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カケラノコトバ https://blog.goo.ne.jp/aonekotei_ibun

たかあきによる創作文置き場です。 メインはお題を使ったショートショートですが、たまに長編も載せます。 ジャンルは主にファンタジー寄りのホラーやSFです。

青猫亭たかあき
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2019/04/29

  • 骨董品に関する物語・菫模様のエッグスタンド

    卵の茹で具合と食べ方に対して異様なまでの執着を示す悪友に、俺が課題で作ったエッグスタンドを欲しいと言われた。失敗作だからこれは駄目だと何度も断ったら勝手に持っていかれた。ちなみに失敗作だったので奴が使ったら妙なものが孵ったそうだが、取り合えず俺のせいではないと思う。骨董品に関する物語・菫模様のエッグスタンド

  • 骨董品に関する物語・木版画のたっぷり入った「初級天文学」

    学生時代の級友に、数学と天文学が得意と言うよりは愛していると称するべき相手がいた。この曖昧な世界に於いてそれらは揺るぎない法則であり、世界を読み解き神に近付く手段であるのだと。だが奴は若くして事故で命を落とし、遺された本には天使を思わせる白い羽が挟まれていた。骨董品に関する物語・木版画のたっぷり入った「初級天文学」

  • 骨董品に関する物語・世界中の女神や妖精を手彩色図版で紹介した「女神と妖精 神話の女性史」

    幼い頃に母を亡くしたという作家の描く女性は幽玄かつ儚い、そして時には心臓を掴まれる程に艶めかしい存在であり、筆名も相まって特に年若い読者は作者に美しい女性の姿を連想するらしいが、現在残る作家の写真には、線こそ細いが髪を分け眼鏡を掛けた中年男性の姿が映っている。骨董品に関する物語・世界中の女神や妖精を手彩色図版で紹介した「女神と妖精神話の女性史」

  • 春の創作怪談・桜鬼

    桜は死者の霊魂が宿りやすい樹木で、花が咲く時期になると生前の姿に似た鬼が現れることがある。そんな桜鬼は桜に見惚れる人の心を空っぽになる間で喰らい尽くし、花が散ると再び眠りにつくのだそうだ。そして心を喰われた人は、虚ろとなった心を抱えて再び花の季節を待つのだと言う。春の創作怪談・桜鬼

  • 骨董品に関する物語・ビーズのオペラバッグ

    一粒一粒に月光を封じる際、どれだけ綺麗であろうと他の輝きと調和の取れないビーズは使えないので、バッグを造る際はそこに一番苦労しましたと誇らしげな表情で報告してくる学生は人間より遥かに長い時間を生きる種族だったので、当然のように締め切りや納期の概念も異なるようだ。骨董品に関する物語・ビーズのオペラバッグ

  • 骨董品に関する物語・ユーモラスなエスカルゴピック

    蝸牛を喰ったことは無いが蝸牛に喰われた男の話なら知っていると奴は言った。外周を回れるような小さな無人島に漂着した男が、そこに一頭の巨大な蝸牛を発見して当初は面白がって殻に乗り遊んでいたりしていたが、やがて鈍重な蝸牛は着実に男を追い詰め、終いには針が並んだような舌で男の肌をぞりぞりと舐めながらという辺りで、俺は奴の話を無理やり殴って止めさせる。骨董品に関する物語・ユーモラスなエスカルゴピック

  • 骨董品に関する物語・デコラティブで豪華なバルボディーヌの水差し

    大枚を大枚を叩いて購入した骨董品が夜中に歩き回って困ると言う悪友の言葉に人形か甲冑でも購入したのかと思って家を訪ねると、随分と手の込んだ立体装飾が施された猫足付きの水差しを見せられた。移動するのは構わないが飾った花を撒き散らされるのが困るとぬかす奴の眼は完全に本気だった。骨董品に関する物語・デコラティブで豪華なバルボディーヌの水差し

  • 骨董品に関する物語・小型の聖遺物入れ、ルリケール

    祖母が渡してくれたケースにはリボンで飾られた小さな細工物が収められていた。これは聖なる残滓、奇跡の欠片、ただし効果は一度だけだという言葉の意味をその時の私は分からなかったが、ある日事故に巻き込まれかけて九死に一生を得た私が家に帰った時に、細工物は砕け散っていた。骨董品に関する物語・小型の聖遺物入れ、ルリケール

  • 幽霊その59・泣き続ける少年

    青猫亭たかあきは昨日、学校で、見知らぬ少年の幽霊に出会い、三丁目の田中さんを見ませんでしたかと号泣されました。僕よりやや年少に見える子供は、校門の前で道が判らないと泣き続けていた。恐らくは何度帰り道を辿っても家に辿り着けないのだろう。無理もない、少年の服装から察するに彼はもう十年以上、彼が生きていた頃とはすっかり変わってしまった道を、今はもう存在しない自分の家を目指しているのだろうから。幽霊その59・泣き続ける少年

  • 幽霊その58・佇む人

    バスを待っていると何となく透けた車両が停まった。とりあえず私は乗らずに前に並んでいた透けた人たちを見送って次のバスを待っていたが、何故か一人だけ残っていた透けた人があいつはまだ来ないなどとブツブツ呟いていたので知らない振りをした。この人はあいつが来るまでこうしているのだろうか。幽霊その58・佇む人

  • 骨董品に関する物語・プロイセンの讃美歌集

    自らを異教徒と称する祖父は両親が崇める神を崇拝せず、神を称える芸術からも背を向けていた。祖父は優しい人だったので、私はその美しさを理解して貰おうと何度も讃美歌を歌って聞かせたが、祖父は寂しげに微笑みながら儂が進んできた道はその美しさを許容できないと答えるのだ。骨董品に関する物語・プロイセンの讃美歌集

  • 骨董品に関する物語・ドイツラウシャ村製、最高品質ガラスの義眼

    当然だが通常は義眼の瞳が焦点を結ぶことはない、だが目の前に置かれた箱に収められた鳶色の義眼は何故か明らかに僕を見詰めていた。薄い硝子製の細工に魂が宿る理由は一つしか考えられなかったので、この義眼の出所、と言うか本来の持ち主については出来るだけ考えないことにした。骨董品に関する物語・ドイツラウシャ村製、最高品質ガラスの義眼

  • クリスマスプレゼントを君に

    クリスマスプレゼントを君にそれは、まだ私がサンタを信じなかった頃。仕事で忙しかった両親は娘の私と季節の行事を過ごす暇もなく、誕生日もクリスマスも日付を遥かに超えてから買い物に連れて行かれ、自分で好きなものを選ぶように促された。とは言え両親の多忙は理解していたつもりだし、時期が遅れてもきちんとプレゼントを貰えるだけマシだなどと醒め切った事を考えながら嬉しそうな顔をしてみせる、今考えると嫌な子供だったと思う。***その年のクリスマスイブ。相変わらず両親は忙しく、私は渡されたお金で夕飯を済ませることになった。幸い近所のスーパーやコンビニにはクリスマス仕様のチキンやケーキ、オードブルなどが沢山売られていて、目移りしながら買い物を済ませて店を出ると、空から大粒の雪が降ってくる。おまけに風の音も響いて来たので急いで家...クリスマスプレゼントを君に

  • 骨董品に関する物語・ムーンストーンをあしらった蠍のブローチ

    「赤い目玉の蠍」は、とある童話作家が作詞した星巡りの歌の一節だが、友人が錬成したのは青い躰の蠍だった。これは赤い炎より青い炎の方が高温となる故、秘められた静かだが烈しい感情を表現しているのかと思ったら、何でも子供の頃に捕まえた真っ青なロブスターがモデルだそうだ。骨董品に関する物語・ムーンストーンをあしらった蠍のブローチ

  • 骨董品に関する物語・鬼芥子の十字架

    欧州を旅行した画家が道中に出くわした野生の芥子畑は実に見事だったという。ただし、赤い絨毯のように広がる一見は可憐な花々の茎は思いのほか頑丈なので素手で手折るのは難しいと。だが、考えてみると確かに自然という存在は人間に容易くその美しさを奪い去らせるほど寛容ではない。骨董品に関する物語・鬼芥子の十字架

  • 骨董品に関する物語・ドイツ製の祈祷書

    最愛の良人を亡くした祖母は、死は終わりではないと形見の祈祷書を手に微笑んだ。私があの人の事を忘れずに様々な形で思い出を紡ぎ続ける限り、あの人が消えてしまったりはしないのだと。やがて私がこの世を去る事になっても、今度は私の愛した人が同じように私を語り継ぐだろうと。骨董品に関する物語・ドイツ製の祈祷書

  • 骨董品に関する物語・フルール・ド・リスのシャトレーン

    母は普段から緻密な細工の入った金属製の容れ物を腰に下げていたが、そこに何が入っているのかを尋ねても何故か教えてくれなかった。やがて母が病に倒れ、そのまま還らぬ人になってから初めて開いた容れ物には、見覚えのない男性のスペルが刻み込まれた古い鍵と石の外れた古い指輪。骨董品に関する物語・フルール・ド・リスのシャトレーン

  • 骨董品に関する物語・サン・ヴァンサンの星

    ある日、星型の石を丘の上で拾った。きっと空から降ってきたに違いないと装飾品に仕立てて師匠に見せると、それは星の海からもたらされたものではなく、かつて太古の海に群生していた百合の欠片だと教えられた。星はしばしば人が焦がれる高みではなく、足元に広がる世界で生まれる。骨董品に関する物語・サン・ヴァンサンの星

  • 骨董品に関する物語・薔薇色のボンボニエール

    最初に一番好きな味のお菓子を入れると透明な器が薔薇色に染まり、以降に入れるお菓子が全て同じ味になる。そうやって長い間一番好きな味を楽しんできたが、やがて自分の一番好きな味が変わり薔薇色だった器が透明に戻った頃、私は次の相手に菓子器を譲る順番が来たことを悟った。骨董品に関する物語・薔薇色のボンボニエール

  • 骨董品に関する物語・サテュロスとエロースの宝石箱

    錬金術アカデミーに通う学生は色々な意味でフリーダムな連中が多いが、課題を仕上げる手段や材料も実に多彩だ。例えば幻獣や天使モチーフを制作物にあしらう学友は自分で捕獲した本物を加工して使用する。それはいいのだが、期末課題の材料を調達しに行ったきり一月ほど戻らない。骨董品に関する物語・サテュロスとエロースの宝石箱

  • 骨董品に関する物語・赤いベルベットの額

    深紅の天鵞絨に良く似た質感の素材を使って完成させた錬金術学科自由課題提出用の額を盗まれた。面倒なことになったと頭を抱えていると案の定、酷い爛れに顔や両手を覆われた級友が医務室に担ぎ込まれ、結局、毒茸の美しさを極限まで引き出した俺の錬成作品は再提出を命じられた。骨董品に関する物語・赤いベルベットの額

  • 晩夏の創作怪談・祟る

    祟る家は概ね、拒むか誘うかのニ種類だと彼は言った。前者は侵入者を異物として徹底的に排除すことで障る。後者は招き入れた侵入者を糧として更に祟りを広げる。どちらも逃げ切る方法や才覚が無いのなら近づかないのが唯一無二の祟りを避ける方法だが、それに気付いた時は大体が手遅れだ。晩夏の創作怪談・祟る

  • 骨董品に関する物語・亜麻色の髪が納められているペンダント

    彼女はとても用意周到な女性で、旅に出る前に何時でも貴方と共に在りますと誓いながら、自慢の髪を一房切り取って編み上げたものをブローチに収めて私に託してきた。だから彼女が乗った船が沈み、骸さえ戻らぬと分かった日から私はペンダントに加工したブローチを常に身に付けている。骨董品に関する物語・亜麻色の髪が納められているペンダント

  • 骨董品に関する物語・ドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの "Theodor Müller-Hipper" の硝子義眼

    事故で左眼を失った伯母様と再会した日、とても精巧な義眼が左眼に嵌っていたので、その眼は視えるのですかと馬鹿なことを尋ねてしまった。すると伯母様は微笑みながら、この瞳で再び視えるようになったのは私ではなく、今まで存在していた私の瞳を見失った周りの人々なのよと言った。骨董品に関する物語・ドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの"TheodorMüller-Hipper"の硝子義眼

  • ドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの "Theodor Müller-Hipper" の手による硝子製義眼

    よく目は心を映し出す鏡と言われるけど、義眼を見ても明確な意志を感じないのは人間の眼窩に嵌っていないからかな、などと不気味な事を彼は言ったが、そもそも鏡に明確な意志は無い。映るのは鏡を覗き込んだ己の姿でしかなく、そこに化け物が映っていたら後はもう狂うしかない。ドイツ、チューリンゲン州、ラウシャの"TheodorMüller-Hipper"の手による硝子製義眼

  • 夏の創作怪談・晩夏の匂い

    入浴中、いつもの習慣で体を洗おうと手に取った石鹸に鼻を近付けると、いきなり青臭さに煙が混じったような匂いにむせそうになる。一瞬で消えたその匂いは、よく考えると久しく帰っていない実家の仏間に立ち込める線香のそれにそっくりで、そういえば今日からお盆だったなと思い出した。夏の創作怪談・晩夏の匂い

  • 骨董品に関する物語・星の散りばめられたデキャンタ&リキュールグラス

    義兄は私の母に毒を盛られていた時期があると言う。確かに幼い頃に体が弱かった義兄は毎晩薬を飲んでいた筈だが、実はその薬をこっそり、母に取り上げられた祖母の形見の器に酒と一緒に混ぜておいたのだそうだ。やがて義兄は健康になり母は亡くなったが、今度は私の番なのだろうか。骨董品に関する物語・星の散りばめられたデキャンタ&リキュールグラス

  • 骨董品に関する物語・素晴らしい箱入りの祈祷書(19世紀フランス製)

    母は豪華な装丁の箱入り祈祷書をとても大事にしていて、年に数度決まった日に箱から取り出して丁寧に頁をめくっていた。それは祈祷書の寿命を使い切ってしまわない為だと言っていたが、それ故に私は形見として残された祈祷書の寿命を私が使い切る事を恐れて手放すことを決めた。骨董品に関する物語・素晴らしい箱入りの祈祷書(19世紀フランス製)

  • 骨董品に関する物語・渾天儀のオブジェ

    昔、欧州で天文学は占星術と同じものだった。人々は星の動きに自らや世界の運命を読み取ろうと天空の観察を重ね、やがて其処に明確な規則性を見出した。そして皮肉にもその規則性を追求し続けた結果として、占星術は錬金術と同じように近代科学の範疇から弾き出される事になった。骨董品に関する物語・渾天儀のオブジェ

  • 骨董品に関する物語・クリスタルガラスのフレームとシガレットカードのセット

    どのようなものでも相応の場は存在するものだが、時には本来全く関わりのなかったものが重なり合う事で素晴らしい場が構築される事もある。ただ、特に人間の場合は望んだ場所に相応の場が与えられるとは限らず、奇跡的に重なり合ったものたちが構築する素晴らしい場を、ただ羨望しながら見詰めるしかないのだ。骨董品に関する物語・クリスタルガラスのフレームとシガレットカードのセット

  • 幽霊その57・愛憎の彼方へ

    たかあきは失恋した日、コンビニで、かなりグロい女性の幽霊に出会い、家族に会いたいとお願いされました。ちょうど失恋で落ち込んでコンディションが最悪だったせいか、普段は視得ない相手と目が合ってしまった。かなりのダメージを負ったらしくドロドロの格好をした相手は確か近所のお嫁さんで、亡くなったという話は聞かないんだがと思って帰ろうとしたら付いて来た。結局お嫁さんは婚家に戻ったが、あのお嫁さんが生きていようと既に死んでいようと、きっとあの家ではこれから凄惨な修羅場が訪れることになるだろう。幽霊その57・愛憎の彼方へ

  • 夏の創作怪談・発車します

    マッチ箱のような車両がホームに滑り込んで停車すると、車掌が降りて切符の提示を求めてきた。私は切符を持っていなかったのでそう答えると車掌は無言で車両に乗り込み発車する。後に残されたのは廃墟となって久しい雑草に覆われたホームと、ずっと昔から何処にも行けなくなった私だけ。夏の創作怪談・発車します

  • 骨董品に関する物語・「煉獄からの魂の解放」というタイトルのホーリーカード

    キリスト教における煉獄は断罪の場である地獄とは異なり、贖罪の場であるという。永劫とも思える苦しみの中、それでも扉を開いて道を進んでいくものだけが、やがて天国へと至れるのだと神父様は仰った。そうだとしたら、大罪を犯し今は煉獄に在る筈の彼の魂もいずれは解放されるのだろうか。骨董品に関する物語・「煉獄からの魂の解放」というタイトルのホーリーカード

  • 骨董品に関する物語・星と少年の描かれたチョコレートカード

    星の輝く夜空を見上げながら友達と語り合った幼い頃、世界には夢や希望で溢れ返っているように思えた。やがて数え切れないほどの裏切りと忘却を経て辿り着いた、無彩色の大人の世界で生きるようになった今でも、決して叶いはしないと知りながら夢や希望を捨てきれず星を見上げてしまうのは何故だろうか。骨董品に関する物語・星と少年の描かれたチョコレートカード

  • 骨董品に関する物語・アクアブルーのボンボニエール

    少しばかり極端な思考を有する錬金術学科首席の彼は、容器に収めた菓子に自らが構築した唯一無二の美味を付与する菓子器を錬成した。それは確かに天上の味覚と持て囃される程の美味ではあったのだが、残念なことに大概の人間は実にあっさりと、その単一極まりない美味に飽きた。骨董品に関する物語・アクアブルーのボンボニエール

  • 骨董品に関する物語・マイクロモザイクの十字架

    神は細部に宿り給うという言葉があるが、それがどのような小さきものでも神の御業の奇跡が宿るものだと取る者もいれば、大き過ぎる神の奇跡を人間が可能な限り正確に捉える為には、その掌に乗る程に小さな御業を確かめれば良いと取る者もいて、恐らくはどちらの考えも正解なのだ。骨董品に関する物語・マイクロモザイクの十字架

  • 骨董品に関する物語・手描きの水彩画で動物のカップルが描かれた小さな額

    悪魔に妻を鶏の姿に変えられた男は、幸せになる為にどうしたと思う?と尋ねてきた彼に対して私は、悪魔と戦って妻の元の姿を取り戻すと答えた。彼にとっての正解が妻と共に鶏として暮らすであることは承知の上で、決してそれを正解と答えられなかった私は多分、最初から彼の敵だったのだ。骨董品に関する物語・手描きの水彩画で動物のカップルが描かれた小さな額

  • 幽霊その56・愛別離苦

    たかあきは失恋した日、スーパーで、ちょっと溶けた感じに見える猫の幽霊に出会い、あの人に伝えて欲しいと誘われました。どんなに頑張っても上手くいかなかった恋愛に終止符を打った日、それでも普段通りにスーパーで買い物をしていたら少し前に虹の橋を渡った筈の友人宅で飼われていた猫に遭遇した。俺はもう逝くから飼い主にもう心配するな、猫缶も買わなくていいと伝えるように頼まれた今は、猫ですら愛着を断ち切って進んでいくのだと感心するしかない。幽霊その56・愛別離苦

  • 骨董品に関する物語・コルク栓の詰まった中身入り硝子瓶

    骨董市でコルク栓の詰まった硝子瓶が沢山並んでいたので中の小物を代わる代わる眺めていたら、一度に効くのは、せいぜいひと瓶だけですよと言われた。結局はそれぞれ違う物が入った瓶を五本ほど購入したのだが、一体何年くらい、何に効いてくれるのだろうかと今でも謎は解けない。骨董品に関する物語・コルク栓の詰まった中身入り硝子瓶

  • 骨董品に関する物語・髑髏の時計鎖・その2

    この世界に生きる者は例外なく、そいつの為だけに設えられた十三階段を昇りつめた先で死に至り土に還る。だが、例え骨だけになろうと俺が俺自身であった証はこうして残るだろう。奴はそう言って、古い懐中時計に繋げられた髑髏と指が一本多い左手の骨をあしらった鎖を見せてくれた。骨董品に関する物語・髑髏の時計鎖・その2

  • 骨董品に関する物語・髑髏の時計鎖

    医療技術が発達していなかった昔は、多指症と呼ばれる先天性の形状異常を抱えたまま生きる人が今より遥かに多かったのだと彼女は言う。確かに手袋は特注が必要だけど指輪を嵌める指が一本多いと考えれば少しは慰めになるかしらと呟きつつ撫でる彼女の右指には、古い手術痕があった。骨董品に関する物語・髑髏の時計鎖

  • 骨董品に関する物語・メルキュール(マーキュリー)の印章・その2

    マーキュリー(水銀)は古代中国において外見や防腐性から不死の薬とされ、欧州の錬金術師にとっても霊薬の原料だった。そして確かに瀕死の身で主人に秘薬を与えられた男の肉体の血管はそのまま残ったが、それは死に対する生の勝利とは成り得ず、ただ呪われた姿を永遠に晒しているに過ぎない。骨董品に関する物語・メルキュール(マーキュリー)の印章・その2

  • 骨董品に関する物語・メルキュール(ヘルメス)の印章

    ヘルメスは商人や旅人だけでなく、同時に医学や泥棒の守護神でもあるのだと彼女は言った。それは恐らく疾風の如き迅速さで事を為すだけでなく、しばしば運命と呼ばれる死神が刈り取ろうとする生命を掠め取り、人の世に留める為の職能でもある。だから医者である自分は地獄行きに違いないと寂しそうに呟く。骨董品に関する物語・メルキュール(ヘルメス)の印章

  • 幽霊その54・棚に飾られた少女

    たかあきは先程、骨董品店で、恨みがましい幼女の幽霊に出会い、一緒に逝きませんかと号泣されました。その少女は、骨董品屋の硝子棚に飾られた陶器製の人形に憑いているというよりは既に一体化していた。もはや自我もかつての記憶も人形に溶け込みヒトとは言えない存在となった状態の少女は、それでも最後に残った欠片ばかりの意識の中、いずれは訪れる筈の己が解放される日を、ただひたすらに待ち続けていた。幽霊その54・棚に飾られた少女

  • 幽霊その54・座る女

    たかあきは大昔、バス停で、むっちゃ怖い女性の幽霊に出会い、放っておいてくださいと頼まれました。若い頃、通勤に使っていたバスは右後部の二人掛け座席を利用する人が殆どいなかった。まあ普通の人には見えないとしても怨念溢れる表情の女性が窓際に座っている以上無理もないことで、私もなるべく避けていた。ある日、賑やかな男性が恋人らしい女性とその座席を利用してはしゃぎ回ったた時は降りる迄冷や冷やし通しだった。もっとも彼女は翌日も憤怒溢れる表情でバスに乗っていたので何だか複雑な気分になった。幽霊その54・座る女

  • 幽霊その53・通りすがりの案内者

    たかあきは今この時、遊園地で、哀しげな男性の幽霊に出会い、あなたに取り憑いていいですかと嗚咽されました。連休中に遊びに来た遊園地で、一緒に歩いていた母がいきなりベンチに座り込んだ。気分でも悪くなったのかと思ったら通りすがりのサラリーマンに憑かれそうになったそうだ。家庭をないがしろにした後悔から成仏できなかった男は光を示すと礼を言って消えたらしく、素直な相手で良かったと母は平然と言ってのける。なお、もしそうでなかったら消えて貰わなければならなかったと続いた言葉は聞かなかったことにした。幽霊その53・通りすがりの案内者

  • 幽霊その52・佇む老婆

    たかあきは旅行中、道端で、恨みがましい老婆の幽霊に出会い、放っておいてくださいとお願いされました。誰にも姿を気付かれぬまま路傍に立ち尽くす老婆は凄まじい怨念を放っていたが、それは無差別ではなく老婆の知るであろう何かに向けられたものであり、老婆はそれが現れるのをただ待っているようだった。だから私は過去に何があったかは考えず、もちろん老婆と意思を通じようとも思わぬまま、黙ってその場を後にした。幽霊その52・佇む老婆

  • 幽霊その51・恐らくは小袖の手

    たかあきは昨日、廃墟で、知り合いの洗濯ものの幽霊に出会い、恨みを晴らしてくれと聞かれました。この辺では有名な幽霊が出るという廃墟に無理やり連れて行かれた友人は、事故死した姉の形見だった大事なジャケットをはぎ取られた姿で帰ってきた。あそこにはもう行きたくないと泣くので俺が取りに行ってやったら、ジャケットはズタズタに破かれて破片が散らばっていた。どうやら友人を護った結果らしく、もともと此処にいた筈の質の悪いヤツは気配もろとも消えていた。幽霊その51・恐らくは小袖の手

  • 幽霊その50・人違い

    たかあきは全てを失った日、病院で、むっちゃ怖い人形の幽霊に出会い、三丁目の田中さんを見ませんでしたかと頼まれました。病院で目覚めると眼前に焼け焦げた人形が憤怒の表情で浮かんでいた。家が燃えたのはコイツの仕業かと見当をつけていると私とは違う名前で呼ばれたので、アンタが探しているのは三丁目の田中だと教えたら即座に姿を消した。次の日、三丁目で大火災があったとニュースで知ったが深く考えないことにした。幽霊その50・人違い

  • 骨董品に関する物語・1930年代のイギリスのゲーム"Panto People"

    子供の頃、家にはお伽噺をモチーフにした一組のゲームカードがあった。汚すからと滅多に触らせてもらえなかったが、見詰めていると描かれている登場人物が朗々と自分たちの物語を語ってくれるのがとても楽しかった。やがて大人になるとカードはいつの間にか何処かに行ってしまったが、両親は元々あのカードに朗読機能など搭載さていなかったという。骨董品に関する物語・1930年代のイギリスのゲーム"PantoPeople"

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