「ローンを完済した時には私の固定資産になって、その後の収益はまるまる手に残るという話でしたが?」 最愛の人は切れ長の目に澄んだ光を宿して遠藤先生と祐樹を交互に見ている。 祐樹も最愛の人をずっと見ているので視線が絡まるのは心が弾む出来事だ。 教授執務室に来
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
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「ローンを完済した時には私の固定資産になって、その後の収益はまるまる手に残るという話でしたが?」 最愛の人は切れ長の目に澄んだ光を宿して遠藤先生と祐樹を交互に見ている。 祐樹も最愛の人をずっと見ているので視線が絡まるのは心が弾む出来事だ。 教授執務室に来
支配人が何だか探るような視線を向けているのは気のせいだろうか? 不審者を見る警察官のような眼差しのような気がする。尤もそんな場面はテレビの中だけでしか知らないのだけれども。 嘘を吐(つ)くという心に疚しいことをしているせいで疑心暗鬼を生じているだけだと信
「はい、それでお願いします。 ところで空腹ではありませんか?ルイス君から分けて貰ったスコーンはとても美味でした。 そして、食べ方も私達とは異なるようで……。 本場だからかそれともオックスフォード大学独自なのかは生憎存じませんが?」 最愛の人は切れ長の目を
祐樹を魅了してやまない端整で理知的な顔が曇っている。 もし仮に二人きりでこんな表情を浮かべられたら、あたふたと原因を探すだろう。そして大輪の花のような笑みを浮かべて貰うために何だってする。 祐樹は最初こそ彼の見た目に強く惹かれていたが、付き合いが長くな
最愛の人は白く長い指で繊細なロイヤルコペンハーゲンのコーヒーカップを持っているだけで絵になる。白と濃いブルーの模様がしなやかな指を精緻に彩ってくれているので。「済みません、説明不足でしたね」 コーヒーの湯気が頬を薄紅色に染めていくような気がした。 遠藤
その手が有ったかと刮目してしまった。 特に舞妓さんや芸子さんの料金、確か「花代(はなだい)」と言ったような気がするが定かではない。 ともかく彼女達を呼ぶには莫大なお金が掛かりそうで、あの時はチームとして機能するようにと必死にテンションを上げていて、その場
「医学部生は国際公開手術のスタッフとして動員されていたみたいです。正装でもあるアカデミックガウン着用という命令が出ていたみたいですね。 そう言えばオックスフォード大学に格別の思い入れがある黒木准教授に手術成功の報と共にアカデミックガウン姿のルイス君と撮っ
ただ、彼女の部屋で同棲を始めて引っ越していって家賃を浮かそうとした人がいたり、極端な例では生きた化石のようなマルクス主義を標榜する共産党員にいつの間にか傾倒してしまって共産党員と共同生活をするために部屋を引き払ったりしたと聞いた、あくまでもウワサだった
「なるほど……。景気があまり宜しくない日本経済を回すための外貨獲得のために頑張って耐えたということなのですね。 レセプション会場で協会長などに顔を売るために森技官は鋼(はがね)の精神力で耐えたというわけですか……。そして手術が終わって気が抜けてトイレに駆け
「教授執務室に参りましょう。長くお待たせするのは失礼ですから。 その封筒やパンフレットなど参考になりそうなモノは全て持って行かれることを強くお勧めします」 いくら手技がイマイチだと言ってもそれは香川外科に所属しているからで、公立病院なら執刀医になれるポテ
「億単位の大きな買い物は営業マンの言い分だけではなくてセカンドオピニオンを受けてみられては如何でしょうか? 尤も私にとって億単位のお金を動かすなどということは、Ai(死亡時画像診断)センターのMRIなどしか縁がないのですが、相(あい)見積(みつ)もりを取るよう
今は祐樹も外科医として至高とまでは行かないがそこそこのレベルには達している。いるのだけれども医局のムードメーカーとして振る舞うように心掛けているし、香川外科では一介の医局員に過ぎないので声は掛けやすい。 医局員が後日問題になりそうな言動をした場合は厳然
「なるほど、良く分かりました。河川敷とか堤防は確かに景観を損ないますよね。 ビックベンと国会議事堂のごく近くまで川が流れているのには驚きましたが……」 嘘を見抜かれていないことに安堵した。 普段の祐樹だったら気付くだろうことを、術者に選ばれてからスルーし
遠藤先生とは業務連絡と当たり障りのない世間話をするだけの祐樹だけれども、香川外科の一員だ。 それに最愛の人も業務以外の相談も歓迎すると言っていた。祐樹がそれほどの知識を持っていながら勿体ないとアドバイスをしたことが切っ掛けで。 遠藤先生の手技は香川外科
「私も貴方の隣に座っている森技官は緊張の余り幻覚でも見たのかと思いましたよ。 といっても貴方の幻覚なら大歓迎ですけれども、森技官が出て来るとはまさに『心外』といった感じですけれどね。 しかし、あの場に居たのは驚愕でした。手術に集中しないといけないのでチラ
「香川と一緒に吞んでいた時に資産運用の具体例とか、投資用のマンション購入はよくよく考えた方(ほう)が良いとか言っていたような気がするのだが、あいにく酔っぱらっていたので良く覚えていない……」 頭を掻いて恥ずかしそうな表情を浮かべている。 最愛の人と柏木先生
祐樹はより一層輝く笑みを浮かべて真っ直ぐに自分を見てくれている、とても優しい眼差しで。 それだけでこのホテルに来て良かったとしみじみと思った。「このホテルの規約上、どうなっているか良く分からないのですが……、今夜一晩貴方が一緒に居て下さる方(ほう)が私も
「田中先生、お疲れ様。病棟の患者さんについて俺に報告すべきことはなかったか?」 医局に戻った祐樹に医局長の柏木先生がのんびりとした声を掛けてくる。 夜勤・宿直や救急救命室に行く医師達も居るが、一日の仕事を終えたという弛緩した空気が漂っている。「特にないで
「このままキスを続けたいのは山々なのですが、次のステップに移りたくなってしまいます。 生憎、呉先生と森技官もいずれは来るでしょうし。 続きはレセプションが終わってからの最高の私のご褒美として取っておきます、ね?」 昨夜リッツホテルで最愛の人と二人きりにな
ただ、祐樹が嬉しそうな、そして太陽の輝きにも似た笑みを浮かべているのを見て心の底から安堵した。 そして太陽に照らされて咲く花のように笑みを浮かべてしまう、祐樹の笑みにつられたように。「いえ、絶対ロンドンにはいらっしゃれないものだと諦めていた……。いえ最
祐樹はしていないがSNSだと「同好の士」が集まって話す機会がたくさんあるらしい。 小林さんも祐樹同様にそういうネットの使い方はしていないようだった。だからこの時とばかりに話して来るのだろう。 中間管理職は部下からも上からも色々言って来て大変だという程度
「病棟に行って来ますね」 医局のスライドドアを開きながら医局長の柏木先生に届くように声を張り上げた。手術(オペ)も無事に終了した医局には小さな達成感という感じの空気が流れている。 といっても祐樹は午後の手術は最愛の人の第一助手だった。ただ執刀医も務めている
このマンションはファミリー向けの物件だ。 彼は祐樹に振られる前提で帰国していたと後から知った。このマンションは帰国前の引継ぎなどで多忙を極めていたせいで長岡先生に任せていたら「手頃な広さ」と言われて契約したらしい。 まあ、家の値段ですか?と突っ込みたく
いつも読みに来て下さって有難うございます!!先程、操作をミスってしまいまして明日未明(1時半)に予約投稿しようとした記事がうっかり「公開」になってしまいました。LINEで通知が行った読者様やにほんブログ村・人気ブログランキングの新着にも載ってしまった(現
「大丈夫ですか?」 知らない人が声を掛けて彼に傘を差しだしてくれた。「有難うございます。うっかり凍結した場所を踏んでしまったようですがもう大丈夫です。ご心配とご迷惑をお掛けして申し訳ないです」 親切な人と最愛の人に向かってそれぞれに頭を下げた。「あのう、
「ああ、そう言えば患者さんに山科さんっていらっしゃいましたよね、私が主治医の。あの人は京都でかなりの影響力を持つ人らしいです。久米先生が『患者さんでなければ、畏れ多くて話も出来ないほど偉い人』と教えてくれました」 至って普通の人という感じの患者さんだった
「祐樹、お帰り」 静謐で暖かな部屋に最愛の人の明晰な声が闇に溶け込んでいくように小さく響いた。「祐樹が帰宅する午前三時頃には自然と起きてしまう」と言っていた人はやはり目覚めていてくれていた。そういう細かな心遣いもとても愛おしい。眠って体力を回復して欲しい
「私が出来ることなら喜んで祐樹のお願いは聞くが? それはそうと、祐樹は車を持っているという点を病院では内緒にしているのではなかったか?」 最愛の人が降りしきる雪の中で春の陽射しのような笑みを浮かべている。 以前の彼は直球勝負というか全く嘘が吐(つ)けない人
「私は不調法なので茶道を嗜んでいないのですけれど……」 最愛の人も高校時代までは経済的に恵まれていなかったと聞いている。 全国模試の結果は――本人が匿名を希望しない限り――受験者に配布されて、上位の人間の名前と高校名は載るというシステムだ。祐樹も別に匿名
今年のホワイトデーは平日なので、直近の土日に大阪のホテルを予約しよう。 豪華客船の映画を二人で観に行った時に交わした会話を思い出した。ソファーだか寝(カ)椅子(ウチ)だかに横たわってヌードの絵を描かせたヒロインのことを肯定的に言及していた最愛の人なので、ヌ
「祐樹、この見事な岩と雪が降りしきる様子を画像に撮って内田教授や浜田教授にも是非見せたいのだが……?」 最愛の人がいかにも重大なことを相談するといった風情で聞いてきた。ちなみに主人公の羽織(はおり)を着た青年は――ただ、アニメではこの岩を斬った段階で隊士で
「わぁ……。桜の木が見えないのに、こんなに桜の花びらが舞い散っていて……。しかも藤の花の紫との調和が……。何だか夢のような景色だな……。着物の模様みたいでとても綺麗だ……」 二個目の「おかか」つまり鰹節(かつおぶし)のおにぎりを唇に運びかけている状態で手を
「あれ?支払ってくれるのか?なんかさ、田中先生にそんなにたかって良いのかな?とは思っていたんだけど……」 ケーキを奢ると言ったのは紛れもなく祐樹だ。だから自分の発言には責任を持ちたい。「いえ、ここは私が支払い……」 嵩張る紙袋を二つ取り出そうとした分、身
降りしきる雪が割れた岩に幻想的かつ荘厳なイメージを付け加えている。 鬼退治のアニメでは一年中藤の花が狂い咲くという山に――そんな山が本当に有るのかどうか祐樹は知らないし、多分ないだろうなとも思う――弱い鬼がたくさん生け捕りにされて閉じ込められているとい
祐樹が最も気に入っているコンビニのロゴが付いたポリ袋に目を留めた人が満面の笑みを浮かべている。 この神社はこんなに人が来ないのに、経営(?)が成り立っているのが不思議なくらいだ。祐樹にとっては、人が居ない点が気に入っているのだけれども。最愛の人の細い髪
「そうか。だったらピザを取らないか?『ピザーラスタイル』のさ『チーズ&ハニー』が食べたいな……」 祐樹はそのピザを食べたことはない。ないけれども、医局の細やかな催し物の際(さい)にダイエット中にも関わらず久米先生がオーダーしていた。 チーズがドバっと掛かっ
ちなみに羽織を着た若者は岩の近くで自撮りをしている。SNSにでも投稿するのだろう。 そういうコアなファンのコミュニティが有ることを小児科の浜田教授から聞いた覚えがある。その他の観光客は社会現象とまで評されたように年齢はまちまちだった。 これならば成年男
「すみません、時間が押していまして……。買い物をお願いしても良いですか?」 新人ナースを引き連れて入って来た心臓外科の看護師長に声を掛けた。 祐樹はこの医局では一介の医師に過ぎないが、執刀医を務めている医師に対しては特別扱いを受ける権利がある。何しろ、こ
病院内の噂では杉田弁護士が関わった医療過誤事件は勝訴判決を勝ち取ったらしい。その後病院が訴えられたという話は聞いていない。 研修医風情にはそういう情報は入って来ないものだけれども、その頃から最愛の人と付き合っていたので教授会の議題などはかなり詳しく聞い
「祐樹……、あの人の羽織(はおり)めいた物……」 不思議そうに眼を瞠(みは)った最愛の人の視線の先を見た。今までは最愛の人が転倒しないようにと足元ばかりに注意を払っていたので迂闊(うかつ)にも気づかなかった。 この雪遊びのデートのプランで最も転倒のリスクが高く