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たかあきによる創作文置き場です。 メインはお題を使ったショートショートですが、たまに長編も載せます。 ジャンルは主にファンタジー寄りのホラーやSFです。

青猫亭たかあき
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2019/04/29

1件〜100件

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  • 骨董品に関する物語・ドイツ製の祈祷書

    最愛の良人を亡くした祖母は、死は終わりではないと形見の祈祷書を手に微笑んだ。私があの人の事を忘れずに様々な形で思い出を紡ぎ続ける限り、あの人が消えてしまったりはしないのだと。やがて私がこの世を去る事になっても、今度は私の愛した人が同じように私を語り継ぐだろうと。骨董品に関する物語・ドイツ製の祈祷書

  • 骨董品に関する物語・フルール・ド・リスのシャトレーン

    母は普段から緻密な細工の入った金属製の容れ物を腰に下げていたが、そこに何が入っているのかを尋ねても何故か教えてくれなかった。やがて母が病に倒れ、そのまま還らぬ人になってから初めて開いた容れ物には、見覚えのない男性のスペルが刻み込まれた古い鍵と石の外れた古い指輪。骨董品に関する物語・フルール・ド・リスのシャトレーン

  • 骨董品に関する物語・サン・ヴァンサンの星

    ある日、星型の石を丘の上で拾った。きっと空から降ってきたに違いないと装飾品に仕立てて師匠に見せると、それは星の海からもたらされたものではなく、かつて太古の海に群生していた百合の欠片だと教えられた。星はしばしば人が焦がれる高みではなく、足元に広がる世界で生まれる。骨董品に関する物語・サン・ヴァンサンの星

  • 骨董品に関する物語・薔薇色のボンボニエール

    最初に一番好きな味のお菓子を入れると透明な器が薔薇色に染まり、以降に入れるお菓子が全て同じ味になる。そうやって長い間一番好きな味を楽しんできたが、やがて自分の一番好きな味が変わり薔薇色だった器が透明に戻った頃、私は次の相手に菓子器を譲る順番が来たことを悟った。骨董品に関する物語・薔薇色のボンボニエール

  • 骨董品に関する物語・サテュロスとエロースの宝石箱

    錬金術アカデミーに通う学生は色々な意味でフリーダムな連中が多いが、課題を仕上げる手段や材料も実に多彩だ。例えば幻獣や天使モチーフを制作物にあしらう学友は自分で捕獲した本物を加工して使用する。それはいいのだが、期末課題の材料を調達しに行ったきり一月ほど戻らない。骨董品に関する物語・サテュロスとエロースの宝石箱

  • 骨董品に関する物語・赤いベルベットの額

    深紅の天鵞絨に良く似た質感の素材を使って完成させた錬金術学科自由課題提出用の額を盗まれた。面倒なことになったと頭を抱えていると案の定、酷い爛れに顔や両手を覆われた級友が医務室に担ぎ込まれ、結局、毒茸の美しさを極限まで引き出した俺の錬成作品は再提出を命じられた。骨董品に関する物語・赤いベルベットの額

  • 晩夏の創作怪談・祟る

    祟る家は概ね、拒むか誘うかのニ種類だと彼は言った。前者は侵入者を異物として徹底的に排除すことで障る。後者は招き入れた侵入者を糧として更に祟りを広げる。どちらも逃げ切る方法や才覚が無いのなら近づかないのが唯一無二の祟りを避ける方法だが、それに気付いた時は大体が手遅れだ。晩夏の創作怪談・祟る

  • 骨董品に関する物語・亜麻色の髪が納められているペンダント

    彼女はとても用意周到な女性で、旅に出る前に何時でも貴方と共に在りますと誓いながら、自慢の髪を一房切り取って編み上げたものをブローチに収めて私に託してきた。だから彼女が乗った船が沈み、骸さえ戻らぬと分かった日から私はペンダントに加工したブローチを常に身に付けている。骨董品に関する物語・亜麻色の髪が納められているペンダント

  • 骨董品に関する物語・ドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの "Theodor Müller-Hipper" の硝子義眼

    事故で左眼を失った伯母様と再会した日、とても精巧な義眼が左眼に嵌っていたので、その眼は視えるのですかと馬鹿なことを尋ねてしまった。すると伯母様は微笑みながら、この瞳で再び視えるようになったのは私ではなく、今まで存在していた私の瞳を見失った周りの人々なのよと言った。骨董品に関する物語・ドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの"TheodorMüller-Hipper"の硝子義眼

  • ドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの "Theodor Müller-Hipper" の手による硝子製義眼

    よく目は心を映し出す鏡と言われるけど、義眼を見ても明確な意志を感じないのは人間の眼窩に嵌っていないからかな、などと不気味な事を彼は言ったが、そもそも鏡に明確な意志は無い。映るのは鏡を覗き込んだ己の姿でしかなく、そこに化け物が映っていたら後はもう狂うしかない。ドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの"TheodorMüller-Hipper"の手による硝子製義眼

  • 夏の創作怪談・晩夏の匂い

    入浴中、いつもの習慣で体を洗おうと手に取った石鹸に鼻を近付けると、いきなり青臭さに煙が混じったような匂いにむせそうになる。一瞬で消えたその匂いは、よく考えると久しく帰っていない実家の仏間に立ち込める線香のそれにそっくりで、そういえば今日からお盆だったなと思い出した。夏の創作怪談・晩夏の匂い

  • 骨董品に関する物語・星の散りばめられたデキャンタ&リキュールグラス

    義兄は私の母に毒を盛られていた時期があると言う。確かに幼い頃に体が弱かった義兄は毎晩薬を飲んでいた筈だが、実はその薬をこっそり、母に取り上げられた祖母の形見の器に酒と一緒に混ぜておいたのだそうだ。やがて義兄は健康になり母は亡くなったが、今度は私の番なのだろうか。骨董品に関する物語・星の散りばめられたデキャンタ&リキュールグラス

  • 骨董品に関する物語・素晴らしい箱入りの祈祷書(19世紀フランス製)

    母は豪華な装丁の箱入り祈祷書をとても大事にしていて、年に数度決まった日に箱から取り出して丁寧に頁をめくっていた。それは祈祷書の寿命を使い切ってしまわない為だと言っていたが、それ故に私は形見として残された祈祷書の寿命を私が使い切る事を恐れて手放すことを決めた。骨董品に関する物語・素晴らしい箱入りの祈祷書(19世紀フランス製)

  • 骨董品に関する物語・渾天儀のオブジェ

    昔、欧州で天文学は占星術と同じものだった。人々は星の動きに自らや世界の運命を読み取ろうと天空の観察を重ね、やがて其処に明確な規則性を見出した。そして皮肉にもその規則性を追求し続けた結果として、占星術は錬金術と同じように近代科学の範疇から弾き出される事になった。骨董品に関する物語・渾天儀のオブジェ

  • 骨董品に関する物語・クリスタルガラスのフレームとシガレットカードのセット

    どのようなものでも相応の場は存在するものだが、時には本来全く関わりのなかったものが重なり合う事で素晴らしい場が構築される事もある。ただ、特に人間の場合は望んだ場所に相応の場が与えられるとは限らず、奇跡的に重なり合ったものたちが構築する素晴らしい場を、ただ羨望しながら見詰めるしかないのだ。骨董品に関する物語・クリスタルガラスのフレームとシガレットカードのセット

  • 幽霊その57・愛憎の彼方へ

    たかあきは失恋した日、コンビニで、かなりグロい女性の幽霊に出会い、家族に会いたいとお願いされました。ちょうど失恋で落ち込んでコンディションが最悪だったせいか、普段は視得ない相手と目が合ってしまった。かなりのダメージを負ったらしくドロドロの格好をした相手は確か近所のお嫁さんで、亡くなったという話は聞かないんだがと思って帰ろうとしたら付いて来た。結局お嫁さんは婚家に戻ったが、あのお嫁さんが生きていようと既に死んでいようと、きっとあの家ではこれから凄惨な修羅場が訪れることになるだろう。幽霊その57・愛憎の彼方へ

  • 夏の創作怪談・発車します

    マッチ箱のような車両がホームに滑り込んで停車すると、車掌が降りて切符の提示を求めてきた。私は切符を持っていなかったのでそう答えると車掌は無言で車両に乗り込み発車する。後に残されたのは廃墟となって久しい雑草に覆われたホームと、ずっと昔から何処にも行けなくなった私だけ。夏の創作怪談・発車します

  • 骨董品に関する物語・「煉獄からの魂の解放」というタイトルのホーリーカード

    キリスト教における煉獄は断罪の場である地獄とは異なり、贖罪の場であるという。永劫とも思える苦しみの中、それでも扉を開いて道を進んでいくものだけが、やがて天国へと至れるのだと神父様は仰った。そうだとしたら、大罪を犯し今は煉獄に在る筈の彼の魂もいずれは解放されるのだろうか。骨董品に関する物語・「煉獄からの魂の解放」というタイトルのホーリーカード

  • 骨董品に関する物語・星と少年の描かれたチョコレートカード

    星の輝く夜空を見上げながら友達と語り合った幼い頃、世界には夢や希望で溢れ返っているように思えた。やがて数え切れないほどの裏切りと忘却を経て辿り着いた、無彩色の大人の世界で生きるようになった今でも、決して叶いはしないと知りながら夢や希望を捨てきれず星を見上げてしまうのは何故だろうか。骨董品に関する物語・星と少年の描かれたチョコレートカード

  • 骨董品に関する物語・アクアブルーのボンボニエール

    少しばかり極端な思考を有する錬金術学科首席の彼は、容器に収めた菓子に自らが構築した唯一無二の美味を付与する菓子器を錬成した。それは確かに天上の味覚と持て囃される程の美味ではあったのだが、残念なことに大概の人間は実にあっさりと、その単一極まりない美味に飽きた。骨董品に関する物語・アクアブルーのボンボニエール

  • 骨董品に関する物語・マイクロモザイクの十字架

    神は細部に宿り給うという言葉があるが、それがどのような小さきものでも神の御業の奇跡が宿るものだと取る者もいれば、大き過ぎる神の奇跡を人間が可能な限り正確に捉える為には、その掌に乗る程に小さな御業を確かめれば良いと取る者もいて、恐らくはどちらの考えも正解なのだ。骨董品に関する物語・マイクロモザイクの十字架

  • 骨董品に関する物語・手描きの水彩画で動物のカップルが描かれた小さな額

    悪魔に妻を鶏の姿に変えられた男は、幸せになる為にどうしたと思う?と尋ねてきた彼に対して私は、悪魔と戦って妻の元の姿を取り戻すと答えた。彼にとっての正解が妻と共に鶏として暮らすであることは承知の上で、決してそれを正解と答えられなかった私は多分、最初から彼の敵だったのだ。骨董品に関する物語・手描きの水彩画で動物のカップルが描かれた小さな額

  • 幽霊その56・愛別離苦

    たかあきは失恋した日、スーパーで、ちょっと溶けた感じに見える猫の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと誘われました。どんなに頑張っても上手くいかなかった恋愛に終止符を打った日、それでも普段通りにスーパーで買い物をしていたら少し前に虹の橋を渡った筈の友人宅で飼われていた猫に遭遇した。俺はもう逝くから飼い主にもう心配するな、猫缶も買わなくていいと伝えるように頼まれた今は、猫ですら愛着を断ち切って進んでいくのだと感心するしかない。幽霊その56・愛別離苦

  • 骨董品に関する物語・コルク栓の詰まった中身入り硝子瓶

    骨董市でコルク栓の詰まった硝子瓶が沢山並んでいたので中の小物を代わる代わる眺めていたら、一度に効くのは、せいぜいひと瓶だけですよと言われた。結局はそれぞれ違う物が入った瓶を五本ほど購入したのだが、一体何年くらい、何に効いてくれるのだろうかと今でも謎は解けない。骨董品に関する物語・コルク栓の詰まった中身入り硝子瓶

  • 骨董品に関する物語・髑髏の時計鎖・その2

    この世界に生きる者は例外なく、そいつの為だけに設えられた十三階段を昇りつめた先で死に至り土に還る。だが、例え骨だけになろうと俺が俺自身であった証はこうして残るだろう。奴はそう言って、古い懐中時計に繋げられた髑髏と指が一本多い左手の骨をあしらった鎖を見せてくれた。骨董品に関する物語・髑髏の時計鎖・その2

  • 骨董品に関する物語・髑髏の時計鎖

    医療技術が発達していなかった昔は、多指症と呼ばれる先天性の形状異常を抱えたまま生きる人が今より遥かに多かったのだと彼女は言う。確かに手袋は特注が必要だけど指輪を嵌める指が一本多いと考えれば少しは慰めになるかしらと呟きつつ撫でる彼女の右指には、古い手術痕があった。骨董品に関する物語・髑髏の時計鎖

  • 骨董品に関する物語・メルキュール(マーキュリー)の印章・その2

    マーキュリー(水銀)は古代中国において外見や防腐性から不死の薬とされ、欧州の錬金術師にとっても霊薬の原料だった。そして確かに瀕死の身で主人に秘薬を与えられた男の肉体の血管はそのまま残ったが、それは死に対する生の勝利とは成り得ず、ただ呪われた姿を永遠に晒しているに過ぎない。骨董品に関する物語・メルキュール(マーキュリー)の印章・その2

  • 骨董品に関する物語・メルキュール(ヘルメス)の印章

    ヘルメスは商人や旅人だけでなく、同時に医学や泥棒の守護神でもあるのだと彼女は言った。それは恐らく疾風の如き迅速さで事を為すだけでなく、しばしば運命と呼ばれる死神が刈り取ろうとする生命を掠め取り、人の世に留める為の職能でもある。だから医者である自分は地獄行きに違いないと寂しそうに呟く。骨董品に関する物語・メルキュール(ヘルメス)の印章

  • 幽霊その54・棚に飾られた少女

    たかあきは先程、骨董品店で、恨みがましい幼女の幽霊に出会い、一緒に逝きませんかと号泣されました。その少女は、骨董品屋の硝子棚に飾られた陶器製の人形に憑いているというよりは既に一体化していた。もはや自我もかつての記憶も人形に溶け込みヒトとは言えない存在となった状態の少女は、それでも最後に残った欠片ばかりの意識の中、いずれは訪れる筈の己が解放される日を、ただひたすらに待ち続けていた。幽霊その54・棚に飾られた少女

  • 幽霊その54・座る女

    たかあきは大昔、バス停で、むっちゃ怖い女性の幽霊に出会い、放っておいてくださいと頼まれました。若い頃、通勤に使っていたバスは右後部の二人掛け座席を利用する人が殆どいなかった。まあ普通の人には見えないとしても怨念溢れる表情の女性が窓際に座っている以上無理もないことで、私もなるべく避けていた。ある日、賑やかな男性が恋人らしい女性とその座席を利用してはしゃぎ回ったた時は降りる迄冷や冷やし通しだった。もっとも彼女は翌日も憤怒溢れる表情でバスに乗っていたので何だか複雑な気分になった。幽霊その54・座る女

  • 幽霊その53・通りすがりの案内者

    たかあきは今この時、遊園地で、哀しげな男性の幽霊に出会い、あなたに取り憑いていいですかと嗚咽されました。連休中に遊びに来た遊園地で、一緒に歩いていた母がいきなりベンチに座り込んだ。気分でも悪くなったのかと思ったら通りすがりのサラリーマンに憑かれそうになったそうだ。家庭をないがしろにした後悔から成仏できなかった男は光を示すと礼を言って消えたらしく、素直な相手で良かったと母は平然と言ってのける。なお、もしそうでなかったら消えて貰わなければならなかったと続いた言葉は聞かなかったことにした。幽霊その53・通りすがりの案内者

  • 幽霊その52・佇む老婆

    たかあきは旅行中、道端で、恨みがましい老婆の幽霊に出会い、放っておいてくださいとお願いされました。誰にも姿を気付かれぬまま路傍に立ち尽くす老婆は凄まじい怨念を放っていたが、それは無差別ではなく老婆の知るであろう何かに向けられたものであり、老婆はそれが現れるのをただ待っているようだった。だから私は過去に何があったかは考えず、もちろん老婆と意思を通じようとも思わぬまま、黙ってその場を後にした。幽霊その52・佇む老婆

  • 幽霊その51・恐らくは小袖の手

    たかあきは昨日、廃墟で、知り合いの洗濯ものの幽霊に出会い、恨みを晴らしてくれと聞かれました。この辺では有名な幽霊が出るという廃墟に無理やり連れて行かれた友人は、事故死した姉の形見だった大事なジャケットをはぎ取られた姿で帰ってきた。あそこにはもう行きたくないと泣くので俺が取りに行ってやったら、ジャケットはズタズタに破かれて破片が散らばっていた。どうやら友人を護った結果らしく、もともと此処にいた筈の質の悪いヤツは気配もろとも消えていた。幽霊その51・恐らくは小袖の手

  • 幽霊その50・人違い

    たかあきは全てを失った日、病院で、むっちゃ怖い人形の幽霊に出会い、三丁目の田中さんを見ませんでしたかと頼まれました。病院で目覚めると眼前に焼け焦げた人形が憤怒の表情で浮かんでいた。家が燃えたのはコイツの仕業かと見当をつけていると私とは違う名前で呼ばれたので、アンタが探しているのは三丁目の田中だと教えたら即座に姿を消した。次の日、三丁目で大火災があったとニュースで知ったが深く考えないことにした。幽霊その50・人違い

  • 骨董品に関する物語・1930年代のイギリスのゲーム"Panto People"

    子供の頃、家にはお伽噺をモチーフにした一組のゲームカードがあった。汚すからと滅多に触らせてもらえなかったが、見詰めていると描かれている登場人物が朗々と自分たちの物語を語ってくれるのがとても楽しかった。やがて大人になるとカードはいつの間にか何処かに行ってしまったが、両親は元々あのカードに朗読機能など搭載さていなかったという。骨董品に関する物語・1930年代のイギリスのゲーム"PantoPeople"

  • 初夏の創作怪談・溝鼠の話

    昔、バイト先の掃除中に棚の下で半ば崩れている溝鼠の骸を見付けた事がある。腐肉の狭間を白い虫が蠢き、箒で突くとあっさり形を変える姿に、最近大振りの蠅が飛び交うのも淀んだような臭いがしていたのもコイツのせいかと、半分以上感覚が麻痺した状態で店長に報告して片付けた。数日後、店長に呼ばれて鼠捕りに掛かって暴れている溝鼠の処分をお前なら平気だろう?と押し付けられそうになったが、自分の職分に鼠殺しは含まれていないので断り、結局その店を辞めた。初夏の創作怪談・溝鼠の話

  • 幽霊その49・哀しき玩具

    たかあきは大昔、友達の家で、ぼんやりした洗濯ものの幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと号泣されました。母は子どもの頃、とても大事にしていたぬいぐるみを友達が勝手に持って帰り、親からも我慢しなさいと言われたことがある。もちろん昔から我の強かった母がそれを承知する筈もなく怒り心頭状態で友達の家に押し掛け、飽きて打ち捨てられ、見る影もない姿と成り果てたぬいぐるみを奪い返して自ら綻びを繕い、綺麗に洗濯した。翌日から親と友達一家は数日間、毎晩のように訳の分からない悪夢に魘され続けたそうだ。幽霊その49・哀しき玩具

  • 幽霊その48・取り遺されるモノ

    たかあきは友人が亡くなった日、ショッピングモールで、どこかで見たことのある老人の幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと言われました。友人の葬式に向かっている途中で奴の父親に遭遇した。妻と、まだ小さかった息子を捨てて別の女と逃げた男は、自分が死んだことにも気付かぬまま昔住んでいた家と家族を探し回っている様子だったが、もはやあの男にあの家に戻る権利はないし、周囲に悼まれ見送られる奴と同じ場所に逝く事も出来ない。幽霊その48・取り遺されるモノ

  • 骨董品に関する物語・オパールセントガラスのピアス、ペンダント、ブレスレットの3点セット

    長い間独身を貫いていた叔父の持つ宝石箱には、虹色に輝く硝子製の花をモチーフにした数点のアクセサリーが入っていた。元々は指輪もあったが、今は冷たい土の下に埋まっている棺の中で眠る婚約者の指に輝いている。もし永遠の愛という呪いに殉じるのなら此れをお前にやろうと伯父は疲れた笑顔で囁く。骨董品に関する物語・オパールセントガラスのピアス、ペンダント、ブレスレットの3点セット

  • 骨董品に関する物語・聖書に由来するマスタードシード / からしの種のペンダント

    人間の抱く可能性というのは植物の種のようなもので、菫の種は決して薔薇の花を咲かせない。だが、ただ一粒の芥子の種が異郷で芽生えて根を張り、花を咲かせて種を落とし、再び芽吹きながら広がり、やがてその地を支配するかのように隆盛を極めることもまた、珍しい話ではないのだ。骨董品に関する物語・聖書に由来するマスタードシード/からしの種のペンダント

  • 幽霊その47・山のスイカ

    たかあきは昨日、山奥で、血塗れの男性の幽霊に出会い、コレを渡して下さいと言われました。冬山で遭難した義弟とは仲が良かったので、春になってから現場を尋ねてみた。するとガレ場で光るものがあったので拾うと奴の名前が彫られた指輪だった。もしも、まだ義弟が此処にいるなら姿を見せて欲しいと一瞬だけ思ったが、山岳用語でスイカと呼ばれる無残な姿を晒したくないのだろうと思い直した。幽霊その47・山のスイカ

  • 幽霊その46・佇む少年

    たかあきは昨日、バス停で、かなりグロい少年の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいとお願いされました。バス停近くの道端に菊の花束が置かれていたので嫌な予感がしたら、案の定ひどい怪我をしている半分透けた姿の少年に声を掛けられた。花を供えられている間はここから移動できないという少年の頼みで花束から菊を1輪抜き、少年の案内のまま一軒の家に辿り着いた私は菊の花を置いて、その場を後にした。幽霊その46・佇む少年

  • 骨董品に関する物語・アイルランド、ベリーク窯のネプチューンシリーズ

    繊細な輝きを放つ茶器を手に取り、まるで魔法のようだと彼女は嘆息した。確かに石塊を砕き水で練り、風を起こして高温の炎で焼き上げる工程は物語に登場する地水火風の精霊要素の全てが関わっている。そして、魔法の儚さを証明するように僅かな不注意で砕け散る危うさを孕んでいる。骨董品に関する物語・アイルランド、ベリーク窯のネプチューンシリーズ

  • 春の創作怪談・軋みの果て

    久し振りに軋みを感じた。職場の人間に、片付かない空間に、どれだけ歳月を経ようと何者にもなれなかった己の内側に。これが現状を打開しようと藻掻く故のものなのか、現状に許して貰えない軋轢から来るものなのかは分からないが、いずれ私の背骨は軋みと共にへし折れる日が来るのだろう。春の創作怪談・軋みの果て

  • 幽霊その45・犬が啼く

    たかあきは三日前、お墓で、知り合いの犬の幽霊に出会い、あなたに取り憑いていいですかと泣かれました。我が家の墓参を済ませた帰り、最近亡くなった隣人の墓前に老犬の幽霊が佇んでいた。隣人は生前にこの犬を溺愛していて最期まで行く末を心配していたが、隣人の奥さんはこの犬を嫌っていて、葬式の後に犬を何処かに譲ったと聞いた。何があったかは知らないが、主人を恋しがって鼻を鳴らす犬は只哀れだ。幽霊その45・犬が啼く

  • 骨董品に関する物語・"Zum Andenken an Grofsmutter Posner"「祖母ポズナーを偲んで」と彫られた銀のカップ

    父の大切にしていた銀製のカップと瓜二つの品物を古道具屋で見付けたので買い求め、当の父に見せると愕然とした表情となるなり、まだ残っていたのかと呟いてから黙り込んでしまったので、カップに彫られた名前が父の祖母、つまり私の曾祖母ではなく私の名前である理由を聞き損ねた。骨董品に関する物語・"ZumAndenkenanGrofsmutterPosner"「祖母ポズナーを偲んで」と彫られた銀のカップ

  • 骨董品に関する物語・ロケットペンダント・その2

    『針の先で何体の天使がダンスを踊れるか』という有名な神学上の命題があるが、正解は世界に存在する天使全員と奴は言った。質量とは無縁の存在である天使は例え何体集まろうと針の先に溢れ返ることはないと。そして同じようにロケットペンダント内の空間に俺の全世界があるのだと。骨董品に関する物語・ロケットペンダント・その2

  • 骨董品に関する物語・十字架のロケットペンダント

    金色の十字架があしらわれたロケットペンダントは裏蓋が硝子製で、病床の母はこの中に貴方の大切なものを入れて何時でも見られるようにしておきなさいと渡してくれた。出来ることなら彼女の魂が祝福された国に旅立つ際に、その欠片でも此処に残して欲しいというのは我儘だろうか。骨董品に関する物語・十字架のロケットペンダント

  • 骨董品に関する物語・宝物を守る蜥蜴のブローチ

    昔々、魔王に世界を滅ぼされかけた偉大なる魔法王は己の世界を宝玉に封じ込めて守ろうとした。だが、それは王自らが人ならざる身に姿を変えて宝珠の守護者となる事でのみ可能な技だった。故に彼の后は王と共に姿を変え、宝玉と化した己の世界を今もなお二人で守り続けているという。骨董品に関する物語・宝物を守る蜥蜴のブローチ

  • 骨董品に関する物語・フランスの聖女の祈祷書・その3

    貴女は気付くだろうか。貴女の良人から贈られたであろう、貞節を意味する聖女を冠した祈祷書に隠された許されぬ思いを。幼い頃の二人が無邪気に描いた渦を巻く蔦模様を。そして、もしもそれに気付いた貴女の心は、今でもあの日の蔦模様に心を絡め取られる余地があるのだろうか。骨董品に関する物語・フランスの聖女の祈祷書・その3

  • 骨董品に関する物語・フランス聖女の祈祷書・その2

    厳格な祖父の書斎には高価な書籍を収める鍵付きの書架が設えてあって、子どもの頃に鍵が開いていたのを良い事に一冊の綺麗な本を抜き出した事がある。内容は難しくて良く分からなかったが、天使や綺麗な女の人の絵が沢山描かれていて夢中で見ていたら祖父に見つかって酷く怒られ骨董品に関する物語・フランス聖女の祈祷書・その2

  • 骨董品に関する物語・フランスの聖女の祈祷書・その1

    私の両親は裕福で優しく、そして平凡な人間だった。それ故に聖人のような清廉さは持ち合わせておらず、日常の生活や商売などではしばしば世俗の汚泥に身を浸す事があったが、聖なるものに憧れる敬虔さと家族を愛する心を併せ持つ、私にとってはごく普通の、そして最高の両親だった。骨董品に関する物語・フランスの聖女の祈祷書・その1

  • 骨董品に関する物語・月面図の幻灯機スライド

    空に輝いている時は美しく見える月も、幻燈で大きくすると痘痕だらけなのねと彼女は残念そうに呟いた。無理もない、彼女は光が生み出す影、更にその影が生み出す闇が恐怖や嫌悪を孕んだ、しかしどうしようもなく魅力的なものであるのを知るのには、まだ幼すぎる年頃であるのだから。骨董品に関する物語・月面図の幻灯機スライド

  • 骨董品に関する物語・金星の動きが描かれた幻灯機スライド

    昔から測定器を携えて夜空を眺めてばかりいた奴に理由を尋ねると、星の巡りには法則性があり、それは世界の摂理の一端を示しているのだと言われた。それなら星占いも信じるのかと俺が更に尋ねると、世界の摂理が人間に、それも一個人に対応して動くと本気で思うのかと尋ね返された。骨董品に関する物語・金星の動きが描かれた幻灯機スライド

  • 骨董品に関する物語・鹿のポージーホルダーブローチ

    友人が久し振りに山間の故郷に帰省すると、玄関先に巨大な鹿の角が花と共に飾ってあった。鹿そのものは珍しくない土地だが一体何事だと父親に尋ねると先日猟友会が仕留めた鹿の角だという。人間にとっては害獣でもこれだけ巨大なら名のある鹿に違いないから敬意を表したのだそうだ。骨董品に関する物語・鹿のポージーホルダーブローチ

  • 骨董品に関する物語・大きなガラス製の砂時計・その2

    先日、得体の知れない古道具屋で購入した砂時計は頻繁に砂が硝子内部に引っ掛かって止まる。元々時間を図る意図で求めた訳ではないので最初は気にしなかったが、砂が止まっている間は何らかの問題から予定進行が停滞することに気付いたので、一日に数回砂時計を軽く叩く癖が付いた。骨董品に関する物語・大きなガラス製の砂時計・その2

  • 骨董品に関する物語・大きなガラス製の砂時計・その1

    路地裏の古道具屋で主人が勧めてきたのは自身の寿命が分かるという大きな砂時計だった。砂の最後の一粒が落ち切った時に持ち主の寿命も尽きると、ありがちな口上と共に売りつけられた砂時計だが、よく考えてみると砂が落ち切るまで砂時計を眺めていられるほど俺の人生に暇はない。骨董品に関する物語・大きなガラス製の砂時計・その1

  • 骨董品に関する物語・大きなガラス製の砂時計・その1

    路地裏の古道具屋で主人が勧めてきたのは自身の寿命が分かるという大きな砂時計だった。砂の最後の一粒が落ち切った時に持ち主の寿命も尽きると、ありがちな口上と共に売りつけられた砂時計だが、よく考えてみると砂が落ち切るまで砂時計を眺めていられるほど俺の人生に暇はない。骨董品に関する物語・大きなガラス製の砂時計・その1

  • 幽霊その44・通りすがりの守護者

    たかあきは生まれた日、公園で、美しい老婆の幽霊に出会い、あなたに取り憑いていいですかとお願いされました。私は昔から上品な老婆の気配を身近に感じていて、母が言うには小さい頃は良く一緒に遊んでいたそうだ。とは言っても血の繋がりのない赤の他人で、単に彼女の孫と私が何となく似ていたという理由で一緒にいるらしい。もちろん、何故に本当の孫ではなく私に憑いているのかを確認しようとしたことはない。幽霊その44・通りすがりの守護者

  • 英国人画家Henry Stephen Ludlowの手による1900年のカレンダー

    太陽暦が標準の世界なら外国製のカレンダーでも日付は同じだと言い張り、わざわざ曜日が異なるアンティークのカレンダーを幾つも買い集めた姉の誤算は、日本以外に天皇誕生日が無いこと、更に改元で天皇誕生日が変更になったことだが、流石に祝日シールを貼る気にはならないそうだ。英国人画家HenryStephenLudlowの手による1900年のカレンダー

  • 骨董品に関する物語・フリーメイソンの意匠のペンダント

    意匠についての正確な知識は無いに等しいのだがと前置きしてから彼は言った。定規もコンパスも計測する器具であり、実際に月の満ち欠け周期は月食も含め人間の手で解明されている。だが、月の名に込められた狂気は未だ人間の手に余る闇の分野であり、故に畏敬するべきものなのだと。骨董品に関する物語・フリーメイソンの意匠のペンダント

  • 骨董品に関する物語・セント・ヴィンセントの星

    地上に憧れ続けた水底に揺れる百合は、やがて我が身を硬く冷たい石と変えるのと引き換えに陸に上がることが出来たが、今度は遠い空の星に恋い焦がれ、動けぬ体で天を仰ぎ続けた。やがて一人の職人が石の百合を星細工に添えたが、彼の胸を焦がした熱情が何処から来たのかは知らない。骨董品に関する物語・セント・ヴィンセントの星

  • 幽霊その43・わたしのまわりに、だあれもいない

    たかあきは先程、山奥で、いかにもな大人の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと微笑まれました。若い頃、死に場所を探して山の奥まで入り込んだ事がある。だが、先客の遺した無残な姿から現実に引き戻された私の前にわざわざ生前の姿で現れた先客は、自分の死を遺族に伝えてくれるなら帰り道を教えてくれると約束して街に還る事が出来たのだが、先客は幼い頃に既に天涯孤独の身となっていたと後に知った。幽霊その43・わたしのまわりに、だあれもいない

  • 骨董品に関する物語・携帯用の拡大鏡

    お爺ちゃんの持ってる拡大鏡を覗くと普通の眼には見えないものがはっきり見える。そして、レンズにはそういう役割があるんだよと教えて貰ったので、僕は拡大鏡というものは目には見えない色彩や妖精、魔物の類を科学の技術で見られるようにするのだと随分長い間信じて疑わなかった。骨董品に関する物語・携帯用の拡大鏡

  • 骨董品に関する物語・凛々しいお顔のツバメのバングル

    王子の銅像が流した涙と痛みを知ったばかりに、本来なら身一つで自在に空を飛び交う身でありながら宝石や金箔を貧しき人の元に何度も運び続けた燕は雪の降る冬の町で力尽きて命を失ったが、誰かの哀しみを癒そうと己の肉体の重みすら捨て去る精神の持ち主にだけ、神々の住まう天国の扉は開かれるのだ。骨董品に関する物語・凛々しいお顔のツバメのバングル

  • 幽霊その42・うちのお姉さん

    たかあきは先程、自宅で、哀しげな大人の幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと微笑まれました。うちには昔から家族以外には見えないお姉さんがいて、小さい頃は遊び相手に、大きくなってからは話し相手になってくれた。だから引っ越しが決まった時は別れるのが淋しかったが、お姉さんは新居に移っても僕の前に現れた。つまりお姉さんは家ではなく家族の誰かに憑いているのだと今更ながら判明した。幽霊その42・うちのお姉さん

  • 幽霊その41・魔女を生きる心得

    たかあきは大昔、公園で、嬉しそうな老人の幽霊に出会い、何処に行けばいいのかと呪われました。ずっと昔、何処かの公園で魔女を名乗る老婆に声を掛けられたことがある。老婆は私の魂が自由を求める強い輝きを放っていて、それ故に周囲と巧くやっていくには難しいだろうと忠告してきた。やがて私が周囲との折り合いが付けられない現実は深刻なものとなり、それ故に私は魔女となる道を自ら選んだ。幽霊その41・魔女を生きる心得

  • 骨董品に関する物語・十字架の祈祷書

    耶蘇教の神を称える習慣を持たなかった彼は、信心深かった父の形見である聖書に採取した植物の標本を挟んで重し代わりにしていた。当然ながらいい顔をしない者も多かったが、彼はただ、聖書に登場する神ではなく、己が愛する植物を健やかに育てる名もなき神を愛したに過ぎないのだ。骨董品に関する物語・十字架の祈祷書

  • 幽霊その40・誠意を見せて下さい

    たかあきは昨日、自宅で、恨みがましい幼女の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと懇願されました。家賃格安の上に敷金も礼金も引継ぎで入居できると言われ、つい従兄が住んでいた物件に引っ越したら幼女の幽霊が憑いていた。しかも従兄にもう一度会いたいと懇願するので手近なキーホルダーに移って貰って従兄の新居に置いてきた。二人の間に何があったかは知らないが、あとは従兄の誠意ある対応に期待して一切の口出しはしないことに決めた。幽霊その40・誠意を見せて下さい

  • 幽霊その39・快適ドライブの為に

    たかあきは三日前、お墓で、元気な車の幽霊に出会い、放っておいてくださいと聞かれました。三日ほど前に霊園に行ったら付喪神憑きのミニカーを供えている墓があった。当の付喪神によると子供用の玩具ではなく生前ドライブ好きだった成人男性の為の茄子馬代わりだという。ちなみに魂の移動に距離は関係ないので、茄子馬だろうと乗用車だろうとこの世とあの世の移動時間は変わらないのだそうだ。幽霊その39・快適ドライブの為に

  • 骨董品に関する物語・三日月のマッチケース

    かつて満月のように福々しい体型だった彼は、病を得て三日月のように瘦せ細っても煙草を止めなかった。そんな彼が煙草を止め養生の末に病を快癒させ、半月のような体型に変わったのは、彼が言うには自分だけの輝く星を見出し、己の傍らに置くことが出来るようになったからだそうだ。骨董品に関する物語・三日月のマッチケース

  • 幽霊その38・通りすがりの私と彼女

    たかあきは誕生日に、駅で、美しい大人の幽霊に出会い、放っておいてくださいと懇願されました。死せる者が在るべき場所に還るのは自然の摂理だが、時々それを拒んで現世に留まろうとする魂がある。私が誕生日に出会った彼女もその類で、あの人に再会出来る迄どうか消さないでくださいと懇願してきた。結局私は彼女の望む通りに立ち去ったのだが、その判断が正しかったのかどうか、実は分からない。幽霊その38・通りすがりの私と彼女

  • 幽霊その37・悪夢の国

    たかあきは昨日、遊園地で、かなりグロい子供の幽霊に出会い、恨みを晴らしてくれと誘われました。人間の感情が大量に発散される場所はその感情を浄化させるシステムが必要で、日本の遊園地に祠が祀られているのもそれ故だと言うが、外資系の大遊園地にその理屈は通用しないらしく、嫌々連れて来られた夢の国で出会った人間の原型を僅かに留めた子供に恨み言を吐かれた僕は途方に暮れるしかない。幽霊その37・悪夢の国

  • 英国喜劇の主人公ポール・プライの印章

    不細工だが愛嬌のあった彼は喜劇役者として成功したが、生涯に一度でもハムレットを演じるのが夢だったので興行主に相談してみた。そして今までの実績から承諾を勝ち取った彼は猛練習の末に演じた舞台で大喝采を受ける。ただし、それは悲劇の王子を喜劇的に演じた名役者としてだ。英国喜劇の主人公ポール・プライの印章

  • 骨董品に関する物語・アラベスクのボンボニエール

    繊細な模様の入った素敵な菓子器を叔父は失敗作だと嘆く。そしてボンボンを入れて蓋を閉め、暫く経ってから開くとボンボンは二つになっていた。増えたボンボンを叔父と一つずつ食べながら何が失敗なのかと尋ねる私に、伯父は菓子を入れたままだと世界を埋め尽くすまで延々と増え続けるんだと哀し気に呟いた。骨董品に関する物語・アラベスクのボンボニエール

  • 骨董品に関する物語・スターリングシルバーのカラースティフナー

    富をもたらす子供を授かりながら、その有難さを忘れて全てを失った昔話の翁のように、俺もまた喪失の時を迎えた。成功に思い上がり父の代から我が家を支えてきた男を周囲の甘言に乗せられ解雇した俺は、やがて芯材を失った襟のように跳ね上がり取り返しのつかない失態を犯したのだ。骨董品に関する物語・スターリングシルバーのカラースティフナー

  • 幽霊その36・誕生日はもう来ない

    たかあきは誕生日に、学校で、恨みがましい男性の幽霊に出会い、恨みを晴らしてくれと頼まれました。うちの学校の体育用具室には苛められた末に自殺した男の子の幽霊が出ると聞いていたが、本当に出た。しかも恨みがましい呟きから彼を苛めたのは私の母親で間違いなさそうだった。そんな訳で誕生日の今日、家で私を祝ってくれるであろう両親に対して、どのような態度を取ればいいのかと私は悩み続ける。幽霊その36・誕生日はもう来ない

  • 幽霊その35・置き去られても尚

    たかあきは旅行中、お寺で、怒りに満ちた表情の子供の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと泣かれました。旅行先の寺で見覚えのある人形を見付けたら、案の定知り合いが奉納したものだった。昔から人形に憑いていた子供が、あの子はもう私を要らないんだと泣くのを慰めることも出来ぬまま彼女に伝えたい事を尋ねると、あの子を幸せにするのが私の願いだったけれど、彼女は私を手放すことで幸せになったのだろうかと。幽霊その35・置き去られても尚

  • 骨董品に関する物語・フリーメイソンの腕章

    麗しき花冠の下で交わされた盟約は、固く握られた手が解かれるような当然さで崩れ去った。思いも、それぞれの立場も永遠など望むべくもないまま変転する中、我々は枯れ果てた花冠を蹴散らして幾多の殺戮の末に終焉を迎えた。そこに至るまでの歳月に数百年を要したのは果たして僥倖だったのか、或いは。骨董品に関する物語・フリーメイソンの腕章

  • 骨董品に関する物語・大型の真鍮の砂時計

    奇跡によく似た魔力で契約者の運命を捻じ曲げるのは、悪魔の常套手段だ。人生のやり直しと言う毒の蜜を舐め、同じ場所を道を変えて巡るだけの迷路に誘われた哀れな人間は決して真の場所に辿り着けない。だが、悪魔の示す砂時計を逆さにと願う人間はいつの時代でも後を絶たないのだ。骨董品に関する物語・大型の真鍮の砂時計

  • 骨董品に関する物語・ベツレヘムの星のアクセサリー

    本当は見せちゃいけないんだけどねと苦笑いしながら彼は砕けた星の欠片を私に示した。今でこそ溜息が出るような星を刻む彼も修行に入った当初は失敗続きで材料の貝を何度も駄目にしてきたと言う。そんな人前には出せない無数の屑星が、実は彼の星を導き支えてきたことを忘れないと。骨董品に関する物語・ベツレヘムの星のアクセサリー

  • 幽霊その34・拾うもの、捨てるもの

    たかあきは大昔、職場で、元気な猫の幽霊に出会い、一緒に逝きませんかと泣かれました。昔勤めていた田舎町の会社で、敷地内に猫の骸が横たわっていたことがある。仕事が終わったら埋葬しようと思っていたらゴミと一緒に捨てられたという骸の代わりに元気に鳴く化け猫がいた。その後転職した私は化け猫と共に街で暮らし始めたので、あの会社がどのような問題でいきなり倒産する事になったのかについては、よく知らない。幽霊その34・拾うもの、捨てるもの

  • 骨董品に関する物語・ヴァイオリン型のマッチケース

    人間が一生の間に感じられる幸福の数は、せいぜいこのケースに入るマッチの本数程度だと彼は言った。たとえこの世界に無数の幸せが存在していようと、それらの全てを感じられるだけの容量など人間には存在しないと。それなら無数の幸せを追わず一つだけの幸せを感じながら生きればいいのではないかと尋ねる僕に、彼はただ嗤うだけだった。骨董品に関する物語・ヴァイオリン型のマッチケース

  • 骨董品に関する物語・携帯式の日時計

    曽祖父の遺品である精巧な携帯式の日時計は、どういう訳か地上のどの場所でも正確な時間を差す事がなかった。故に大概の人間は其れを只の装飾品と認識したが、その日時計を形見分けで貰った末の曾孫だけは辛抱f強く使える場所を探し続け、やがて探し当てた。但し見付けたのは彼の玄孫の代になってから、別の惑星でだった。骨董品に関する物語・携帯式の日時計

  • 幽霊その33・ずれ

    たかあきは先程、スーパーで、血塗れの老人の幽霊に出会い、何処に行けばいいのかと祝福されました。立派な鎧姿の爺さんを見た時、このスーパーは古戦場跡に建てられたのかとしか思わなかったが、友人に話したところ敷地の片隅に碑があるだろうと言われた。どうやらスーパーを建てる際に碑を移動して爺さんは置き去りになったらしい。碑の場所まで誘導してやればいいのだろうが、俺にそんな力はない。幽霊その33・ずれ

  • 幽霊その32・送り猫

    たかあきは大昔、山奥で、ぼんやりした猫の幽霊に出会い、どうか連れて行ってくださいと号泣されました。親戚の家は昔から酷く猫に祟られているらしい。何でも今は離婚した嫁さんが大切にしていた猫を姑と結託した夫が山に捨てたのが原因だそうだが、そうだとしたら子どもの頃の私が山の中で出会い、そのまま後をついてきた猫が親戚の家の前でいきなり消えたことに関しては黙っていたほうが良さそうだ。幽霊その32・送り猫

  • 幽霊その31・女心の未練と言えば

    たかあきは旅行中、山奥で、どこかで見たことのある女性の幽霊に出会い、放っておいてくださいとお願いされました。旅行で訪れた山の中で出会った幽霊は、数年前に行方不明となった同級生に良く似ていた。よもやこの辺で亡くなり成仏できないでいるのかと思っていたら、自分の事は忘れてくれと頼まれた。何でも逃げられた心中相手を忘れられず、いつか戻ると信じて待っているのでこの地を離れられないのだそうだ。幽霊その31・女心の未練と言えば

  • 骨董品に関する物語・1850年の「初級天文学」

    錬金術が人心を惑わし国を揺るがす重罪とされた時代、師匠は貴重な蔵書を焼き捨てられる寸前で生涯に亘る研究成果を書き遺し、一冊の本に纏めた。一見すると普通の天文学に関わる内容の本は、時代を経て学問の自由が保障されたこの時代に、真の内容を紐解かれることを切望している。骨董品に関する物語・1850年の「初級天文学」

  • 骨董品に関する物語・書籍「天空の驚異」1910年ベルリン製

    見事な装丁だろうと伯父さんが見せてくれた、天空について詳しく書かれた美しく分厚い本には、確かに沢山の美しい図版が掲載されていたが、私が感嘆したのは、むしろ何頁の何処に白鳥画、金星に関する記述は何頁などと、その図版の全ての内容を書き写し頭に叩き込んだという叔父の記憶力だった。骨董品に関する物語・書籍「天空の驚異」1910年ベルリン製

  • 骨董品に関する物語・書籍「女神と妖精-神話上の女性の歴史-」

    彼に言わせると、男にとっての女神は須らく死神であるのだそうだ。物理的な死に誘うだけでなく、日常という檻の中で常識という鎖に繋がれ半分死んだような熱情のない生活を送るのも、女神に囚われ飛べなくなった哀れな男の末路なのだと。だから私は女神であることを止め、彼を解き放ち自由にしてあげることに決めた。骨董品に関する物語・書籍「女神と妖精-神話上の女性の歴史-」

  • 幽霊その29・開戦宣言

    たかあきは旅行中、お墓で、生きてる人間と変わらない幼女の幽霊に出会い、家族に会いたいと祝福されました。旅先で、公園と勘違いして入り込んだ霊園の一角に佇んでいた幼女の幽霊は、考えてるだけじゃ何も変わらないよと言って消えた。周囲の人間にどれだけ言われても響かなかった言葉を嚙み締めた私は、早々に旅行を切り上げ実家に戻って戦いを始め、最終的に独りきりの勝利を勝ち取った。再びあの霊園を訪れたら、また、あの子に会えるだろうか。幽霊その29・開戦宣言

  • 幽霊その29・置き去り幼女

    たかあきは友人が亡くなった日、公園で、元気な幼女の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと泣かれました。葬式の帰り道に公園で、あのお兄ちゃんいなくなっちゃったの?と泣かれた。そう言えばアイツは最近可愛い女の子と仲良くなったと喜んでいたが、相手が幼女で更に死人というのは問題があり過ぎないだろうか。それにしても、死んだ人間は必ずしも逝きたい場所で会いたい相手に会える訳ではないようだ。幽霊その29・置き去り幼女

  • 幽霊その29・消えない遺恨

    たかあきは全てを失った日、友達の家で、恨みがましい犬の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいとお願いされました。俺の住んでいたアパートが全焼した日の晩、泊めてくれた友人の部屋で見覚えのある犬と再会した。実家が全焼した日の晩にも現れた、明らかに生きた犬ではないと分かる凄惨な外見をしたそいつは『マダマダオワラン』と囁いて消えた。ちなみに、父はこの犬の正体について何か心当たりがあるらしいのだが、頑として口を割らない。幽霊その29・消えない遺恨

  • 幽霊その28・お引越しに寄せて

    たかあきは先程、お墓で、ぼんやりした老人の幽霊に出会い、何処に行けばいいのかと微笑まれました。家がなくなってしまいましてね、半分透けた姿の老人はそう言って困ったように微笑んだ。多分、今まで祀られていた祠が移動されたことを言っているのだろうと判断して新居となる祠に案内したら丁寧に礼を言われた。一体どこの馬鹿が現在は穏やかな気質とはいえ紛れもない祟り神の祠を移したんだ全く。幽霊その28・お引越しに寄せて

  • 幽霊その27・相性よりも深い問題

    たかあきは先程、スーパーで、見知らぬ猫の幽霊に出会い、家族に会いたいと呪われました。何でスーパーに猫がいるのだろうとジロジロ見たのが悪かったのか、その半分透けた猫は私に憑いてきた。私ではどうしようもないので猫好きの友人宅まで連れて行くと、是非ともうちで暮らそうと誘ってくれた。が、猫に元の飼い主でなければ嫌だと断られ落ち込みまくり、気の毒なので猫缶を大量に贈った。幽霊その27・相性よりも深い問題

  • 骨董品に関する物語・黄金色のベルベットに銀のモノグラムで飾られた豪華なアルバム

    曾祖母はとても豪華な装丁のアルバムを持っていて、たまに私にも写真を見せてくれた。昔の写真はカメラの性能上、被写体の瞬間ではなく硬直した一定時間を残すものだったので、ここにある写真は家族の時間の表層ではなく、永遠に固められた欠片たちなのと懐かしそうに彼女は言う。骨董品に関する物語・黄金色のベルベットに銀のモノグラムで飾られた豪華なアルバム

  • 幽霊その26・それぞれの家庭の事情

    たかあきは旅行中、スーパーで、ぼんやりした男性の幽霊に出会い、あなたに取り憑いていいですかと泣かれました。自分一人ではここから動けないんです、お願いだから連れて行ってくださいと泣き付いて来た半分透けた姿のビジネスマンの事は私も知っていた。妻子に逃げられ独り暮らしを始めた矢先に亡くなった男性の境遇は気の毒だと思うが、とりあえずなぜ妻子に逃げられたのか自分で気付くまでは周囲の助力も無駄だ。幽霊その26・それぞれの家庭の事情

  • 骨董品に関する物語・オパールセントガラスのアペリティフプレートとボトルコースター

    滅多に酒を飲まない友人が今日は付き合えと言ってグラスとワインボトル、それに星の意匠が刻まれた虹色硝子製のコースターを卓に置いた。見事な細工に出自を尋ねると錬金術師だった奴の祖父が貴重な星の欠片を砕いて作り、星が常に空にある事を忘れた時に使えとくれたのだと言う。骨董品に関する物語・オパールセントガラスのアペリティフプレートとボトルコースター

  • 幽霊その25・遺されたひとびと

    たかあきは誕生日に、お墓で、いかにもな大人の幽霊に出会い、コレを渡して下さいと懇願されました。霊園を歩いていると、広いエリアに建てられた立派なお墓が雑草に覆われていることがたまにある。そういう場所には祀られた住人らしい方が寂しげに佇んでいたりするが、この前は私に気付いて鍵のようなものを渡そうとしてきた。多分、彼は身内の誰かが墓を訪れ、この鍵を受け取る日を此処でずっと鍵を手にしたまま待つのだろう。幽霊その25・遺されたひとびと

  • 幽霊その23・寂しい誕生日

    たかあきは誕生日に、公園で、生きてる人間と変わらない犬の幽霊に出会い、コレを渡して下さいと号泣されました。アパートへの帰り道、いつも通りに近道の公園を横切っている途中に犬耳の生えた幼児に呼び止められ、案内されるままについて行くと、死んで間もない子犬の骸を見付けた。どうやら自分を人間と思っていたらしい骸から首輪を外し、書いてあった電話番号に連絡を入れると飼い主に号泣しながら感謝され、それが今日、他人から貰った僕の誕生日プレゼントとなった。幽霊その23・寂しい誕生日

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