんか?ルイス君から分けて貰ったスコーンはとても美味でした。 そして、食べ方も私達とは異なるようで……。 本場だからかそれともオックスフォード大学独自なのかは生憎存じませんが?」 最愛の人は切れ長の目を
祐樹を魅了してやまない端整で理知的な顔が曇っている。 もし仮に二人きりでこんな表情を浮かべられたら、あたふたと原因を探すだろう。そして大輪の花のような笑みを浮かべて貰うために何だってする。 祐樹は最初こそ彼の見た目に強く惹かれていたが、付き合いが長くな
最愛の人は白く長い指で繊細なロイヤルコペンハーゲンのコーヒーカップを持っているだけで絵になる。白と濃いブルーの模様がしなやかな指を精緻に彩ってくれているので。「済みません、説明不足でしたね」 コーヒーの湯気が頬を薄紅色に染めていくような気がした。 遠藤
その手が有ったかと刮目してしまった。 特に舞妓さんや芸子さんの料金、確か「花代(はなだい)」と言ったような気がするが定かではない。 ともかく彼女達を呼ぶには莫大なお金が掛かりそうで、あの時はチームとして機能するようにと必死にテンションを上げていて、その場
「医学部生は国際公開手術のスタッフとして動員されていたみたいです。正装でもあるアカデミックガウン着用という命令が出ていたみたいですね。 そう言えばオックスフォード大学に格別の思い入れがある黒木准教授に手術成功の報と共にアカデミックガウン姿のルイス君と撮っ
ただ、彼女の部屋で同棲を始めて引っ越していって家賃を浮かそうとした人がいたり、極端な例では生きた化石のようなマルクス主義を標榜する共産党員にいつの間にか傾倒してしまって共産党員と共同生活をするために部屋を引き払ったりしたと聞いた、あくまでもウワサだった
「なるほど……。景気があまり宜しくない日本経済を回すための外貨獲得のために頑張って耐えたということなのですね。 レセプション会場で協会長などに顔を売るために森技官は鋼(はがね)の精神力で耐えたというわけですか……。そして手術が終わって気が抜けてトイレに駆け
「教授執務室に参りましょう。長くお待たせするのは失礼ですから。 その封筒やパンフレットなど参考になりそうなモノは全て持って行かれることを強くお勧めします」 いくら手技がイマイチだと言ってもそれは香川外科に所属しているからで、公立病院なら執刀医になれるポテ
「億単位の大きな買い物は営業マンの言い分だけではなくてセカンドオピニオンを受けてみられては如何でしょうか? 尤も私にとって億単位のお金を動かすなどということは、Ai(死亡時画像診断)センターのMRIなどしか縁がないのですが、相(あい)見積(みつ)もりを取るよう
今は祐樹も外科医として至高とまでは行かないがそこそこのレベルには達している。いるのだけれども医局のムードメーカーとして振る舞うように心掛けているし、香川外科では一介の医局員に過ぎないので声は掛けやすい。 医局員が後日問題になりそうな言動をした場合は厳然
「なるほど、良く分かりました。河川敷とか堤防は確かに景観を損ないますよね。 ビックベンと国会議事堂のごく近くまで川が流れているのには驚きましたが……」 嘘を見抜かれていないことに安堵した。 普段の祐樹だったら気付くだろうことを、術者に選ばれてからスルーし
遠藤先生とは業務連絡と当たり障りのない世間話をするだけの祐樹だけれども、香川外科の一員だ。 それに最愛の人も業務以外の相談も歓迎すると言っていた。祐樹がそれほどの知識を持っていながら勿体ないとアドバイスをしたことが切っ掛けで。 遠藤先生の手技は香川外科
「キリスト教の神様は私達のような人間が大嫌いでしたよね。ま、今ではゲイだとカムアウトする聖職者の方もいらっしゃったり、同性婚の式を挙げてくれる教会があったりしますけれど。 聖書には同性愛と獣姦は絶対に駄目だとも書いてありますよね?」 聖書やキリスト教の教
「代々京都に住む人間ならば『白(しろ)足袋族(たびぞく)には逆らうな』という言い伝えが脈々と言い伝えられています」 手術以外の時にこんなに真剣な表情を浮かべたことが有ったか?と思うほどの鬼気(きき)迫(せま)る久米先生の顔に圧倒された。 シロタビ族?多分「族」の
「卓越した手技を持つ外科医として、また尊敬出来る上司としての教授は出会った時から変わりませんけれども、私生活では何だか感情のどこかが欠落した感じで……少し危なっかしいなと密かに案じておりましたの。 それが田中先生と出会って、そして一緒に暮らしていらっしゃ
「そういえば、大根を買いましたよね?鬼退治のマンガの登場人物の一人が好きな料理が『鮭大根』だそうです。どんな味だか食べてみたいのですけれども……」 物凄く食べたいというわけではなくて会話のキャッチボールという側面の方が大きい。「ああ、『生殺与奪の権を他人
医局のドアをスライドさせて部屋を見回そうとする前に久米先生が飼い犬――しかも飼い主が可愛がって欲しがるままに餌(えさ)を上げてしまって可愛いと言われるよりも「貫禄の有る」とか言われそうな――のように走り寄って来た。「田中先生お疲れ様です。その感じだと特に
「え?香川教授の欲しがっていらっしゃる物ですか?」 確認するかのような鸚鵡返(おうむがえ)しの返答だったけれども、淡いピンク色の口紅をつけた唇が可笑しそうな笑みを浮かべている。 「患者さんと冗談を交わして大笑いさせる」という点では医局一の座を不動のモノにし
「……学生時代にキャンパスで祐樹に一目惚れしたのは話したことがあるだろう?」 しばらくは二人が踏みしめる雪の音だけが聞こえていた。その後に薄紅色の唇が白い息と共に言葉を紡いだ。「はい。それは伺っています。というか、今思えば、同じ専攻なのに、どうして声を掛
患者さんとして扱われるのが嫌いなタイプが一定数いらっしゃるのは経験上知っていたし、山科さんはそのタイプだろうと判断したので頼んでみた。「この土日ですか。分かりました、さっそく秘書に手配させましょう。いらしたことを完全秘匿ということで宜しいのですよね?」
「ああ!それは有りますわね。昨日はヒマラヤを持って行きましたの。お恥ずかしながら30の物なのですけれども……」 最高峰と言われるバックなのは知っていたけれどもどこが「恥ずかしい」のか分からない。 祐樹などの感覚ではそういう物凄く高いバッグを京都市指定ゴミ
傘を少し上げた最愛の人は薄紅の頬と唇がモノクロームの世界に一際鮮やかな花の趣きだった。「祐樹がそう言ってくれるから頑張れる……。 しかし、やはりスキーをするのは停年後……いや、外科医として現役を退いてからになるな……。斎藤病院長が骨折しても秘書以外誰も
「大正時代までは皇族の皆様方が宿泊していた建物なので大正ロマンも感じさせる和洋折衷の建物です。宮内庁は耐震性がどうのとも言って皇族の皆さまに泊まらせない意向ですけれど、先の地震の時にはびくともしなかったし調度品全てが無事でした。 これだから宮内庁の役人な
「え?いいえ報告は致しておりませんが、申し上げた方が宜しいのでしょうか?」 祐樹が恐る恐るコーヒーに似た生ぬるい液体に口をつけていると長岡先生のピンク色に塗られた唇が優雅に動いていた。「医局外干渉は病院のご法度(はっと)なのはご存知ですよね?」 どう淹れた
ただ、鬼の情緒というか気持ちには恋愛感情も含まれているのだろうか?主人公が最初に対峙した強い鬼は家族愛に飢えていた。それに遊郭に居た鬼の妹はどうやら鬼のボスに対して特別な感情を抱いていた感じで描かれていたし、懐いた感じで寄り添っていた記憶がある。 ただ
山科さんと目の高さが同じになるように腰を屈めて真摯な笑みを浮かべた。「以前は心臓の手術というだけで命が危険だという固定観念が有りましたけれども、息子さん世代の場合はインターネットでも情報が入手出来ますし、それに何よりウチの香川の素晴らしいとしか言いよう
「あら、田中先生。昨日はLINEをわざわざ有難うございます」 午後の手術(オペ)の執刀を無事に済ませて医局へと戻るべく廊下を歩いていると長岡先生からそう挨拶された。LINE……ああ、そう言えば森技官からスタッフさんの機嫌を取れというミッションを受けて長岡先生を紹介
祐樹はしていないがSNSだと「同好の士」が集まって話す機会がたくさんあるらしい。 小林さんも祐樹同様にそういうネットの使い方はしていないようだった。だからこの時とばかりに話して来るのだろう。 中間管理職は部下からも上からも色々言って来て大変だという程度
「病棟に行って来ますね」 医局のスライドドアを開きながら医局長の柏木先生に届くように声を張り上げた。手術(オペ)も無事に終了した医局には小さな達成感という感じの空気が流れている。 といっても祐樹は午後の手術は最愛の人の第一助手だった。ただ執刀医も務めている
このマンションはファミリー向けの物件だ。 彼は祐樹に振られる前提で帰国していたと後から知った。このマンションは帰国前の引継ぎなどで多忙を極めていたせいで長岡先生に任せていたら「手頃な広さ」と言われて契約したらしい。 まあ、家の値段ですか?と突っ込みたく
いつも読みに来て下さって有難うございます!!先程、操作をミスってしまいまして明日未明(1時半)に予約投稿しようとした記事がうっかり「公開」になってしまいました。LINEで通知が行った読者様やにほんブログ村・人気ブログランキングの新着にも載ってしまった(現
「大丈夫ですか?」 知らない人が声を掛けて彼に傘を差しだしてくれた。「有難うございます。うっかり凍結した場所を踏んでしまったようですがもう大丈夫です。ご心配とご迷惑をお掛けして申し訳ないです」 親切な人と最愛の人に向かってそれぞれに頭を下げた。「あのう、