chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 「研究者、生活を語る」

    「研究者、生活を語る両立の舞台裏」(2024年10月岩波書店252p)を読みました。岩波書店編集部がこの本をつくろうと思ったところが興味深い。研究者がどんなふうに家事や子育てや介護をしながら研究しているかが語られる。ただただもう綱渡りの日々だ。勤め先が離れているので2人の子供を1人ずつ連れて別々に暮らしている夫婦がいる。海外で親1人子1人で暮らしている人もいる。親を介護しながら暮らしている人妻を介護しながら暮らしている人病児を育てている人配偶者が研究職の人会社勤めの人……子連れで学会に参加している話山に子連れで調査に行った話海外に子連れで調査に行った話……こういう思いをしながら……というのがひたひたと迫って来る。わたしたちは研究者にこういう思いをさせているのか……お金で解決できないこともあるけどお金で解決...「研究者、生活を語る」

  • 「脂肪と人類」 ダムベリ

    「脂肪と人類渇望と嫌悪の歴史」(ダムベリ著2025年1月新潮選書223p)を読みました。界隈という言葉が流行っているらしい。この前は「編み物」界隈。今回は「脂肪」界隈。確かに脂肪を避けている。ドレッシングはノンオイル揚げ物は月に1度か2度……大した知識もないけれど何となく。人類が石器を使うようになったのは骨を砕いて中の髄を食べるためだったと聞いたことがある。獲物を倒した獣が肉を食べた後に残り物の骨から髄を取り出して食べていた。骨を砕くには石が必要だったからだと思っていたけれどどうやら髄は貴重品だったらしい。美味しいからだ。そのうち土器を作って水と骨を一緒に入れて加熱すれば表面に脂が浮いてくることを知った。すくって食べることができる、無駄なく。(水と脂を一緒に飲めば美味しいスープだし穀物を入れれば甘味が加わ...「脂肪と人類」ダムベリ

  • 「編むことは力」 ナポリオーニ

    「編むことは力ひび割れた世界の中で、私たちの生をつなぎあわせる」(ナポリオーニ著202412月岩波書店161p)を読みました。イタリアで生まれた著者はお祖母さんから編み物を習った。小さな手に手を重ねお話を語りながらお祖母さんは編み物を教えた。(例えば、お祖母さんの語る「眠り姫」では糸つむぎと織りと編みの生産地であった姫の国は紡ぎぐるまを焼き払われることによって生産力を失い姫が目を覚ます100年後に人の住まない地になっていることを恐れた仙女が姫だけでなく城とその周囲をイバラで包み眠らせた……となる)著者は困難に遭っている。長年暮らした夫が多額の借財を抱えていることが分かったのだ。家も手放さなくてはならない。鬱やパニック障害を起こした著者を救ったのが編み物だった。編み物のことを調べて本を書こう!戦線の兵士たち...「編むことは力」ナポリオーニ

  • 「図書館を建てる、図書館で暮らす」 橋本麻里 山本貴光

    「図書館を建てる、図書館で暮らす本のための家づくり」(橋本麻里山本貴光著2024年12月新潮社231p)を読みました。①図書館を建てて②図書館で暮らし③図書に関する仕事をする話です。寝室、キッチン、風呂、トイレ以外居間もない。閲覧室の大きなテーブルで食事をし読書をする暮らし。(それぞれの仕事部屋はある)建てたばかりにしては落ち着いた雰囲気……(写真がふんだんにある)と思ったら九州大学が移転するため使われなくなった棚を(九州大学歴史的什器保存再生プロジェクト)引き受けて(借りるという形)設置しているためだ。棚は開口部からは入らないので家が完成する前に運び入れた。これまで(それぞれに)蔵書の量ゆえに引越しを余儀なくされていた2人の引越遍歴を聞けば(読めば)図書館で暮らすことは必然に思われる。毎日届く(注文した...「図書館を建てる、図書館で暮らす」橋本麻里山本貴光

  • 「フェローシップ岬」 ダーク

    重い!内容がではなくて本自体が。「フェローシップ岬」(ダーク著2024年12月早川書房787p)を読みました。自然豊かなフェローシップ岬に住む作家のアグネスは80代。たいていの小説では80代は脇役だけどこの作品ではアグネスが主役だ。アグネスは大学生が卒論に取り上げるほどのロングセラー児童文学「ナン」シリーズの作者だ。そして実は覆面作家として「フランクリン広場」シリーズも書いている。今アグネスの筆は止まっている。そろそろ「フランクリン広場」シリーズを終わりにしようと思うのだけれど……乳がんの再発も気になる。そして何よりも大きな課題はフェローシップ岬の今後のことだ。祖父が岬の自然を愛し5家族の共同所有にしたことが今ではネックになっている。80年来の親友の隣家のポリーの息子たちが自然保護団体に寄付することに賛成...「フェローシップ岬」ダーク

  • 「梅の実るまで」 高瀬乃一

    「梅の実るまで茅野淳之介幕末日乗」(高瀬乃一著2025年1月新潮社252p)を読みました。三沢市在住の作家です。本当に「愛すべき人物」をつくるのが上手いなぁと感心してしまう。時は幕末。主人公の淳之介は若い無役の御家人だ。父がお役上の粗相で自害し跡を継いだものの月に三度の相対日に組の支配に挨拶に行くことしか仕事がない。私塾を開いているが流行りの蘭学や語学の塾ではないので閑古鳥が鳴いている。幼馴染の同心の青柳からちょっとした仕事を頼まれてやるのが唯一の収入の道だ。口うるさい母のお市の縫い物の手間賃の方が多いくらいだ。世の中は尊王だ攘夷だと騒がしいが腕の立たない淳之介には縁のない話だ。そんな淳之介がなぜか牢に入ることになるのが第5話の「空蝉」最初は青柳の仕事かと呑気に構えていたがいつまでたっても牢から出られない...「梅の実るまで」高瀬乃一

  • 「目の見えない人は世界をどう見ているのか」 伊藤亜紗

    「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(伊藤亜紗著2015年4月光文社新書216p)を読みました。目の見えない人ぜんたいをひとまとまりにするのではなくかといって完全に個にするのでもなく(そうすると物語になる)これまでにない小さなまとまりとして捉える「見方」が新鮮だ。年をとるとほとんどの人は少しずつ機能を失う。耳が遠くなったり膝が痛くて思うように歩けなくなったり……中途障害者になる。あるテレビ番組で傘に当たる雨の音が小さくなる傘を作っている傘屋が紹介されていた。目の見えない人は音で情報を得るので雨の音は無い方がいいというのだ。音で情報を収集……目からの情報が無いぶんを補うということ?と思ったらそんなに単純ではないと著者は言う。頬にあたる風におい光の暖かさ温度足の裏の感触を総合して、脳の中で組み立てている...「目の見えない人は世界をどう見ているのか」伊藤亜紗

  • 「しめかざり探訪記」 森須磨子

    「しめかざり探訪記」(森須磨子著2024年11月工作舎252p)を読みました。河井寬次郎記念館では一年中しめ飾りを飾っている。一年中お正月のような気持ちで過ごしたいと寛次郎が言ったからだ。大学で卒業研究としてモース(大森貝塚を発見した)が残したしめ飾り写真と「この国のありとあらゆる物は日ならずして消えうせてしまうだろう」という言葉をきっかけにモースの写真のしめ飾りを職人に依頼して再現したものを発表した。その卒業研究が優秀賞を受賞して著者はしめ飾り研究の道に足を踏み入れたのだという。しめ飾りを集めるのは容易なことではない。まず売られている期間が短い(年末だけ)飾られている写真を撮影しようにも期間も短い(年のはじめだけ)真冬の街をしめ飾りを求めてリュックを背負って時間に追われながら歩く著者。(冬の日は短い)構...「しめかざり探訪記」森須磨子

  • 「生きるための読書」 津野海太郎

    「生きるための読書」(津野海太郎著2024年12月新潮社221p)を読みました。80代になった著者が(たくさんの友人知人が先に行っている)あちら側に行く前に「ひと踊り」(ひと踊りは、津野さんの場合読書)と思って若い著者の本を読んだ記録です。読んだのは伊藤亜紗の「目の見えない人は世界をどう見ているのか」斉藤幸平の「人新世の資本論」森田真生の「数学する身体」小川さやかの「チョンキンマンションのボスは知っている」千葉雅也の「現代思想入門」藤原辰史の「歴史の屑拾い」孫のような世代の彼らの書いたものを読みワクワクしている著者6人の若い研究者たちは「とくに意識せずともごく自然に、これまでにない暮らし方をしている新種の知識人で幼い人とともにいやおうなしに暗黒の未来に直面せざるを得なくなった人たち」だと著者は思う。彼らは...「生きるための読書」津野海太郎

  • 「土と生命の46億年史」 藤井一至

    「土と生命の46億年史土と進化の謎に迫る」(藤井一至著2024年12月講談社ブルーバックス251p)を読みました。一袋数百円で売られている「土」が人工的には作れないものだったとは驚く。月や火星に移住したら食べ物を生産するために「土」が必要なのに作れないものだったなんて……地球には最初から土があった訳ではないというのは頷ける。海の中でカンブリア大爆発が起こっていた時陸地は岩石砂漠だった。話は飛んで3億年前コケとシダ類しかない陸地に裸子植物(イチョウの先祖)が登場する。裸子植物の葉が土になったのねと思ったら大間違いだ。落ち葉と倒木の分解はうまくいかずそのまま積もり泥炭になり泥炭は化石化して石炭になった。材料があるだけではダメなのだ。分解屋がいなくては。そこにキノコが登場する。キノコは植物の分解を進め分解されま...「土と生命の46億年史」藤井一至

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、ゆらゆら荘にて さんをフォローしませんか?

ハンドル名
ゆらゆら荘にて さん
ブログタイトル
ゆらゆら荘にて
フォロー
ゆらゆら荘にて

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用