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2016/10/28

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  • 【家父長制が否定されなくて怖い】ディズニーアニメ『ライオンキング』

    あらすじ・概要 サバンナの王、ムファサの息子として生まれたシンバは、やんちゃな少年ライオンとして育っていた。しかしムファサを妬んだ王弟、スカーの策略によりムファサは死んでしまう。自分のせいでムファサが死んだと勘違いしたシンバは、故郷を離れてジャングルにたどり着く。 家父長制が否定されなくて怖かった ごりごりの家父長制なのに、そこにツッコミを入れるキャラがいなくてつらかったです。 シンバは父親が自分のせいで死んだということを気に病んでいますが、当時シンバは子供だし、スカーに騙されていた経緯があるのでそこは責任を取らなくてもいいだろうと。 しかも大人になったシンバに、周りの雌ライオンたちが当たり前…

  • ジャック・オ・蘭たんの『喧嘩番長乙女』の実況を見たメモ

    おそらく自分ではプレイしないゲームの実況を見よう、というわけで『喧嘩番長乙女』の実況を見ていました。 まず「喧嘩番長乙女」がどういうゲームなのか説明します。意中のキャラクターとの恋愛を目指す、いわゆる乙女ゲームです。しかし舞台が不良学校でヒロインはそこに男性として入学し、学校を「シメる」ことを要求されます。ヒロインは子どものころから格闘技を習い、けんかがめっぽう強いのです。これだけでも「どういう乙女ゲーム?」という気分になってきますね。 けんかのシーンはリズムゲームになっていて、上手くボタンを押すと攻撃が入るようになっています。 「喧嘩番長」というアクションゲームの姉妹編のような立ち位置らしい…

  • 【間違っててもやろうという申請の仕方】とこり『確定申告アレルギーの漫画家・イラストレーターに捧ぐ 簿記1級経理実務経験5年の漫画家がやってる確定申告のアレコレ』

    あらすじ・概要 確定申告が苦手だったが、簿記を学ぶなどして確定申告について知った著者。確定申告初心者のために、納税のしくみ、確定申告のためにまずやるべきことを解説する。「経費」とは何か、どうやって控除を受ければいいのか……。 よくわからなくてもやろう 副業で稼ぐほどではないのですが、同人誌が思ったより売り上げがあったり、他人の手伝いをしてお小遣いをもらったりということが増えてきたので読んでみました。 結論から言うと「よくわからないから……」と後回しにせずとにかくやれという本でした。失敗してもいい、間違っていてもいいという主張に安心します。 「何はともあれ店に行ったら必ずレシートをもらえ」という…

  • 【ジーニーやジャスミンの解放を描く】ディズニーアニメ『アラジン』

    あらすじ・概要 とある国の泥棒、アラジンは、王国の姫ジャスミンと出会う。逮捕され洞窟に放り込まれたアラジンは、魔法のランプを手に入れる。そこから現れたジーニーは、アラジンに三つの願いを叶えると持ちかけた、ジーニーの力で大金持ちの王子になったアラジンは、ジャスミンに求婚するが……。 執着を捨てるシーンが印象的だった 搾取する側が搾取される側への執着を捨てるシーンが印象的な作品でした。アラジンはジーニーの力で王子様となり、ジャスミンとの婚約にこぎ着けますが、ジーニーの力を失うことを恐れジーニーを自由にしません。最初に「最後の願いではジーニーの自由を願ってあげる」と言ったのに。 アラジンがジーニーの…

  • 【ファンタジーとしてはいいけどミステリとしては物足りなかった】春間タツキ『聖女ヴィクトリアの逡巡 アウレスタ神殿物語』

    あらすじ・概要 聖女ヴィクトリアは、皇帝を決める選挙を見届けるために王宮に上がる。皇位継承者の投票により、私生児として育った騎士、アドラスが皇帝に選ばれてしまう。皆が投票のやり直しを要求する中、二番目の皇位継承者、レーゼ皇女が投票のやり直しに同意しなかった。皇位継承者の全員の同意がないとやり直し投票ができないため、ヴィクトリアたちはレーゼの望み通り皇帝の死について調べることとなる。 ミステリとしてはちょっとずるだった 面白くはありましたが、謎解き部分にはひっかかるところがありました。以下、ネタバレを含むのでネタバレをされたくない人はブラウザバックをお願いいたします。 いくらつじつまが合っていた…

  • 【老いを描いたシリーズ外伝短編集】上橋菜穂子『流れ行く者 守り人短編集』

    あらすじ・概要 祖国カンバルから逃れ養父ジグロと旅をしているバルサ。バルサはあるときタンダの村に滞在し、死者の幽霊騒ぎを聞く。その死者は、タンダがなついていたおじさんだった。 老いの哀しみと人生を振り返る瞬間と あとがきによると、短編集全体のテーマが「老い」であるらしいです。どれも哀愁漂う、切ない話でした。 「浮き籾」はバルサがタンダの村に滞在する話。 タンダとバルサが日常生活を送っているだけでしみじみとしてしまいます。過酷な旅をしてきたバルサが「普通の生活」に戸惑い、いろいろ考えてしまって他人の親切をうまく受けとることができないのが印象的でした。 「だめ人間だが一部の子どもには人気のあるおじ…

  • 【京橋のキャバレーで昭和と平成を舞った女】高殿円『グランドシャトー』

    あらすじ・概要 義父と結婚させられそうになって逃げだしてきたルーは、京橋のキャバレーグランドシャトーにたどり着く。ルーはそこのホステスとして働くことになった。キャバレーのナンバーワン、真珠はどこか不思議な魅力を持つ女性だった。ルーは寮で真珠と同居することになる。 美しいがどこか危うい女と女の友情 恋愛ではなく、主人公ルーとグランドシャトーのナンバーワン、真珠の家族愛とも友情とも取れない関係を軸に話が進んでいきます。 ルーが真珠に母親を投影する姿は、一見微笑ましく見えても危うさが伴います。ルーが実質的に家族を失い、孤独になってしまってからはその危うさが加速します。 寮でチキンラーメンを食べ、自炊…

  • 【作品内の倫理観がガバガバすぎる】ディズニーアニメ『ヘラクレス』

    あらすじ・概要 ヘラとゼウスの息子、ヘラクレスは、ハデスヘラクレスは、ハデスに人間になる薬を飲まされ人間として生きていくこととなる。自らの出自を知ったヘラクレスは、英雄となり神の一員となることを目指した。そんな折、蠱惑的な美女メガラ(メグ)と出会い、ヘラクレスは好意を抱くが……。 倫理的なツッコミどころが多い ギリシャ神話の世界はもともと現代人の感覚からすると倫理のない社会ですが、神話の倫理と現代人の倫理とのすり合わせができていない作品だと感じました。 例えばヒロインのメグは蠱惑的なキャラクターですが、男にセクハラされて困っていたりハデスに一方的に支配されていたり、男性社会の被害者です。 メグ…

  • 【ハッピーエンドとは思えない結末にやるせなくなる】ミナモトカズキ『怪獣になったゲイ』

    あらすじ・概要 自分がゲイだと自覚する高校生、安良城貴は、ひそかに恋心を抱いていた教師、黒田にゲイという存在を否定しているところを聞いてしまう。それ以来、安良城の顔は醜い怪獣の形になり果ててしまう。黒田も含め、周囲は安良城の顔を元に戻す方法を探るが、黒田にゲイであることを受け入れてもらえない安良城は悩み……。 自分のことを振り返らない人間もいる 徹頭徹尾きつい話であり、自分のことを振り返ってしまう内容でした。しかし、自分のことを振り返らない人間は、永遠に振り返らないという話でもあります。 主人公はゲイではありますが、それ以外では一般的な男子学生です。劣等感にさいなまれることもあれば、怒りを感じ…

  • 【カクヨム発、サスペンスと魔法のファンタジー】春間タツキ『聖女ヴィクトリアの考察 アウレスタ神殿物語』

    あらすじ・概要 聖女に選出された理由が不当であると追放されかかった聖女ヴィクトリアは、アドラスという騎士に出会う。彼は、幽霊や精霊が見えるヴィクトリアに「自分が皇子でないことを証明してほしい」と頼んだ。アドラスとともに行動しながら真実を調べるうちに、ヴィクトリアは皇位継承の問題に巻き込まれていく。 展開が早く情報を出し惜しみしない、説明が上手い 展開が早く、情報を出し惜しみしません。そして同時にキャラクターの言動が説明的になりすぎないところが上手でした。 読み始めて20%くらいで、ヴィクトリアとアドラスの倫理観の強い性格、彼らの行動理由、皇位継承のごたごたについて読者に説明し、その上ストーリー…

  • 【別れることも相手への愛情だと受け入れる】草柳和之『ドメスティック・バイオレンス 新版―男性加害者の暴力克服の試み』

    あらすじ・概要 ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)はごく一部の人の不幸ではなく、社会でありふれた問題である。加害男性に暴力をやめさせるには、何ができるのだろうか。暴力を嗜癖のひとつとして、メンタルヘルスの視点で加害への依存をやめる方法を探る。 別れを受け入れることも支援成功である 結論から言うと加害男性に対して劇的に効果のある支援は未だに存在せず、なかなか難しいです。 著者は加害男性の過去のトラウマや虐待経験に着目し、カウンセリングや他の男性との対話から認知の歪みを取っていくことを目指しています。 新鮮な意見だったのは、「加害男性の支援のゴールが離婚でも成功である」という点です。 加害…

  • 【親を世話する苦しみとおかしさをブログにつづる】カータン『健康以下、介護未満 親のトリセツ』

    あらすじ・概要 著者の父はある日視力を失い、母はその視力を失った父を支えていた。しかし介護する・支えられるという関係のストレスからか、ふたりに認知症の傾向が現れる。著者は姉と協力して、思うようにいかない親夫婦を通いで介護するようになる。介護の日々の苦しみとおかしさとは……。 今まで好きだった親が衰えていく姿 ブログの書籍化。 描写はコミカルですが、つらいシーンも多かったです。今まで好きだった親が、認知症によってできないことが増えていくつらさ。そして親夫婦を支える大変さが描かれていました。 認知症になったのにプライドが高く、福祉サービスを受け入れられない母に、著者とその姉は手を焼きます。 ヘルパ…

  • 【現代と地続きゆえにジェンダー観の違いがきつい】ディズニーアニメ『101匹ワンちゃん』

    あらすじ・概要 ダルメシアンを飼うカップルが結婚し、そのダルメシアンポンゴとパーディタもカップルとなり子犬を産む。しかし毛皮に目がない女性、クルエラにその毛皮の美しさを目につけられ、子犬たちは連れ去られてしまう。ポンゴとパーディタは、子犬たちを連れ戻すために大冒険に向かう。 女性を品定めするシーンや良妻賢母像がつらい ディズニーの2Dアニメマラソンをしていますが、その中でもジェンダー観の古さがきつかったです。なんだかんだ昔話をテーマにした作品は「昔に作られた話だから」「王公貴族の話だから」と流せますが、現代社会と地続きの話だとつらさが増しますね。 悪役のクルエラは派手好きで空気が読めなくて残酷…

  • 【鼻・白・杜子春】YouTubeで芥川龍之介の朗読を聞いたので感想を10本まとめた

    久しぶりに朗読が聞きたくなり、YouTubeで青空文庫の朗読を漁っていました。 芥川龍之介の文章の朗読をいろいろ聞いたのでその感想メモです。 ちなみにこちらの朗読プレイリストから視聴しています。 youtube.com 大きな鼻を持つ男が劣等感に苦しむ「鼻」 悪魔の歪んだ愛情とは「悪魔」 煙草をもたらした悪魔の架空伝説「煙草と悪魔」 人の思い込みに関するちょっと不思議な話「貉」 怪物も幽霊も出てこないけれど嫌な気分になる「妙な話」 エンタメっぽい俗っぽさ「アグニの神」 犬が黒犬になって大冒険「白」 カフェの女給の恋における一抹の日常「葱」 仙人に弟子入りした男の価値観「杜子春」 人を見た目で判…

  • 【普通ではない人間が搾取から逃れる結末】ディズニーアニメ『ノートルダムの鐘』

    あらすじ・概要 醜い外見に生まれついたカジモドは、ノートルダムの鐘つき男として人と接せず暮らしていた。しかしジプシーの女性、エスメラルダと出会い、恋心を抱いたことから少しずつ変わっていく。同時に、カジモドの保護者であるフロロー判事は、エスメラルダに歪んだ欲望を抱きはじめていた。 偶然醜い姿を持った人間が人生にあがく 呪いをかけられたわけでもなく神罰でもなく、ただ偶然人と異なる外見に生まれついたカジモド。彼が劣等感にさいなまれながらも努力をして自分の人生を肯定していくところがよかったです。 最終的に搾取から逃れ、自分の人生を歩んでいこうとするカジモドの姿は好きでした。 メディアやフィクションに取…

  • 【なぜ私はカルトな世界を信じられないのか?】村田沙耶香『信仰』

    あらすじ・概要 スピリチュアルな何かを信じられず、「現実」ばかりを見ている主人公は、「カルトをやらないか」という誘いに乗ってみる。表題作ほか、他者に馴染めない、どこか心ここにあらずな人々を描いた短編&エッセイ集。 全体的に「普通」に生きられない人々の物語でした。私自身も世の中に大して居心地の悪さを感じているタイプなので、共感しながら読みました。 表題作『信仰』は、現実に近い世界観だけれどもどこかおかしいです。鼻のホワイトニングが流行っていたり、50万円もするお皿のブランドが流行っていたり。主人公はそういう怪しげなものを一蹴しますが、心のどこかで「スピリチュアルなものにハマれない自分の方がおかし…

  • 【仕事とストレスに疲れた日には染みる】白野アキヒロ『社畜OLと悪魔ショタ』感想

    あらすじ・概要 ブラック企業に勤めるOLは、思い詰めるあまり悪魔を召喚してしまった。しかし現れたのは年若い少年の姿の悪魔だった。悪魔ながら優しく親切で、自分のことを大事にしてくれる彼に、OLは癒されていく。 ご都合主義の作品だけど漫画がうまい 徹頭徹尾ご都合主義の話ですが、それでも楽しめました。演出が面白いです。 漫画は基本はモノクロで描かれているのですが、悪魔がかわいいことを言ったり優しい言葉を言う決めゴマのみ、カラーで着彩されています。 紙の書籍でも演出は再現されているんですかね。 ここぞというときに悪魔の顔のアップと、カラーイラストによる繊細な表情の描写が出てくるので、どきっとしてしまい…

  • 【ガストンのキャラ設定に考えさせられる】ディズニーアニメ『美女と野獣』

    あらすじ・概要 本が好きで夢見がちのベルは、父親が森に住む野獣の怒りを買ったことから、野獣の城に閉じ込められてしまう。野獣はかつて呪いをかけられた王子で、愛し愛されなければ呪いは解けない。野獣の侍従たちはベルに野獣を愛してもらおうと奔走する。 男らしさにこだわるガストンが印象深い ディズニー映画連続視聴祭りをしていて思いましたが、2Dアニメではかなり脚本やプロットが完成されています。 実写リメイク版を先に見ているのでストーリーは知っていますが、今見てみると悪役であるガストンが印象的でした。 ガストンは男らしさにこだわり、美しいベルをトロフィー扱いしますが、実際のところガストン自身も周囲にトロフ…

  • 難病になった準看護師が漫画を描くまでに回復する―たむらあやこ『ふんばれ、がんばれ、ギランバレー!』

    あらすじ・概要 準看護師だった著者は、突然謎の体調不良を起こす。大きな病院でギランバレー症候群と診断され、過酷な治療が始まった。特効薬もなく、必ず効く治療法もないまま、病に苦しむ。果たして著者は退院することができるのか。 コメディタッチだけど勇気づけられる 状況の過酷さのわりに、描写はコメディのようにで気楽に読める本でした。 もうこれ以上よくならないと告知され、健常者に戻れないと気づいても、できる範囲でやりたいことをやろうと決意する著者がかっこよかったです。 「よくならない」というのか科学的な意味であって、工夫をしたり慣れたりすればできることは増えるかもしれません。実際に、著者は好きだった絵を…

  • 父がアルコール依存症だった著者が依存症当事者や回復施設を取材する―菊池真理子『依存症ってなんですか?』

    だっしゅ あらすじ・概要 アルコール依存症の父を持ち、苦労してきた著者。彼女はアルコール依存症や薬物依存症について調べることとなる。依存から脱却して酒を飲まない生活を続けているミュージシャンや、依存症の支援施設を取材するうちに、著者は改めて自分の過去と向き合わざるを得なくなる。 ひどい目に遭ってもアルコール依存症について知りたいと思える著者はすごい 同著者の『酔うと化物になる父がつらい』を読んだ後だと、依存症の人たちと話し合い共感を示す著者に驚きます。依存症の父親にさんざんな目に遭わされていましたから。 「お酒は悪いものだ。アルコール依存症の人はクズだ」という結論にはならず、なるべく多面的に人…

  • わりとしっちゃかめっちゃかな日本神道と仏教―義江彰夫『神仏習合』

    あらすじ・概要 日本において、神道と仏教は混じり合っていった。これを神仏習合と言う。時の権力者において、神道と仏教はどういうもので、いかにして神と仏は同一視されるようになったのか。朝廷や貴族社会、武士の社会と権力の移り変わりとともに、日本人の宗教観の変遷を追う。 権力に利用されながらも「ひっくり返す」ことを怖れられていた宗教 日本において神道と仏教は混じりあっていきましたが、かといって完全に同化したわけではありませんでした。その微妙な距離感がわかる本だと思います。 面白いのは時の権力は宗教を利用していましたが、同時に民衆の新しい信仰も恐れていたと言うことです。宗教には人を団結させる力があります…

  • 海の哺乳類を解剖する生物学者の日常と、生き物の不思議―田島木綿子『海獣学者、クジラを解剖する~海の哺乳類の死体が教えてくれること』

    あらすじ・概要 日本には、実は多くの海の生き物が漂着(ストランディング)している。海の哺乳類を解剖し研究することが仕事の著者が、解剖の仕事や海の生き物の不思議を紹介する。生物学者は何のために解剖をし、どのように体の中を観察するのか……。 科学をやっていると泥臭い仕事もある 大阪にやってきた迷いクジラ、「淀ちゃん」のニュースを見て読んでみた本です。 内容としては面白かったですが、一冊の本として見ると足りないところもありました。 著者は解剖や標本作成を専門とする海獣学者であり、漂着、つまりストランディングした海の生き物を解剖して調べています。 野生の動物の死体を扱う仕事ゆえ、作業は悪臭にまみれてい…

  • 冴えないおじさんが機械の力を手に入れて自己同一性に悩む―奥浩哉『いぬやしき』

    あらすじ・概要 冴えないおじさん、犬屋敷は、ガンで余命宣告をされ、自分の人生を省みていた。そんなとき突然機械の体を手に入れ、自分が自分ではない心境に陥る。犬屋敷は人を助けると自分が自分でいられることに気づき、強大な力を使って人を救うようになる。 自分が自分であるためにいいことをしたいのはわかる気がする この漫画のようにスケールの大きい話ではなくても、「自分が自分であることのためにいいことをしたい」という価値観はわかる気がします。 主人公、犬屋敷は、機械の体を持ったことで自分の同一性に不安を抱き、「いいことをすると、自分が自分でいられる気がするから」という理由で人を助けます。 心がむしゃくしゃし…

  • 打ち切りらしいけれどまあ悪くない終わりだったかな―喜多みどり『亜夜子と時計塔のガーディアン 約束のチョコレート』

    あらすじ・概要 英国に留学してきてレイのフォグ(下僕)としてこき使われている亜夜子。ある日、レイの親友が「切り裂きジャック」の容疑者として候補に挙がってしまう。調べるうちに判明した、切り裂きジャックの正体とは……。 男女バディものとして面白かった 相変わらず積極的で正直な亜夜子が話を引っ張ってくれるのでストレスが少ないです。だらだら伏線回収を引き伸ばしたり、もどかしい表現を入れてうじうじしたりしません。 レイも亜夜子もお互いを意識しているようですが、ふたりともどこかずれているので噛み合わないのが面白かったです。相手のことが好きだと思いつつ、恋愛的な結論には至らない亜夜子がよかったです。このふた…

  • 人魚の姫が陸に上がって王子の心を射止めようとする―『リトル・マーメイド』

    あらすじ・概要 人魚の王トリトンの娘アリエルは、人間の世界に憧れていた。ある人助けた男性に恋をするが、人間と人魚の恋は禁忌であるためトリトンに認められない。アリエルは魔女アースラの力を借り、人間の足を手に入れ陸に上がった。 ディズニーの2Dアニメの中ではシナリオが洗練されてきた 最近見たディズニーの2Dアニメの中ではかなりストーリーが洗練されていました。無駄なシーンが少ないです。 アリエルも、今まで見たディズニーヒロインの中では自我があってよかったですね。アースラに頼るという方法は悪いですが自分から行動して王子のハートを射止めようとするところはいいです。 それだけに、アースラが「女性は無口な方…

  • 男女バディミステリかと思ったら百合要素がすごかった―喜多みどり『亜夜子と時計塔のガーディアン』

    あらすじ・概要 イギリスに渡り、スタグフォード校に通うことになった亜夜子。スタグフォード学園の優等生であるレイモンドに助けてもらうが、彼は命の恩人であることを盾に亜夜子をフォグ(下僕)にしてしまう。レイモンドにこき使われるうちに、亜夜子は学校内での殺人事件について知っていくことになる。 男女バディだと思ったら終盤の百合に持っていかれた 男女バディミステリか~面白いなと思っていたら終盤の百合展開に全てを持っていかれました。何これ? 命の恩人であることを盾にファグになることを要求してくるというあまり性格のよろしくないヒーローなのですが、自分が悪いと思ったら謝る柔軟さを持っているのがいいですね。 主…

  • シンデレラと王子の話というよりシンデレラとねずみの話だ―『シンデレラ』

    あらすじ・概要 継母と暮らしているシンデレラ。義姉にはこき使われる、継母にはつらく当たれれる毎日を送っているが、ねずみたちと希望を失わずに暮らしていた。そんな中、シンデレラの家にお城から手紙が届く。王子の結婚相手探しのために、国中から年頃の娘を集めるのだという。シンデレラもそれに行きたいと願うが……。 ねずみが猫に追いかけれられるシーンが多すぎ 王子とシンデレラの話に関係のないシーン、特にねずみに関するシーンがやたらと多いので、もうシンデレラとねずみの話に改題したほうがいいのではないかと思いました。 序盤と最後の方に長々とねずみと猫の闘いがあるんですけど、これはもうシンデレラ関係ないよね、と。…

  • 「公認不倫」で幸せな家庭のはずなのに、悩み惑うのはなぜなのだろう―渡辺ペコ『1122』

    あらすじ・概要 一子と二也は仲のいい夫婦。しかし二也は外に不倫相手がおり、一子はそれを公認している。セックスレスが原因で不倫を認めることにした一子だが、徐々に己の性欲を自覚し、また幸せそうに恋をする二也を見て懊悩する。一方二也も、今の関係に疑問を抱き始めていた。 自分の心も他人の心もコントロールできないから迷う いい年した大人が不倫したりしなかったりしながらうじうじ悩む漫画。なのにちゃんと面白いからすごいです。 結婚して何年か経って、相手と性的接触をするのが煩わしくなった。だから不倫を許した。だけどこの心の中のわだかまりは何? という話を延々とやっています。 面倒くさいしお前が決めたんだろと思…

  • 大好きな人と合体したまま配信者魔術師と対決する羽目になってしまった―橘公司『王様のプロポーズ2 鴇羽の悪魔』

    あらすじ・概要 もうひとつの魔術師養成機関<楼閣>と交流戦をすることになった<庭園>だったが、そこに魔術師向けの動画サイトで活躍する喰良という少女が現れる。無色のことを「彼ピ」と宣言した喰良は彩禍に勝負を挑む。しかし今無色は喰良と合体しているわけで……。 女の子の敵に打ち勝ってもマウントで終わらないところがいいよね 配信者のヒロインというのは今どきだなあと思いつつ、その設定を生かした展開で面白かったです。 喰良がなぜ配信をして目立とうとするのか、理由がわかった瞬間ぐっときました。そしてその前座としてトンチキ配信をしていたことも笑えます。超有能なのにかっこつけずに面白配信をためらわないところ、配…

  • アルコールとメンタルヘルスから見る男性のジェンダー―松本俊彦『アルコールとうつ・自殺―「死のトライアングル」を防ぐために』

    あらすじ・概要 女性よりも圧倒的に高い男性の自殺率。それにはアルコール依存症、もしくは依存症とは言えないまでも無軌道な飲酒行為が関係していた。アルコールとうつ、そして自殺の関連性を紐解きながら、アルコールと適度に付き合う重要性について語る。そして、制度の方からできることとは……。 アルコールを過剰摂取し無頼な振る舞いをすることがいいことなのか タイトルだけ見て手に取ったら、かなり男性のジェンダーの話で驚きました。女性より男性の方が自殺率が高いのは有名な話ですが、その自殺率の高さにはアルコールが強く関係しているという話です。 アルコール依存症が自殺率を高めるのはもちろんですが、依存症というほどで…

  • グリム童話踏まえても倫理がなさすぎてびっくりだよ―『白雪姫』

    あらすじ・概要 美しさを求める継母に虐げられ、姫君でありながらぼろを着て生活していた白雪姫。魔法の鏡で白雪姫が世界で一番美しいことを知ってしまった継母は、狩人に命じて白雪姫を殺そうとする。しかし白雪姫は狩人に逃がされ、7人の小人が暮らす小屋にたどり着く。 昔の作品見ると倫理の変遷について考えさせられる ここ最近昔のディズニーアニメを立て続けに見ているんですが、その中でも大分倫理がなく、気持ち悪い描写も多かったので笑ってしまいました。 まず7人の小人が結構白雪姫を性的な目で見てるのが引きましたね。キスのシーンが特に。白雪姫が現代で言うと思春期の少女なのでよけい背徳感が増します。 「それって要する…

  • 合法ショタと喫茶店のお姉さんが繊細な恋物語を繰り広げる―みやびあきの『珈琲をしづかに』

    あらすじ・概要 18歳の受験生だが、小柄で中学生にも間違えられる主人公、貴樹は、喫茶店のマスターの女性紫都香(しづか)に恋をする。年の差に悩みながらも、喫茶店で勉強を続け、紫都香のことを知りたいと思う。喫茶店で言葉を交わすうち、お互いの心に変化が現れていった。 恋愛がわからないことを否定しないラブストーリー 小柄な18歳という合法おねショタ。犯罪であることを気にしなくていいので楽です。 読み進めていくうちに、紫都香は「人を好きになることがよくわからない」「人を好きになるのが怖い」「でも人を好きになったり好かれたりしたい」という葛藤を抱えている女性だとわかります。その原因はDVをしていた父親で、…

  • あるがままでは生きられない人々が行う「告白」―高殿円『カミングアウト』

    あらすじ・概要 援助交際をする女子高生、ロリータファッションを卒業するか悩むアラサーOL、セックスレスに悩む主婦、夫の定年退職に何かをたくらんでいる妻。葛藤を抱えるキャラクターたちが、起こした「カミングアウト」とは 告白することが人生を変える 「ありのままでは生きられないが、かといって他人の望むようにも生きられない」という葛藤が一貫して書かれている小説で、面白かったです。 登場するキャラクターたちは善人ではなく、ちょっとしたことで他人を見下したり、偏見にとらわれていたりします。でも他人は自分自身の鏡であり、登場人物はまた己に呪いをかけています。 タイトル『カミングアウト』の名の通り、自分の言葉…

  • 壁の向こう側には過酷な現実を生きる街がありました―りえぞう『パレスチナに行ってみた』

    あらすじ・概要 イスラエルを観光した著者は、その後パレスチナ自治区へ向かう。イスラム教徒たちが暮らすはずのその場所は、イスラエル軍による厳しい監視がなされていた。著者は宗教施設や歴史的な場所を巡りつつ、パレスチナの今について考える。 ただ町を歩くだけでもひりつく緊張感 イスラエル編にて予告されていたパレスチナ自治区編。観光と言いつつも、ふたつの民族が対立する町を歩くさまは、ひりつくような緊張感があります。 著者はパレスチナ自治区にある宗教施設や、歴史的な場所を巡りますが、どこに言ってもイスラエル軍兵士に出くわします。イスラエルの兵士はパレスチナ人を厳しく監視しています。 歴史的、文化的な施設に…

  • 双極性障害同士の夫婦が躁うつの波とともに共同生活する―リョコモコ『躁うつ夫婦』

    あらすじ・概要 それぞれ別に双極性障害を発症した著者と著者の夫は、インターネットで出会い、恋をし結婚に至る。ときに躁でハイテンションになり、ときにうつで家に閉じこもりながらも、夫婦で助け合って生きていた。精神疾患とともに生きる結婚生活をユーモラスに描くコミックエッセイ。 明るい内容だがところどころに悲しみが見える 語り口はあっけらかんとしており、コメディに見えるほどですが、ところどころに双極性障害に対する悲しみを感じさせる漫画です。 双極性障害同士の男女がインターネットで出会い、恋愛をし、結婚をするというのはどうしても共依存的になってしまうのではとか、共倒れになってしまうのではとか心配になりま…

  • 神々や動物が語る、アイヌの生活、信仰、世界観―知里幸惠編訳『アイヌ神謡集』

    あらすじ・概要 アイヌ民族でありクリスチャンでもあった知里雪惠は、アイヌの人々が歌い継いできた神謡をローマ字で表し、さらに日本語訳した。神々や動物たちが語る、アイヌの人々の生活、そして信仰や世界観とは……。

  • ヒロインと王子以外の方がキャラ立ってる―『眠れる森の美女』

    あらすじ・概要 長く子どもが生まれなかった王家に生まれたオーロラ姫は、マレフィセントによって呪いをかけられる。16歳の誕生日、糸車の針に刺されて死んでしまうと。よい妖精たちによって死を眠りの呪いに書き換えられたオーロラ姫は、妖精たちと森の奥に隠れ住む。 オーロラ姫と王子よりマレフィセントや父親の方がキャラ立ってる 見終わって最初に思ったことは、「オーロラ姫って眠ってわりとすぐ目覚めるんだ……」ということです。お城のみんなも一緒に眠るけれどやっぱりさくっと目覚めます。何なら城がいばらに覆われるシーンもありません。原作での「眠りについて長い長い時間が経った」という話をやらないんですね。 それからよ…

  • 日系アメリカ人と結婚し、アメリカでバイリンガル教育を目指す―ゴキタ絵美『うちの息子はバカリンガル』

    あらすじ・概要 仕事でアメリカに渡り、日系アメリカ人と結婚した著者。ふたりの息子にも恵まれた。著者は息子たちにバイリンガルになってほしいと日本語を教え続けるが、うまくいかないことも多く……。バイリンガル育児や、アメリカでの子育てを描いたコミックエッセイ。 日本とは違うアメリカの学校事情 日系アメリカ人と日本人との結婚、ルーツは同じだが育ちは全く違うふたりが夫婦になり子育てをするというのが面白かったです。 著者は、子どもをバイリンガルに育てようとするもうまくいかず、口げんかでは母語が英語である夫に負け、悔しさを感じながら英語を学びます。 ユーモラスな語り口でありながら、異文化が共存する家族で起こ…

  • 「多いのに法整備や交通網が遅れている」日本の自転車事情―馬場直子『自転車に冷たい国、ニッポン――安心して走れる街へ』

    あらすじ・概要 自転車大国である日本だが、実は自転車にまつわる法整備や、自転車が走りやすい交通設備の点では遅れている。自転車事故を減らすためにはどうすればいいのか。海外の事例や、日本での成功例を挙げつつ、日本の自転車のこれからを考える。 ヘルメット努力義務以外にやらなければならないことはいろいろある ヘルメットの努力義務化など、自転車に対する政策の変化を感じたので手にとってみたのですが、まだまだ行政としてはやることがあると感じました。 自転車は交通網の中では比較的弱者ですが、それでも自転車同士、あるいは自転車と歩行者で事故を起こしてしまうことは多いです。著者は道路のつくりというインフラの面から…

  • 旅行をテーマにしたコミックエッセイおすすめ21選

    ChatGTPに提案されたまとめ記事を書くシリーズ、今回は旅行がテーマのコミックエッセイのおすすめ記事です。 3つの宗教が混じり合う聖地へ『イスラエルに行ってみた 旅行記コミックエッセイ』 バックパッカーとしてイスラエルに行ってみたいと思っていた著者。しかしイスラエルに入国後、敵対する国に行けなくなる場合がある。アラブの他の地域を巡ったあと、ようやくたどり着いたイスラエルは、3つの宗教の対立を象徴するような場所だった。 イスラエル自体はユダヤ人の国ですが、実際のところキリスト教徒やイスラム教徒多く住んでおり、その上多数の宗派に別れています。そんな他宗教の町で、ひりつくような勢力争いをしながらエ…

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