「田中先生、政府のインバウンド効果の底上げ策にナイスサポート有難う御座います。 スタンリー先生など錚々たるメンバーを先に呼んでおくことで『一見さんお断り』の『一力(いちりき)亭』の一見さんではなくなるという布石は見事なものだと思います。 ああいう格式の高い
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
薩摩芋を買うために野菜売り場へと歩みを進めた。「本当はカデナ(南京錠)を付けて鍵もキチンと掛けるように出来ていますの。防犯のためらしいのですが。 しかし、掏(す)りに遭うよりも引ったくり被害のリスクの方が高いと思いませんか……?」 可笑しそうに口角を上げて
「お寺は仏教ですよ。基本的にはインドや中国経由で入って来たものです。要は外国由来の教えですね。ちなみに仏教は世界三大宗教の一つです。 神社は神道ですね。『古事記』や『日本書紀』に出て来る日本の神様を祀(まつ)っています。 パッと見て分かるのは鳥居が正面に有
八木君と麻田さんが「心中」と聞いて、心の中になんだか違和感の雲が積乱雲のようにむくむくと育って行く。その正体を考えて行くことにする。 ああ、フェイスブックだと思い当たった。 俺達は就職活動に有利になる――ホントかどうかは知らないが、そう先輩にアドバイス
「はい?」 無邪気な感じで首を傾げる長岡先生の動きに従ってダイヤモンドの一粒ペンダントが清浄な煌めきを放っている。いや、それは今、些細なことだし、自分にとっては祐樹がお母様から自分へと譲られた指輪の方(ほう)がよほど大切だ。「ステーキ肉の紙袋の上にその内科
「『柿食えば』の俳句の英訳を考えていたのですが、法隆寺ってカタカナ、いやローマ字表記で大丈夫なのですか? でも、お寺は『しゅーらいん』ですよね?ホウリュウ・シューラインですか」 一瞬ここが病棟の廊下でなかったら思いっきり頭を叩いてハズレの西瓜のような音を
「西野警視正からだ……」 スマホの表示を見て眉根を更に曇らせた幸樹に、俺も暗澹たる思いに駆られる。『自殺』した国見君の尿検査は直ぐに出ると西野警視正は言っていたけど、血液検査は二週間後になるとか言っていたし。国見君が覚せい剤の常習者だとしたら、国見君のお
「このワインと苺はとても良く合いますね。口の中で調和するというか……。リンゴとメロンも試してみますか?」 祐樹の身体に凭れ掛かったままの最愛の人が嬉し気に艶(つや)やかに染まった笑みを浮かべている。 赤いリンゴの皮と真っ白な果実(?)部分の対照よりも深紅に
「え? ああ、そういうことですわね……。教授さえ宜しければそちらのマンションにお邪魔して焼いて下さる方(ほう)が色々と使い勝手も良いかと思います……?」 暖かい微笑を浮かべた長岡先生の提案の方が理にかなっている。 婚約者がいるとはいえ未婚の異性をマンション
祐樹が日本転覆を企んでいたならば、東日本で地震を頑張って起こしたのと同時に関西の海側の原発も同時にメルトダウンを起こすように爆発物か何かを絶対に仕掛ける。 首都東京と大阪という二大都市を同時に攻撃しないと意味がないのだから。「秘密では全くないです。黒木
失神だか深い眠りだかから覚めた時、ベッドに横たわる俺を幸樹は俺の前髪を梳いていてくれた。 それに身体は汗を始めとする体液も全く感じられない。シーツも夜中に散々滅茶苦茶にしたというのに、綺麗なシーツに替えてある。 慌てて起き上がると、お尻とか、幸樹を受け
祐樹や自分は自分栄養士の資格を持っていないのでごくごく一般的な知識しか持ち合わせていないが、脳のパフォーマンスを上げるためにブドウ糖を含んだ食材を多く使うというのはどうだろう? 糖分の摂り過ぎは生活習慣病、ひいては糖尿病のリスクがあるけれども、祐樹の健
「田中先生の仰る通り、5・7・5という俳句の決まりは英語で表現するのは難しいので、三行以内ならば良いとされています。 また、季節感という考え自体があちらの国では薄いですから、季語はなくても構わないというふうに……。 英国の植民地だったギリシア近郊で生まれ
「遼とこうなるなんて……オレはすっごくイイ。けど、遼は?痛くないか?」 幸樹の声がよりいっそう低く掠れていて、俺の耳を溶かすようだ。 幸樹の欲望が身体から出て行くと、その都度ヴァセリンが足されているのだろう。ヌルついた熱すぎる灼熱の杭を体中で感じている。
確か天の川は秋の季語だった。 しかし、そんな陳腐な俳句は季節が合っているいるからと詠むのは病院の、いや香川外科の品格を下げる行為だ。 しかもその上、主治医のオマケという立場の久米先生がそんな句を詠めば言外に「寸志」を要求しているようにも取られたら最悪だ
「あ、済みません。精神医学会の事務局からです。多分論文の件ですので長くなると思います」 呉先生はスマートフォンの画面に目を落としながら申し訳なさそうな表情を浮かべている。「いえ、こちらこそ貴重なお時間を割いて頂き有難うございました」 深々と頭を下げてから
ベッドに戻ると幸樹は俺の両脚を更に広げて、逞しい腰を膝立ちで俺の足の間に入り込ませた。 そして、俺の入り口を探るかのように、先走りの液とヴァセリンを塗った逞しい幸樹自身をお尻の中央の辺りをしばらく彷徨う。「もう少し、腰を上げて貰わないと上手く行かないみ
「准教授ともあろう方が主治医に……?それは光栄です」 准教授が主治医になることはないという病院の不文律を知っているのだろう。「いえいえ、至らぬ点も多々有ると思いますがどうか宜しくお願い致します。 そして、こちらは研修医の久米です。私の手が離せない時も有り
「だったら、今は極秘の国際公開手術が公になった段階で私がそれとなく聞き出しておきます。 外国に友達が行く場合、どこに泊まるのか程度は普通に聞くものですから大丈夫ですよ、そんなにお気になさらずとも……。 それに話すのは仕事上慣れていますし、これでも精神科医
「遼がこんなに感じてくれて、マジに嬉しい」 幸樹の冷たい感じのする引き締まった唇の端から俺の放った白い液体が零れているのを見て、居たたまれなくなるのと同時に、背徳感が快感に変換される。 絶頂を迎えて弛緩した身体の中に幸樹の指が四本も挿っているのも、違和感
ダイエットするする詐欺の久米先生がプクっと膨れた頬が余計に丸くなった。 (その程度の俳句らしきものは自分でも捻ることが出来る)とでも言いたいのだろう。 確かに祐樹が見ても駄作としか言いようのない作品だったし、それを添削するのは至難の業のような気がする。
「いえ、似ていないというか……。何だかとても凄い建物で……宮殿みたいです」 京都は未だましだとはいえ、日本では古い建物を壊して新しく建てるという風潮がある。 東京や横浜では川を埋め立てて高速道路を作ることなど枚挙に暇がないほどだし。 それに対してフランス
でも、間近に見てしまうとやっぱり何だか生々しくて、竦みそうになる。 ただ、幸樹の唇がくれる悦楽は背中が仰け反ってしまう。人の口でされるのがこんなにイイものだとは想像以上だった。いや、相手が幸樹の唇だったからかも知れない。 上目遣いで幸樹の顔を見ると、冷
祐樹最愛の人の教授総回診では有り得ない――というか祐樹が絶対にさせない――粛々とした行列ではない。 今回の行列は簡易版というか単なるお詫びと引継ぎの挨拶回りなので先ほどよりも列が乱れているのもご愛敬だった。「えっと……では……憚りながら……」 久米先生
「これ、もしかして氷の中にレモンの果汁が入っていないか? 厚労省に行った時に泊まったホテル、確か椿山荘だったと思うけれども、あそこはアイスコーヒーに入っている氷もコーヒーを冷凍させたものだっただろう? ホテルはスターバック〇と異なって割と長い時間座ってい
祐樹と二人でアニメ2期を楽しみにしている――いや、実際のところ、国際公開手術が本決まりになる頃なので多分、鑑賞どころではない――「呪いが廻る戦い」では人の負(マイナス)の感情が溜まると呪霊が発生するという設定だった。 呉先生が救急救命室に向ける感情はきっ
「ああ、約束する。遼の身体『も』傷つける積りは全くない。挿れるのが無理なら、潔く諦める」 何時もの幸樹のキッパリとした口調でとても男らしくて潔い。「諦めないで……欲しい。どんなに痛くても、幸樹の全てを俺の身体で感じたいから……。全部、今だけ忘れさせて……
「我ながら情けないのですが、祐樹のロンドンでの宿泊先が分からないのです……。 ベルリンの時は『休暇を取れたら行きます』と言ってくれたので教えたのですが、今回はサプライズですので……」 祐樹の腕の中で――物理的にも精神的にも――守られてきた自分を、この時ば
幸樹の唇が胸の小さな粒を舐めていて、俺の顔を上目遣いで窺っている。 その端整な眼差しに熱情が彩りを添えている。そんな瞳を見てしまえば、もう抗うコトなど考えられない。 冷たそうな印象を与える幸樹の形の良い唇が、俺の胸の粒を柔らかく挟み込んでは、舌で先端部
黒木准教授が立て板に水と言った感じで海外の学会(・・)に行くという白々しくも真っ赤な嘘を吐(つ)いている。 ちなみに最愛の人の場合は嘘を吐くという発想がない上に一介の医局員が主治医を離れる程度のことをわざわざ出てくる必要もない。「それは仕方ないですね。こち
「オレだって怖いんだぜ?ただ、一番怖いのはオレの命じゃなくて、遼を永遠に失うコトだ……」 幸樹の掠れた声が、耳朶に当たっている。その生命の息吹が一番俺の欲していたものだった。幸樹が俺のことを一番に心配してくれているのは、とても嬉しい。「痛くない……かな?
「オレ、いや……そのう、私は先生方のお力になれるように粉骨砕身、精一杯頑張ります! 宜しくお願い致しますっ!!」 久米先生はぷっくりした顔に満面の笑みを浮かべて頭を下げている。その豹変ぶりに内心で笑みを浮かべてしまった。 先ほど黒木准教授に呼ばれた時には
「その言葉は正確に訳すと『一人は皆のために、皆は一つの目的のために』というのが正しいみたいですよ」 以前なら祐樹以外の人に対してはそんなお節介なことを言わなかったのだけれども、今は少なくとも自分の医局に居る人たちには知識を分け合っておきたい。 医局だけで
俺はねっとりと絡みつく湿度の高い場所に居る。周りは燃えるような緑のジャングルだ。 たった一人で、その密林の夕暮れの道なき道を行くと、ところどころで激しい戦闘でも有ったのだろう、周りの木々が燃えていたり、何かで吹っ飛ばされたりしている。 そして、戦車と思
この炎天下の住宅街には、俺と幸樹しか歩いていない。アスファルトには陽炎が立ち上っているし、家によってはたくさんの木を植えている。 そこにアゲハチョウやルリアゲハチョウが戯れているのは、少し目の保養になるけれど。 幸樹の決然とした揺るぎない決意を秘めた顔
「いや、私としては色々なことを教授と語ることが出来て良かったですが、本題に戻りましょう。 外科的な観点からするとこのリスケで大丈夫だと思いますが、念のために長岡先生のご意見も聞いた方(ほう)が宜しいかと存じます」 黒木准教授の見るからに力強そうな指が俊敏な
「何か飲み物が欲しいですね……。聡も喉が渇いたでしょう?」 先ほどまで真剣な話をしてしまっていたから喉の渇きと共に心を癒す必要を感じた。 それに紅色の歔欷(きょき)の声を上げ続けていた最愛の人はさぞかし喉と口が渇いているだろうし。「……ベッドサイドのテーブ
「皆様、ご静粛にお願いいたします。 田中先生の代わりの主治医を柏木先生と私で厳選致しました。 今、この部屋にいらっしゃらない先生には柏木先生が後ほど伝えて下さるそうです。では柏木先生、発表をお願いいたします。 選ばれた先生方はこの後、田中先生と共に患者さ
こんなに強い日差しの中でも幸樹の雰囲気は涼しげな冷気を感じさせる。これは幸樹が薄情だという意味ではなくて、端整な容貌とスラリと引き締まった身体つきのせいだろう。 さっきまで有吉さんを励ましていた親身な感じはすっかり消えている。ただ、やはり眉間には憂い
「外科医として桜木先生には学ぶべきことは多いと思いますが、何故皆が学ばないのか不思議です。 ウチの医局では、申し上げるまでもなく教授と田中先生が執刀しています。 教授の手術スタッフに入っている先生でも田中先生の手技の映像を見たいという医師に勿論許可を出し
毎日暑いですね。少し仕事が忙しくて更新が止まったり時間がばらけたりしております。すみません。しばらくはこんな感じになると思います、すみません。さて、拙作「心は闇に囚われる」復習はほぼ終わりました!!しかし、投稿日時がバラけておりましてめちゃくちゃ辿りにく
本当は、有吉さんの変貌ぶりや、その後の叶わない約束をしてしまったことに対して思いっきり泣きたかった。国見君の時は電話越しでも、あんなにショックを受けたのに、今度は直接、有吉さんの変わり果てた姿を見てしまって二重の衝撃の強さに狼狽えるばかりだった。 でも
「貴方の方が10%とはいえ、遺伝子リスクが高かったのですか? 病気の発症には遺伝子と環境の二大要因が有ることは存じています。 環境要因はストレスですよね。私達はかなりのストレスを背負っているのも――自覚が有るかどうかは別として職業的にそうなのですから――
自分が祐樹に関して悩むことは多々ある。言っても良いのかとか、言ったら祐樹が気を悪くしないだろうかとか。 意を決して言ったら、笑って返してくれたことしかなかったのだけれども。 それ以外は割と悩まずに生きて来た。教授会での付き合いでも基本は自分から話し掛け
正常な判断か……。 国際公開手術の招待状を読んでからは確かに平常心を失っていた。 柏木先生はロマンス詐欺の話題を振ることで祐樹にフワフワと飛んで行った気持ちを必死に地上へと呼び戻そうとしてくれたのだろう、多分。 金箔碧眼の美女からの――多分、ネットに大
「それで結果も聡の執務室に届くようになさっていたわけですよね? 私に絶対に内緒にしたいということは……」 最愛の人の愛の交歓の余韻を色濃く残す甘い眼差しが祐樹を不安そうに見ている。 祐樹的には怒る要素は微塵もないのだが、最愛の人は祐樹の許可を得ずに勝手に
「しかし、外(と)様(ざま)といっても、私はこの大学卒です。 浜田教授はお父様がウチの病院では有名な方だったのですよね? つまりは、何かとウチの病院に縁(えん)のある人しか呼ばれていないのでは? まあ、悪性新生物科にも、あの教授の元では何も成長できないからとい
柏木先生が普段のように明るい笑みを浮かべている。「アメリカ本土では今戦闘中という場所はないですね。紛争地帯に居るという設定(せってい)ですか?あと日本人である男性は日本円、アメリカ人の彼女(・・)はドルしか持っていないという点ですか?」 柏木先生は普段通り
祐樹の過去の恋人は――いや正確には欲望発散のためだけに付き合っていたのだから恋人でもないと今では確信している――全員が漏れなく自分の意見とか都合を押し付けて来て、叶えられなければヒステリックに怒るとかストーカー紛(まが)いな行動に出た。まあ、祐樹の人を見
祐樹は森技官と口喧嘩を楽しんでいるのも事実なのだけれど、森技官の言葉の刃が鋭すぎて負ける時も有る。 基本的に森技官と祐樹が会うのは呉先生と自分の四人一緒で何かをする時だった。 祐樹の車に乗ってデートに行って猪の肉を買って帰った時にも、祐樹が名付けた呉先
仮にツイッターをしていたとしても金髪碧眼の美女には何の興味もない。 そんな女性からダイレクトメッセージなるモノが来ても多分読まずに削除するだろう、削除機能があるかは知らない。 ちなみに面食いを自認している祐樹だが、整っている顔でも馬鹿っぽかったりきっと
「分かりました。少し休んでからもう一度このベッドで愛し合いましょう」 汗の雫を宿した紅色の秀でた額(ひたい)に口づけを落とすと、最愛の人の花よりも綺麗な唇が瑞々しい色香を纏った笑みを浮かべている。 一旦繋がりを解(ほど)いてからふかふかのバスタオルに素肌を密
「なるほど……。病院の非常識さがむしろ好ましいという患者さんやそのご家族がおられるのですね。それは良いお話を聞かせて頂きました。帰宅したら女房に話します。 夕飯の時に一日の仕事終わりに欠かせない一杯ビールを呑みながらでも」 黒木准教授の私生活は殆ど知らな
犬猫の知識はともかく、祐樹が頑張って貯めたお金を奪い取られるのは嫌だったので、詐欺については知っておきたい。「田中先生はツイッターをしていないのか?」 そんな面倒なものはしていない。そもそもそんなに呟くネタなど持っていないし時間も勿体ない。 SNSで時
「ゆっ……祐樹っ……とても……悦(い)っ……。脳に、銀色の雷が……絶え間なくっ……轟いているようでっ……、それでいてっ、真っ赤な……大きな波に……高く、低く翻弄されているっ……」 熱く濡れたシルクが収縮して祐樹の滾った欲情と愛情の象徴を包み込んでいる感触と
「精神科に友人が居るのですが……」 そう切り出すと黒木准教授の温和そうな表情が曇ったようなそして意外なことを聞いたという感じに変わった。 後者の表情には心当たりがある。帰国して以来病院内ではずっと自分を黙って支えて来てくれた人なだけに人間関係構築能力に欠
「いやあ、それがウチの病院での分娩だけは絶対に嫌と申しましてね。 大学病院は医師の勉強の場所でもありますよね。ですから陣頭指揮を執る教授を筆頭にして主治医でない医師や研修医が後学のためにと見学に来ることもありまして。 分娩の際(さい)には当たり前ですが女性
「ゆっ……祐樹っ……。其処をっ……衝いてっ……欲しっ……」 白いタオルの上に零れる嬌声が、小さな紅色の花びらのように生地を染めているような錯覚を抱いてしまう。「先ほど、指で愛した場所ですね。花園の中で小刻みに動かすか、それともいったん花園の門から出て其処
「おお!!田中先生!!未来の国際公開手術成功者のお帰りだ。 手の込んだロマンス詐欺じゃなかったんだな!!」 柏木先生が素早く気付いて明るく弾んだ感じで出迎えてくれると「極上のスコッチで乾杯するのを楽しみにしています」とか言う声が上がった。 長岡先生が仄か
また、森技官が気を紛らわすために手技を俯瞰(ふかん)的かつ機械的に見て飛んだ野次に応戦してくれることにも期待したい。 彼の英語力がそんなに有ったとは全く知らなかったけれど、単に手術の見学をするよりも――Т京大学医学部卒なのに、血を見るのが精神的に大嫌い・
内田教授は難易度の極めて高い医局内クーデターを達成した後に教授会でもうまく立ち回っていると聞いている。 そういう立場の人からも広めて貰った方(ほう)が良いような気がする。 こう表現すると何だか差別的なような気がするし今の時代と適合していないが、この病院の
「自宅以外の廊下で、手を繋いだりキスを交わしたりしながら聡と歩くことが出来る日が来るとは思ってもいませんでした。しかも、こんなに天井も高くて広い洋館を……」 薄紅色の耳朶(じだ)に取って置きの甘く低い声で囁いた。 最愛の人を「聡」呼びするのは愛の交歓の時だ
心地良い酩酊感で頭の中の紅色の霞(かすみ)がより一層濃くなっている。普段なら直ぐに答えが出て来るようなことでも今は何だか心許(こころもと)ない。 アルコールには強いと自負していたが、日中の散策とこの質素ながらもどこか豪奢なダイニングルーム、そして最高に美味
「確かに……。 お盆休みを利用すれば、ゆ…田中先生の手技に対しての……父親的(・・・)な私がイギリスに行けそうですね……。 それと……、説明が前後して申し訳ないのですが、私の時よりも難易度が上がりまして。具体的には患者さんの容態などが事前に開示されず、手術
「万が一の場合も当然想定しています。 しかし、幸い香川教授は既に成功されていますよね? 田中が失敗した国際公開手術を、華麗な手技でベルリンの会場を魅了した香川教授はやはり凄いという評判は残ります。 私の顔に泥を塗る結果となっても我が香川外科の評判は落ちな
「患者さんの安全は当然考慮されていると聞いています。 術者が失敗するリスクも考えられていて、万が一失敗したらかつて成功したことの有る術者が複数人、万全の体制で控えていて失敗した箇所のリカバリーは当然施した後に最善を尽くして手術(オペ)を成功させると聞いたこ
「チャイナドレスって中国の人が普通に着ていたものだと思っていました。 しかし、単一民族であると言われている日本でも時代劇などを観ていると。平安時代の貴族の女性と戦国時代の武家のお姫様や江戸時代の大奥の女性とお金はたくさん持っていたハズの大商人の娘さんでも
「例の地震」の時は身の安全が確保出来たのだから、自分の命よりも大切な祐樹の安否確認のために救急救命室に駆けつけただけで。 そして大学病院は軍隊に似ていてその場に居るポジションが最も高い人間が指揮を執ることになっている。 マンションは徒歩圏内にあった自分
白河教授は「夏の事件」で失脚した野田教授の元では准教授だったので、黒木准教授ともそれなりの付き合いがあるのだろう。 准教授としての誼(よしみ)とかそういうことで。 最愛の人と「披露宴」と呼んでいる共著の本のパーティには黒木准教授も脳外のアクアマリン姫も当
何だか酔いが普段よりも回っているらしく、頭の中に紅い霞(かすみ)がかかっているような感じだった。 そう言えば家でも呑む柏木先生が以前言っていたような気がする。 家だと早々に酔っぱらってしまって、リビングで寝てしまって奥さんに起こされ寝室に移動してそのまま
本日届きました!凄いモノを頂いてしまって有難うございます!嬉しいです!この艶やかな布!!沢山のトリィフ達~!!そして下にはカレ……!ちなみに72が一番好きです!!いつもいつも本当に有難うございます!!小説が対価になっているのか分からないのですが、テンショ
「白河准教授が医局にわざわざ来て下さって土下座してお詫びして下さったお蔭でその怒りの熱量は一気に冷めましたが……。 病院内での乱闘騒ぎが起こってしまってはそれこそ医局の名折れですからね……。シマ――つまりは縄張りのことですが――争いをしている暴力団と何ら
濡れた瞳が無垢な光を宿して祐樹を見ている。「いえ、冗談ですよ、勿論」 艶やかな眼差しが責めるような眼差しだったので、ついつい弁解してしまった。「祐樹は、そういうお茶目な点があるよな……。 厚労省に行った時だって、欠席したり手を付けないまま帰ったりした人
患者さんは基本的に自分の手技を慕って国内外から集まってくれていて、その気持ちは嬉しい限りだけれども最も顔を合わせて雑談に紛れさせて容態を聞くのは主治医の役目だ。 その中でも祐樹は患者さんの容態とか普段の食生活などを冗談交じりに聞く術(すべ)に長けている。
「それは駄目ですよ。 『病院新聞』は病院長も欠かさずお読みになっていらっしゃるとのことなので。 田中先生が成功なさって帰国した後でしたら問題はないでしょうが、それ以前に情報が出回ったら最悪の場合、香川教授に類が及びます……」 ……そこまでは考えていなかっ
最愛の人がベルリンで成功した時は医学会の重鎮とか医学専門誌の記者などが空港に迎えに来てくれていた。 まあ、オマケというか、あろうことか最愛の人の手術ミスの偽画像をでっち上げた森技官も呉先生と謝りに来てくれていた。 しかし、あの性格が素直に謝るハズがなく
祐樹が術者に推薦されると知ってから自分の気持ちが激しく揺れ動いて…制御不能になっている。 祐樹との恋愛の過程(・・)に関しては異なった揺れ幅で更に激しく動いていた。 特に自殺まで考えた時期もあったなとあの日の自分を殴りたい気分だった。 しかし、それは全く
薄紅色の細く長い指が銀のフォークを持って艶やかな紅色の唇にチーズを運ぶ仕草も艶(あで)やかな金の粉を撒いているような感じだった。 その後に琥珀色の液体が入ったグラスを薄紅色の指が優雅に持ち上げて唇へと運ぶのも。「そうだな……。明治政府が税金を受け取ること
「ああ成る程、実際に費用を出したのは徳川幕府側というわけですね。 だから立地的なことはワガママが言えなかった」 誰だってスポンサーの意向に反するのは躊躇(ちゅうちょ)するだろう。 昼間散策した桂離宮の方(ほう)は一般客から拝観料を取っているから多少の足しには
「ただ保険会社の営業マンなどは割と強引ですよ。 言葉遣いも丁寧ですし物腰も柔らかいのにいつの間にかついついペースに乗せられて契約させられています。 しかし……病院長の営業は上から目線で、しかも相手方に恩を売りつつ自己の主張を通す点が異なるということをウワ
「句会に参加して俳句のスキル(?)を上げて下さいね。ご興味があるならば私などよりも更に話が弾むでしょうから。 あと、この患者さんはこっそり飲酒をしかねないので目を光らせておく必要があります。アルコール依存症の可能性も有るのでその点に留意ですね。 一度、こ
個人的にはそこまでする時間が有ったら真面目に勉強して必死に暗記することをしないのか疑問だった。 確かに専門性に特化した大学病院で、それぞれが目指す科と全く異なる講義があるのも事実だ。 祐樹も苦手な精神科のレポートを精神科志望の同級生に拝み倒して書いて貰
「こちらが祐樹の分(ぶん)な……」 見た感じだと柔らかそうなチーズなのに几帳面な感じにピンと立っているのは最愛の人が細心の注意を払って切ってくれたからだろう。「有難うございます。最愛の貴方が切って下さっているので、より一層美味しそうに思えます」 薔薇色の笑
ただ、一つ考えられることは、目立つことが何より好きな病院長なのでそう言い出しかねないことだった。「それに、香川教授は生粋の病院育ちではないですよね? その点田中先生は異なります。アメリカから凱旋帰国をなさった香川教授の薫陶を受けたとはいえ、ずっと病院所
「ああ、教授の世代だと既に死語になっていたかも知れませんね。 カンニングペーパーの略です。テスト前に覚えきれなかったこととか曖昧な記憶しかないものなどを小さな紙に書いて筆箱などに入れておくのです」 祐樹には記憶力も卓越していると何度も何度も褒められていた
「これは柏木先生の作った私が主治医を務めている患者さんを誰に振り当てるかですね……。皆それなりの信頼関係を築いていますので、交代はしたくないのですが……已(や)むを得ないです」 清水病院長の総合病院には三日後に行くことになっている。 当然ながら大学病院に居
「そのお礼として稔(みの)りの豊かな大国の国司に任命されるというわけですよね?」 国司が今で言うところの県知事の役目をしていたことは祐樹も知っていた。 ただ、県知事と違う点があって税率をある程度まで引き上げてその任国の民から徴収してその差額を自分の物に出来
「ご想像の通りです。香川教授は幼い頃、部屋でずっと本を読んでいたらしいですね。 京都の街に住んでいらっしゃったとお聞きした覚えがあります。 ですから秘密基地を作ることは物理的に不可能だったのではないかと思っています」 最愛の人が病気のお母様とひっそりと暮
確かにあの(・・)神懸かりオペの映像をNHKのカメラマンに貰って知る限りの外科医学会・救急救命学会に送ったのは自分だった。返信メールで素晴らしいという文言を読んだ時には秘書が居ない執務室で読んでいるとついつい満面の笑みを浮かべてしまっていて、誰も居ないの
「先ほどから古典とか日本史で習ったことの深掘(ふかぼり)の知識を教えて頂いていますよね。 それで、ふと疑問に思ったのですけれども、お隣の――といっても面積的に広いのでこの表現で正しいのかどうか分かりませんが――御所とかここって一条ではないですよね? 一条に
「心は闇に囚われる」を楽しみにして下さっていた読者様へのお詫び
大変申し訳ございません。急遽仕事が入りまして、復習作業が大幅に遅れております。7月からとお約束しておりましたが、現在88話までしか進んでいない状況です。全てはプロットを書いたノートを紛失してしまった私が悪いのですが。もうしばらくお待ち頂けますでし
……黒木准教授には二人の真の関係を打ち明けていない。 秘密というものは知っている人間が少ない方(ほう)が秘匿性も高まる。 少数派の性的嗜好を持っていることはこの旧態依然とした大学病院内で認められるわけもないし、恰好のスキャンダルになるだろう。ただ、黒木准
「これは香川教授、わざわざご足労頂かなくとも執務室に参りましたのに」 ドアを開けてくれた黒木准教授の温和な笑みを見ると何だか安心した。この人は常に自分を、そして医局全体を支えてくれる。温厚そうで誠実そうな顔を見るとそういう安心感を覚える。「いえいえ、今の
「糖尿病とは糖分の摂り過ぎが原因でしたっけ……」 専門性に特化した大学病院所属なので心臓以外は良く分からない。そして糖尿病は生活習慣病なので救急救命室とは縁のない病気でもある。「当時はそんなに甘い物が多かったのでしょうか?」 最愛の人がまるで知識の宮殿の
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「田中先生、政府のインバウンド効果の底上げ策にナイスサポート有難う御座います。 スタンリー先生など錚々たるメンバーを先に呼んでおくことで『一見さんお断り』の『一力(いちりき)亭』の一見さんではなくなるという布石は見事なものだと思います。 ああいう格式の高い
「はい。小児科のハロウィンのイベントに駆り出されたのが切っ掛けでした。 その後『難しい話は抜きにしてアニメやマンガの話題だけ』という主旨の呑み会を行っていますね」 納得した感じで頷いている。「ああ、ハロウィンの催し物は『呪いが廻る戦い』の最強戦士が田中先
「ところで、貴方のパスポートの色、茶色でしたよね?あれは一体……」 祐樹は何だか人の耳を憚るような雰囲気だった。 日本人、いや東洋人らしき人はこのホテルのベルサイユ宮殿もかくやと思われる廊下には居ないというのに……。 言語的な問題ではなくて、何か自分が後
「え?普段は薬を使用していない貴方が飲む薬剤を調べないわけがないでしょう?」 外科医としては線の細い身体の持ち主だけれども、風邪を始めとして病気らしい病気に罹ったことはない人だ。 彼本人が手術に差し障りのないように細心の注意を払っているせいもあるけれども
「博覧強記の香川教授らしく遠藤先生への資産運用のアドバイスがあまりに斬新と言いますか、目から鱗だったのです。 ね、遠藤先生?」 絶対にイエスと返答が返って来るだろうという確信が有った。「はい!少なくともこの不動産会社でお投資用のマンション購入は絶対にお勧
「……私が軽率にも営業マンの口車に乗せられて契約を前向きに考えていた時に、田中先生から香川教授のセカンドオピニオンを受けてみないかと有難いお誘いがありまして。 畏れ多いことではありますが、執務室にご意見を伺いに参ったのです」 内田教授はふっくらとした顔に
「残っていますね。帰国した後は放置してありますが?」 どの程度のドルがその口座に残っているか祐樹的には心配してしまう。 最愛の人の意図するところは分かった積もりだけれども残高が例えば980円、いや980ドルだった場合は資産運用というレベルではないような…
「有難う御座います。 後でも良いですから、田中先生、私に一円を下さいね」 遠藤先生は天井を仰ぐことを止めて不思議そうに最愛の人と祐樹の顔を交互に見ている。「法律上は、これで契約成立です。 ちなみにこのボールペンはネットショップで5万円程度が相場ですが、お
「薬剤科を通すと上層部に知られるというリスクも確かに有りますが……、内科で処方した眠剤や精神安定剤を山のように貯めている患者さんも多数いらっしゃるので……。 服薬コントロールをどの程度しているかも兼ねて科の現状を、いわば抜き打ち調査するという目的の一石二
「私の手術の成否を心中深く案じた最愛の恋人は、呉先生に薬の処方をお願いしたのではありませんか?」 その一言で豪奢かつ居心地の良い客室の空気が凍り付いた。 最愛の人は端整な顔が青褪めていて、右の手を左手に重ねて白くしなやかな指がプラチナの指輪を御守りのよう
「似たような物件は二億五千万円で購入出来るようですよ?この物件とか、後はこちらとか……」 黒いマウスに載せた白く長い指が動く仕草は祐樹の視線の吸引力を根こそぎ持って行ってしまう魅惑に溢れていた。 しかし、遠藤先生が三億五千万円という祐樹にとっては天文学的
「はい、拡張……、それはともかく術式は……」 具体的な説明をしようとしたら、個人的には悔しいが苦み走った整った顔にドロドロと青色の簾(すだれ)が下りていくようだった。 普段の祐樹ならもっと具体的かつ生々しく説明するところだ。 しかし、かの「一力(いちりき)亭
祐樹行きつけの、つまり救急救命室から最も近いコンビニは店員さんがバーコードだかを読み取る仕組みだった。 ちなみに、高校生まで過ごした実家だったら未だに値段を書いた小さなシールという店もある。 実家に帰る時は実の息子の祐樹よりも母に気に入られている最愛の
「その言葉は単なる営業トークでしょうね。 マンションをローンで購入した場合、銀行は抵当権を付けるのが普通です。 要は担保でして、万が一、ローンの返済が滞って返済不可になった場合はその部屋を売却してローンの残債に充てることが出来ます。 仮想通貨は詳しくは存
アメリカには借金が返せなくなった人の代わりに肩代わりする連帯保証人という制度はない。 自分の知る限り日本独自の慣習のようで、生粋のアメリカ人のコナーズ教授が良く知っているなと逆に感心した。「借金を肩代わりして下さるなら、そうですね。 ハロッズを一棟丸ご
「ローン返済中に遠藤先生に万が一のことが有ったり、三大疾病(しっぺい)に罹ってしまったりした場合には保険の契約形態にも因りますが、それ以降のローンは保険が利いて支払いは免除されます。 つまりそのマンションは相続される方(かたの財産になるということになります。
クロテッドクリームの油分が付いた薄い唇がより艶めきを放っている。 その唇が瑞々しい花のように大輪の笑みを浮かべている、華やかに。「美味しいですよね」 最愛の人と笑い合って同じ物を食べる時は常に最高の味だけれども、手術の達成感のせいかより一層美味だ。「ク
「ローンを完済した時には私の固定資産になって、その後の収益はまるまる手に残るという話でしたが?」 最愛の人は切れ長の目に澄んだ光を宿して遠藤先生と祐樹を交互に見ている。 祐樹も最愛の人をずっと見ているので視線が絡まるのは心が弾む出来事だ。 教授執務室に来
支配人が何だか探るような視線を向けているのは気のせいだろうか? 不審者を見る警察官のような眼差しのような気がする。尤もそんな場面はテレビの中だけでしか知らないのだけれども。 嘘を吐(つ)くという心に疚しいことをしているせいで疑心暗鬼を生じているだけだと信
「はい、それでお願いします。 ところで空腹ではありませんか?ルイス君から分けて貰ったスコーンはとても美味でした。 そして、食べ方も私達とは異なるようで……。 本場だからかそれともオックスフォード大学独自なのかは生憎存じませんが?」 最愛の人は切れ長の目を
すっかり雪道も歩き慣れた感じで彼が小ぶりのバッグを持って引き返してきた。 雪だるまを作る前に車から取り出していたバックだったけれども何が入っているのか祐樹は知らない。ただ、最愛の人の最高に楽しそうな笑みとか健康的な紅色に染まった頬を見ることが出来ただけ
「山科さんもご存知でしょうが、私は以前アメリカの病院に居たことがあります。 その時に日本の伝統文化に興味を持つアメリカやヨーロッパの医師達に質問されて、いかに自分が生まれ育った京都の街の伝統文化に疎いことを再確認してしまいました。 特に智仁親王が不遇の人
「何かで読んだのですが『はん』で始まる、特に金融機関では取引出来ない特殊な商売が有りますよね?私達は人道上の問題で差別はしませんけれども、ただお見舞いの人は制限するような職業……」 彼は即座に気付いたようで頷きを返してくれた。 何でもこのホテルはそういう
「大丈夫だ……。革の下には布地も縫い止めてあるので防寒性にも長(た)けているので。完全な球体というのは……」 弾んだ声で丸い雪の玉を雪原で転がしている。その真剣な表情と健康的に染まった頬の紅色に見入ってしまいがちになる。「それなら知っています。数学的・物理
「少し待っていて欲しい」 何だか祐樹の前から逃げるような感じで執務デスクの方へと歩み去った。 何だろう?この違和感の正体はと思っても何だか彼の雰囲気が出会った頃を彷彿とさせる冷たい硬質さに満ちていた。まあ、基本的に祐樹に対しては隠し事を全くしない人なので
「祐樹さえ良ければ車の方(ほう)が良いな……。JRで祐樹と二人で乗ると必ず『あっ』という表情をされて見られ続けることも多いので」 ただでさえ人目を集める整った容姿な上に「例の地震」関連でマスメディアにこれまで以上に露出したこともあり、世間的な認知度も高まっ
「先に雪だるまを作ってみたいな……」 雲の切れ目から天使の梯子(はしご)と呼ばれている陽光が射して雪を煌めかせている。 その煌めきよりも鮮やかでそして楽しそうな声だった。「分かりました。では先にそちらを作ってから雪合戦をしましょうか。雪だるまが見守ってくれ
それはともかくとして最愛の人が山科さんの紹介を手術(オペ)が終わってからという条件を出したかというと「桂離宮・大宮御所VIP待遇宿泊」の件を――可能性は低いがゼロではない――山科さんから聞いて「自分も行きたい」と斎藤病院長なら言い出しかねない。 何しろヨ
「ホワイトデーなのですけれども、何か欲しい物は有りますか?」 朝の生まれたての光が射し込むキッチンで祐樹は氷を入れたボウルにレタスを均一の大きさにちぎって入れながら聞いてみた。 隣に立っている最愛の人は最高に美味しいオニオンスープの最後の仕上げでもあるフ
◇注意◇若干「鬼滅の刃」アニメでは放映されていないネタバレが含まれます。この回は読み飛ばしても差支えのないように書いておりますので「アニメ以降のネタバレ、絶対にNG」と思われる方はスルーして下さい<m(__)m>次回からはやっと普通の「雪遊び」に入ります!!「何だ
「その桂離宮と大宮御所でのデートは具体的には何時なのだ?」 怜悧な声にも満開の花のような雰囲気を滲ませている。最愛の人の場合手術(オペ)は平日と決まっている。 他の病院だったら患者さんの容態急変で緊急手術ということも有り得ると聞いているけれども香川外科唯一
「え?岩松の場合は有望な医師を引き抜くのが仕事の一環では有りますけれど、香川教授や田中先生のように緩(ゆる)く長い目で見てここぞとばかりに引き抜こうとしている先生方も多いのです。 言わば『引き抜きたい医師リスト』を作成するのが趣味の一つと申しますか。それに
「……実はそう思った。『仮にバカと言われたら』という前提条件が付いていたので……」 雪はもう直ぐ止みそうな感じだった。ただ二人して藁(わら)に包(くる)まって雪を見ているだけで愛の交歓の後とは異なった種類の親密さのようなモノが温かい体温としなやかな肢体と密着
エレベーターではなく敢えて階段を使ってLINEを送った。「相談したいことが有りますので執務室に行っても大丈夫ですか」と。「五分待って欲しい」既読マークが付くと即座に返信が来た。 以前は祐樹に送るメールやメッセージはどれだけ素っ気ない文面であっても熟考した後
「田中先生と香川教授は桜木先生とはお親しいのでしょう?お二人からも説得なさってはいかがかしら?岩松のオファーはもちろんそれなり、いえ破格の金額を提示すると思います。 しかし、長年教授の黒子役(くろこやく)として手術をこなしていらっしゃったわけですよね?ウチ
「……その小説では徳川家康も関ケ原で戦死して影武者が入れ替わったという説も盛り込まれていて、その影武者も所謂(いわゆる)士農工商の身分から離れた人間だったので、同じ身分だった吉原遊郭の創設者への御免状(きょかしょう)に『我が同胞』という一文を入れたという設定
祐樹の吐(つ)いた嘘はグレーゾーンなような気がする。最愛の人の「寸志」代わりに桂離宮や大宮御所を使用する許可が出たのだから。 もうこうなったら王族は祖国で何か重大なことが起こったことにして急遽来日を取り止め、代わりにかねてから興味を持っていた最愛の人が見
「多分ご想像の通りかと思います。彼と付き合って行くうちに徐々に心を開いて下さったので。 いえ、彼だけではなくて私も今までのような割と投げやりな性格から前向きに医療に取り組もうと思えるようになりました。仮に、本当に仮定の話ですけれど彼が帰国して私と共に人生
届きました💖ずっと読んでくださるばかりか、「ホワイトデー狂想曲」で祐樹が貰ったと思しきGODIVAのチョコまで頂いてSさま、本当に有難う御座います!!このお返しは気に入ってもらえるような小説書きます!!そして画像をたくさん頂いたM様。『離宮デートで日本庭園の画像
アニメの真似も――アニメを全く知らない人が見たら余計怪しい――最愛の人が望むなら是非したいけれど、愛車と納屋で良い感じに人目を避けてくれている。 ただ、野外で男が二人藁に包まっているという状況は通りすがりの人が居たら「どうかしたか?」的な声を掛けられる