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2019/03/26

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  • ブログの引越し

    いつも御覧くださり、どうもありがとうございます。gooブログサービスが2025年11月18日で終了となりますので、以下のHatenaブログへ引越しすることにしました。ブログ名:レコードを聴く猫URL:https://leomay.hatenablog.com/?_gl=1*jqjw8p*_gcl_au*MTQzMjEzNTM1Ni4xNzQ4ODIxMzk2現行のブログ名は長ったらしいので、改名することにいたします。また、器のサイズの違いから写真が2段になったり改行位置のズレで文章が途中で切れたりするなど、過去記事が読みにくいことになっていますが、分量が多くすぐには修正しきれませんので、当面はご容赦ください。もしよろしければ、引き続きご愛顧いただけると幸いです。(ブックマークの変更もお願いいたします)今後...ブログの引越し

  • 70年代の佳作たち

    BennyAronov/ShadowBox(米ChoiceRecordsCRS1021)このベニー・アロノフというピアニストは70年代になってリーダー作が出るようになったのでそういう世代の人なのかとばかり思っていたが、どうやら50年代からプロとして活動していたらしい。50年代はロサンゼルスのライトハウスで、60年代に入るとニューヨークで、ときちんと主流派の道を歩んでいる。ただ目を引くアルバムとなると、これを含めてごく数枚くらいしかなく、基本は裏方としてのキャリアだったようだ。でもこのアルバムを聴くとそのスジの良さに驚かされるわけで、もう少し脚光を浴びてもよかったんじゃないかと思ってしまう。既にベテランの域のボブ・ブルックマイヤーと若きトム・ハレルの2管にバスター・ウイリアムスとジョー・ラバーベラのリズム隊...70年代の佳作たち

  • パウエル最晩年の姿

    BudPowell/Ups'NDowns(米MainstreamRecordsMRL385)録音時期や経緯などがはっきりしていないのでパウエルを語る上では無視されているレコード。一応、晩年のパリ滞在から帰国して1966年に亡くなるまでの2年間のどこかで録音されたということになっていて、レコードがリリースされたもの70年代に入ってからだった。この時期のパウエルは業界からは完全に忘れられていたし、モノラル録音なので正規のレコーディングではなかったのだろう。でも、その割には音はよくて、問題なく普通に聴ける。ライヴ演奏もあれば観客の拍手のない演奏もあるので複数のセッションのミックスのようだが、ベースとドラムがパウエルの運指の状況に注視しながらリズムを慎重に設定している様子が手に取るにわかる。体調の悪いパウエルに合...パウエル最晩年の姿

  • Frank Haynesの演奏が聴ける貴重盤

    RandyWeston/Blues(米TripTLP5033)幻のテナー奏者としてフランク・ヘインズはレコード・コレクターには知られた存在である。37歳という若さで亡くなり、リーダー作がなく、客演もごくわずかしかないが、その参加したアルバムがたまたまコレクターが有難がる稀少盤だったおかげで、一部のマニアの注目を集めることになった。そういう無名のミュージシャンはそれこそ星の数ほどいただろうが、彼の場合は、そういういびつな形ではあったが、不幸中の幸いだったのかもしれない。公式アルバムの中で彼の演奏が聴けるのはデイヴ・ベイリーの諸作やレス・マッキャンのアルバムだけだが、それ以外に未発表録音の掘り起こし盤で聴くことができる。未発表となったのには、録音したはいいが経営不振でレーベルが倒産したり、そもそも契約関係がい...FrankHaynesの演奏が聴ける貴重盤

  • 大人の時間が流れる唯一のヴォーカル作

    DonElliott/Sings(米BethlehemRecordsBCP15)複数のいろんな楽器を演奏する人は他にもいるが、歌まで歌ってしまう人は珍しい。ミルト・ジャクソンもピアノを弾いたり歌を歌ったアルバムを残しているが、マルチ振りはドン・エリオットの方が1枚上手だろう。手にメロフォンを持っている姿が写っているが、この日はボーカルだけのセッションとは別にメロフォンだけを演奏したインストのセッションも同時に録音していた。彼のヴォーカルは他のアルバムでも所々で聴くことはできるが、ここでのボーカルは徹底した2枚目路線で行っており、コロンビア時代の若きシナトラのような優しいクルーナー・スタイルで歌っていて、これが聴かせるのだ。決して上手い歌唱というわけではないのだが、かえってその方が好ましいと感じさせるところ...大人の時間が流れる唯一のヴォーカル作

  • 古き良き時代のレコード

    TheDonElliottQuintet(米RCAVictorRecordsLJM1007)器用貧乏の最右翼と言えば、ドン・エリオットである。トランペット、ヴィブラフォン、メロフォン、ボンゴ、ヴォーカルまでこなし、挙句の果てはリスがスキャットするレコードまで存在するが、この手の人の常でこれといった決め手が見当たらない。器用にいろんなことをこなすが、結局のところ、広く浅くで終わっているように思う。芸術として人の心を動かすには多かれ少なかれある種の「極み」が必要なんだろう。それがなければ、言い方は悪いかもしれいが、エンターテインメント留まりとなるのはどうやら確かなようである。長くレコード漁りをしているのでリーダー作に接する機会は多く、気が向いたら手に取って聴いてきたがピンとこないものが多かった。どうもこの人の...古き良き時代のレコード

  • 無名の強者たちを率いて

    IraSullivanandTheChicagoJazzQuintet/BirdLives!(米VeeJayRecordsVJLP3033)1962年シカゴの"BirdHouse"で開かれたパーカーのメモリアル・コンサートにアイラ・サリヴァンが出た時の記録が残っている。シカゴ・ジャズ・クインテットとの共演となっているが、これがレギュラー・バンドだったのかどうかはよくわからない。地元のローカル・ミュージシャンたちで構成されたバンドだが、テナーのニッキー・ヒルはその後もサリヴァンと活動を共にしている。名前だけで判断しがちな我々をあざ笑うかのように、無名のミュージシャンたちが驚異的なレベルの高さで演奏を繰り広げる。スピード感といい、切れの良さといい、フレーズの滑らかさといい、楽器の音の張りの良さといい、どれも耳...無名の強者たちを率いて

  • アイラ・サリヴァンの実像

    BillyTaylor/IntroducesIraSullivan(米ABC-ParamountRecordsABC-162)アイラ・サリヴァンはワシントンD.C生まれで、成人してシカゴを拠点に活動し、60年代に入るとマイアミへ移住した。そのせいでレコード・ビジネスから距離があって、50~60年代のレコードがあまり残っていない。また、父親からトランペットを習い、母親からはサックスを習うという経歴から2つの楽器を同等に使うという特異な演奏スタイルで、聴き手からするとその実像が定まりにくく、ほとんどまともに評価されていない気の毒なミュージシャンの代表格だ。ジャズの世界では1人のミュージシャンが系統の違う複数の楽器を扱うというのは評価の面では分が悪い。その最たる例はタビー・ヘイズのヴィブラフォンで、彼の高額なレ...アイラ・サリヴァンの実像

  • モダンに寄った熱い演奏

    JoeNewman/JoeNewmanQuintetatTheCountBasie's(米MercuryRecordsMG-20696)カウント・ベイシー・オーケストラに在籍したミュージシャンがソロ活動でアルバムを作る際、その音楽はスイング系だったり中間派だったりする場合がほとんどなので、彼らはそういうタイプの音楽しかやらないのか(できないのか)と考えがちだが、カタログの中にはこっそりとモダンをやっているものがある。そして、そういうタイトルを聴くと、意外にも上手くモダンをこなしていることに驚かされることが多い。フランク・フォスターにしてもフランク・ウェスにしても、彼らのやったモダンの演奏はなぜか数は多くないけれどもどれも一級品で、私も愛聴している。ジョー・ニューマンもベイシー楽団に長く在籍してその腕を振る...モダンに寄った熱い演奏

  • 爽やかさがにじみ出る愛聴盤

    JimmyCleveland/AMapOfJimmyCleveland(米MercuryRecordsMG-20442)アーニー・ウィルキンスの編曲をベースに彼のフリューゲルホーン、ジェローム・リチャードソンのサックス、レイ・コープランドのトランペット、ドン・バターフィールドのチューバらとの多管編成で臨んだ何とも爽やかな傑作で、私の密やかな愛聴盤になっている。アーニー・ウィルキンスがリヴァーサイドでやっていた編曲は泥臭くて重い重奏が多かったが、ここでは楽器数が少ないこともあって響きが上手く整理されており、見晴らしがよく素晴らしい。重奏が前に出過ぎることなく各人のソロが充実していて、ジャズ本来の良さも活かされている。特に顕著なのが全体を覆う清涼感溢れる上質で独特な爽快さで、こういうメンバー構成ではなかなか想...爽やかさがにじみ出る愛聴盤

  • ジャズらしいマイナー感

    PepperAdams/TheCoolSoundOfPepperAdams(米RegentRecordsRMG-6066)1957年はペッパー・アダムスの当たり年だった。7月にMODEレーベル、8月にPacificJazzレーベル、11月にRegentレーベルに本アルバムを立て続けに録音している。それまでのキャリアは十分でミュージシャン仲間の間では評価が高かったが、ようやく世間一般に広く認知される時が来た、ということだろう。先の2作とは違ってこちらはハンク・ジョーンズ、ジョージ・デュヴィヴィエ、エルヴィン・ジョーンズがバックを固める東海岸の濃いジャズとなっていて、作風の対比が面白い。オジー・カデナはビ・バップ期から活躍していたオーセンティックなアーティストはサヴォイ、ハード・バップ期に頭角を現した新しめの...ジャズらしいマイナー感

  • ペッパー・アダムスの初々しい姿

    PepperAdams/Quintet(米ModeRecordsMOD-LP112)ペッパー・アダムスの自己名義のリーダー作としてはこれがデビュー作ということになる。1956年頃に西海岸に行った際にレコーディングの機会を得たのだろう。カール・パーキンス、ルロイ・ヴィネガー、メル・ルイスの鉄壁のトリオと実力者スチュ・ウイリアムソンを相方にした、メンバーに恵まれた幸先のいいデビューだった。既に完成された演奏技術で長いソロを吹き切る姿は圧巻。"Baubles,BanglesAndBeads"での疾走するロング・ソロは驚異的で、粒立ちのいい豊かな低音をこのスピードで吹き切ることができるのはこの人以外にはいない。バリトンということを横に置いても、サックスでここまでの演奏ができる人はなかなか見当たらないのではないだろ...ペッパー・アダムスの初々しい姿

  • CoolというよりMatureなヴァーヴ期

    LeeKonitz/VeryCool(米VerveRecordsMGV-8209)ヴァーヴ期のコニッツは"ウォーム"だと言われることが多いが、実際はアルバムによって表情がかなり異なっていて、簡単にそういう一言では括れない。トランペットとの2管編成であることやげんなりするジャケットからこのアルバムまで丁寧に聴く人はそんなに多くはないだろうが、このアルバムは非常に出来がいい。全編がトリスターノ・マナーとなっていて、言わばストーリーヴィル時代の音楽の発展形が記録されているのだが、時間の経過が音楽を更に成熟させているからだ。コニッツは1953年頃からサル・モスカ、ピーター・インドらトリスターノ門下生たちをバンドを組んでおり、そのメンバーでストーリーヴィルに録音を残したが、このバンドはその後もしばらくは活動を続けて...CoolというよりMatureなヴァーヴ期

  • ミンガスの盟友たちの実力

    ThePepper-KnepperQuintet(米MetroJazzE1004)ペッパー&ネッパーと韻を踏んだタイトルが如何にもという感じだが、おそらく2人がミンガスの下で演奏していた時の縁から作られたアルバムなのだろう。アダムスがドナルド・バードとグループを組む直前に録音されている。カラフルな色使いのデザインや下から見上げる構図が印象に残るジャケットだ。バックはウィントン・ケリー、ダグ・ワトキンス、エルヴィン・ジョーンズという豪華で珍しい組み合わせで、この3人の顔合わせは他にはあまり記憶がない。3人が3人とも独特の違うタイム感の持ち主だから一見すると水と油のようだが、これが素晴らしいドライヴ感とパワーで演奏を下支えしている。特にワトキンスのイン・テンポなベースが見事で、音楽に疾走感をもたらしている。ネ...ミンガスの盟友たちの実力

  • 都会の孤独と喧騒

    KennyBurrell/AsphaltCanyonSuite(米VerveRecordsV6-8773)ケニー・バレルはギター好きの私にとっては名盤だらけでどれを聴いても存分に楽しめるアーティストの1人だが、ヴァーヴ後期の中でも特に好きなものの1枚がこれ。バックが大編成なものは純ジャズではないと敬遠されるが、そうやって聴かれることがないまま時が過ぎ、いつまで経っても評価されずに埋もれていくアルバムの何と多いことか。ヴァーヴ後期には、エヴァンスを除いて、そういうアルバムが多数眠っている。タイトルからもわかる通り、都市生活者の孤独を静かに語るようなこのアルバムにはバレル特有の切ない音色の効果もあり、寂寥感に満ちた音楽が詰まっている。A面のすべてを使い切る組曲ではバックのオーケストラの伴奏は極限まで控えめでデ...都会の孤独と喧騒

  • ひねくれもののコーラス

    TheHi-Lo's/Listen!(米StarliteST135)TheHi-Lo's/IPresume(米StarliteST6005)TheHi-Lo's/OnHand(米StarliteST7008)TheHi-Lo's/IPresume(米StarliteST7007)TheHi-Lo's/UnderGlass(米StarliteST7005)TheHi-Lo's,andTheJerryFieldingOrchestra(米KappRecordsKL1027)ジャズのコーラス・グループと言えば何といっても1948年に結成されたフォー・フレッシュメンということになるが、そこから遅れること5年後の1953年に結成されたハイ・ローズの歴史はいかにフォー・フレッシュメンとは違うハーモニー・スタイルでやっ...ひねくれもののコーラス

  • 暖かい存在感

    LuckyThomson/FeaturingOscatPettiffordVol.1(ABC-ParamountRecordsABC-111)リーダー作のあまり残っていないラッキー・トンプソンの実像は分かりにくい。ビ・バップ時代から活動していてパーカーやマイルスとも共演していてメイン・ストリームの真ん中にいたが、キャリアを通じてレコード作りには積極的ではなく、早々に渡欧したこともありレコードがあまり残っていない。演奏スタイルもホーキンス/レスターとロリンズ/コルトレーンの中間にいるような感じだったし、音楽的にもハード・バップの波には乗らず独自の道を歩いたようだ。そういう彼の姿が割とよくわかるのがこのレーベルに残された2枚のアルバム。リーダー気質の強いペティフォードと組んだのでリーダー作としてのフォーカスが...暖かい存在感

  • 物真似は果たしてジャンクなのか

    JazzUniversity'sNewKicks/MorrisGrantsPresentsJ.U.N.K(米ArgoRecordsLP4006)大の大人たちが大真面目におふざけしたレコードだが、失笑して聴きながらも色々と考えさせられるところがある。ジャケットには明記されていないが、演奏しているのはJordanRamin(sax)、DocSeverinsen(tp)、BernieLeighton(p)、TriggarAlpart(b)、DonLamond(ds)たちで、ブルーベック・カルテット、マイルス・デイヴィス・グループ(キャノンボール・アダレイ、ジョン・コルトレーン)、エロール・ガーナー、オーネット・コールマン(ドン・チェリー、チャーリー・ヘイデン)、ズート・シムス、ジェリー・マリガン、チェット・ベイ...物真似は果たしてジャンクなのか

  • もう1つのワンホーンアルバム

    J.J.Johnson/ATouchOfSatin(米ColumbiaRecordsCL1737)J.J.のもう一つのワンホーンがこのアルバムで、先の"BlueTrombone"よりもこちらの方がアルバムとしては親密な感じで好ましいと思っている。ヴィクター・フェルドマン、サム・ジョーンズ、ルイス・ヘイズがバックにつくカルテットで、メンツ的にも負けていない。ピアノがフェルドマンというのがミソで、黒人ピアニストとは明らかに違うムードを持ち込んでいるのが効いている。サム・ジョーンズのリズム・キープも凄くて、アップテンポでの彼のプレイは圧巻だ。セロニアス・モンクの"Jackie-ing"をやっているのが嬉しい。モンクの曲想をうまく表現した演奏で、アルバム全体の良さに花を添えている。J.J.はモンクとの共演もあるし...もう1つのワンホーンアルバム

  • Blue Trombone の問題点

    J.J.JohnsonBlueTrombone(米ColumbiaRecordsCL1303)私が学生時代に愛読していた油井正一先生の「名盤100選」にはJ.J.の最高傑作としてこのアルバムが載っていて「これは聴かねば」と思っていたが、当時このレコードはあまり出回っていなくて、実際に聴くことができたのは他の名盤たちと比べるとかなり遅い時期だった。そして満を持して聴いた感想は「なんか音悪い」という失望だった。その時聴いたのはCBSソニーの国内盤でイコライザーカーブなんてことも知らなかったので、まあ当然だった。その後コロンビア原盤を手にしてイコライザーカーブも触ったりするようになって上記不満は解消したが、それでもこのモノラル盤は鮮明な音という感じではなかったし、今聴いてもその感想は変わらない。この原因は録音が...BlueTromboneの問題点

  • カイ・ウィンデイングはこれだった

    KaiWinding/Solo(米VerveRecordsV-8525)カイ・ウィンデイングという人がジャズ愛好家からどのような評価をされているのかよくわからないが、大方の人は無視しているんじゃないだろうか。というか、正確に言うと、好き/嫌いになる前に評価しにくいタイプのレコードばかりで、正直、手に余る存在というところだろう。一番ポピュラーな"Jay&Kai"だって、ただでさえ取っつきにくいトロンボーンが2本で絡み合うということで敬遠されがちだろうし、聴いたところで違いもよくわからず、という感じかもしれない。ただ、実際はそんなことはなく、よく聴けば2本のトロンボーンの音色はまったく違っていて、鼻のつまったようなくぐもった音色の方がJ.J.で、大きく張りのあるビッグ・トーンの方がカイである。フレーズもJ.J...カイ・ウィンデイングはこれだった

  • ヴォーカリストが作った大作

    MelTorme/SingsHisCaliforniaSuitewithChorusAndOrchestra(米CapitolRecordsP-200)メル・トーメは1949年にコーラスを含むオーケストレーションをバックにした「カリフォルニア組曲」という大作を自身で作詞・作曲した。ニール・ヘフティやビリー・メイらが編曲に加わり、フェリックス・スラットキンらハリウッドの一流奏者らがオーケストラを編成し、メル・トーンズやスター・ライターズらのコーラスも加わり、満を持して1950年にキャピトルからレコードをリリースした。長く続いた世界大戦で国力が低下したアメリカでは人々が復興に向けて動き出していて、そんな中での明るい希望の地としてのカリフォルニア賛歌となっており、当時の世相が色濃く反映された内容となっている。娯...ヴォーカリストが作った大作

  • ジャズを破壊する変容の生々しさ

    FestivalMondialDuJazz,Antibes/Juan-Les-Pins,7/26/1963FestivalMondialDuJazz,Antibes/Juan-Les-Pins,7/27/1963FestivalMondialDuJazz,Antibes/Juan-Les-Pins,7/27-28/19631963年7月にアンチーブで行われた国際ジャズ・フェスティヴァルに出場したマイルス・クインテットの記録は公式アルバム"MilesInEurope"としてリリースされている。このアルバムは7月27日のライヴが収録されたが、その前後を含む3日間の公演の模様が今回完全収録された。27日の演奏は既出アルバムと同じものなので1枚分はダブるわけだが、この時の演奏は名演で、前後の日にちの演奏が出たとあ...ジャズを破壊する変容の生々しさ

  • 若き日の姿が尊い

    LeeKonitz/InHarvardSquare(米StoryvilleRecordsLP323)ストーリーヴィルのリー・コニッツは10インチが3枚あるが、このハーヴァード・スクエアが1番内容が落ちる。ヴァーヴ時代の演奏のように弛緩したものが多く、触ると手が切れるような鋭敏さや触れた指先が痛くなるような冷たさもない。マスタリングに失敗したのか、音もナローレンジでコニッツのサックスの音色が不自然。にもかかわらず、なぜか昔からこれだけが他の2枚よりも別格扱いされてきた。ヴァーヴ時代の演奏は"Motion"を除いて総じて評判がよくないのに、これは不思議な話だ。ただ、ここでやっている音楽はリー・コニッツの独断場。含まれているスタンダードは一聴してその曲とはわからない。楽曲のメロディーが歌われることはなく、コード...若き日の姿が尊い

  • ペギー・リーが歌うクリスマス・ソング

    PeggyLee/ChristmasCarousel(米CapitolRecordsT-1423)白人女性ヴォーカルは基本的に嫌いなのでほとんど聴かないが、クリスマス・アルバムとなると話は別。特に、キャピトル・レコードとなるとこういうのはうってつけである。ただ、誰でも簡単にクリスマス・アルバムを作らせてもらえたわけではないようで、数はさほど多くない。選ばれし者だけに与えられたある種の特権のようなものだったようだ。ペギー・リーは果たしてジャズ・シンガーなのかどうかはよくわからないが、50年代のアメリカのポピュラー音楽の主流はどれもゆるいジャズがベースになっていたから、あまりその辺りの区別は意味がないのだろう。ポップスやブルース、ラテン音楽など複数の音楽が曖昧な境界線の上を行ったり来たりしながらジャズは形成さ...ペギー・リーが歌うクリスマス・ソング

  • ワンホーン・アルバムの難しさ

    CliffordJordan/Bearcat(米JazzlandJLP-69)これと言って特徴もなく、聴き手に印象を残さないミュージシャンはB級と呼ばれるが、このクリフ・ジョーダンはその最たる人かもしれない。ジャズを深く聴いていけばいずれは必ずぶつかる名前だが万人を納得させる名盤は残しておらず、大抵の場合その名前は知っているけれど特に好きでも嫌いでもないという感想に落ち着く。テナーの音は太く芯があり、肺活量を目一杯使い切るかのような力強い演奏は頼もしさを感じるが、表情の豊かさに欠け、一本調子で単調、中音域帯に音が集中するので、聴いていてすぐに飽きが来る。だからこういうワンホーンのアルバムはあまり面白くないというのが正直なところだ。この人はサックスを自分で吹く人にはその豪胆な演奏から大変好かれるだろうけど、...ワンホーン・アルバムの難しさ

  • サムシン・エルス前夜の演奏

    Julian"Cannonball"Adderley/SophisticatedSwing(米EmArcyRecordsMG-36110)キャノンボール・アダレイのレコードデビューはサヴォイだが、本格的なキャリアのスタートにあたりどのレーベルと契約すればいいかマイルスの家に行って相談したところ、マイルスからはアーティストの自由にやらせてくれるブルーノートを勧められたが、なぜかその忠告を聞かずエマーシーと契約する。が、エマーシーはジャズに関しては経験が浅く、キャノンボールは駄作を連発する。アルバム毎に企画を変えて吹き込みをさせたが、それは一般的にジャズというのはこういうものだろうという形式から入った企画であって、キャノンボールの個性ありきのものではなかったせいだろうと思う。そんな中で唯一キャノンボール・マナ...サムシン・エルス前夜の演奏

  • ほどほどのジャズ

    LennyHambro/MamboHambro(米SavoyRecordsMG-15031)レコードに頼るしかない我々のような日本人にとって、レニー・ハンブロのようなミュージシャンの実像は掴みにくい。リーダー作は私の知る限りでは3枚で、それらからは彼の音楽的主張のようなものは感じ取れないので尚更である。でもWikipediaにはその生涯がかなり細かく書かれていて、アメリカではそれなりに知られた存在だったのかもしれない。グレン・ミラー・オーケストラ時代が長かったようだが、マチートらとラテン音楽に手を染めていたこともあったようで、このデビュー作はコンガやティンバレスをバックにエディー・バートと共にラテン音楽にどっぷりと浸った音楽をやっている。よく鳴るアルトで朗々とメロディーを吹き流す姿がよく捉えられており、早...ほどほどのジャズ

  • ロイ・ヘインズとサラ・ヴォーン

    SarahVaughan/Swingin'Easy(米EmercyRecordsMG-36109)ロイ・ヘインズの訃報に接した。99歳、死因は伝えられていないようだ。彼のキャリアを眺めていると、サラ・ヴォーンと一緒に活動していた時期が長いのがわかる。サラと最初にレコーディングしたのは1947年のレスター・ヤングを含めたもので、53年からは彼女の専属バックを務めるようになった。翌54年にサラがエマーシーと契約して録音を始めると彼の演奏もエマーシーで聴けるようになる。その時期の代表作がこのアルバムやミスター・ケリーでのライヴになる。このアルバムはサラの素晴らしい歌唱が聴ける極めつけの名盤だが、バックがピアノ・トリオなのでロイのドラムが非常にクリアに聞えて、彼の演奏を堪能するのにもうってつけのアルバムだ。ゆった...ロイ・ヘインズとサラ・ヴォーン

  • 不器用なトランペッターが見た夢

    KennyDorham/TheJazzProphetsVol.1(米ABC-ParamountRecordsABC122)ケニー・ドーハムという人の活動の軌跡を見ていると、いろいろ考えさせられるものがある。40年代の終わりから60年代中期のジャズの黄金期を通して第一線で活躍した一流プレイヤーだったわけだが、我が俺がというタイプではなかったこともあり、終始地味な印象が拭えない。録音に積極的だったこともあり、レコードはたくさん残っているのでこの人の演奏には触れる機会は多く、よく聴いていくと結構いろんなことをレコードを通してやっていたことがよくわかる。ただそのどれもが華々しい活動という感じではなく、不器用な人が不器用なりにまじめにいろんなことに取り組んでいたんだなということがわかり、どこかグッとくるものがあるの...不器用なトランペッターが見た夢

  • ガーランドの一番好きなアルバム

    RedGarland/AllKindOfWeather(米PrestigeRecordsPRLP7148)気候変動で生活様式がすっかり変わってしまったような気がする。昔は天候の移り変わりが穏やかで、四季折々の中で風情を感じたものだったが、今は暑いか寒いかのどちらかしかないような感じになっている。だから、これから先はこういう風に季節や天気のことを想って歌が作られることはもうないのかもしれないと思ったりする。四季に風情があった頃に作られたこれらの歌には美しいメロディーや深い情感が込められていて、レッド・ガーランドのような人が演奏するにはうってつけだ。私はガーランドのレコードの中ではこれが1番好きで、もう30年以上聴き続けている。このアルバムの演奏の中には他のアルバムにはない優雅で上質な空気感が溢れていて、ガー...ガーランドの一番好きなアルバム

  • 処分前の備忘録として

    DexterGordon/TheResurgenceOfDexterGordon(米JazzlandJLP29)無類のデックス好きの私も、長年記事にするのを躊躇していて手をこまねいていたのがこのアルバム。ドラッグが原因で50年代にまともな記録を残せなかったデックスが出所後にブルーノートと契約する直前の隙間を縫ってジャズランドに1枚だけ残したのがこのアルバム。1960年10月13日、ロザンゼルスで録音されている。デックスの演奏自体は何も悪いところはないのだが、如何せんアルバムとしての出来が悪い。3管編成というデックスにしては異色のフォーマットだが、音楽的な纏まりがなく、散漫な感じで聴きどころがない。デクスター・ゴードンのリーダー作ということでハードバップを意図した企画だったはずだが、トランペットとトロンボー...処分前の備忘録として

  • R.I.P Benny Golson

    BennyGolson/TheOtherSideOfBennyGolson(米RiversideRecordsRLP12-290)ベニー・ゴルソンの訃報が飛び込んできて、「そうか、残念だな」と悲しい気持ちでレコード棚を眺めた1週間だった。薄々気付いてはいたけれどゴルソン絡みのレコードはたくさん棚の中にあって、果たしてどれを献花として手向ければいいかよくわからなかった。一番彼らしいレコードは一体どれなのか、私が一番好きなレコードはどれなのか。でも、これまでに結構彼のレコードは取り上げてきているし、同じものをまた取り出してくるのも芸がない。このアルバムは彼の代表作というほどの重みはないけれど、よく出来ているアルバムだ。アザー・サイドというタイトルはどういう意味で付けられたのかよくわからない。彼が書いた有名な曲...R.I.PBennyGolson

  • 未だに謎が解けないレコード

    TheHankBabgySoultet/OpusOne(米ProtoneHi-FiRecordsAndRecordedRapesHBS-133)ユニオンのセールに出ているのを見て、そう言えばもう何年も聴いていないなあと思い出して久しぶりに棚から取り出してきたレコード。買った当時はよく聴いていたが、この手のレコードは飽きるとまったく聴かなくなってしまう。おそらく10年振りくらいに聴き返してみると、やはり感銘を受ける内容であることを確認できた。リーダーの名前も知らなければ他のメンバーもまったく知らない、おそらくはローカル・ミュージシャンの集団で、レーベルも他にジャズのレコードを出してはいないらしく、とにかく謎だらけのレコードでこういうのは非常に珍しい。にも関わらず、モノラルとステレオの両方をリリースしているら...未だに謎が解けないレコード

  • Left Alone の名唱

    TeriThornton/DevilMayCare(米RiversideRecordsRLP12-352)リヴァーサイドが作ったヴォーカル作品はどれも1級品で唸らされるものばかりだが、これもそういう1枚。テリー・ソーントンはデトロイト生まれで50年代から地元でキャリアをスタートさせていて、コロンビアからも何枚かリリースしてはいるものの作品には恵まれず、広くその名前を知られることはなかった。声質や音楽のタイプは違うけれど、デラ・リースやダコタ・ステイトンなんかとその存在のイメージが被る。実力と人気・知名度のバランスが悪い。ジャズ専門レーベルのいいところはバックを務めるミュージシャンが豪華なところだろう。レーベルゆかりのミュージシャンがざくざくと参加していて、その演奏を聴くだけでも価値がある。このアルバムもク...LeftAloneの名唱

  • 廉価レーベルのオリジナル

    MelTorme/TheTouchOfYourLips(米Venise7021)メル・トーメのレコードを探していく過程で懸案となるのは、廉価レーベルからリリースされているアルバムの存在である。これはジャズに限った話ではないが、アメリカのレーベルにはメジャーレーベル、マイナーレーベルとは別に、廉価レーベルというのががある。まあマイナーレーベルと言えばマイナーレーベルなんだけど、その中でも際立って資金力が乏しく、粗悪な材質でレコードを製造し、販路も正規のレコード店ではなくスーパーやドラッグ・ストアなんかがメインだった。カタログの内容も、レーベル独自の企画もあれば別の会社が録音したものを買ってきたものもある玉石混淆で、訳がわからない。よく知られているところでは、Royale、Allegro、Tops、Remin...廉価レーベルのオリジナル

  • 記念すべきプレスティッジ第1号

    BillyTaylor/ATouchOfTaylor(米PrestigeRecordsPRLP7001)レコードがたくさん残っているビリー・テイラーも、そのキャリアのスタート当時はダウンビート誌のナット・ヘントフが「今日のニューヨークで最も過小評価されているピアニスト」と嘆くような感じだった。これと言って話題になるような活動をしているわけでもないことから人々の目に留まることがないだけなんだろうが、そんな彼にレコーディングの機会を提供したのがボブ・ワインストックだった。彼が栄光の12インチ時代の幕開けとなる7000番台の記念すべき第1号に選んだのはマイルスでもなければスタン・ゲッツでもなく、ビリー・テイラーだった。ブルーノートはマイルス・デイヴィス、リヴァーサイドはセロニアス・モンク、サヴォイはチャーリー・...記念すべきプレスティッジ第1号

  • ハービー・ハンコックのデビュー

    HerbieHancock/Jammin'WithHerbieHancock(米tcbRecordsTCB1006)ハービー・ハンコックのプロ・デビューはドナルド・バードとペッパー・アダムスの双頭コンボに加わったところから始まっている。その時の記録はワーウィック・レーベルから1枚のアルバムとしてだけ残されたが、このセッションには別テイクが残っており、それらがワーウィックが倒産後にこういう形で1970年に流出した。この頃は既にビッグ・ネームとなっていたハンコックの名前を使ってこっそりと売りに出された半ば海賊盤のようなリリースだったようだが、これはワーウィック盤を愛する人にとっては聴き逃せない内容となっている。著作権に抵触しないように各楽曲の曲名はすべて別の名前に変えられていて、更に原盤には収録されなかったス...ハービー・ハンコックのデビュー

  • 本格派のモダン・ジャズ

    HarryLookofsky/Stringsville(米AtlanticRecords1319)ジャズの世界でヴァイオリンと言えばステファン・グラッペリやジョー・ヴェヌーティ、レイ・ナンスが頭に浮かぶが、彼らの音楽はモダンからは距離があり、日常的に聴こうという気にはあまりなれない。そう考えると、モダン・ジャズに正面から取り組んだヴァイオリンと言うと、おそらくはこのアルバムが唯一のものかもしれない。ハープやフルート、オーボエなんかでジャズをやっているアルバムはそこそこあるのに、ソロ演奏に向いているヴァイオリンのアルバムがほとんどないのはよく考えると不思議だ。このアルバムはハンク・ジョーンズ、ミルト・ヒントン、ポール・チェンバース、エルヴィン・ジョーンズがバックを務める本格派のモダン・ジャズで、全体的に素晴...本格派のモダン・ジャズ

  • 廃盤レコード店の想い出 ~ 川崎TOPS編

    Harold"Shorty"Baker/TheBroadwayBeat(米KingRecords608)ネットを見ていたら、少し前に閉店した川崎の中古レコード店TOPSのご主人だった渡辺さんが亡くなられたらしい、という話が出ていた。本当なのかどうかは確かめようがないのでそのことにはこれ以上触れず、まだ想い出話をするには記憶が生々しいけれど、それでも楽しく通ったこのお店への感謝を込めて私の想い出を少し書き記しておこうと思う。------------------------------------------------------------------------------------------------------------------トップスのことを知ったのはもう十数年前のことで、ネットでレコ...廃盤レコード店の想い出~川崎TOPS編

  • 70年代に向けた萌芽

    HerbieMann,BobbyJaspar/FluteSouffle(米PrestigeRecordsPRLP7101)プレスティッジと言えばマイルスだったりロリンズだったりコルトレーンのイメージがあり、演奏者のプレイそのものに集中して聴くことが多いけれど、ハービー・マンもボビー・ジャスパーもフルートとテナーの両刀使いで、どちらがどの演奏なのかよくわからないこともあり、演奏の個性を愉しもうという聴き方をするとあまり面白くないということになって駄盤扱いされがちである。ところがこういうタイプのレコードは音楽自体を味わおうと思って聴くとまったく違った感想が湧いてきて、認識が変わるものである。冒頭の"TelAviv"はハービー・マンが作ったマイナー・キーの曲だが、これがとてもいい。ほの暗く、ゆったりと大きく揺れ...70年代に向けた萌芽

  • たった1枚のリーダー作(2)

    RichardWilliams/NewHornInTown(米CandidRecordsCJM8003)リチャード・ウィリアムスの演奏はいろんなところで聴くことはできるけれど、リーダー作はこの1枚しかない。しかもそれがキャンディドなんて日陰のレーベルだったこともあり、ここまでたどり着ける人はあまりいない。でも、たどり着けた人は幸いである。何と言ってもこのアルバムは最高に素晴らしい作品だからだ。ビッグバンドを渡り歩いたそのキャリアが影響したのかもしれないけど、一時期ミンガスのグループにいたことがあって、その縁でミンガスがキャンディッドへ紹介したとも言われているけど、その辺りの経緯はよくわからない。共演しているメンバーも彼と同じようなタイプの人たち、つまり実力はあるのにリーダー作には恵まれなかった人たちばかり...たった1枚のリーダー作(2)

  • 複雑な思い(2)

    BudShank/BudShankPlaysTenor(米PacificJazzRecordsPJ-4)バド・シャンクのレコードはたくさん残っていていろいろ聴いてきたが、いいと思えたアルバムは非常に少ない。アルバム作りが下手だったということなんだろうけど、そんな中でこのアルバムは出来がいいと思った数少ない一枚。まず、楽器の持ち替えをせず、サックス1本でじっくりと吹いたところが何よりいい。正直言って、この人のフルートには良さは何もないと思うけど、本人は気に入っていたのか、アルバムの中で多用した。でも、これが聴いていてまったく面白くない。早く次の曲に行ってくんねえかな、と思いながら聴くことになり、面白くないからそのアルバムは聴かなくなるのだが、このアルバムにはそれがない。そして、意外にもテナーの演奏に味わいが...複雑な思い(2)

  • 複雑な思い

    BudShank/BudShankQuartet(米PacificJazzRecordsPJ-1215)このアルバムを語るのは難しい。バド・シャンクを素晴らしいアルト奏者だと認識したのは、とある動画を見た時だった。(https://www.youtube.com/watch?v=P-keeHBoz8A)ワンホーンで前傾姿勢と取りながらひたむきに疾走する演奏がカッコよく、なんて素晴らしいんだろうと思った。そして、この素晴らしさが彼のレコードには収められていないのが残念だなあとも思った。退屈なアレンジものを量産した西海岸のレーベルの中でこのレコードは目を引く存在だ。アンサンブル要員の1人に過ぎなかった彼が群れの中から抜け出してワンホーンで臨んだ作品で、ジャケットの意匠も素晴らしく、本来であれば名盤となるはずだ...複雑な思い

  • 小ネタ集(国内初期盤の音質はどうなのか)

    ケニー・ドーハム/しずかなるケニー(日本ビクター株式会社RANK5086)音圧が低くこもっているので、ボリュームを上げて聴くことになる。音量を上げると、音像は立ち上がってくる。各楽器の解像度は悪いが、ドラムの音色が空間に響く様子は再現されている。ただ、全体的に薄いベールをまとったような音質で、お世辞にも音がいいとは言えない。やっぱりこのタイトルはステレオプレスに限る。ケニー・ドーハム五重奏団/ケニー・ドーハムの肖像(日本ビクター株式会社RANK5063)こちらの音質はまずまずといったところで悪くない。オリジナルと比較してもさほど大きくは遜色ない、と言ってもいいのではないか。これが出ているならモンテローズの方も出ていておかしくないはずだが、見たことがない。出なかったのだろうか・・・カール・パーキンス/イント...小ネタ集(国内初期盤の音質はどうなのか)

  • たった1枚のリーダー作

    TommyTurrentine/S/T(米TimeRecordsT/70008)トミー・タレンタインのリーダー作はこの1枚しかない。40年代からプロとして活動していたが、そのキャリアはビッグ・バンドのメンバーとしてがメインで、ソロ活動にはあまり積極的ではなかったようだ。トランペットの腕はしっかりとしているのでポツリポツリとサイドマンとして参加しているアルバムはあるのだが、そのどれもが印象は薄い。弟のスタンレーとは違い、性格的に前に出ようとするタイプではなかったのだろう。ただ、ここでの演奏をあらためて聴くと、その輝かしい音色や安定したフレーズに「こんなに上手かったっけ?」と驚かされることになる。瞬発力で聴かせるのではなく、じっくりと長いフレーズで聴かせるタイプなので聴き手に強い印象を残すことがないのだろうが...たった1枚のリーダー作

  • Kevin Grayは現代のRVGになれるか

    JoeHenderson/PowerToThePeople(米CraftRecordings/ConcordCR00655)KevinGrayがリマスターして再発されるレコードの勢いがすごい。筆頭はブルーノートのシリーズだが、それだけにとどまらず、痒い所に手が届くようなタイトルも手掛けていてなかなか目が離せない状況となっている。本当なら片っ端から買って聴いてみたいところだが如何せん値段が高過ぎて簡単には手が出せず、大抵は指をくわえて見ていることが多いのだが、このタイトルだけは反射的に手が出た。数年前にジョー・ヘンダーソンのアルバムを聞き直そうといろいろ物色した時にこのアルバムはどうしても見つからず聴けず仕舞いだった。最近海外のジョー・ヘンダーソンの値段高騰が凄まじく、右に倣えで国内の中古価格も異常な値段が...KevinGrayは現代のRVGになれるか

  • 小ネタ集(Savoyのセカンドレーベルはダメなのか)

    CurtisFuller/Imagination(米SavoyRecordsMG12144)結論から言うとダメではなく、全然アリである。なぜなら、音がまったく同じだからだ。上段があずきレーベルでセカンド、下段がマルーンレーベルでオリジナルということになるが、どちらにも手書きでRVGとX20の刻印がある。盤の違いはオリジナルには浅い溝からあることと貼られているレーベルの種類が違うというだけで、それ以外は特に違いはない。ジャケットのデザインは大幅に変更されているがどちらもなんだかなあというデザインであるところは一緒で、頼りない感じの作りも同じだ。音は、当たり前ながら、どちらも同じ音が出てくる。典型的なサヴォイのヴァン・ゲルダーの音で、鮮度のいい音で聴ける。ヴァン・ゲルダー・サウンドと一口で括られることが多いけ...小ネタ集(Savoyのセカンドレーベルはダメなのか)

  • 小ネタ集(Riversideのセカンドレーベルはダメなのか)

    WesMontgomery/TheIncredibleJazzGuitarOfWesMontgomery(米RiversideRecordsRLP12-320)結論から言うとダメではなく、全然アリである。なぜなら、音はまったく同じだからだ。ウェス・モンゴメリーの"インクレディブル"を例にすると、上段が青大レーベルでセカンド、下段が青小レーベルでオリジナルだが、青小レーベルにはBILLGRAUERPRODUCTIONSの後にINC.ロゴの入るものがあってそれが青小レーベルのセカンドプレスになるので、厳密に言うと青大レーベルはサードプレスくらいになる。この2つを比べてみると、違いがあるのは盤の材質というか仕上げが少し違っていることと貼られているレーベルが違うくらいで、ジャケットはまったく同じものが使われている...小ネタ集(Riversideのセカンドレーベルはダメなのか)

  • ミルト・ジャクソンとワンホーン(2)

    MiltJackson,FrankWess/OpusDeJazz(米SavoyRecordsMG12036)ミルト・ジャクソンとワンホーンによる代表作ということになると、やはりこれが筆頭ということになる。フルートをホーンという言葉で扱っていいのかどうかは微妙な気もするけれど、ジャズの世界では毛嫌いされるフルートでここまで素晴らしい作品となったのはほとんど奇跡のように思える。その成功の原因はとにかくフランク・ウェスがフルートを丁寧に静かに吹いたことに尽きる。そしてなぜフランク・ウェスがそんな風に静かに吹いたかというと、収録された全曲が静かで穏やかなテンポで設定されたからだ。こういう雰囲気の中ではフルートでがなり立てる必要がそもそもなかった。フルートは大きな音を出すようには設計されていないので、元々ジャズには...ミルト・ジャクソンとワンホーン(2)

  • ミルト・ジャクソンとワン・ホーン(1)

    MiltJackson/InANewSetting(米LimelightLM82006)繊細で上質でブルージーなミルト・ジャクソンは、意外とワン・ホーンがよく合う。本来であればそういう持ち味を味わうにはシンプルな構成の方が良さそうなものだが、管楽器が1本入ることでその分音楽に幅ができるからかもしれない。リード楽器でもあり、和音楽器でもあるこの不思議な音色を持つ楽器はある時は背景として、ある時は相方として管楽器に寄り添う。その理想形の1つがミルト・ジャクソンのアルバム群の中にある。マッコイ・タイナー、ボブ・クランショウが参加しているところがいかにも60年代だが、メインストリーム・ジャズながら音楽が古臭くないところがこういうメンバーに依るところなんだろう。でも、音楽が60年代の箍が外れた感じはなく、しっかりと...ミルト・ジャクソンとワン・ホーン(1)

  • 選曲の良さに見る天才

    BudPowell/Swingin'WithBud(米RCARecordsLPM-1507)レッド・ロドニーの演奏する"ShawNuff"を聴いていてすぐに思い出したのがこのパウエルの演奏で、私の中ではこの曲の基準はパウエルのこのレコードになっている。もちろんパーカー&ガレスピーの演奏がマスターピースで、管楽器で演奏するのが正道だろうと思うけど、ピアノで弾くこの曲の良さには独特なものがあるのを証明している。ピアノ奏者が演奏している例は少ないようだけど、ビ・バップを作った面々の一人であるパウエルならではということなのだろう。バド・パウエルはモダン・ジャズ・ピアノの演奏スタイルを作った人なのでその路線で語られることがほとんどだけど、私はそういう話にはあまり興味がなくて、この人の音楽センスにシビれて心酔している...選曲の良さに見る天才

  • 数少ない作品の中の1つ

    RedRodney/Returns(米ArgoLP643)40年代からプロとして活動し、パーカーの傍にいることができたという僥倖に恵まれたにも関わらず、ドラッグで身を持ち崩し、50~60年代はその足跡がまともに残せなかったレッド・ロドニー。アルバムは12インチは3枚しか残っておらず、上手いトランペッターだっただけに何とも残念なことだ。シカゴのローカルメンバーをバックに録音されたこのアルバムはハードバップの豊かな香りが立ち込める名作。ビッグバンドや裏方の活動が主で自己のリーダー作を持たないビリー・ルートを迎えた2管編成の王道で、このレーベルのイメージにはそぐわない程の本格的なハードバップを聴かせる。パウエルの名演を想い出す"ShawNuff"で幕が開き、緩急自在な曲を並べる構成も見事でこのアルバムは非常によ...数少ない作品の中の1つ

  • 小ネタ集(Clef、Norgran編)

    最近レコード屋に行ってお店のご主人と話しをしていると、例外なく村上春樹さんの「デヴィッド・ストーン・マーティンの素晴らしい世界」の話しがまるで口裏を合わせたかのように出てくる。それぞれの文脈は違えどこれだけ複数の人から同時にこの話題が出てくるのだから、その影響力はさすがだなあと思う。「じゃあ、クレフやノーグランのレコードは売れてます?」と訊くと、そこは意外とそうでもないらしい。まあ、買う側も「本は本だし」ということでそこは冷静なのかもしれない。DSMと言えばクレフやノーグランのレコードということになるけど、このレーベルのレコードについては昔から疑問に思っていることがあって、それが長年未解決のままで残っている。1.番号あり/なしのジャケットは2作品だけなのか?下のスタン・ゲッツとパーカーのレコードは、ジャケ...小ネタ集(Clef、Norgran編)

  • ジョー・ゴードンに見出されたアルト

    JimmyWoods/Awakening(米ContemporaryRecordsM3605)ジョー・ゴードンは最後のリーダー作にジミー・ウッズというアルト奏者を呼んだが、おそらくはこの時の演奏が注目されたのだろう、2か月後にほぼ同一のメンバーによる録音と別のメンバーによる録音が行われて1枚のアルバムが制作された。これがウッズの初リーダー作になる。ジョー・ゴードンとの演奏は今度はジミー・ウッズ側から見た音楽という切り口になっていて、ジョー・ゴードンはサポートに回っている。こちらもゴードンに倣ったかのようにウッズ自作のオリジナルが大半を占めており、意欲的な内容で聴き応えがある。楽曲はゴードンと同様にハード・バップからは脱した新しい感覚の音楽になっているが、ウッズ自身のアルトが同時期に出てきたドルフィーに少し...ジョー・ゴードンに見出されたアルト

  • あるトランペッターの進化(3)

    JoeGordon/Lookin'Good(米ContemporaryRecordsM3597)ジョー・ゴードンはシェリー・マンのバンドを経て1961年に2枚目のリーダー作を作るが、これが音楽的に見事な進化を遂げた傑作になっている。西海岸での録音だったのでコンテンポラリーが受け皿になっているが、このレーベルのカラーには馴染まない東海岸的なポスト・ハードバップで、この音楽的変遷はまるでマイルスのそれを思わせる。ここで聴かれる音楽はまるで現代のメインストリーマーたちがやっているような超モダンな感覚で、彼のエマーシー録音からの7年間はまるでジャズが辿った70年間に相当するかのような錯覚を覚える。このアルバムはジャケットにも記載があるようにスタンダードは排した全曲ジョー・ゴードンのオリジナルで、彼がトランペット奏...あるトランペッターの進化(3)

  • あるトランペッターの進化(2)

    ShellyMann&HisMen/AtTheBlckHawkVol.1(米ContemporaryRecordsM3577)ジョー・ゴードンのようなマイナーなアーティストになるとその詳細な足跡はわからないが、どうやら1958年に西海岸へ移ったらしい。どういう理由で西海岸へ行くことになったのかもよくわからないけど、西海岸には彼のようなブラウニー直系のトランペッターがいなかったからか、すぐに仕事に就くこともできたようで、亡くなる1963年まで彼の地で活動した。そして1959年頃からはシェリー・マンのバンドの常設メンバーとして参加するようになり、このバンドのカラーを変えることに成功している。それまでのシェリー・マンのバンドと言えば退屈な編曲重視のアンサンブルものが多く、各メンバーの実力が活かされることのない駄...あるトランペッターの進化(2)

  • あるトランペッターの進化

    JoeGodon/IntroducingJoeGordon(米EmercyRecordsMG-36025)ジョー・ゴードンは1963年に寝煙草が原因の火事で亡くなっている。リーダー作はこの1954年吹き込みのデビュー作を含めて2枚しかないので一般的知名度は限りなく低いが、サイドマンとしてはコンスタントに演奏が残っていて、当時は有能な演奏家として評価されていた。大体がこの"Introducing~"というタイトルで登場する人は将来を嘱望されていたケースが多く、その早すぎる死は惜しまれる。プロとして活動を始めたのが1947年ということだからまったくの新人というわけではなく、そろそろリーダー作を作ってもいいのでは、ということで吹き込まれたのだろう。演奏は堂々としたものであり、ラッパもよく鳴っている。1954年と...あるトランペッターの進化

  • 秋吉敏子の貴重な50年代ライヴ

    ToshikoAkiyoshi&LeonSash/AtNewport(米VerveRecordsMGV-8236)ジョージ・ウェインによって1954年に始められたニューポート・ジャズ・フェスティヴァルは現在も続いているのだから驚かされる。真夏の野外で催されるというのは我々の凝り固まったジャズというイメージには凡そ合わないが、アメリカはそういう価値観ではないのだろう。当時としては画期的だったようで、1958年には「真夏の夜のジャズ」として映画化もされる。原題には"Night"という単語はなく、「或る夏の日」というのが正確な訳になる。ノーマン・グランツの秘蔵っ子だった秋吉敏子もピアノ・トリオとして出演しており、その様子がこのレコードに収められている。写真で見ると和装だったようで、真夏の野外なのに何とも気の毒な...秋吉敏子の貴重な50年代ライヴ

  • Argoレーベルの良さが感じられる

    NormanSimmons/NormanSimmonsTrio(米ArgoRecordsLP-607)ノーマン・シモンズはシカゴのローカル・ミュージシャンで、かの地を訪れたミュージシャンの受け皿として共演したり、著名な歌手の歌伴を務めたりしていた。野心を持ってニューヨークへ出て、ということはしなかったようで、そのため50年代のリーダー作はこの1枚しか残っていない。これと言って特徴のあるピアノが聴けるわけではなく、ごくごく普通に小気味よく明るい演奏に終始している。他の名の知れた歌伴ピアニストたちなんかと共通するところが感じられる。フレーズが平易でわかりやすく、タッチも柔らかく、穏やかな表情だ。他のアーティストたちと熾烈な競争して生き残っていくというような生活とは無縁の、地に足のついた演奏活動をしていたのだろ...Argoレーベルの良さが感じられる

  • 音の中に潜む何か

    CharlieParker/BigBand(米ClefRecordsMGC-609)チャーリー・マリアーノやドン・セベスキーらが先のアルバムを制作した際、当然ながらこのアルバムのことが年頭にあっただろうと思う。パーカーが残したアルバムの中でも屈指の1枚としてその頂は音楽家の前に聳え立つ。それでも録音しようとしたのだから、マリアーノも大したものだと思うが、さすがにこれと比べるのは酷というものだ。ノーマン・グランツは興行師だったのでアルバム制作にも優れた企画力を発揮して、その結果、他のレーベルでは聴けないようなタイプのアルバムが残っている。ストリングスやビッグバンドをバックにソリストに吹かせるというのもステージジャズの発想だけど、こういうのは3大レーベルでは考えられない。結局ヴァーヴのこれらの形が雛型として後...音の中に潜む何か

  • マリアーノの肖像に相応しい

    CharlieMariano/APortraitOfCharlieMariano(米ReginaRecordsLPRS-286)ラージ・アンサンブルやストリングスをバックに朗々と吹く、というのはアルト奏者にとっては1つのステータス若しくは憧れだったのかもしれない。パーカーが確立したこのスタイルを踏襲した人は多く、アート・ペッパー、ポール・デスモンドやフィル・ウッズもやったが、このマリアーノも例外ではなかった。レコーディングには金がかかるので誰でもやらせてもらえる訳ではなく、エスタブリッシュメントにしか叶わないアルバムだが、その割には一般的に人気がない。マリアーノは最高のトーンで自由自在に歌っていて、素晴らしい。単なるスタンダード集ではなく自作も持ち込み、音楽的な深みを出している。ドン・セベスキーのスコアも...マリアーノの肖像に相応しい

  • サル・サルヴァドールの最高傑作はこれか

    SalSalvador/Starfingers(米BeeHiveRecordsBH7002)サル・サルヴァドールと言えばキャピトルやベツレヘムにレコードが残っていてエサ箱ではお馴染みの人だが、これがどれを聴いてもつまらない。フィンガリングはなめらかでソツなく上手いギターだが、自身の音楽として確立されているものがなく、聴き処がない。結局持っていてもまったく聴くことはなく棚の肥やしになるだけなので、レコードが我が家の棚に残ることはなかった。ところがこの「その筋の人的ジャケット」のレコードを聴いてぶっ飛んだ。これがサイコーにいい。サルヴァドールが目当てでではなく、私の好きなエディ・バートが参加していること、"Nica'sDream"や"SometimeAgo"など好きな曲が入っていることなどから聴いてみたのだが...サル・サルヴァドールの最高傑作はこれか

  • もし、ロリンズがバンドメンバーだったら

    MilesDavis/Collector'sItems(米PrestigeRecordsPRLP7044)新年の縁起物、マイルス・デイヴィスである。この人の場合、何かそれくらいの理由を付けなければなかなかブログに書こうという気にならない。特に、このアルバムのような誰からも顧みられないものになると尚更である。A面は53年、B面は56年の録音でどちらもロリンズとの演奏だが、53年の方はパーカーがテナーを吹いて参加していることで知られている。契約関係がなかったから、覆面ミュージシャンとしての参加になっている。テナーの音色はあまりパッとしない感じだが、吹いているフレーズが如何にもパーカーらしいもので、サックス奏者には各々固有の言語があるのだということがよくわかる。ただこの53年の方は音楽的に聴くべきところはないし...もし、ロリンズがバンドメンバーだったら

  • 懸案盤の緩やかな解決

    OrnetteColeman/TheShapeOfJazzToCome(米AtlanticRecordsSD1317)今年のレコード漁りで個人的なトピックスの1つは、このステレオ盤を拾えたことだった。このアルバムのモノラル盤の音の悪さに気が付いたのはCDを聴いた時で、これはどうしてもステレオ盤を探さねばと長年探していたのだけれど、これがまったく見つからない。並みいる有名な稀少盤もこのステレオ盤の足元にも及ばないなあ、とここ数年はもう探すことすら諦めていた。そういう個人的な懸案の1枚が今年ようやく解決した。楽器の音色の輝きが増し、音楽の高級感がアップして聴こえる。無理やり中央に音像を寄せ集めた感じからは解放されて、音楽が自然な様子で空間の中を舞っているように変わった。これでようやくモノラルとはおさらばできる...懸案盤の緩やかな解決

  • ラジオデイズレコード 初訪問

    親戚の法要で12/23(土)~24(日)は名古屋に行っていたが、その隙間を縫ってラジオデイズレコードへ行ってきた。以前から1度行ってみたいと思っていたレコード屋さんだった。オールジャンルを取り扱っているが、ご店主はジャズのコレクターなので、きっとジャズの中古が充実しているのだろう、と思っていたからだ。店頭に出ている商品数自体は多くはないが、お店の規模感や他ジャンルとのバランスからすればこのくらいが妥当というところなのだろう。私好みのタイトルの在庫が複数あって、それ以外に買い換え目的の物も含めて、何枚か手にすることが出来た。初めて訪れたお店でこういう経験ができるのはうれしいものである。これからは時々名古屋に来ることになるので、またお邪魔したいと思う。帰りの新幹線の中でつらつらと考えてみると、特に目当てのもの...ラジオデイズレコード初訪問

  • トニー・ベネットを偲んで

    TonyBennett/Snowfall(日本CBS・ソニーレコードSONX60088)先日亡くなったトニー・ベネットの最初のクリスマス・アルバム。と言っても1968年発売で、他のビッグネームと比べると遅いリリースだ。経緯はよくわからないが、クロスビーやシナトラ、ナット・キング・コールらの有名アルバムがある中では制作に慎重だったのかもしれない。メル・トーメやサラ・ヴォーンもこの時期にはアルバムを作っていない。おそらく、アメリカではポピュラー歌手たちが数えきれないほどのクリスマス・アルバムを作っていただろうから、そういう有象無象とは一線を引いたものにしなければという自負があったのかもしれない。私が子供だった頃に比べると、最近のクリスマスはその有難みのようなものは随分と希薄になってしまったような気がする。昔は...トニー・ベネットを偲んで

  • 2nd ジャケット愛好会

    私の経験上、オリジナルだ、初版だ、と騒いでいるうちは白帯。再発盤もオリジナルと同じように愛でることができるようになって、初めて「レコード愛好家」を名乗って黒帯を締めていい。特にセカンドプレスあたりは製造時期がさほど離れているわけではないので、オリジナルとはまた別の風格というか独自の質感あって、愛すべきレコードたちである。そこに気付くことができるのはこの趣味に気持ちの余裕をもって接しているかどうか次第。オリジナルを追求するのはもちろん楽しいが、度が過ぎて視野狭窄に陥ってしまうとこの趣味の愉しさは半減する。セカンドプレスがいいのはそういう風格の良さだけではなく、値段が安いこと。オリジナルではない、ということだけで値段は大幅に下がる。ここに載せたものは、すべて5千円未満だった。ジャケットデザインは私はこちらの方...2ndジャケット愛好会

  • ジャケット・デザインに惚れて聴く

    HamptonHawes/Vol.2,TheTrio(米ContemporaryC3515)ジャズ界屈指のジャケット・デザイン。最も好きなジャケットの1つだ。麻薬中毒者らしく痩せぎすで退廃的な姿がモノクロの風景の中に浮かび上がる。モノトーンのレタリングが背景にうまく溶け込み決まっている。1955~56年にかけて録音された複数の演奏が3分冊にまとめられたよく知られた内容だが、選曲的にもこの第2集が一番いい。"あなたと夜と音楽と"で始まるというのが何ともいい。この人は自身のピアニズムで聴かせる人ではないので、選曲が重要になる。自分の好きな楽曲が入っているアルバムを選ぶといいのだろう。ロイ・デュナンの録音だが平均的なモノラルサウンドで際立った特徴は見られないが、レッド・ミッチェルのベース音がよく効いていてトリオ...ジャケット・デザインに惚れて聴く

  • ビ・バップの後継者としての正当性

    GeorgeWallingtonQuintetwithPhilWoods,DonaldByrd/JazzForTheCarriageTrade(米PrestigeRecordsPRLP7032)当時の新進気鋭だった若い管楽器奏者を迎えて自己名義のグループとして録音したこの演奏は、メンバーが白人優勢だったこともあり、とてもすっきりとした清潔感のあるハードバップに仕上がっている。非常に素直で気持ちのいい演奏で、若者の純粋さを強く感じる。この時のバンドのレギュラードラマーは白人のジュニア・ブラッドレイだったが、レコーディング時は不在だったため代わりにアート・テイラーが参加したが、この代打起用は功を奏していて、ドラムの演奏が非常にしっかりとしているおかげで演奏全体が堅牢だ。ウォーリントンのピアノが真水のようにクセ...ビ・バップの後継者としての正当性

  • 騎士の音楽とは何か

    GeorgeWallington/KnightMusic(米AtranticRecordsSD1275)マーク・マーフィーが歌った"Godchild"って、ジョージ・ウォーリントンが作った曲だったんだなあ、と改めて感じ入りながら聴く。この人のピアノは音楽的表現力が乏しく、この演奏を聴いて歌いたくなるような感じはないけど、それを歌ってしまうところに彼の才能があったのだろう。ウォーリントンのピアノはまんまバド・パウエルだ。昔はクロード・ウィリアムソンが白いパウエルとよく言われて、私はいつも「どこが?」と思っていたが、このウォーリントンは指がまったく回らなくなったバド・パウエルそのもの。縦揺れして、ぶっきらぼう。フレーズの処理もバップ・ピアノの典型で、時代の変化についていけず早々と引退を余儀なくされたのはしかた...騎士の音楽とは何か

  • 後にも先にも例を見ない作品

    EllaFitzgerald/SingsTheGeorgeAndIraGershwinSongBooks(米VerveRecodsMGV-4029-5)昔、車のCMで使われたエラの歌う"SomeoneToWatchOverMe"が画面の優雅な映像とマッチしていて素晴らしく、聴き惚れた。しっとりと濡れて情感がこもった歌が本当に素晴らしくて、短い時間の歌声だったにもかかわらず釘付けになった。その歌声がここに収録されている。5枚組の豪華なボックス仕様で、EPが1枚、ハードカヴァーの解説書、ベルナール・ブュフェの絵画シートが5枚入った、狂気すら感じる装丁。ピカソのコレクターとしても知られるノーマン・グランツの究極の仕事である。そして、その激しい情熱を彼から引き出したのがエラの歌唱。1人の歌手のアルバムで5枚組とい...後にも先にも例を見ない作品

  • 慎ましいベース

    LeroyVinnegar/Jazz'sGreat"Walker"(米VeeJayRecordsVJLPS2502)「ベースの音が凄い」と騒がれたり、「ベースのプレイが凄い」と言われるレコードはよくあるが、このアルバムが取り上げられることはない。"サキ・コロ"での演奏が褒められたり、コンテンポラリーのリーダー作が有難がられはするけれど、このアルバムが褒められることはない。これはリロイ・ヴィネガーのそういう気の毒なアルバム。オーソドックスなピアノ・トリオだが、ピアノはマイク・メルヴォイン、ドラムはビル・グッドウィンという無名な面々というのがおそらくはその原因ではないかと思われる。演奏のありのままを何の先入観もなく享受するというのはなかなか難しいことだから、仕方ないのかもしれない。無名のピアニストとドラムなが...慎ましいベース

  • パシフィック・ジャズとピアノ・トリオ

    V.A/JazzPianistsGalore(米PacificJazzRecordsJWC-506)よくよく考えると、パシフィック・ジャズというレーベルはピアノ・トリオのアルバムをあまり作らなかった。ラス・フリーマンやドン・ランディなど少しは残っているけど、こういうのはジャズ専門レーベルとしては珍しい。大抵の場合、どのレーベルにも名盤100選に顔を出すような作品が1枚や2枚はあるものだが、このレーベルにはそういうアルバムは1枚もなくて、おそらくはリチャード・ボックの趣味ではなかったのだろう。それでもアルバムに収録しきれなかったものや、管楽器のセッションの合間に録られたピアノ・トリオの端切れが集められたのがこのアルバム。このレーベルにはこういうオムニバス形式のアルバムがたくさん残っているけど、そういうのもレ...パシフィック・ジャズとピアノ・トリオ

  • マーク・マーフィーとクラブ・ミュージック

    MarkMurphy/SugarOf97EP(オーストリアUptightUptight19.12)12インチEPという形でクラブDJRemixされた音源として97年にリリースされたようだが、この辺りの事情には暗くてよくわからない。ググってみてもこのレコードに言及している記事は見当たらないし、ChatGPTに訊いてみても「私の知識にはありません」との回答でこのビッグデータの時代に何たることだ、と驚いてしまう。スティーリー・ダンの"DoItAgain"で始まるうれしい内容だが、収録された3曲は打ち込みがミックスされたクラブで踊るための音楽になっている。私はこの手の音楽が結構好きなので、非常に楽しく聴ける。ジャズが欧州のクラブミュージックと融合して再評価されたことはジャズにとってもよかったんじゃないかと思ってい...マーク・マーフィーとクラブ・ミュージック

  • 最後の残り火

    NewYorkJazzSextet/GroupTherapy(ScepterRecordsSLP526)トロンボーン奏者のトム・マッキントッシュがプロデューサーとなり、アート・ファーマー、ジェームス・ムーディー、トミー・フラナガンらと1965年に録音したアルバムで、グループ名を名乗っているが単発のセッションだったようだ。60年代前半のフリー・ジャズ・ムーヴメントの反動でかつての主力メンバーたちがこうして主流派の音楽で巻き返しを図る動きがあったが、1度壊れてしまったものが元に戻ることはなく、下火のまま消えていくことになるが、その残り火の記録がこうして残っている。片面4曲と楽曲が短くなり、アドリブの面積も減り、ジャズという音楽の聴かせ所が変わってきている。"GiantSteps"に女性ヴォーカルのスキャットを...最後の残り火

  • サヴォイに咲いた徒花

    TheBobFreedmanTrio/PianoMoods(SavoyRecordsMG15040)サヴォイはピアノ・トリオのレコードを作るのが下手だった。ジャズ専門レーベルであれば、必ずと言っていいほどレーベルの軸となるようなピアニストを抱えて、アルバムを量産しながらそのピアニストを育てたものだが、サヴォイの場合はそういう姿勢がなく、場当たり的な対応しかしていない。それはおそらくオジー・カデナの音楽嗜好に依るものだったのだろう。どやらピアノ・トリオがあまり好きではなかったようだ。このボブ・フリードマンの場合もそうで、この10インチ盤を1枚作っただけでその後は放り出してしまっている。ジャケット裏面のライナーノートにカデナ自身がフリードマンの紹介を寄稿しているが、そこまでだった。そのせいでフリードマンのレコ...サヴォイに咲いた徒花

  • 永遠のポーギーとベス

    BethlehemPresentsGeorgeGershwin'sPorgyAndBess(米BethlehemRecordsEXLP-1)ジャズと親和性が高いフォーク・オペラとしてアルバムはたくさん残されているが、ジャズの世界ではマイルス、エラ・フィッツジェラルドに並んで、このベツレヘムが制作した全曲盤がトップ3だ。マイルスやエラのアルバムはエッセンスだけを抽出してまとめられたが、こちらはナレーションもきっちりと入った3枚組で、とにかく素晴らしい仕上がり。当時のレーベル契約アーティストの主要なメンバーが集められており、よくもまあここまで、と感心してしまう。そして何より音楽的に極めてレベルが高く、ダレることなく聴き通せるところが凄いのである。クラシックの名だたるオペラ・セットにも引けをとらない出来と言って...永遠のポーギーとベス

  • 分水嶺となったアルバム

    WyntonKelly/KelleyGreat(米VeeJayRecordsLP1016)昔からウィントン・ケリーの代表作の中の1枚に挙げられてきたが、その言い分には違和感を感じざるを得ない。どちらかというと、彼の限界を露呈したアルバムだろうと思う。レッド・ガーランドの正当な後継者としてマイルスのバンドに迎えられたが、タイミングとしては遅過ぎた。マイルスの音楽の発展の過程上、ケリーではそれを支えることが困難だったことは明らかで、それは当時のアルバムを聴けば明白だ。"KindOfBlue"から"MyfunnyValentine"~"Four&More"までの間の数年間はマイルスの音楽は1歩後退した時期で、結局それはハンク・モブレーやウィントン・ケリーというマイルスの音楽を次の時代へとドライヴすることが出来な...分水嶺となったアルバム

  • ジャンキーたちの虚ろな音楽

    SergeChaloff/BlueSrege(米CapitolRecordsT-742)1957年脊椎の癌で33歳という若さで亡くなったサージ・チャロフの記録は少なく、一番この人の実像がわかりやすく聴けるのが死の前年に録音したこのアルバム。当然、この時点で既に身体は癌に蝕まれていただろうし、それ以前に最後には克服したとは言え、元々が重度のへロイン中毒だったこともあり、身も心もボロボロだったはず。そんな彼の辞世の句がここには刻まれている。バリトンを太い音で鳴らすのではなく、強弱の陰影をつけて吹くやり方はアート・ペッパーに似ており、バリトン界では他にはあまり例がない吹き方だったように思う。バリトンという楽器にとってそれが効果的な吹き方だったのかどうかはよくわからないけれど、際立った個性ではあったと思う。ウディ...ジャンキーたちの虚ろな音楽

  • 4人の巨匠の曲はやはり名曲だった

    SamMost/PlaysBird,Bud,Monk&Miles(BethlehemRecordsBCP75)私はベツレヘムのレコードにはあまり興味がなく、思い入れもない。白人メインのラインナップで、その影響で退屈なアレンジものが多く、ジャズにとって大事な何かが欠けているような演奏が多い。レーベルを興したのがスイスからの移民だったことの影響かもしれない。レコードのモノとしての品質がいいのはドイツ人のアルフレッド・ライオンなんかと共通しているが、他の本流レーベルが見向きもしなかったアーティストばかりと契約してレコードをたくさん作った。ただそのおかげでジャズ・レコードの裾野は広がって、50年代のより多くのジャズの記録が残ることになったのはとてもよかったと思う。そんなアーティストの一人にマルチ・リード奏者のサム...4人の巨匠の曲はやはり名曲だった

  • オムニバスと誤解されているアルバム

    V.A/Rhythm+1(米EpicRecordsLN3297)エピックはハンク・ジョーンズ、ミルト・ヒントン、オジー・ジョンソン、バリー・ガルブレイスの4名のリズム・セクションを土台にして、セルダン・パウエル、ジーン・クイル、コンテ・カンドリ、ジミー・クリーヴランドをランダムに配置して録音した。この時のセッションは3枚のアルバムに分けて編集されており、1枚は管入りのこのアルバム、もう1枚はリズム・セクションだけのアルバム、残りはサヒブ・シハブのグループやロンネル・ブライト、レイ・ブライアントのセッションも混ぜて"AfterHourJazz"としてリリースされた。リーダーを立てていないが故にオムニバスと誤解されているが、これは明確なコンセプトに基づいて制作されたアルバムになる。3枚の中ではこのアルバムが一...オムニバスと誤解されているアルバム

  • "My Fair Lady" を巡るあれやこれや

    ShellyManne&HisFriends/ModernJazzPerformancesOfSongsFromMYFAIRLADY(米StereoRecordsS7002)ジャズも40年間聴いていると日々聴くのは地味なレコードばかりになっていて、定番のアルバムを聴くことはもうほとんどない。そういうのは耳タコになっていて初めの頃に感じた感動はもはや微塵も感じないからだけど、偶には溝の掃除もしなきゃ、と本来の目的とは全然違う動機で針を落とす程度だ。このアルバムも1年生の頃に夢中になって聴いたレコードで、シェリー・マンのドラムの凄さに腰が抜けたものだけど、今聴いてもこれは凄いよなと感心する。冒頭の"時間通りに協会へ!"の慌ただしい曲想を上手く表現した風圧を感じるドラミングからして圧巻だが、その後も全編を通して..."MyFairLady"を巡るあれやこれや

  • 新鮮な感覚が支える傑作

    ClarkTerry,BobBrookmeyer/Tonight(米MainstreamRecordsS/6043)クラーク・テリーとボブ・ブルックマイヤーというパッとしない2人のフロントでガン無視されるアルバムだが、これは傑作。クラーク・テリーに限らず、エリントニアン達は楽団から離れてアルバムを作るときは音楽の指向性がはっきりとせず、聴いていて唸るようなものはほとんどないし、ブルックマイヤーもモダンになり切れず、いつも大抵はもどかしい。そんな2人の弱点を補ったのがロジャー・ケラウェイ、ビル・クロウ、デイヴ・ベイリーの3人のバックで、非常に新鮮な感覚によるタイトな演奏がこのアルバムの大きな肝になっている。ややもすると「伝統に回帰した」演奏へとレイドバックしがちなこの2人をグイっと現代に引き戻して、同時代の...新鮮な感覚が支える傑作

  • 駄盤の典型

    MikeCuozzo/WithTheCostaBurkeTrio(米JubileeRecordsLP1027)サックスのワンホーンはジャズのフォーマットとしては最も理想的で名盤が生まれやすい形式だが、演奏者の力量がストレートに反映されるし、音楽的な変化をつけるのが難しいことから、名盤と駄盤がクッキリと分かれる。このアルバムは演奏者の力量の弱さがそのまま映し出された駄盤。マイク・コゾーはリーダー作を2枚残しただけで早々とこの世界からは退いているが、これではそれも仕方ないと思わせる。アドリブラインは凡庸で冴えがなく、音色も個性がなく魅力的とは言えない。エディ・コスタがピアノ1本で通しているのはよかったが、精細に欠けて音楽全体がぼんやりとしている。すべてを通して似たようなテンポが続いて1本調子でとにかく退屈極ま...駄盤の典型

  • レーベルが変わることで印象が変わるテディー・チャールズと共に

    JoeCastro/GrooveFunkSoul(米AtlanticRecords1324)ジョー・カストロはアトランティックにリーダー作を2枚残しただけなので、その実像はよくわからない。西海岸を拠点に活動していたようだが、これといってスポットライトが当たることもなく、ひっそりとその生涯を終えたらしい。一時期、テディー・チャールズと一緒に演奏をしていたようで、MetroJazzレーベルのロリンズのミュージック・インでのライヴ・アルバムの余白に収録されたテディー・チャールズの演奏のバックでピアノを弾いている彼の様子が捉えられている。私はテディー・チャールズを聴いていると粗さを感じてしまうので好んで聴くことはないのだが、このアルバムを聴いて彼のテナーも含めた音楽の良さに驚かされた。アップテンポの曲ではキレのよ...レーベルが変わることで印象が変わるテディー・チャールズと共に

  • R.I.P Tony Bennett

    TonyBennett/Cloud7featuringChuckWayne(米ColumbiaRecordsCL621)正直、いつ訃音が届いてもおかしくはない、と思っていたから大きなショックを受けたということはないけど、それでもトニー・ベネットが亡くなったのは残念なことだと思う。ここ数年、SNSで彼の情報は頻繁に流れていてその近況や様子などもわかっていたから、来るべき日が来たんだな、と静かに受け止めている。私は彼のことがとても好きで、20代の頃からずっと聴いてきた。歌手としてはシナトラなんかよりもずっと好きで、とても近しい存在だった。コロンビアにたくさんのレコードが残っていて、その大半は聴いたと思う。ベルカント唱法をベースにしたその歌声を聴くと、私の心の中の靄はどこかへ吹き飛んで、どこまでも透き通った青空...R.I.PTonyBennett

  • 抒情味に溢れる傑作

    ThadJones~PepperAdamsQuintet/MeanWhatYouSay(米MilestoneRecordsMLP1001)単純なリフとアドリブだけだったビ・バップがメロディーとハーモニーを取り入れてハード・バップへ移行したように、ハード・バップもいくつかに枝分かれしながら次のフェーズへと移行しているが、その支流の中に細々としながらもよりメロディアスで洗練された音楽へ発展したものがある。音楽的にはこの時期の果実が実は一番甘くて美味しいのだが、レコードがあまり残されていない。おそらく、ライヴなどではそれなりに演奏されていたのだろうとは思うが、やはりアルバムとして発表するには向かなかったのだろう。音楽家たちはより新しい音楽を発表して生存競争に勝ち残っていく必要があり、そのためにはそういう心地よさ...抒情味に溢れる傑作

  • ひんやりと冷たいカナダのジャズ

    MoeKoffman/The"Shefferd"SwingsAgain(米JubileeJGM1074)カナダのマルチ・リード奏者のモー・コフマンの最高傑作はおそらくこれ。ロクに相手にされない人で、そもそもレコードが出回らないから実態がよくわからないけど、メインがフルートというせいもあるかもしれないが、それにしてもあんまりだと思う。これも確かワンコインだったと思う。ピアノレスでエド・ビッカードを含むカナダ人リズムセクションをバックに、A面はフルート、B面はアルト、の各々ワン・ホーンで臨んでおり、ゆったりとしたミドル・テンポ以下の演奏が圧倒的に素晴らしい。フルートの音色は太く奥行きがあって美しく落ち着いているし、アルトはレニー・ハンブロのようになめらかで清らか。旋律はよく歌っていて陰影のつけ方もうまく、聴い...ひんやりと冷たいカナダのジャズ

  • チャーリー・マリアーノの好演

    FrankRosolino/FranklySpeaking!(米CapitolRecordsT-6509)私はウェストコースト・ジャズが嫌いでほとんど聴くことがないけれど、これは例外的に良くて、時々ターンテーブルに載せる。フランク・ロソリーノは非常に上手いトロンボーン奏者で、ビッグ・トーンでスライドさばきも音程も正確無比ですごいと思う。ここでもその上手さは炸裂していて、こんなにメリハリの効いたトロンボーン・ジャズはあまりない。トロンボーンは人気がない楽器だけど、これはそういうことを意識することなく聴けるアルバムだろうと思う。ただ、このアルバムのハイライトはチャーリー・マリアーノの好演だ。アルト特有の艶やかで輝かしく美しい音色がとにかく素晴らしい。紡ぎだされるフレーズが音楽を先導するように疾走する様子が見事...チャーリー・マリアーノの好演

  • 素晴らしいピアノ・アルバム

    RogerKellaway/AJazzPortraitOfRogerKellaway(米ReginaRecordsLPR-298)Reginaレーベルのこの"PortraitInJazz"シリーズはジャケットの趣味が悪く、まったく手に取る気になれないものばかりだけど、これは聴けば驚く傑作。新しい才能に出会った時に感じるあの独特の興奮が脳内を駆け巡る。硬質なタッチと斬新なフレーズで構成される演奏は素晴らしく、耳を奪われる。自作の楽曲が多いがどれもセンスがよく、音楽的な才能も十分。その高いレベルのピアニズムには鮮やかな輝きがあり、ピアノ音楽の愉楽がぎっしりと詰まっている。ピアノ・トリオ、ジム・ホールが加わったカルテット、ソロのバリエーションがあり、飽きることがない。ベースとドラムの記載がなく、公式には誰が演奏...素晴らしいピアノ・アルバム

  • コロナ禍があけて最初のコンサート

    コロナ禍があけてようやくコンサートが観れるようになったのはうれしい。海外からもアーティストが多く来日するようになった。そんな中、英国からお気に入りのエリアス弦楽四重奏団が初来日して、ベートーヴェン・サイクル(最近はドイツ語表記はしないらしい)をやるというので観に行った。本当は全日程観に行きたいけれど、平日メインの日程なのでそこは泣く泣く諦めて、全16曲の中でも最も好きな第12番と第14番をやる6/7(水)と6/10(土)の2日のみ観に行った。会場はサントリーホールのブルー・ローズで、ここは音響が今一つよくない室内楽向けホールなのであまり好きではなく、そこがちょっと惜しかったが、そんなことは言ってられない。弦楽四重奏団を聴くのは何といってもカザルス・ホールが最高だったけど、経営難から取り壊しになってしまった...コロナ禍があけて最初のコンサート

  • 管楽器との相性の良さ

    JohnLewis/TheWonderfulWorldOfJazz(米Atlantic1375)誰からも褒められることのない典型的な安レコだが、これがなかなか聴かせるいいレコードで、結構気に入っている。1960年に行われた3つの異なるセッションの寄せ集めで、楽器の構成も演奏者もバラバラというアルバムとしての不統一さに何か偏見があるのかもしれないが、でも実際に聴いてみるとジョン・ルイスという個性が1本のスジを通しており、不思議とまとまりがいい。ジョン・ルイスという人はインタビューを読むと非常に真面目な人だったことがわかる。音楽のことを真摯に考え、グループの運営に心を砕き、どうすれば観客を楽しませることができるかに心を寄せていた。そういう真面目さが良くも悪くもその音楽に色濃く反映されていて、それが賛否両論を引...管楽器との相性の良さ

  • ジャズ・ピアノとしての弱さ

    RandyWeston/TrioAndSolo(米RiversideRLP12-227)お洒落なスーツにオレンジ色のシャツ、背後にはクラシック・カー、とわざわざこのアルバムジャケット用に写真を撮っている。リヴァーサイドはカタログの初期にランディー・ウェストンのアルバムを立て続けに出していて、異例とも言える好待遇をしている。彼のレコード・デビューはこのリヴァーサイドだったようなので、キープニューズの新人発掘力の賜物だったのかもしれない。他のレーベルがまだ手を付けていない才能を紹介するというのはレーベルにとっては大事なパブリシティーになるだろうし、当時三顧の礼をもって迎えたセロニアス・モンクとよく似た個性を持つこのピアニストは、キープニューズの眼には大きな逸材として映ったのかもしれない。ただ、このリヴァーサイ...ジャズ・ピアノとしての弱さ

  • 実は傑作(3)

    V.A/TheSoulOfJazzPercussion(米WarwickW5003ST)錚々たるメンバーが参加しているが、誰のリーダー作でもなく、パーカッションというキーワードを出していることから顧みられることなく、スルーされる不幸なアルバム。メンバーはビル・エヴァンスを筆頭に、カーティス・フラー、ドナルド・バード、ブッカー・リトル、ペッパー・アダムス、ドン・エリス、マル・ウォルドロン、フィリー・ジョー・ジョーンズ、ポール・チェンバース、アディソン・ファーマー、その他ラテン系が参加していて、楽曲によって演奏するメンバーの組み合わせが変わるという万華鏡的スリルがある。ラテン音楽を基調にしようとするコンセプトになっているが、実際はラテン臭さはなく、ハード・バップが主軸になったとてもいい内容だ。ビル・エヴァンス...実は傑作(3)

  • 評価は一旦お預けのレコード

    BookerLittle/BokkerLittle4&MaxRoach(米UnitedArtistUAL4034)ブッカー・リトルとジョージ・コールマンの演奏が聴ける貴重な音源だが、音が良くなくて演奏の良さがさっぱりわからず興ざめする非常に残念なレコードだ。ステレオ録音したものをモノラルへミックスダウンした際に失敗したような感じの音がこもり具合で、楽器が音が死んでいる。ルイス・メリットという人が録音技師を務めていて、マスタリングをやったのが誰かは記載がないけれど、この人は1959年にUnitedArtistからリリースされたレコードの多くを手掛けていて、その中のサド・ジョーンズの"MotorCityScene"やセシル・テイラーの"LoveForSale"、ジョージ・コールマンの"DownHomeReun...評価は一旦お預けのレコード

  • ライムライトという語感に沿う音楽

    MiltJackson/BornFree(米LimelightLM-82045)1966年12月の録音だが、この頃になるとハードバップは完全に蒸発してその姿は見えなくなり、ジャズ界にはまったく違う風が吹くようになる。主にこの時代を20代として過ごした若者たちによってその新しい風は吹かされていて、30代の大人たちは何とか上手く乗り切っていたが、ミルト・ジャクソンのような40代になるとなかなか厳しかったようだ。色々と試行錯誤していたが、根っからの新しい音楽にはなり切れなかった。ただ、そういうニュー・タイプは難しくても、かつてやっていたメロディー重視の音楽をベースにそれを発展させるタイプになると、このアルバムのように独自の良さが発揮されるものも現れ始める。盟友のジミー・ヒース、当時は期待された若者の1人だったジ...ライムライトという語感に沿う音楽

  • フィリー・ジョーの最高傑作

    PhillyJoeJones/DrumsAroundTheWorld(米RiversideRLP12-302)フィリー・ジョー・ジョーンズはリヴァーサイドに3枚のリーダー作を残しているが、このアルバムがダントツで出来がいい。おそらく、こんなに豪華なメンバーが集まって演奏をしたアルバムは他のどこにもないのではないだろうか。ドラマーとして多くの管楽器奏者を支えてきたこの人のためなら、ということで集まったメンバーたちは当時のジャズ・シーンを支えていた重要なメンツばかりで驚かされる。冒頭のリー・モーガンのソロが爆発してキャノンボールに渡すところなんてもう最高にカッコいい。このアルバムでのモーガンとキャノンボールは最高の演奏を聴かせるが、これはやはりフィリー・ジョーのドラミングが背後から彼らを煽り立ててくるからだろ...フィリー・ジョーの最高傑作

  • セカンド・プレス愛好会(2)

    JohnColtrane/ALoveSupreme(米Impulse!AS-77)どうもこのレコードはオリジナルに縁がない。他のタイトルに比べてプレス数が少ないということはないと思うけれど、なぜか私の場合は巡り合わせが悪い。まあ、誰しもそういうタイプのレコードがあるんじゃないかと思う。尤も、インパルスの場合はこのセカンド・レーベルのプレスであってもオリジナルとの質感にあまり差はない。ジャケットや盤の手触り感もそうだし、VANGELDER刻印があれば音質も特に違いはないように思う。個体差はもちろんあるけれど、ただ貼っているラベルの種類が違うという程度のことに過ぎないのではないか。なので、さほど不満もなく長年この版で聴いている。「至上の愛」という邦題の語感の影響を多分に受けて最高傑作と言われてきたけれど、どう...セカンド・プレス愛好会(2)

  • R.I.P アーマッド・ジャマル

    AhmadJamal/PortfolioOfAhmadJamal(米ArgoLP2638)アーマッド・ジャマルが92歳で逝去したが、SNSでは海外からの哀悼のコメントはたくさん流れているのに比して、日本からの惜しむ声は圧倒的に少ない。チック・コリアやショーターの時とは大違いだ。それが不憫で、申し訳ないとさえ思えるので、こうしてアーマッド・ジャマルのことを書いている。マイルス・デイヴィスの逸話があるので、ジャズが好きなら誰しも1度はジャマルの音楽を聴いているはずだ。恭しい気持ちを抱きながら最初はレコードを聴いただろう。ところが実際に聴いてみると、それがイメージとはかなりかけ離れていることに戸惑うことになる。あのマイルスが一目置いたのだから、もっと深みのある凄い音楽だと思っていたのだが、というのが大方の感想だ...R.I.Pアーマッド・ジャマル

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廃盤蒐集をやめるための甘美な方法
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