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  • 「親切で世界を救えるか」 堀越英美

    「親切で世界を救えるか」(堀越英美著2023年12月太田出版249p)を読みました。子どもが変わってきていると著者は言う。「鬼滅の刃」の登場人物たちにそれが現れていると言うのだ。炭治郎の行動の基盤は親の仇討ちでもないし御館様への忠誠でもない。弱きを助け、強きを挫く従来のヒーローにはない裏方仕事をする人たちへ感謝し兄を亡くした少年を文通で慰め上手な飯炊きで仲間たちの心を和ませる「ケアの倫理」を持っているところにある。妹の禰󠄀豆子もそうだ。こういう人物が子どもの心をとらえる時代。道徳の教材にある「手品師」の例も面白い。手品師が、少年に手品を見せるという約束をした日に(いい)仕事が入ってしまう。今後につながるような仕事だ。仕事か、少年との約束か……ところが現代の子どもたちは、そんな葛藤はしない。「仕事が入ったか...「親切で世界を救えるか」堀越英美

  • 「影犬は時間の約束を破らない」 ソルメ

    「影犬は時間の約束を破らない」(パク・ソルメ著2025年2月河出書房新社198p)を読みました。冬眠が行われるようになっている世界。心や身体が疲れたとき人々は冬眠をするようになっている。はじめは病院で行われていた冬眠もだんだんに民間で行われるようになり資格を持った「ガイド」が冬眠に付き添うようになった。ずっと付き添っていなくてもいいけれど意識を離してはいけないガイドの時間が語られる。「ガイドの仕事をしている間に出来ることストレッチ、読書、編み物、日記を書く、手紙を書く。テレビを見るのはだめ長電話もだめ長時間一人でいることになるが神経の一部は常に冬眠者に向けていなくてはならないからだ。体と精神の一部はしっかり緊張していなくてはならない」外食をする散歩をするランニングをする本屋に行く……静かな時間が語られる読...「影犬は時間の約束を破らない」ソルメ

  • 「鳥の心臓の夏」 バーロウ

    「鳥の心臓の夏」(バーロウ著2025年3月朝日新聞出版417p)を読みました。サンデーは娘ドリーと2人、暮らしている。バスに乗って農場へ行き(離婚した夫の父親の経営する農場だ)温室で作業をする。帰って来て娘と白いものを食べる日々。(白いものしか食べられない)自閉のサンデーは人の顔を見て話すことは出来ない。南イタリアの伝統的作法が書かれている「淑女の礼儀作法」という本を暗記していて書いてあることに従っている。話す時に無意識に手が動くことは死んだ母から禁じられていたから抑えている。(ドラマ「アストリッドとラファエル」の主人公も手をひらひらさせて話す)そんなある日隣家に50代の夫婦が引っ越して来る。パジャマのままサンデーの家に現れたりいつの間にか居間のソファで寝ていたり自由奔放なヴィータにサンデーは魅了される。...「鳥の心臓の夏」バーロウ

  • 「僕には鳥の言葉がわかる」 鈴木俊貴

    「僕には鳥の言葉がわかる」(鈴木俊貴著2025年1月小学館262p)を読みました。表紙から趣味の野鳥観察の話かなと思ったらとんでもない世界的発見をした学者の話です。鳥の「鳴き声によるコミュニケーション」の研究をするために冬の軽井沢の野ネズミも出入りする大学の山荘に泊まりこみ最後には持っていった食料が無くなって米だけになって炊いたご飯+お湯かけご飯+水かけご飯の3パターンで凌いだ。痩せて戻った鈴木さんに指導教官のヒロシ先生は毎日4時になると「トシカタ、ビールだ」と声を掛けて研究を休止させてくれおかげで鈴木さんの夜型生活は戻り体重も戻った。という話に気を取られていると著者があんまりさらっと書いているので世界的発見を読み逃してしまいそうになる。シジュウカラは餌を見つけると「ヂヂヂヂ」と鳴く。すると、何種類かの鳥...「僕には鳥の言葉がわかる」鈴木俊貴

  • 「ヤービと氷獣」 梨木香歩

    「岸辺のヤービ」「ヤービの深い秋」に続く「ヤービと氷獣」(梨木香歩著小沢さかえ画2025年2月福音館書店212p)を読みました。ヤービの住むマッドガイド・ウォーターの冬の物語です。水辺に暮らすネズミぐらいの小さな生き物・ヤービ族の男の子ヤービは冬になると冬眠する。友だちのベック族の女の子トリカはリョコウバト(絶滅したと言われている)の背に乗って南の国へ渡る。それがいつもの冬の過ごし方だったのに今年は違う。なぜか、目がさめてしまったのだ。一方、ヤービたちと友だちになった大きい人(人間)のウタドリさんも不思議な出来事に遭遇する。旅立つ日トリカがくれた合図は天から降ってくるエメラルド色の星屑だった。集めておいたヒカリゴケを鳥の背からまいてくれたのだった……「冬眠中冬至の日1日だけは起きてパーティをするヤービ族。...「ヤービと氷獣」梨木香歩

  • 「美土里倶楽部」 村田喜代子

    「美土里倶楽部」(村田喜代子著2025年3月中央公論社241p)を読みました。夫を亡くした美土里は同じように夫を亡くした女性たちと知り合う。(それが倶楽部)パソコン教室仲間の辰子は新婚旅行で温泉の地獄を巡りながら老後はともに地獄巡りをしようと夫に言われたという。夫の言う地獄はこの世の温泉の地獄なのかあの世の地獄なのか女たちは画集の地獄絵巻を見ながら語り合う。辰子が編んでいる句集の題名は「地獄句集」亡き夫の営んでいた時計屋の向かいで喫茶店をやっている美子から美土里たちはハチクマという渡り鳥の観察に誘われる。美子の夫の趣味は野鳥観察だったのだ。毎年秋になるとハチクマを見送りに行くのが習いだった夫。美子は言う。「時実(夫)が言っていたことがあるの鳥というものは飛んでいくから好いんだって」夫の初盆を迎えた美土里は...「美土里倶楽部」村田喜代子

  • 「ゾンビがいた季節」 須藤古都離

    「ゾンビがいた季節」(須藤古都離(ことり)著2025年4月講談社383p)を読みました。「ゴリラ裁判の日」の須藤古都離の新作です。毎回違った風景を見せてくれる須藤さん今回はどんな、と期待が高まります。舞台はアメリカの住人50人ほどの小さな町ジェスロー昔、ゴールドラッシュならぬシルバーラッシュがあったけれどそれも終わり今ではすっかり寂れている。時は1969年(う〜ん、こう来ましたか)いきなり大真面目にゾンビが出てくる。(ゾンビ……今回はホラーなんですか……)どこに連れて行かれるのかさっぱり分からないままとにかく読み進めるしかない……細かいカット割で雑多な登場人物たちの断片が描かれる。ヒット作のない映画監督売れっ子時代から足を洗ってもっぱらドキュメンタリーばかり撮っているカメラマン書けなくなった作家容姿ばかり...「ゾンビがいた季節」須藤古都離

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