かけてこそ思はざりしかこの世にてしばしも君にわかるべしとはかけてこそおもわざりしかこのよにてしもきみにわかるべしとは父が常陸介ひたちのすけとなって、赴任ふにんすることになった(1032年)。じつに十二年ぶりの任官である。とはいっても、行く先が東国とうごく常陸国ひたちのくに(茨城県)なので、このたびは家族をつれずに単身赴任するという。「今回はお前もおとなだし、連れていきたいのだが、私もトシだから、いつどうなるか分かったものではない。私が任地でたおれ、おまえ一人とり残されて、都へも帰れなくなったら、どうするか。たよりになりそうな親戚もいない京に、おまえを置いていくのも、気がかりでならないよ。せっかくの任官をお断わりするわけにもいかないので、私ひとりで行くときめたが、これが永久とわの別れになるかもしれないなあ」...たかすえドータの歌-16かけてこそ思はざりしか