春の終わりも近いころ、乃木神社を訪れた。 これまで散々ネタにさせてもらった手前、参拝し、礼を言わねば義理を欠く。そういう意識に背を押されてのことだった。 むしろ遅すぎたほどである。 心中密かに詫びながら、鳥居をくぐり境内へ。 立地は良い。地下鉄乃木坂駅から一分、迷いようのない場所に在る。 「真宗に山寺なし」という、俚諺めいたフレーズを連想せずにはいられない。福澤諭吉先生が講釈なさってくれていた、 「真宗の寺院は全国到る処、都邑の中央に建立して人の湊合に便利ならざるはなし。自然に成りたる位置か将た故意に謀りたるものか知らざれども、兎に角にも真宗に山寺なしと云ふ程の次第にして、他宗寺院の故(こと)…