「田中先生、政府のインバウンド効果の底上げ策にナイスサポート有難う御座います。 スタンリー先生など錚々たるメンバーを先に呼んでおくことで『一見さんお断り』の『一力(いちりき)亭』の一見さんではなくなるという布石は見事なものだと思います。 ああいう格式の高い
創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
そういう些細な会話も交わしていなかったのだと今更ながら思ってしまう。 日程が詰まっていて過密スケジュールをこなすのが精一杯でマンションに帰っても無駄話はしていなかった、なと。「良くも悪くも斎藤病院長の親友かつ戦友といった感じでしたね。 ドラマでしか良く
祐樹と楽しく、そしてハラハラして観ている「鬼退治」アニメでも言及されていた走馬灯というのは人間が迫りくる死を回避しようとして、今までの経験から最も似たような経験を思い出し、対処の最適解を導き出すための脳の働きだという説が最も有力だ。 個人的には自己の経
大野は、また火を噴くような表情を浮かべている。 もしかして、いやもしかしなくてもまた不合格だったんだろうなって分かってしまった。 というか、大野ってこんなにプライドが高くて怒りやすい性格だったなんてビックリだ。 そして、遺産が入ってもその金額が不満な
「……本当は貴方の顔を見ていた方(ほう)が精神も安らかというか……明鏡止水の境地になることが出来るのですが……」 最愛の人は薄紅色の唇に小さな笑みの花を浮かべている。 プライベートの時に熱烈に愛し合っている恋人同士という関係なので、顔を見ればキスを交わした
「貴方の場合は教授職ですからね。普通の他科の医師でもお辞儀をするか貴方が話し掛けた場合に限って一言二言会話する程度ですよね。 ですから遠くで見ているだけで告白はおろかバレンタインチョコも気後れして贈ることが出来ないだけです。 現に柏木先生の奥さんは貴方に
でも「養う」っていう言葉一つでこんなに不機嫌になるってプライドが滅茶苦茶高いのかなぁ?「……絶望していて、全く畑違いの法律を学んで法案を作成する官僚になろうと考えました」 西野警視正も幸樹も驚いた表情を隠しきれないでいる。俺だって心の底から驚いた。驚天
事実婚という嬉しい単語が脳の中で煌めいて踊っているような気がした。 ただ、その言葉を口にする前に祐樹の疑問に答えるのは自分の義務のような気がして、一旦その甘くて輝く単語は置いておこう。「一センチくらいの厚さの札束だったら100万円だな……。 『白い巨塔
「え?私は祐樹の指導医ということになっているので、いわば脇役だ。 だからこのスーツ姿で充分だろうと考えている。ポケットチーフは付けて行く積もりだけれども? 主役よりも目立ったらいけないのは基本だろう……? 祐樹の服装よりも目立ったらいけない……といっても
ただ、それでも挿れることが出来たので、今までにない悦楽の嵐に翻弄されているのだろう。 渇いた絶頂という天国に一人で揺蕩(たゆた)う艶姿も目を射るようだけれども、祐樹と二人で愉しもうとする姿勢が素敵だ。 だから名残惜し気にルビーの小さな尖りから指を離した。
「おお!良く燃えているね。火事に巻き込まれずに皆が逃げてくれれば良いのですけど。 こういう時、警察は交通整理を担当するらしいです。既にマニュアルが出来ているので駆り出された警官だけで何とかなるらしいですよ」 飄々とした感じで教えてくれたのは署長が不在でも
「それは爪の部分を外して貰って宝石だけの状態になった後に専用の洗浄用の機械にかけて貰った。リフォームのサービスの一環らしい。何でもダイヤモンドは付けていると油が累積するらしくて……。 一応祐樹のお母様から頂いた時点から洗剤で丁寧に洗っていたのだけれども、
もしかしたら紅茶を淹れた時とか飲んでいる時にでもプラチナの爪から外して洗ってもらったせいで蒼い煌めきが増したダイヤモンドを紅茶色に染めるのを懼(おそ)れて外したのかも知れない。 最愛の人と自宅デートをしていた時にテレビで見ただけの知識だが、古文書の贋作(が
そりゃあ、凄い発見をして論文をいっぱい書くとかして認められている人なら特別扱いされるのかも知れないけれども……?「推定される年齢はどの程度だったのでしょう?」 西崎(仮)記者はメモを取りながら熱心に聞いた。「それが皆若いのです!!10代から20代といっ
だから一回だけ罹ったインフルエンザの時のような気持ちには絶対にならないだろうなと思うだけで薔薇色の多幸感に包まれる。 とはいえ、祐樹の看病を当てにしているわけではないのだけれども。「そうですか?それは良かったです。お土産のリクエストは有りますか? ウエ
「コンシェルジュ云々」と言った時には「絶望」といった絵画のモデルを務めているような感じだった。「何気なく置いた所がたまたま傾いていて、そこから転がったのでしょうかね? 手分けして探す方(ほう)が早いですが、二人の目で一緒に見て参りましょう。寝室から始めま
「ここだけの話、我々が名付けたのですが『巫女の塚』には遺骨に生活反応のある骨折した遺体が多かったです。 そうですね、80%以上の割合だと。 棺のような物には入っていなかったのですが、一体一体を割と丁寧に葬ったという感じでした。 生贄と思しき遺骨は割と乱雑
祐樹のスマホのアラームの設定時間に起きていたらこんなにゆっくりはしていられなかっただろうから彼が起こしてくれたのは今日が良い日になる予兆のような気がした。「なるほど、香木を輸出する港だったから『香港』という名前が付いたのですか……。 あれ?日本も生糸(き
「そうなのですよ!コカもありふれた薬物ですから、今更感は有りますけれども。 そうそう、巫女と思しき骨には、生前に骨まで達するような深い傷が多数ありましたね。それも実に特筆すべきことです。 もしかしたら薬の作用っと、ここからは部外秘です」 口が滑ってしまっ
祐樹が椅子から立って背中を擦(さす)りに来てくれそうな表情だったので慌てて大丈夫だというジェスチャーをした。 不注意で喉に何かを詰まらせて呼吸困難になったとかなら喜んで祐樹の厚意を受けるけれども、この程度で祐樹の手を煩わせるわけにはいかないような気がする
最愛の人も優雅この上ない仕草でティカップを細く長い指で持って淡い色の唇へと運んでいる。 ドラマでも同じ俳優さんがコーヒーカップを持っているシーンよりもティカップとソーサーを手にしていた場合後者の方(ほう)が何となくエレガントに見えるのは事実だ。 しかし、
幸樹にだけ聞こえるように言った積もりだったんだけど、大野の家は狭いし丸聞こえだったんだろう。 俺の言葉に何だかムッとした表情を浮かべていた。「衣装こそ立派でしたが、立派な墓に葬られていたわけではありません!! その辺りは価値観が異なったか……、王族など
前の方(ほう)が良かったとか言われないだろうかと思ってしまう。 心理学的にも見慣れた物に愛着がわくというレポートを読んだ覚えもある。 祐樹はお母様がダイヤモンドの指輪を付けているのを見た覚えが全くないと言っていた。 しかし、お母様から祐樹経由で託された指
先程のシリアル類から選んでいく時も小さな、しかし存在感のある花のような笑みを浮かべてテキパキと決めていた。 喜怒哀楽の振れ幅があまりない人だ。 そして、外科医としてはという前提が付くものの、気が長い性格だ。また、即断即決は外科医には必須の才能で、こちら
「別に貴方に無理をしてロンドンまで来て頂きたいとは全く思っていないです。貴方は貴方を心の底から待っている患者さんがいらっしゃいますし。 それに何だか幼稚園児とか小学校低学年の子供ではあるまいし、上司に引率される部下というのは情けないですからね……」 祐樹
「卵は加熱しないと食べられないレベルみたいだな、菌の問題だとか。 ほら、お刺身だって海が近くにある場所でしか基本は食べなかっただろう、昔の日本人は。 それと同じ状況が今でも続いているようで……」 若干華奢な肩を竦める動作すら優雅な風情の彼はこの宮殿然とし
西野警視正が署長を務めているN宮市にそういう団体があるって話は聞かないし読んだこともなかった。 だけど、K戸には日本人なら多分皆知っているような大きな『組』が在るし、組長とかそういうお偉いさん(?)もお城のような邸宅を構えているとか近くに住む同級生が言
「そうですか」 輝かしい笑みを浮かべた祐樹は幸いにも気付かなかったようだった。 自分にしては上出来だと安堵した。この個室の程よく落とされた灯りも協力してくれたのだろうけれども。「そうですか……リッツホテルロンドンは資本が異なるのですね。しかし、名前が同じ
最愛の人がキスの余韻でほの紅く染まった唇に言葉を躊躇うような、何だかセリフを忘れて舞台に上がった役者のような戸惑いに似た雰囲気を浮かべている。 たかがお天気の話で何故そのような表情をしているかサッパリ分からないけれども、特に拘りたい話題でもない。「天気
濡れた深紅の薔薇のような極上の花園が愛らしく、そして淫らに収縮している様子はこの上なく美しい。 その上、その淫靡な美しい花弁かべんには祐樹がばら撒いた真珠の粒がそこかしこに宿って真っ赤な薔薇の動きにつれて妖しく無垢なオパールのように照り映えている。そ
幸樹も興味深そうに聞いている。俺も有吉さんのことを思い出して泣いてしまうよりもまだマシだと思って何だか怖い大野の言葉を聞こうと試みた。 お骨を見るのも実は苦手なんだけど……。でも、話の中で聞くだけで想像力はこの際封印しよう。 俺にはどうも想像力が無駄に
取り敢えず、呉先生が起きているかどうか分からないけれどもLINEだけで確認しよう。 日本との時差のことも考えたが、日本では朝の7時で、常識的に考えれば起きているだろう。 ただ、朝ご飯の支度、いや呉先生はコーヒーを淹れることは上手だがそれ以外の家事は苦手なので
「祐樹、済まない……手が滑った」 手だけではなくて快適な温度に設定してあるはずのレストランの個室なのに額にも汗をかいているのを自覚した。 自宅に一旦帰り教授執務室で洗顔して汗も拭き取ったのに。 きっと祐樹からホテルを聞き出そうとしている気の張り具合がそう
「なるほど、ご立派な研究が科研費の関係で頓挫してしまったということですか? それは非常に勿体ないお話ですね。 うつ病にも統合失調症にも効く薬を発見したらそれこそノーベル賞モノですよね。 国はそういう有為の人材や研究室にもっと税金を割くべきだという主張は分
それは何故か照明が当たっているホテル備え付けのゴミ箱なのだろう。 祐樹の知識の中のゴミ箱とは異なってアンティ―クで多分これを売り飛ばしたら割と良い儲けになるのではと良からぬことを考えてしまいそうな逸品だった。 精緻な彫りが施された木の中にキラリと光って
「統合失調症患者は幻覚や幻聴が見受けられます。それはご存知ですよね?」 西崎(仮)記者は興味深そうに頷いている。ホントウに興味が有るのかは全く分からないけど、記者になり切っている今、取材相手の話は熱心に聞くべきだと思っているんだろう。 谷崎君の時だって、
祐樹とお祝いディナーを摂るのはとても楽しい時間だ。 それは自分にとって太陽が東から昇るというほど自明のことなのだけれども、早く祐樹が選んだホテルをさり気なく聞き出さないとならないという自分的には難しいミッションを抱えている。 ロンドンのホテルにいきなり
「客単価3万円ですか!しかも常にテーブルが満席で?そんなもの机上の空論ですよね……。いや、絵に描いた餅と言うべきかも知れません」 最愛の人と良く行くリッツカールトン大阪の「香(シャン)桃(タオ)」もディナーのコースワイン付きでもその程度の値段だったと記憶して
「具体的にはどんな薬を探していらっしゃったのですか? お恥ずかしい話ですが、根っからの文系なので素人にも分かりやすくお願い致します」 いかにも記者らしい、と言ってもドラマの中でしかそういう人は見たことがないんだけど……とにかくそこいらのコンビニで売ってい
てんでバラバラのグラスに麦茶と冷凍庫で作ったと思しき氷を入れたモノを俺達の前に置いてくれた。 幸樹も俺の横に座っている、長い足を持て余して。 まさか毒が入っているとも思えないけど、幸樹はマジマジと麦茶を見ている。「美味しそうですね。では遠慮なく」 西崎
最愛の人は驚いたようにダイヤモンドを彷彿とさせる目を瞠っている。その清浄な煌めきを見ているだけで幸せになる。「そうか……。確かに斎藤病院長はウチの病院の最上階に拘っているので、心の溝が出来たとしても不思議ではないな……。 実際のところ、教授職は経費削減
ちなみに宝くじは買ったことも買いたいとも思わないので、実際には券なのかは知らない。 もしかしたら図書券が図書カードに変わったようにドラマで観た覚えがある商品券みたいな物は既に流通していないかも知れない。「シェフのお勧めを二人分、そしてソムリエには料理に
「同じ『上野』ゼミ所属の高寄さんと池上さんから大野さんの情報は、ある程度聞いています。しかし、私の取材はもっと突っ込んだ話になると思うので、二人は席を外した方が良いのではないでしょうか?」 西崎「記者」は鞄の中から何の変哲もない大学ノートを取り出しながら
「あの人は数字だけを追っていて、人の気持ちは無視という感じですよね。経費の無駄遣いは確かに改めるべきだとは思いますが、一切の斟酌がないというか、機械的な反応しかしませんよね。 そういう点が皆の反発を買って特に医師や看護師は非協力的というか、他に道を見付け
内田教授もそのきらいがあるけれども、ハマっているアニメにしか興味がないといった感じだ。 美少女フィギアを集めていて、そして婚約者のアクアマリン姫こと脳外科の岡田看護師がご両親に挨拶に行く日にちが決まった時に自室に在るモノを泣く泣くほとんど処分した久米先
タクシーが玉砂利を踏む音で店のスタッフが走り寄って来た。「予約をした香川です」 重厚そうなドアといい、キビキビとしたスタッフの様子や清潔感の漂う雰囲気から(これは当たりだな)と判断した。 救急救命室帰りの祐樹が漂わせている煙草の香りは自分も精神が安らぐ
「そうですか……。ではお願いします。お休みの軽いキスはしても良いですよね?お休みの挨拶だけでなくて、来て下さったことへの感謝を込めた口づけは……」 祐樹が「今夜はしない」と言ったせいか最愛の人は祐樹が救急救命室から未明に帰宅した時と同じような静謐な雰囲気
インターフォンというよりも何だかスイッチみたいな物を西野警視正が押している。 いや西崎さんって覚えなきゃ、幸樹も臨機応変が得意なんだけど俺はうっかり間違ってしまいそうだ。室内で動いている気配が感じられるのも絵に描いたような安普請だからだろうな。「どなた
夏の京都の湿度は俗に「透明の濡れた熱い布を被(かぶ)せたようだ」と言われている。 自分は産まれも育ちも京都なのでそう気にならなかったが、今夜の競歩では焦りも加わって汗をかいている。 ちなみに手術室のナースから「香川教授は手術中に汗をおかきにならないのです
普段は怜悧で理知的な印象を与える端整な顔立ちが嵐に遭った赤薔薇のように乱れているのは最高の快楽だ。 こういう淫らで淫靡な肢体や祐樹を欲しがって腰に足でXの緋色の文字を描いてくれているのも愛しさと情動を駆り立ててしまう。 強い愛撫を極上の花園に強請る最愛
メインのバスルームに入って驚いた。 行きつけの大阪のホテルも時々はスィートルームに宿泊したり常連なのでたまたまアップグレードされたりしてホテルの中でかなり良い部屋に宿泊することがあるが、フランスの王族……は革命で死に絶えているから使わないだろうが、ベル
今飲んでいる、いや最愛の人の場合嗜んでいると表現した方がより相応しい紅茶もアールグレイだ。 ちなみに、アールが伯爵でグレイが名字だ。 こちらもサンドウィッチ伯爵と同様に諸説あるらしく、グレイ伯爵とは何の関係もないとする全く面白みに欠ける説もある。 しか
祐樹のことを考えて失態を自覚した。本日、内祝いとしてレストランを予約していたし、待ち合わせも決めていた。 きっと暗澹とした表情に出てしまっていたのだろう。「どうかなさいましたか?」 スマートフォンを血相変えて見ている自分に呉先生が案じるように声を掛けて
「祐樹はどちらを先に食べたいのだ?」 嬉しそうな笑みを含んだ声がベルサイユ宮殿の部屋もかく(・・)や(・)と思える部屋に弾んでは消えていく。「そうですね……。強いて申し上げれば海老です」 熱で泡立った白いソースと赤い身のコントラストが綺麗だったので。「分かっ
「……国際公開手術の情報は当事者だけに秘匿しているわけではないですよね。 情報にアクセスさえすれば、少なくとも外科医ならば知ることが出来ますよね? 田中先生に反感を抱いている外科医が意地悪く事態の推移を見守っていて、誠に残念ながら億が一の結果になった時に
横並びで大人二人がやっと通ることが出来る細い道をくねくねと歩く。ウチの大学の近くにもこんなゴチャっとしたところがあったんだなって初めて知ったんだけど。 ツクツクボウシも何だかバカにしたように鳴いている。「西崎さん」 幸樹が先を歩いている西野警視正に呼び
「それは……非常に申し上げにくいですが……、明日にでも病院中に広まりますよね……。 教授が、田中先生の手術に億が一の危惧を抱かれるのは尤もですし……」 呉先生はコーヒーカップの湯気を細い顎に当てて唇を閉ざしている。「億が一の可能性が的中すれば、病院内の祐
「飲み慣れた味だと平常心というか、いつも日本で執刀している気持ちを取り戻す一助になるかもと思って……。 もしかしたら私の自己満足だけかも知れないのだけれども……」 何だか普段と異なって訥々とした話し方が祐樹だけに聞かせるモノではなくて、彼自身にも言い聞か
「合宿の時はさ、上野の秘書役として完璧に振る舞ってたよね? カツオのタタキをさ、誰にも邪魔されないように、賄いの食事を作りに来るわかば会のパートの主婦に生チョコを予め差し入れして腹痛を起こして無理やり欠席させたり、有吉さんとか麻田さんとか料理の上手い人に
「どこのホテルに泊まるかなど家族(・・)には伝えるのが常識だと思っていました」 「家族」と発言した時に彼の笑みが大輪の薔薇よりも瑞々しい笑みの花を浮かべている。「そうだな。どうやって知ろうかと必死に考えていた時に祐樹が教えてくれたのだから。それにしても家族
「そんなのは簡単なんですよ。 ウチの小さな城に来ることが出来る患者さんは基本的に自力歩行が可能な方です。 そして、入院生活は暇を持て余していますから、人間関係も出来るのです、患者さん同士のね。 その中でも最も影響力の強い人かつ、入院患者さんにしてはという
「フリーの雑誌記者とでも紹介してくれたら。母校に行って大野と君たちが話している時、私は他人のフリをしていたからね。まさか知り合いだとは向こうも思っていないだろう」 「フリー」と「フリ」ってもしかして大阪人の真似でお笑いを誘っているんかなかぁって思ったけど
その手の先に呉先生のほっそりとした身体が大理石の壁に凭れ掛かっていた。何だか疲れた感じだったので足早に近づいた。「すみません、お待たせしてしまいましたか?」 呉先生はスミレの花のような笑顔を浮かべて自分の顔を見た後に細い眉を寄せている。「お具合が少々悪
何しろ、同じ部屋に泊まって愛の行為をしなかったのはごくごく少ない。 条件反射的に、ホテルの部屋で二人きりになったら愛の交歓をするというのが祐樹の肉体にも精神にも深く刻まれている。 例外は、祐樹の実家に二人して行き母に紹介した時が最初だった。 さほど世故(
「それはどうなのかな? ちゃんとした部活なら教授が顧問みたいなことをしているよね? ウチだって『司法試験研究会』みたいに真面目に勉学を取り組むようなトコだと、教授も応援しようって気になるらしいしさ。 でも、サークル、しかもテニスとかスキーとかそういうのを
「この文面が看護師や事務局の女性に拡散しているということですよね」 溜め息を辛うじて押し殺して確かめた。「はい。私が見聞きした限りだと、田中先生のファンの方(かた)が入っているライングループは500人ほどだそうです。 何しろ病院一のバレンタインチョコ獲得数
「私も舞踏会のことまでは知らないが、あれも相当派手な催し物だろう? 先ほどのタワーブリッジが作られたビクトリア女王時代は世界中に植民地を持っていた世界に冠たる大英帝国だったから、舞踏会も頻繁に開催されていたような気はするが、今はどうなのだろうな? 尤も祐
「ただ、テレビにも良く出ていらっしゃるので、声は分かっていたようです。電話を受けた私の部下も。 しかし、どう考えても別人としか思えなかったと。いや、テレビ局のマイクは良いモノを使っていますので、電話で聞くと声が異なるというケースは考えられますが、それにし
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「田中先生、政府のインバウンド効果の底上げ策にナイスサポート有難う御座います。 スタンリー先生など錚々たるメンバーを先に呼んでおくことで『一見さんお断り』の『一力(いちりき)亭』の一見さんではなくなるという布石は見事なものだと思います。 ああいう格式の高い
「はい。小児科のハロウィンのイベントに駆り出されたのが切っ掛けでした。 その後『難しい話は抜きにしてアニメやマンガの話題だけ』という主旨の呑み会を行っていますね」 納得した感じで頷いている。「ああ、ハロウィンの催し物は『呪いが廻る戦い』の最強戦士が田中先
「ところで、貴方のパスポートの色、茶色でしたよね?あれは一体……」 祐樹は何だか人の耳を憚るような雰囲気だった。 日本人、いや東洋人らしき人はこのホテルのベルサイユ宮殿もかくやと思われる廊下には居ないというのに……。 言語的な問題ではなくて、何か自分が後
「え?普段は薬を使用していない貴方が飲む薬剤を調べないわけがないでしょう?」 外科医としては線の細い身体の持ち主だけれども、風邪を始めとして病気らしい病気に罹ったことはない人だ。 彼本人が手術に差し障りのないように細心の注意を払っているせいもあるけれども
「博覧強記の香川教授らしく遠藤先生への資産運用のアドバイスがあまりに斬新と言いますか、目から鱗だったのです。 ね、遠藤先生?」 絶対にイエスと返答が返って来るだろうという確信が有った。「はい!少なくともこの不動産会社でお投資用のマンション購入は絶対にお勧
「……私が軽率にも営業マンの口車に乗せられて契約を前向きに考えていた時に、田中先生から香川教授のセカンドオピニオンを受けてみないかと有難いお誘いがありまして。 畏れ多いことではありますが、執務室にご意見を伺いに参ったのです」 内田教授はふっくらとした顔に
「残っていますね。帰国した後は放置してありますが?」 どの程度のドルがその口座に残っているか祐樹的には心配してしまう。 最愛の人の意図するところは分かった積もりだけれども残高が例えば980円、いや980ドルだった場合は資産運用というレベルではないような…
「有難う御座います。 後でも良いですから、田中先生、私に一円を下さいね」 遠藤先生は天井を仰ぐことを止めて不思議そうに最愛の人と祐樹の顔を交互に見ている。「法律上は、これで契約成立です。 ちなみにこのボールペンはネットショップで5万円程度が相場ですが、お
「薬剤科を通すと上層部に知られるというリスクも確かに有りますが……、内科で処方した眠剤や精神安定剤を山のように貯めている患者さんも多数いらっしゃるので……。 服薬コントロールをどの程度しているかも兼ねて科の現状を、いわば抜き打ち調査するという目的の一石二
「私の手術の成否を心中深く案じた最愛の恋人は、呉先生に薬の処方をお願いしたのではありませんか?」 その一言で豪奢かつ居心地の良い客室の空気が凍り付いた。 最愛の人は端整な顔が青褪めていて、右の手を左手に重ねて白くしなやかな指がプラチナの指輪を御守りのよう
「似たような物件は二億五千万円で購入出来るようですよ?この物件とか、後はこちらとか……」 黒いマウスに載せた白く長い指が動く仕草は祐樹の視線の吸引力を根こそぎ持って行ってしまう魅惑に溢れていた。 しかし、遠藤先生が三億五千万円という祐樹にとっては天文学的
「はい、拡張……、それはともかく術式は……」 具体的な説明をしようとしたら、個人的には悔しいが苦み走った整った顔にドロドロと青色の簾(すだれ)が下りていくようだった。 普段の祐樹ならもっと具体的かつ生々しく説明するところだ。 しかし、かの「一力(いちりき)亭
祐樹行きつけの、つまり救急救命室から最も近いコンビニは店員さんがバーコードだかを読み取る仕組みだった。 ちなみに、高校生まで過ごした実家だったら未だに値段を書いた小さなシールという店もある。 実家に帰る時は実の息子の祐樹よりも母に気に入られている最愛の
「その言葉は単なる営業トークでしょうね。 マンションをローンで購入した場合、銀行は抵当権を付けるのが普通です。 要は担保でして、万が一、ローンの返済が滞って返済不可になった場合はその部屋を売却してローンの残債に充てることが出来ます。 仮想通貨は詳しくは存
アメリカには借金が返せなくなった人の代わりに肩代わりする連帯保証人という制度はない。 自分の知る限り日本独自の慣習のようで、生粋のアメリカ人のコナーズ教授が良く知っているなと逆に感心した。「借金を肩代わりして下さるなら、そうですね。 ハロッズを一棟丸ご
「ローン返済中に遠藤先生に万が一のことが有ったり、三大疾病(しっぺい)に罹ってしまったりした場合には保険の契約形態にも因りますが、それ以降のローンは保険が利いて支払いは免除されます。 つまりそのマンションは相続される方(かたの財産になるということになります。
クロテッドクリームの油分が付いた薄い唇がより艶めきを放っている。 その唇が瑞々しい花のように大輪の笑みを浮かべている、華やかに。「美味しいですよね」 最愛の人と笑い合って同じ物を食べる時は常に最高の味だけれども、手術の達成感のせいかより一層美味だ。「ク
「ローンを完済した時には私の固定資産になって、その後の収益はまるまる手に残るという話でしたが?」 最愛の人は切れ長の目に澄んだ光を宿して遠藤先生と祐樹を交互に見ている。 祐樹も最愛の人をずっと見ているので視線が絡まるのは心が弾む出来事だ。 教授執務室に来
支配人が何だか探るような視線を向けているのは気のせいだろうか? 不審者を見る警察官のような眼差しのような気がする。尤もそんな場面はテレビの中だけでしか知らないのだけれども。 嘘を吐(つ)くという心に疚しいことをしているせいで疑心暗鬼を生じているだけだと信
「はい、それでお願いします。 ところで空腹ではありませんか?ルイス君から分けて貰ったスコーンはとても美味でした。 そして、食べ方も私達とは異なるようで……。 本場だからかそれともオックスフォード大学独自なのかは生憎存じませんが?」 最愛の人は切れ長の目を
すっかり雪道も歩き慣れた感じで彼が小ぶりのバッグを持って引き返してきた。 雪だるまを作る前に車から取り出していたバックだったけれども何が入っているのか祐樹は知らない。ただ、最愛の人の最高に楽しそうな笑みとか健康的な紅色に染まった頬を見ることが出来ただけ
「山科さんもご存知でしょうが、私は以前アメリカの病院に居たことがあります。 その時に日本の伝統文化に興味を持つアメリカやヨーロッパの医師達に質問されて、いかに自分が生まれ育った京都の街の伝統文化に疎いことを再確認してしまいました。 特に智仁親王が不遇の人
「何かで読んだのですが『はん』で始まる、特に金融機関では取引出来ない特殊な商売が有りますよね?私達は人道上の問題で差別はしませんけれども、ただお見舞いの人は制限するような職業……」 彼は即座に気付いたようで頷きを返してくれた。 何でもこのホテルはそういう
「大丈夫だ……。革の下には布地も縫い止めてあるので防寒性にも長(た)けているので。完全な球体というのは……」 弾んだ声で丸い雪の玉を雪原で転がしている。その真剣な表情と健康的に染まった頬の紅色に見入ってしまいがちになる。「それなら知っています。数学的・物理
「少し待っていて欲しい」 何だか祐樹の前から逃げるような感じで執務デスクの方へと歩み去った。 何だろう?この違和感の正体はと思っても何だか彼の雰囲気が出会った頃を彷彿とさせる冷たい硬質さに満ちていた。まあ、基本的に祐樹に対しては隠し事を全くしない人なので
「祐樹さえ良ければ車の方(ほう)が良いな……。JRで祐樹と二人で乗ると必ず『あっ』という表情をされて見られ続けることも多いので」 ただでさえ人目を集める整った容姿な上に「例の地震」関連でマスメディアにこれまで以上に露出したこともあり、世間的な認知度も高まっ
「先に雪だるまを作ってみたいな……」 雲の切れ目から天使の梯子(はしご)と呼ばれている陽光が射して雪を煌めかせている。 その煌めきよりも鮮やかでそして楽しそうな声だった。「分かりました。では先にそちらを作ってから雪合戦をしましょうか。雪だるまが見守ってくれ
それはともかくとして最愛の人が山科さんの紹介を手術(オペ)が終わってからという条件を出したかというと「桂離宮・大宮御所VIP待遇宿泊」の件を――可能性は低いがゼロではない――山科さんから聞いて「自分も行きたい」と斎藤病院長なら言い出しかねない。 何しろヨ
「ホワイトデーなのですけれども、何か欲しい物は有りますか?」 朝の生まれたての光が射し込むキッチンで祐樹は氷を入れたボウルにレタスを均一の大きさにちぎって入れながら聞いてみた。 隣に立っている最愛の人は最高に美味しいオニオンスープの最後の仕上げでもあるフ
◇注意◇若干「鬼滅の刃」アニメでは放映されていないネタバレが含まれます。この回は読み飛ばしても差支えのないように書いておりますので「アニメ以降のネタバレ、絶対にNG」と思われる方はスルーして下さい<m(__)m>次回からはやっと普通の「雪遊び」に入ります!!「何だ
「その桂離宮と大宮御所でのデートは具体的には何時なのだ?」 怜悧な声にも満開の花のような雰囲気を滲ませている。最愛の人の場合手術(オペ)は平日と決まっている。 他の病院だったら患者さんの容態急変で緊急手術ということも有り得ると聞いているけれども香川外科唯一
「え?岩松の場合は有望な医師を引き抜くのが仕事の一環では有りますけれど、香川教授や田中先生のように緩(ゆる)く長い目で見てここぞとばかりに引き抜こうとしている先生方も多いのです。 言わば『引き抜きたい医師リスト』を作成するのが趣味の一つと申しますか。それに
「……実はそう思った。『仮にバカと言われたら』という前提条件が付いていたので……」 雪はもう直ぐ止みそうな感じだった。ただ二人して藁(わら)に包(くる)まって雪を見ているだけで愛の交歓の後とは異なった種類の親密さのようなモノが温かい体温としなやかな肢体と密着
エレベーターではなく敢えて階段を使ってLINEを送った。「相談したいことが有りますので執務室に行っても大丈夫ですか」と。「五分待って欲しい」既読マークが付くと即座に返信が来た。 以前は祐樹に送るメールやメッセージはどれだけ素っ気ない文面であっても熟考した後
「田中先生と香川教授は桜木先生とはお親しいのでしょう?お二人からも説得なさってはいかがかしら?岩松のオファーはもちろんそれなり、いえ破格の金額を提示すると思います。 しかし、長年教授の黒子役(くろこやく)として手術をこなしていらっしゃったわけですよね?ウチ
「……その小説では徳川家康も関ケ原で戦死して影武者が入れ替わったという説も盛り込まれていて、その影武者も所謂(いわゆる)士農工商の身分から離れた人間だったので、同じ身分だった吉原遊郭の創設者への御免状(きょかしょう)に『我が同胞』という一文を入れたという設定
祐樹の吐(つ)いた嘘はグレーゾーンなような気がする。最愛の人の「寸志」代わりに桂離宮や大宮御所を使用する許可が出たのだから。 もうこうなったら王族は祖国で何か重大なことが起こったことにして急遽来日を取り止め、代わりにかねてから興味を持っていた最愛の人が見
「多分ご想像の通りかと思います。彼と付き合って行くうちに徐々に心を開いて下さったので。 いえ、彼だけではなくて私も今までのような割と投げやりな性格から前向きに医療に取り組もうと思えるようになりました。仮に、本当に仮定の話ですけれど彼が帰国して私と共に人生
届きました💖ずっと読んでくださるばかりか、「ホワイトデー狂想曲」で祐樹が貰ったと思しきGODIVAのチョコまで頂いてSさま、本当に有難う御座います!!このお返しは気に入ってもらえるような小説書きます!!そして画像をたくさん頂いたM様。『離宮デートで日本庭園の画像
アニメの真似も――アニメを全く知らない人が見たら余計怪しい――最愛の人が望むなら是非したいけれど、愛車と納屋で良い感じに人目を避けてくれている。 ただ、野外で男が二人藁に包まっているという状況は通りすがりの人が居たら「どうかしたか?」的な声を掛けられる