「司さま、お待ちしておりました。遅ればせながら、この度はご結婚、誠におめでとうございます」「ああ。今日は世話になる。妻のつくしだ。これからよろしく頼むな」出迎えてくれたのは、この別荘の管理をしている川村さんという男性で、年の頃は50代半ばだろうか。噂の蕎麦打ち名人という方だ。その後ろには、使用人の方たちもいるけれど、そう多くはない。石張りと木で造られたモダンな別荘は、南側部分が緩やかな曲線を描き、贅...
「魚のエサがイクラ? あの高級品のイクラ? 贅沢すぎるでしょ!」真っ先に抱いた感想がそれで。「イクラって高級品か?」人の感想に疑念を抱き、価値観レベルが天と地ほど違うと見せつけた司に連れられやって来たのは、軽井沢にある管理釣り場だった。 Lover vol.50肌を撫でるような優しい風が吹き、葉擦れが囁く木々の下では、耳心地の良いせせらぎを奏でる清らかな水が流れている。その清流が眺められるすぐ近くに管理釣り場...
Lover vol.49「司ーっ! 何なのよ、アレはっ!」今日も今日とて、朝っぱらから道明寺邸を震わすのは、腹の底から放出された私の声。ここに住むようになってから、やたら叫んでいるような気がする。それもこれも元を辿ればこの男が発端。今日の叫びも勿論、この男へのクレームだ。それは、例のアレ。突如と姿を現した、例のアレ!正体が明らかになった昨日。司が帰宅するなり不満を爆発させてやろうと思っていたのに、こんな時に...
Lover vol.48「つきたてのお餅がこんなに美味しいなんて知らなかったよ。つくし、またやろうね!」男性陣がぐったりする中、際立って元気な滋さんは、美味しいを連呼しては顔を綻ばせ、一体、幾つのお餅を食べたことか。お餅の旨さだけではなく、餅つき自体をすっかり気に入ってしまった滋さんは、実は自分でもお餅をついてみたかったと言う。「今回は、折角つくしが仕返ししようって頑張ってたからさ、成功させてあげたくて遠慮...
Lover vol.47お義父さまの存在をチラつかせるなり沈黙した三人。女性陣には『お義母さま』の名を借りたのだから、男性陣には『お義父さま』の名を。ちゃんと平等を図る私は優しいと思う。誰も褒めてくれないから自画自賛してみる。それに嘘は言っていない。お義父さまには今朝、『友人たちと餅をついて草餅作りますから、楽しみにしていてくださいね』と、伝えてある。お義父さまは、それはそれは喜ばれて、出来上がりの連絡が来...
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