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2016/10/28

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  • 『ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動』堀越健司 ソフトバンク新書 感想 政治活動するハッカーたちの歴史と今

    あらすじ・概要 ハッキングによって政治活動を行うハクティビズム。その歴史は、インターネットの歴史と共にあった。インターネット黎明期のハクティビズムから、インターネットが普及した後のこと、そしてSNSなどで個人が発信することが容易になった現代まで、ハクティビズムの変容をたどる。 技術に詳しくなくても他人事ではないハクティビズムの世界 ハクティビズムとは「ハック(hack)」と「アクティビズム(activism)」とを掛け合わせた造語です。ハックにはもちろんコンピューターに侵入して悪事を働くという意味もありますが、「ライフハック」のように現実にあるシステムを利用してうまいやり方を見つける、のような…

  • 『デジタル遺品の探し方・しまいかた・残しかた+隠しかた』伊勢田篤史・古田雄介 日本加除出版 感想

    あらすじ・概要 スマートフォン内のデータやSNSのアカウント、はたまたアフィリエイトの収益まで、デジタルな遺品が最近増えている。それらをどうやって削除し、承継するかを具体的な行動とともに掲載。イラストや会話形式の解説も交え、わかりやすく整理するハウツー本。 デジタルに痕跡を残しまくっている人間にとっては身につまされる タイトルに興味を惹かれて読みましたが、デジタルのあっちこっちに痕跡を残している身としては身につまされる内容でした。とりあえず使っていないアカウントはまめに消して、スマホやPCのパスワードは家族に伝わるようにしておかないといけませんね。 Googleも長く操作していないアカウント向…

  • 『サステナ片づけできるかな?』コジママユコ 小学館 感想 続けられる片づけを模索する漫画

    あらすじ・概要 ものはそこまで多くないはずなのに、なぜか家がごちゃついてしまう。それはサステナな片付けができていないから。著者夫婦は続けられる片づけを求めて工夫を重ね、それをエッセイとして語っていく。無理しない、続けられる片づけがテーマのコミックエッセイ。 サステナっていうか「続けられる片づけ」だよ こんなタイトルだから地球環境に関係あるのかと思っていたら全然関係なくてびっくりしました。タイトルが悪いんじゃなかろうか。 サステナというより「続けられる」や「持続できる」という言葉を使うべきではないでしょうか。サステナブルって言ったらエコとか労働環境の方を想像しますよ。 それはともかく片づけの工夫…

  • 『るん(笑)』西島伝法 集英社文庫 エセ科学やスピリチュアルがはびこる世界の病人たち

    あらすじ・概要 スピリチュアルやエセ科学をみんなが信じるようになってしまった日本。高熱を出してひそかに薬を飲んでいる主人公は、社会に疑問を抱きながらも妻の作った奇妙な水を飲み、自らもエセ科学を実践する。非科学的な情報に流されていく社会を描いた連作短編集。 科学が信用されない社会で病気になる人々の物語 スピリチュアル、エセ科学、陰謀論がはびこる世界観。そこではあらゆる人が民間療法を信じ、医者や薬剤師などの科学の徒は排斥され隅に追いやられています。 短編の主人公は話の中で何らかの病気やけがを抱えますが、エセ科学、スピリチュアルがはびこる世界ではまともな医療が受けられません。怪しげな民間療法を周囲の…

  • 『宿借りの星』西島伝法 創元SF文庫 異形の知性体たちが暮らす星で異種バディが世界の真実を知る

    あらすじ・概要 故郷を追放されたマガンダラは、生きるか死ぬかの状況で出会った、被食者であるはずのラホイ蘇倶と兄弟杯を交わす。相棒とともにこの星の危機を知ったマガンダラは、戻ったら死であるはずの故郷に帰ることとなる。しかし、この星はすでに蝕まれつつあった。 当て字と造語が入り乱れながら世界の真実を解き明かしていく 当て字と造語が入り乱れる難解な文体で、最初は何が起こっているのかわかりません。だんだん主人公は故郷を追放されたカニのような生物であることがわかってきます。 男でも女でもない「おとんな」(作中では「男」と「女」が組み合わされた字)であり、人間とは異なる食生活や性倫理があり、信仰もあるとい…

  • 『ぼく、オタリーマン』よしたに 中経☆コミックス アニメや漫画が好きな働くお兄さんの日常

    あらすじ・概要 オタクでリーマンな著者、よしたには、漫画で日記を描いていた。ぼっちでポップカルチャー好きなオタクである。毎日のコミュニケーションの齟齬や、働く時のとほほな感情、オタク特有の漫画やアニメとの関係などを面白おかしく描くコミックエッセイ。 オタクあるあるとその日常 「自分は言うほどオタクではない」オタクはみんな言う言葉なので笑いました。 ファッションセンス壊滅していたころの服装をさらすくだりもめちゃくちゃ笑いました。私も同類だったのでわかります。 個人サイト世代なので、個人サイトがらみの黒歴史は面白かったです。こんなサイトあったなあ。でもあの時期はみんな黒歴史量産してたので大丈夫だと…

  • 『グローバリゼーションの中の江戸』田中優子 岩波ジュニア新書 感想 「鎖国」時代の他国とのつながりと交流

    あらすじ・概要 「鎖国」状態だと言われる江戸。しかしその実態は他国から多様な文化が入り込んだ時代でもあった。江戸の文化の背景による異国の文化も紹介し、同時に世界全体のグローバリゼーションや植民地支配についても説明する。 グローバリゼーションの光と影 グローバリゼーションという言葉の持つ光と影を感じる本でした。 多様な文化が入り込むことで、江戸では文化が栄え、その影響で浮世絵や海外を舞台にした演劇も発生します。 確かに一般市民には外国人と会う機会が少なかったかもしれませんが、何気ないところに外国から来たものはありました。 同時に、きつい内容の話もあります。 グローバリゼーションはすなわち植民地支…

  • 『親子で読むケータイ依存脱出法』磯村毅 ディスカヴァー・トゥエンティワン 感想

    あらすじ・概要 子どもたちの間に広まるケータイ依存。著者はそれに警鐘を鳴らす。現実世界より刺激が強く、あまりにも簡単に承認欲求を満たすことができるそれには多くの危険が発生している。ケータイによるSNSやゲームの依存を通して、親子の関係を考える本。 SNSは危険だけど著者は子どもが多数派であることを前提としすぎ 一理あると思うところもあれば間違ってるんじゃないかなと思うところもあり、な本でした。 ゲームやSNSのあまりにも簡単に承認欲求を満たしてしまえる力は、簡単に依存を引き起こしてしまいます。その刺激に慣れてしまった人間は現実の刺激に満足できなくなってしまいます。 私もこの間ちょっとツイートに…

  • 『はじめての精神医学』村井俊哉 ちくまプリマー新書 「心の病気」という定義がもたらす救いと呪い

    あらすじ・概要 妄想幻覚が出る、気分が落ち込む、同じ行動を何度も繰り返すなど、精神疾患の現れ方がさまざま。精神科医が精神疾患の分類や治療法を紹介し解説する。また、現代の精神医学が抱える問題や葛藤、可能性についても語る。心を病むとはどういうことか、考えてみる本。 病気という言葉が持つ可能性と差別 序盤は主だった病気の紹介から始まります。私のような精神医学の情報を追っているような人間には見知った話ですが、初心者にはわかりやすくていいと思います。 本書の本番は中盤以降から。「精神疾患」とは何なのか、普通と普通でない線引きはどこに引くかという議論を紹介します。 「心の病気」という言い方はときに差別的な…

  • 『東京ディストピア日記』桜庭一樹 河出書房新社 コロナ禍、情報の渦の中にいたあの頃の日常

    あらすじ・概要 新型コロナウイルス流行時、著者である桜庭一樹は東京で暮らしてきた。中国で発生したパンデミックは世界中に波及し、やがて日本も飲み込んでいく。マスクの品不足、飲み会や会食の自粛、そして外出自粛……。目まぐるしく変わっていく情報に押し流されながら暮らした当時を振り返る日記。 コロナ禍のことを忘れてしまっている自分に驚く まず何よりコロナ禍を経験していたのに、そのときのことを結構忘れてしまっている自分に驚きました。つらいことを忘れるのは人間の防衛反応とはいえ、私の薄情さにちょっと悲しくなりました。 本の中にあるように、実際にはコロナ禍でたくさんの人が死んでいきました。関連があるかはわか…

  • 『インド神話』沖田瑞穂 岩波少年文庫 感想 神々の荒々しくユニークな物語

    あらすじ・概要 南アジアに位置するインド。そこではインドの神々が信仰されている。ヒンドゥー以前のバラモン教の神話から、ヒンドゥー教時代になってからの神話の変遷。他の神話との類似や関係など、インドの神々のダイナミックでユニークな物語を紹介する。 道理が違い過ぎててびっくりした 今までいろいろな神話を読んできましたが、その中でも道理が独特過ぎて困惑しました。 まず人間の上位存在であるはずの神々が、人間であるはずのバラモンを殺すのを恐れます。神であってもバラモン殺しは罪なのです。ちなみにバラモンというのはインドのカーストにおける祭祀階級で、貴族のような特権階級でもあります。 神が人間を恐れる、という…

  • 『日本の無戸籍者』井戸まさえ 岩波新書 感想 戸籍がない人たちからたどる日本の少数派

    あらすじ・概要 日本において個人や家族を管理するためのシステム、戸籍。しかしその戸籍に載ることができない人々がいる。離婚した親から生まれた子どもや、出生届を出してもらえなかった人、戦争や災害のごたごたで戸籍が失われた人たちなど。多様な無戸籍者を紹介しながら無戸籍者の実態に迫る。 無戸籍者の歴史はマイノリティの歴史 序盤は離婚後300日以内に生まれた子を「全夫の子」とする規定により無戸籍になってしまった人々の話です。DVやモラハラをした夫との家族関係を続けたくないのに方がそれを許さなかったのです。 この規定は2024年4月に改訂されましたが、ここまでぐずぐず改訂を引き延ばす理由があったのか不満で…

  • 『いいかげんに生きづらさを終わらせたい:トラウマ治療体験記』三森みさ 感想 カウンセリングで過去と向き合う

    あらすじ・概要 過去の虐待や性加害によってメンタルの不調を抱え続けていた著者は、カウンセリングでトラウマ治療をすることになった。しかし、それはいばらの道だった。ときに怒り、乖離によって記憶を飛ばしながらも、必死でカウンセリングを受け続け、治療の道を探る。 カウンセリングでトラウマを治療するにはお金がかかる 性加害、虐待を受けた著者が自分のトラウマと向き合い治療に向かうまでを描きます。 登場する心理療法がスピリチュアルか!? と思うほどうさんくさくて笑いました。著者もそのことにはつっこんでいます。 でも私も精神疾患持ちなので、精神医学とスピリチュアルは紙一重というところは知っています。 精神治療…

  • 『暴力とポピュリズムのアメリカ史――ミリシアがもたらす文壇』中野博文 岩波新書 感想

    あらすじ・概要 アメリカの民兵組織「ミリシア」。トランプ大統領の陰には極右的なミリシアの支持があった。著者はミリシアの歴史を語りながら、アメリカの暴力行程の構造や、政府による暴力独占の失敗を説明する。混迷するアメリカの一つの原因を示す新書。 アメリカの暴力独占失敗の歴史 アメリカの民兵組織、ミリシアを中心としてアメリカ史を語ります。民主主義政権では政府だけが警察や軍隊組織を独占する必要があります。一般市民に軍隊を組織する権利を認めると、内乱や私刑のリスクが高まるからです。しかし、アメリカではそうならず、ミリシアという民兵組織が今も存在しています。 アメリカの歴史は暴力と共にあり、それは人権意識…

  • 『伝説のお母さん』かねもと KADOKAWA 感想 魔王を封印した魔法使いが仕事復帰に悩む

    あらすじ・概要 勇者一行に同行して魔王を封印した魔法使いは、その後家庭を持って子供を出産していた。あるとき魔王が復活し、勇者パーティもふたたび集合する。しかし魔法使いは、子どもと子育てに無理解な夫を抱えて思うように魔法使いとして復帰できない。魔法使いは仕事復帰のため奔走するが……。 ファンタジー+社会風刺 RPGのようなファンタジーと母親に関する社会風刺を組み合わせた作品。主人公の魔法使いは保育園の申請に失敗し、夫は子育てに無理解で、子どもを連れた仕事復帰も困難です。 RPGという存在しない世界を通して、母親になった女性がどれだけ不自由になるか描かれています。子どもはかわいいし、離婚もしたくな…

  • 『年中行事を五感で味わう』山下柚実 岩波ジュニア新書 日本の祭りを楽しんでみる

    あらすじ・概要 お正月、節分、ひなまつりなど、日本には様々な祭りや年中行事の習慣がある。その由来やいわれを紹介。さらに著者が実際に地方のお祭りに参加してみることによって、リアリティのある呪術世界を描き出す。年中行事からわかる日本のスピリチュアルな世界を書く。 現代の価値観で肯定していいのだろうか 著者の主観の話が多いので、専門的な話というより年中行事にまつわる読み物という感じですね。 著者が参加した個々のお祭りの描写は面白かったです。写真も多めで想像しやすい本ではありました。 掛け声の「ワッショイ」の由来や、ひなまつりの由来など雑学として面白い話題が多いです。 流しびなの話題で、人形に何かを見…

  • 『ファング一家の奇想天外な秘密』見た感想 前衛芸術家の両親に振り回される姉弟

    あらすじ・概要 ファング一家の姉弟は、パフォーマンスを主とする前衛芸術家の両親に子供の頃から振り回されていた。子どもすらパフォーマンスに参加させる両親は、いつも二人の悩みの種だった。ある日両親が失踪し、ふたりは彼らを探し回るうちに、両親の真実を知ってしまう。 両親の芸術パフォーマンスに巻き込まれる子どもたち いたずら的なパフォーマンスを前衛芸術として行う人の話。いわゆる「ハプニング」ってやつですかね。両親は芸術家としてはとても評価されているらしく、彼らを評価する芸術家立のコメントが挿入されています。 きょうだいがどれだけ苦労しているかを見ていると、芸術家たちのコメントがひどく白々しく思えます。…

  • 『斜陽の国のルスダン』並木陽 星海社FICTIONS 感想 ヨーロッパとアジアが交わる国の悲恋

    あらすじ・概要 優秀な兄が若くして亡くなり、ジョージアの女王として即位したルスダン。彼女は幼なじみで、同盟の人質のディミトリを王配とする。互いに思い合うふたりはジョージアのために奔走するが、陰謀と戦乱がふたりを引き裂いてしまう。 文化の交わるところで女王が奮闘する ヨーロッパ、イスラーム圏、そしてアジアとさまざまな文化にもまれて成立したジョージア。その立ち位置から戦乱が続き、ルスダンは困難な時期に王位についてしまいます。夫は聡明で優しくはありますが、国内に何の後ろ盾もない外国人。さらに血統から警戒されてほとんど何の権力も与えられませんでした。 ルスダンとディミトリは深く愛し合う仲ですが、外国の…

  • 『橋本式国語勉強法』橋本武 岩波ジュニア新書 感想 近道しないベタでしっかりした言葉の学び

    あらすじ・概要 関西一の私立進学校、灘高校に国語教師として勤めていた著者は、高校生に向けて国語の学び方を教える。現代文の読解や記述式の問題の解き方、古文の考え方、漢文に親しむ方法など。受験のための勉強を超えて、人生に役立つ国語能力をつけるよう子どもたちに望む。 国語教育の王道を行く本 国語教育の王道という感じの本で、面白かったです。文章を書く人には下手な文章術よりこの本を読ませた方がいいのではないかと思うくらいです。 本当に当たり前のことしか書いておらず、劇的な本を期待していた人はがっかりするかもしれません。しかしスポーツ選手が地道に筋トレをするように、文章を読んで書く練習も地道で面倒なことな…

  • 『新理系の人々』よしたに 中経☆コミックス 全3巻 感想 電子機器の扱いに著者の価値観の変遷を感じる

    あらすじ・概要 著者、よしたには元SEの漫画家として生活している。理系の日常を描いたり、勤め人だった時の悩みやトラブルをおもしろおかしく描いたり。そして将棋AIや災害対策など、暮らしを支える「理系」の仕事について漫画を描く。理系の世界がわかるコミックエッセイ。 価値観の変遷が感慨深い 前シリーズとテーマはほぼ同じですが、『新理系の人々』になってからはインタビューや取材の比重が大きくなっています。 普段あまり技術者のインタビューを読むことが少ないので、興味深かったです。 将棋用の人工知能、Bonannzaを作った人へのインタビューが一番面白かったです。最初は弱くて誰にも勝てなかったのが、製作者に…

  • 『ギリシア神話』中村義也・中務哲郎 岩波ジュニア新書 感想 古代人が考えた人間の罪と罰

    あらすじ・概要 南ヨーロッパのギリシャに興ったギリシア神話。その内容はキリスト教の時代になってもヨーロッパに強い影響をもたらした。世界の始まりや英雄譚など、ギリシア神話の有名な話を紹介しながら、古代ギリシャの人々が神や人間、自然についてどう思っていたのか迫っていく。 南ヨーロッパの罪と罰の神話 ギリシャと言うと青い海、カンカン照りの空なのでなんとなくネアカっぽい感じがしますが、ギリシャ神話は血なまぐさい人間の罪と罰にあふれています。 罪を犯して人間に火を与え、罰を受けたプロメテウスや、絶対に開けてはいけない甕を開けたパンドラ、神々を侮った罰として断罪される人間たち。 ギリシア神話では、人間を罪…

  • 『東京のヤミ市』松平誠 講談社学術文庫 感想 戦後を生き延びる人々のたくましさと猥雑さ

    あらすじ・概要 戦後の焼け跡で、裏物資が取引された「ヤミ市」。ヤミといっても、物資の配給が貧弱な中、人々はそこに集わざるをえなかった。公然と行われる「ヤミ取引」から生まれた文化や、ヤミ市を運営していたテキ屋組織の存在など、東京の俗っぽく生々しい過去を描く本。 公然と行われるヤミ市のすがた ヤミ市って公然と知られている時点でヤミではないだろう、と思いますが、この本はその部分にも言及しています。政府が黙認どころか積極的に介入するなど、当時の人が「存在するもの」として扱っていたのがわかります。 一方で、ヤミと言われるからには非合法なことも行われていました。恐喝や脅しがあったり、健康に悪い粗雑なお酒を…

  • 『ばるぼら』手塚治虫 を読んだ。 ファムファタルだけど哀れな不思議な女性

    あらすじ・概要 人気小説家、美倉洋介は誰もがうらやむような名声を得ながらも、自分の異常性欲に悩んでいた。そんな彼の前にバルボラという女性が現れる。宿なしでだらしなく、勝手気ままであるものの、美倉洋介はどこか彼女に惹かれ、家に置くことになる、 バルボラ思ったより普通でかわいそう 2巻完結で手塚治虫の作品の中ではあっさり終わってはいますが、それでも面白かったです。 筋書きとしては謎の美少女が作家の人生を狂わせるファム・ファタールものに近いですが、どちらかというと相手にドン引きしているのはバルバラの方で美倉洋介のほうがおかしいんですよね。 美倉洋介に振り回されるバルボラはごく普通の若い女性で、かわい…

  • 『ヤングケアラーってなんだろう』渋谷智子 ちくまプリマ―新書 感想 家族を支える子どもたちの実態

    あらすじ・概要 片親で親の代わりに家事をしている子ども、障害や病気のある家族を世話している子ども、幼いきょうだいを世話している子どもを「ヤングケアラー」と呼ぶ。ヤングケアラーの統計上の実態と、具体的な事例、これからの解決策について考えていく。 ヤングケアラーの複雑な気持ちを尊重する 序盤は統計とともにヤングケアラーの実態に迫ります。どの家族をケアしているのか、よくある悩みとは何か、解説します。 中盤からは具体的なヤングケアラーについての事例を取り上げます。 ヤングケアラーというとどうしてもいかにも困っていそうな外見を思い浮かべるでしょうが、この本に寄稿している元ヤングケアラーの女性は進学校に行…

  • 『春のたましい 神祓いの記』黒木あるじ 光文社 感想 コロナ禍後の神々を鎮めるファンタジー

    あらすじ・概要 疫病がはびこり、人々が祭りに集えなくなった世界。そこでは祀られなくなった神々が人々に悪影響を及ぼしていた。彼らを時に祓い、時に祀りなおす公務員ふたりの活躍を描いた和風伝奇ファンタジー。 コロナ禍を題材とすることで祀られなくなる神を描く コロナ禍をモチーフとした和風ファンタジーです。こういう物語が描かれるようになると、フィクションの中でもコロナ禍を捉えなおし、解釈しようとする動きがあるのだなと感じます。時代の流れを見ているようでした。 主人公たちが相対する神々はよいものでも悪いものでもありません。しかし祀ることによって神としてのアイデンティティを得て、人に悪さをしなくなります。神…

  • 『宇宙人に会いたい! 天文学者が探る地球外生命のなぞ』平林久 科学ノンフィクション 感想

    あらすじ・概要 宇宙人は本当にいるのだろうか。その研究を大真面目にやっている科学者たちがいる。地球外生命の発生の可能性や、地球に似ている惑星を探すための工夫などを語りつつ。科学的に「宇宙人と出会う方法」を考えていく本。 宇宙人を科学で考えつつ出会いたいと思う 電波天文学者が地球外に知的生命体がいる可能性について、宇宙での生命の存在の可能性について語る本。 子ども向けなので平易で、なおかつある程度情報が確かそうなのがよかったです。 1960年、「オズマ計画」という宇宙からの電波を受信して宇宙人を探すプロジェクトが始まりました。ロジェクトの始まりについても書かれているのが面白かったです。 自ら光り…

  • 『読まれる覚悟』桜庭一樹 ちくまプリマー新書 誤読や齟齬から「読む・読まれる」関係を考える

    あらすじ・概要 売れないライトノベル作家、桜庭一樹は『GOSICK』のヒットにより首の皮一枚つながるが、それは「読まれる」ことへの葛藤の始まりだった。読者に誤読されたとき、崇拝されたり感情移入され過ぎたりしたとき、作家はどのようにあるべきか。「読む・読まれる」ことの関係を考える本。 想定していない感想にどう向き合い乗り越えるか モンスター読者について作家はどう対応すべきか、という話を想像していたのですが、もっと広い視野で書いてある本でした。 著者はライトノベル作家から一般小説へと主とする分野を変え、その過程で「自分の作品についてさまざまな反応をする読者」と出会います。 ないはずのシーンをあった…

  • 『アイラブ台湾屋台めし』フジナミコナ コミックエッセイの森 感想 調理風景かわいい

    あらすじ・概要 著者は台湾の屋台の食べ物を食べ歩く旅に出かける。夜市を練り歩きスナックや料理を食べ、ジューススタンドでスイカジュースなどの甘い飲み物を買い、マンゴーかき氷に舌鼓を打つ。2巻では舞台は台南へ。異国で気になる料理にどんどん挑戦していくコミックエッセイ。 謎の食べ物を食べまくるコミックエッセイ 屋台の調理風景も含めて描いてくれているのが面白かったです。 「この料理なんだろう?」→頼んでみる→想像していない調理方法→食べる→おいしいの繰り返しです。調理法も味もわからない食べ物に挑戦するところがわくわくしました。著者の体験を追っているようで楽しかったです。 絵柄もかわいくて癒されました。…

  • 『アジ玉。asia-no-tamanokoshi。』黒川あづさ 全6巻 中央公論社 感想 金持ちバングラデシュ夫との結婚

    あらすじ・概要 著者はバングラデシュの男性、クリリンと結婚する。しかし結婚してから、彼は地元の大富豪だということを知った。夫の実家に行ってその家の規模や周囲の権力にびっくりしたり、日本でもめたり。人望にあつい舅にあこがれたり……バングラデシュ夫との生活を描いたコミックエッセイ。 バングラデシュの御曹司と結婚したけどお金がない 著者の夫、クリリン氏はバングラデシュではお金持ちの御曹司ですが、反面生活力がなく、日本ではいつもお金がありません。無職ではないですが、仕事が来なければやらないという体たらく。 著者はそんな彼にキレてあれこれ言いますが、多くの人にかしずかれ、湯水のように豪華な食事の出てくる…

  • 日本史本おすすめ20冊 異文化・信仰・生活・社会福祉など

    日本史の本のおすすめです。今回もTwitterのアンケートからお題を取りました。 だいぶ歴史の本のジャンルが偏ってるなと思いましたが、それも含めて楽しんでもらえると幸いです。 日本の中の少数派 『今こそ知りたいアイヌ 北の大地に生きる人々の歴史と文化』時空旅人編集部 『日系人の歴史を知ろう』高橋幸春 特定の町の文化 『ものいわぬ農民』大牟羅良 『地の底の笑い話』上野英信 宗教 『神仏習合』義江彰夫 『神々の明治維新――神仏分離と廃仏毀釈』安丸良夫 『鬼と日本人の歴史』小山聡子 生活 『江戸の終活 遺言から見る庶民の日本史』夏目琢史 『女官 明治宮中出仕の記』山川三千子 『婚姻覚書』瀬川清子 『…

  • 『理系の人々』よしたに 全6巻 中経☆コミックス 感想 エッセイから見る日本のデジタル機器の歴史

    あらすじ・概要 著者はSEの仕事をしている。仕事仲間とのあれこれ、上司とのわだかまり、そして自分が出世してしまったことで生まれた部下とのやりとりなど、仕事をする上での悩みを面白おかしく紹介。スーパーサイエンススクールなどの理系ならではの取材も行うコミックエッセイ。 デジタル機器の歴史が懐かしい ガラケーや初期のiPhoneなどの当時の電子機器の姿に時代の流れを感じました。電子機器は世代交代が早いからこそ、懐かしくなるのも早いですね。 電子機器がいつ出てくるかは年表を調べればわかりますが、登場したときの人々の空気感はわかりません。スマホが登場したときに「本当に必要なのか?」と言われたり、スマホゲ…

  • 『音のない世界と音のある世界をつなぐ――ユニバーサルデザインで世界をかえたい!』松森果林 岩波ジュニア新書 感想

    あらすじ・概要 ユニバーサル・デザインとは、障害のある人や外国人などにもわかりやすいデザインのこと。著者は聴覚障害の人にとって暮らしやすい世界を目指して、ユニバーサル・デザインを広める活動をしている。聴覚障害の人たちの被災体験や、著者の来歴から、暮らしやすい社会を考える。 震災や聴覚を失う過程の描写が生々しい 聴覚障害の人にとって暮らしやすい世界を目指して、著者は奮闘する話。 序盤は著者の東日本大震災での体験や、他の聴覚障害の人の被災についての話です。聴覚障害の人たちが災害時にどのような不安を感じていたのか、困難はどのようなものなのか書いてあります。 宮城の聴覚障害の人たちの学校は寄宿舎がある…

  • 『「みんな違ってみんないい」のか?――相対主義と普遍主義の問題』山口裕之 ちくまプリマ―新書 感想

    あらすじ・概要 「正しさはひとそれぞれ」繰り返し語られる言葉だ。しかし、フェイクニュースの蔓延や、過激思想の台頭によりそれはゆらぎ始める。人は多様だが、多様でない部分もある。著者は異なる人たちの間に「正しさ」を設定し、議論することの重要性について語る。 人間の普遍性を認めない弊害 人間は本当に多様なのか? 人それぞれなのか? という疑問を扱った本です。 確かにこの世界には多種多様な人々が暮らしています。そういう人々に西洋の白人社会の「普通」を押し付けることはよくないことです。 しかし、人間はありのままの社会だと結構似通った暮らしをしているということもわかっています。 文化人類学者は、「未開の人…

  • 令和7年に『Missing』甲田学人 電撃文庫 を読み返す 崩壊する学園と少年少女

    あらすじ・概要 ごく普通の高校生、近藤が所属している文芸部には「魔王陛下」空目恭一がいる。オカルトの知識が豊かで、人間離れした雰囲気の彼を近藤は慕っていた。ある日空目が見知らぬ少女を連れてきたことから日常は変化する。民俗学と学校の怪談が融和した学園ファンタジー。 読み返して変わったことと変わらないことと 久しぶりに読み返しましたが唯一無二の作品だなあと思います。世界観、キャラクターともに似ている作品というのが思いつきません。 あらすじ自体は怪異を退けるという退魔ものですが、その怪異がやってくる元が人の心であり、集合的無意識であるというSFっぽい筋立てがたまらなく面白いです。 「人はこんなにたく…

  • 『ウソツキ!ゴクオーくん』吉もと誠 てんとう虫コミックス 人の嘘を裁くことで生まれる人間賛歌

    あらすじ・概要 小学生、天子のクラスにいる少年、ゴクオー。彼は嘘が大好きで、クラスの嘘を暴いて回っている。実は彼は、地獄の閻魔大王、地獄王だった。ゴクオーは人間の罪を暴きながらも、天子や人間世界の危機を救っていく。 エンタメ性とテーマ性を両立する高度な子ども向け漫画 日常回ではほとんど水戸黄門的に毎回展開が同じですが、各章にボス的敵役がおり、それぞれの敵と対決することがクライマックスになります。 日常回からクライマックスに進展していく過程が面白いですし、それぞれのボスも魅力的でした。 私はユーリィとサタンが好きでした。ユーリィは最初はいかにもいけすかないライバルキャラなのですが、その思いを知っ…

  • 『週末上海でキレイを極める☆ 2泊3日の美人旅』たかぎりょうこ KADOKAWA 感想

    あらすじ・概要 著者とアシスタントは上海まで週末2泊3日の旅行をする。中国茶のお店でお茶を買いまくったり、エステやマッサージを受けたり、漢方の店に行ってみたり、中国の美容にまつわるスポットを楽しむ旅エッセイ。 エステの類に逆に興味ないので面白かった 自分がエステの類が全く興味ないので、逆に知らないことだらけで面白かったですね。 店員にかしずかれ、ご奉仕を受けるのと、普通の中国の人たちが態度が荒っぽいのと落差がすごいです。極端だなあ。 中国の人って不愛想だけどエステはエステでこんなのなんだ!? とびっくりしました。 痛がってもやめてくれないシーンに笑いました。「痛い」じゃなくて「やめてください」…

  • 『子どもにキレちゃう夫をなんとかしたい!』水谷さるころ 幻冬舎 感想 伴侶の怒りをカウンセリングを通して考える

    あらすじ・概要 著者の夫であるノダDは、ちょっとしたことでキレてしまう悪癖があった。子どもに暴力を振るったことから、著者と一緒に夫婦カウンセリングを受けることとなる。診断やカウンセラーとの対話を通して自分を知っていき、それを「キレる」対策に生かすことを考えた。 夫婦カウンセリングを通じて考えるキレない生活 子どもを殴ってしまったシーンまで書かれているのがなかなか衝撃的ですが、そのシーンを抜きには語れなかった漫画だと思います。しかも離婚した妻の間にできた子にも暴力を振るったことがあるという。 しかも当人はなかなか問題を自覚できず、著者が指摘するのを繰り返すという状態でした。 「当事者自身では解決…

  • 『ボンクラ隊が行く! おいしい台湾食べたいわん』水谷さるころ コミックエッセイの森 感想

    あらすじ・概要 コミックエッセイ作家の水谷さるころは、子どもと夫を連れて台湾に旅行に行く言雄になった。台湾のおいしいグルメをみんなで食べまくり、楽しむ。占いに行ってみたり、子連れ旅の苦労を感じたり、台湾を満喫するコミックエッセイ。 ひたすら食べまくりですごい 台湾で食べまくるだけのコミックエッセイ。よくある観光をさくっと終わらせて、食べる食べる。私は食べ過ぎるとお腹壊すので、これだけ食べられるのはうらやましいですね。 日本では見たことのない料理が多くて面白かったです。クレープっぽいものとか、何かを包んでいたりとか、日本語では何とも表現しがたい料理も……。 それでいて、現地在住の人は「台湾よりも…

  • 『マンガ 出張先は北朝鮮』呉英進 全2巻 作品社 隣の独裁国家に出張して洗脳された人たちの人間味を見る

    あらすじ・概要 韓国から土木作業のために北朝鮮に出張することになった著者。「将軍様」を崇拝する北朝鮮の人々はどこかおかしく、同時に人間味がある。著者は北朝鮮で起こったことを記録しておくことにした。大きな矛盾を抱えて暮らす北朝鮮住民の、リアルな日常とは。 南から来た技術者が見た北朝鮮のおかしさと普通さ 韓国(北朝鮮の人々は南朝鮮と呼ぶ)から仕事で北朝鮮に出張し、その記録を漫画にしたドキュメンタリーエッセイ漫画。 作者は「将軍様」を崇拝する姿や、共産主義という理想を無理やりにでも信じようとする北朝鮮の人々に異様さを感じます。彼らは矜持が高く、南朝鮮の人たちを下に見ています。 しかしながら、工事で共…

  • 『年収150万円一家 森川さんちの沖縄・屋久島お値打ち旅』森川弘子 KADOKAWA 感想 ちょっと変わった南国旅行

    あらすじ・概要 年収150万円で暮らしている森川さんちは、やりくりしながら旅行に行くのが趣味だ。燃油サーチャージによって海外に生きづらくなった著者は、旅行先に沖縄を選ぶ。娘と二人の沖縄旅や、三人での沖縄、屋久島でウイークリーマンションを借りての長期滞在など、沖縄旅行を描くエッセイ。 ちょっと変わった沖縄旅行 年収150万円で工夫して暮らしている一家が沖縄・屋久島へ。 この年収で数十万単位の旅行をするの、逆に旅行にかける情熱がすごいですね。相当旅行が好きなんでしょうね。 マンスリーマンションで宿泊費を削ったり、格安航空に乗って移動費を節約したりする工夫が面白かったです。私も大阪人なので、関西国際…

  • 『恋する韓国男子! 知りたかった隣の国のおつきあいスタイル』唐南賀彩生 幻冬舎 感想

    あらすじ・概要 著者は朝鮮語学部に通っていた。そこには韓国のことを学ぶ日本人と、数多くの韓国人留学生がいた。恋多き韓国人男子パク先輩を中心に、日本人と韓国人の文化の差異や、コミュニケーションについて語る。似ているようで違う、韓国の文化とは。 韓国男子の恋愛とコミュニケーション 舞台は朝鮮語学科があって、数多くの韓国人留学生がやってくる大学。そういう大学があるんだということがまず新鮮でした。世の中には自分の知らない学校がたくさんありますね。 主人公の先輩、パク先輩を中心に韓国人の面白エピソードを紹介します。 パク先輩は恋多き男なので、恋愛に対する話が多いです。主人公の友人に断られてもなかなか諦め…

  • 『人とミルクの1万年』平田昌弘 岩波ジュニア新書 乳製品をめぐる文化と歴史、生活

    あらすじ・概要 乳製品にまつわるフィールドワークをしている著者は、アジア、ヨーロッパにおける乳製品の利用について語る。乳製品はどのようにして人間に利用されるようになったのか、そして現代乳製品はどのような文化をもたらしているのか。ミルクの不思議を感じさせる新書。 乳製品と人類をめぐる物語 日本では乳製品といえばヨーロッパですが、実際にはアジア圏での利用が多いです。著者がフィールドワークしたシリアの人々の中にはカロリーのほとんどを乳製品に頼る民族もいます。 高いカロリーと栄養素、おいしさを持つ乳製品はさまざまな場所で利用されてきました。 各民族は乳をバターやチーズに加工し、保存可能な状態にして暮ら…

  • 『石黒正数短編集』全2巻 リュウコミックス 感想 あるある皮肉ギャグ漫画集

    あらすじ・概要 クラスメイト失踪の謎を追う高校生や、突然ポストアポカリプスと化した世界に生きるおっさんたち、有象無象の吸血鬼退治の一団、妙にしみったれた悪の組織。どこかで見たような、そして個性的でどこかおかしなキャラクターたちが大騒ぎをするギャグ短編集。 あるあるネタからコメディを生む短編集 トンチキ、皮肉、ギャグ系の短編集でした。 もしも○○が××だったら? とか、創作におけるあるあるネタをひねって出してみたりだとか、他人の作品の存在を前提としたギャグが多いです。 ニチアサのようなヒーローもの、魔法少女、悪の組織、アンドロイドと博士など。ある程度この手のあるあるネタに知識があったほうが楽しめ…

  • 『新版 障害者の経済学』中島隆信 東洋経済新報社 感想 経済学から見た障害者制度の矛盾とこれから

    あらすじ・概要 障害のある子どもを育てていた著者は、経済学者として障害者を考える。経済学における差別の考え方や、障害者雇用や制度の矛盾点を描く。障害者の労働はなぜ社会のお荷物人ってしまい、ひとりの労働者として認められていないのか、その背景を描き出す。 障害者雇用やA型、B型の抱える矛盾がしっかり書かれていて面白かったです。 差別や生産性の点では能力のある障害者は健常者と同等の待遇にされるべきですし、働けない人には働く以外の自己実現が提案されるべきですが、実際にはそうなってはいません。行政の無策により、税金を無駄にする状況が続いています。 障害者雇用の存在で能力のある障害者がいつまでも最低賃金の…

  • 『40代が、こんなにしんどいなんて聞いてなかった』フカザワナオコ 幻冬舎 感想 衰えを感じながらも前向きにやってみる

    あらすじ・概要 イラストレーターで漫画家の著者は、40代後半にして次々と体の衰えを感じ始める。更年期になったり、気圧に弱くなったり、肩にも不調が現れたり。老いていく自分を感じながらも、運動や健康な活動でより良い生活を模索していく。40代女性の体コミックエッセイ。 衰えを感じる悲しみと前向きさがよい 40代になり、衰えを感じ始めた著者。私もアラサーからアラフォーになりつつあるので他人ごとではありませんでした。 更年期でホルモンバランスが崩れたり、気圧で体調不良になったり。五十肩という関節の問題もあります。 今までの生活では生きていけないという落差に戸惑います。 体の変化って自分が望む望まないにか…

  • 『くおんの森』釣巻和 リュウコミックス 全6巻 感想 文字を食う魚と人間たちの現代伝奇ファンタジー

    あらすじ・概要 読んだ本をすべて記憶する能力を持っていた遊紙。彼は紙魚という文字を食らう生き物に憑りつかれ、読む本を読んだ端から忘れていくようになる。飢えたように本を読み続ける彼は「森人」を名乗る少女と出会い、この町の本にまつわる不思議な出来事を体験していくこととなる。 本にまつわる伝奇ファンタジー 紙魚に入り込まれた少年が不思議な体験をしていくシリーズ。序盤は連作短編の形に近いです。人でないものとの交流や、本にまつわる超常現象など、町で起こる不思議なできごとを描いていきます。 重要な生き物として登場する「紙魚(しみ)」は虫の姿ではなく魚の姿をしており、作中でも魚として扱われています。実際に実…

  • Thunderbolt Fantasy最終章 ネタバレ感想 関係性最高だったよ

    Thunderbolt Fantasy最終章見てきました! 面白かったです! シリーズ追いかけててよかった! 最後なのでごりごりネタバレ感想にしました。ネタバレしかないです。 TVシリーズからどうなるか気になっていた浪巫謠ですが、これ上ない丁寧な結論を出してくれました。 序盤は囚われの姫みたいなことになっていましたが、復活してからはとても頼もしかったです。 そして嘲風がものすごく美味しいところをかっさらっていって驚きましたね。サンファンのヤンデレはわりとハッピーな結末迎えてますよね。(他人がそれを幸せと認識するかは置いといて) 最後にアジベルファを哀れむところも、こういうところが浪巫謠の善性な…

  • NHK、ドキュランドへようこそ感想 米国議会襲撃・デニムハンター・国選弁護人

    NHKの海外ドキュメンタリー翻訳シリーズ、ドキュランドへようこその感想です。 相変わらずいいと思ったり悪いと思ったりいろいろですが、それも含めて面白いなあと思っています。 「米議会襲撃が再び起きたら シミュレーション 緊迫の6時間」前編&後編 「“スウィフティー”がアメリカを動かす? 歌姫テイラーに熱視線」 「“クィア”な人生の再出発 ボリウッド式カミングアウト」 「デニムハンター “青いお宝”を求めて」 「デモクラシーの“闇” ハンガリーの民主主義は今」 「弁護士シェイナーの正義 米議会襲撃 “暴徒”の声に耳を傾ける」 「女たちがいなくなった日 “男女平等先進国”アイスランドの原点」 「AB…

  • 『食べものから学ぶ現代社会――私たちを動かす資本主義のカラクリ』平賀緑 岩波ジュニア新書 感想

    あらすじ・概要 現代の社会は、おにぎりひとつ取ってもグローバルなつながりの中にある。食べ物を例に出しながら、グローバル社会と大量生産・消費のシステムを考える。自分たちが当たり前だと思っている経済の常識は、実は常識ではないかもしれない。社会への価値観を変える本。 頭のない怪物としての資本主義 話し方は優しいですが、なかなか恐ろしい本でした。 最近話題の資本家といえばイーロン・マスクやトランプ大統領、ビル・ゲイツでしょうが、そういう人たちを追い落としたところで資本主義は終わりません。なぜなら資本主義は個人の意思を離れて巨大化し、その行く末は巨大企業の経営者にも、一国を導く政治家にも、誰にもわからな…

  • 『大物女優の付き人は、ほぼ奴隷の日々でした。』僕田友・西つるみ 本当にあった笑える話 感想

    あらすじ・概要 俳優の卵であった原作者は、大物女優の付き人をすることになった。いい経験になると思ったのは束の間、安月給でこき使われる仕事だということが判明した。大物女優のわがままさに振り回されたり、業界の闇を知ってしまったり、気苦労の多い生活を送る。果たして俳優になる夢は叶うのか? 面白いけどうらやましくはないエッセイ 話は面白いけどうらやましくはないです。むしろこんな仕事はしたくないですね。 有能で美人ですが当たりのきつい女優の付き人をやっていた人の話です。華やかな一方、振り回され方がおかしいです。 無茶な要求をされたり、給料が異様に安かったり。 かなりマイルドにはなっているもののの、芸能界…

  • 『私の彼女』南Q太 全2巻 デルフィーヌ・ド・ヴィガン原作 電書バト 感想 傷ついた作家の前に現れた都合の良すぎる女

    あらすじ・概要 主人公は作家として母親の自死を描いた。しかしその後、誹謗中傷や他人の期待への重圧によって精神的に不安定になる。そんな中現れたのがエルという女性だった。彼女は主人公の作品の熱狂的なファンであり、主人公を全肯定してくれる存在だった。主人公はどんどんエルに惹かれていくのだが……。 全肯定してくれる恐ろしい女性の話 原作つきの漫画ですが、かなり改編も入っているようなので翻案という感じでしょうか。 傷ついた女性の前に自分のことを全肯定してくれる誰かが現れる、というところまではラブロマンスあるあるです。しかしその彼女が主人公を飲み込むほどの危うさを持った人でした。 エルは誹謗中傷に傷ついた…

  • 『母が「女」とわかったら、虐待連鎖ようやく抜けた』あらいぴろよ バンブーコミックスエッセイコレクション 感想

    あらすじ・概要 父親に虐待されて育った著者は、自分が大人になってからもその影に苦しむこととなる。家庭を持ち出産し、息子に強い悪意を抱く自分を見て、著者は父親だけでなく母親との関係も見直すことになった。 父だけではなく母からも愛されていなかったことに気づく 著者は毒親ものの作品を何冊か出していますが、それぞれテーマが違うのが面白いです。今回は母親が自分の恋愛を優先させて父親の暴力を見逃した話です。 著者の母はダメな夫と別れようとせず、そのせいで子どもを危険にさらします。 物理的な暴力に出なかったという点では父親よりはましかもしれないですが、父親にぞっこんに惚れ込み、父親が自分を愛してくれるかどう…

  • 『神々の明治維新――神仏分離と廃仏毀釈』安丸良夫 岩波新書 感想 宗教統一への反感・闘争・従属

    あらすじ・概要 明治維新前後は「廃仏毀釈」という仏教を退け神道を推進する政策が取られた。しかし日本では仏教と神道の明確な境界線はなかった。信仰を奪われ神道的とされる習慣を押し付けられた人々は困惑する。 信仰の押し付けによって混乱する日本 信仰とは政府のプロパガンダで操作可能なのが恐ろしいと思います。政治家が信仰の話すると怖いのはここなんですよね。 そしてこの本で初めて「淫祀(いんし)」という言葉を知りました。社会的によろしくない信仰のことのようです。もちろんこのよろしくないというのは権力者にとってのそれなので一般民衆にとってどうかは別です。 たとえ一般民衆がよくわからない信仰を持っていたとして…

  • 『誇り高い技術者になろう[第二版]―工学倫理のススメ』黒田光太郎・戸田山和久・伊勢田哲治編 名古屋大学出版会 感想

    あらすじ・概要 技術者倫理。それは机上の空論やきれいごとではなく、技術者としての毎日の仕事に宿るものである。技術者倫理が問われた事故や事件を紹介し、その事件について語りながら、「誇り高い技術者」とは何かを考える。技術者は社会のために何ができるだろうか。 技術者にしかできない倫理的判断がある 技術者倫理というと内部告発や、倫理にもとる物品の制作を拒否するということが思い浮かびがちですが、この本を読むとそういう行為以外にも「倫理的な技術者の行い」が存在することがわかります。 障害者や性的少数者などが暮らしやすくなる技術を発案すること、技術者だけではなく他の仕事をしている人にもきちんと尊敬の念を持つ…

  • 『k.m.p.の、台湾ぐるぐる』k.m.p. 東京書籍 感想 一か月滞在した不思議でかわいい島

    あらすじ・概要 k.m.p.のふたりは、台湾を一か月旅行する。台湾のおしゃれなスポットや、文化がうかがわれる土地、食べ物や風景を豊富な漫画やイラストで紹介していく。台湾の人々の優しさや、台湾文化の面白さがわかるエッセイ。 写真文章漫画、全てが描かれているコミックエッセイ 写真、文章、イラスト、漫画、全てが書かれていて何エッセイとすればいいのかわからない本です。ブログでは便宜上コミックエッセイに振り分けています。 デザインに原色が多くて大きいデバイスで見ないと目がちかちかします。タブレット推奨ですね。 一か月も滞在しただけあって、台湾旅行記であまり取り上げないようなスポットもたくさん紹介されるの…

  • 『バックパックシリーズ』グレゴリ青山 感想 アジア諸国を再訪してとほほな経験をする

    あらすじ・概要 アジア諸国を旅する著者。中国や韓国、マレーシアやミャンマー、タイ、ベトナム、バリ島など。優しくもおかしい地元の人たちと触れ合ったり、トラブルに巻き込まれたり、他国の文化に触れたり。面白おかしい旅行コミックエッセイ。 相変わらずのとほほな旅行記がたまらない 『旅で会いましょう』『ふたたびの旅』「旅のうねうね」で一つのシリーズのようですが、一冊単位でも読めます。 著者がアジア諸国を旅するコミックエッセイ。一部日本の話やロシアの話もあります。 相変わらずとほほな旅行を繰り返し、気楽に読める内容なのがいいですね。人の失敗ほど面白いものはないですからね。 面白かったのはベトナムのバッチャ…

  • 『ものの言いかた西東』小林隆 澤村美幸 岩波新書 会話からわかる東北人と関西人の価値観の違い

    あらすじ・概要 方言は、単語や文法以外にもものの言い方に特徴を持つ。大げさで演技性が高く、軽妙なコミュニケーションを好む関西と、朴訥ながらも正直なコミュニケーションを好む東北。大阪、京都などの関西の人と、東北地域の人たちの話し方を比較しながら、ふたつの文化の違いを探る。 関西人としてあるあるな内容だった 大阪人としてはあるある~という感じで共感が深かったです。 ロールプレイが好きで、多少わざとらしくてもリアクションをし、笑いを重んじるのは一種のマナーであり社交であるんですよね。笑いは高度なコミュニケーションなので、「こういう高度なコミュニケーションをするほどあなたが好きですよ」ということでもあ…

  • 『次なるパンデミックを回避せよ 環境破壊と新興感染症』井田徹治 岩波科学ライブラリー 感想

    あらすじ・概要 新型コロナウイルスの大流行により、変わってしまった社会。しかしすでに次なるパンデミックは起こる可能性がある。野生動物や家畜と、パンデミックのリスクがどう関連するか解説し、動物との距離感を考える。環境保全は人間の健康を支えるかもしれない。 感染症によって問われる人間と動物の関係 環境問題とパンデミックの問題の関連性について語る本です。 人間がその生息域を広げ、動物たちとの接点が増えたことによって未知の病原体に接する機会も増え、パンデミックが起こる確率も高くなってしまっています。 エキゾチックペットの輸出・輸入もそれに拍車をかけています。環境保全としても珍しい動物の飼育はやめるべき…

  • 『日系人の歴史を知ろう』高橋幸春 岩波ジュニア新書 感想 ブラジルに渡った日本人たちのその後

    あらすじ・概要 日系ブラジル人を家族に持つ著者は、彼らのことを知ってもらいたいと日系ブラジル人たちの歴史を語る。棄民に等しい政策でブラジルにやってきた彼らは、ブラジルの自然や文化の違いと格闘しながら暮らしていた。出稼ぎのつもりだった一世たちはやがて、ブラジルに骨を埋めざるをえなくなった。 出稼ぎたちが帰りたくても帰れなくなったわけ 最初は出稼ぎとしてブラジルにやってきて、「ここで稼いだら故郷の日本に帰りたい」と思っていた日系人たち。彼らがブラジルに定住するまでの歴史を語ります。 最初は出稼ぎ目的だったのが、ブラジルで結婚をし子どもが生まれ、今更日本に帰っても新しく仕事を始めるのは困難。ブラジル…

  • 『世界の神話』沖田瑞穂 岩波ジ当時はそう思われていたさまざまな聖なる物語を比較してみよう

    あらすじ・概要 世界がどこから発生したのかや、人間創造の物語、神の力を借りる英雄譚など、神話はさまざまな物語を描き出している。世界にはどんな「聖なる物語」があるのか。地域ごとに特徴的な神話を紹介し、似ているところや独創的なところを比べて考える神話解説本。 世界各国の神話の関連性や独創性を見てみよう 一冊の本に各国の神話が載せられているわけなので内容はどうしてもダイジェストになりますが、その分神話ごとの関連性や特性を解説してくれてよかったです。 神話から遠い土地にも文化的なつながりがあることがわかったり、めずらしい神話から古代の人が独特な世界解釈をしていたことがわかったり。文化として神話を学ぶこ…

  • 『グーグーだって猫である』大島弓子 角川文庫 猫を拾い続ける著者の生活コミックエッセイ

    あらすじ・概要 サバという猫と死別した著者は、グーグーという猫を飼うことになった。やがて著者は庭に来た子猫を拾っては里親に出し、避妊手術を受けさせ、自分の家に迎え入れる。同時にがんとの闘病など、著者自身にも生活の変化があった。著者と家猫、野良猫たちの日々を描くコミックエッセイ。 猫好きとしては共感するけど猫増えすぎて怖い 日記のような独白がとても多く独特なテンポの漫画です。 猫が増えたり減ったりするのとともに、著者自身の人生も少しずつ変わっていきます。がんになって闘病したり、家を買ったり。猫とともに並走していく人生が面白かったです。 コミカルだけどどこか切なさの漂う作風が心地よかったです。 少…

  • 『新・韓国現代史』文京洙 岩波新書 弾圧・虐殺・デモとともにあった戦後史

    あらすじ・概要 戦後、南北に分割され、南側の朝鮮半島国家となった大韓民国。その歴史は、大国に翻弄され、弾圧や虐殺の爪痕残るものだった。歴史に韓国という国が登場した瞬間から、近年の韓国の諸問題まで、第二次世界大戦後の韓国の歴史をたどっていく本。 大国に翻弄されたり弾圧があったり そもそも敗戦国でもないのに南北に国家が分断された時点でとばっちりなのですが、韓国の不幸はそれで終わりません。 軍事政権の中で弾圧、同国民同士の虐殺を経験し、西側・東側諸国の思惑に翻弄され続けていました。韓国を翻弄したのは、日本も含まれます。 隣国に同民族の独裁政権を抱え、悪化する経済に苦しむ韓国の姿はつらかったです。 韓…

  • 精神疾患関連の新書おすすめ10選 自死問題・発達障害・統合失調症

    今日は精神疾患関連の新書おすすめです。 Twitterのアンケートで「読みたいまとめ記事」のアンケートを取ったところ、票が入ったので書きました。 適切な情報が手に入りにくいジャンルなので、参考にしてもらえれば幸いです。 自死問題 『過労自殺 第二版』川人博 『自殺予防』高橋洋友 『「死にたい」と言われたら 自殺の心理学』末木新 それぞれの病気について 『強迫症を直す 不安とこだわりからの解放』松永寿人・亀井士郎 『統合失調症』村井俊哉 『双極症障害【第2版】―双極症Ⅰ型、Ⅱ型への対処と治療』加藤忠史 『ギャンブル依存症』田中紀子 発達障害 『ルポ 高学歴発達障害』姫野桂 『発達障害 思春期から…

  • 『やさしい日本語ってなんだろう』岩田一成 ちくまプリマ―新書 誰もが理解できる簡単な言葉とは何か

    あらすじ・概要 わかりやすく、簡単な日本語で情報を伝えようとする「やさしい日本語」の運動。その運動のあらましや、文章を「やさしく」するコツ、現代の日本が抱える言語的少数派の悩みなどを解説。言葉による「やさしい」を考えると、少数派の日常の困難が見えてくる。 やさしさは人のためならず 外国人や障害のある人のための「やさしい日本語」の取り組みについて書かれた本。「やさしい」日本語がなぜ必要なのか語ります。 他の国の、言語的少数派のための「やさしい」言語の取り組みなども興味深かったです。 アメリカが公文書の簡略化に取り組んだエピソードは面白かったです。 日本語に興味を持って究めてくれるのはありがたいで…

  • 『生きづらい明治社会 不安と競争の時代』松沢裕作 岩波ジュニア新書 感想 「努力すれば報われる」はどう人間を蝕んできたか

    あらすじ・概要 貧困や格差、社会の断絶が問題となる昨今。明治時代の人々も、混迷の時代を生きていた。過剰な競争社会、貧困への自己責任論、恵まれない立場の人への無理解など……。明治時代の混乱を語りながら、「努力すれば報われる」がどうして間違いなのか考える本。 人間はなぜ「努力すれば報われる」と思ってしまうのか 人間の自由意思ってすばらしい、という価値観から距離を置き、「人間にはどうにもならないことがある」という前提から語っていく本です。自由を愛する人にはあまり楽しい話ではないかもしれませんが、生まれたときから運に恵まれなかった人にはこういう視点は大事だと思います。 徳川幕府が倒れて新しい日本の政治…

  • 『「勤労青年」の教養文化史』福間良明 岩波新書 感想 なぜ働く若者たちは学びに惹かれたのか

    あらすじ・概要 戦後の日本、「教養」というものに強い憧れがあった時代があった。働きながら学問を志した「勤労青年」に焦点を当て、当時なぜ「教養」が支持されたのか暴き出す。一般の人が学問をやることへの無理解や、教育格差を元に日本の不平等について語った本。 うらやましくもあるけど美化しない本 教養や文学に素直なあこがれがあった時代はうらやましくもありますが、「勤労青年」を過度に美化しない本でもありました。 働きながら教養を得たいという青年たちの欲求には、戦後の社会への反感がありました。選ばれた人間しか知識に触れることはできず、学びたいという欲求には冷淡で、閉鎖的な社会で「ここではないどこか」を求めま…

  • 『やさしい日本語――多文化共生社会へ』庵功雄 岩波新書 感想 簡単な日本語を通して異文化と話そう

    あらすじ・概要 外国語を母語とする人や、言葉に困難を抱える障害者など言語的少数派にも読める日本語「やさしい日本語」。その思想はどういうものなのか。少数派に優しくない日本語の現状を語りながら、日本人にとって日本語とは何か、ということについても考えていく。 やさしい日本語から日本語のアイデンティティを考える 「やさしい日本語」とは、外国語を母語とする人たちやろう者など日本語の読解に難がある人に向けて、簡単で簡潔な日本語を使おうという活動です。 ろう者が日本語の読みが苦手になる傾向があるの、障害者に関心がある人でないと知らないのではないでしょうか。日本語と日本の手話は文法が違うため、手話を直訳しても…

  • 『ヴィランズ』感想 ポンコツ小悪党バカップルが幽閉された少女を助ける

    あらすじ・概要 薬物依存のカップルはとある家に迷い込み、そこで女の子が幽閉されているのを知る。その家の夫婦から女の子を引き取り町へ連れて行こうとするふたりだったが、ことの露見を恐れた夫婦から攻撃されてしまう。果たしてふたりは生きてこの家を出ることができるのか。 ポンコツだけど児童虐待絶対許さないカップルの戦い ポンコツで小悪党だけど、児童虐待は許さない主人公カップルのキャラクターがよかったです。悪人だけど憎めない、絶妙な均衡を持ったふたりでした。 ポンコツだけどふたりはラブラブで、基本的にお互いを裏切ることがないのがほほえましかったです。熱烈なキスをするシーンもギャグというより愛しく見えました…

  • 『仮面学園』見た感想 仮面が流行する学校で暴力や事件の謎を追う

    あらすじ・概要 ある日、ひとりの学生が仮面をつけて投稿してきた。始めは悪ふざけだと思われていたが、校内に徐々に仮面をつけた生徒たちが増えるにつれて大人の間でも問題になっていく。やがて仮面はブームとなり、犯罪や暴力が行われ、社会を揺るがすほどの大きなできごとになっていく。 思春期の問題は変わらないから顔を隠したい いつの時代も若者が「自分らしさ」に悩むのは変わらないのだろうと思いました。人に評価されるのが怖い、外見のことが気になる、人と比べてしまう。少年少女たちは精神の不安定さから仮面をかぶります。最初は少数派だった仮面の少年少女たちが、徐々に増えていくのが不気味でした。 同時に、大人たちはメン…

  • 『怖い話は≠くだけで。』景山五月・梨 BRIDGE COMICS 感想 メタフィクションの環が閉じる実話怪談風ホラー

    あらすじ・概要 実話怪談を漫画化する仕事をすることになった著者。怖い話が苦手な著者は、いやいや引き受ける。様々な人から怪談を聞くうちに、著者自身も怪異に巻き込まれることとなる。はたしてこの物語は、どこまで真実でどこまで嘘なのか。著者は強い恐怖にとらわれる。 きっちり終わらせるメタフィクションホラー 正直メタフィクションホラーって不穏さを当てにして最後を適当にすることが多かったので、きちんと物語の輪を閉じて終わるところに感動しました。 ハッピーエンドではありませんが、これしかないという終わり方です。ここまで「物語の終わり」にこだわった作品だから絶対に続編はやらないでほしいです。終わるからこそ美し…

  • 『90年代のゲーセンでバイトしていた話』後藤羽矢子 KDP 感想 ゲームがアナログでローカルだった時代の漫画

    あらすじ・概要 著者は90年代のゲームセンターでアルバイトしていた。90年代にはスマートフォンはなくパソコンも今ほど一般的ではなく、ゲームなのに一種アナログな文化があった。バイトの立場から見たゲームセンター文化を描く。 ゲーセンがローカルだったあの頃の話 ゲームセンターでアルバイトしていた人の漫画。ゲームセンター自体は今でもありますが、世代による文化の違いが面白かったです。 今ではゲームはインターネットに接続して当たり前ですが、スマホもない時代にそれぞれの地域のゲームセンターに向かい、ゲームをしていたのはアナログ的ではあります。ハイスコアランキングの高ランカーを探して対戦しようとわざわざゲーム…

  • 『眠れぬ夜の仕事図鑑』見た 夜中のヨーロッパで働く人々を映したドキュメンタリー

    あらすじ・概要 真夜中のヨーロッパ。みんなが寝静まったあとに仕事をする人たちがいる。医療従事者や介護士、警察官、ホットラインの担当者や配送業の夜勤など、さまざまな職業の人々を淡々と映し出すドキュメンタリー映画。 夜中に働く人を映す静かなドキュメンタリー ヨーロッパで夜間勤務している人を映すだけのドキュメンタリー。制作した国はオーストリアです。特にストーリーもなく解説もないですが、ちゃんと映画として面白く見られます。 字幕もすべての場面にはついておらず、ひたすら知らない言語で誰かがしゃべっているという部分もあります。それでも作業する人たちの声と、がたんごとん、かちゃかちゃという作業音が心地よいで…

  • 『偽史山人伝』詩野うら ビームコミックス 感想 人にそっくりな野生動物、山人のフェイクドキュメンタリー

    あらすじ・概要 かつて、「山人」と呼ばれる人そっくりの野生動物がいた。人に似ているが人になつかず、凶暴な彼らを人はさまざまな思惑とともに見ていた。山人にまつわる文化や言い伝えをまとめるモキュメンタリー「偽史山人伝」ほか、奇妙な短編をまとめた漫画集。 人間そっくりの野生動物をめぐる架空の学術書 SFのようなファンタジーのような、伝奇のような独特の世界観です。 表題作「偽史山人伝」は「山人」という人間そっくりな野生動物の物語です。民族学や文化人類学の学術書のような語り口で、一種のモキュメンタリーと言えます。本のあとがきまで用意されています。 しかし学術書のような語り口の漫画なので、絶対に「これはノ…

  • 『顔ニモマケズ どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語』

    あらすじ・概要 口蓋裂、アルビノなど、「他人と見た目が違う人々」。それらの人たちはどのように暮らしているのか。そして何に悩んでいるのか。9人のインタビューから、劣等感や疎外感を克服していくヒントが見えてくる。外見の悩みについて描いた本。 外見の問題といっても人によってさまざま 登場する人たちが、自分の外見をどう思っているのかはさまざまです。 未だに劣等感から逃れられなかったり、最初からあまり気にしていなかったり。 気にしていない側の人も、周囲が外見にとらわれるせいで就職活動や対人関係につまずきが発生していました。生々しかったです。 本人が自分自身を醜いと思っていなくても、相手はそうではないとい…

  • 『ロスト・キング 500年越しの運命』見た感想 一般女性がリチャード3世の発掘に挑む

    あらすじ・概要 フィリッパはある日リチャード3世の亡霊が見えるようになり、彼の名誉回復をしたいと死体探しをすることになる。リチャード3世が好きな趣味の団体や、学者の講演会などに通いつめ、ついにはクラウドファンディングで発掘作業をすることに。果たして本当に王の遺骨は見つかるのか。 一般女性がリチャード3世の名誉回復に憑りつかれていく フィリッパの前に現れた王様リチャード3世。淡々としており、感情を荒げることとのない彼ですが、フィリッパはどんどん「彼の名誉回復をしたい」という気持ちに突き動かされていきます。 フィリッパ自身も持病に悩んでおり生活のストレスも多いです。病気で背骨が曲がっていて、簒奪者…

  • 『TOVE/トーベ』を見た バイセクシャルの女性の恋と芸術への迷い

    あらすじ・概要 売れない画家、トーベ・ヤンソンはヴィヴィカという女性と出会う。トーベとヴィヴィカは惹かれ合い、やがて肉体関係を結ぶ。一方芸術活動の方はなかなか目が出ず、趣味で書いていた絵や小説の方を評価されることとなる。それこそがムーミンの物語だった。 不器用な女性の恋とその別れ トーベ・ヤンソンはバイセクシャルだったので、女性とも男性とも付き合っている描写があります。 不器用で意固地なトーベは愚かだなあとも思いますが、そういうトーベになめた態度を取る周囲もきつかったです。こういう調子だから、ヴィヴィカみたいな人たらしに惚れてしまったんでしょうね。 ヴィヴィカと付き合ううちに、トーベとの価値観…

  • 『ヒトラーVSピカソ 奪われた名画のゆくえ』見た ナチスの美術品略奪についてのドキュメンタリー

    あらすじ・概要 ヒトラーの独裁が行われたナチス・ドイツでは美術品の略奪が行われた。美術品のコレクションを持つユダヤ人から、次々と美術品が奪われたのだ。ナチスが美術品を通して権力に執着する様子や、美術品奪還活動をしている人々、略奪に協力した人たちのその後を描くドキュメンタリー。 美術品と権力をめぐる悲しい話 ナチスが美術品を厳しく規制しながらも、同時に富や権力の象徴として追い求めているところはみっともなくてかっこ悪いですね。 裕福なユダヤ人から美術品を略奪し、財産を奪われたユダヤ人たちは出国ビザで着の身着のまま逃げていく……という状況がつらかったです。 美術品は二束三文で買われていき、ナチス高官…

  • 『エンジニアのためのWord再入門講座 新版 美しくメンテナンス性の高い開発ドキュメントの作り方』佐藤竜一 翔泳社 感想

    あらすじ・概要 Wordは、有名なワープロソフトでありながら、その可能性を存分に生かし切れていない人が多い。エンジニアの視点からWordの設定の管理、ドキュメントを書くときの効率化を語っていく。 内容はよかったけどしょうもない煽りがうざい Wordの中級者以上向けの、効率よくWordでドキュメントを書くための本。 Word、そんな機能あったのかという驚きの繰り返しでした。 画像にスタイル機能を設定できたり、 あとはやっぱり初期設定を頑張るのは大事ですね。ぼーっとしてたら設定をそのままにしてしまいます。 「こうしたら早くなる」という具体的な小ネタも多くて、今度いろいろ設定してみようと思いました。…

  • 『ブルースカイ』桜庭一樹 文春文庫 感想 いなくなった少女が時を超える

    あらすじ・概要 魔女狩りの嵐吹き荒れるドイツで、近未来のシンガポールで、「そこにいないはずの少女」が現れる。彼女らはどこから来たのか。そして、そこにいた主人公に影響を及ぼしていく。いなくなった少女が時をかける小説。 面白いけどよくわからない小説 面白かったですが、どう解釈していいかわからない話でした。 魔女狩りの嵐吹き荒れるドイツや、少女と言う概念がなくなった近未来のシンガポールで、主人公たちはそれぞれ少女と出会います。 最後の話で「ブルースカイ」の名を持つ少女の物語が語られます。 最初の2話に共通しているのは「少女の不在」です。17世紀のドイツでは「大人でも子どもでもない、青春期の若者」とい…

  • 『おいしい台湾:満足したら帰る旅』まえだなをこ KDP 感想 台湾でご飯食べまくりコミックエッセイ

    あらすじ・感想 コロナ禍での海外渡航自粛のあと、著者は台湾に向かった。台湾のおいしいものをたくさん食べながら、現地の人たちとも交流する。観光名所に行かず、ひたすら食べては台湾の日常を眺めるコミックエッセイ。 食べまくりコミックエッセイ台湾編 台湾のもの食べまくりコミックエッセイ。 いつ帰るか決めておらず、満足したら帰るという独特の旅の方針が面白かったです。 台湾のスイーツやフルーツ、台湾料理などが目にも鮮やかで楽しかったです。 毎回思うけど、著者の食べっぷりがすごいです。私は旅行先でこんなに食べられません。食べ過ぎるとお腹壊すので……。自分ができないことをやってくれるのは面白いです。 台湾の人…

  • 『言いにくいことが言えるようになる伝え方』平木典子 ディスカヴァー・トゥエンティワン 感想

    あらすじ・概要 言いたいことを我慢して無理してしまう。あるいは他人に当たってしまってうまく話せない。やりたいと思うことができない。コミュニケーションの不和に対してアサーションという概念を使い、どう解決していくか語る本。 言いたいことを言うための本 人間関係に悩むことがあったので、久しぶりにアサーションの本を読みました。 言いたいことを我慢して相手に従ってしまう、自分が本当にやりたいと思うことができない人たちの架空の例が挙げられます。それに対してアサーションでどういう解決ができるか語っていきます。 コミュニケーションを取ろうとしてもうまく行かないことはあります。それですぐ関係を諦めてしまわないで…

  • 『もうすぐ50歳、調子のいい日がほとんどありません』フカザワナオコ 幻冬舎

    あらすじ・概要 数年前に結婚し、50歳を目前にした著者はさまざまな不調に襲われる。健康に興味を持ち運動や薬膳を実践してみたり、眉毛やブラジャーなど美容に投資してみたり……自分をケアする行動をとりながら、老いていく自分の体について考えるコミックエッセイ。 うまくいかなかったことも含めて自分のケアを描く 「これいいよ!」という宣伝ばかりではなく、うまくいかなかったことも含めて描いているのが面白かったです。眉毛脱毛にチャレンジしたら1ヶ月で元に戻ったり、眼鏡のために眼科を受信しても結局眼鏡を作らなかったりという展開に笑ってしまいました。 でも日常を生きているとそんなこともあるよね、となります。一応ど…

  • 『忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』見た感想 土井先生が記憶喪失になって敵の軍師になる

    あらすじ・概要 忍術学園の教師、土井半助が行方不明となった。忍術学園の教師陣や、上級生たちは彼を探して奔走する。一方土井と同居していたきり丸は、周りより一足早く土井の行方不明を知る。きり丸は、自分を心配してくれた友達とともに土井を取り戻すことを決意する。 土井先生を取り戻しながら戦争回避する話 1年は組の土井先生が記憶喪失になり、さらには忍術学園について誤った知識を植え付けられて敵の軍師となる話です。 同時に、忍術学園による戦争回避の話でもあります。『ドクタケ忍者隊最強の軍師』の主人公である土井先生ときり丸は戦災孤児です。このふたりの価値観としては戦争は肯定できないだろう、と思いました。作中に…

  • 『おいしいベトナム』まえだなをこ KDP 感想 ベトナムでおいしいものを食べて人に助けてもらう

    あらすじ・概要 旅好きの著者は、ベトナムに旅に出る。ごはん、麺、スイーツなど、ベトナム各地のおいしいものを食べる。ベトナムの店のおしゃれな空間や独特の空気も描く。旅先でベトナムの人々に助けてもらったり話しかけてもらったりしながら、ベトナムを満喫した。 ベトナムでおいしいものを食べよう! ベトナムでおいしいものを食べまくる漫画。 食事が多様で見ていて楽しいです。目にも楽しいスイーツや、シーフードたっぷりの料理など、いろいろな食べ物がありました。 そして著者の食べ物へのこだわりが面白かったです。いっぱい食べてます。 旅行途中のベトナムの人々との交流にもほっこりしました。異文化の中で優しくされると嬉…

  • 『パート主婦の同人副業』倉くらの KDP 感想 DL同人で収益化を目指す話、KindleUnlimited編

    あらすじ・概要 DL同人を売っているパート主婦の著者は、Kindle Unlimitedで著書が跳ねたことをきっかけに確定申告しなければいけないほどには収入を得る。Kindle Unlimitedで跳ねるまでの経緯、これからDL同人をやる人へのアドバイス、そしてこれからやりたいことを述べる。 Kindle Unlimitedで跳ねたけどそこまでが楽ではない パート主婦がオリジナル小説で収益化を目指す話。 相変わらずシビアで面白かったです。内容は過去の作品と被る部分もあるので、今回は新しい情報について書いておきます。 Kindle Unlimitedでの出版が当たって確定申告しなければいけない程…

  • 『エンジニアのための「カジュアル面談のトリセツ」』川原英明 技術の泉シリーズ インプレス 感想

    あらすじ・概要 面接より前に職場の人と求職者がカジュアルに話し合う「カジュアル面談」。比較的新しい概念であるがゆえに、カジュアル面談についての考えはさまざまである。カジュアル面談のマナーや求職者、企業側の心構えをアドバイスし、お互い建設的なカジュアル面談を目指す本。 余計な期待をせず、でも建設的な話をしたい エンジニアではないので「カジュアル面談」の文化も初めて知りました。面接の前に職を求めるエンジニアと、職場の人が話し合うことを刺すようです。求職者は就職後のミスマッチが防げ、企業側は面接では現れない求職者の一面を知ることができます。 お互い「面接の前にちょっと話ができればいいな」と思えれば楽…

  • ヨーロッパをテーマにしたコミックエッセイおすすめ30冊 海外移住・旅行・国際結婚・巡礼

    異文化大好き! 今回はヨーロッパに関するコミックエッセイをまとめました。 イタリア 『モーレツ・イタリア家族』ヤマザキマリ 『それではさっそくBuonappetito!』ヤマザキマリ ドイツ 『とつげきドイツぐらし!』白乃雪 『ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し』小栗左多里&トニー・ラズロ 『白米からは逃げられぬ~ドイツでつくる日本食、いつも何かがそろわない~』白乃雪 「「小顔」って二ホンではホメ言葉なんだ!? ドイツ人が驚く「日本の日常」』サンドラ・ヘフェリン&流水りんこ フランス 『フランス人の私が日本のアニメで育ったらこうなった』エルザ・プランツ 『パリ愛してるぜ~』じゃんぽ~る西 『…

  • 『アイスランド☆TRIP』てらいまき 地球の歩き方 感想 物価の高さと雄大な自然と

    あらすじ・概要 著者夫婦は北欧、アイスランドに向かった。物価の高さに苦しめられながらも、アイスランドの雄大な自然を楽しむ。世界最北端の都市レイキャビクでお買い物もする。温泉や氷河や海など、アイスランドの地形を肌で感じていく旅。 雄大な自然が美しくも怖い アイスランドの雄大な自然がすごいですね。海、火山、陸といろいろな風景を歩きます。 温泉文化は日本人にも親しみやすいところがありますね。 まるで異世界に迷い込んだような不思議な風景が楽しいです。 ダイナミックで美しくてかっこいいですけど、同時に自然の力がすごすぎて観光客も危険な目に遭います。観光客のための注意書きの内容が恐ろしいです。 どういう形…

  • 『59歳、最後の貯めどき 70歳までに貯金1000万円』青沼貴子 バンブーコミックス すくパラセレクション 感想

    あらすじ・概要 漫画家、青沼貴子は老後に備えて貯金を始めた。生活の中での無駄遣いを減らしたり、つみたてNISAを始めたり。ファイナンシャルプランナーの資格も取って、大きく家計を見直すこととなる。 悲壮感出し過ぎず貯金を肯定していくエッセイ 59歳、老後を目前として貯金を始める話。 悲惨さはあまりなく、貯金を始めるなら何歳からでも遅くないという雰囲気なので楽しく読めました。 前々からしょっちゅうお弁当やお惣菜を買っていてエンゲル係数は大丈夫なのかと思っていましたが、やっぱり老後のことを考えるとそういう食事も減らすことになるんですね。著者は忙しいとか体調不良とかもあったので、外食やお弁当に頼ってい…

  • 『母を片付けたい 汚屋敷で育った私の自分育て直し』高嶋あがさ バンブーコミックス エッセイセレクション 感想

    あらすじ・概要 汚部屋住人でネグレクト、毒親の母を持った著者は過去を回想する。まともな食事ができず、その上自分に執着してくる母親をかわしたりなだめたりする人生だった。著者は自分の過去と向き合うことによって、親の価値観から解放され、自分の人生を生き直す。 母親がやばかった過去から脱却したい 汚部屋住人でネグレクトで毒親な母親との関係を見直し、自分を大切にする人生を歩みなおそうとする話。 片づけられないのはまだしも、不潔を伴う汚部屋ってきついよなあ……と思いながら読んでいました。 ゴキブリやネズミの話も出てくるのがえぐいですね。私はこういう汚い話割と大丈夫なのでいいですが。 親は変わらないというか…

  • 『雲のように風のように』見た 天真爛漫な少女が後宮の正妃になり国の興亡を見る

    あらすじ・概要 中華風の世界。田舎の少女銀河は勉強ができて三食昼寝付きといううたい文句につられて後宮に入る。個性豊かな少女たちと、謎の人物コリューンに囲まれ後宮の学校を終えた銀河は、なぜか正妃に選ばれてしまう。同時に、この国に滅びの足音が近づいてきていた。 美しくも諸行無常な中華ファンタジー 原作の方を先に読んでいるのでオチは知っていましたが、アニメで見ても諸行無常だなあと感じる映画でした。 田舎から宮女を目指してやってきた銀河は、そこで宮女としての教育を受けます。天真爛漫で聡い銀河は皇帝に認められ、はからずも正妃になります。 銀河と皇帝とのラブロマンスはいとおしくかわいらしいと同時に、結末は…

  • 『新装版 旅のグ』グレゴリ青山 全2巻 ちくま文庫 感想 倫理なくて心配になるバックパッカーエッセイ

    あらすじ・概要 漫画家のグレゴリ青山はバックパッカーだった。アジアを旅行した記憶や、他のバックパッカーが体験した話を漫画にして紹介していく。中国やインドの文化、バックパッカー同士の人間関係などをせきららに、面白おかしく描く。 バックパッカーの倫理が悪くて心配になる 面白かったけど旅先で行った軽犯罪がしれっと出てくるので倫理観はやばかったです。今Twitterに載せたら絶対炎上する内容です。「旅行人」というバックパッカー雑誌に載っていた漫画らしいですけど、こんな漫画を堂々と載せる雑誌も一体……。 具体的には旅先でキセルしたりものを盗んだりする話が出てくるんですよね。 バックパッカーは旅先で嫌われ…

  • 『十二支とネズミとはぐれ猫』ぬら次郎 星海社コミックス 感想

    あらすじ・概要 十二支のネズミは猫に恋をしている。ネズミは、かつて猫を騙した過去があり、そのことで猫に恨まれているのだと思っていた。猫に恋するネズミは猫と仲直りがしたいと望むが、他の十二支と話し合ううちに、だんだん自分たちの関係はそれだけが問題ではないとわかってきた。 人外ラブコメディからシリアス展開に 人外キャラしか出てきませんが、「肉食獣はエロい」みたいな人間同士にはあまり発生しない話題が発生するのが面白かったです。 この世界で異種恋愛ってどのくらいの性癖なのでしょうか……。 序盤はネズミと猫のラブコメディですが、だんだんこの世界の不穏さがわかってきます。 十二支たちは神様にした「お願い」…

  • 『ハイウイング・ストロール』小川一水 ハヤカワ文庫 感想

    あらすじ・概要 不良少年、リオはショーカと呼ばれる浮獣のハンターとなる。ジェンカというショーカの後席となり、彼女のサポートをするようになった。強くなりたい、ジェンカの隣にいたいと思ううちに、リオは世界の秘密に触れることとなる。 設定は独特だが単純に楽しめるエンタメ 飛行機に乗って異形の生き物を狩る話。ハラハラドキドキする空戦シーンがかっこよかったです。私は飛行機のことは詳しくないですが、それでも楽しめました。 著者が「MMORPGみたいな作品が書きたかった」と述べている通り、モンスターを倒して装備を強化して、また出撃していく話です。設定は特殊だけど話の構造は単純なので読みやすかったです。 キャ…

  • 『アフリカ・レポート:壊れる国、生きる人々』松本仁一 岩波新書 感想 混沌のアフリカに必要なものとは

    あらすじ・概要 アフリカはなぜ貧しいままなのか。ジンバブエ、南アフリカなどのアフリカの国々を取り上げ、その政情や経済の混乱の理由を説明する。独裁や汚職が横行するアフリカでは、人々の心も荒んでいく。今のアフリカには一体何が必要なのだろうか。 汚職と独裁で社会の信用が失われていく つらい話が多い本でした。 汚職や独裁が日常になってしまったアフリカでは、「国のために何かしよう」という価値観が失われてしまっています。政府高官は国の低迷を「植民地支配のせいだ」と言いますが、過去の植民地支配の影響から脱却することは考えていません。私腹を肥やし、支配することばかり考えています。 上の人間がそんな調子なので一…

  • 『民主主義という不思議な仕組み』佐々木毅 ちくまプリマ―新書 感想 民衆は政治のためにどう関わっていくべきか

    あらすじ・概要 日本では当たり前のものとなっている民主主義。しかし、そこには重層的な問題がある。民主主義の各国の歴史や、民主主義における矛盾や欠点を述べつつ、これからの民主主義を考える。選挙や代議士ありきではない、能動的な政治の在り方とは何なのか。 選挙や代議士だけではない民主主義 正直わかりづらいところもありましたが、民主主義にはさまざまな限界があり、それをなんとかするには民衆の力が必要なのだなと思いました。 さかのぼれば古代ギリシャからある民主制は、アメリカやイギリス、フランスなのでも現れ、「選挙で政治家を選ぶ民衆」が現れます。しかし、それでよかったねとはなりませんでした。 国会議員を市民…

  • 『格安物件の大家とワケあり住人たち』たかはし志貴 本当にあった笑える話 感想 訳あり店子に振り回されたりいい話があったり

    あらすじ・概要 著者の母は格安物件の大家をしている。格安物件なだけあって、訳ありな住人たちが多く、彼女は振り回されっぱなしである。住民たちとのへんてこなトラブルを主に、部屋を借りるときに気をつけたいこと、不動産を買うときに気をつけたいことなども描いたコメディコミックエッセイ。 ありえないトラブルを描きつつ露悪的すぎなくてよかった 露悪的すぎる話だったら悲しいなと思っていたんですが、読んでみたら人情味のある話題もありそんなに苦しくならずに読めました。 大家である著者の母が何だかんだ住民たちのことを気遣い思っているところがよかったです。それが裏切られることも多々あるのですが。 この方のアパートは、…

  • 『森と山と川でたどるドイツ史』池上俊一 岩波ジュニア新書 感想 自然や地理から見るドイツ史

    あらすじ・概要 ヨーロッパの国、ドイツ。ドイツの歴史を追っていくと、森や山や川など、自然から大きな影響を受けていることがわかる。森の恵みを得て生活し、川から商業が発展し、山に畏敬を感じる。自然崇拝からドイツの文化、歴史を探っていく新書。 ドイツ人の自然崇拝からドイツ史を考える ドイツ人といえば合理的、ものづくりが得意という印象がありますが、その印象を覆す本でした。 ドイツの歴史には森や山や川などの地形が大きく関係しています。森からの恵みを得たり、川沿いに移動をして商売をしたり。ドイツの古代から現代まで歴史と地形の関係を紹介していきます。 また、この本はドイツの自然崇拝について語っています。 た…

  • 『呪術廻戦』芥見下々 ジャンプコミックスDIGITAL 感想 先進的だけど倫理のない漫画だった

    あらすじ・概要 虎杖は、呪いの王、両面宿儺の指を食らったことから呪術師たちの戦いに巻き込まれる。呪術師立の学校呪術高専に入学し、そこで呪術師としての訓練を受けた。しかし宿儺を復活させようとする呪霊たちや、虎杖を危険視する呪術師の派閥とも対峙せざるを得なくなる。 倫理があるんだかないんだかわからない漫画 ジャンプ漫画にしてはフェミニズムに対して積極的であり、現代社会におけるジェンダーの問題をよく描いています。 その極みは禪院真希・真衣の双子でしょう。 呪力がないが高い身体能力がある真希は古い価値観の実家を変えるために家を飛び出しますが、残された真衣には呪術師の才能がなく、辛酸をなめ続けることとな…

  • 『エンジニアのための見積もり実践入門』親方Project 技術の泉シリーズ 感想

    あらすじ・概要 人から仕事を受ける上で「どのくらいの規模の仕事なのか、予算はいくらかかるのか」考える「見積もり」。編者をはじめとして、エンジニアたちが「自分にとっての見積もり」について語る。いい見積もり、悪い見積もりを考えることによって、働き方ももっとよくなる。 エンジニアたちの見積もり談義から仕事を考える 商業化された複数人による同人誌なので内容に一貫性がないところもありますが、人々の多様な見積もり事情が見られて面白かったです。 見積もりに対して自分はこうしているという具体的内容、炎上案件の体験談、実際に取ってみたアンケートなど、盛りだくさんでした。 私は技術者ではないですが、「仕事にどのく…

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