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  • 「がん闘病日記」 森永卓郎

    「がん闘病日記」(森永卓郎著2024年7月三五館シンシャ204p)を読みました。森永卓郎さんの闘病記です。森永さんはがんになって冷静なのかハイなのか……有名人なので「がんの治し方」情報が殺到する。それを3つのタイプに分けたりする。治療費の話をする。(経済アナリストなので)余命を宣告された人によくある旅に出かけたり高級なレストランで食事をしたりしたいとは思わない。「いつ死んでも悔いのないように生きてきたしいまもそうして生きている」と思う理由として今までどんなふうに生きてきたのかを語る。(側から見るとやりたいことに突っ走って休養が足りないように思われますが)森永さんは言う。「これまで仕事で遊んで遊んで遊びつくしてやりたいことはすべてやってきた。そろそろ家に帰ろうと言われたらすぐに家路につく気分なのだ」……「がん闘病日記」森永卓郎

  • 「なでしこ物語 地の星」 伊吹有喜

    「なでしこ物語」の新刊が出たのでその前話を読んでおこうと「なでしこ物語地の星」を読みました。(再読)峰生の大家(たいけ)遠藤家の物語東京から体の弱い娘の療養のために戻って来ているおあんさん(女主人)耀子はこの家で育った。使用人の娘だったが当主の孫龍治と結婚したためこの家の人になったのだ。家には龍治の母の照子が残っていた。全国模試で高位の成績をおさめたことのある耀子だったが大学には進まず高校を出てすぐに龍治と結婚したのだった。それから10年耀子は娘の瀬里の体調がよくなったのでスーパーに働きに出ている。何かしたいと思った耀子の選択がそれだった。スーパーという舞台が生きてくる。2014年に書かれものだが今読んでも古びていない。買い物難民になっている地域の高齢者たち。注文された品を届ける?弁当を配達する?それだけ...「なでしこ物語地の星」伊吹有喜

  • 「ロシア文学の教室」 奈倉有里

    「ロシア文学の教室」(奈倉有里著2024年5月文藝春秋377p)を読みました。著者は「同志少女よ敵を撃て」の逢坂冬馬の姉でロシア文学の研究者ロシア国立ゴーリキー文学大学卒業ロシア文学……最近読んでいないなぁとちょっと敷居が高い気分で読み始めたらこれが結構面白い。大学のロシア文学の講義を受けているといつの間にかその世界に入り込んでしまうという設定の短編が12編。大学生の湯浦葵(ユーラ)はゴーゴリの「ネフスキイ大通り」では気がつけばネフスキイ大通りにツルゲーネフの「父と子」では友だちの家に泊まっておりゴーリキーの「どん底」では薄汚れた地下室にいる物語の主人公になって。(おおまかなストーリーは説明されるので読んでいなくても大丈夫)友人の入谷(イリヤ)も湯浦が憧れている新名(ニーナ)も講義をする枚下(マイシタ)先...「ロシア文学の教室」奈倉有里

  • 「海を破る者」 今村翔吾

    「海を破る者」(今村翔吾著20245月文藝春秋459p)を読みました。リーダーというものについて考えさせられることの多いこの頃。山極寿一さんが「リーダーというものは部下が身を挺して働こうという気を起こさせるだけの魅力を備えていなければならない」と言っておられますが本書は、若い当主がリーダーへと育っていく物語です。時代は鎌倉伊予の若き御家人河野六郎通有がどのように元寇で戦ったかが描かれる。物語のはじまり六郎の人生は詰んでいる。一族は、承久の乱の時に京方についたために領地の多くを簒奪され幕府からは位も貰っていない。加えて内紛によって一族は分断されたままだ。一族は貧乏になっている。そんなある日六郎は人買いの市に出ていた目の青い金色の髪をした女と出会う。そんなひとがこの世にいると聞いたことがあった人。六郎は同じよ...「海を破る者」今村翔吾

  • 「A・ウェイリー版 源氏物語 4」

    「A・ウェイリー版源氏物語4」(毬矢まりえ森山恵姉妹訳2019年7月左右社638p)を読みました。ー急に解像度が上がる。藤壺女御にこがれて「似たひと」を探し求めていた源氏(紫の上も女三宮も血筋)を踏襲するように源氏の子・薫は死んだ宇治の大君の妹の中君にこがれ(中君は匂宮に譲ってしまったので手遅れ)さらに二人の腹違いの妹浮舟にこがれる。ところが宇治に隠していた浮舟のところに匂宮も通うようになる。二人はともに「京に住まいを用意したから迎えに来る」と日にちまで指定する。これまで世話をしてくれたそしてこれからも絶対に裏切らないであろう薫を捨てて今心惹かれている匂宮に行っていいのか……移り気な匂宮との将来には確信が持てないでも心は匂宮に惹かれている……全ては匂宮に身を任せてしまった自分に責はあるそう考えた浮舟は宇治...「A・ウェイリー版源氏物語4」

  • 「コロナ禍と出会い直す」 山本七平賞

    「コロナ禍と出会い直す不要不急の人類学ノート」(磯野真穂著2024年6月柏書房230p)山本七平賞受賞コロナをコロナ禍と書くことにためらいがある。禍なんでしょうか……次にコロナのようなものがあったらもう少し冷静に考えることができるのだろうかわたしたちは。で、医療人類学を専門とする著者のこの本を読んでみました。他県ナンバーの車を恐れたりスーパーで買ったものをそのまま冷蔵庫に入れることにためらいがあってアルコールシートで拭いてみたりした。アクリル板があると安心した。(設置の仕方によっては換気を妨げるものだったとか)今は忘れかけている日々……そんな日々を思い出させてくれる著者の集めた事例の数々。福井県の地方紙・福井新聞では感染者相関図(判明順に番号がつけられ、感染経路が線で結ばれ、理由が書かれているもの)が掲載...「コロナ禍と出会い直す」山本七平賞

  • 「ぼくは日本でたったひとりのチベット医になった」 小川康

    「僕は日本でたったひとりのチベット医になったヒマラヤの薬草が教えてくれたこと」(小川康著2011年10月径(こみち)書房222p)を読みました。東洋4大医学(中国医学、インド医学、イスラム医学、チベット医学)の1つであるチベット医学(だそうです)のメンツィカン(経営本部、製薬工場、文献研究部、翻訳部、疾病研究部、生薬研究部、暦法学部がある)の教育部、つまり大学に入学した著者。子ども時代「勉強ができる」では人気者になれないと悟った著者は心の底で「勉強ができる」ことに価値のある場を求めていたのかもしれない。メンツィカンこそはその場だった。5年間の学びを終えるとアムチというチベット医になれる大学。そこは「なぜ」という問いを発することを捨てなければならない世界だった。入試の問題自体が・五大仏のお名前とご身体の色と...「ぼくは日本でたったひとりのチベット医になった」小川康

  • 「A・ウェイリー版 源氏物語 3」

    NHKの「100分de名著」は9月ウェイリーの「源氏物語」を取り上げるそうです。ということでA・ウェイリー版源氏物語3」(毬矢まりえ訳左右社725p)を読みました。紫の上が死んで源氏が死んでさて、どうなる?と読者(宮中の人たち)は思ったことだろう。物語は混迷する。源氏の子・夕霧の物語は確かに語られて行くけれど……亡き大宮(源氏の妻・葵上の母)のもとで一緒に育った夕霧と(頭中将の娘)雲居の雁の恋は頭中将の反対をようやく切り抜けて成就。数年後亡き柏木の妻・落葉宮のもとに通い詰める夕霧嫉妬する雲居の雁の物語もなんだかいまひとつ。夕霧に魅力が無いのだろうか……その後も物語は混迷していく。舞台を変えましょう、思い切って(勝手な想像)舞台は宇治に移りひっそりと暮らす八宮とその二人の娘(大君、中君)の物語が始まる。これ...「A・ウェイリー版源氏物語3」

  • 「A ・ウェイリー版 源氏物語 1」

    1925年に出版されたウェイリー版「源氏物語」を再度日本語に訳した「A・ウェイリー版源氏物語1」(毬谷まりえ+森山恵姉妹訳2017年12月左右社685p)を読みました。桐壺から明石までを一気に読んで面白くなるのは葵の巻からだということに気がついた。そこまでとは別人のように作者の筆が冴えるのは単に書き慣れたためかそれとも読者を信頼できるようになったためなのだろうか。(そこまではすばらしい、すばらしいと源氏を称賛しているばかりであまり面白くない)「主人公をどれだけ不幸に陥れることが出来るか」が腕の見せどころという法則に従えば葵の巻からは作者は源氏を遠慮なく不幸に陥れていく。正妻葵上は源氏の恋人・六条御息所の生き霊によって苦しめられ産褥死してしまう。さらに庇護者であった父・桐壺帝の死によって宮廷の風向きはがらり...「A・ウェイリー版源氏物語1」

  • 「A・ウェイリー版 源氏物語 2」

    「A・ウェイリー版源氏物語2」(毬谷まりえ森山恵姉妹訳左右社701p)を読みました。澪標から真木柱まで。この巻の中心は、夕顔の娘・玉鬘明石の君が上京し、六条院に入るとか源氏と葵上の子・夕霧の恋とか読者の反応を見て最も反応の良い玉鬘物語に舵を切った。(勝手な想像です)夕顔の死後乳母に連れられて筑紫に行っていた玉鬘は(実は頭中将の娘)地元の有力者に求婚され、舟で逃げ出す。京に着いて心細い思いをしている時に偶然、夕顔の侍女で、今は源氏に仕えている右近に出会い源氏に引き取られることになる。源氏の娘ということで求婚者が引きも切らずでも、なかなか実の父・頭中将には会わせてもらえない。源氏はしじゅう来てはあやしいほのめかしをする。いつの間にか好きでもない髭黒大将の妻にされ(髭黒の正妻は心を病んでいる)……読者は玉鬘から...「A・ウェイリー版源氏物語2」

  • 「レディ・ムラサキのティーパーティ」 毱矢まりえ 森山恵

    「レディ・ムラサキのティーパーティらせん訳源氏物語」(毱矢まりえ森山恵著2024年2月講談社300p)を読みました。レディ・ムラサキは紫式部のことです。1925年にアーサー・ウェイリーが訳した源氏物語「TheTaleofGenji」をさらに日本語に訳し戻した「源氏物語A・ウェイリー版」(左右社)の訳者毱矢まりえ・森山恵姉妹の翻訳話です。毱矢姉妹の訳では、冒頭は「いつの時代のことでしたか。あるエンペラーの宮廷での物語でございます」(!)となっている。エンペラーは恋に落ちるえ?寵愛は恋だったの(光源氏の母・桐壺更衣は宮中での嫌がらせにあって死んでしまうけれど)桐壺更衣は帝をどう思っていたのだろう?はたして帝に恋をしていたのだろうか?(ご寵愛は、ちょっと迷惑だった?)などと言葉が違えば考えることも違ってくる。中...「レディ・ムラサキのティーパーティ」毱矢まりえ森山恵

  • 「イラク水滸伝」 Bunkamuraドゥマゴ文学賞

    「イラク水滸伝」(高野秀行著2023年7月文藝春秋474p)が第34回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞しました。(パリのドゥマゴ文学賞の持つ、先進性と独創性を受け継ぎ、既成の概念にとらわれることなく、常に新しい才能を認め、発掘を目的に創設された。前年7月1日から当年7月31日までに発表されたものを毎年「ひとりの選考委員」(任期は1年間)が審査している)古代文明誕生の地チグリス、ユーフラテス川が作った湿地帯は今、どうなっているだろうか?湿地帯というところは住みにくいところなのではないだろうか?それなのになぜ人々は古代から連綿と住み続けているのだろうか?「誰も行かないところへ行き誰もやらないことをし誰も書かない本を書く」がモットーの高野さん今度の旅はいかに?と興味津々で読みはじめた。(表紙写真の前から2...「イラク水滸伝」Bunkamuraドゥマゴ文学賞

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