「田中先生、政府のインバウンド効果の底上げ策にナイスサポート有難う御座います。 スタンリー先生など錚々たるメンバーを先に呼んでおくことで『一見さんお断り』の『一力(いちりき)亭』の一見さんではなくなるという布石は見事なものだと思います。 ああいう格式の高い
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
「これはケイジャン味ではないように思える。『オリジナル』ではないか? ケイジャンはもっと香辛料とスパイスが効いていて独特の味なので」 涼やかな声が薄紅色の煌めきを宿している。「そうなのですね……。香辛料が効いているということはシンガポールのラッフルズで食
「まずは、貴方の次期病院長選挙について斎藤病院長が後継者と考えていて下さった点については良かったと思います。 まあ、妥当な判断でしょうけれども、現職からの応援が有るのとないのとでは大違いですし」 祐樹は多分自分が怒っていることを察したに違いない。 その怒
幸樹は俺の反射神経を信じてくれているのか普段通りの男前の顔だった。 でも、何で渡されたモノがコンビニで売っていてしかも最も安い透明なビニール傘なんだろう。西野警視正はキャリア組なんで制服警官が腰に付けている警棒的なモノは持っていないのは分かるんだけど…
斎藤病院長室に二人して赴き報告を済ませた。「国際公開手術の術者に選ばれるのは素晴らしい快挙ではあります。その点は病院の誇りです。日本の大学病院に所属している人が選ばれたのは香川教授以来ですからね。Т東大学病院の永倉病院長などは歯ぎしりをして悔しがってい
「それは光栄です。あのベンチに座ってスコッチエッグを食べませんか?」 シャーロックホームズの本の挿絵(さしえ)か何かで見たのと同じような照明が等間隔で並んでいる場所にベンチが置かれている。 まさか当時のようにガス灯ではなくて電気だろうが。 あのビッグベンや
「ああ、アメリカに居た時に一度食べたことがあって」 祐樹の怪訝な表情に気付いた最愛の人が薄紅色の唇を楽し気に動かしている。 日本に居る時には全く感じないが最愛の人はアメリカの病院勤務を経て祐樹の元に舞い降りてくれた。 ただ、アメリカ人のような我の強さや自
祐樹は居住まいを正した後に真剣な表情で頭を下げた。もしかしたら、自分が怒っているとでも思っているのだろうか。 いや、祐樹の全体的な雰囲気から察してそうではないだろうと確信した。「それは誠に申し訳ありません。ウチの医局宛てに国際公開手術の術者への依頼の手
今自分に出来ることは、この満面の笑顔(?)を保ち続けることだけだ。 普段は正確に時を刻む自分の体内時計が壊れてしまったかのように一秒がとても長く感じた。 祐樹に「普通の人は時計よりも正確に時間の経過を計っているわけではありません」と指摘されるまで腕時計
ただ、「例の地震」の余波でテレビに二人して出たせいで日本での認知度が高くなっている。 時代劇のロケ地として良く使われる京都では、俳優さんなどが街を歩いていてもさり気なく無視するというのが一般的な反応だ。 しかし、日本の観光客がロンドンに来ていた場合「旅
「銀のティーセットはペニンシュラホテルでも見ただろう?」 最愛の人がどこか懐かしそうに、そして瑞々しい艶めいた眼差しで祐樹を見上げている。 「新婚(・・)旅行(・・)では、食べたり睡眠を取ったりする時間以外は皆(・)、愛の交歓をして過ごすものです」 祐樹が口か
ただ、祐樹の見た目よりもとても柔らかい唇が久米先生という言葉を紡ぐと何だか可笑しい気持ちがこみ上げて来た。 それと共に今(・)、そしておそらくは一生涯に亘ってその唇の柔らかな感触を知っているのが自分だけだという目くるめく幸福感が身体と心を甘く溶かしていく
「なるほど、ストンと腑に落ちました。円が高い場合の方が海外ではお得なのですね……」 祐樹は当然ながら円でしか買い物をする気がない。 空港でいくばくかの円をポンドに両替をしたけれども、その時は、こんなものか……程度にしか思っていなかった。 そして医局に買っ
鏡に映った自分は予想以上に嬉しそうな笑みを浮かべていて、若干表情を硬くする。 祐樹にとって青天の霹靂だろうけれども、自分にとっては待ち望んだ結果だったので自然と笑みを浮かべてしまっていた。 万が一、招待状が来なかったらどうしようとか色々考えていたので。
その日本で行った店の名は祐樹の記憶には残っていないのだけれども。 一緒には行っているハズなので彼が最高に気に入ったと言った場合はキチンと覚えているだろうが。「うん!とても美味しいです……。先ほどのティールームの物よりも美味ですね」 淡いブルーのティーカ
「久米先生、申し訳ないのですが、話がさっぱり分からないのです。キチンと説明して頂けますか!!」 普段よりも口調が鋭くなってしまっていることは自覚している。 何せ他ならぬ祐樹が話題に上っているだけに、自分の感情の制御が効かなくなって口調も刺々しくなってしま
「では、貴方と二人でロンドン散策をしたいです。フラッとパブに入るとか・・・・・・、といってもこのホテルはピカデリー通りですからね。 そういう薄利多売の店というか、小規模なお店はなさそうですが」 一応ホテルの施設案内を見てラストオーダーの時間を確かめた。「
午後の手術(オペ)もつつがなく終わり、執務室で事務仕事を片付けていた。 医局の責任者として黒木准教授から回ってきた自分のハンコが必要な書類もあるし、祐樹が国際公開手術の術者に推薦される箔付けとしての心臓外科学会に理事として就任したことで必要な書類仕事も有
「アルコールを摂取しないという条件付きでという文言は付け加えないとならないですね」 そういえば祐樹が幹事を務めてくれた医局の慰安旅行の行きのバスで酔っぱらっていたなと淡い笑みを浮かべてしまう。 病院で最も多忙な医師と評判を取っている祐樹が幹事役を買って出
「どうぞ、荷解きは済ませて有るので、そんなに見苦しいことはないかと思いますが」 部屋に入ると切れ長の目を瞠って立ち尽くしている。「ホテルのティルームでも思ったが、ベルサイユ宮殿みたいなのだな……」 驚いた響きの声が悪く言えば装飾過多、良く言えば手の込んだ
頭痛を堪(こら)えながら打開策を考えた。 いくら医局の皆に支えて貰っているとしても医局の責任者であることには変わりがないので。「……新規の患者さんを断っていると扉越しに聞いていたのは柏木先生だけなのですよね? そして黒木准教授にも特に突っ込んでこなかった
「部屋への案内は大丈夫です。私が分かっていますので」 最愛の人がルームキーを受け取ったのを確認して支配人にキッパリと告げた。「あ!そう言えばボーイさんにチップが必要なのだろう?」 乗り慣れた日本の物の静けさや無振動ではなくて稼働音を立てて微かに揺れるエレ
「教授、奇遇ですね。それはそうと少しお時間を頂戴しても宜しいですか?」 医局に下りて行こうと階段を使っていた。この時間は各階停止のエレベーターよりも階段が早い。一階下の准教授執務室や、特別に個室を許可されている医師の部屋がある。 長岡先生の個室もその一つ
「お手数をお掛け致しますが、当ホテルの規則でして。フライトでお疲れのところ誠に申し訳ありません」 お辞儀は日本の風習だと思っていたのだが、支配人は祐樹最愛の人に30度ほど上体を傾けている。 日本だと45度とか最悪の場合土下座も有るけれどもそれは文化の違い
受付の女性の挨拶に挨拶を返していると呉先生が感心したように見ている。 何だか表情の選択に困ったようなのは「お帰りなさいませ、香川様」と言っているスタッフの女性にどう言葉を返せばわからなかったのだろう。「いえいえ、維持する努力の範囲は呉先生のお屋敷よりも
二人以上のゲストを想定している部屋でも、同性同士というのはどうなのだろう。 特に最愛の人は今ロンドンに集まって来ていると思しき医師にも顔と名前が知られている。 祐樹は己の性的嗜好を心の中では全肯定しているし、彼と付き合って後悔したことは一度たりともない
「確かに、不採算部門のカバーに回れるような科が増えるように考えなくてはならないですね……。 脳外科の白河教授と悪性新生物の桜木先生という方(かた)が画期的な術式を編み出してそろそろお披露目みたいですけれど……、きっとそれだけでは足りないのでしょうね……。
「貴方が前祝いをして下さった時に鴨川にご一緒しましたよね。その意図がこちらに来て初めて分かりました」 こういう豪奢な雰囲気のティルームは、日本のドトールのように飲んだら直ぐに出るのが何だか勿体ない気がする。 予算的にではなくて、ゆったりと流れる時間とか最
清水先生には何度も頭を下げたりお礼を言ってもらったりしているので。「清水病院長が田中先生の手技をご覧になったのですか?」 つい気になって確かめるように聞いた。 「例の」地震の時に偶々(たまたま)NHKのカメラマンが撮っていた映像だ。 もちろんお茶の間に流す
「しかし、関空発ヒースロー空港行きの飛行機は私が乗ったJAL以外、他の飛行機は飛んでいないと空港アナウンスで知りましたが……」 紅茶を一口飲んで、満開の紅い薔薇のような溜め息を零している最愛の人に疑問点を聞いてみた。 祐樹の乗った便に彼が乗っていたとは1
フランスの貴族の部屋を彷彿とさせる空間に優雅な音を立てて電話機が鳴っている。 国際公開手術の主催者側の人間が確認でもしに掛けて寄越したのだろうかと受話器を取った。 最愛の人を始めとして日本の知り合いはスマホに掛けてくれるだろうから。『Drユウキ・タナカ、
「ここだけの話ですが、香川教授と田中先生に『例の地震』の時に外科医としての才能を認めて頂き……」 清水研修医は京都一の私立病院の御曹司に相応しい感じの丁寧な頭の下げ方で自分と、そしてこの場にいない祐樹に対してだと分かる丁寧なお辞儀をしてくれた。 あの地震
自分が途方に暮れた表情を浮かべていることに気付いた呉先生は、咲きたてのスミレの花のような笑みを浮かべて自分を見ている。。「分かった。でもさ、フランス行きとかドイツ行きの便は出ているんだろう?え?当たり前だって!? いや、これからはお前と話してるんじゃな
「分かりました。教えて下さって有難うございます。普通のスーツ姿で大丈夫なのですよね?」 フランスのお貴族様は鬘(かつら)を着けて帽子まで被っていたように記憶しているし、服装だって今ならコスプレとしか思えないような派手なモノだ。「はい。その通りで御座います」
リコメ滞っていてまことに申し訳ありません。連休中はワクチンの副反応でダウンしていました。しかも昨日の低気圧の影響で頭痛が酷くて……。 そして、会社のほうでバタバタしております。なるべく更新は休みたくないのですけれども、ストックが多少有った「心は闇に囚われ
その手術ミスの術者の名前がたまたま自分だった。 ミスが本当に有ったかどうかを心臓外科の医局員に聞こうと決意して伝手(つて)を辿(たど)って祐樹の居る救急救命室に呉先生曰く決死の覚悟で赴いたのと聞いている。その時が祐樹と呉先生の出会いだった。 ちょうど自分は
ここは本当にイギリスのホテルかと本気で疑ってしまった。 ヒースロー空港にレンフォードさんが迎えに来てくれて、キチンと話した経緯もあって間違ってシャルルドゴール空港に降りたっていないことは明白だけれども。 祐樹はヨーロッパに来たのは最愛の人の国際公開手術
ちろっとリコメに書いたらコメント頂きまして、有難うございます!!そんなに需要があるとは思っていなかったので驚いていますが、お知りになりたい方も一定数いらっしゃるんだな~!と思いまして、紹介いたします!ホテル阪急インターナショナル25階のフレンチです。メニ
「あの人着……!コンビニ強盗の!!」 ニンチャクという単語の意味は咄嗟に分からなかったんだけれど、西野警視正の鋭い目線が一点に集中していた。もしかして緊急配備が掛かっている犯人を見つけちゃったのかな? そういえば、何だか人目を憚るような感じで自転車を走ら
「西野警視正、もし宜しければ運転しましょうか?」 キーを手に持って駐車場に向かって歩いて来る飄々とした感じの西野警視正に幸樹が声を掛けている。 多分、何も知らない人が見たら、警察関係者とは思われないだろう、な。なんか財布とかを落としてこの署に預かってもら
「もしかしたらさ、ミツビ〇商事の薬剤部門の方が優秀な研究員って言うのかな? どう言うかは知らないけれども、そちらの方にも有吉さんとか国見君、そして谷崎君の尿とか血液とかを送った方が良いとか思うんだけど……」 だって大野さんが在籍していたとかいうK都大学の
祐樹の記憶が確かならば最愛の人が一時期暮らしていたLAは右側通行なので慣れていない運転は躊躇してしまう。 しかし、日本と同じく左側通行ならば一生に一度の機会なので運転してみたいなという気持ちが芽生えてしまった。 しかし、日本の免許証しか持っていない。仮
「その違いだよね……?あっ!ほら、ハ〇高原に二人で行った時にさ『上野教授のゼミは今年が初めて』ってわかば会のパートをしている若奥さんが言ってなかったっけ?」 推理力とかはないけど、咄嗟の閃きは俺の方が幸樹よりも優れている数少ない特技(?)だった。「ああ!
9割は「手術に成功したら(・・)」という助動詞の「た(・)」の仮定形を敢えて使わずに、手術の成功を確信した感じで「手術後」と言ってくれたことだ。 もう1割は森技官が冗談で自分をホテルに誘ったということを上手く隠し通せた点は良かったと思う。 嘘が下手な自分と
隣の席のアメリカ人も吸っているし、灰皿もテーブルの上に置いてある。 禁煙・嫌煙運動がヒステリックに叫ばれているのは先進国全てだと漠然と思っていた。 しかし、このカフェが特別なのかイギリスでは緩いのか分からない。 準備期間が少なかったせいもあって、ロンド
「ああ、持っている画像を全部送ってくれたみたいだな。流石は院に残って研究者になって法曹資格を取ろうとしている人らしく細部にまで拘ってくれたみたいだ……。 まあ、西野警視正が言っていたみたいにさ、実際に弁護士として活躍できるかどうかは知らないけれどさ。 で
国際公開手術……そう言えばベルリンの国際公開手術の前夜に祐樹が休暇をもぎ取ってリッツカールトン・ベルリンに来てくれた時は本当に嬉しかった。 ホテルの部屋で電話を取った時には願望のせいで幻聴を聞いているのかと思ったのも事実だった。自分も祐樹にそう思って貰
先ほど確かに紅茶を注文したよな?ともう一度考える。 職業柄何時(いつ)でも何処(どこ)でも眠ろうと思えば墜落睡眠が出来る祐樹だ。 飛行機の中でも一時間置きに鈴木さんの様子を見に行った。それ以外には美味しい機内食を食べた程度でそれ以外はずっと寝ていたと思う。
「上野教授のゼミの研究室に残ってさ、ウチの大学でも良いし他の大学でも良いから教授職に就いて数年間で法曹資格を取ろうって人だけに上野教授との画像が多いみたいだな。 フェイスブックには上げてない画像まで送ってくれているらしくてさ、どうも容量の関係で、まだ情報
「ブログリーダー」を活用して、こうやま みかさんをフォローしませんか?
「田中先生、政府のインバウンド効果の底上げ策にナイスサポート有難う御座います。 スタンリー先生など錚々たるメンバーを先に呼んでおくことで『一見さんお断り』の『一力(いちりき)亭』の一見さんではなくなるという布石は見事なものだと思います。 ああいう格式の高い
「はい。小児科のハロウィンのイベントに駆り出されたのが切っ掛けでした。 その後『難しい話は抜きにしてアニメやマンガの話題だけ』という主旨の呑み会を行っていますね」 納得した感じで頷いている。「ああ、ハロウィンの催し物は『呪いが廻る戦い』の最強戦士が田中先
「ところで、貴方のパスポートの色、茶色でしたよね?あれは一体……」 祐樹は何だか人の耳を憚るような雰囲気だった。 日本人、いや東洋人らしき人はこのホテルのベルサイユ宮殿もかくやと思われる廊下には居ないというのに……。 言語的な問題ではなくて、何か自分が後
「え?普段は薬を使用していない貴方が飲む薬剤を調べないわけがないでしょう?」 外科医としては線の細い身体の持ち主だけれども、風邪を始めとして病気らしい病気に罹ったことはない人だ。 彼本人が手術に差し障りのないように細心の注意を払っているせいもあるけれども
「博覧強記の香川教授らしく遠藤先生への資産運用のアドバイスがあまりに斬新と言いますか、目から鱗だったのです。 ね、遠藤先生?」 絶対にイエスと返答が返って来るだろうという確信が有った。「はい!少なくともこの不動産会社でお投資用のマンション購入は絶対にお勧
「……私が軽率にも営業マンの口車に乗せられて契約を前向きに考えていた時に、田中先生から香川教授のセカンドオピニオンを受けてみないかと有難いお誘いがありまして。 畏れ多いことではありますが、執務室にご意見を伺いに参ったのです」 内田教授はふっくらとした顔に
「残っていますね。帰国した後は放置してありますが?」 どの程度のドルがその口座に残っているか祐樹的には心配してしまう。 最愛の人の意図するところは分かった積もりだけれども残高が例えば980円、いや980ドルだった場合は資産運用というレベルではないような…
「有難う御座います。 後でも良いですから、田中先生、私に一円を下さいね」 遠藤先生は天井を仰ぐことを止めて不思議そうに最愛の人と祐樹の顔を交互に見ている。「法律上は、これで契約成立です。 ちなみにこのボールペンはネットショップで5万円程度が相場ですが、お
「薬剤科を通すと上層部に知られるというリスクも確かに有りますが……、内科で処方した眠剤や精神安定剤を山のように貯めている患者さんも多数いらっしゃるので……。 服薬コントロールをどの程度しているかも兼ねて科の現状を、いわば抜き打ち調査するという目的の一石二
「私の手術の成否を心中深く案じた最愛の恋人は、呉先生に薬の処方をお願いしたのではありませんか?」 その一言で豪奢かつ居心地の良い客室の空気が凍り付いた。 最愛の人は端整な顔が青褪めていて、右の手を左手に重ねて白くしなやかな指がプラチナの指輪を御守りのよう
「似たような物件は二億五千万円で購入出来るようですよ?この物件とか、後はこちらとか……」 黒いマウスに載せた白く長い指が動く仕草は祐樹の視線の吸引力を根こそぎ持って行ってしまう魅惑に溢れていた。 しかし、遠藤先生が三億五千万円という祐樹にとっては天文学的
「はい、拡張……、それはともかく術式は……」 具体的な説明をしようとしたら、個人的には悔しいが苦み走った整った顔にドロドロと青色の簾(すだれ)が下りていくようだった。 普段の祐樹ならもっと具体的かつ生々しく説明するところだ。 しかし、かの「一力(いちりき)亭
祐樹行きつけの、つまり救急救命室から最も近いコンビニは店員さんがバーコードだかを読み取る仕組みだった。 ちなみに、高校生まで過ごした実家だったら未だに値段を書いた小さなシールという店もある。 実家に帰る時は実の息子の祐樹よりも母に気に入られている最愛の
「その言葉は単なる営業トークでしょうね。 マンションをローンで購入した場合、銀行は抵当権を付けるのが普通です。 要は担保でして、万が一、ローンの返済が滞って返済不可になった場合はその部屋を売却してローンの残債に充てることが出来ます。 仮想通貨は詳しくは存
アメリカには借金が返せなくなった人の代わりに肩代わりする連帯保証人という制度はない。 自分の知る限り日本独自の慣習のようで、生粋のアメリカ人のコナーズ教授が良く知っているなと逆に感心した。「借金を肩代わりして下さるなら、そうですね。 ハロッズを一棟丸ご
「ローン返済中に遠藤先生に万が一のことが有ったり、三大疾病(しっぺい)に罹ってしまったりした場合には保険の契約形態にも因りますが、それ以降のローンは保険が利いて支払いは免除されます。 つまりそのマンションは相続される方(かたの財産になるということになります。
クロテッドクリームの油分が付いた薄い唇がより艶めきを放っている。 その唇が瑞々しい花のように大輪の笑みを浮かべている、華やかに。「美味しいですよね」 最愛の人と笑い合って同じ物を食べる時は常に最高の味だけれども、手術の達成感のせいかより一層美味だ。「ク
「ローンを完済した時には私の固定資産になって、その後の収益はまるまる手に残るという話でしたが?」 最愛の人は切れ長の目に澄んだ光を宿して遠藤先生と祐樹を交互に見ている。 祐樹も最愛の人をずっと見ているので視線が絡まるのは心が弾む出来事だ。 教授執務室に来
支配人が何だか探るような視線を向けているのは気のせいだろうか? 不審者を見る警察官のような眼差しのような気がする。尤もそんな場面はテレビの中だけでしか知らないのだけれども。 嘘を吐(つ)くという心に疚しいことをしているせいで疑心暗鬼を生じているだけだと信
「はい、それでお願いします。 ところで空腹ではありませんか?ルイス君から分けて貰ったスコーンはとても美味でした。 そして、食べ方も私達とは異なるようで……。 本場だからかそれともオックスフォード大学独自なのかは生憎存じませんが?」 最愛の人は切れ長の目を
すっかり雪道も歩き慣れた感じで彼が小ぶりのバッグを持って引き返してきた。 雪だるまを作る前に車から取り出していたバックだったけれども何が入っているのか祐樹は知らない。ただ、最愛の人の最高に楽しそうな笑みとか健康的な紅色に染まった頬を見ることが出来ただけ
「山科さんもご存知でしょうが、私は以前アメリカの病院に居たことがあります。 その時に日本の伝統文化に興味を持つアメリカやヨーロッパの医師達に質問されて、いかに自分が生まれ育った京都の街の伝統文化に疎いことを再確認してしまいました。 特に智仁親王が不遇の人
「何かで読んだのですが『はん』で始まる、特に金融機関では取引出来ない特殊な商売が有りますよね?私達は人道上の問題で差別はしませんけれども、ただお見舞いの人は制限するような職業……」 彼は即座に気付いたようで頷きを返してくれた。 何でもこのホテルはそういう
「大丈夫だ……。革の下には布地も縫い止めてあるので防寒性にも長(た)けているので。完全な球体というのは……」 弾んだ声で丸い雪の玉を雪原で転がしている。その真剣な表情と健康的に染まった頬の紅色に見入ってしまいがちになる。「それなら知っています。数学的・物理
「少し待っていて欲しい」 何だか祐樹の前から逃げるような感じで執務デスクの方へと歩み去った。 何だろう?この違和感の正体はと思っても何だか彼の雰囲気が出会った頃を彷彿とさせる冷たい硬質さに満ちていた。まあ、基本的に祐樹に対しては隠し事を全くしない人なので
「祐樹さえ良ければ車の方(ほう)が良いな……。JRで祐樹と二人で乗ると必ず『あっ』という表情をされて見られ続けることも多いので」 ただでさえ人目を集める整った容姿な上に「例の地震」関連でマスメディアにこれまで以上に露出したこともあり、世間的な認知度も高まっ
「先に雪だるまを作ってみたいな……」 雲の切れ目から天使の梯子(はしご)と呼ばれている陽光が射して雪を煌めかせている。 その煌めきよりも鮮やかでそして楽しそうな声だった。「分かりました。では先にそちらを作ってから雪合戦をしましょうか。雪だるまが見守ってくれ
それはともかくとして最愛の人が山科さんの紹介を手術(オペ)が終わってからという条件を出したかというと「桂離宮・大宮御所VIP待遇宿泊」の件を――可能性は低いがゼロではない――山科さんから聞いて「自分も行きたい」と斎藤病院長なら言い出しかねない。 何しろヨ
「ホワイトデーなのですけれども、何か欲しい物は有りますか?」 朝の生まれたての光が射し込むキッチンで祐樹は氷を入れたボウルにレタスを均一の大きさにちぎって入れながら聞いてみた。 隣に立っている最愛の人は最高に美味しいオニオンスープの最後の仕上げでもあるフ
◇注意◇若干「鬼滅の刃」アニメでは放映されていないネタバレが含まれます。この回は読み飛ばしても差支えのないように書いておりますので「アニメ以降のネタバレ、絶対にNG」と思われる方はスルーして下さい<m(__)m>次回からはやっと普通の「雪遊び」に入ります!!「何だ
「その桂離宮と大宮御所でのデートは具体的には何時なのだ?」 怜悧な声にも満開の花のような雰囲気を滲ませている。最愛の人の場合手術(オペ)は平日と決まっている。 他の病院だったら患者さんの容態急変で緊急手術ということも有り得ると聞いているけれども香川外科唯一
「え?岩松の場合は有望な医師を引き抜くのが仕事の一環では有りますけれど、香川教授や田中先生のように緩(ゆる)く長い目で見てここぞとばかりに引き抜こうとしている先生方も多いのです。 言わば『引き抜きたい医師リスト』を作成するのが趣味の一つと申しますか。それに
「……実はそう思った。『仮にバカと言われたら』という前提条件が付いていたので……」 雪はもう直ぐ止みそうな感じだった。ただ二人して藁(わら)に包(くる)まって雪を見ているだけで愛の交歓の後とは異なった種類の親密さのようなモノが温かい体温としなやかな肢体と密着
エレベーターではなく敢えて階段を使ってLINEを送った。「相談したいことが有りますので執務室に行っても大丈夫ですか」と。「五分待って欲しい」既読マークが付くと即座に返信が来た。 以前は祐樹に送るメールやメッセージはどれだけ素っ気ない文面であっても熟考した後
「田中先生と香川教授は桜木先生とはお親しいのでしょう?お二人からも説得なさってはいかがかしら?岩松のオファーはもちろんそれなり、いえ破格の金額を提示すると思います。 しかし、長年教授の黒子役(くろこやく)として手術をこなしていらっしゃったわけですよね?ウチ
「……その小説では徳川家康も関ケ原で戦死して影武者が入れ替わったという説も盛り込まれていて、その影武者も所謂(いわゆる)士農工商の身分から離れた人間だったので、同じ身分だった吉原遊郭の創設者への御免状(きょかしょう)に『我が同胞』という一文を入れたという設定
祐樹の吐(つ)いた嘘はグレーゾーンなような気がする。最愛の人の「寸志」代わりに桂離宮や大宮御所を使用する許可が出たのだから。 もうこうなったら王族は祖国で何か重大なことが起こったことにして急遽来日を取り止め、代わりにかねてから興味を持っていた最愛の人が見
「多分ご想像の通りかと思います。彼と付き合って行くうちに徐々に心を開いて下さったので。 いえ、彼だけではなくて私も今までのような割と投げやりな性格から前向きに医療に取り組もうと思えるようになりました。仮に、本当に仮定の話ですけれど彼が帰国して私と共に人生
届きました💖ずっと読んでくださるばかりか、「ホワイトデー狂想曲」で祐樹が貰ったと思しきGODIVAのチョコまで頂いてSさま、本当に有難う御座います!!このお返しは気に入ってもらえるような小説書きます!!そして画像をたくさん頂いたM様。『離宮デートで日本庭園の画像
アニメの真似も――アニメを全く知らない人が見たら余計怪しい――最愛の人が望むなら是非したいけれど、愛車と納屋で良い感じに人目を避けてくれている。 ただ、野外で男が二人藁に包まっているという状況は通りすがりの人が居たら「どうかしたか?」的な声を掛けられる