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2019/03/26

1件〜100件

  • 何かカッコいいジャズを、と問われたら(2)

    FrankFoster/Fearless(米PrestigePR7461)以前、こんなカッコいいジャズはない、ということでエルヴィン・ジョーンズの"HeavySound"のことを書いたが、同じ系統のカッコよさを誇るのが、このフランク・フォスターのリーダー作。何と言っても、どちらも冒頭が彼の自作である"RaunchyRita"で幕を開ける時点で既にもう十分カッコいいのである。この名曲は聴くたびにシビれるわけだが、もちろんカッコよさはこれだけでは終わらない。収録された曲のほとんどがフォスターの自作だが、どれもイカした楽曲ばかりで、その作曲能力の高さに驚いてしまう。時代の空気を反映してファンクの要素をセンスよく取り込んでおり、これが非常にいい塩梅なのである。B面冒頭の"BabyAnn"を聴いていると、リー・モー...何かカッコいいジャズを、と問われたら(2)

  • ケニー・ドーハム 中期の佳作(2)

    KennyDorham/TheArrivalOfKennyDorham(米JaroJAM-5007)タイム・レーベルの"JazzContemporary"の1ヵ月前に録音されたのがこのアルバムで、メンバーもピアノ以外は同じ構成で、この2枚は兄弟の関係にある。こちらはトミー・フラナガンがピアノを担当しているが、これがこれら2枚のアルバムの性格を異にしている。フラナガンのバッキングやソロは従来のハード・バップ・マナーで、このアルバム全体のトーンを普通のハード・バップに染めている。そのため耳馴染みが良く、誰からも好かれるであろう非常にわかりやすい音楽になっている。ヴィクター・ヤングの"Delilah"でのソロ・パートのエレガントさは如何にもこの人らしい。また、このアルバムで顕著なのはドーハムの饒舌さで、これが珍...ケニー・ドーハム中期の佳作(2)

  • ケニー・ドーハム 中期の佳作

    KennyDorham/JazzContemporary(米Time52004)若い頃はまとまりがなく弛緩した駄作だと思っていたが、今は真逆の感想に反転している。一般に若い頃は頭が柔軟で年を取ると頑固になると言うが、どうも私の場合は逆のようで、若い頃には受け入れられなかったのに今は好きになっているものが多い。それだけジャズの理解が深まったということもあるだろうし、物事に総じて寛容になったということもあるのだろう。それがいいか悪いかは別にして。腰が入っておらず弱々しいドーハムのトランペットにチャールズ・デイヴィスの重量感のあるバリトンは相性がよく、それが全体のバランスに安定をもたらしている。そして、バディー・エンロウのドラムのザラッとした質感がとてもいい。ザクザクとシンバルを刻んでいて、これが気持ちいい。そ...ケニー・ドーハム中期の佳作

  • ブルーベック・カルテット最後のアルバム

    TheDaveBrubeckQuartet/TheLastTimeWeSawParis(米ColumbiaCS9672)洗練の極み、とはこのアルバムのためにある言葉。白人ミュージシャンには黒人ミュージシャンがやるようなジャズは結局できず仕舞いだったが、逆にこの洗練の高みを極めたような演奏は黒人ミュージシャンにはできない。触るのがためらわれるようなところがある。このアルバムはデイヴ・ブルーベック・カルテットの最後の公式アルバムで、この後バンドは解散した。最も成功した白人ジャズグループとして、彼らの生活は多忙を極めていた。長期間行われる世界各地でのツアー生活、その合間を縫って行われるレコーディング。そういう生活が長く続いたせいで、バンドのメンバーたちは疲弊し、精神的にも不安定になり、関係もギクシャクし始めた。...ブルーベック・カルテット最後のアルバム

  • スジの良いピアニスト

    BarbaraCarroll/"Live"HerpianoAndTrio(米WarnerBros.W1710)ピアニストとしてのスジの良さでは、このバーバラ・キャロルの右に出る人はなかなかいない。彼女のアルバムを聴くたびにそのピアニズムに深い感銘を受けるが、このライヴを聴けば、その感想が間違っていないことがよくわかる。乱れることのない運指、常に一定の音量、完璧なリズム感、そのどれをとっても超一流のピアノで、国際ピアノ・コンクールなんかで聴くピアノ演奏と同等の質感があって、それがこういうくだけたジャズ・ライヴの中で鳴っていることの驚異。果たしてどれだけの人がそのことに気が付いていただろうか。1967年のリリースで、選ばれた楽曲はお決まりのスタンダードではなく、当時の映画音楽など時代を反映したもので、そういう意味で...スジの良いピアニスト

  • 都会的なレア・グルーヴ感(2)

    DonaldByrd/SteppingIntoTomorrow(米BlueNoteBN-LA368-G)先の"PlacesAndSpaces"の半年ほど前に録音された姉妹作だが、こちらはゲイリー・バーツのサックスが前面で目立つように配置されていたり、デヴィッド・T・ウォーカーのイカしたギターが入っていたり、ストリングス・アレンジよりもシンセサイザー処理が目立つなど、演奏の構成が異なっている。そのためバンド感が感じられ、サウンドもずっとシンプルだ。それにしても何だろうなあ、このなめらかさは。白人ミュージシャンが歯ぎしりして悔しがる究極の楽園的サウンド。目を閉じて聴いていると別世界に連れて行かれて、その心地よさが罪悪感さえももたらす。そういうところに本能的に警戒心を抱く人もいるかもしれない。表面的にはそれまでのハー...都会的なレア・グルーヴ感(2)

  • 都会的なレア・グルーヴ感

    DonaldByrd/PlacesAndSpaces(米BlueNoteBN-LA549-G)ブルーノートのこの時代の作品群をそれまであまりちゃんと聴いてこなかったので、ロバート・グラスパーのブラック・レディオを最初に聴いた時に何でブルーノートからリリースされたのか腑に落ちなかったが、それは私が無知だっただけで、元々こうして下地があったということだった。"BitchesBrew"が70年、"WeatherReport"が71年、"ReturnToForever"が72年、という流れに沿うように、ドナルド・バードも70年代に入ったあたりから作風がいわゆるレア・グルーヴ系に移行し始めて、代表作と言われる本作は75年にリリースされている。ウェザー・リポート以降、白人が始めた音楽のぎこちなさや居心地の悪さと比べて、ドナ...都会的なレア・グルーヴ感

  • キャノンボール・バンドの凄み(2)

    TheCannonballAdderleySextet/InNewYork(米RiversideRLP404)キャノンボールのセクステット名義で出ているアルバムは4枚だが、そのどれもがライヴ・アルバム。その理由について、オリン・キープニューズは近年のテープ録音機やマイクの性能の大幅な向上でライヴ会場の興奮の様子がそれまで以上に上手く録れるようになったことを挙げている。特にキャノンボールのバンドの演奏に対するオーディエンスの熱狂は凄まじく、この様子を録ることがキャノンボールの音楽の本質を把握するのに1番相応しいのだ、と。彼がそう考える契機となったのがラティーフが加わる前の1959年10月のサン・フランシスコのライヴハウス"TheJazzWorkshop"でのクインテットのライヴ録音だった。当時のサン・フランシスコ...キャノンボール・バンドの凄み(2)

  • キャノンボール・バンドの凄み

    CannonballAdderley/JazzWorkshopRevisited(米RiversideRS9444)キャノンボールはやはりリヴァーサイドがいい。この前のエマーシー/マーキュリー時代やリヴァーサイドが倒産して止む無く移籍したキャピトル時代のものはレーベル側の意向が優先されたアルバムが多く、キャノンボールの姿はあまりよく見えない。それに比べて、リヴァーサイド時代は彼が当時考えていた音楽がそのままパッケージされていて、本当に自由にやっているのがよくわかる。それはオリン・キープニューズが音楽は音楽家の物だと考えて、彼らの意向を最優先にして自由にやらせたからだ。そういうのは経営者としては失格だったのかもしれないけれど、音楽プロデューサーとしては最上の資質だったと思う。それはこのレーベルに残されたアルバム群...キャノンボール・バンドの凄み

  • 秀逸な白人ジャズバンド

    TheAlBellettoSextet/SoundsandSongs(米CapitolT-6514)ワンコインでお釣りがくるこのレコードも、聴くとため息が漏れるくらい出来がいい。一応オールド・ジャズのスタイルを取っているけれど、演奏はものすごく洗練されていて、古臭さは微塵もない。感覚的にはモダン・ジャズで、インストとコーラスによる歌唱が交互に収められている。アル・ベレットはルイジアナ州立大学在学中に学生ジャズバンドを結成して、その流れでプロとして活動していたようだ。自身はサックスやクラリネットを吹いていた。彼のスモール・バンドには若き日のドン・メンザが在籍していた時期もあり、キャピトルの次に契約したキング・レコード時代の録音ではメンザの演奏が聴ける。セクステットによる軽やかな演奏はウエストコースト・ジャズとは一...秀逸な白人ジャズバンド

  • 大作曲家が歌うと・・・

    HaroldArlen/SingsHisSongs(米CapitolT-635)私ももう随分長い間レコード漁りをやっているけれど、未だにキャピトル・レーベルの全貌がよくわからない。総合メジャー・レーベルなのでジャズのカタログは少ないのかと思いきや、ビッグ・バンドやヴォーカルは知らないタイトルが今でも出てくる。ジャズがメインのマイナー・レーベルの話は多くの人が語るけど、このレーベルのことを語る人はいない。このレコードも初めて見た。大作曲家本人が自身の歌を歌うもので、こういうのはプロの芸ではなく余技だから、「困ったな・・」という感じであるのが正直なところだけど、この雰囲気のあるジャケットを見ると素通りすることはできない。古き良き時代に作られた大スタンダードばかりで、どちらかと言うと地味で渋めの曲が多いけれど、ジャズ...大作曲家が歌うと・・・

  • クロード・ソーンヒル まとめ買い

    エサ箱が干ばつ期のアフリカ大陸並みに干上がって久しい。もう1本釣りすることは叶わないので、こういう買い方をすることが多くなった。1枚480円で大半がシールドのソーンヒルが纏めてエサ箱に入っていたので、全部根こそぎ拾って来た。ラジオ録音のものは全番号が揃っているわけではないけれど、こういう機会でもなければ手に入ることはない、それなりに厄介なレコードたち。ビッグ・バンドは人気がないから、出れば例外なく安いけれど、これがなかなか出回らない。40年代がピーク期だったこともあり、正規録音が少なく、クロード・ソーンヒルが一番好きな楽団だけにそれが残念でならないけれど、そういう人は私だけではなかったようで、こうしてラジオ放送音源が残されている。1941年の演奏なんてレコードだとSPしかないから音質面では期待できないけれど、こ...クロード・ソーンヒルまとめ買い

  • サド・ジョーンズを堪能できるアルバム

    TheJonesBrothers/Keepin'UpWithTheJoneses(米MetroJazzE1003)サド、ハンク、エルヴィンの3兄弟にエディー・ジョーンズを加えたワンホーン・カルテットがアイシャム・ジョーンズやサドの楽曲を演奏する、というジョーンズ尽くしの洒落の効いたアルバム。単なるおふざけアルバムのように思われているかもしれないが、私が最も好きなサド・ジョーンズのアルバムがこれである。トランペットやフリューゲルホーンを持ち替えながらサドのプレイが最も堪能できるのがこのアルバムのいいところだ。プレーヤーとして評価されることのない彼の演奏力がこんなにも素晴らしいということがとてもよくわかる。アイシャム・ジョーンズは20世紀前半に活躍したミュージシャンで、"ItHadToBeYou"、"OnTheAl...サド・ジョーンズを堪能できるアルバム

  • レーベルは変われど演奏は変わらず

    CurtisFuller/TheCurtisFullerJazztetWithBennyGolson(米SavoyMG-12143)トランペットがアート・ファーマーからリー・モーガンに変わったジャズテットとしての演奏だが、この辺りはすべてベニー・ゴルソン人脈だから、聴く前からどういう演奏なのかはわかるし、実際、その通りの演奏が繰り広げられる。ファーマーのくすんだ音色がモーガンに置き換わって大丈夫なのか?と心配になるが、面白いことにモーガンはテーマ部のアンサンブルには加わらず、ゴルソンとフラーの2管だけでテーマを受け持つ曲が多く、そのおかげでジャズテットとしての音楽が維持されている。ゴルソン・ハーモニーを基調にしたスモーキーな雰囲気が全体に濃厚に漂い、よく考えられているのがわかる。ピアノがウィントン・ケリーという...レーベルは変われど演奏は変わらず

  • サヴォイの良心

    EddieBert/Encore(米SavoyMG-12019)白人版ベニー・グリーンとでも言うような持ち味がエディー・バートの良さだろうと思う。サックスやトランペットと張り合うべくバリバリと吹くことなんて特に興味はないよ、という感じで、のんびりと伸びやかなトーンで横糸を張る。数少ないリーダー作を出していたのは50年代で、基本的にはビッグ・バンドの中での活動がメインだったようだ。そんな感じだったから認知度は低く、誰からも相手にされない。まあ、しかたないかなとは思う。きっと、本人もそんなことはどうでもよかったんじゃないだろうか。でも、私はこの人のアルバムが結構好きで、事あるごとに引っ張り出してきて聴く。この人の音色は芯があって、バンド・サウンドの中でも埋もれることがなく、しっかりとよく聴こえる。だから、アルバム1...サヴォイの良心

  • ライヴ本来の音場感

    StanGetz/GetzAuGoGo(米VerveV6-8600)昨日、新宿で拾った安レコ。そう言えばステレオ盤は聴いたことがなかったなあと思い、値段の安さにも負けて手に取ったが、これが聴いてみて目から鱗が落ちた。家にあるモノラル盤とはまるで音場感が違う。ライヴハウスの奥行きや空間があまりにリアルで、聴いていてビビってしまうくらい生々しい。アストラット・ジルベルトの歌声の透明感も凄く、ゲッツのテナーもピッタリと定位しており、この透き通った空気感は一体何なんだと思うくらい。このアルバムは64年5月のカフェ・オー・ゴー・ゴーでの録音と、同年10月のカーネギー・ホールでの録音の2つがミックスされていて、前者の録音はカーネギー・ホールのものと比較するとデッドな音で当然音場感が落ちる。ステレオ盤が本領を発揮するのは後者...ライヴ本来の音場感

  • 名ユニットのデビュー作

    J.J.Johnson,KaiWinding/Jay&Kai(米SavoyMG-15038,15048)ディキシーランドでは主役の一角を担っていたトロンボーンもバップのような音楽には不向きとされていた中、ブレイクスルーさせたのがJJジョンソンだった。そこに目を付けたサヴォイのオジー・カデナが敢えて白人のカイ・ウィンディングを連れてきてコンピを組ませたのがJay&Kaiというユニットで、これが当たった。いろんなレーベルにレコードを残し、晩年も事あるごとに共演している。このユニットのデビューアルバムがサヴォイの2枚の10インチで、同時にジュークボック用にEPも切られていて、積極的に売り出そうとしていたのが伺える。ジャケット・デザインもリード・マイルスとバート・ゴールドブラッドを足して2で割ったようなセンスで、当時の...名ユニットのデビュー作

  • 真の実力が発揮された佳作

    TheJuniorManceTrio/That'sWhereItIs!(米CapitolST-2393)ジュニア・マンスはボビー・ティモンズなんかと一緒で、大抵「ファンキー」やら「ブルージー」の一言でかたづけられてしまって、それ以上顧みられることはない。このわかったようなわからないような形容のせいで軽く扱われてしまっているのは何とも残念だし、そもそもこれらが本当に適切な表現なのかどうかも怪しい。1947年にジーン・アモンズのバンドに参加したのを皮切りに、レスター、パーカー、スティットとの共演、兵役を経てキャノンボールの最初のバンドのレギュラー・ピアニストを務め、ダイナ・ワシントンの歌伴もやるなど、自身のリーダー作"Junior"を作るまでに長いキャリアを積んでいる。その後、リヴァーサイドと契約してトリオ作を多数...真の実力が発揮された佳作

  • ウクライナの作曲家 レインゴリト・グリエール

    BolishoiTheatreQuartet/ReinholdMoritzevichGliereStringQuartetNo.1,2(露MelodiyaM10-39653)ウクライナはリトアニア、ベラルーシと共に地理的にはロシアと東欧の間にあり、元々立ち位置としては微妙なところにあるせいで、昔から正反対の価値観の狭間で揺れ動く定めにあった。こういう所で生きていくのは本当に大変だろうと思う。先週からこの週末にかけてロシアのウクライナ侵攻のニュースを見聞きしているせいで、この地域とジャズという音楽が結びつかず、レコードを聴く気分になれない。TVニュースに出てくる専門家やネットに記事をまき散らす識者らの解説にどれだけ触れてもことの真相はまったくわからないし、プーチンの気持ちもまったく理解できない。核とか第3次大戦と...ウクライナの作曲家レインゴリト・グリエール

  • ギターを堪能した時に

    MikeElliott/Atrio(米ASI5003)シカゴ生まれのジャズ・ギタリストで、ミネアポリスのローカル・レーベルに数枚のリーダー作を残していることしかわからない、無数の無名ミュージシャンの中の一人で、これは彼のファースト・リーダー作のようだ。1974年リリースということで、古い4ビートに縛られることのない、この時代の空気に沿った音楽が展開されるが、ギター、ベース、ドラムスという好ましいフォーマットで、しっかりとジャズの雰囲気が感じられる。70年代のジャズがそれまでのジャズと違う雰囲気になるのはひとえにドラムスの演奏の仕方が変わることに拠るところが大きい。ここでもいわゆる4ビートは登場しない。エリオットのギターはびっくりするほど上手いというわけではないが技術的にはしっかりとしていて、聴き応えがある。数曲...ギターを堪能した時に

  • 彼女はおそらく誤解されている

    JoanneBrackeen/NewTrueIllusion(蘭TimelessSJP103)ジョアン・ブラッキーンと言えば、スタン・ゲッツのバンドで硬派にガンガン鳴らしていた人、というイメージが一般的ではないかと思う。私もかつてはそう思っていたし、「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズに参加した唯一の女性ピアニスト」という現代では間違いなく問題になるであろう紹介のされ方をするのがお決まりで、とにかく男勝りというイメージだろうが、これは明らかに誤解である。ろくに聴きもしない上に、更に前時代的な冠を付けるもんだから、一向にそのイメージは回復しない。1938年生まれだからチック・コリアの3歳年上だが、そういう世代の人で、プロとして活動を始めたのがハード・バップがピークを越えた頃だから、そういうものが身体...彼女はおそらく誤解されている

  • キュビズム採用の意味を探ると

    JimmyRowlesTrio/Rare-ButWellDone(米LibertyLRP3003)ビリー・ホリデイやペギー・リー、サラ、エラ、カーメンらの歌伴としての活動やゲッツ、ズートらのバックの演奏で名を上げた人だが、並行して自己名義のアルバムもそこそこ残している。その割にはジャズ・ピアニストとしての名声はさほど高くなく、"シブい人"の代表格として扱われるのがお決まりになっているが、それはなぜだろうか。ワレがオレが、という姿勢がなく、終始穏やかな作風だったし、3大レーベルやメジャー・レーベルにも作品が残っていないことなどが主たる原因なんだろうけど、ただそれだけのせいということでもなさそうである。結構捻りの効いた作品が多い中、50年代に残したこのアルバムがピアノ・トリオとして最もストレートな作風だけど、これを...キュビズム採用の意味を探ると

  • Walk On By

    DianaKrall/QuietNights(E.UVerve0602517981256)ダイアナ・クラールのアルバムはどれも素晴らしいが、昔から好きな"WalkOnBy"が入っているこのアルバムは特に偏愛している。バカラックが書いたこの曲は世界中の人から長年愛される名曲で、ディオンヌ・ワーウィックが歌ってヒットした。バカラック・メロディーの特徴が凝縮されていて、サビのメロディーに入るところの飛翔の仕方とか劇的な転調の使い方が如何にもバカラック的だ。モーツァルトやポール・マッカートニー、ブライアン・ウィルソンなど、ごく限られた人だけに与えられたこのメロディーを創れる才能の中でもバカラックのものが一番顕著でわかりやすい。艶のあるデリケートで控えめなオーケストレーションを背景に、ゆったりとしたボサノヴァとして歌われ...WalkOnBy

  • ボブ・ブルックマイヤーの実力

    BobBrookmeyerOrchestra/GloomySundayandOtherBrightMoments(米VerveV6-8455)ボブ・ブルックマイヤーの生涯を眺めていると、ソリストとしての活動と同等か、若しくはそれ以上の割合で実際はビッグ・バンドの仕事に携わっていたんだなということがわかる。ビッグ・バンド後進国の日本ではこの形態は評価されないし、聴く人も少ないから、彼のそういう側面がまともに取り上げられることはないし、そもそもトロンボーンも人気がないから、高名な割には彼の実像を把握している人はあまりいないのではないか。せいぜい、ゲッツの横で一時期バルブ・トロンボーンで何かモソモソ言っていた人、くらいの認識が関の山だろう。自分名義のラージ・アンサンブルを持たなかったせいもあって、彼のそういう一面はほ...ボブ・ブルックマイヤーの実力

  • 幻の歌手、バディー・スチュワート

    CharlieVentura/EastOfSues(米RegentMG-6064)このレコードはある1点においてのみ、非常に貴重で存在意義のあるレコードである。主役のチャーリー・ヴェンチュラには申し訳ないけど、そこには彼の出番はない。それは、バディー・スチュワートの歌が聴けることである。彼は40年代初頭にクロード・ソーンヒル楽団のザ・スノーフレークスのメンバーとして活躍し、2年の兵役を経てジーン・クルーパー楽団のザ・Gノーターズにも参加、その後49年にこのヴェンチュラのバンドでソロで数曲歌い、カイ・ウェイテイング、チャーリー・バーネット楽団などを渡り歩いたが、50年にニュー・メキシコで家族共々自動車事故に会い、亡くなっている。こういう経歴だからソロ・アルバムは残しておらず、その大半が単発のSP録音のみで纏まった...幻の歌手、バディー・スチュワート

  • 実にシブい良作

    CharlieByrd/BluesForNightPeople(米SavoyMG-12116)ジャケットデザインで損をしているが、最高にイカしたアルバムだ。1,000円で拾ったセカンドを聴いて気に入ったので初版を探していたが、680円で転がっているのを見つけて、新年早々縁起がいい。裏ジャケットに"SpanishGuitar"と記載されていることからガット・ギターを弾いているようだが、音色の粒立ちが良く、素晴らしい。バックはベースとドラムスのみのシンプルな構成になっているのがいい。キーター・ベッツにガス・ジョンソンなんて、泣かせる顔ぶれだ。タイトルの通り、深夜の雰囲気に溢れた落ち着いてシブい内容だ。A面は組曲になっていて、FirstShow~2:00A.M.~4O'ClockFunkという建付けの下、穏やかな演奏...実にシブい良作

  • イタリアを巡る狂騒曲

    ChetBaker/WithFiftyItalianStrings(米JazzlamdJLP9215)1959年の秋にチェットが欧州へ演奏ツアーに出かけた際、ミラノ滞在中に現地のスタジオで中規模の弦楽団をバックにスタンダードを収録したアルバムで、レコードとしてはアメリカではJazzlandから、イタリアではCelsonからリリースされている。イタリア録音だからCelsonがオリジナルだと一部では認識されているようだが、これは単なる誤解である。当時、チェットはリヴァーサイドのビル・グラウアーとアルバム5枚分の録音をすることを約束していて(但し、当時の大方のミュージシャンがそうだったように、正式な契約書類は取り交わしてはいない)、これはその中の1枚であるに過ぎない。このジャケットの裏側には「この新しいジャズランド・...イタリアを巡る狂騒曲

  • セシル・テイラーを聴きながら街中を歩く

    CecilTaylor/GardenPart1,2(スイスhatARTCD6050,6051)街中の雑踏を歩いている時に、ふと、セシル・テイラーを聴きたくなる時がある。人々の歩く足音や交わす会話、車の行き交う音などの無軌道な交差がそう思わせるのかもしれないし、そういう雑音の背景にある虚無感のようなものに重なるものがあるからなのかもしれない。そういう時のためにiPodに音源を入れて常に持ち歩いているのだけれど、彼のCDは意外と入手が難しく、好きな作品でも手に入らないタイトルがたくさんある。この"ガーデン"は好きなアルバムだが、そもそもCDが出ているということを知らなくて、これはレコードで聴くしかないものとばかり思い込んでいた。ところがひょんなことからPart1が転がっているところに遭遇して軽い衝撃を受けた。いささ...セシル・テイラーを聴きながら街中を歩く

  • マサチューセッツのクリスマス

    GregAbate/It'sChristmastime(米BrownstoneRecordingsBRCD959)最近よく聴いているのが、このグレッグ・アベイト。1947年マサチューセッツ州生まれのマルチリード奏者だ。特にメディアが取り上げるでもなく、誰かが褒めるわけでもない、知名度という意味では完全にマイナーな人。でも、楽器はおそろしく上手い。一応アルトがメインのようだが、テナーもフルートも吹くし、ソプラノも物凄く上手い。非常にオーソドックスなジャズを身上としていて、誰かのモノマネではない、自分の音楽をやっている。音楽の質感は現代ジャズだが、きちんとメインストリームを踏まえたものなので、古いジャズしか聴かない人にも抵抗感なく受け入れられるだろう。アルバムもそこそこ出ており、掲載には間に合わなかったがこういうク...マサチューセッツのクリスマス

  • 厳かなクリスマス

    BingCrosby/MerryChristmas(米DeccaDL8123)ビング・クロスビーが歌った"WhiteChristmas"は永遠のマスター・ピースで、おそらく世界で最も売れたクリスマス・ソング。最初の録音は1942年でSPでリリースされ、1945年に再レコーディングされてVディスクでリリース。この45年ヴァージョンが1955年リリースの12インチLPに収録されて、こちらが定番となった。ビング・クロスビーのデッカ時代は40年代で、数えきれないほどの歌が録音されている。そのためこの12インチLPも複数のレコーディングがミックスされているため、バックのオケやコーラスもメンツはバラバラだが、やはりアンドリュー・シスターズとの歌が印象に残る。お上品とは言い難いハーモニーだが、クロスビーのジェントルな歌声とは...厳かなクリスマス

  • 明るいムードのクリスマス

    EllaFitzgerald/EllaWishesYouASwingingChristmas(米VerveMGV-4042)タイトルが示す通り、フランク・デ・ヴォル指揮のビッグ・バンドをバックにエラが歌う明るく朗らかなクリスマス・ソング集。家族や親戚、親しい友人が集まる夜の団欒のために、人混みで賑わう市場で食糧や飲み物を買い込んでいる時に感じる、慌ただしくも幸せな気分を表現しているという感じだろう。クリスマスには対立する2つのイメージがあるように思う。大勢で賑やかに祝うクリスマスと、大切な人・教会などで静かに祝うクリスマス。暖かい家で家族や友人と共に過ごすクリスマスと、寒空の下で一人孤独に過ごすクリスマス。このアルバムは言うまでもなく、前者の明るいムードのクリスマスだ。エラもスタジオ録音らしく落ち着いた様子でわ...明るいムードのクリスマス

  • 日本ビクター盤で聴く "Waltz For Debby" の愉楽(5)

    BillEvans/WaltzForDebby(日本ビクターVIJJ-30011)日本ビクターが1993年にリリースした4回目のプレス。93年と言えばCDへの移行が完了した時期で、こういうアナログが出るのは珍しく、帯にも書かれているように「完全限定プレス」だった。レコードへの未練が残る最後のユーザに向けた、これが辞世の句だったのだろう。レーベル・デザインがオリジナルのそれを模しており、そういうマニアをターゲットにしたリリースであったことがここからも伺える。私の感覚ではこのプレスが1番入手が難しい。先の3枚はいずれも千円台で何の苦も無く入手したが、このプレスだけが長い間見つからず、ようやく見つけた3年ほど前の時点で既に4千円の値が付いていた。規格番号からも類推できるように、84年プレスの音質をベースにして更にマス...日本ビクター盤で聴く"WaltzForDebby"の愉楽(5)

  • 日本ビクター盤で聴く "Waltz For Debby" の愉楽(3)

    BillEvans/WaltzForDebby(日本ビクターVIJ-113)1984年に日本ビクターが再カッティングして3度目にリリースしたアルバム。前回同様、"LoCeleRecordCompany"が持つマスターを使った、とあるが、この会社はネットで調べても何も出てこず、住所がケイマン諸島だったことがわかるのみ。つまり、この会社は実態のない、ダミー会社だったということだろう。カリブ海に浮かぶケイマン諸島はタックス・ヘイヴン政策を取っていたため、税金逃れ目的の金融が流入していたから、おそらくこれはアメリカのどこかの会社(あるいは個人)が作ったダミー会社である。片や、日本語のライナー・ノーツには"FantasyRecords,INC.USA"が持つマスターを使ったという記載があるから、ファンタジー社のペーパー・...日本ビクター盤で聴く"WaltzForDebby"の愉楽(3)

  • 日本ビクター盤で聴く "Waltz For Debby" の愉楽(3)

    BillEvans/WaltzForDebby(日本ビクターSMJ-6118)日本ビクターが75年にリリースした第2回目のプレス。この時に選ばれたマスターはアメリカのマイルストーン・レーベルのマスターだった。だから、第1回目のペラジャケとは当然音が違う。マイルストーン・レーベルのマスターは以前このブログでも取り上げた通り、キープニューズが版権を買い戻してファンタジー社のエンジニアにリマスタリングさせたものだが、どうやらビクターも更にマスタリングし直しているようだ。マイルストーン盤のナチュラルさをベースにしながらも、各楽器の音の輪郭が格段にクッキリとしていて、より生々しくなっている。1番改善されているのはモチアンのブラシで、音圧が上がり、音楽がより踊っている。このアルバムの成功の立役者がモチアンだったことがこの版...日本ビクター盤で聴く"WaltzForDebby"の愉楽(3)

  • 日本ビクター盤で聴く "Waltz For Debby" の愉楽(2)

    BillEvans/WaltzForDebby(日本ビクターSR-7015)日本で最初にこのタイトルがリリースされたのは1962年ということになっていて、この年に本国アメリカを含め、西側各国でリリースされたということになっている。欧州ではフォンタナやフィリップスがプレスしていて、リヴァーサイドの共同経営者だったビル・グラウアーが海外販路拡大を狙って各社と提携を進めたが、その時、日本のような小国は考慮されていなかったようで、日本ビクターはフォンタナ社からマスターを取り寄せてプレスしたらしい。そういう流れだったから、果たして62年に本当にリリースされたのかどうかは定かではないけど、60年も前のことなのでよくわからない。しかも、欧米ではモノラルとステレオの両方がリリースされたが、日本はステレオだけの発売だった。以降、...日本ビクター盤で聴く"WaltzForDebby"の愉楽(2)

  • 日本ビクター盤で聴く "Waltz For Debby" の愉楽(1)

    これまでさんざん書いてきたことだけど、日本ビクター盤はとてもいいレコードだ。私はプレスティッジやリヴァーサイドのレコードに関してはビクター盤を聴いて育ったから、特別な愛着がある。きちんと調整されたオーディオ環境で音量を上げて聴けば、ビクター盤の本当の真価がわかる。国内盤は音が悪くて、と言っている人がいたら、それはオーディオの設定がおかしいのだと思った方がいい。もちろんすべてのタイトルが、というわけではないけれど、主要なタイトルに関してはビクター盤には固有の素晴らしさがあって、とても楽しみながら聴くことができる。だから、例えば"ワルツ"に関しては4つの版を聴いていて、これが全部違う音なのだ。この違いが楽しいのである。ビクターが最初に"ワルツ"を出したのは1962年で、オリジナルと同じ時期ということになる。以降、7...日本ビクター盤で聴く"WaltzForDebby"の愉楽(1)

  • 上善は水の如し

    JohnPuchett/MeetJohnPuckettAndHisPiano(米KingRecords546)部屋の模様替えをする必要があって、レコードの棚卸をしていたら出てきたレコード。持っていることなんて、すっかり忘れていた。正体不明のピアニストで、ネットで調べると過去に言及されたのはマイナー盤に光を当てる"APlaceInTheSun"での記事1度のみ(さすが)。面白い話が紹介されていて、どこかのお店のHPで25万円で売られていて(どこだろう?)、それが売れたのを目撃したけど、どう考えてもこんな値段になるレコードには思えず、おそらくネット上の値段表記は桁間違いだったのだろう、という冷静な考察をされている。実際のところはどうなんどろう、と旧ヴィンテージの池田さんに「どう思いますか?」と訊いてみたら、「確かに...上善は水の如し

  • 日本版仏シネ・ジャズ

    ModernJazzPlayboys/ModernJazzScreenMood(日本NitchikuIndustrialCompanyNL1015)中古漁りはもう壊滅的な状況で、何1つ買えない状態が続いている。コロナ禍前は安レコ・ミドルクラスだったものが軒並み高額盤になり、ちょっと信じられないような値段でセールに出ている今のこの状況は、一体何なのだろう。もう、ジャズの中古市場は終わったのかもしれない。今、一番元気なのはJ-Popなんだろうなと思う。文化の日にレコード屋に行ったら竹内まりやのレコードが大量に並んでいて驚いたけど、ああいう風に再プレスされるくらいだから、それだけニーズがあるということなんだろう。ロックも国内盤が景気のいい値段がついてたくさん並んでいるから、それなりに盛況のように見える。やはりダメなの...日本版仏シネ・ジャズ

  • 剥き出しの姿

    SonnyRollins/EastBroadwayRunDown(米Impulse!A-9121)1966年1月にコルトレーン・グループから脱退したエルヴィン・ジョーンズ、まだ在籍中だったジミー・ギャリソンらを使って同年5月に制作されたアルバム。プロデューサーの意向だったのか、ロリンズの意志だったのかはわからないが、コルトレーン・バンドに似たサウンドになることは予め承知の上で録音されただろうから、コルトレーンに逆影響されて、という批判は当てはまらない。元々ロリンズは共演者には無頓着で誰でも受け入れたし、自己のレギュラーバンドにも興味を示さなかった。バンドとしての総合音楽で勝負したマイルスやコルトレーンとは違い、いつも自分の身体1つで音楽を体現していて、タイプがまったく違う。ここでもエルヴィンやギャリソンがやると...剥き出しの姿

  • 第18回 ショパン国際ピアノコンクールの様子がリアルタイムで観れるなんて

    今、ちょうど第18回のショパン・コンクールの予選がワルシャワで開かれていて、その様子がネットでほぼリアルタイムに観ることができる。https://chopin2020.pl/en/5年に1度開かれるこのピアノ・コンクールはおそらく現存するコンクールの中では最も古く、権威があり、一番有名である。オリンピックと一緒で、本当は去年開かれるはずだったが、コロナ禍で1年延期となり、今年の開催となっているわけだ。活字でしか知らなかったこのコンクールが自宅に居ながらリアルに鑑賞することができるなんて、何だか信じられない世の中になったものだ。このコンクールはその名の通り、ショパンの曲しか弾くことが許されない。コンクールの開催理念が、ショパンの優れた解釈者を発掘することが目的だからだ。ただ如何せん、私はショパンの曲が概ね嫌いだ。...第18回ショパン国際ピアノコンクールの様子がリアルタイムで観れるなんて

  • 滋味深いアンサンブル

    MiltJackson/S/T(米PrestigePRLP7003)ミルト・ジャクソンの古い時期のレコードだが、再発がたくさん出ており、よく聴かれている作品だ。スタンダードがメインとなっていて平易な内容であることから、地味ながらも一定の人気がある。ビ・バップ期に頭角を現して、そのままスムースにハードバップ期に移行できたヴィブラフォンの第一人者で、この後に出てきた他のヴァイブ奏者たちは同じことをやっても勝ち目はないということで、そのすべてが独自路線に走るしかなかった。ある者は実験的な音楽を、ある者はピアノと併用するなど、図らずも後継者をシャットアウトしてしまった感がある。黒人ミュージシャンに至っては、この楽器で世に出ること自体、最初から諦めていたようなフシがあるくらいで、その存在感は計り知れないところがあったのだ...滋味深いアンサンブル

  • 無名で居続けることの素晴らしさ

    TimSiciliano/InTheAttic(米CreativeImprovisedMusicProjectCIMP#381)TimSiciliano/LiveFromThePast(米EndeavorRecordsEV-1401)こんなに情報がない人も珍しい。1958年ニューヨーク生まれとのことだが、だとすると、これらの演奏は40代の頃のものということになる。メディアに取り上げらることなく、こうして黙々と優れた演奏活動をしている人は星の数ほどいるだろうが、彼もその中の1人かもしれない。権威主義が蔓延する日本のマニアたちにとって、彼のような人はこの世に存在しないにも等しいのだろう。ピアノなどの鍵盤楽器のいないトリオで、ギターの魅力が最大限に発揮される。誰からの影響も感じさせない、それでいてジャズのスピリット剥...無名で居続けることの素晴らしさ

  • 新しいクラシックとして

    JohnMcLaughlin/TimeRemembered~PlaysBillEvans(米Verve314519861-2)1993年のイタリア録音とのことだが、こんな録音があったなんてまったく知らなかった。マクラフリンのいわゆる「名盤」を聴いていると、なんとなく説教されているような気分になって途中で投げ出してしまうことが多かったから、いつの間にか視界の外の人になっていた。4本のアコースティック・ギターにアコースティック・ベース・ギターを加えた五重奏をバックに、マクラフリンもアコギ1本でエヴァンスの作曲した楽曲を奏でる内容。きちんとツボを押さえたプログラムが組まれている。聴いてみて、これが驚いた。まるでウィンダム・ヒルのウィリアム・アッカーマンかマイケル・ヘッジスですか?という感じの音楽なのだ。それらをもっと...新しいクラシックとして

  • 木曜日のテーマ、とは何か

    BennyGolson/&ThePhiladelphians(米UnitedArtistsUAL4020)ペンシルベニア州フィラデルフィア出身のミュージシャンが集まって作られたアルバム。パーシー・ヒースはノースカロライナ州生まれだが、その後すぐにフィラデルフィアに引っ越したから、ギリギリセーフ。どの国でもそうだが、人は出身地にこだわるものだ。出身地を知ることでその人となりがなんとなくわかるような気がするから不思議なものだ。フィラデルフィアはワシントンD.Cとニューヨークのちょうど中間にある都市で、文化レベルの高い街だったから、優秀な人材が輩出されるのは不思議ではない。スタン・ゲッツもフィラデルフィア出身だった。メンツからはバリバリのハード・バップを想像してしまうが、意外と落ち着いた雰囲気の仕上がりになっている。...木曜日のテーマ、とは何か

  • R.I.P チャーリー・ワッツ

    TheRollingStones/TattooYou(日本ユニバーサルミュージックUICY-20198)私が初めて聴いたストーンズがこれだった。新譜として発売されて、少し経った後だったと思う。ストーンズの名前はもちろん知っていたし、ロック界における位置付けや存在意義もある程度はわかっていたが、当時は別のグループに夢中になっていたので、少ない小遣いでは当然手が回らず、通学路の途中に通り抜ける商店街の中にあった貸しレコード屋"友&愛"で借りたんだと思う。懐かしき高校時代。その後、ストーンズのアルバムはほぼ全部聴いたけど、やはり若き日に刷り込まれた最初の1枚の印象は強烈で、未だにこれが1番好きかもしれない。私は後期のストーンズのアルバムが結構で好きで、初期の頼りないサウンドのものよりは後期のバリバリにリッチなサウンド...R.I.Pチャーリー・ワッツ

  • 夜の記憶

    JakobBroTrio/WhoSaidGayParee?(EULovelandRecordsLLR010)2008年5月にコペンハーゲンのSweetSilenceStudiosで録音されたギター・トリオによるアルバムで、スタンダード集だ。アルバム・タイトルの"WhoSaidGayParee?"というのはコール・ポーター作だそうで、他では聴いたことがない。また、コルトレーンの"FifthHouse"なんかもやっていて、ちょこっと捻りが効いている。2015年にECMと契約する前は地元の"Loveland"というレーベルから毎年1作程度のペースをアルバムをたくさん出しているが、日本では当時は「知る人ぞ知る」という感じだったような印象が残っている。ECM契約後はレーベル・パブリシティーの違いからようやく認知度が上がっ...夜の記憶

  • 美しいメランコリア

    DukeEllington/TheDukePlaysEllington(米CapitolT-477)エリントンが自作の曲をウェンデル・マーシャル、ブッチ・バラードらとのピアノ・トリオで弾いていく。とても落ち着いた、澄んだ心持ちで弾いている様子が素晴らしい。エリントンらしい諧謔に満ちた、それでいて不思議と美しいメロディーがどの曲にも零れんばかりに溢れている。ただ、楽譜に書かれた音符を弾いているだけでは、この世界を生み出すことはできないだろう。エリントン独特の間の取り方や打鍵の質感があってこそ、である。このアルバムの白眉は、"Melancholia"。ベースとのデュオで奏でられるこの美しさは筆舌に尽くし難い。これまでにいろんなミュージシャンがこの曲を取り上げてきたが、誰一人、この美しさを再現できた者はいなかった。あ...美しいメランコリア

  • 彼女が本当に好きなら

    BillieHoliday/TheBluesAreBrewin'(米DeccaDL8701)ビリー・ホリデイの歌手としてのキャリアは1930年代前半から59年までと相当の期間があったが、それに比べて録音はさほど多くなく、一通り聴くのに時間はかからない。そんな中で最も埋もれているのがこのアルバムだろう。1946年から49年の間にデッカに吹き込まれたSP録音の曲を58年に12インチLPに切り直したもの。スタンダードは"LoverMan"の方へ片寄せされて、それ以外の無名のブルースばかりを集めたせいで地味な印象となっているが、これが非常にいい出来だ。声は若々しく、表情も明るく、録音状態も良好だ。ルイ・アームストロングとのデュエットも2曲含まれていて、いいアクセントになっている。アルバム・タイトルになっている"TheB...彼女が本当に好きなら

  • メル・トーメが歌うレコード

    ArtieShaw/PlaysColePorter(米MGME-517)レギュラー盤の新入荷コーナーでパタパタしていて、フッと手が止まったレコード。メル・トーメが歌っているではないか。"WhatIsThisThingCalledLove"、"GetOutOfTown"の2曲だけだけど、こんなところで歌っているなんて知らなかった。アーティー・ショウと言えば”Moonglow"だし、ビリー・ホリデイを専属歌手にして史上初めて白人バンドに黒人歌手を常設したり、グラマシー5という小編成のコンボもやるなど、見かけのイメージとは違ってなかなか硬派なところがあった。ショウ・ビジネスの世界で大成功し、50年代中期に早々と音楽界からは引退したので、残ったレコードはスィング時代のものが多く、この10インチもそんな中の1つだが、テデ...メル・トーメが歌うレコード

  • このアルバムの歴史的位置付けについて

    StanGetz/AtLarge(米VerveMGV-8393-2)1958年に妻が妊娠し、出産を彼女の故郷であるスェーデンで迎えることにしたスタン・ゲッツは一家で渡欧し、デンマークのコペンハーゲンに居を構えた。当時の北欧でジャズをやるにはこの街が最も適していて、妻の実家からも車で1時間ほどの距離だったからだった。初めは現地のミュージシャンと演奏をしたが、あまりの実力の無さにメンバー探しをしなければいけない状態になり、オスカー・ペティフォードがアメリカを逃れてきたのを機に2人は一緒に演奏をするようになった。この時にヤン・ヨハンセンも呼び寄せた。人種差別がなく、クリーンなコペンハーゲンでゲッツ一家は暖かく迎え入れられて、しばらくは安定した日々が続いた。ゲッツの家は大きな邸宅で、北欧にやって来たミュージシャンたちは...このアルバムの歴史的位置付けについて

  • 無名の新人たちからの挨拶

    KennyClarke/BohemiaAfterDark(米SavoyMG12017)1955年7月14日に初リーダー作を作ることになった1ヵ月前に、キャノンボールはレコーディング・デビューをサヴォイで果たしている。ケニー・クラーク名義になっているが、このレコーディングが行われたのはキャノンボールが契機になっていて、この時の話はシンデレラ・ストーリーとして今に語り継がれている。1955年6月のある夜、オスカー・ペティフォードは自身のバンドを率いてカフェ・ボヘミアで演奏することになっていたが、メンバーの1人、ジェローム・リチャードソンが行方不明でバンドに欠員が出た。ちょうど観客の中にチャーリー・ラウズがいたので、彼にバンドに参加するように声を掛けたが、この時ラウズはテナーを持っていなかった。この時、偶然にも店内に...無名の新人たちからの挨拶

  • 本当の姿が写るデビュー作

    Jullian"Cannonball"Adderley/PresentingCannonball(米SavoyMG12018)音楽に限らず、文化・芸術の分野において、デビュー作にはそのアーティストの本当の姿が写っている、と言う。普通はその人の代表作と言われるものから入って、それが気に入れば他の作品にも手を拡げ、やがてはデビュー作に触れることになる。そして、確かにそうだな、と感じることが多いのは事実だろう。私の場合も例外ではなく、最初に聴いたのは"Somethin'Else"で、その後はリヴァーサイドで、というお決まりのコースだったが、40年近く経ってようやくデビュー作へとたどり着いた。理由は簡単で、このレコードが珍しいからである。ハンク・ジョーンズ、ポール・チェンバース、ケニー・クラークというベストな布陣の下、...本当の姿が写るデビュー作

  • エサ箱で見つけることへのこだわり

    DickHaymes/Serenade(米DECCADL5341)HarryJames/TheManWithTheHorn(米ColumbiaCL2527)ディック・ヘイムズが好きなので、常時、彼のレコードがないかなと心のどこかで思いながらエサ箱を漁っている。イマドキこんなのは誰も聴かないから、レコード自体出回ることがないのはわかっているけれど、それでもまあ、ないかなと願いながらパタパタやっている。もう何年も出逢いはなかったけど、このところ立て続けに拾うことができた。どちらもSP録音の10インチ切り直し盤で古いレコードだが、まるで新品のようなきれいな状態だった。特にデッカ盤は傷んでいることがほとんどだから、こういうのは本当に珍しい。コロンビアの方はハリー・ジェイムスのレコードだが、この中で"I'llGetBy"...エサ箱で見つけることへのこだわり

  • ステレオプレスで聴くべき盤

    MiltJacksonQuartet/Statements(米Impulse!A-14-S)ヴァン・ゲルダーのステレオ録音の美しさを実感できる1枚。このアルバムはステレオプレスで聴くべき。ヴィブラフォンのシリンダーが響く音色が涼やかで何とも美しい。きらきらと輝きながら宙を舞う様が見える。バックはハンク・ジョーンズ、ポール・チェンバース、コニー・ケイだが、この3つの楽器の音も見事に捉えられている。コニー・ケイのショット1つ1つが広い空間の中に響き、そこが奥行きのある空間であることがよくわかるし、チェンバースのベースの質感も実にリアルに録られている。インパルスのステレオ録音は非常にいい。手垢の付いたスタンダードを入れず、自作やジャズメンのオリジナル曲で固めたところもいい。ムードに流さたイージーな雰囲気にならず、質感...ステレオプレスで聴くべき盤

  • ガチ中のガチ

    意表を突いたクラシックのレコード本だけど、私は面白く読んだ。ただ、これからクラシックを聴こうかという人は、ここに載っているアルバムを買うのは止めておく方がいい。ここに載っているのは何十年もクラシックを聴いてきて、世に言う名演・名盤は一通り聴いて、その次の次の次くらいに聴くものが大半で、つまり、ガチ中のガチだからである。本人は高価な稀少盤の知識は持ち合わせていない、と書いているけど、これはおそらく違うだろう。ジャズのレコードを漁るのと同じスタイルでレコードを探していれば、否が応でもそういう知識は身に着く。でも、ただでさえ妬み・やっかみを買いやすい立場にいるのに、稀少盤やら高額盤やらを見せびらかせば総スカンを喰うことは火を見るより明らかだから、そういうものはここでは徹底的に排除されている。つまり、そういう知識が無け...ガチ中のガチ

  • 白ワインとパンが似合う音楽

    OscarPeterson-StephaneGurapplli/QuartetVol.2(日本コロンビアYX-7008-MU)ステファン・グラッペリの演奏はたまに訳もなく聴きたくなる時があるので、何かいいレコードはないかなと常々思っていたら、これに当たった。とにかくペデルセンのベースが最高に良くて、やっぱりすごいベーシストだったことを改めて実感する。メンツから見て、おそらくフランスで録音されたのだろう。73年のアメリカでは考えられない、優雅な雰囲気に満ちている。白い壁のこじんまりとした小さな家、陽当たりのいい庭に置かれたテーブルの上にはバスケットに入った冷えた白ワインと小麦の香りがするパン。そういう永遠の憧憬のような風景が浮かんでくる。ステファン・グラッペリの音楽はそういう音楽だ。ヴァイオリンで奏でられるジャズ...白ワインとパンが似合う音楽

  • 音のいいパーカーのブートを探す(2)

    CharlieParker/Cheers(スコットランドS.C.A.M.RecordsJPG2)このS.C.A.M(SpeciallyCollectedAmericanMusic)というレーベルはエジンバラに居を構えていたらしいが、パーカーのブートを4枚出しただけだったらしい。レコード会社というより、個人が自費出版したのではないだろうか。それにしてはジャケットはラミネート仕様で丁寧な創りだし、プレスもしっかりとしていて、ブート臭さはあまりない。そして何より、パーカーの音が非常にいい。公式録音のものと同等、若しくはそれ以上の音なのだ。1949~53年にかけての複数の演奏が収められているにも関わらず、一貫してパーカーのアルトが朗々と太い音で鳴っている。レッド・ロドニーとのクィンテットだったり、パウエル、ミンガスとの...音のいいパーカーのブートを探す(2)

  • 音のいいパーカーのブートを探す

    CharlieParker/1949Concert(OSR2405)パーカーの公式録音(レーベルとの正式契約に基づく録音)は数が多くなく、すぐに全部聴けてしまうので、やがて物足りなくなる。そして、もっと聴きたいという欲求が募り、人をブートへと走らせるわけである。但し、問題はその音質。時代的には当時ようやく商用として発売されだしたポータブル・テープレコーダーをライヴ会場に持ち込んで、ステージ横の階段だったり、裏手のトイレの前だったり、2階の物置部屋なんかでこっそりと録音されたので、音質の悪いものがほとんど。まあ、パーカーに限らず、これはブートの宿命なのでとやかく言っても始まらない。パーカーの演奏はどんな演奏であっても記録に残されるべきだと考えた人たちがいて、情熱をもってパーカーの追っかけをやって(中には職を投げ打...音のいいパーカーのブートを探す

  • 作曲家としてのバド・パウエル

    Rossy&KananQuartet/BUD(SwitRecordsB07CZSTVX8)Tadd&Thad(SwitRecords8427702900308)JorgRossyのヴィブラフォン、MichaelKananらのピアノ・トリオによるソング・ブック・シリーズで、他にガーシュイン、H.アーレンのものも出ているが、ガーシュインやアーレンのものはアレンジ先行であまり面白くないので、この2枚だけ手許に残した。非常に素直でオーソドックスな演奏で、好感度の高い内容だ。落ち着いた佇まいで、人のいない小さな美術館の清潔な部屋の中にいるような気分になる。バップ期のジャズ・メンが作ったオリジナル曲のエッセンスを漏らさず、センスよく纏めた演奏が見事だが、特にパウエルの楽曲集が秀でた内容だ。考えてみるに、パウエルの楽曲だけを...作曲家としてのバド・パウエル

  • 新鮮な風に吹かれるような

    BillEvans/OnAFridayEvening(CraftRecordings7215863)発売されてすぐに入手して1日置きくらいに聴いているが、完成されたデリケートな演奏に深い満足感を覚えている。音質はピアノが奥にいてドラムが手前にいるような音場感だが、全体的に変な色付けなどされておらず、素直でナチュラルな音質で、とてもいいと思う。リヴァーサイドのレコードを聴いて育った私なんかは、エヴァンスのピアノは変にハイファイな音質で聴くより、こういうややナローな音で聴く方が好ましい。これこそ、エヴァンスのピアノだと思うのだ。晩年によく取り上げていた楽曲群がやはり新鮮で、エヴァンスの当時の新しい心境が作る世界観に自分がいられることに喜びを感じる。久し振りに取れた長期休暇で海外のリゾート地に降り立ったような、何とも...新鮮な風に吹かれるような

  • 驚きの1枚

    AnnePhillips/LiveattheJazzBakery(米ConawagoRecords1014)レコード漁りが絶不調の中でCD棚を漁っていると、怪我の功名か、思わぬ作品に出合う。私がほぼ唯一(と言っていい)聴く白人女性ヴォーカルのアン・フィリップスのライヴCDもその1つ。彼女は1959年にルーレットから"BornToBeBlues"をリリースして、心あるヴォーカル・ファンの気持ちを鷲掴みにしてきたが、いわゆるジャズの範疇に入るアルバムはこの1作のみ。70年代にもアルバムはあるようだが、どうも内容的にはジャズではなさそうだ。1作だけで表舞台からは消えたのかと思っていたが、引退したのではなく、裏方としてコマーシャル・ソングを歌ったり、クラブなどで歌ったりしていたそうだ。そんな地道な活動の1コマとして、2...驚きの1枚

  • 70年代は死の時代

    TheThadJones/MelLewisQuartet(米ArtistsHouseAH-3)こんなレコードがあるなんて知らなかったが、1977年9月24日、マイアミのエアライナー・ラウンジでのライヴ演奏。サドメルがカルテットとしてレコードを作るのはこれが初めてだったらしい。ハロルド・ダンコがピアノ、ルーファス・リードがベースを受け持つ。スダンダードをリラックスした雰囲気で演奏するという気負ったところが何もない内容で、彼らの日常の一コマが切り取られたような微笑ましいものだ。ただ、サド・ジョーンズは音程も怪しいし、音量も豊かとは言えず、演奏家としての最盛期はとうに過ぎている感じで、あまり楽しくない。ダンコやリードの演奏はすごく上手いけれど、音楽全体としては弛緩しており、正直言って退屈だ。聴いているうちに途中で知ら...70年代は死の時代

  • 久し振りの散財

    昨年の冬以降、まったく拾うことができなかったが、ようやく拾えた。3枚も買うなんて、いつ振りのことだろう。新宿に着いたのは16時を過ぎた頃。道すがらブログを眺めて「このキャノンボールのデビュー作は珍しいなあ、聴いたことないし」と思っていたら、ちゃんと売れ残っていた。日頃哀れな私のために、神様が残しておいてくださったのだろう。謎のピアノ・トリオとサド・メルのワンホーン・カルテット作、どちらも3桁盤だが、聴いたことがないのでこちらも拾っておく。リー・モーガンの"Indeed!"は45万だったそう。値段を付けた張本人曰く、「トップ・コンディションという訳ではなかったけど、十分きれいだったので」とのことだった。抽選券を取りに集まったのは20人だったそうで、「どれも意図的に限界を超えた値段を付けたけど、30秒ほどで壁から無...久し振りの散財

  • 静謐な高級感

    TillBrenner/Nightfall(EUOKeh88985492112)週末にユニオンに行ったら壁一面にプレスティッジやリヴァーサイドのビクター盤がずらりと並んでいて、驚いた。とうとうこんなことをし出した。昔のビクター盤はいいレコードなので別に問題はないけれど、壁に飾るレコードじゃない。レコード不足は深刻なのだ。新入荷にはエヴァンスの「エクスプロレーションズ」が3.250円で転がっていて、溜め息しか出ない。30分近くかけて在庫を全部見たが買えるものは1枚もなく、さすがに徒労感しか残らない。なので、最近はCDの棚の方をよく見る。ティル・ブレナーは好きなのでデビュー後はしばらくリアルタイムで聴いていたし、その後も間を置きながらもポツポツと聴いてきたが、知らないタイトルのものが転がっていたので拾ってきた。大体...静謐な高級感

  • アート・ペッパーのお手本は誰だったのか

    MartyPaichQuartetfeaturingArtPepper(米TampaRS1278)後味の悪いパーカーを聴いた後の口直しには大甘のアート・ペッパーがちょうどいいが、これはただの甘口ではない。このアルバムのペッパーのアルトには、よく聴けば、苦み走ったところがあるのがわかる。一聴するとただの甘口のような印象だが、よく聴くと甘味なのは4人が演奏している音楽がそうなのであって、ペッパーのアルトの音色自体は峻厳な色味を帯びている。この唐辛子が混ざったバニラアイスのような、アンビバレンツな微妙さがうっすらと漂うところに本作の価値があるのだろう。パーカーのことを想いながらこれを聴いていると、アート・パッパーは一体誰をお手本にしてアルトを吹いたのだろうと不思議に思う。これは、アート・ペッパーを巡る大きな謎の1つで...アート・ペッパーのお手本は誰だったのか

  • 虚ろな怖さ

    CharlieParker/PlaysColePorter(日本コロンビアYL3002)5月に拾えたのは、この国内初版の1,000円のペラジャケ1枚のみ。惨憺たる状況は続く。レコードはまるでエアポケットに吸い込まれたかの如く店頭から消えてしまい、跡形もない。店頭在庫の質は今や完全に底の状態で、回復の兆しがない。重たいフラット・ディスクでプレスの質も良く、ヴァーヴのオリジナルよりも質感がずっといい。音質もまったく遜色なく、買うならこちらの方が満足感は高い。これはこれで珍しいと思うけれど、それにしても1ヵ月探してこれだけというのも寂しい。パーカー最後のレコーディングだが、もはやここにいるのはパーカーではなく、完全に別人である。どよーんと淀んで濁った締まりのない音色で、スピード感もキレもなく、まるでテナーのような音だ...虚ろな怖さ

  • クラシックにおけるルディ・ヴァン・ゲルダー

    MariaTipo/W.A.MozartPianoConcertNo.21,K.467,No.25,K.503(米VoxPL10.060)ルディ・ヴァン・ゲルダーは、クラシックのレコードでもマスタリングの仕事をしている。私の知っている限りではVox社のレコードだけで、それも数は少なく、ごく一部のタイトルだけで仕事をしたようだ。それらの音源はすべてヨーロッパでの録音で、それをアメリカへ持ち帰ってきて、ヴァン・ゲルダーにマスタリングを依頼したらしい。ただやっかいなのが、RVG刻印があっても全部が全部RVGらしい音かと言えば、そうではない。まったく冴えないものもあって、玉石混淆なのはジャズと同じだ。マリア・ティーポのこのレコードは英国盤やフランス盤もあるが、このアメリカ盤だけがRVGで、音が全然違う。音圧高く、ピアノ...クラシックにおけるルディ・ヴァン・ゲルダー

  • 何か特別な楽曲たち

    FreddieRedd/SanFranciscoSuite(米RiversideRLP12-250)ある意味、非常にリヴァーサイドらしいアルバム。ピアニストの創造性を尊重し、オリジナル楽曲を核にしたコンセプチュアルなアルバムを作る。ブルーノートやプレスティッジでは見られないタイプのアルバムだろう。ドン・フリードマンのデビュー作なんかもそうだが、このレーベルはアルバムを1つの作品として考える傾向がより顕著だったように思う。フレディー・レッドはピアニズムで聴かせるピアニストではなく、作曲能力で聴かせるアーティストだ。ピアノの演奏には特に美質は感じられず、感銘を受けるところは何もないが、この人が作った楽曲には何か特別なものがあった。その何かが、このアルバムには凝縮されている。アルバム・タイトルにもなっている組曲は、サ...何か特別な楽曲たち

  • 愛すべき小品

    KennyDrew/JazzImpressionsOfTheRogersAndHart"PalJoey"(米RiversideRLP12-249)とても愛らしい作品。このジャケットは好きだな。色使いが品がいいし、ミュージカルの躍動感が控えめながらも上手く表現されている。エサ箱で見かけるとちょっとうれしい気分になるレコードではないか。内容もしっかりとジャズに寄った作品で、それはウィルバー・ウェアとフィリー・ジョーのリズムセクションの重量感が効いているからだ。ドリューのピアノはもともと軽く、個性がない。だから普通に弾くだけではそのピアニズムはあまり印象に残らないけど、こうしてリズムがしっかりとしていると没個性な面が逆に作用して、リズムを上手く引き立てる。ロジャース&ハートの屈託のない朗らかな曲想がストレートに表現さ...愛すべき小品

  • おそらくは間違えて出されたアルバム

    KennyDrew/ILoveJeromeKern(米RiversideRLP12-811)RLP12-811という番号から、おそらくこの音源はリヴァーサイドではなく、傍系のジャドソン(JUDSON)からリリースする予定だったのではないかと思う。同じくウィルバー・ウェアのベースとのデュオだし、作曲家シリーズという企画内容からも、それは容易に想像がつく。ジャケット・デザインにしても、まったく同じ系統だ。レーベル・コンセプトがまだ十分に整理されていないレーベル初期のリリースなので、こういう混乱が起こったのだろう。演奏内容もまったく同じ系統で、真摯なジャズではなく、イージーリスニング志向のもので、特にそれ以上でもそれ以下でもない。聴いても毒にも薬にもならない感じで、このレーベルの他の作品と同じような感動を求めても、そ...おそらくは間違えて出されたアルバム

  • ダブル・トランペットによる軽快さ

    DonElliott,RustyDedrick/CounterpointForSixValves(米RiversideRLP12-218)マンデル・ロウのギター・カルテットをバックに、トランペット2本でカラッと乾いた空気感の軽快なスイングを聴かせる。ダブル・トランペットである必要性みたいなものは特に感じないけれど、まあ一人ではアルバム1枚を持たせられないという判断だったのかもしれない。テナーが2本の演奏だと無条件に「バトル」という言われ方になって自然と白熱したジャム・セッションのような演奏に化していくものだけど、トランペットだとそういう感じにはならないのが不思議だ。音自体が軽く浮遊するからなのかもしれない。モダンでもデキシーでもない、何と形容すればいいのかよくわからないタイプの音楽が展開されている。強いて言うな...ダブル・トランペットによる軽快さ

  • もう一つの唯一のリーダー作

    MartyBell/TheVoiceofMartyBell,TheQuartetofDonElliott(米RiversideRLP12-206)マーティー・ベルというヴォーカリスト唯一のアルバムで、ドン・エリオット、ボブ・コーウィンらがバックを務める。裏ジャケットの解説によると、ベルは15歳の時にトランペットを始め、軍隊のバンドに在籍中はショーティー・ロジャースやレニー・ハンブロらと共に演奏していたそうだ。その後、自身のトランペットの才能に見切りをつけてヴォーカルへ転向したが、こちらのほうもパッとしなかった。その歌声はボブ・ドローやジョー・デライズのような質感でお世辞にも美声とは言えないし、歌そのものも上手いとはとても言えない。ライナー・ノートでは"新しい才能"として一生懸命売り出そうとする文章が躍っているが...もう一つの唯一のリーダー作

  • 唯一のリーダー作

    BobCorwinQuartetfeaturingDonElliott(米RiversideRLP12-220)ボブ・コーウィンは50年代の半ば頃、ドン・エリオットとグループを組んでいて、その頃の記録がこうして少し残っている。ニューヨーク生まれで、歯科医になるために大学で勉強する傍ら、クラブで演奏していたところをエリオットから声を掛けられ、共に活動するうちに歯科医になるのをやめて、ミュージシャンとして生きていくことを選んだ。尤も、前へ出るタイプではなかったこともあり、フィル・ウッズなど白人ミュージシャンや歌手のバッキングを務めるのがメインで、自身の名前を冠したリーダー作はこれしか残っていない。指はよく回り、闊達な演奏だが、特に特徴があるわけでもなく、ピアニストとして大成するはずもなかった。このアルバムではエリオ...唯一のリーダー作

  • 短い季節の中で

    ErnieHenry/PresentingErnieHenry(米RiversideRLP12-222)この3ヶ月、ジャズのレコードは結局1枚も拾えず、正に緊急事態でこれが長引いている。最近はもうジタバタしてもしかたがない、と諦めていて、ジャズからは少し距離を置いている。手持ちの少ないレコードを、たまにターンテーブルに乗せる程度の日々。このアルバムも頻繁に聴くということもなく眠っていたが、こういう機会に久し振りに聴いてみた。MatthewGeeのセッションへの参加でレコーディング・デビューを果たした翌日に、この自身の初リーダー作を吹き込んだ。レコード番号も繋がっていて、ジャケットの雰囲気といい、Geeのアルバムとは双子のような印象がある。ドーハムら、リヴァーサイドお抱えの手練れたちにしっかりと支えられながらの演...短い季節の中で

  • タイムマシーンのような

    DonaldByrd,BarneyWilen/JazzInCamera(独SonoramaL-65)1958年に映像作品のサントラとしてパリで録音されながら、映像もレコードも未発表のまま終わってしまったプロジェクトの音源が21世紀に入ってからようやく陽の目を見たというアルバム。50年代後半のフランスではジャズは外国産の前衛芸術で、商業ベースに乗るのは難しかったから、こういう話は珍しくない。リリース当時は私はレコード漁りを止めていた時期だったので、当時の反響がどういう感じだったのかはよくわからないが、50年代の雰囲気をうまく伝えるジャケットデザインといい、盤を触った時の質感といい、なかなかよく出来ている仕上がりだと思う。ドナルド・バードとダグ・ワトキンス、ウォルター・デイヴィスやアル・レヴィットらのアメリカ勢が参...タイムマシーンのような

  • 箱物は面倒臭い

    レコードにしてもCDにしてもそうだが、箱物は面倒臭い。盤を取り出しにくいし、保管するにも場所を取る。枚数が多くて、内容量も多いから、途中で飽きて最後まで聴かずに投げ出してしまうこともある。そんな感じだから、大体はほとんど聴かれていなくて、盤質はきれいなものが多い。それに反比例して、保護用のビニールなどが非定型サイズに対応できず、箱の外観は擦れていたり汚れて傷んでいるものがほとんど。箱物あるあるである。ジャズは箱物は少ないので、そういう面での苦労はあまりないが、クラシックは厄介だ。オペラのように作品が長大なものが多いし、「全集」としてまとめることが多いから、箱物を避けて通ることは難しい。タチアナ・ニコラーエワのショスタコーヴィチ、24の前奏曲とフーガ。彼女は初演者且つ史上初の全曲録音者で、生涯に3度も録音している...箱物は面倒臭い

  • 芸術性を感じるジャズ

    CurtisFuller/Blues-stte(米SavoyMG12141)猟盤は変わらず不調で、完全にネタ切れである。しかたがないので手持ちのレコードを細々と聴く日々が続いている。でも、さすがにどれも耳タコ状態で、もはや新鮮な感想など湧いてくることもないが、ブログを放置するのも何なのでいまさら盤を取り上げる。間違いなく素晴らしい作品で、非の打ちようがない。メロデイアスで、仄暗いムードで、ハード・バップ芸術の頂点にあるアルバムだろう。ゴルソン・ハーモニーの究極形が聴けるし、フラナガンのピアノの良さが際立っているし、素晴らしいところは無数にあるが、そういう個々の要素を超えた全体のあまりに完璧な形が芸術として成立しているのが素晴らしい。芸術性を感じるジャズなのだ。RVGカッティングの音も完璧だし、未だに何なのかよく...芸術性を感じるジャズ

  • グレン・グールドの原風景

    RosalynTurek/GoldbergVariations(米AllegroALG3033)グレン・グールドが影響を受けた唯一のピアニストが、このロザリン・テューレック。グールドは若い頃はホロヴィッツに憧れてあの正確無比なテクニックを身につけるべく練習に励んだが、バッハの演奏はこのテューレックをお手本にして発展させた。テューレックは録音が少なく、公式録音はバッハしか残していないし、アメリカのピアニストということもあって、ドイツを中心とするヨーロッパが本場であるクシックの世界では亜流扱いで誰も見向きすらしない存在だったが、グールドが唯一影響を受けたことを公言したことで、見直されることになった。そのせいで晩年になって録音をせがまれて残した演奏もあるが、さすがに衰えを感じさせる内容で、聴いていて痛々しい。ゴルトベ...グレン・グールドの原風景

  • レコードはどこへ行った?

    Harold"Shorty"Baker,DocCheatham/TalkThatTalk(日本ビクターSMJ-7579)みなさん、レコード拾えてます?私は全然ダメ。2月に拾ったのは、ワン・コインのこのレコードたった1枚だけ。こんなことは、前代未聞の出来事かもしれない。これは、というレコードが本当にない。定期的に「新入荷」としてエサ箱には出ているようだけど、ホントに新入荷なの?と疑うような感じじゃないだろうか。高額盤から安レコに至るまで、本当にスカスカな状態。一体、レコードはどこに行ったのだろう?ユニオンの店舗も元気がない感じがしません?店員さんは元気なのだが、並んでる商品に元気がない。ムンムンと唸るような圧がない。お宝が埋まっているエサ箱からは怪し気な妖気が漂うものだが(と言っても、そんなものが見えるのは一部の...レコードはどこへ行った?

  • チック・コリアの訃報に接して(2)

    ChickCorea/NowHeSings,NowHeSobs(米SolidStateSS18039)のっけからヴィトウスとヘインズのカッコよさにヤラれてしまう、画期的なピアノ・トリオ。1968年にこのようなピアノ・トリオの作品が出てきたことが驚異的だろう。それまでの誰にも似ておらず、これ以前には聴くことができない音楽だ。ロイ・ヘインズがここまで現代的なプレイをしたのは、これ以前では聴いたことがない。繊細でいて大胆、触ると手が切れるようなリズムで音楽を煽る。ヴィトウスの暗い音色が不気味に音楽に覆いかぶさり、この音楽に独特の陰影を与えている。主流だったバップ系との決別を高らかに宣言し、以降のピアノ・ジャズのお手本になった。こういうのが出てきた影響で、例えばビル・エヴァンスなんかは徐々に片隅へと追い込まれていくこと...チック・コリアの訃報に接して(2)

  • チック・コリアの訃報に寄せて

    StanGetz/SweetRain(米VerveV6-8693)チック・コリアの訃報に接して、最初に聴きたくなったのはこの"SweetRain"だった。他の彼名義の代表作ではなく、なぜかこれだった。そして、これを聴きながら、私にとってチック・コリアという人は「作曲の人」だったんだな、ということに思い至った。チック・コリアとキース・ジャレットは、何かにつけて比較・対照される関係だった。同世代であり、マイルス・バンドでは席を分け合い、その後の路線も近しく、比較するなと言う方が無理な話だった。どちらが優れているか、どちらが好きか、と話題は最後まで途切れることはなかった。私の場合はどちらが好きかというと、どちらもそれなりに好きだ、という感じだった。特にどちらかに深い思い入れを感じるほどではなく、概ね似たような距離感で...チック・コリアの訃報に寄せて

  • 寄り道としてのシューベルト(4)

    ZhuXiao-Mei/F.SchubertPianoSonataNo.23D.960,L.V.BeethovenPianoSonataNo.32Op.111(オーストリアMirareMIR157)シュ・シャオメイは日本ではバッハ弾きという程度の認知しかされていないだろうが、こうやってシューベルトやベートーヴェンも録音している。どちらもそれぞれの生涯最後のピアノ・ソナタを取り上げた、いわばコンセプト・アルバム。シューベルトは第23番という表記になっているが、一般には第21番ということになっているD.960のことである。先にも述べた通り、シューベルトの作品は現在もまだ研究中なのだ。1949年に上海で生まれた彼女は文化革命時代の抑圧された生活から逃れるために欧州へ渡り、以降はフランスを中心にして活動している。もう7...寄り道としてのシューベルト(4)

  • 寄り道としてのシューベルト(3)

    Maria-JoaoPires/F.SchubertPianoSonataNr.21D.960(仏EratoNUM75262)D.960はこのアルバムが発表された当時は第11番と表記されているが、現在では第21番ということになっている。シューベルトの作品は生前楽譜が発売された(つまり正式発表された)作品があまり多くなく、彼の死後にロベルト・シューマンを始め、数多くの研究家たちが彼の遺稿の山を掘り起こして、埃を払い、内容を検証して正式な作品として順番にリリースするという異例の作業が続けられているため、タイトル番号が変わることがある。特にピアノ曲は、まだ正式な取り扱いをどうするかが決まっていない曲がたくさん残っているのだ。マリア・ジョアン・ピリスのこの録音は言及されることが皆無のアルバムだが、演奏の素晴らしさといい...寄り道としてのシューベルト(3)

  • 寄り道としのシューベルト(2)

    PaulLewis/F.SchubertPianoSonatas(仏HarmoniaMundi)ブレンデルに師事したポール・ルイスは、当然のようにシューベルトを録音している。ブレンデルが残したシューベルトの録音は現代の金字塔と言われているが、私はイマイチのめり込めない。そこに感じる不満のすべてを解消してくれるのがポール・ルイスで、私がシューベルトのピアノ曲を聴くことができるようになったのは、この人のおかげだ。以降、数多くの演奏を聴いてきたが、未だにこの人の演奏を超えるものは見つからない。そして、彼のおかげでシューベルト最後の作品であるピアノ・ソナタ第21番D.960の魅力に憑りつかれることになった。この曲は技術的難易度は高くないが本当に上手く演奏するのは難しく、これまでに有名/無名を問わず多くのピアニストが挑戦...寄り道としのシューベルト(2)

  • 寄り道としてのシューベルト(1)

    この2ヵ月ほどはジャズはほとんど聴くことなく、代わりにシューベルトのピアノ曲ばかり聴いていた。なぜかはよくわからない。とにかくそれ以外に興味が持てなかったのだ。毎日、朝から晩まで、部屋の中で流していた。数えてみたら、その数は30枚を超えている。クラシックを聴くようになったのは大学4年の頃からだが、以降、割りと長い間、シューベルトのピアノ曲が苦手だった。こういう人は結構多くて、ピアノ曲しか聴かないというクラシックファンの中にも、実はシューベルトはほとんど聴かない、という人がたくさんいる。シューベルトのピアノ曲というのは、そういう音楽なのだ。シューベルトは31歳という若さで亡くなった。13歳の頃から作曲を始めた早熟だったが、それでも18年という作曲期間は短すぎた。その中で協奏曲を除くすべての形式で音楽を書いたが、最...寄り道としてのシューベルト(1)

  • 幸せな気分を運んでくるポップ・フュージョン

    BobJames/Foxie(日本ビクターVICJ-61517)フュージョンのアルバムはもはや10枚も手元には残っていないけれど、長年のレコード・CD裁判で常に勝ち残ってきた1枚。もう40年も前の録音ということに改めて驚くしかないけれど、こればかりは好きなんだからしかたない。これ以上はないであろうポップなわかりやすさ、且つおそろしくレベルの高い演奏力が同居する内容で、まあすごい音楽である。ボブ・ジェームスのフュージョン・アルバムはおそらくほとんどすべて聴いたと思うけれど、私にはこれを超える作品はなかった。冒頭の"Ludwig"はその名の通り、ベートーヴェンの第九、第2楽章の変奏だけど、これがいい。まさに才気爆発の感がある。想像力の力強い翼が奮い立ったような展開で、それを支えるスティーヴ・ガッドのドラムが最高の出...幸せな気分を運んでくるポップ・フュージョン

  • 存在の耐えられない重さ

    JohnColtrane/DukeEllington&JohnColtrane(米Impulse!A-30)赤ん坊が眠っている揺り籠をゆっくりと揺らしているような"InASentimentalMood"で始まるこのアルバムは、アーロン・ベル/ウッドヤードの演奏とギャリソン/エルヴィンの演奏という2つの雰囲気の異なる楽曲群のミックスになっている。前者はエリントン主導の音楽で、後者はコルトレーンが主導する。コルトレーンが終始恐縮してエリントンに追従しているわけではなく、この2つは音楽的には対峙している。2人の音楽性は水と油のように永遠に混ざり合うことはなく、物別れに終わっている。交わり切れなかったのか、最初から独立並行させるつもりだったのかはよくわからないが、「共演」ではなく「競演」になっている。そのため、統一感に...存在の耐えられない重さ

  • 珍しいだけに止まらず

    BudShank/InAfrica(南アPacificJazzPJX5000)持っていることを忘れるくらい、長い間聴いていなかった。レコードは針を通さないと物理的に劣化するので、時々聴かないと後で泣きを見る。前回聴いたのがいつだった忘れたが、幸いにも盤もジャケットも異常は見られなかった。放置していたのは、バド・シャンクの音楽にあまり魅力を感じないからだと思う。聴けばそのいくつかは悪くないとは思うけれど、時間を置いてまた聴きたくなるということは特にない。気の毒だが、プレーヤー止まりの人だったと思う。主要なものは一通り聴いたけれど、結局手許に残したのは、これとローリンド・アルメイダと共演したアルバムの2枚だけだった。南アフリカ楽遊の際に現地で製作された稀観盤で、昔、スイングジャーナル誌巻頭のレーベル特集企画ページに...珍しいだけに止まらず

  • 冬の寒い朝の過ごし方

    YevgeniSvetlanov/SergeiV.RachmaninovPianoPieces(露MelodiyaC10-15595)朝は大体5時頃に起きる。在宅勤務になってそろそろ1年になろうとしていて、もう目覚ましをかけることはないけど、勝手に目が覚める。今はこの時間はまだ外は真っ暗で、6時を過ぎる頃になるとゆっくりと空が白み始める。たっぷりと時間があるのでレコードを3枚分くらい聴くけれど、この時間帯にジャズは耳障りなので、大抵は静かなピアノ音楽を聴く。元々、ジャズとクラシックを聴く比率は10対1くらいなのだけど、毎年冬のこの時期になると、この比率は逆転する。冷たい空気の中ではなぜかクラシックの方が聴きたくなるのだ。理由はよくわからない。寝起きのぼーっとしている頭にモーツァルトやベートーヴェンはうまく入って...冬の寒い朝の過ごし方

  • セピア色の音楽

    TheModernaires/TributesinTempo(米ColumbiaCL-6043)モダネアーズはグレン・ミラーお抱えでその名が知られている男女混成コーラス・グループ。日本ではこういうのはまったくウケないけれど、海外ではジャンルを問わず、コーラスというのは人気がある。元々は古代キリスト教の聖歌にルーツを持つ形式で、意識することがなくても、彼らのDNAに刷り込まれているのだろう。フォー・フレッシュメンが現れて高度な歌唱を屈指するようになると、それに追随するグループが次々と出てきたが、それまではこういうドリーミーな歌唱をするのが王道で、パイド・パイパーズと人気を二分していた。楽器の重奏だけでは表現しきれない情感を出すのはコラースしかないということで、40年代になると白人ビッグ・バンドはこぞって専属グルー...セピア色の音楽

  • 実は良質なハード・バップ

    TonyScott/FreeBlownJazz(米CarltonSTLP12/113)聴いてビックリの高音質盤。1957年11月16日の録音だが、59年に発売されている。珍しいメンツの組み合わせだが、LP2枚分の録音をしており、もう1枚はSeccoから発売されている。どういう経緯のリリースなのかはよくわからない。このカールトンというレーベルはRCAVictorの傍系レーベルだがジャズ専門ではなかったし、レーベルが企画した録音ではなく、誰かが御膳立てした録音で、その後に版権を買い取っての発売だったんじゃないかと思う。それぞれ持ち味があるメンバーが集まっているが、その誰か固有の色が付いた音楽ではなく、共通言語のハード・バップになっていて、これは穴場のレコードだと言っていい。サヒブ・シハブの重量級バリトンが効いている...実は良質なハード・バップ

  • 不思議と惹かれる演奏

    RandyWeston/PianoA-la-mode(米JubileeJGM1060)ピアノ音楽を聴く楽しみは、何と言ってもこの楽器が本来持っている美しい音色に耳を澄ますことだったり、和音の調和を楽しむことだったり、紡ぎ出されるメロディーに酔うことだが、こういう楽しみ方のすべてを否定するのがランディー・ウェストンである。モンクとの類似を挙げられることが多いけれど、私にはあまりこの2人が似ているという印象はない。根っこのところが違うような気がする。モンクは伝統を重んじるリズムの人、この人は伝統的なものを嫌い、フレーズの断片をコラージュする人。彼が書いた代表作"LittleNiles"は1度聴くと忘れられない後ろ髪を引かれるような不思議な印象を残すが、あの感覚である。レコード・デビューしてまもない時期の演奏だが、不...不思議と惹かれる演奏

  • 間を聴くピアノ・トリオ

    PeteMalinverni/Don'tBeShy(米SeaBreezeJazzSB-2037)昨年末の猟盤は不調を極め、12月に入って拾えたのは3枚だけ。一体、いつになったら回復するのやら。それでも内容には満足しているので、楽しんで聴いている。これはその中の1枚。初めて聴く人だが、あまりの良さに久し振りに衝撃を受けた。まだまだ優れた演奏はあるものだ。ゆったりとしたテンポの楽曲のみで構成されていて、非常に間の多い演奏が心地よい。こんなに優雅なスイング感に浸るのは長らくなかったような気がする。写真を観る限りでは若い人のようだが、落ち着き払った弾きっぷりが素晴らしい。若い演奏家には大抵の場合、どこかに野心があるものだが、この人はそういうものはどこかに置いてきたかのようだ。全編に歌心が溢れていて、紡ぎ出される優しいフ...間を聴くピアノ・トリオ

  • コロナは生誕250周年を台無しにしたか

    WihelmFrutwangler/L.V.BeethovenⅨSinfonieD-moll,Op.125(独ElectrolaWALP1286/87)2020年はベートーヴェンの生誕250周年ということで当初は世界中で様々な催しが企画されていたが、コロナ禍の影響で軒並み中止となり、さほど盛り上がることなく終わろとしている。まさかこんなことになろうとは誰も思っていなかったわけで、残念なことだ。ただ、クラシック音楽に親しい者にしてみれば、わざわざそんなイヴェントを持ち出さなくても日々ベートヴェンには接しているわけで、催し物があろうがなかろうがあまり関係はない。気が向いたらお気に入りの演奏を持ち出してきては、ボソボソと聴くわけである。年末になると自然と第九を聴く回数が増えるというのもどうなのよ、と思いつつも、やはり...コロナは生誕250周年を台無しにしたか

  • OJCのビル・エヴァンス(7)

    BillEvans/WaltzForDebby(米FantasyOriginalJazzClassicsOJC-210)さぞかし何度もプレスされているだろうと思ったら、1985年、2009年、2011年、2020年とのことで、意外に少ない。手許には2種類あって、まずは1985年の厚紙ジャケットのもの。何だか複雑なマトリクスだ。A面OJC210A-G1AG1A1(F+AP)B面OJC210B1(T)PTピアノの音は優しい音色だが、水に溶かした水彩絵の具のようにうっすらと滲んでいる。ベースはくっきりとした輪郭、ドラムはブラシで触るシンバルの音が繊細な質感。やはり、楽器の音よりも全体のバランスを重視したマスタリングだ。ラファロのベースのフレーズが一番よく聴き取れる。BillEvans/WaltzForDebby(米F...OJCのビル・エヴァンス(7)

  • OJCのビル・エヴァンス(6)

    BillEvans/SundayAtTheVillageVanguard(米FantasyOriginalJazzClassicsOJC-140)人気盤ということなのか、1984年、1987年、2002年、2008年、2015年、2020年、と頻繁にプレスされている。手許には2枚あり、まずは1984年もの。A面OJC140BA1CPGH1B面OJC140B2CPGHTジャケットが国内盤のような厚紙仕様。最初はそれなりにコストをかけて作っていたようだ。OJCに共通するベース音のクリアさと音圧の高さはここでも健在だ。音に輪郭があって、フレーズがよくわかる。モチアンのブラシ音も粉を吹いているような粒の細かさで、1歩下がったような鳴り方だ。ただ、スネアの音が小さく、あまりよく聴こえない。ピアノの音色は優しく美しく、不自...OJCのビル・エヴァンス(6)

  • OJCのビル・エヴァンス(5)

    BillEvans/PortraitInJazz(米FantasyOriginalJazzClassicsOJC-088)さすがに代表作ということで、1983年、2011年、2015年、2020年、とプレス回数は多い。手持ちの盤は、2011年もの。A面OJC-088A1RE618697.1(2)B面OJC-088B1RE618697.1(2)これは見事な音だ。何と言うか、風格のある音。初めて聴いた時にはびっくりした。ラファロのベースの音が大きく、響きが非常に深い。これが全体のサウンドを印象付けている。エヴァンスのピアノの音色はややくぐもってはいるけれど、気になるほどではなく、かえってシックな雰囲気に貢献しているような感じだ。モチアンは1歩後ろに下がったような聴こえ方で、これがサウンドに奥行き感を与えている。驚く...OJCのビル・エヴァンス(5)

  • OJCのビル・エヴァンス(4)

    BillEvans/Explorations(米OJC-037)OJC盤は1982年、2015年にプレス・販売されている。意外に少ない。手持ちの盤は82年もの。A面OJC037AG+AB面OJC037BG+A音色の観点では、これはオリジナル盤と瓜二つな音と言っていい。ステレオ効果は感じられず、モノラル盤の質感が漂う。ピアノの音色もモノラル盤で聴かれる音色と同じだ。ラファロのベース音が小さい。モチアンのブラシやシンバルが、若干、音の粒子が細かくなって自然な感じになったかな、というところで改善が見られる。昔からこのアルバムの音は冴えないと言われてきた。おそらくはそれが原因で、4部作の中では一番成熟した大人の音楽なのに、人気の面では常にデビーの後塵を拝してきた。そのためリマスターの効果を期待したが、どうやらこの時はあ...OJCのビル・エヴァンス(4)

  • OJCのビル・エヴァンス(3)

    BillEvans/Moonbeams(米OJC-434)OJCのレコードは1990年、2002年、2009年にプレスされている。所有盤は1990年もの。A面OJC434A1G1A5(T)B面OJC434B1G1A1(T)これはとてもいい音だ。OJC盤に共通しているのは、ベースの音が大きくクリアに刻まれていること。そのおかげで、サウンド全体のバランスがとてもいい。これがオリジナルとは決定的に違う。ピアノの音色が艶めかしい。特に弱音の繊細な表情は見事だ。フォルテの箇所や和音も音が潰れていない。モチアンのブラシは鳥が羽を震わせるような感じで聴こえてくる。こういうデリケートな音場感が、このアルバムの演奏には相応しい。音楽の特性にうまく寄り添った音作りで、エヴァンスのやろうとしたことが見事に再生されていると感じる。アー...OJCのビル・エヴァンス(3)

  • OJCのビル・エヴァンス(2)

    BillEvans/HowMyHeartSings!(米OJC-369)このタイトルも1989年、2009年にプレス・発売されているが、手持ちの盤は89年のもの。OJCのレコードは裏ジャケットにバーコードがあればその番号で、もしくはマトリクス番号から何年ものかを判定する。A面OJC369A1G1(P)手書きB面OJC369B1G1(P)手書き3つの楽器のバランスはよく、それぞれの音がしっかりと聴き取れる。特にベースの音圧が高く、ピアノ・トリオとしての快楽度が高い。ピアノの音は若干固めで艶やかさに欠ける。人工プラスチックっぽいと言うか、そういう感じがする。ブラシの音も音圧は高いが音が若干潰れ気味で、ブラシ音が束になっていてうまくほぐれていない。バランスはいいが、各楽器の音色があまり自然とは言えない。次にオリジナル...OJCのビル・エヴァンス(2)

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廃盤蒐集をやめるための甘美な方法
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