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大橋むつおのブログ
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2015/01/11

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  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・072『大晦日の奇跡』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記072『大晦日の奇跡』嫌々待っても同じなので家の前を掃除する。家の前は少しだけ世界が広い。道路を挟んで寿川があるから、そのぶん空間が広いんだ。川の向こう側を合わせると15メートルほど。15メートルというのは学校のプールの横幅と同じ。その少し広い空間に身を置いていると、家の中に居るよりも健康的。それに、掃除をしているとアグレッシブになれる。体を動かすから、それだけで元気になれる。元気になれば、クソババアが来てもポテンシャルが高くて耐性が高くなる。まあ、女子高生のチンケな耐性なんか、あのリベラルモンスターの前じゃ知れたものなんだけど、家の中でモンモンとしてるよりはマシ。宅配の車が二台通って、今度も宅配かと思ったらタクシー。で、タクシーから出てきたのが……クソババア……なん...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・072『大晦日の奇跡』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第36話《ボンヤリの功罪》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第36話《ボンヤリの功罪》さつき後期試験も終わったせいか、学食で列に並んだり、駅のホームで電車を待ったり、横断歩道で信号待ちのほんの数十秒間でも、ついボンヤリしてしまう。去年は色々あった。バイト仲間の秋元君や聡子ちゃん、修学院演劇部OBの島田さん、作家の大橋さん、妹のさくら、年末のっそりと帰ってきたソーニィ……程度の差はあるけど、みんな人生の曲がり角、あるいはステップアップの位置に付いている。犬養のおいちゃんのお葬式では「自転車に乗ったら世界が変わる」というおいちゃんの言葉を思い出した。おいちゃんに稽古つけてもらって自転車に乗れるようになって、駅の向こう側にも行くようになった。豪徳寺に住みながら一度も行ったことが無かった豪徳寺にも行った。半径二キロくらいのところを探検しまくって...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第36話《ボンヤリの功罪》

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・071『お祖母ちゃんの大掃除』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記071『お祖母ちゃんの大掃除』ええ、なんでえ!?リビングに下りてびっくりした。お祖母ちゃんが大掃除をやっている!床やらテーブルやら棚やらにオキッパになっていたガラクタだか呪物だか分からないものやら、読みかけの雑誌や魔導書やら、畳んだだけでほったらかしのネット通販の段ボールやらがまとめられ、何カ月ぶり、何年かぶりで現れた床とかを。一生懸命掃除機かけてる!「あ、遮音にしといたんだけど、二階にも聞こえた(^_^;)?」「いま気づいたとこぉ」魔法少女は魔女とは違うけど、魔法を使うんで、いろんなアイテムやら呪物が家中にある。たまに片づけというか、アイテムの配置換えをやる。お客さま、特に人間のお客さまがある時は、掃除めいたこともやるんだけど、魔法を使って一瞬でやってしまう。それが...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・071『お祖母ちゃんの大掃除』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第35話《さくら女優になる》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第35話《さくら女優になる》さくら一機のゼロ戦がグラマンに追いかけ回されている。そこに、お寺の鐘が一発ゴ~ンと鳴り、グラマンが墜ちていく。おお!お寺の鐘がグラマンを墜とした……みたいに見える。カットバックで、お寺の鐘が金属供出で運び出される供養。お寺の鐘は、その撞き収めだった。そして、上空では、グラマンを仕留めた別のゼロ戦が雲の中から出てきて、お寺の鐘が墜としたわけではないと知れる。墜としたゼロ戦は仲間を気遣って助けたゼロ戦に寄り添っていく。パチパチパチパチパチパチ!!供養に集まった村人や疎開児童たちは、引き下ろされる鐘よりもゼロ戦に目がいって、大拍手。一人涙にくれる住職の池島潤慶。その肩をそっと叩いて慰める池島潤子……つまり、わたし!エキストラの演技がよかったので、池島潤子は...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第35話《さくら女優になる》

  • 銀河太平記・197『お岩食堂のレトロテレビ』

    銀河太平記・197『お岩食堂のレトロテレビ』お岩中華メニューを始めたら妙なことになった。いや、なにね、漢明が占領を解いて、軍人を引き上げさせ、代わりに連絡員を置いて行った。ほんの10人前後なんで、食事とかはレプリケーターで済ませているんだ。レプリケーターは、メニューを選んでボタンを押したら10秒で大昔のレンジみたいな「チン」の音をさてご飯もおかずも出てくる。古い日本語では食餌合成機っていうんだよ。「え、食事じゃねえのか?」最近漢字を覚え始めたハナが指を立てる。「ううん、食餌さ」「それって、大昔の病院のご飯のことだよね」さすがにメグミは知っている。「ええ、餌(えさ)なのかよぉ(^_^;)」「だからさ、中華メニューも作ったんじゃないか。あ、そっちのテーブルもカタしといて」「ええ、もう巫女服着てんだけどぉ」「エ...銀河太平記・197『お岩食堂のレトロテレビ』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第34話《覚悟はできていますか!?》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第34話《覚悟はできていますか!?》さくら次は映画の撮影だ!東京郊外の原っぱまで事務所の車はぶっ飛ばした。「『蒼空のゼロ』って映画。主人公がゼロ戦に載って特攻に行くシーンだ。さくらはヒロインのクラスメートの女学生。飛行場で飛び立つ主人公を見送るモブシーン。さくらはヒロインの横で涙しながら見送るだけ。一応台本もらったから、シーンのとこ読んどけ」ヒロイン役の等々力あやめ(とどろきあやめ)さんの横だ。わたしは緊張して台本を読んだ。自分は台詞が無いので、人の台詞とト書きをきっちり読んだ。きっちり過ぎるほどに。ロケ現場は、R大学が手放した建設予定地。更地の半分に航空隊と滑走路のセット。ダミーのゼロ戦が三機停まっている。ロケバスの前が、エキストラのメイクと衣装のコーナーになっている。「ああ...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第34話《覚悟はできていますか!?》

  • RE・かの世界この世界:222『タングリス復活』

    RE・かの世界この世界222『タングリス復活』テル「ここではまずいぞ」ヒルデが眉を寄せた。もっともだ。イザナミさんが居る玄室は、まだ少し距離があるというものの、一本道の羨道を挟んでいるだけだ。カテンの森でトール元帥の非常食になってから、タングリスは骨と皮だけになってタングニョ-ストの背嚢に詰められたままだ。彼女の記憶はカテンの森で途切れている。ここは、カテンの森があった『かの世界』ではない。新旧入り混じりながら、新しく生まれた神話の日本、それも生者の立ち入りが許されない幽世。それも、イザナミさんを取り戻せるかどうかの瀬戸際なんだ。ここで、復活し終えたタングリスが出てきても事態を理解できずに混乱するだけだろう。イザナギ:「いやあ、目出度いではありませんか。妻の玄室を目前にしてタングリスさんが蘇る、まさに吉兆...RE・かの世界この世界:222『タングリス復活』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第33話《事務所を通してください》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第33話《事務所を通してください》さくら「事務所を通してください」もう三度目。チュウクンに言われたように応えた。素人考えでスマホの番号は変えようと思っていたけど、変えてもすぐに分かってしまうと言われた。まあ、一過性のお祭りみたいなものだろうしね。学校や友だちの間でもプロモに出たことは話題にしなかった。まくさと恵里奈は黙っていてくれたし。鈴奈(りんな)先輩も事務所から、わたしのことは言ってはいけないと言われているようで、学校で顔を合わせても完全にシカトしてくれている。しかし、元々が渋谷での騒ぎにあたしがオッサンを応援したことが始まりなので、あの騒ぎ自体はスマホで撮った人が大勢いる。中にはSNSに投稿した人もいて、その中にハイテンションになっているあたしが写りこんでいるものもあり、...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第33話《事務所を通してください》

  • くノ一その一今のうち・91『敵の心意気』

    くノ一その一今のうち91『敵の心意気』そのいち機甲部隊の生き残りを確認する。ほぼ壊滅させたと思うんだけど、実際にこの目で見ておきたい。敵味方にかかわらず、状況をハッキリつかんでおくことが忍びの基本だ。街の西部、皇居で言うと半蔵門あたり。城郭都市から張り出すような一画がある。半蔵門で例えれば警視庁、おそらくは外周警備本部。その車だまりの屋根裏に身を潜める。『……銃撃の痕はわずかです、衝突やこすった傷ばかりですね』えいちゃんが先に分析。敵の混乱は、上空から投げつけられた風魔流癇癪玉(めちゃくちゃ煙が出る)と、ちょうどタイミングよくアデリヤ王女が逃走しながら車載機銃を撃ってくれた合わせ技によるものだ。『僥倖だったようですね』「ギョウコウ?」『偶然が重なってうまくいったということです』「あ、そか」えいちゃんは昭和...くノ一その一今のうち・91『敵の心意気』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第32話《バレたプロモ》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第32話《バレたプロモ》さくら豪徳寺の改札を出ると、デミーズの前にチュウクンが居る。視界の端っこに映ってるだけだからシカト。今月の五日に、チュウクンが元華族の四ノ宮忠八と分かってからは敬遠しているんだ。チュウクンとは、そもそもの出会いからして良くなかった。通学途中で、こともあろうに、この元華族の坊っちゃんは、水道工事のガードマン。電柱三本前ぐらいから目が合っちゃって、緊張したチュウクンの指示棒が、わたしのスカートをひっかけて、その姿を後ろを歩いていたニイチャンに撮られてネットで流されて以来の縁。盗撮の犯人を捕まえてくれて、少し仲良くなりかけたんだけど、シッカリしてるんだかボンヤリしてるんだか分からない性格。そこへもってきて元華族の坊っちゃんが、ガードマンのバイトやってて、女子高...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第32話《バレたプロモ》

  • 鳴かぬなら 信長転生記 158『時間よ止れ君は美しい・2』

    鳴かぬなら信長転生記158『時間よ止れ君は美しい・2』信長西安の北を迂回する。兵馬俑の軍勢は西安の南をかすめて戻って来ると予想したからだ。兵馬俑の遺跡は西安の北東に位置するが、大方の街道は西安の南を走っているからだ。書籍範老人に聞いても「古来、中原の軍勢は西安の南を通ります」と言っていた。兵馬俑どもも我々に害意が無いことは分かっているだろうが、これ以上の接触は避けたい。始皇帝は、玉門関からこちらの騒動を敵襲認定して兵馬俑の軍勢と共に出撃したのだ。すでに騒動は収まっている。なにも無ければ、そのまま南の街道を通って戻って来る。北に迂回すれば出くわすこともないはずだ。だが、出くわしてしまった。「混乱してるっぽい、ブヒ!」「本陣ががら空きッパ!」兵馬俑の軍勢は本陣の馬車と、僅かな馬周りの騎兵を残しているのみだ。「...鳴かぬなら信長転生記158『時間よ止れ君は美しい・2』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第31話《プロモデビュー》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第31話《プロモデビュー》さくら降って湧いたとは、このことだ!「プロモのモデルになって欲しいんだけど」オノダプロの吾妻という名刺を出しながら、そのオジサンが言った。まくさと恵里奈は、下の部屋で待ってくれている。「今度、あたしたち『おもいろシャウト』って曲出すんだけどね、そのプロモに出て欲しいの。さっき駅前でオジサンとオネエサンがもめてたでしょ。それを吾妻さんが見てて、あの子いいねえってことになったの。で、見たら去年、学校で飛び降りようとした子(白石優奈)を助けた子じゃん。それで、同学のよしみで、あたしが声をかけに行ったの」「むろんメインは、鈴奈たち『おもいろタンポポ』だけど、カットバックで、君がシャウトしてるところを入れたいんだ。まあ、アクセントのカットバックなんだけどね」「あ...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第31話《プロモデビュー》

  • 3『知井子の悩み』

    魔法少女なんかじゃないぞこれでも悪魔だこ小悪魔だけどな(≧ヘ≦)!3『知井子の悩み』これは旧作『小悪魔マユ』を改作したものです黒板の前、知井子が頬を赤く染めてピョンピョン跳びはねてやがる。べつに、嬉しいことがあってハイテンションになっているわけじゃねえ。今日の知井子は日直で、授業が終わったあとの黒板を消してるんだ。と言っても黒板が消えるわけじゃねえ。正確には、黒板にチョークで書かれた文字や図を消してるんだ。英語ではerasetheblackboardっていう。eraseという言葉そのものが「文字などを拭い消す」っていう意味。黒板そのものを消すという魔法のような意味はねえ。カタカナで書くとイレイズな。消しゴムなんかイレイザーだからな。イギリスじゃイレイザ。なんか魔女の名前みてえでかっこいいと思うぞ。「あら、...3『知井子の悩み』

  • やくもあやかし物語2・022『戦い済んで・2』

    やくもあやかし物語2022『戦い済んで・2』森の女王ティターニアは、ゆっくりと羽をはためかせ、地上50センチくらいのところでホバリングしている。50センチなら、地面に下りて来ればいいと思うんだけど、この50センチは、女王としての威厳を示すものかもしれない。それに、森林浴をしてるみたいにリラックスのオーラが、その羽ばたきで出てるような気もする。「デラシネの件ではお世話になった。お礼を言うわ」「い、いえ、お役に立ったのなら幸いです(^_^;)」50センチの威力に、神社にお参りした時の感覚でお辞儀してしまう。「フフフ……さすが極東の島国の子ねぇ、奥ゆかしいわ」「ハイジはちがうぞ」「そうね、アーデルハイドとコーネリアは、わたしたちに似た感じね」「あ、申し遅れました。プロイセンの森の住人コーネリア・ナサニエルです(...やくもあやかし物語2・022『戦い済んで・2』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第30話《これでいいのか あたしの青春?》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第30話《これでいいのかあたしの青春?》さくらその項目でシャーペンが止まってしまった。今日のホームルームは高校の一年間を振り返っての意識調査だ。授業内容、好きな教科、食堂のメニューで好きなもの。盛りだくさんの項目があって、最後の項目でシャーペンが止まってしまったのだ。☆あるとしたら、あなたの生き甲斐・目標はなんですか(例:部活とか)人生の目標……(;-ω-)ウーン?十六歳までは帝都女学院に入ることだったし、入ったことで満足していた。でも、学校生活に満足してしまうと……何もない(-△-)。親友の佐久間まくさは茶道部。うちの茶道部は裏千家と表千家の両方がある。まくさは裏千家の方だ。カンニングすると「お茶の師範になること」と書いている。根性入ってるなあ……。山口恵里奈は、バレ-ボール...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第30話《これでいいのかあたしの青春?》

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・070『いよいよクリスマスイブの集い』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記070『いよいよクリスマスイブの集い』フォークの集いはテスト休みの日にもやった。「連続してやらないと、肝心の本番で尻すぼみになってしまうからね」真知子はえらい。昨日は、佳奈子がバレーの試合で抜けたけど、代わりに4組の子たち三人。他のクラスが四人。うちのクラスからも委員長の高峰君も来てくれて、こじんまりだったけど、充実してた。「そこじゃ寒いでしょー、良かったらこっちおいでよー!」天の声かと思ったら、三階の音楽室から声がかかる。一瞬だれだか分からないんだけども、ロコが「あ、峰岸先生ぇ!」と友だちのように手を振って、音楽の先生だと知れる。「アハハ、みんな頬っぺた真っ赤っか(´艸`)」音楽教室に入った途端、みんな赤頬のトナカイ。眼鏡の子が二人いて、その子たちは眼鏡も曇って、高...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・070『いよいよクリスマスイブの集い』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第29話《成人式と蝉の抜け殻》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第29話《成人式と蝉の抜け殻》さつき来年の成人式には出ないだろうと思った。去年の成人式は大荒れだった。暴走族が早くから集結し、式の最中に舞台に上がってメチャクチャにしたらしい。成人式は終戦直後、荒廃した日本の社会に成人として羽ばたいていく若者たちに、せめてものはなむけにと始まったものだ。今は、ただ慣例化して行われているルーチンワークのようなセレモニーにすぎないしね。それに、あの晴れ着というのは落ち着かない。大の大人が七五三やってるみたいだし。七五三の写真は、仏頂面で写ってる。あくる年に撮ったさくらのは、かわいく写ってる。あんまり「可愛い可愛い(^▽^)」と言われてるし「子どもの頃に可愛いやつは、大きくなったらブスになるよ」と言って泣かしてやった。犬養のおいちゃん、中学に入ったこ...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第29話《成人式と蝉の抜け殻》

  • 銀河太平記・196『お岩とフーちゃんと』

    銀河太平記・196『お岩とフーちゃんと』お岩好意的に受け止める者ばかりじゃなかったさ。ほら、島の南端の氷室神社に漢明占領軍の新しい広報官がやってきた。胡盛媛(フーションユェン)、去年の戦争で戦死した胡盛徳大佐の娘さん。着任すると、すぐに氷室神社にお参りに来てくれて孫大人と仲良くなった。氷室神社は、休戦中とはいえ敵の神さま。お参りすることを良く思わない漢明人も多いさ。「でも、漢明というか中華文化の宗教観は多神教で、土地の神さまを大事にするんです。だから、ぜんぜん普通のことなんですよ」お参りのついでに境内を掃除してくれているフーちゃん。あ、盛媛(ションユェン)というのは言いにくいし愛称としての省略形も思い浮かばないんで、苗字の方で胡(フーちゃん)と呼んでる。「そーお、でも、フーちゃんも軍人さんなんだから、無理...銀河太平記・196『お岩とフーちゃんと』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第28話《やっと今年の幕が上がった》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第28話《やっと今年の幕が上がった》さつき――羽田第二旅客ターミナル、12時に待つ――正月明けの休み、島田さんからメールがあった一方的だなあ……そう思いながら足が向いてしまうから、我ながらよく分からない女だ。はっきり言おう。「お付き合いはできません」あの、大晦日の再会と、強引な交際の申込み、元カノを目の前で切った合理的過ぎるやり方。バイトを理由に、その場を離れることで意思表示したつもりだ。あれから一週間以上になる。そこに、このメールだ。はっきりさせよう。「おう、飯食おうぜ!」あたしが見つける前に、ゲート前に手と声の両方があがった。あたしも、朝はトースト一枚だったので、フテた顔をしながらも九州ラーメンの店を提案した。予想通り、ズルズル~!ツルツル~!の合唱が店の中に満ちていた。そ...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第28話《やっと今年の幕が上がった》

  • RE・かの世界この世界:221『羨道を前にして』

    RE・かの世界この世界221『羨道を前にして』テル先遣隊・中継隊・ベースキャンプ隊の三つに分かれた。先遣隊――イザナギヒルデタングニョ-ストテル中継隊――ケイト与一桃太郎二号ベースキャンプ隊――ヨネコ雪舟ねずみ先遣隊もイザナミさんの気配がしたら、その場で待機する。イザナミさんや黄泉の神々と話すのは、神であり夫であるイザナギ殿一人でなくてはならない。本当ならば、イザナギ殿以外は黄泉の岩戸そのものに踏み込むべきではないだろう。イザナギ・イザナミお二人で約束されたことであり、幽世の国にはどのような穢れが潜んでいるか分かったものではない。穢れを払うのは神の身としても大変なことで、まして人の身では相当な負担になる。帰りを考えると、ここで無理をすべきではないと思う。「この先、通路が狭くなっています」篝を持って先頭を進...RE・かの世界この世界:221『羨道を前にして』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第27話《話は遡るけど白石優奈って覚えてる?》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第27話《話は遡るけど白石優奈って覚えてる?》さくら話しは遡るけど、白石優奈って覚えてる?ほら、去年、終業式の日の大掃除で屋上から飛び降りようとして、わたしが救けた子。自分のことを熊野の八百比丘尼だと言っている、ちょっと電波な子。八百比丘尼って、人魚の肉を食べて永遠の若さと命を授かってるんだ。だけど、近ごろは永遠の命はともかく、若さの方は衰えるようになってきて、来たるべき日に備え、時どき肉体を更新しなければならない。わたしと話したことで、なんだか活性化したみたいで、肉体の更新は思いとどまってくれたのが、ついこないだのこと。その白石優奈からメールが来た。――学校のカフェテリアで待ってる――「どう、元気してる?」「うん、おかげでね。ちょっと待ってて……」南側のテーブルに着くと、優奈...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第27話《話は遡るけど白石優奈って覚えてる?》

  • くノ一その一今のうち・90『潜入城塞都市』

    くノ一その一今のうち90『潜入城塞都市』そのいち日干し煉瓦の家や店舗、少しは鉄筋らしいのも混じっているけど、ちょっと見すぼらしい。しかし、商業地区らしい活気はあって、道路というか通路というかは微妙にうねっていて、でたらめに紐やら電線やらケーブルやらに商品や看板や洗濯物をぶら下げられ、道路というか通路というかには商品やゴミ袋が我がままに場所を占め、年末特番の障害物競走をやるのにいいロケーション。住民や買い物客は慣れていて、よそ見したりお喋りしながら行きかっている。お祖母ちゃんが子どもの頃、曽祖母ちゃんの手伝いで走り回っていた闇市というのは、こんな感じだったのかもしれない。『区角割りされてるようですね……』スカーフに化けたえいちゃんが耳もとで呟く。高さ3mほどの壁が家や店の間から覗いている。壁のところまで行っ...くノ一その一今のうち・90『潜入城塞都市』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第26話《まだやってこない新年》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第26話《まだやってこない新年》さつき大晦日はショックなことが二つあった。一つは、ご贔屓の服部八重のAKPの卒業。いろんな意味でショック。個人的には同年配に属するAKPは好きだ。あたしの思春期の時代とも重なり、人並みのファンであるという自認もある。他のメンバーよりも服部八重は矢藤萌と並んでAKBの大黒柱。卒業はショックだったけど、そろそろという気持ちはあった。でも、あの発表はないと思う。AKPのイベントならともかく、紅白という国民的行事、その出演者の一人に過ぎない八重の個人的な卒業は発表すべきではない。おかげで二輪明治さんの出演後のインタビューも吹っ飛んでしまったし、そのあとの大御所西島三郎さんの五十回目にして最後の出演が霞んでしまった。AKPって、いつの間に「わがままな子」の...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第26話《まだやってこない新年》

  • 鳴かぬなら 信長転生記 157『時計を合わせる』

    鳴かぬなら信長転生記157『時計を合わせる』謙信御注進ーーーーーーーーーん!念のために出しておいた物見がもどってきた。「申し上げます。お屋形様ご指示の通り丑寅の方角を探ってまいりましたが、兵馬俑一万余は長城の手前二キロの地点で方角を変えて東進しております」「馬の脚は?」「はい、半ば以上は歩兵でありますので、並足であります」「時速5、6キロというところか。歩兵が半ば以上ならいつまでも出せる速度ではない、途中で休憩を入れる……とすると、一時間後の敵の位置は……」砂上に地図を広げさせて、兵馬俑どもの動きを予想する。上杉の最精鋭とは言え、たかだかニ十騎。正面からの攻撃はあり得ない……と、敵も味方も思っている。情報から敵の一時間後の位置を推定、トンと石を置き、東西南北から石に向かって矢印を入れる。「二時間後、四方か...鳴かぬなら信長転生記157『時計を合わせる』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第25話《え、うそ……!?》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第25話《え、うそ……!?》さくら歳のわりに『なごり雪』が好きだ。東京で見る雪は最後ねとさみしそうにきみが呟く……なんてフレーズはたまらない。歌い出しのとこも好き。汽車を待つ君の横でぼくは時計を気にしてる季節はずれの雪が降ってる……『なまり歌』の鹿児島弁バージョンを聞きながら、兄貴と明菜さんの品川の別れの写真を見ている。アツアツで入れたココアがすっかり温くなって、薄い膜が張っている。あたしは、なんとか写真から恋人同士の別れの情感を汲み取ろうとしたんだけど、数十枚撮ったどれを見ても、情感の情の字もない。さみしそうに呟くこともなく、時計も気にしない。「さようなら」がこわくて俯くこともなくヘラヘラする兄貴。なんとも絵にならない。どう見ても、いつも出会っている知り合い同士の何気ない会話...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第25話《え、うそ……!?》

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・069『演劇部の大発明』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記069『演劇部の大発明』令和の時代から昭和の宮之森高校に通ってる。多少の問題はあった、学校のトイレがみんな和式で音姫も付いてないとかね。体育の時間はブルマだとかね。むろん授業はつまらないけど、それは令和でも同じだから問題ない。狭い学校の付き合いだから断言はできないけど、人間はおもしろい。1970年は、前の年に学園紛争というのが完全に敗北。10円男に聞くと、主題は日米安保阻止だったとか。「ええ、なに言ってんの、安保無しでどうやって日本守るの?」「それは……」いろいろ十円男は言ったけど、ぜんぶタワゴト。やれ、革命だ!造反有理だ!国連だ!話し合いだ!共産主義だ!ゲバラだ!毛沢東だ!あ、面白かったのがゲバラ。10円男は「チェ!ゲバラ!」と、かならず名前の前に「チェ!」って言う...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・069『演劇部の大発明』

  • やくもあやかし物語2・021『戦い済んで・1』

    やくもあやかし物語2021『戦い済んで・1』ね、やって見せて!ソフィー先生が席を外すと、子どものような目をして王女さまが言う。「え、ここでですか!?」ネルが目を丸くする。わたしとネルとハイジは、デラシネをやっつけたので、その報告に王女殿下の部屋に呼ばれている。時々ソフィー先生が「跳んだ高さは?」とか「敵との距離は?」とか「命中率は?」とか専門的なことを聞いてタブレットに入力して、一通りまとまったんで司令室へ戻って行った。それで、それまで真面目に聞いていた王女さまは、自習時間に監督の先生が出て行った生徒みたいに精神年齢の下がった表情になってネルに言ったんだよ。耳をクルンチョと曲げて、手を使わずに耳の穴を塞ぐのを見せて欲しいって。ほら、デラシネとの戦いでやってたでしょ(019『デラシネの攻撃!』)、耳をクルっ...やくもあやかし物語2・021『戦い済んで・1』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第23話《惣一の元旦》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第24話《四日目のさくら》さくら二日と三日はグータラな正月だった。大晦日から元旦にかけては、恵里奈とまくさの三人で、初詣のハシゴをやって、家に帰ってからは一日寝ていた。夕方に起きてトイレに行ったら、兄貴を感じてしまった。便座に無防備で座っていたところを開けられたことじゃなく、便座の蓋がスーっとゆっくり閉まったときに――ああ、ソーニイが直したんだ。と、シミジミ感じた。夕方帰ってきた兄ちゃんは、パソコンで、なにやら調べていた。新幹線の時刻表と博多駅の構造を調べている様子だ。「博多にでもいくの?」「攻撃するためには、敵の情報を知るのが肝心だからな……」それ以上は機密という顔をしてしまったので、あたしは、後出し分の年賀状を書いた。友だちが少ないので年末に出したのは十枚ほどだったけど、三...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第23話《惣一の元旦》

  • 銀河太平記・195『広報係・胡盛媛中尉』

    銀河太平記・195『広報係・胡盛媛中尉』メグミ虫歯治療の為に麻酔をかけたらこんな感じだな。痛みは無いが、物言わぬ虫歯が地味にその存在を主張している。いや、腎臓結石をやって内視鏡カテーテルを突っ込まれた時の感じにも似ている。他人には言わないが、この孫悟兵、体のかなりの部分が生身だ。なによりも脳みそは、混じりけなしの100%自然のままアル。神社裏の崖から釣り糸を垂らすのが、ここのところのルーチンになりつつある。釣りはうまくない。義体やロボットなら、釣りのスキルをダウンロードすれば、並の名人程度には釣れる。生身だから、大いに連れる時もあれば、まるきりの坊主ということもある。そこが面白い。釣り糸を垂れながら、ボンヤリ思う。この戦の行方はどうなるんだ?全面戦争をやる気持ちは日本にも漢明にもない。たとえ勝利したとして...銀河太平記・195『広報係・胡盛媛中尉』

  • 魔法少女なんかじゃないぞ これでも悪魔だ こ 小悪魔だけどな(≧ヘ≦)! 2『るり子の新型スマホ』

    魔法少女なんかじゃないぞこれでも悪魔だこ小悪魔だけどな(≧ヘ≦)!2『るり子の新型スマホ』これは旧作『小悪魔マユ』を改作したものです「やあ、おはよう」今朝も門衛の田中さんが、いつものように挨拶してくれた。田中さんは元自衛官。五十五歳の定年で、この聖城女学院の門衛さんになった。だれに対してもキチンと顔を向け、目を見て挨拶してくれる。地獄の門番ケルベロスを連想する。もっともケルベロスは首が三つもあるので、大勢やってくる人間どもの顔を見逃すことはねえ。田中さんは、たった一人で、首も一つなのにケルベロスをやってのけているぞ。ウワサだけど、田中さんは千二百人いる生徒や教職員の顔と名前を全部覚えているらしいぜ。一度チャンスがあったら、ゆっくり話がしてみたいと、マユは思っているぞ。だけどな、マユは、転校というカタチで人...魔法少女なんかじゃないぞこれでも悪魔だこ小悪魔だけどな(≧ヘ≦)!2『るり子の新型スマホ』

  • RE・かの世界この世界:220『和を以て……敵中の作戦会議』

    RE・かの世界この世界220『和を以て……敵中の作戦会議』テル振り返ったイザナギ殿は、カッと目を見開いて一瞬で顔を赤くした。ブチギレる寸前の父、オーディンにソックリで、思わず腰を落としてしまった。ブチギレた父は、その直後には四方八方に憤怒の気を放射させ、接見の間であれ、宮殿の大広間であれ、麗しの神苑であれ、爆砕してしまう。そのために、ヴァルハラ(父の宮殿)に務める者や近侍の者は腰を落として、憤怒の気の爆発と共に後ろに跳び退る。むろん、憤怒爆散の速度に追いつける者は多くはない。慈悲と医療の女神エイルとその弟子たちは治療の為に三日は働きづめになった。わたしは四歳で爆散の速度に追いつけるようになったが、着ている服を保護するところまではいかず、十歳で――オヤジに呼ばれた時はボロを着ていく――という知恵が付いた。「...RE・かの世界この世界:220『和を以て……敵中の作戦会議』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第23話《惣一の元旦》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第23話《惣一の元旦》惣一思い立って明治神宮に行くことにした。豪徳寺からは小田急で駅六つ。参宮橋で降りればすぐそこだ。むろん初詣ではあるが、大げさに言うと、いろんな可能性を試してみたいという子供じみた気持ちからでもあった。逆に言うと、艦の不具合で急に与えられた休暇自体になにか運命めいたものを感じてもいたのかもしれない。なんの運命か……それは分からない。「さつき、今日はバイト休みなんだろ。いっしょに初詣行かないか」「お気遣いありがとう。でも、すぐ成人式だから、そのときに兼ねて行く」運命の一つが消えた。夕べ年越し蕎麦を食べているときに、さつきが見せた涙の訳を、それとなく聞いてやろうかと思ったが、どうやら見透かされている。何があったか分からないが、自分で解決するんだろう。オレがしゃし...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第23話《惣一の元旦》

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・068『10円男の伴奏とエーデルワイス』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記068『10円男の伴奏とエーデルワイス』ほほぉ……あ……なぁるほどぉ……そそ……その感じ……昇降口で履き替えて教室に向かっていると、中庭から声が聞こえる。テスト中でもあるし、普通ならそのまま通路通って北館の教室へいく。でも、このヒソヒソ声にロコと二人で立ち止まる。「「え(゚Д゚)!?」」ロコと二人声を上げてしまう。「おはよう、グッチ!ロコ!」ギター抱えて元気よく挨拶してくれる真知子。その横で、真っ赤になってる10円男。「おはぁ……(^△^;)」「こ、これはいったい……(;゚Д゚)?」「いやあ、加藤君がね、指使いとか教えてくれてぇ、言われた通りにやってみたら、自分じゃないみたいにきれいに弾けるのよぉ(^▽^)/」「あ、いや、ちょっと……惜しいなあって、いや、横田さんの見...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・068『10円男の伴奏とエーデルワイス』

  • くノ一その一今のうち・89『再び草原の国』

    くノ一その一今のうち89『再び草原の国』そのいち散らばった破片に見覚えがある。以前、米軍の輸送機で草原の国に潜入した時に戦った跡だ。破片の向こうに城壁が聳えている。大きい!以前来た時は、城外で戦っただけで、中に入ることはしなかった。あの時は月も半ば雲間に隠れ、城壁は篝のある正面がぼんやり浮かぶ程度で、その果てまでは見通せなかった。作戦の目的は王子の奪還であり、やっと奪い還した王子は猿飛佐助が化けていたものだった。正体を現した佐助と城外で戦った、その時の跡が片づけられることも無く、そのままになっている(32『王子を逃がす』33『猿飛佐助の陰謀』)あの戦いは、おそらくは時間稼ぎ。そして、鈴木豊臣家への警告。あるいはブラフ。すでに敵は高原の国への工作には失敗している。B国の同時多発の爆破には成功しているけど、機...くノ一その一今のうち・89『再び草原の国』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第22話《半舷上陸》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第22話《半舷上陸》惣一突然の半舷上陸になった。本来は、洋上で慣熟公試のため越年の予定だったが、機関室の装備配置が被弾時の緊急行動上欠陥があって、公試自体にも支障があることが分かり、急遽横須賀に戻り装備配置の変更工事をやることになった。その間、乗組員は五日ずつの半舷上陸が許された。わたしの乗艦は『いずも』の拡大型新鋭艦『あかぎ』だ。諸元は排水量26000トン、全長270メートル、最大幅42メートル、速力30ノット以上、全通甲板式の空母形護衛艦で、オスプレイ12機、対潜ヘリ8機搭載などの新鋭艦である。「班長は、どこで正月を?」砲雷科の杉野曹長が、ニヤニヤしながら聞いてきた。「どこって、世田谷の実家に帰るだけですよ」「そうですか、なかなかのおめかしなんで、別口かと思いましたよ」「あ...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第22話《半舷上陸》

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・067『フォークの集い始まる!』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記067『フォークの集い始まる!』――イブの集いに向けたフォークの集い♪――楠の枝に看板をぶら下げて15分間のミニライブ。花壇の縁に三人(真知子たみ子めぐり)が腰掛けて、向かいの池の縁にはロコと佳奈子。ロコと佳奈子はサクラだけどね。とおい~世界に~たびに~出ようかぁ~♪真知子が、あまりうまいとは思えないギターをつま弾いて、たみ子は元気に、他の三人は、ちょっぴり恥ずかしそうに歌いだす。中庭は北館と本館の間にあって、西に渡り廊下、東に通路があって、昇降口に行く生徒は必ず通る。三年生は南館なんで通る人はいないんだけど、三年には去年の学園紛争崩れのややこしいのもいるんで、積極的には誘わない態勢になってる。この広~い野原いっぱい咲く花~を~ひと~つのこ~らず~♪二曲目に入ると、数...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・067『フォークの集い始まる!』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 156『謙信と上杉四天王』

    鳴かぬなら信長転生記156『謙信と上杉四天王』謙信毘……沙……門……天……四つの合言葉が揃って、それでも十を数える。長城の破れ三か所から五騎ずつ、わたしが率いる五騎は遥か嘉峪関、長城の尽きるところまで疾駆させ、この砦跡に揃った。信長が妹の市と共に曹茶姫を三国志に送った。茶姫をかくまったままでは、茶姫の兄・曹操に難癖をつけられ、いずれ扶桑は三国志を相手に大戦をしなければならない。それを避けるため、信長は先手を打った。はるか玉門関から三国志に入り、三蔵法師の旅と偽って中原を目指している。途中で評判をとっておけば、魏・呉・蜀のいずれに入るにしても障害が少ない。狙いは悪くはない。多少の障害や困難なら、あの信長なら問題は無いだろう。しかし、三国志は広い。予期せぬ障害や抵抗に遭うことは十分に考えられる。二宮忠八に協力...鳴かぬなら信長転生記156『謙信と上杉四天王』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第21話《早朝のピンポン》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第21話《早朝のピンポン》さくらピンポ~ン連ドラの録画を観ていたら、リビングのドアホンが鳴った。「さくら、お願い」おせち料理の準備で手が離せないお母さんが背中で命令。「え……あ……うん」弟が急病で、ケンカ相手だったカレとの距離が一気に縮まる山場だったんだけど、リモコンをポーズにする。ちょうどカレが目を剥いて「言ってる場合かあ!」と叫んで大写し。日ごろのイケメンがすごく三枚目のストップモーションで笑いそうになりながらドアホンに出る。で、ピンポンの画面には、テレビの画面みたく忠八のドアップが映っていた。「篤子が@&%$#?@##@&%%!!?」なにか興奮しているようで、頭の篤子以外意味が分からない。仕方がないので玄関を開けた。「どうしたのよ、こんな朝から?」「篤子が腹痛で苦しんで、...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第21話《早朝のピンポン》

  • やくもあやかし物語2・020『デラシネの全力攻撃』

    やくもあやかし物語2020『デラシネの全力攻撃』散れ!ネルが両手を広げて叫んだ!わたしは左!ネルは右!ハイジは、いっしゅん迷って後ろに逃げた!真ん中に居たので、どっちへ行っていいか分からず逃げるしかなかったんだろう。仕方がない(-_-;)。「フフフ……目くらましのつもりか」ドラゴンの背に跨ったデラシネは不敵に笑うと、ドラゴンと共に空に飛んだ。「森は、わたしの庭のようなもの、チョロチョロ走り回っても居所は知れている……そこだ!」ビシ!!すぐ後ろ、木々の枝や葉っぱを貫いて電撃みたいなのが地面に突き刺さる。一年前のわたしだったら、悲鳴も上げられずにうずくまるか気絶してしまうかだったと思う。でも、いろんな妖たちと戦ったり、時には共通の敵から身を守ったりしてきたから、取りあえずは逃げられる。ビシ!離れたところに衝撃...やくもあやかし物語2・020『デラシネの全力攻撃』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第20話《あいつが近所に!?》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第20話《あいつが近所に!?》さくらノタァ……バシャバシャ前を走る自転車が急に減速したかと思うと、荷台の荷物をぶちまけ、呪われたように止まった!ブレーキを掛けたわけでもなく、なにか悪魔の手によって止められたかのようにノターっという感じで!ベスト豪徳寺の前、年末の買い物客でごった返している中で、この珍事が起こった。乗っている男の人も周囲の人も――ええ!?――という感じ。昨日、お姉ちゃんが渋谷で大橋むつおというお母さんの同業者を助けた話を思い出した。――助けてあげよう!――そう思って……ウ……惨状に目を落とす男の人の顔を見て気が変わった。なんと四ノ宮忠八だ。こいつとは、もう関わりになりたくない……と、思ったら目が合ってしまった(-_-;)。「しょうのない人ね!」そう言って、あたしは...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第20話《あいつが近所に!?》

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・066『例の許可がおりる』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記066『例の許可がおりる』アイ・マイ・ミー、三人の猫又が敵をやっつけた。奥宮駅の階段をオッサンとオネエサンが転げ落ちてきたのにはビックリしたんだけど、それは戦いの一部と言うか、ごく端っこのことで、決戦はガスタンクの中で行われた。ガスタンクが、一瞬盛り上がったのが、そのシルシらしいんだけど、ガスタンクが上下するのはいつものことだし、目の前でバトルが行われたわけでもないので実感はない。念のために学校まで付いて来てくれたけど、学校の制服着てるし、鼻歌歌いながらだったりするし、たった今何人何十人かの敵をぶちのめしてきたようには見えないから「クリスマスのあれ」「うまくいくと」「いいね!」三人で言ってくれたクリスマスイベントの事の方が気になった。おーーい(^▽^)/職員室前の廊下...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・066『例の許可がおりる』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第19話《大橋むつおとの邂逅》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第19話《大橋むつおとの邂逅》さつき諦めない好奇心。恋は一筋縄ではいかないもの。帰りの電車と寝る前の一時間チョットで『まどか乃木坂学院高校演劇部物語』は読み終えてしまった。ラノベらしく「アハハ」と笑っているうちに、主人公のまどかは乃木坂学院高校の演劇部を立て直し、友だちである大久保忠友クンが、タダトモから恋人になっていく大団円になる。読後感が爽やか。そして……。諦めない好奇心恋とは一筋縄ではいかないものこの二つを胸に刻ませてくれる。人生捨てたもんじゃないよね。アッと驚く奇跡がおこる♪ちょっと古いAKBの歌の中にあるような文句を、読み終わったら自然に思わせてくれる。世間は御用納めも済んだ二十八日。今日もバイトは早番だ。「人生捨てたもんじゃないかもね」「アッと驚く奇跡がおこるかも」...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第19話《大橋むつおとの邂逅》

  • 銀河太平記・194『作戦会議中断』

    銀河太平記・194『作戦会議中断』メグミ「困ったことに評判がいいんです」役人の頃の癖が抜けないのか、及川市長の言葉に深刻さは無い。「春の七草海山群というのは、21世紀日本が付けた名前なのですが、まるで海底にお花畑でもあるような名前なので、いかにも平和ニッポンというイメージです。むろん、日本の領海でも排他的経済水域でもありませんので、浮体構造の調査拠点を作ることに苦情は言えません」「七つあるうちの『ほとけのざ』にした狙いはなんだい?」お岩さんが身を乗り出す。「七草のうち、あそこが一番浅いんです。他の海山は水深1000mを超えますが、ほとけのざは120mしかありません」「狙いは、なんと言うとるんじゃ?」シゲ老人が神主服のまま手を挙げる。「パリス資源の調査と開発です」フフ作戦室に緩いせせら笑いが湧く。春の七草海...銀河太平記・194『作戦会議中断』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第18話《パス》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第18話《パス》さつき3Dビジョンの広告が新しくなったのに気付いてスマホを向ける。渋谷駅前の3Dビジョン広告は有名だ。猫が飛び出したり犬が飛び出したり、ほんとうにそこに居て、路上の自分を見ているよう。新しいのを動画でアップすると、すぐにアクセスが伸びる。特にアクセス稼ぎが目的じゃない、動画撮る人っていっぱいいるからね。どんな撮り方や編集をしたらアクセスが多いか。映画研究部としては、そっちの方に興味がある。ま、ちょっとしたカメラワークの勉強ですよ。「阿倍派議員のパーティー券のキックバックをどう思いますか?」いきなりマイクを突きつけられてびっくりした。油断していたら、こっちが撮られる側になっていた(^_^;)「え、ああ……安倍派以外とか野党でも同じことやってると思うんですけど。なん...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第18話《パス》

  • 魔法少女なんかじゃないぞ これでも悪魔だ こ 小悪魔だけどな(≧ヘ≦)! 1『お早うございます』

    魔法少女なんかじゃないぞこれでも悪魔だこ小悪魔だけどな(≧ヘ≦)!これは旧作『小悪魔マユ』を改作したものです1『お早うございます』校門をくぐると昇降口に着くまでの三十メートルほどが、ちょっとした森の小道みたいなアプローチになっている。「お早うございます」門衛のオジサンに、つものように朝の挨拶。「おはよう」自衛隊を定年退職した門衛の田中さんは、きちんと姿勢よく挨拶を返してくれる。まだ、生活指導の先生が立つのには早い時間なので気分がいい。一度ちょっとしたことで遅刻寸前に登校したことがあるんだけどな。コンビニの角を曲がったところから、生活指導の先生たちが、ブタを追い立てるようにセカせているのに出くわしてイヤな思いをした。オラァ!走れぇ!閉めるぞぉ!遅刻っ!オラオラ!字にすると、ちょっと下品というていどだけどな。...魔法少女なんかじゃないぞこれでも悪魔だこ小悪魔だけどな(≧ヘ≦)!1『お早うございます』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第16話《箱根温泉のクリスマス》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第17話《ドッペルゲンガー》さくら八畳の和室にお布団を三菱の形で並べてる。頭を間近に付き合わせての寝物語は次第に怪しの雰囲気。途中で絵里奈が北枕になっているのに気が付いたけど、黙ってる。話が佳境に入ってきたのと、口に出して言うと怖くなるから。「試合がフルセットまでいってヘゲヘゲの時に、相手のセッターの子がうちに見えてん……」「え……」「それって……」「それがなぁ……そのもう一人のうちがやるようにセットしてボール上げたら、後ろの子がバックアタック決めてくれて、きれいに勝ててん。あとでビデオ見たら、相手のセッターは全然違う動きしてた」「えと……」まくさは、どう受け止めていいか戸惑ってる感じ。「……その時の恵里奈って、瞬間的に未来の自分を見たのかもね」「未来の自分か……」「あ……うん...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第16話《箱根温泉のクリスマス》

  • RE・かの世界この世界:219『イザナギ踏み込む』

    RE・かの世界この世界219『イザナギ踏み込む』テルいい人たちばかりだ。元々はわたしの過失だ。もう少し慎重にやるべきだったんだ。国生み神生みは神聖で大事なものだ。それを若さに任せ、あまりに性急にいたしすぎた。わたしとイザナミは、この地上、人々が生きるに必要なものをすべて生み出す使命を与えられていた。むろん、辞令とかをもらって、研修期間があってというような悠長なものではない。ヤマトの国は萌え出る息吹に満ち満ちていた。わたしとイザナミは、その息吹を国生み神生みの交わいによって生きた形になすことであった。当然、やがては人の営みにとって欠くべからざる火、あるいは火の神を生むことは分かっていた。そのためには、うだつを立てるとか、ファイアーウォールを設けるとか、火災保険に入るとか……最低でも互いの体を不燃性にしてから...RE・かの世界この世界:219『イザナギ踏み込む』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第16話《箱根温泉のクリスマス》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第16話《箱根温泉のクリスマス》さくら「さくらぁ~、ゆでだこになってしまうでえ~」「う……うん……」恵里奈が言ったのに生返事したことは覚えていたけど、あたしは、それから二十分近く温泉に浸かっていた。温泉が、こんなに頭にいいとは思わなかった。頭にいいと言っても賢くなるわけではない。なにも考えなくてもいいんだ。うちのお風呂だと、その日にあったことや、明日のこと、ときにはとんでもない昔のことを思い出し、狭い湯船で身もだえすることもあるけど、温泉は頭が空っぽになる。考え事の多いあたしには、まさに極楽なんだ。最初は考えたんだよ。浴槽の真ん中に人魚姫の彫刻、それを見た瞬間に優奈も呼んでやればよかったかなぁってさ。でも、優奈って八百比丘尼だし、まくさと絵里奈に会わせるにはもうちょっと段取りが...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第16話《箱根温泉のクリスマス》

  • くノ一その一今のうち・88『立ちふさがる多田さん』

    くノ一その一今のうち88『立ちふさがる多田さん』そのいち「魔石との相性が良くなったようだね、そのちゃん」立ちふさがった多田さんは、まあやの付き人になったころの気安さで語り掛けてくる。「惜しいなあ……木下についていてくれたら、僕のようなロートルは、さっさと引退して里で子守でもしていられたんだけどね。魔石をそこまで使いこなすようになっては見過ごすことはできない」「どうしようと……」「そのちゃんを止めます」「どうやって」「やり方は色々だよ」「いろいろ」「うん」「ですか……」言葉少なに対応しながら多田さんの周囲を駆けまわる。魔石の力もあってレギュラーの数倍の速度が出ている。もし、多田さんが並みの視力なら、わたしの姿は五人以上に見えているはずだ。ビュンビュンビュビュンビュンビュンビュンビュン「おお、首が大きくなって...くノ一その一今のうち・88『立ちふさがる多田さん』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第15話《尾行》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第15話《尾行》さつき卒業から八ヵ月もたって、このナリになるとは思わなかった。いま、あたしは帝都女学院のセーラー服を着て渋谷の街を歩いている。話は、昨日に遡る。バイトのシフトが、あたしと秋元クンと聡子の三人が重なった。あたしは元々は入ってなかったんだけど、妹のさくらが学校の屋上から落ちたと連絡があって、先週の水曜日は途中から抜けてしまった。そのための穴埋めのために臨時で入って、偶然あれを見てしまった……。休憩中に聡子のスマホにメールが入ったんだ。バックヤードにいたので、その一角にある休憩室の気配はなんとなく分かる。イソイソとメールを読んでいるんだろう「ウフ」なんて声まで聞こえる。「サトちゃん、ちょっとー」本の整理のことで、店長が聡子を呼び出した。「ハーイ」休憩室から出てきた聡子...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第15話《尾行》

  • 鳴かぬなら 信長転生記 155『乙女と信玄モニターを見つめる』

    鳴かぬなら信長転生記155『乙女と信玄モニターを見つめる』忠八ピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッ……ピピピピピピピピピピピピ……天気予報のそれを兼ねたモニターが二つのシグナルを発し続けている。ピッピッピッピッと強い方が本体の紙飛行機、今は予定通り馬に変わって西安の西方で正常に動作している。ピピピピと小さく鳴っている方は紙飛行機から分離したオブジェクトの三蔵法師。二つのドットは、なんとか無事に西安の近くまで来ている。御山の頂上にアンテナを立てさせてもらって、大雑把にだけども信長さん、市さん、茶姫さんの現在位置を掴めるようになった。御山にアンテナを立てるには乙女生徒会長と学院の信玄さんが骨を折ってくださった。乙女会長の交渉力は弟の龍馬に匹敵すると思う。「忠八、そりゃ違うろ、龍馬がうちに似ちゅーが...鳴かぬなら信長転生記155『乙女と信玄モニターを見つめる』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第14話《電波とパンツとトラブルと》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第14話《電波とパンツとトラブルと》ブル((;"°;ω°;))優奈を送りに外に出ると師走の寒さ。でも、優奈はヘッチャラな顔で、手袋をするのにモタモタしてるわたしを待ってくれる。「さくらに話して気が楽になったわ」そう言いながら手袋を拾ってくれた顔はとても晴れやか。ケンカしたアンが何日かぶりでダイアナと仲直りした時みたいに頬を染め目を輝かせている。「打ち明けたのは三人目だけど、みんなドン引きするか過剰な笑顔で話題を変えるかだった。こんなに普通に聞いてもらえたのは初めてよ……ほんとうにそうよね、今の世界情勢見てると、大きな事件や変化が起こりそうだものね。ウカウカ生まれ変わっていたんじゃ間に合わないかもしれない。能力を発揮するには、最低でも十歳ぐらいにはなっていないとね。それに気づかせ...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第14話《電波とパンツとトラブルと》

  • やくもあやかし物語2・019『デラシネの攻撃!』

    やくもあやかし物語2019『デラシネの攻撃!』うまくいけば、このままデラシネに出会えて話が出来るかも……と思った。三叉路の道は素直な一本道になったよ。相変わらず草ぼうぼうの獣道で、蔦や根っこが邪魔だけど、注意して歩けば平気だと思う。日本でもいろんな妖に出会ったけど、なんとかなってきたしね。思い返してみると、完全にぶちのめして滅ぼした妖は、そんなに多くない。半分以上は少しだけでも気持ちが通じたところで折り合いがついたような気がする。うん、きっと大丈夫……思ったところで異変が起こった。ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ食器をまとめて洗うような音がした。「囲まれる!」ネルが耳を立てて腰を落とした。わたしは鬼の手を構えて周囲を警戒、ハイジはカンフーの構えみたいなポーズをとって、わたしたち...やくもあやかし物語2・019『デラシネの攻撃!』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第13話《世田谷八百比丘尼》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第13話《世田谷八百比丘尼》「熊野明神は知っているかしら?」「クマノミョウジン?」「世田谷熊野明神」世田谷には20ちょっとの神社があるって、いつかお父さんが言っていた。好事家のお父さんは、図書館勤務のせいか世田谷はおろか東京にあるお寺や神社の半分以上を知っている。「なんだ半分か」と反抗期の頃の兄貴がいったことがあるけど、「日本中の神社とお寺を合わせたらコンビニの倍近いんだぞ」と言っていた。そういう兄貴も今はアメリカと中国とロシアの軍艦はシルエットを見ただけで当ててしまう。そういう趣味の無いわたしは、お寺なら豪徳寺、神社なら八幡さまと松陰神社くらいしか知らないけど、名前を言われたら――ああ、聞いたことあるかな――という感じにはなる。でも、世田谷熊野明神はそういう感じではない。「明...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第13話《世田谷八百比丘尼》

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・065『猫又のガード』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記065『猫又のガード』き~たかぜ吹き抜くぅさむい~朝も~♪最近口癖のようになった歌を口ずさみながら橋に向かう。たった100mほどなんだけど、つい口ずさんでしまうほど寒い。地球温暖化というのが世界の常識なんだけど、今年の令和は寒いよ。歌を口ずさんでるから、いつもの倍ほどの二酸化炭素を吐き出しながら歩いてる。き~よ~らかに咲いた~かれんなは~な~を~♪「は~な~を~♪」のところで吐き出す息はマックスになって、すれ違ったお婆さんが「おや、懐かしい(^・^)」と口をすぼめて喜んでくださった。この歌は、4組に来ている数学の講師の先生のオハコ。授業の行き帰りに小さく口ずさんでいかれるので、なんとなく伝染ってしまった。「吉永小百合のヒット曲だよ」真知子が優しい目をして教えてくれた。...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・065『猫又のガード』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第12話《待てない未来がある・3》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第12話《待てない未来がある・3》恵里奈が気を利かして敷いてくれたゴミ袋がクッションになったのか、運がいいのか、わたしは、検査の結果異常なし。白石さんのことが気に掛かったけど、ショック状態のため、鎮静剤で眠らせてあると聞き、怖い顔したお姉ちゃんといっしょに家に帰った。家に帰ると、お父さんとお母さんが心配顔で待っていた。二人とも無事なあたしを見てホッとした様子。「迷惑かけました。すみません」他人行儀な挨拶をした。「無事で何よりだ……よくやったな。白石って子、危ないところだったそうじゃないか」「うん……それが何より」ふっと、お父さんとお母さんの顔が優しくなり、力が抜けたようにリビングのソファーに腰を落とした。すると、ゴトって音がして、横の棚に置いてあった土偶人形が袈裟懸けに割れて転...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第12話《待てない未来がある・3》

  • 銀河太平記・193『春の七草』

    銀河太平記・193『春の七草』メグミせり~なずな~ごぎょう~はこべら~ほとけのざ~すずな~すずしろ~思わず口をついて出てしまう。早春の西之島は休戦状態とは思えない長閑さで、春の七草を鼻歌のように節をつけてそらんじてしまう。「七草って、みんな同じ順序で言うよね、なんでだろ?」巫女服にタスキ掛けのハナちゃんがアレコレ摘みながら聞く。「ああ、和歌になってるのよ」「ワカって『なにわづにさくやこのはなふゆごもりいまや春べとさくやこのはな』って、やつだよな?」「そうそう、ハナちゃん、序歌覚えたんだ」「アハハ、かるた会の最初にやるからね。それに、最後の『さくやこのハナ』って、すごく感じいいし(^▽^)」「あ、そうだね。なんだかハナちゃんの歌みたいだね」「だろ!でもさ……『すずなすずしろ』で終わったら、字足らずじゃね?」...銀河太平記・193『春の七草』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第11話《待てない未来がある・2》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第11話《待てない未来がある・2》「そんなとこで、なにをしてるんだ!!」膠着した戦場に打ち込まれたロケット砲みたく無神経で野太い大声が噴き上がってきた。まくさは、こともあろうに体育科一番の無神経男の久田先生を連れてきた。キャァァァァァァ!校舎の外周にいた子達も屋上のあたしたちを見つけて悲鳴をあげる。ウ!白石さんは、うろたえてバランスを崩してしまった(;゜Д゜)!「危ない!」わたしは、とっさに右手で白石さんを抱え、左手で柵の手すりを掴んだ。でも二人の体は屋上の縁から半分以上はみ出し、わたしの左手だけで、かろうじて二人分の体重を支えている。「白石さん、柵を掴んで!」「う、うん……」たった今まで死のうとしていた白石さん。こうやって物理的に死の淵に晒されてみると、恐怖で、とっさには体が...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第11話《待てない未来がある・2》

  • RE・かの世界この世界:218『キャンプは続くよ岩戸前』

    RE・かの世界この世界218『キャンプは続くよ岩戸前』テル岩戸の前は広場とは名ばかりの三十坪ほどの空き地だ。三十坪というと、家の前の私道部分を含んだ我が家の敷地と同じ。近所も似たような家ばかりで、三十坪というのは、やっと十七年の人生の全てが詰まっている単位。車庫付き三階建てで、四人家族で住むにはまずまずの広さ。しかし、九人の人間と一頭の馬が焚火を囲んでキャンプするには少し狭い。桃太郎二号:「でも、ギューギューしてて楽しいぞ(^▽^)」ケイト:「うん、なんだか秘密基地みたいでワクワクするなあ」雪舟ねずみ:「ムヘンでは戦車に乗っておられたのでしょう、普通の車でも車中泊はこたえますが、大変だったんじゃないんですか?」タングニョ-スト:「寝る時は戦車の外だ。砲身にキャンバスをかけて、あちこち結わえると、けっこうな...RE・かの世界この世界:218『キャンプは続くよ岩戸前』

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第9話《待てない未来がある・1》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第10話《待てない未来がある・1》ドサ空から靴が降ってきた。体育の時間にグラウンド用に使う学校指定の運動靴。危ないなあ……!?。一瞬、見上げた校舎の屋上に人の気配。「どうかした?」体操服の佐久間まくさが近寄ってきた。今日の四限は実質二学期のおしまいなので大掃除になっている。帝都女学院の生徒は全員体操服に着替えて担当区域を掃除の真っ最中。で、あたしたちのクラスの半分は、北校舎外周の掃除に当たっていて、落ちてきたのと同じ運動靴を履いている。この運動靴はヤバイと思った。第一に「白石」と書かれていて、うちのクラスに白石という子はいないこと。第二に、その靴が、ほのかに暖かいということ。つまり寸前まで誰かが履いていたということ。第三に、屋上に人の気配がしたこと。第四に、屋上は危険なので、清...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第9話《待てない未来がある・1》

  • くノ一その一今のうち・87『魔石の熱』

    くノ一その一今のうち87『魔石の熱』そのいち胸のあたりがジーーンと熱い。魔石が熱をもっているんだ。よくできたカイロが胸のツボに当って、全身が温まっているような感触。これまでも魔石が力を発揮してくれた時は、今と同様に熱を持ったものだけど、今回は今までにない熱さだ。夢中で駆け抜けたが、敵の車列は見込みの倍近く、通り抜けた分だけで一個旅団の規模がある。左右に展開し始めていた別動隊を含めれば師団規模だったかもしれない。お祖母ちゃんからもらった時は単なるお守り程度にしか思っていなかったけど、こいつはすごい力を持っている。これ以上魔石に頼っては、魔石をダメにしてしまう、ひょっとしたら魔石も自分も両方ダメにしてしまうかもしれない。――見えている限り、一キロ四方に敵はいません。一時の方向十キロに草原の国の都が見えます――...くノ一その一今のうち・87『魔石の熱』

  • ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)第9話《佐倉惣次郎の休日》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第9話《佐倉惣次郎の休日》やっぱりボロ市は初日の十五日に来なきゃなあ……。世田谷名物のゴミの市は、十二月と一月の十五、十六日と決まっていて、わたしのような図書館勤めには不利だ。昔は、一月十五日が成人の日だったので、この日を狙っていけたのだが、今は勤務日と重なって行けない。まあ、雰囲気だけでも味わえればと運動がてらに……と言いながら財布に十万ばかり忍ばせてやってきた。家から一キロちょっとの世田谷駅付近から都道三号線に面した桜小学校のあたりまでがコースで、七百件の出店を見て回るのは、好き者のわたしでも、かなり根性がいる。まあ、名物の代官餅でも食べて手ぶらで帰るかなあ……と、コース半ばの代官所前あたりで思った。都道に出る二百メートルほど手前に北に向かった細い通り抜けがある。「お子さん...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第9話《佐倉惣次郎の休日》

  • 鳴かぬなら 信長転生記 154『書籍範老人』

    鳴かぬなら信長転生記154『書籍範老人』茶姫あなた方は、もしや三蔵法師御一行様!?馬が喋った……と思ったら、馬の首にへばりつくようにして乗っているジジイだ。「いかにも天竺より経文を受け取って帰る途中の三蔵法師とその弟子三名ですがッパ、なにか御用でしょうかッパ、ご老人?」町の老人会の会長に対するように、優しく訊ね返す。「はい、わたしは豊盃は豊盃楼の豊盃羽沙壽(ほうはいぱさじゅ)で書店を出しておりました書籍範という年寄なのですが、オーナーの大橋(だいきょう)さまの代理で三蔵法師さま御一行を探しに出ておりました」ああ、思い出した!扶桑の国に逃れる前、兄の曹操に追われて、大橋のアンティークショップに匿われていた。店の主人までは覚えていないが、たしかに十字路の向かいに書店があった。「この度は、パサージュの改装を機会...鳴かぬなら信長転生記154『書籍範老人』

  • ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)第8話《レイア姫の事情》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第8話《レイア姫の事情》レイア姫おパンツ事件は目出度く一件落着。でも、姉のあたしが後悔していると言ったら、驚かれるだろうか?じつのところ、アミダラ女王とレイア姫のおパンツを勧めたのは、何を隠そうあたしなのだ。ティーンの子なら当たり前なんだけど。さくらは自分の長所がよく分かっていない。ありがちなんだけど、自分の欠点ばかりが気になる年頃なんですよ。自分は可愛くない。人並みに勉強もできない。空気が読めない。人生に夢がない……の、ないないづくし。姉妹のひいき目をさっぴいても、さくらは十人並み以上にかわいい。スタイルも悪くない。この年頃にありがちなプニプニ感がなく、シュっとしている。で、本人は、エンピツみたいな体だと自信を失う。自信がないもんだから、表情が暗く、姿勢も悪い。勉強も優等生と...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第8話《レイア姫の事情》

  • やくもあやかし物語2・018『森の中の三叉路』

    やくもあやかし物語2018『森の中の三叉路』「「「え?」」」三人同時に声が出た。オーベロンがつけてくれたのは獣道。獣というのは四つ足だから、通る道は、道なのか、ちょっとだけ草がまばらなところなのか区別がつかない。むろん獣は四つ足で歩いているから人の目の高さあたりは薮や茂みと変わりがない。気を付けて歩かないと、見失ってしまう。それが、いきなりホワっと広がった。中一の時に街の森林公園でオリエンテーリングをやった時を思い出す。所どころに先生が立っていて、カードにスタンプを押してくれる。そういうところは交差点になっていて、地図をよく見ないと間違ったルートに入ってしまって遠回りをさせられる。そういう所に出てしまった。ホワっと広がって、ある程度は見通せるんだけど、そこは三叉路で、上りの道と下りの道がある。こういうとこ...やくもあやかし物語2・018『森の中の三叉路』

  • ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)第7話《拡散 さつきの側から》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第7話《拡散さつきの側から》「『お帰りぃ』ぐらい言いなよ」遅番のバイトを終えて帰ってくると、風呂上がりのさくらと狭い階段ですれ違う。いつもなら「ただ今」に対し「お帰りぃ」と返して階段を空けて待っている。わが妹の数少ない美点の一つ。それが、挨拶もしないで階段ですれ違う。すれ違いざまにリンスの香り。「あ、あたしのリンス使ったな!」「え……あ、お帰り……」腑抜けた妹は、ことの本質を理解せずに、そのまま三階の自分の部屋に上がった。「ちょっと、さつきぃ」今度は、お母さんが階段を降りてきて、あたしの部屋にやってきた。「なに、お母さん?」「……さくら、ちょっと変なのよ」「やっぱり。で、いつから?」「帰ってきたときは普通だったんだけどね、夕食の途中にスマホをいじってるうちに……食事残したまま部...ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第7話《拡散さつきの側から》

  • ここは世田谷豪徳寺(三訂版):第7話《拡散 さつきの側から》

    ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第7話《拡散さつきの側から》「『お帰りぃ』ぐらい言いなよ」遅番のバイトを終えて帰ってくると、風呂上がりのさくらと狭い階段ですれ違う。いつもなら「ただ今」に対し「お帰りぃ」と返して階段を空けて待っている。わが妹の数少ない美点の一つ。それが、挨拶もしないで階段ですれ違う。すれ違いざまにリンスの香り。「あ、あたしのリンス使ったな!」「え……あ、お帰り……」腑抜けた妹は、ことの本質を理解せずに、そのまま三階の自分の部屋に上がった。「ちょっと、さつきぃ」今度は、お母さんが階段を降りてきて、あたしの部屋にやってきた。「なに、お母さん?」「……さくら、ちょっと変なのよ」「やっぱり。で、いつから?」「帰ってきたときは普通だったんだけどね、夕食の途中にスマホをいじってるうちに……食事残したまま部...ここは世田谷豪徳寺(三訂版):第7話《拡散さつきの側から》

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