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2019/03/26

  • R.I.P アーマッド・ジャマル

    AhmadJamal/PortfolioOfAhmadJamal(米ArgoLP2638)アーマッド・ジャマルが92歳で逝去したが、SNSでは海外からの哀悼のコメントはたくさん流れているのに比して、日本からの惜しむ声は圧倒的に少ない。チック・コリアやショーターの時とは大違いだ。それが不憫で、申し訳ないとさえ思えるので、こうしてアーマッド・ジャマルのことを書いている。マイルス・デイヴィスの逸話があるので、ジャズが好きなら誰しも1度はジャマルの音楽を聴いているはずだ。恭しい気持ちを抱きながら最初はレコードを聴いただろう。ところが実際に聴いてみると、それがイメージとはかなりかけ離れていることに戸惑うことになる。あのマイルスが一目置いたのだから、もっと深みのある凄い音楽だと思っていたのだが、というのが大方の感想だ...R.I.Pアーマッド・ジャマル

  • フランク・ストロージャーがいたユニット

    WalterPerkins'MJT+Ⅲ(米VeeJayVJLP-1013)ウォルター・パーキンスと言えば、まずはアーマッド・ジャマル・トリオを思い出すことになるけど、あまり知られていないながらもこの"MJT+Ⅲ"というレギュラー・グループを一時期率いていた。ベースのボブ・クランショウと彼が双頭リーダーとなり、ハロルド・メイバーンのピアノ、フランク・ストロージャーのアルト、ウィリー・トーマスのトランペットという2管編成で上質なハードバップを演奏した。アルバムは4枚残していて、最初のアルバムはメンバーが違っていて演奏が地味だが、2枚目となるこのアルバムからはメンバーが固定されて管楽器演奏のレベルが格段に跳ね上がる。演奏がしっかりとしていてどれも聴き応えがあるが、音楽的にはこのアルバムが一番出来がいい。フランク...フランク・ストロージャーがいたユニット

  • アート・ファーマーらしいレコード

    ArtFarmer/LastNightWhenWeWereYoung(米ABC-ParamountABC-200)このアルバムは1957年4月24日と29日にニューヨークで録音されている。クインシー・ジョーンズの編曲を小編成の弦楽隊が上品に演奏する中、ファーマーは穏やかにメロディーを奏でる。ピアノはハンク・ジョーンズで、バリー・ガルブレイスも加わるなど、全体が洗練と上質の極みのような雰囲気だ。57年のニューヨークと言えばハード・バップがピークを迎えていた時期だが、そんなのはどこ吹く風と言わんばかりに、ファーマーは優し気にスタンダードを歌っている。アート・ファーマーはキャリアの早い時期からレコーディングの機会に恵まれていて、レコードはその生涯を通じてたくさん残している。駄作と呼べるようなものはなく、どれも一...アート・ファーマーらしいレコード

  • ソフィスティケートな音楽の系譜

    TaddDameron/Fontainebleau(米PrestigePRLP7037)私にラージ・アンサンブルの良さを教えてくれたアルバム。ジャズの何たるかがわかっていなかった学生時代に聴いた時からずっと大好きだった。そして、ジャズという音楽においても楽曲の良さというのが如何に大切か、を知ることになったアルバムでもある。タッド・ダメロンが若々しく活躍した時期はスイングからビ・バップへ移行する時期で、その演奏がほとんど残っていない。クインシー・ジョーンズの先駆けのような人で、自身の楽器演奏力には早々に見切りをつけて、作曲や編曲の領域に軸足を置いたというせいもある。それでも、あと5年遅く生まれていれば彼のレコードはもっとたくさん残っただろうに、と思えるだけになんとも残念でならない。このアルバムでは貴重な彼の...ソフィスティケートな音楽の系譜

  • セシル・ペインとデューク・ジョーダン(5)

    RolfEricson/AndHisAllAmericanStars(米EmercyMG-36106)れっきとしたロルフ・エリクソンのリーダーセッションなのに、タイトルをこうせざるを得ないほど2人の音楽に支配された内容になっている。そのおかげで、このアルバムは非常に優れたアメリカのハード・バップの名盤に仕上がった。ロルフ・エリクソンは1947年から約10年間、アメリカで活動している。ジャズを志すならアメリカに行かねば、ということだったのだろうか、チャーリー・バーネットやウディー・ハーマンのオーケストラで研鑽を積み、その後は西海岸へ行き、様々なセッションや録音に参加している。そして1956年の春にスエーデンに戻り、当時渡欧中だったジョーダンやペインらとすぐにスタジオに入り、これらの録音をした。現地ではメトロ...セシル・ペインとデューク・ジョーダン(5)

  • R.I.P Wayne Shorter

    WayneShorter/WayningMoments(米VeeJayVJLP3029)想えば若い頃から既に巨匠の雰囲気が漂う不思議な人だった。外見の風貌にもそんなところがあったが、何より彼が演奏に参加した途端、音楽からはそれまで聴き慣れたものとはどこか違うムードが漂った。演奏そのものは革新的だったというわけではなく、どちらと言えばオーソドックスなプレイの側に立脚していたけれど、操る言語はそれまでのテナー奏者とは明らかに違っていたし、演奏から発せられる匂いのようなものが独特で、それがその音楽を今まで見たことが無いような色彩に染めてしまうようなところがあった。だから、ウェイン・ショーターの魅力とは何か、を語るのは難しい。そして、その難しいという点にこそ彼の魅力の核心があったように思う。簡単に言葉で説明できる...R.I.PWayneShorter

  • 実は大傑作(2)

    AustralianJazzQuintet+1(米BethlehemBCP-6015)オーストラリアン・ジャズ・カルテット(クインテット)のことを真剣に聴こうなんて人はいないようで、中古も大体ワンコインで転がっていて、総じてクズレコード扱いとなっている。オーストラリアとジャズが結びつかないということもあるだろうし、ジャズの世界は個人名ではなくグループ名を名乗るようになると、途端に人気が無くなる傾向がある。こういうところはロックなんかとはずいぶん事情が違うようである。ジャズは個人の顔やプレイが連想できないと、なぜか魅力が減じるらしい。私がこの人たちの良さを認識したのは、ジョー・デライズの12インチ盤を聴いた時だった。デライズは歌手としては3流以下の魅力に乏しい人だが、それでもレコードは飽きることなく最後まで...実は大傑作(2)

  • セカンド・プレスを愛でてこそ

    StanGetz/LongIslandSound(米NewJazz8214)「オリジナルだけが偉い」とチヤホヤされるこの偏狭な世界では、セカンド・プレス以降のレコードたちは皆どことなく悲し気だ。何も好き好んで2番目として生まれてきたわけでもないのにな、とみんなそう思っている。新入荷のエサ箱にパリッとした真新しいビニール袋に入れられて晴れやかな気持ちで中古デビューを果たしたのに、朝一番にやって来たお客から「なんだ、セカンドかよ」と吐き捨てるようなセリフを浴びせられてスルーされる。それでも気を取り直して精一杯の笑顔で次に手に取られるのを待つけど、中々手にしてもらえない。1日が過ぎ、また1日が過ぎ、時間が経つにつれて並ぶ列を移動させられ、気が付くとアルファベット順に区画された場所に移される。そこでは時間は静かに...セカンド・プレスを愛でてこそ

  • バカラックが亡くなった夜に聴いたアルバム

    HamptonHawes/HighInTheSky(米VaultSPL-9010)全編に漂うほのかに暗い情感に、ハンプトン・ホーズと言う人の内面がにじみ出ているのを強く感じる。50年代にコンテンポラリーで確立したリズミカルで明るいピアノ・トリオの顔とはまるで別人の、憂鬱で斜め下に目線を落としたような物憂げな表情。ブロック・コードはあまり使わず、マイナー・キーのメロディーを延々と紡いでいく弾き方に変化していて、B面の"Carmel"から"SpanishGirl"にかけて流れ出てくる情感は、まるでキースのスタンダーズ・トリオを聴いているかのような錯覚すら覚える。そういう意味では、ここで聴かれる演奏は現代ピアノ・トリオがやっている音楽を10年以上先取りしていたのかもしれない。短くコンパクトにまとめた演奏とは違い...バカラックが亡くなった夜に聴いたアルバム

  • ジャズ本来のスリル

    DizzyGillespie,StanGetz,SonnyStitt/ForMusiciansOnly(米VerveMGV-8198)冒頭の"BeBop"からソニー・スティットのアルトが爆発する、只事では済まない恐ろしいアルバムである。スタン・ゲッツも"Focus"で見せたほの暗い怪演で真っ向から対抗する。ディジーも抑制の効いた切れるような演奏で猛スピードでぶっ飛ばす。3人がそうやってソロを回していく様子がとにかく凄まじい。A面はまるで嵐のように過ぎ去っていく。B面に行くとギアが一段シフトダウンして、今度はトルクが深く効いて身体ごとグイっと前へと持っていかれるような演奏で、こちらもA面に負けず劣らず。スティットのアルトが歌って歌って、歌いまくる。ディジーの抑えた演奏が圧巻で、破たんが一切なく、リー・モーガ...ジャズ本来のスリル

  • ノーマン・グランツの巨匠趣味には困ったものだが・・・

    StanGetz,GerryMulligan,HarryEdison,LouisBellsonandTheOscarPetersonTrio/JazzGiants'58(米VerveMGV-8248)ノーマン・グランツの巨匠趣味には困ったものである。ビッグ・バンドが華やかだった時代のスター・プレイヤーたちをメインに置いた彼のレコード制作のポリシーは徹底していたし、その精力振りは驚異的だった。パーカーやパウエル、ビリー・ホリデイやスタン・ゲッツのレコードがたくさん残ったのはよかったが、オスカー・ピーターソンやJ.A.T.P.のレコードが大量生産されたのはちょっとなあ、と思う。ピーターソンに全く興味のない私からすればそれらは(申し訳ないけれど)ただの瓦礫の山に過ぎず、見ていてうんざりさせられる。彼は人種差別を...ノーマン・グランツの巨匠趣味には困ったものだが・・・

  • 昔から名盤と言われるが・・・

    LeeKonitz/WithWarneMarsh(米Atlantic1217)昔から名盤100選には必ず載ってくるアルバムだが、本当にそうなのか、未だによくわからない。悪くはないのだが、他のアルバムを蹴落として100選の中に入れるほどかと言われると、そうとは思えないというのが正直なところではないか。トリスターノ派のお手本のような音楽になっているのはいいのだが、コニッツの演奏に彼独特のキレがあまり感じられない。ウォーン・マーシュのヘタウマな演奏もこれはこれで彼の個性だからいいとしても、コニッツの演奏の足を引っ張っているような印象があり、どうも居心地が悪い。A面はスタンダード中心、B面はメンバーのオリジナルがメインという構成だが、とにかくA面はあまり面白くない。トリスターノ派の眼から見たスタンダード解釈という...昔から名盤と言われるが・・・

  • 敬意に満ちた寡黙なアルバム

    EdThigpen/OutOfTheStorm(米VerveV-8663)縁の下の力持ちとして表に出ることはほとんどなかったエド・シグペンは、クリード・テイラーの粋な計らいでこうしてリーダー作を残している。面白いのはハービー・ハンコック、ロン・カーターという飛ぶ鳥を落とす勢いだった若手と、テリー・クラーク、ケニー・バレルというシブいメンバーの混成チームとなっているところ。単なるご褒美セッションということではなく、明らかに独自の音楽をやろうという企画だったことが伺える。ノーマン・グランツならこうはならなかっただろう。スタンダードは1曲もなく、本人のオリジナルをメインに構成された意欲的なプログラム。シグペンのドラミングが随所で前面に押し出されて、ドラマーのリーダー作らしい作りになってる。古いタイプのスタイルの...敬意に満ちた寡黙なアルバム

  • マイルスが書いた美しい楽曲

    MilesDavis/SomedayMyPrinceWillCome(米ColumbiaCL1656)このアルバムは、私にとってはB面トップの"Drad-Dog"を聴くためにある。当時のコロンビアの社長だったゴダード・リーバーソンの名前を逆さ綴りにしたという意味のよくわからないタイトルのせいでこの曲の良さが人目を引かないが、これはマイルスの抒情性がよく出た名曲だ。マイルスはアルバムの中にそれまで誰も取り上げなかった隠れた名曲をひっそりと潜ませることがよくあって("SummerNight"だったり、"SomethingIDreamedLastNight"だったり)、本人もそういうのを愉しんでやっていたフシがあるけれど、この"Drad-Dog"もそういう1曲だ。ウィントン・ケリーの音数の少ないピアノが美しく、...マイルスが書いた美しい楽曲

  • 疑似ステレオは悪なのか

    MilesDavis/'RoundAboutMidnight(米ColumbiaCS8649)新年の縁起物はマイルス・デイヴィスということで、今年もやる。まだプレスティッジとの契約が切れていない中で録音したコロンビア第1弾のこのアルバムは天下の大名盤として不動の地位を保っているが、実のところは各曲の演奏時間が短くて不完全燃焼感が残ることと、録音時期が古いせいで音場感がデッドで、コロンビアにしては珍しく高音質とは言い難いレコードである。端正で優れたテーマ部のアレンジが物凄くカッコよく、音楽的には満点の出来だが、本人の自伝を読むと同時期に併行して行われたプレスティッジへのマラソン・セッションの方へはたくさん言及していて、演奏内容にも非常に満足していた様子が伺えるが、こちらの録音については録音した事実には触れて...疑似ステレオは悪なのか

  • 今年の収穫の1枚(2)

    TheloniousMonk/Underground(米ColumbiaCS9632)これは680円で買った。ユニオンのレギュラー盤(国内盤メイン)の新入荷のエサ箱で平日に見つけた。眼にした時はさすがに手が震えたけど、すぐに冷静になって「どうせ盤質が悪いんだろう」と思って検盤したら、盤は傷一つなくピカピカで、ジャケットもトラックシートに書き込みがあるけど破損とかもない。どこかに落とし穴があるのでは?と色々と探ってみたけど、瑕疵は見つからなかった。普通にセールにかかれば2~3万円くらいのタイトルなので、きっと何か手違いがあったのだろう。コロンビアのレコードにはステレオ期のタイトルでラジオ局向けにプロモーション用に配布されたものがあり、タイトルによってはこのプロモ盤だけにモノラルプレスが存在するものがある。ジ...今年の収穫の1枚(2)

  • 今年の収穫の1枚

    TeddyCharles/Evolution(米PrestigeLP7078)自分の中での今年の収穫の1枚はこれだった。40年ジャズを聴いているが、ちゃんと聴いたのはこれが初めてだった。主要なジャズのレコードはあらかた聴いてしまった、などと穿ったことを普段から言っているが、こうして間隙を縫って初めて聴くレコードというのは襲ってくる。特に目当てもなくパタパタしている時にまるで新品のようなあまりにもきれいなものが出てきたので、それだけの理由で試聴してみたら、これが試聴機の前でのけ反ることになった。まだこんな経験ができるんだなあと自分でも驚いた。このレコードには1953年の西海岸での録音と1955年の東海岸での録音が収められている。53年にロサンゼルスに滞在していた時にレーベルを興して間もないボブ・ワインストッ...今年の収穫の1枚

  • 若き日のシナトラとクリスマス

    FrankSinatra/ChristmasSongsbySinatra(米ColumbiaCL6019)クリスマス・レコードは夏に拾うことが多い。暑い夏の日に自宅のレコードを整理していると「こんなのいらないな」という気分になるのかもしれない。そういうのを拾ったはいいけど、やっぱりすぐに聴く気にはなれないのでこちらも冬が来るまで寝かせておき、寒さが本格的になってくるとゴソゴソと取り出してきて聴き始める。シナトラはコロンビア在籍時にSP録音で、キャピトル在籍時にモノラル録音でそれぞれクリスマス・ソングを歌っている。キャピトル盤はゴードン・ジェンキンス指揮による私の長年の愛聴盤だが、こちらはアクセル・ストーダルが指揮をしている。コロンビア時代のシナトラはキャピトル時代とはまるで別人のような歌い方で、まだ個性は...若き日のシナトラとクリスマス

  • セシル・ペインとデューク・ジョーダン(4)

    CecilPayne/S/T(米SignalS1203)セシル・ペインとデューク・ジョーダンがレコード上で共演し始めたのはこの辺りからか。この2人が組んだ演奏には独特の翳りがあって、そこにどうしようもなく惹かれる。それはレーベルが違っても変わることはないから、どのレコードを聴いても愉しいのである。ジョーダンと組む前はランディ・ウェストンと組んでいたが、そこでもウェストンの一癖ある音楽性に上手く合わせていたから、このバリトン奏者は自身の個性を前に出すというよりは、共演相手とうまく融和しながら音楽を展開する方が得意だったのだろう。おそらくはそのせいでリーダー作が少なかったのだろうと思う。こういうアーティストをキャッチアップするのがうまかったリヴァーサイドあたりがリーダー作を残してくれていればよかったのだが、そ...セシル・ペインとデューク・ジョーダン(4)

  • セシル・ペインとデューク・ジョーダン(3)

    CecilPayne/"TheConnection"ComposedByCecilPayneAndKennyDrew(米CharlieParkerRecordsPLP-806)前衛ミュージカル"TheConnection"のオリジナル・スコアを書いたのはフレディ・レッドだったが、このミュージカルが再演された際にセシル・ペインとケニー・ドリューが新たなスコアを書きおろした。その新たな楽曲をペイン、クラーク・テリー、ベニー・グリーンのセクステットで録音したのがこのアルバムで、私の知る限りではこれらの楽曲バージョンはこのアルバムでしか聴けない。麻薬がテーマのこの演劇の音楽を最初に演奏したメンツが本物のジャンキーたちだったことから、そのイメージを払拭するためのリ・スコアだったのかもしれない。劇中音楽であることから...セシル・ペインとデューク・ジョーダン(3)

  • セシル・ペインとデューク・ジョーダン(2)

    CecilPayne/PerformingCharlieParkerMusic(米CharlieParkerRecordsPLP-801)ここではクラーク・テリーを加えたクインテットでパーカーが好んでやっていた楽曲を取り上げている。ロン・カーターがベースを担当していて、アルコをやったりソロをとったりと存在感が他のベース奏者とは違いがある。クラーク・テリーの演奏が冴えなくて全体の足を引っ張っているが、ペインとジョーダンは変わらず闊達な演奏をしている。このレーベルとは切っても切れないパーカーの音楽をかつての共演者がやるという、企画としては当然の流れからくるアルバムだ。ペインはバリトンだとは思えないくらい軽快な演奏をしていて、他のバリトン奏者たちとの個性の違いを見せている。元々はピート・ブラウンに師事してアルト...セシル・ペインとデューク・ジョーダン(2)

  • セシル・ペインとデューク・ジョーダン

    DukeJordanandSadikHakim/EastAndWestOfJazz(米CharlieParkerRecordsPLP-805)セシル・ペインとデューク・ジョーダンは一時期コンビを組んでいた。実力と才能がありながら日陰者としての道を歩いたこの2人が寄り添うように活動を共にしたのは、ある意味必然だったのかもしれない。そんな彼らの音楽には一貫して慈しむような優しさが満ち溢れていて、そういう所がこの2人の人柄を偲ばせるところがあり、私は昔から大好きだった。彼らの活動の記録はどれもマイナー・レーベルに残されていて、これまた光が届かない所でひっそりと息づいている。何から何まで恵まれなかったというか、そういうところすら如何にも彼ららしいと言うべきなのか。2人ともビ・バップ期から活動してチャーリー・パーカ...セシル・ペインとデューク・ジョーダン

  • 違和感の正体

    BudPowell/JazzGiant(米NorgranMGN-1063)私はこのレコードの音にずっと違和感を覚えていた。買ったのは10年前だから、10年の間、違和感を抱き続けてきたことになる。違和感の正体はピアノの音。このレコードから流れてくるピアノの音は潰れていて、平面的だ。まるで壁に投げつけられて潰れたトマトのように。その音は濁っていて、輪郭も滲んでいる。全体的な音場感自体はSP録音の割にはいい方なのだが、如何せん、ピアノの音がピアノらしくない。古い録音でもちゃんとピアノらしい音で鳴るものはいくらでもあるので、本来は録音時期はあまり関係ない。このレコードの音には少し人工的な操作が感じられて、そこがどうも引っ掛かる。バド・パウエルのような人、つまり、美しいメロディーの曲が書ける感受性があり、体重をかけ...違和感の正体

  • ブラックホークが産み出す名演

    CalTjader/SaturdayNightSundayNightAtTheBlackhawk,SanFrancisco(米VerveV6-8459)例えばウィントン・ケリーの"KellyatMidnight"のように毎週セールに出てくるレコードもあれば、安レコであるにも関わらずまったく見かけないレコードもある。ウィントン・ケリーのレコードを手放す人の気持ちはよくわかるし、このカル・ジェイダーのレコードを手放さない人の気持ちもよくわかる。何回か聴いてすぐに飽きるものは持っていてもしかたがないんだし、何度聴いてもいいものはやっぱり手許に置いておきたいものだ。カル・ジェイダーのレコードはクセの強いものが多くてなかなか買うのが難しいと思うけれど、このアルバムは王道ストレートな内容でとてもいい。バックのピアノ・...ブラックホークが産み出す名演

  • チューリッヒのある夜の出来事

    CurtisFuller/JazzConferenceAbroad(米SmashSRS67034)1961年3月、カーティス・フラーはクインシー・ジョーンズのビッグバンドと共にスイスへ演奏旅行に出かけた。2週間の滞在は大成功だっただが、チューリッヒでのある晩のコンサートが終わった後にバンドのメンバー数名がコンサート・ホールに残ってレコーティングしたのが、このアルバムになる。一聴するとライヴ録音のように聴こえるが、観客は帰った後なので、拍手や歓声はなく単なるホール録音ということになるが、収録数が足りなかったのか、"StolenMoments"だけはライヴ音源が使われいる。熱いライヴの余韻が残った中での録音だったせいか、非常に生き生きとして躍動感のある演奏が圧巻。綺羅星のごとく豪華なメンバー10名によるジャム...チューリッヒのある夜の出来事

  • これも傑作

    SalNisticoQuintet/Comin'OnUp!(米RiversideRM457)マンジョーネ兄弟のバンドは当時無名の若者たちで構成されていたけど、その中でテナーを吹いていたのがサル・ニスティコだった。19歳でバンドに加わり2年間活動を共にしたが、そこでのプレイが認められたのだろう、リヴァーサイドに2枚の自己名義アルバムを残している。ソロ第2作のこのアルバムはバリー・ハリス、ボブ・クランショウらリヴァーサイドお抱えのピアノ・トリオがバックを支える、如何にもこのレーベルらしい滋味溢れるカラーに染まった傑作に仕上がっている。冒頭はパーカーの"Cheryl"で幕が開き、ビ・バップのムードで始まる。太くどっしりとしたテナーの音色がよく映える演奏で、ジャズの濃厚な匂いが部屋に充満するが、2曲目になるとユー...これも傑作

  • 実は大傑作

    TheJazzBrothers/SpringFever(米RiversideRLP405)当時、リヴァーサイドの新人発掘担当をしていたキャノンボール・アダレイに見出された無名のチャック・マンジョーネは兄のギャスパールと"TheJazzBrothers"を名乗ってデビュー、リヴァーサイドにアルバムを3枚残している。半年ごとに立て続けに録音していることから、期待の新人だったようだ。メンバーは全員無名の若手で、何とも溌剌とした気持ちのいい演奏をしていて、くたびれた大人の澱んだ心を浄化してくれるようだ。若者らしく、アルバムを出すごとに音楽が眼に見えて進化しているのが凄いが、最終作であるこのアルバムが実は大傑作に仕上がっている。それまでのアルバムと様子がまったく違っていて、少し欧州ジャズっぽい雰囲気が漂う。バンドと...実は大傑作

  • ステレオ盤の圧勝

    JimmyRaney/TwoJimsAndZoot(米MainstreamS/6013)このレコードはモノラル盤が多く流通しているが、とにかく音がこもっていて音楽の良さがさっぱりわからず、残念なレコードの筆頭だった。シブいメンツが揃った内容的には最高であるはずのレコードだが、まあ、音が悪い。ズートが入った盤なのに何とも残念だよなあということで、エサ箱で見かける度に手にとっては見るものの「これ、音が悪いんだよなあ」とため息をついて、後ろ髪を引かれつつも毎回スルーしていた。ところが、あまり見かけないステレオ盤が転がっていたので拾ってみると、これが音が良くてびっくり、目から鱗が落ちた。ジミー・レイニーは右チャネル、ジム・ホールとズートは左チャネル、スティーヴ・スワロウとオジー・ジョンソンは真ん中、というよくある...ステレオ盤の圧勝

  • ドリス・パーカーの趣味

    YusefLateef/LostInSound(米CharlieParkerRecordsPLP-814-S)チャーリー・パーカーの法定相続人だったドリス・パーカーが散逸した彼の音源資産を守るために興したのがこのレーベルだが、パーカーの演奏以外にもオリジナルアルバムをいくつか作成していて、これがなかなか聴かせるものが多い。このアルバム裏面のライナーノーツも彼女自身が書いており、多面的な側面を持ったラティーフの真の実像をここで紹介したい、と率直な想いを書き残している。彼女にはレーベル・オーナー、レコード・プロデューサーとしての才能があったようでこれには驚かされるが、パーカーと結婚するような人だから元々只者ではなかったのだろう。彼女が言うように、ユーゼフ・ラティーフはフルートやオーボエなどを操りながら第3世界...ドリス・パーカーの趣味

  • 最近の復刻盤事情

    ChetBaker/SingsVol.2(EUValentineRecords896701)世界的なレコード・ブームというのはやはり本当のようで、次々と新品レコードがリリースされている。過去の名盤の復刻もあれば、真っさらの新作もあり、ユニオンのブログを見ているだけで楽しい。まあ、積極的に買おうという気はないので基本は眺めているだけなんだけれど、ごく稀に「これはちょっと聴いてみたいな」というのがあって、手を出すこともある。このチェットのアルバムもそんな1枚。"SingsAndPlays"をベースに、他アルバムへ散逸していた歌物やおそらくは未発表だったものを1枚に纏めて、例のカヴァーを流用して第2集という形にしてる。チェットのヴォーカルだけに集中できるという点で非常に優れた編集で、これは有難いアルバムだと思う...最近の復刻盤事情

  • 孤独なテナー

    BillBarron/ModernWindows(米SavoyMG-12163)テッド・カーソンのキャリア初期に相棒として活動を共にしたのがビル・バロン。ハード・バップの終焉時期に出てきたので、彼がやった音楽はいわゆるニュー・ジャズ、冒頭の出だしはローランド・カークかと思うような感じで始まる。硬く独特なトーンでメロディー感の希薄なフレーズをぎこちなく紡ぐ。テッド・カーソンとバリトンのジェイ・キャメロンも同様のプレイで、全体的に捉えどころのない音楽が続くけど、それは決して不快な感じではなく、この時代に固有の手探りで次のジャズを模索する様子が刻まれている。ピアノは当然ケニー・バロンで、既に抒情的な演奏スタイルが出来上がっていて、彼のピアノが始まると清涼な空気が流れる。ピアノの音色もこれ以前にはいなかった優しく...孤独なテナー

  • 隠れた実力派

    TedCurson/TheNewThingAndTheBlueThing(米Atlantic1441)1964年に欧州へ演奏旅行へ行った際にジョルジュ・アルバニタと知り合いになり、それが縁となって帰国後に彼を含めて録音されたのがこのアルバムということらしい。ビル・バロンという曲者も加わり、硬派でいながらもストレートなジャズとなっている。キャリアのスタートからセシル・テイラーやミンガスのバンドで演奏してきたこともあり、アヴァンギャルド派の印象があるのか、日本では人気が無い不遇なミュージシャンの代表格のような人だが、この人の作品はどれも硬派な内容だが、聴きにくいということはなく、真面目に音楽に取り組んだ成果がアルバムの中に刻まれている。タイトルが暗示するように、既存のハード・バップやモードの語法に拠らない、第...隠れた実力派

  • 最初の5秒

    MorrisNanton/Preface(米PrestigePRST7345)試聴の最初の5秒で自分好みのピアノであることを確信したアルバム。「最初の一音を聴いただけで」という言い方は修辞句としての意味はわかるけど、そんなことは現実的にはあり得なくて実際はもう少し聴くことになるけど、それでもすぐに「これは!」とわかることがある。エサ箱にステレオとモノラルの両方が安レコとして転がっていたので、迷うことなく両方拾って来た。ニュージャージのクラブが活動の舞台という典型的なローカル・ピアニストだが、観る人は観ていたのだろう、プレスティッジやワーナーにアルバムを残している。ジャケットに写る容姿からソウルフルと言われることが多いようだが、実際の演奏はレイ・ブライアントのような、どちらかと言えば端正でスジのいいピアノを...最初の5秒

  • 滲み出る風格と重み(2)

    JamesMoody/TheBluesAndOtherColors(米MilestoneMSP9023)前作の"TheBrassFigures"と同じコンセプト、ラージ・アンサンブルでトム・マッキントッシュのアレンジで臨んだ続編とも言うべき内容で、ここではムーディーはソプラノとフルートを吹いている。2つのセッションが収められているがメンバーは豪華で、ジョニー・コールズ、ジョー・ファレル、セシル・ペイン、ケニー・バロン、ロン・カーターと名うての顔ぶれが揃っている。前作の2年後の録音で、雰囲気は少し変わっている。スタンダードが多かった前作に比べて、今回はムーディーのオリジナル楽曲がメインで音楽はより独創的でユニーク。都会的なブルース調を軸に、よりカラフルな展開を見せる。69年のセッションはホルン、ヴィオラ、チ...滲み出る風格と重み(2)

  • JUDGMENT! RECORDS 訪問

    ディスクユニオンのジャズ部門統括責任者だった塙さんと新宿ジャズ館の店長だった中野さんが独立して、東中野に新しい店を出した、ということで、さっそくお邪魔してきた。その名も、"JUDGMENT!RECORDS"。(https://judgment-records.com/)オープンは10日(土)だったが、私が伺ったのは11日(日)の14時ごろだった。店内の様子やイベントはインスタで見て大体どんな感じかはわかっていたし、人がごった返す中でレコードを見るのはそもそも嫌いなので、わざと日時をずらして行った。西口改札を出てすぐのところにあり、アクセスがいい。こじんまりとした感じだが新装開店らしく店内はきれいで、清潔感溢れる印象だ。奥にはステレオセットとテーブルと椅子があり、試聴は座って聴くことができるし、レジの前にも...JUDGMENT!RECORDS訪問

  • 滲み出る風格と重み

    JamesMoody/MoodyandtheBrassFigures(米MilestoneMLP1005)ロリンズやコルトレーンが出てきたことで駆逐されたテナー奏者は多いが、ジェームス・ムーディーもそんな中の1人だろう。50年代初期はリーダー・セッションがたくさん用意されてレーベルの看板テナーだった時期があったが、栄光の時期は長くは続かなかった。何と言っても、それは厳しい世界なのだろう。そうなってくると多くの奏者は活路を見出すべく、独自の路線を模索する。マルチ・リード奏者へと変貌したり、アレンジの勉強をしてラージ・アンサンブルを手掛けてみたり。第2線級になると、そういう過程のものがアルバムとして結構残されるようになる。そういうものに接すると、我々は困惑する。この人は何がやりたかったんだろう、と。スコープが...滲み出る風格と重み

  • ヴィブラフォンが産み落とした独自のピアニズム

    JackWilson/Innovations(米DiscoveryRecordsDS-777)ジャック・ウィルソンはその独特なピアニズムと他の誰にも発想できない美しいアドリブのフレーズを両立させる稀有なピアニスト。大抵はどちらか一方で勝負するものだが、この人の場合はその2つが両立しているところがとにかく凄い。こういうピアニストはあまりいない。50~60年代に活躍した人たちは70年代になると失速する人が大半だが、この人は失速するどころか、ますます磨きがかかった、というのも凄い。ロイ・エアーズとレギュラー・コンボを組んでいたので、彼の演奏に焦点があたったアルバムが少ないのが難点だが、そんな中でこのアルバムの存在は貴重だ。彼の滾々と尽きることなく湧いて出てくる美メロが存分に堪能できる傑作である。このアルバムを聴...ヴィブラフォンが産み落とした独自のピアニズム

  • ケニー・バレル3部作と呼びたい1枚

    KennyBurrell/TheTenderGender(米CadetLPS772)Argoレーベルは1965年にCadetと名前を変えているが、このアルバムは1966年4月にニューヨークで録音されている。RCAStudioで録音され、レコードもRCAでプレスされたので品質がよく、音もいい。リチャード・ワイアンズのピアノ・トリオをバックに歌いまくるバレルは、まるでワン・ホーン・カルテットのような雰囲気。ブルース・フィーリングがベースになっているけれど、時代の空気も流れ込んでいて、明るくポップなところもある。普段はガンガン鳴らすワイアンズのピアノも、ここではバレルのバッキングに徹していて、決してギターを邪魔しない。全体の纏まり感はとてもいい。そんな中を流れるバレルのギターの音色がざっくりとした質感で素晴らし...ケニー・バレル3部作と呼びたい1枚

  • 満点の仕上がり

    HaroldLand/JazzImpressionsofFolkMusic(米ImperialLP12247)「ジャズを通して見たフォーク音楽」というタイトルでどの曲も知らないものばかりだが、確かにフォスターの「草競馬」みたいなメロディーの曲もあったりして、どれも明るくわかりやすい曲調ばかりで非常に親しみやすい音楽になっている。着眼点がよかったのだと思う。ハロルド・ランドのなめらかなテナーがきれいな音色で録れていて、演奏の良さがよくわかる。50年代のものよりも演奏がはるかに上手く感じるのはわかりやすい音楽で歌い所が満載だからだろう。私が今まで聴いたこの人の演奏の中ではこれがダントツで出来がいい。フレーズも現代の奏者が吹いていてもおかしくないような雰囲気があって、この感性の若さというか、何十年も先取りしたよ...満点の仕上がり

  • 初期のロイ・エアーズは傑作揃い

    RoyAyers/VirgoVibes(米AtlanticSD1488)ハード・バップをやらないミュージシャンは相手にしてもらえないこの偏狭な世界において、ロイ・エアーズは当然のように認知してもらえない。ただ、デビュー後の数年間は良い仲間にも出会えて、しっかりとジャズをしていた。世代的にはハード・バップをやるには生まれたのが遅過ぎた世代なので音楽の感性も次世代的なものだったが、初期のアルバムは内容がとてもいい。チャールズ・トリヴァーとジョー・ヘンダーソンが加わるサイドと、トリヴァーに加えてハロルド・ランド、ジャック・ウィルソンに代わるサイドに分かれるが、この2つのセッションがまるで違う雰囲気になっているのが面白い。演奏家の個性がそのまま音楽に反映されている。ジョー・ヘンダーソンが入るサイドは明るい演奏で程...初期のロイ・エアーズは傑作揃い

  • ナット・アダレイは歌う(3)

    NatAdderley/InTheBag(米JazzlandJLP975)ナット・アダレイが1962年にニュー・オーリンズへ演奏旅行へ出かけた時に現地で初めて聴いた地元ミュージシャンたちの演奏に感銘を受けて、彼らとレコーディングしたいということになり、このアルバムは誕生した。普通なら彼らを本場ニューヨークへ呼び寄せてレコーディングするのが定石だが、大抵の場合、レコーディングに慣れていない若者たちは大都会の雰囲気に呑まれてしまい、自分たちの個性を十分発揮できないままで終わってしまう。そのことをよく知っていたナットは、まず、キャノンボールとサム・ジョーンズの3人でニューヨークでアルバムの準備を整えてから再度ニュー・オーリンズへ乗り込み、このアルバムのレコーディングをした。アルバムの表紙にその時の3名の名前が列...ナット・アダレイは歌う(3)

  • ナット・アダレイは歌う(2)

    NatAdderley/Naturally!(米JazzlandJLP47)A面がジョー・ザビヌルのトリオ、B面がウィントン・ケリー、チェンバース、フィリー・ジョーのマイルス・バンドという豪華なバックで固めた硬派で超本格派の内容。コルネットのワン・ホーン・アルバム自体が珍しいのに、更にこういう面子というのはおそらくこれが唯一ではないか。こういうメンバーの影響か、私の知る限り、これが最もストレートど真ん中の胸をすくようなハード・バップだ。冒頭からなめらかで澄み渡った音色で伸びやかに歌う。明るい曲調で、聴いていると胸の中のつかえが取れていく。わかりやすい、屈託のない音楽が続き、なんと心地よいことか。その素直さや実直さにただひたすら感心してしまう。これはきっとナット・アダレイという人の人柄そのものなんだろうな、...ナット・アダレイは歌う(2)

  • ナット・アダレイは歌う

    NatAdderley/LittleBigHorn(米RiversideRM474)ナット・アダレイは、実際のところ、まったく評価されていない。演奏家としても、音楽家としても、コレクター的見地からしても。彼のプレイが素晴らしいと褒められることはまずないし、"WorkSong"というヒット曲があるにも関わらずその作曲力や音楽を創る力を評価されることもないし、レア盤として羨望の眼差しを集めるアルバムもない。有名な割にここまでないないずくしの人も珍しい。コルネットというシブい楽器をファーストとしていたこと、兄のキャノンボールの影に隠れがちであったこと、ジャズ界では比較的メジャーなレーベルを渡り歩くことができたこと(もちろん、これはラッキーなこと)などが原因のように思えるけど、それにしてもあんまりだと思う。録音の...ナット・アダレイは歌う

  • 若き日の別顔

    ChuckMangione/Recuerdo(米JazzlandAM84)チャック・マンジョーネと言えば、奇妙な帽子を被った長髪の男がラッパを抱えて能天気に笑っている姿を反射的に思い出す。実際に抱えているのはフリューゲルホーンで、彼の大ヒット作の"FeelSoGood"でもその甘い音色を聴くことができるが、ジャズの愛好家からはこういうのはジャズから脱落した音楽として嫌われる。だから、それをやっているマンジョーネ自身も相手にされない。そんな彼も、デビューした時はリヴァーサイドに籍を置き、短い期間ながらもハード・バップをやっていた。兄弟名義がメインだったが、こうして本人名義のアルバムも残している。ウィントン・ケリーのトリオをバックにした本格的な内容で、これがなかなか聴かせる。サックス奏者のジョー・ロマーノとの...若き日の別顔

  • ゴルソン・カラーに染まった傑作(2)

    JimmyCleveland/RhythmCrazy(米EmArcyMGE-26003)この第4作もゴルソンとファーマーが加わり、アレンジはゴルソンのものとジジ・グライスのものが混在している。第1作や第3作のアーニー・ウィルキンス・オンリーの編曲と雰囲気が違うのは一聴してすぐにわかる。どこが違うかというと、楽曲が持つ良さがより魅力的に引き立つような編曲に沿って各人の演奏が一直線に進んでいるということに尽きる。変な小細工が感じられず、非常にストレート。そこにヴィヴィッドや柔らかいハーモニーが施されているから、楽曲に美しい輝きがある。ジャズの場合、アレンジはマイナス要因と捉えられがちだけど、上手くやれば音楽はより豊かなものへと格上げされる。ハンク・ジョーンズがピアノを弾いているのも、全体がデリケートに仕上がっ...ゴルソン・カラーに染まった傑作(2)

  • ゴルソン・カラーに染まった佳作

    JimmyCleveland/ClevlandStyle(米EmArcyMG36126)ジミー・クリーヴランドはその名前はいろんなところで目にするから我々にはお馴染みのトロンボーン奏者だが、リーダー作は意外にも少なく、私の知る限りではエマーシーに残された4枚だけ。このレーベルはジャズのレーベルとしてはカタログ数は多いものの決定的名盤と言われるものが多くなく、かなり格下の扱いになっている。そのため、そのアルバムは埋もれがちで、クリーヴランドの場合も例外ではない。彼のアルバムが見向きされないのはどのアルバムも多管編成になっているからだ。多管編成は形式が優先されて音楽が定型化されがちなのでとにかく嫌われるわけだが、そこで重要になるのがアンサンブルのアレンジということになってくる。このアレンジにベニー・ゴルソンや...ゴルソン・カラーに染まった佳作

  • リヴァーサイドの見識の高さが生んだ傑作

    BilliePoole/Confessin'TheBlues(米RiversideRM458)リヴァーサイドにはポチポツとヴォーカルアルバムが残っているが、そのどれもが深く唸らされるものばかりだ。ネームヴァリュー先行でアルバムを作ったのではなく、本当に実力のある人だけを取り上げており、その見識の高さには頭が下がる。その最右翼はマーク・マーフィーの2作だが、その次に続くのはこのビリー・プールあたりだろう。ダイナ・ワシントンの声質とサラ・ヴォーンの伸びやかな唱法をミックスしたような感じだが、持ち味はもっとすっきりさっぱりしていて、その真っ直ぐな歌唱が聴き手の心にストレートに刺さってくる。問答無用に上手い歌で、これはもう敵わないなあという感じである。歌の上手さというのは神から与えられたギフトであることがよくわか...リヴァーサイドの見識の高さが生んだ傑作

  • ジョージ・バロウに関する覚書

    TheAmram-BarrowQuartet/JazzStuidioNo.6~TheEasternScene(米DeccaDL8558)最近聴いて腰が抜けてノックアウトさせられた1枚。並み居る名盤たちを押しのけて、4番打者の位置に座っている。パタパタしていて何気なく眼に留まって、デッカのよくある凡庸なスタジオ・セッションものかとスルーしかけたが、ふと、"TheEasternScene"というキーワードに引っ掛かった。東海岸のジャズなのか、ということで聴いてみようという気になって拾ってみると、これが大当たりだった。ピアノレスでテナーとホルンという珍しい構成だが、これがちょうどミンガスがサヴォイやベツレヘム時代にやっていた音楽に酷似している。きちんと作曲された楽曲を使って、ゆったりとして振れ幅の大きい演奏で、...ジョージ・バロウに関する覚書

  • 何かカッコいいジャズを、と問われたら(2)

    FrankFoster/Fearless(米PrestigePR7461)以前、こんなカッコいいジャズはない、ということでエルヴィン・ジョーンズの"HeavySound"のことを書いたが、同じ系統のカッコよさを誇るのが、このフランク・フォスターのリーダー作。何と言っても、どちらも冒頭が彼の自作である"RaunchyRita"で幕を開ける時点で既にもう十分カッコいいのである。この名曲は聴くたびにシビれるわけだが、もちろんカッコよさはこれだけでは終わらない。収録された曲のほとんどがフォスターの自作だが、どれもイカした楽曲ばかりで、その作曲能力の高さに驚いてしまう。時代の空気を反映してファンクの要素をセンスよく取り込んでおり、これが非常にいい塩梅なのである。B面冒頭の"BabyAnn"を聴いていると、リー・モー...何かカッコいいジャズを、と問われたら(2)

  • ケニー・ドーハム 中期の佳作(2)

    KennyDorham/TheArrivalOfKennyDorham(米JaroJAM-5007)タイム・レーベルの"JazzContemporary"の1ヵ月前に録音されたのがこのアルバムで、メンバーもピアノ以外は同じ構成で、この2枚は兄弟の関係にある。こちらはトミー・フラナガンがピアノを担当しているが、これがこれら2枚のアルバムの性格を異にしている。フラナガンのバッキングやソロは従来のハード・バップ・マナーで、このアルバム全体のトーンを普通のハード・バップに染めている。そのため耳馴染みが良く、誰からも好かれるであろう非常にわかりやすい音楽になっている。ヴィクター・ヤングの"Delilah"でのソロ・パートのエレガントさは如何にもこの人らしい。また、このアルバムで顕著なのはドーハムの饒舌さで、これが珍...ケニー・ドーハム中期の佳作(2)

  • ケニー・ドーハム 中期の佳作

    KennyDorham/JazzContemporary(米Time52004)若い頃はまとまりがなく弛緩した駄作だと思っていたが、今は真逆の感想に反転している。一般に若い頃は頭が柔軟で年を取ると頑固になると言うが、どうも私の場合は逆のようで、若い頃には受け入れられなかったのに今は好きになっているものが多い。それだけジャズの理解が深まったということもあるだろうし、物事に総じて寛容になったということもあるのだろう。それがいいか悪いかは別にして。腰が入っておらず弱々しいドーハムのトランペットにチャールズ・デイヴィスの重量感のあるバリトンは相性がよく、それが全体のバランスに安定をもたらしている。そして、バディー・エンロウのドラムのザラッとした質感がとてもいい。ザクザクとシンバルを刻んでいて、これが気持ちいい。そ...ケニー・ドーハム中期の佳作

  • ブルーベック・カルテット最後のアルバム

    TheDaveBrubeckQuartet/TheLastTimeWeSawParis(米ColumbiaCS9672)洗練の極み、とはこのアルバムのためにある言葉。白人ミュージシャンには黒人ミュージシャンがやるようなジャズは結局できず仕舞いだったが、逆にこの洗練の高みを極めたような演奏は黒人ミュージシャンにはできない。触るのがためらわれるようなところがある。このアルバムはデイヴ・ブルーベック・カルテットの最後の公式アルバムで、この後バンドは解散した。最も成功した白人ジャズグループとして、彼らの生活は多忙を極めていた。長期間行われる世界各地でのツアー生活、その合間を縫って行われるレコーディング。そういう生活が長く続いたせいで、バンドのメンバーたちは疲弊し、精神的にも不安定になり、関係もギクシャクし始めた。...ブルーベック・カルテット最後のアルバム

  • スジの良いピアニスト

    BarbaraCarroll/"Live"HerpianoAndTrio(米WarnerBros.W1710)ピアニストとしてのスジの良さでは、このバーバラ・キャロルの右に出る人はなかなかいない。彼女のアルバムを聴くたびにそのピアニズムに深い感銘を受けるが、このライヴを聴けば、その感想が間違っていないことがよくわかる。乱れることのない運指、常に一定の音量、完璧なリズム感、そのどれをとっても超一流のピアノで、国際ピアノ・コンクールなんかで聴くピアノ演奏と同等の質感があって、それがこういうくだけたジャズ・ライヴの中で鳴っていることの驚異。果たしてどれだけの人がそのことに気が付いていただろうか。1967年のリリースで、選ばれた楽曲はお決まりのスタンダードではなく、当時の映画音楽など時代を反映したもので、そういう意味で...スジの良いピアニスト

  • 都会的なレア・グルーヴ感(2)

    DonaldByrd/SteppingIntoTomorrow(米BlueNoteBN-LA368-G)先の"PlacesAndSpaces"の半年ほど前に録音された姉妹作だが、こちらはゲイリー・バーツのサックスが前面で目立つように配置されていたり、デヴィッド・T・ウォーカーのイカしたギターが入っていたり、ストリングス・アレンジよりもシンセサイザー処理が目立つなど、演奏の構成が異なっている。そのためバンド感が感じられ、サウンドもずっとシンプルだ。それにしても何だろうなあ、このなめらかさは。白人ミュージシャンが歯ぎしりして悔しがる究極の楽園的サウンド。目を閉じて聴いていると別世界に連れて行かれて、その心地よさが罪悪感さえももたらす。そういうところに本能的に警戒心を抱く人もいるかもしれない。表面的にはそれまでのハー...都会的なレア・グルーヴ感(2)

  • 都会的なレア・グルーヴ感

    DonaldByrd/PlacesAndSpaces(米BlueNoteBN-LA549-G)ブルーノートのこの時代の作品群をそれまであまりちゃんと聴いてこなかったので、ロバート・グラスパーのブラック・レディオを最初に聴いた時に何でブルーノートからリリースされたのか腑に落ちなかったが、それは私が無知だっただけで、元々こうして下地があったということだった。"BitchesBrew"が70年、"WeatherReport"が71年、"ReturnToForever"が72年、という流れに沿うように、ドナルド・バードも70年代に入ったあたりから作風がいわゆるレア・グルーヴ系に移行し始めて、代表作と言われる本作は75年にリリースされている。ウェザー・リポート以降、白人が始めた音楽のぎこちなさや居心地の悪さと比べて、ドナ...都会的なレア・グルーヴ感

  • キャノンボール・バンドの凄み(2)

    TheCannonballAdderleySextet/InNewYork(米RiversideRLP404)キャノンボールのセクステット名義で出ているアルバムは4枚だが、そのどれもがライヴ・アルバム。その理由について、オリン・キープニューズは近年のテープ録音機やマイクの性能の大幅な向上でライヴ会場の興奮の様子がそれまで以上に上手く録れるようになったことを挙げている。特にキャノンボールのバンドの演奏に対するオーディエンスの熱狂は凄まじく、この様子を録ることがキャノンボールの音楽の本質を把握するのに1番相応しいのだ、と。彼がそう考える契機となったのがラティーフが加わる前の1959年10月のサン・フランシスコのライヴハウス"TheJazzWorkshop"でのクインテットのライヴ録音だった。当時のサン・フランシスコ...キャノンボール・バンドの凄み(2)

  • キャノンボール・バンドの凄み

    CannonballAdderley/JazzWorkshopRevisited(米RiversideRS9444)キャノンボールはやはりリヴァーサイドがいい。この前のエマーシー/マーキュリー時代やリヴァーサイドが倒産して止む無く移籍したキャピトル時代のものはレーベル側の意向が優先されたアルバムが多く、キャノンボールの姿はあまりよく見えない。それに比べて、リヴァーサイド時代は彼が当時考えていた音楽がそのままパッケージされていて、本当に自由にやっているのがよくわかる。それはオリン・キープニューズが音楽は音楽家の物だと考えて、彼らの意向を最優先にして自由にやらせたからだ。そういうのは経営者としては失格だったのかもしれないけれど、音楽プロデューサーとしては最上の資質だったと思う。それはこのレーベルに残されたアルバム群...キャノンボール・バンドの凄み

  • 秀逸な白人ジャズバンド

    TheAlBellettoSextet/SoundsandSongs(米CapitolT-6514)ワンコインでお釣りがくるこのレコードも、聴くとため息が漏れるくらい出来がいい。一応オールド・ジャズのスタイルを取っているけれど、演奏はものすごく洗練されていて、古臭さは微塵もない。感覚的にはモダン・ジャズで、インストとコーラスによる歌唱が交互に収められている。アル・ベレットはルイジアナ州立大学在学中に学生ジャズバンドを結成して、その流れでプロとして活動していたようだ。自身はサックスやクラリネットを吹いていた。彼のスモール・バンドには若き日のドン・メンザが在籍していた時期もあり、キャピトルの次に契約したキング・レコード時代の録音ではメンザの演奏が聴ける。セクステットによる軽やかな演奏はウエストコースト・ジャズとは一...秀逸な白人ジャズバンド

  • 大作曲家が歌うと・・・

    HaroldArlen/SingsHisSongs(米CapitolT-635)私ももう随分長い間レコード漁りをやっているけれど、未だにキャピトル・レーベルの全貌がよくわからない。総合メジャー・レーベルなのでジャズのカタログは少ないのかと思いきや、ビッグ・バンドやヴォーカルは知らないタイトルが今でも出てくる。ジャズがメインのマイナー・レーベルの話は多くの人が語るけど、このレーベルのことを語る人はいない。このレコードも初めて見た。大作曲家本人が自身の歌を歌うもので、こういうのはプロの芸ではなく余技だから、「困ったな・・」という感じであるのが正直なところだけど、この雰囲気のあるジャケットを見ると素通りすることはできない。古き良き時代に作られた大スタンダードばかりで、どちらかと言うと地味で渋めの曲が多いけれど、ジャズ...大作曲家が歌うと・・・

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廃盤蒐集をやめるための甘美な方法
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