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大橋むつおのブログ
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2015/01/11

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  • RE・かの世界この世界:204『鬼ノ城・6』

    RE・かの世界この世界204『鬼ノ城・6』テルおててつないでみな帰ろぉ~からすといっしょに帰りましょ~不朽の名曲に詠われているように、夕焼けの空には人や家やふるさとを想うなにかがあるんだろう。ケイト:「他のみんなは、どうしてるんだろう……」桃太郎二号:「え?」ケイトの呟きに桃太郎二号はキョトンとする。ケイト:「あ、なんでもないよ」桃太郎二号:「なんでもなくないだろ、おめえ、涙ぐんでるじゃねえか」ケイト:「なんでもないよ」桃太郎二号:「言えよ、水くせえなあ」ケイト:「うるさいなあ」桃太郎二号:「そっぽ向くこたぁねえだろ!」わたし:「じつはなぁ……」わたしは、そっと二人の間に入ってやった。わたし:「イザナギさん以外は、みんな別の世界からとばされてきたんだ」桃太郎二号:「別の世界?」わたし:「ああ、みんなで……...RE・かの世界この世界:204『鬼ノ城・6』

  • くノ一その一今のうち・73『謁見』

    くノ一その一今のうち73『謁見』そのいち「今から国王に会ってもらう」車寄せでバスを降りると、トヨタを下りた王女が待ち構えて告げる。遠足で目的地に着いて、先生が、取りあえずの注意をしている感じでおかしい。「謁見の形式なので、身なりには気を付けてもらう。特段に着替える必要はないが、ネクタイはまっすぐ、ボタンは上まで止めて、上着のボタンも締めて欲しい。基本的に、聞かれたことのみ応えて、発問は控えてもらう。その後は王妃と会食。二時間ほどはかかる。途中トイレにはいけないから、10分間のトイレ休憩にする」ほんとうに引率の先生だ(^_^;)トイレ休憩が終わって、いよいよ謁見。帝国ホテルの結婚式場か(行ったことないけど)と思うくらいに高級感漂う広さと豪華さ。二段高くなった、その上にクッションで脇と背中をサポートされた玉座...くノ一その一今のうち・73『謁見』

  • RE・トモコパラドクス・3『あの日の秘密』

    RE・友子パラドクス3『あの日の秘密』あらかわ遊園から帰った夜、一郎は夢を見た。あの日の夢だった。事実、あの日のことは一カ月前までは夢だと思っていた……三十年も前から時おり見る夢。首都高某所で事故が起こった。夜の九時頃だ。「いっちゃんは、おばちゃんちで待ってな!」騒ぎに気付いて向かいのおばちゃんが言ってくれた。でも、無理を言って両親に挟まれる形でパトカーに乗り込んだ。代々木に出たところまでは覚えていたが、そのあと意識がもどったのは、病院の待ち合いのようなところだった。父と母はソファーに座って眠ったままだ。「ああ、目が覚めたのか……」通りかかった白衣のお医者さんのような人が言った。子供心にも「まずかったかな」という気持ちになった。「この子は、あの子の弟だ、多少、同じ素因をもっているんだろう」「かもな、我々を...RE・トモコパラドクス・3『あの日の秘密』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・050『酒屋にお使いに行く』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記050『酒屋にお使いに行く』大きなネコでしたねえ!ロコが感心して、佳奈子と真知子は「「え?」」という顔をしている。耳もとをピシュって音をたてて何かが過って、いっしゅん安倍さんが暗殺されたときのことがよぎった。そして、その直後、プラグスーツみたいなのを着たアイさんがコンマ5秒ほど見えた。手にぶっそうなものを持って駆けて行くところが!あ、アイさんっていうのは、滝さんのお店の常連のOLさんで、じつは猫又さん。ほとんど一瞬なので、見えたのはロコとわたしだけ。「マリーアントワネットが飼っていた猫に似ていました。メインクーンという種類で子どもぐらいの大きさがあるんです!」1970年にメインクーンが日本にいたかどうかは知らないけど、ネコに見えていたのならドンマイ。「メグリ、あんた撃...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・050『酒屋にお使いに行く』

  • 高校ライトノベル・RE・トモコパラドクス・2『あらかわ遊園』

    RE・友子パラドクス2『あらかわ遊園』「残念ねぇ、明日だったら『川の手荒川まつり』があったのに」友子が「チッ」と舌を鳴らした。ナリは高校生だが、小学生が背伸びしたようなリアクションが微笑ましい。結成四日目の家族は、連休の二日目を「あらかわ遊園」で過ごしている。他に有りそうなもんだと一郎は思ったが、妻の春奈と娘の友子の意見が一致したのだからしかたがない。「荒川の名産品なんかが見られるんだって」「荒川の名産見てもなぁ……」「荒川周辺て、再開発が進んで人口も増えてるから、マーケティングの値打ちあるかもよ」「ブーー、仕事の話はよそうぜ、休みなんだから」「新製品開発のプロジェクトチームなんだから、アンテナ張ってなきゃダメじゃん」「ま、いずれにしろ、『川の手荒川まつり』は明日なんだから、仕方ないだろ」「そういう態度が...高校ライトノベル・RE・トモコパラドクス・2『あらかわ遊園』

  • RE・かの世界この世界:203『鬼ノ城・5』

    RE・かの世界この世界203『鬼ノ城・5』テル雪舟ねずみなので、本格的なお茶かと思ったら、ヤカンに湯を沸かして急須で淹れるという簡便なお茶だ。一方、タングニョーストの炉はブタの丸焼きができそうなくらい堅牢でごっついものになった。雪舟ねずみ:「ハハ、わたしの茶には舞台が大きすぎるようです(^_^;)」タングニョースト:「すまん、戦場では、いつもこれくらいの炉を構えていたのでなあ」ヒルデ:「いや、わたしも違和感が無かったぞ」ヒルデもいっしょに頭を掻いている。イザナギ:「それなら、いっそ食事にしましょう」テル:「しかし、イザナギさん食事の準備はなにも……」イザナギ:「これでも神です、イザナミほど器用にはできませんが、食べたことがあるものなら再現できます」桃太郎二号:「あ、きび団子なら、ちょっと飽きたかもなぁ(^...RE・かの世界この世界:203『鬼ノ城・5』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 140『信長版西遊記・砂丘を回り込む』

    鳴かぬなら信長転生記140『信長版西遊記・砂丘を回り込む』信長三蔵法師はただのオブジェだ。二宮忠八が工夫を重ね努力の末に作りだしたハイパー紙飛行機を馬に変えた、その余りで造ったオブジェ。多少のギミックはあるが、せいぜいゲームのNPC。盗まれて惜しいものではないが、オブジェであるとバレるのはまずい。三国志の中原に出て、魏王曹操を倒すまでは西遊記を続けなければならない。「なかなか追いつかないブヒ、敵はもうじき砂丘の陰に隠れるブヒ」「八戒、おまえが載っているからだウキ」「これは変装ブヒ、体重は本性の市のままだブヒブヒ!」「いや、八戒は大きいから風の抵抗が大きいッパ。少し前かがみになって風の抵抗を減らすッパ」「了解ブヒ!」ムギューー「こ、こら押すな!」八戒が真ん中なものだから、後の沙悟浄は平気だが、前の俺は馬の首...鳴かぬなら信長転生記140『信長版西遊記・砂丘を回り込む』

  • 高校ライトノベル・RE・トモコパラドクス・1『友子と一郎』

    RE・友子パラドクス1『友子と一郎』「お父さん、切符……」二枚の切符を指に挟んでユラユラさせながら、父の後ろで友子が注意する。「お、おう……」通せんぼした自動改札から戻りながら、父は不機嫌そうに頭を掻く。「いけませんね」「通勤はスイカなんでな」「520円貸しね」「もう電車来るぞ」「まだ二つ前を出たとこォ」頭上の電光掲示を指さす友子。「ああ?」数歩下がって確認する父。亀が首を伸ばしたみたいでみっともない、亀にはひげの剃り残しなんてないだろうし。「こういうことは、すぐに精算しとかなきゃ、お父さん、すぐ忘れるんだもん」「あいよ、20円……ないや。500円で辛抱しろ」「50円玉あるじゃん。はい、おつり30円」こういうことには細かい奴である、友子という奴は。「もう少し離れて立ってろよ」「いいじゃん、親子なんだから」...高校ライトノベル・RE・トモコパラドクス・1『友子と一郎』

  • せやさかい・430『詩ちゃんの写真と西京焼きと新聞記事』

    せやさかい・430『詩ちゃんの写真と西京焼きと新聞記事』さくらなんでか、出窓の観葉植物の横に置いたある。うちが買っておばちゃんに持って行ってもろた学校机セット。「フフ、さくら、この鉢植えの花わかる留美ちゃんが鼻にしわを寄せる。わたしに分からんクイズを思いついた時の顔や。詩ちゃんが送ってきた画像を見て、ええなあとふたりで頬杖ついてる。「うちの境内にあるのやったら分かるねんけどなあ」さっさと降参しとく。「ブルーベルって言うんだよ。花をつけるとお辞儀したようになって、ほら鈴なりのベルみたいでしょ」「ほんまや、花がみんな下向いてて、かいらしいねえ。この学校机1/12やさかいに、フィギュアに座らせたら、妖精の学校みたいやねえ。こんど見繕って送ったげようか」「ううん、このままがいいんだよ」「そう……そうか……休み時間...せやさかい・430『詩ちゃんの写真と西京焼きと新聞記事』

  • RE・かの世界この世界:202『鬼ノ城・4』

    RE・かの世界この世界202『鬼ノ城・4』テル「与一殿、父上はご存命なのか?」「いえ、父はわたしが生まれる前に他界いたしました」「そうだろうなあ……」瞬間、イザナギさんと目を合わせて話を続けるヒルデ。「実は、我々はイザナギ殿に付き従って黄泉の国に行くところなのだ」「よ、黄泉の国!?」「いやいや、死んで黄泉の国に行くわけではない。イザナギ殿の奥方が亡くなってなぁ」「はい、まだまだ国造りの途中なので、迎えに行くところなんです」「亡くなった奥方様を……?」「我がままと思われるかもしれませんが、国生みや国造りを蔑ろにしては、この先、どんな災いが起こるかしれません。それで、ヒルデさんをはじめ、皆さん方にご一緒頂いて、黄泉の国に妻のイザナミを迎えに行くところなのです」「そうだったんですか……いやはや、この世界そのもの...RE・かの世界この世界:202『鬼ノ城・4』

  • やくもあやかし物語・2・004『ルームメイトはネル』

    やくもあやかし物語・2004『ルームメイトはネル』二人部屋を一人で使ってる。わたしのクラスは女子が7人なので、ハミゴのわたしは一人なんだと思っていた。でもね、今日からは二人なんだ。「家の都合で入学式に間に合わなかった子が一人いるんだけど、ヤクモと同室になります」「あ、はい」キャリバーン教頭先生の話にこっくり頷く。「OK?」「イエス、マム」「……あのねぇ」「はい、何でしょうか、先生」「これは決定事項ではあるんだけども、疑問とか不安があったら、ちゃんと聞いた方がいいわよ。ヤクモ」「はい」「二人部屋を一人で使っているのはあなただけだから、ヤクモに言ったんだけど『理由はそれだけですか?』とか『同室になるのはどんな子ですか?』とか、思うところがあれば聞いた方がいいわよ」「あ、はい」「えと…………じゃ、いいわね」「は...やくもあやかし物語・2・004『ルームメイトはネル』

  • RE・かの世界この世界:201『鬼ノ城・3』

    かの世界この世界201『鬼ノ城・3』テル「あ……いや……あなた方でしたか……」解れるように太刀先を下ろしたのは、ついさっきカーラジオで消息を聞いたばかりの屋島の英雄だ。「与一さん、どうしてここに……」「あ、いやはや、お恥ずかしい」あまりのことに、わたしの言葉に続く者はいない。イザナギさんでさえ、意外な再会に目を丸くしている。「事情があるようだな。ここで会ったのもなにかの縁だ、よかったら聞かせてくれ」最初に口を開いたのはヒルデだ。自分自身ラグナロクに向けて悩み多いヴァルキリーの姫騎士、屋島の英雄に想いを重ねるところがあるんだろう。「お恥ずかしい話ですが、壇ノ浦から逃げてきました」「逃げてきただって!?」「!?」子ども二人の目が三角になる。イザナギさんが二人の後ろにまわり、そっと抱き寄せた――こういう時は、そ...RE・かの世界この世界:201『鬼ノ城・3』

  • 銀河太平記・178『トラコン・2』

    銀河太平記・178『トラコン・2』須磨宮心子内親王お疲れさまでしたごくろうさまです警察らしくない挨拶を交わすと『北町奉行』とロゴを変えてパトカーは行ってしまった。トラコンは北町奉行所と南町奉行所の共同警備地区になっている。トラコン二丁目のバザールは車が乗り入れられない。めちゃくちゃ人出が多いので昼間の車両の乗り入れは禁止。むろん緊急車両は例外なんだけど、一応トラコンの規則に倣って、バザールの入り口で南北奉行所の同心が入れ替わる。パトカーの北町は、グルッとトラコンを周って奉行所に帰っていく。その間、南町は徒歩でバザールを巡回。そうすることで、トラコンにはパトカーと徒歩の警察官が巡回していることになり、不測の事態が起こっても柔軟に対応できるようになっている。「お、5000人超えてる」ヒコくんが掲示板を指さす。...銀河太平記・178『トラコン・2』

  • RE・かの世界この世界:200『鬼ノ城・2』

    RE・かの世界この世界200『鬼ノ城・2』テル楼門を潜った城の中は…………なにも無かった。なにも無いと言っても、次元の狭間というわけでもブラックホールというわけでもない。ちゃんと草が萌えて、木々が茂り草木の間には岩が覗いて小道が巡っている。しかし、その有りようは、楼門の外と変わるところが無い。頂上ではあるが、整備された山中のハイキングコースと変わるところが無い。城と呼ぶ限り、櫓や殿郭が朽ち果てても城の構えはうかがえるものだ。苔むした石垣であったり、基壇であったり堀の跡であったり。城としての構造を偲ばせるものがあるはずだが、それが、なにも無い。要するに、山の頂上を鉢巻きのように土塁で囲んで、その内側を城と呼んでいるだけのようなのだ。「ちぇ、なんか詐欺みてーじゃねえか。ゲートと塀だけがあって入ったらなんにもね...RE・かの世界この世界:200『鬼ノ城・2』

  • くノ一その一今のうち・72『アデリア王女に先導されて王都に向かう』

    くノ一その一今のうち72『アデリア王女に先導されて王都に向かう』そのいちじっさいアデリア王女はレイバンのサングラスをしている。落ちこぼれJkのわたしにサングラスのブランドなんか分からないんだけど、『お、レイバン』『マッカーサーのといっしょだ』と、徳川社長と百地社長が闇語りで呟いたから分かった。「王女殿下おん自らのお出迎えに感謝いたします。まず、撮影準備隊メンバーの紹介をいたします」「うむ」桔梗さんのイントロディユースに合わせて、みんな一列に並び、わたしも最後尾に付く。桔梗さんが通訳しながら紹介していくようだ。「徳川物産社長の徳川秀長です」「ん、徳川なのに秀吉の秀の字が付くのか?」「二代将軍秀忠の子孫ですので、代々秀の一字を戴いております」「そうか、よろしくな」「徳川グループ、百地産業社長の百地三太夫です」...くノ一その一今のうち・72『アデリア王女に先導されて王都に向かう』

  • RE・かの世界この世界:199『鬼ノ城・1』

    RE・かの世界この世界199『鬼ノ城・1』テル総社市から40分ほど寂しい舗装道路を上って、山上の駐車場に着いた。「わたしたちだけなんだろうか、雪舟ねずみ君?」「……のようですね、シーズンも外れのウィークデーでもありますから」イザナギさんは鷹揚に頷くと、我々の先頭に立って木の間隠れに見える櫓門を目指して進んで行く。「……ドワーフの砦に似ている」「ドワーフの砦ならば、櫓の上に10人、土塁の向こうに50人、おそらくはアーチャー(弓兵)が潜んでいるでしょう」「主力は棍棒の歩兵、こちらが怯んだところに……200余りが襲い掛かって来る」「伏兵の可能性もあります、仕掛ける前には左右に斥候を出すべきでしょう」「うむ、まずは、テルとケイトで斥候に出てくれ。伏兵が居ないようなら……一気呵成に攻めるべし。桃太郎二号、楼門の上に...RE・かの世界この世界:199『鬼ノ城・1』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・049『宮之森城花火大会』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記049『宮之森城花火大会』ドーーンパチパチドーンドーンパチパチパチパチパチパチ待ってましたッ!た~まや!か~ぎや!花火に声援を送る人って初めて見た。1970年でも、さすがに珍しいらしく、子どもたちはケタケタ笑い、浴衣姿の女の子たちが笑いをこらえ、屋台のオッチャンたちはニコニコしている。真知子:「ロコもやってみたらぁ」ロコ:「アハハ、さすがに(^_^;)」佳奈子:「たみ子も来られたらよかったのにねぇ」真知子:「たみ子がいたら、ぜったい迷子にならないよね」ロコ:「そうですよね『なにかあったらたみ子さんのところに集合!』にできますからね(^▽^)」たみ子は身長178センチ、そのうえ姿勢がいいもんだから、人ごみの中に居ても首一つ分高くて目立つ。だから、ちょっとはぐれても、たみ...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・049『宮之森城花火大会』

  • RE・かの世界この世界:198『雪舟ねずみ』

    RE・かの世界この世界198『雪舟ねずみ』テル総社市に着いたのはいいが、ちょっと困った。ここから先は中国山地なのだ。オノコロ島からここまでは、淡路島、あるいは四国の海沿いをたどり、岡山から総社市までは桃太郎鉄道に乗るだけでよかった。しかし、山地を行くとなれば、今までのようなわけにはいかない。「桃太郎二号、鬼ノ城までのルートは分からないのか?」「えと……『ま』はいいけど『ろ』はダメだ」「なんだ、それは?」「あったまわりーなあ!『ま』と『ろ』じゃぜんぜんちげーだろ!」「テル、それは鬼ヶ島の『ま』と鬼ノ城の『ろ』だよ」「え、ああ、タングニョーストは察しがいいなあ」「長年トール元帥の副官を務めている、魔族や蛮族とのコミニケーションには慣れているんだ。そうだろ、桃太郎二号」「そ、そうだけどよ、オレって蛮族なのか?」...RE・かの世界この世界:198『雪舟ねずみ』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 139『信長版西遊記・崖崩れ』

    鳴かぬなら信長転生記139『信長版西遊記・崖崩れ』信長玉門関を出て、砂漠を南東に進んでいる。ここからは河西回廊(かせいかいろう)だ。三国志の舞台である中原とシルクロードの舞台であるゴビ砂漠を繋いでいるのが、この河西回廊だ。扶桑(転生国)の感覚で回廊というと、学校の渡り廊下、せいぜい学院と学園を結ぶ川沿いの田舎道を思い浮かべるが、そんなケチなものではない。「大坂と京を結ぶ京街道のようなものかブヒ?」「そんな、ケチなものではないぞウキ」「京街道がどれほどのものかは知らんが、東は楼蘭、西は、さっきまで居た玉門関までのおおよそ1000キロほどの地域だッパ」「1000キロブヒ!?」「グーグルマップで見てみろウキ」俺は物事を数量的、視覚的に捉える。理屈で物事を捉えては失敗する。「ええ!尾張から白河の関……どころか、ほ...鳴かぬなら信長転生記139『信長版西遊記・崖崩れ』

  • RE・かの世界この世界:197『桃太郎鉄道』

    RE・かの世界この世界197『桃太郎鉄道』テルパオ~~ンのどかに警笛を鳴らし、桃太郎鉄道は岡山駅を出発する。ゴトンゴトンゴトンゴトン二両連結の列車はジオラマのオブジェのような山の裾を巡ると、直ぐに小川を跨ぎ、お伽話の挿絵のように穏やかで可愛い山の谷間に入る。途中の踏切では通学途中の小学生が手を振って、牛が「モオオ~」と鳴き、空にはトンビがピーヒョロロ。さっき渡った小川は、いつの間にかせせらぎの音をさせながら鉄路に並んで流れている。まるで、身体が縮んで本当にジオラマの世界に入ったようだ。ゴトンゴトンゴトンゴトンケイトと桃太郎二号は、子どものようにシートの上で正座して景色に見入っている。「うわあ!」「開けてきた!」谷間を抜けると、一気に視界が開け列車は吉備平野に飛び出した。平野と言っても北海道のそれや、関東平...RE・かの世界この世界:197『桃太郎鉄道』

  • せやさかい・429『新しい学校机』

    せやさかい・429『新しい学校机』詩(ことは)ブルーベルの鉢植えの横に二組の学校机。「さくらが持っていけって言ったんだけど、ほんとにシックリ収まるわね」持ってきた本人が気に入ってしまった。フィギュア用で1/12サイズ。収録の仕事が終わって、声優の仲間とアキバに行って、ドールのお店でビビっときて買ったらしい。「自分用じゃなくてね、最初から『詩ちゃんの部屋に似合う』って思ったんだって」「ふふ、さくらって、そういうところあるよね」「そうね以心伝心かな。さてと、ちょっとお庭見てくるわね」「ごゆっくり」境内の花の世話をするような調子で部屋を出て行った。宮殿の庭だから手入れする必要なんてないんだけどね、楽しんでくれてるようで、娘としては気が楽だ。もう来なくっていいと言ったんだけど、お盆前にお母さんはやってきた。前回よ...せやさかい・429『新しい学校机』

  • RE・かの世界この世界:196『ペギーのだんご屋』

    RE・かの世界この世界196『ペギーのだんご屋』テル「おやおや、今度はだんご屋さんですか(^▽^)」「いらっしゃいませ~₍ᐢ.ˬ.ᐡ₎」「お待ちしてましたよ、御一行さま₍ᐢ.ˬ.ᐡ₎」イザナギさんが声をかけると、ペギーとバイトの女の子が笑顔で出迎えてくれる。二人とも柿色の作務衣にウグイス色の前掛けを掛けて、いかにもだんご屋という感じだ。なぜか二人とも白いウサ耳を付けている。「地域振興を兼ねてましてね、因幡の白ウサギですよ」「ああ、もうそんなところまで気を遣ってもらってるんですかぁ」恐縮して頭を掻くイザナギさん。「そんなところというのは?」「なんにも知らねえんだな、ヒルデのねえちゃん」「北欧神だからな」「因幡の白ウサギだろ、おばちゃん?」「ああ、そうだよ。岡山は二号が現れるくらい桃太郎が有名だけどね」「二号...RE・かの世界この世界:196『ペギーのだんご屋』

  • 銀河太平記・177『トラコン・1』

    銀河太平記・177『トラコン・1』須磨宮心子内親王水・金・地・火・木・土・天・海・冥冥王星は200年前に太陽系の惑星グループからは外されたけど、冥まで言わないと語呂が悪いので、200年後の今でも言う。「水・金・地・火・木・土・天・海・冥はおまけで」とか「水・金・地・火・木・土・天・海・冥は名誉会員」とかね。初等科で太陽系の順番を習った時も、この語呂合わせで習った。先生は「長年仲間だったんだから語呂合わせぐらいには入れてあげよう!」と教えてくださった。冥王星が太陽系惑星から外されたのは、20世紀にエリスという10番目が見つかったことが原因。エリスは太陽系の外側で大きな楕円軌道を描いて560年ほどかけて太陽系の外周を周っている。だったら、エリスも10番目の惑星に……とはならなかった。「太陽系の中にはね、惑星と...銀河太平記・177『トラコン・1』

  • RE・かの世界この世界:195『岡山を目指して語り合ってしまう』

    RE・かの世界この世界195『岡山を目指して語り合ってしまう』テル将来は宇野と岡山を結ぶ鉄道(宇野みなと線)ができる道を歩いている。天狗山を左に見ながら歩いていくと、正面に山(高旗山)。将来はトンネルができるらしいけど、今はまだ無いので左に折れて山すそを西に進むと一時間ちょっとで山が尽きて海が見えてきた。「ええ、また海に出てきてしまったぁ(;'∀')」ケイトが文句を言う。「あ、ちがくて。児島湾が回り込んでんだ。将来は埋め立てられて田んぼがいっぱいできて、残ったところは児島湖って人工湖としては世界二位の湖ができるんだ」「ん……アフリカとかにもっと大きな人工湖があったはず、長江の三峡ダムのせき止湖なんか瀬戸内海よりも大きいはずだ」「ちがくて、堤防で海を仕切ってできた湖だ!そういう人工湖の中じゃ世界で二番目なん...RE・かの世界この世界:195『岡山を目指して語り合ってしまう』

  • くノ一その一今のうち・71『高原の国に降り立つ』

    くノ一その一今のうち71『高原の国に降り立つ』そのいちゴォーーーーーーーわたしたちを乗せてきたC130は、あっという間に飛び立って、高原の雲に隠れて消えてしまった。「すごいね、この滑走路は軽飛行機がやっとなのに……」ミッヒが眩しそうに空を見上げ、自衛隊の操縦テクニックに見入っている。わたしたちは、数カ月ぶりにC130に乗って高原の国にやってきたところだ。目の前には誰が見ても軽飛行機しか無理って感じの500m滑走路。航空自衛隊のC130は折り返して、PKOに参加していた自衛隊員と在留邦人を乗せて日本に引き揚げていく。わたしたち徳川物産関係者は、あのC130に乗ってきて、100人の引き上げ組と交代したところ。草原の国に行った時は米軍のC130だったけど、今回は自衛隊機。草原の国での活躍を知った日本政府は「今回...くノ一その一今のうち・71『高原の国に降り立つ』

  • RE・かの世界この世界:194『桃太郎二号』

    RE・かの世界この世界194『桃太郎二号』テルなんともだらしない桃太郎だ。鎧は脱いでしまって籠手と脛当(すねあて)だけの小具足姿。直垂(ひたたれ)の前ははだけてしまって、汗みずくのTシャツが覗いている。Tシャツにはプリントされた文字の一部が覗いている。負と働の上半分だ。ぜんぶ読まなくても分かる……『働いたら負け』だ。「関りにならない方がいいようですね……」イザナギさんが、ソロリ、わき道に入って行こうとして、わたしたちも無言でそれに倣う。「おい、そこのテメーら!無視すんじゃねーよ!」声だけなら、それでも無視するんだけど、桃太郎はドタドタと駆け寄ってきて、ケイトのシャツの裾を掴んでしまった。「おまえたち、オレのお供決定な!」「え?」「なんだ!?」「いやだ!」「断る!」「なんで?」「カサコソ!」五人五様プラス背...RE・かの世界この世界:194『桃太郎二号』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・048『みんなで万博・3・ソ連館』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記048『みんなで万博・3・ソ連館』今朝も始発電車……とはいかなかったけど、7時には船場の町家を出て8時半にはゲート前に並んだ。真知子:「いっそ、ソ連館はパスかなあ」ロコ:「そうですねえ、マイナーなパビリオンなら待ち時間だけで10個は周れますよぉ」佳奈子:「うん、ロスタイム長すぎ」たみ子:「日本館は行ってみたいかなあ」真知子:「グッチは?」わたし:「あ……ううん……」実は、ゆうべスマホで調べてみた。わたしのスマホはMS仕様(魔法少女仕様)だから、1970年でも使える。正直、どれもこれもショボい。話題のソ連館は、ドッキングに成功したソユーズの実物大を見せてくれる。令和の時代ではすでにポンコツになっている国際宇宙ステーションは、ソユーズの数十倍の大きさがある。でもね、その国...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・048『みんなで万博・3・ソ連館』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 138『信長版西遊記・玉門関・3』

    鳴かぬなら信長転生記138『信長版西遊記・玉門関・3』信長アビラウンケンソワカアビラウンケンニワカナムキミョウチョーライオンマニパドメフムナムアミナムアミ……玉門関の南曲輪は様々な念仏や題目、加持祈禱の渦だった。玉門都尉に足止めされた旅の坊主たちが、黄風大王の退散や調伏を祈願して念仏や祈願の真っ最中。名刹のお上人めいた高級坊主から、乞食同然の破坊主、ソプラノの尼僧テルテル坊主にクソ坊主ありとあらゆる坊主が一心不乱に経を唱えているのは壮観だが、効き目などあるはずもない。玉門関西方の空は鈍色に曇って、曇りの上に刷毛でかき回したようなマーブル模様がうねって勢いを増している。「すぐそこまで、迫っているか……ッパ(-_-;)」「このままじゃ、やられるブヒ(;'∀')」「ニコニコニコ……」沙悟浄は焦り、八戒は唇を震わ...鳴かぬなら信長転生記138『信長版西遊記・玉門関・3』

  • RE・かの世界この世界:193『舟をこぐ』

    RE・かの世界この世界193『舟をこぐ』テル平家が乗り捨てた舟がありますよ。岡山に渡る舟に困っていると言うと、与一が海辺まで案内してくれる。「与一ですから、余りものを見つけるのはうまいんです(^_^;)」自虐的なんだけど、与一が言うと、なんだか和む。「平家の大半は舟で逃げてしまいましたが、討ち死にした者や四国の内陸に逃げた者もいますからね、舟は余っています」大型の船は源氏が輸送用に接収しているが、十人程度が乗る舟は結構残っている。「では、お気をつけて」自分の事は聞かれるままに話してくれた与一だが、こちらの事情は、ほとんど聞くこともなく、穏やかに送り出してくれた。あれだけのパフォーマンスを披露しながらも得意になる様子が無い。「偉い奴だな、北欧なら手柄を吹聴しまくるぞ。またとない出世のチャンスだろうに……」ヒ...RE・かの世界この世界:193『舟をこぐ』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・047『みんなで万博・2・アメリカ館』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記047『みんなで万博・2・アメリカ館』前日は、夕方の7時には町家の宿舎に戻ってお風呂に入って寝た。ちなみに、これだけのお店なのに家風呂は無い。近くの、と言っても400メートルほど先のお風呂屋さんに五人で行った。これはこれで楽しい思い出なんだけど、主題から外れるんで、またいずれ。長旅の疲れと快適なエアコンのお蔭で、グッスリ眠れた。1970年なので、エアコンは諦めていたんだけど、さすがは船場のお店、業務用のごっついエアコンが撤去されずに残っていたので、超ラッキー!ちなみに、室内機は「あんたは自販機か!?」というくらいに図体も音も大きい。「でも、同じようなのがお風呂屋さんにもありましたよ」ロコが言うと、みんな「そうだったっけ?」「あ、そうだった」と首を傾げたり頷いたり。まあ...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・047『みんなで万博・2・アメリカ館』

  • やくもあやかし物語・2・003『入学式』

    やくもあやかし物語・2(『やくもあやかし物語』続編『せやさかい』姉妹作品)003『入学式』部屋の窓から王宮が見える。見えると言っても、林を隔てて距離もありそうなんだけど、おっきいので近くにあるように思えるんだ。王宮の他には湖、ヤマセン湖、ヤマセンブルグは小さな国だけど宮殿も湖も大きい。それ以外には湖の向こうに山が見えるだけ。観察すれば、宮殿にも湖にも森や山々にも、おもしろい!とか、なんだろう?とかがいっぱいあるんだろうけど、今のわたしは、そんな余裕はないよ。到着して、すぐに自分の部屋を指示されて、ベッドの上に置いてあった真新しい制服に着替えて、時間まで待機。『時間になったので、新入生諸君は講堂に集合してください』「はい!」館内放送に返事してしまって、廊下に出る。廊下には、親切なRPGみたいに矢印が浮かんで...やくもあやかし物語・2・003『入学式』

  • RE・かの世界この世界:192『的にも運にも』

    RE・かの世界この世界192『的にも運にも』テル与一に会ってみたいぞ!ツボにはまったヒルデが虫を起こす。「時間は大丈夫でしょうか?」あるじの我がままに、タングニョーストが気を遣う。「大丈夫ですよ(⌒∇⌒)」イザナギは穏やかに応える。一刻も早く黄泉の国に向かって、イザナミを取り返したいはずなのに。日本人というのは、もう、神代の昔から、こうなんだ。「では、さっそく!」「わたしから連絡しましょうか?」ペギーがスマホをヒラヒラさせる。「スマホ、使えるの?」「アハハ、業務用ですから」どうやら、源氏の陣地にスタッフを派遣しているようで、すぐに話がついた。「こんなに端っこなのか?」与一の陣屋は源氏の陣地の端の端。学校で言えば校舎裏、ゴミの集積場か学級菜園でもありそうなところだ。「わざわざ来てくださってありがとうございま...RE・かの世界この世界:192『的にも運にも』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・046『みんなで万博・1・船場センタービル』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記046『みんなで万博・1・船場センタービル』無理をして新幹線にした。1970年、新大阪までの新幹線の特急料金は片道2000円。学食のランチが100円だからね、高校生としては贅沢をした。先月、直美さんと来た時は、機材が多いので車だった。身銭をきってみると大阪までの距離がよく分かる。座席に付いたら窓の下と座席のひじ掛けに吸い殻入れが付いているのには驚いた。発車すると、二つ前のオッサンが、さっそく喫いはじめたんだけど、煙は広がる前にダクトに吸い込まれて、すぐ横にでも座っていなければ被害は無いんだけど、列車の中で喫煙するという行為そのものが犯罪的に感じる。でも、三島を過ぎて富士山が見え始めて「キャー、富士山!!」「うわあ!」「待ってました!」とJK五人がキャピキャピ騒ぐと、タ...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・046『みんなで万博・1・船場センタービル』

  • RE・かの世界この世界:191『屋島の戦い・3・扇の的』

    RE・かの世界この世界191『屋島の戦い・3・扇の的』テル一丁艪の小船には水手(かこ)と女官が乗っていて、ゆるゆると進んでくる。海の平家と浜の源氏の間に至ると船足が停まり、女官がすらりと立ち上がる。口が開いたかと思うと、静かに舞い始めた。謡曲か何かなのだろうけど、口の動きだけでは令和の高校生には分からない。いや、たとえ聞こえても源平時代の謡曲など分かりようもないんだけど、さすがは源氏の武者たち。女官の口の動きと舞の所作で分かるみたいで、静かに見いっている。冴子と舞ったお神楽を思い出す。わたしと冴子の舞も、こんなに人をひきつけることができたんだろうか、こんなに美しかったんだろうか。ほとんど義務感でやっていたけど、もう一度、この女官のように舞えたら……知らず知らずのうちに女官の手足の捌き方、腰の据え方に見入っ...RE・かの世界この世界:191『屋島の戦い・3・扇の的』

  • せやさかい・428『お盆にパニクル』

    せやさかい・428『お盆にパニクル』さくら8月15日は申し合わせたわけでもなく、あたしも留美ちゃんも家に居てる。15日は、本山でも戦没者追悼法要が行われてて、末寺の如来寺でも法要と講和をやりました。お花まつりみたいな華やかさやら、落語会みたいなウキウキ感もないけど、お寺には大事な行事。言われんでも家の手伝いするのが当たり前になってます。お寺というのは、世間では保守の筆頭みたいに思われてるけど、そうでもありません。うちはやってないけど、他のお寺では『安倍政治を許さない!』て習字の見本みたいなビラ貼ってるとこもあったし、教団の連合では『靖国神社公式参拝中止の要請』っちゅうのを出したりしてる。ちょっとズレてるなあ……いう気はすんねんけど、おばちゃんも詩ちゃんの世話でヤマセンブルグに行ってしもてる。女手は、うちと...せやさかい・428『お盆にパニクル』

  • RE・かの世界この世界:190『屋島の戦い・2・讃岐うどん』

    RE・かの世界この世界190『屋島の戦い・2・讃岐うどん』テル高松の海と町を見下ろす丘からカツオ出汁のいい匂いがしてくる。讃岐うどんに違いない(^▽^)!匂いにつられて丘に上がって見ると、全国展開している讃岐うどんの出店が湯気を立てている。神代の時代に千年先の源平の合戦が見られることも不思議だが、我々の空腹に合わせて讃岐うどんの出店が現れるのは、もっと不思議だ。「アメノミナカヌシ(天之御中主神)さまのご依頼で、時間限定で出店しています」なんだか懐かしい雰囲気の女性店長が、釜の火を調整しながら説明してくれる。「アメノミナカヌシの神が!?」イザナギさんが感激して目を潤ませる。「アメノミナカ……って?」ケイトが首をひねる。「イザナギさんの前に出てきた神さまで、カオスの世界を天と地に分けた方だよ」「あ、ケイトが出...RE・かの世界この世界:190『屋島の戦い・2・讃岐うどん』

  • 銀河太平記・176『虎ノ門前派出所』

    銀河太平記・176『虎ノ門前派出所』須磨宮心子内親王扶桑の首都は扶桑府です。首都だから『都』と書かなきゃおかしんだけれど、扶桑の首都は『府』になっている。初代将軍の一仁さまが、建国にあたって『扶桑府』とされた。宗主国の日本に遠慮されたからだと言われているわ。日本の感覚だと『府』は『都』の格下という感覚でしょ。『都』は東京都が一つだけだけど『府』は大阪府と京都府の二つがある。法的には『都』『府』『県』は同等だけど、東京都民は潜在的に二つの『府』よりも偉いと思ってる。高等部の時、親友のチエが「お上りさんのふりしてタクシーに乗ってみよう(^▽^)/」言いだして、チエはお母さんの出身地である大阪弁で通すと運転手さんは得々と東京の自慢をして、可笑しかった。初代将軍の一仁さまも、正確な読み方は『もとひと』。皇族男子の...銀河太平記・176『虎ノ門前派出所』

  • RE・かの世界この世界:189『屋島の戦い・1・奇襲』

    RE・かの世界この世界189『屋島の戦い・1・奇襲』テル義経軍は未明の高松の町に火を放ちつつ屋島へ殺到しようとしている。瀬戸内海の対岸、兵庫県の一ノ谷から逃れて四国の屋島に籠った平家は、海の方角だけを警戒していた。まさか、背中を向けていた高松の山手から攻めてくるとは思ってもいない。まして、昨夜来の嵐は、明け方になって、ようやく静まり始めたところだ。一ノ谷から船を出して追ってきたとしても、到着は昼過ぎになるだろうと平家は踏んでいる。それが、もう背中に匕首(あいくち)を突き刺す勢いで迫ってきているのだ。火を背景に迫って来る軍勢は、実際よりも多く見えるし、狂暴に感じる。一ノ谷でも、海を警戒していたら背後の鵯越(ひよどりごえ)の崖の上から襲い掛かられ、ほうほうの態で屋島に逃げてきたのだ。その大敗北の記憶が、火を背...RE・かの世界この世界:189『屋島の戦い・1・奇襲』

  • 滅鬼の刃・34『朝顔と西瓜・1』

    滅鬼の刃エッセーラノベ34『朝顔と西瓜・1』「ほう、懐かしいなあ」声に振り返ると半玉のスイカをぶら下げた武者が立っています。「だけど、こんな北向きで育つのか?」「昨日までは三階のベランダに置いたんだけどな、育ちすぎるんで移したんだ」「なるほど、抑制栽培というわけか」「まあな」栞が近所の小学生に分けてもらった朝顔の種を鉢に入れ、日の当たるベランダに置いていたらノンノンと育ちました。この調子では育ちすぎてしまうので、昨日から北側の玄関前に移したのです。北向きなので、もう花は開かないかと思ったのですが、まだ余力があるのか、キチンと咲いています。「栞ちゃんのなんだろ?」「ああ」付き合いの長い武者には、こういうことが似合わないジジイだと見抜かれています。「昨日から、泊りがけでアルバイトに行ってるんで、ピンチヒッター...滅鬼の刃・34『朝顔と西瓜・1』

  • RE・かの世界この世界:188『疾走! 屋島を目指せ!』

    RE・かの世界この世界188『疾走!屋島を目指せ!』テル嵐の中、義経軍を追うように西北西に進む。右手に見えるのは鈍色の海と空。ようやく背後から夜が明け始めているんだけど、今が盛りの嵐のために空と海の狭間も定かではなく、砕けた波しぶきが雨と混ざって五人とも濡れネズミ。身に着けた衣類も背中の背嚢も水を含んでグッショリと重くまとわりつく、しかし不快には思わない。小学校の水泳でやった着衣泳、服を着たままプールに入るのが新鮮で、高揚したのを思い出す。ムヘンでの冒険にも高揚感はあったけど、それとは違う。異世界とはいえ、ここは日本だ。自分の国の風土の中で冒険するというのは格別……思うけれどもしまい込む。一刻も早く、瀬戸内海を渡って本州の土を踏み黄泉の国を目指さなければならない。イザナミを連れ戻してイザナギとの国生みを完...RE・かの世界この世界:188『疾走!屋島を目指せ!』

  • くノ一その一今のうち・70『まあやはマッタリ日常系が好きなんだけど』

    くノ一その一今のうち70『まあやはマッタリ日常系が好きなんだけど』そのいち日本人をバカにしてんのか!?十日ぶりの撮影所、台本を読んでムカついた。歴史活劇ドラマ『吠えよ剣』は、甲州の回を終わって江戸に戻ってきている。幕府も遅まきながらも、勝海舟を実質的な総裁にして陸軍を創設した。その幕府陸軍の教官として多数の教官がフランスから送られてくるんだけども、その一人がミッヒ。ミッヒはジョルジュっていうフランス軍少尉の役。「なんで、ドイツ人がフランスの軍人やってんのよ!?」「フランスとドイツは地続きなんだぜ、国境付近は歴史的にもドイツになったりフランスになったりってところがあって、不思議じゃないよ」「だって、ジョルジュって完ぺきフランス人の名前でしょうが」「ドイツ語読みならゲオルグだよ」「ああ、そう」ドン自販機のカフ...くノ一その一今のうち・70『まあやはマッタリ日常系が好きなんだけど』

  • RE・かの世界この世界:187『大毛島 義経軍の幻と共に』

    RE・かの世界この世界187『大毛島義経軍の幻と共に』テル二キロ足らずの鳴門海峡を全力疾走で渡った。対岸の大毛島の砂浜に立って振り返ると、狭い海峡にはいくつも渦が巻いている。「ここを走ってきたんですね……」歴戦の下士官であるタングニョーストも背嚢を揺すりあげて感心した。カサリ「背嚢のタングリスも感心してるよ」骨と皮だけになったタングリスと、それを背負っているタングニョーストを気味悪がったケイトだけども、共に海峡を走破するという偉業をなし終えて、骨のこすれる音にも懐かしさを感じている(^_^;)。「タングリスがもうちょっと復活して肉が付いていたら渡れないところでした」「タングニョースト」「なんだい、テル?」「わたしにも、戦友の温もりを感じさせてはくれないか」「テルが?」「うん、四号に乗ってムヘンの血を乗り切...RE・かの世界この世界:187『大毛島義経軍の幻と共に』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 137『信長版西遊記・玉門関・2』

    鳴かぬなら信長転生記137『信長版西遊記・玉門関・2』信長大手門の前に着くと、市の猪八戒が腕組みして高札を睨んでいる。「どうした八戒、玉門関の由来でも書いてあるのかウキ」「違うブヒ『僧侶及び僧侶を伴う旅行者は入城後南曲輪で待機すべし』と触書が出てるブヒ」「もう、情報が洩れてるんじゃないかブヒ?」「それで、怪しい旅行者は取り調べてるとか思うのかウキ?」ちょっと違うんじゃないかと思ったが『玉門関』の名前でおちょくったばかりなので、穏やかに聞いてやる。「取り調べのためなら、城外でやるッパ」思い出した。酉盃に潜入するときも城門の前に列を作らされ、チェックの済んだ者だけ城内に入れていた。俺は、早くから楽市楽座にして、関所などサッサと廃止していたから、市も疎いんだ。茶姫は取り締まる側だったから直ぐに見当がつくようだ。...鳴かぬなら信長転生記137『信長版西遊記・玉門関・2』

  • RE・かの世界この世界:186『淡路島阿那賀岬に立つ』

    RE・かの世界この世界186『淡路島阿那賀岬に立つ』テル淡路島の南岸を歩いて西の端に出た。海を挟んだ四国との間には、幅四キロほどの海が横たわっている。「ちょっとあるなあ……」ケイトが独り言めいてこぼす。ケイトの優しさなのだ。タングニョーストは背中にタングリス(骨と皮だけど)を背負い、命からがら向こうの世界から来たばかりだ。水分補給とたこ焼きで人心地ついたとはいえ、実質は敗残兵の逃避行。ちょっときびしい。我々は、オノコロジマから淡路島までは海の上を走ってきた。右足を出したら、その右足が沈まないうちに左足を出し、出した左足が沈まないうちに右足を出して進むという、超人的な技で走ってきたのだ。顔にこそ出さないが、けっこうキツイ。加わったばかりのタングニョーストはキツイどころの話ではないだろうし、たとえ思っていても...RE・かの世界この世界:186『淡路島阿那賀岬に立つ』

  • やくもあやかし物語・2・002『やくもの旅立ち』

    やくもあやかし物語・2(『やくもあやかし物語』続編『せやさかい』姉妹作品)002『やくもの旅立ち』流行り病は世界中の予定を狂わせてしまった。わたしもヤマセンブルグの王立民俗学学校に入ることになっていたんだけど、入学は夏の盛りになってしまった。「かえって、やきもきさせてしまったね。申し訳ない」この春に、よその中学の校長になった教頭先生は、わざわざ羽田まで見送りに来てくださった。「わざわざのお見送り、ありがとうございます(-_-;)」付き添いのお母さんはペコペコお化けになってしまった。「いえいえ、ヤマセンブルグを紹介したのはわたしですから、見送りは当然です。王立学校ですからなにも心配することはありません。ちゃんと高卒の資格もとれますし、そのまま進めば大卒にもなれます」「はい、奨学金もお手配いただいて、ほんとう...やくもあやかし物語・2・002『やくもの旅立ち』

  • RE・かの世界この世界:185『タングリスはどうした?』

    RE・かの世界この世界185『タングリスはどうした?』テル「ありがとうございます、やっと人心地がつきました……」アメノミヒシャクにかぶりつき、喉を鳴らして飲み続けたタングニョーストは顎の雫を拭うと、ひとまずの礼を言った。「こちらは、この世界の主神であられるイザナギさまだ。人心地着いたら、ご挨拶しろ」「これはご無礼をいたしました。自分は北欧の主神であるオーディン陛下の臣にして、ムヘン方面軍司令トール元帥の副官を務めております、タングニョ-ストであります。任務とは言え、無断で、こちらの世界に侵入して申し訳ありません。アメノミヒシャク、ありがとうございました」「いや、こちらも、やっと国造りの緒に就いたところでしてね、ヒルデさんたちには大変助けていただいているんです。慣れない国生みで妻のイザナミを死なせたのですが...RE・かの世界この世界:185『タングリスはどうした?』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・045『臨時のアルバイト』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記045『臨時のアルバイト』ああ、ピッタリだねえ!着替えたわたしを見て、直美さんは喜んでくれた。「ストッキングなんて穿いたことないから、ちょっと変です(^_^;)」「まあ、今日一日だから辛抱してね」「あ、はい、それは大丈夫です。これも経験ですから」「そうね、何事も明日への投資よぉ!レッツゴー!」機材を担いで、いつものホンダに乗り込む。日ごろの制服と違って膝丈のタイトスカート、ちょっと足さばきが難しい。「今日は結婚式じゃないからね、笑顔は禁物だよ」「は、はい、承知してます」返事も硬くなってしまう。直美さんのホンダN360も心なしゆっくりと走っている。今日は写真館の臨時、いや緊急のアルバイト。写真館の主なアルバイトは結婚式の写真で、もう五回やったので慣れてきた。たいていは希...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・045『臨時のアルバイト』

  • せやさかい・427『みんながんばってる!』

    せやさかい・427『みんながんばってる!』さくら宇宙戦艦三笠には四人(四匹?)の猫が出てくる。もともとは横須賀のドブ板通りに住んでた街ねこ。それがネコミミメイドになって三笠に乗り組んで、乗組員の世話をしてくれるという設定。他のメインキャラはプロの声優さん(うちは、ちょっと中途半端)やねんけど、ネコメイド四人は現役の中学生。養成所を出てないということでは、うちと一緒やねんけど、四人とも児童劇団所属。うちよりも、よっぽどプロ。「あ、わたくしは養成所も児童劇団にも所属しておりませんの(^_^;)」手をワイパーみたいにして否定するのはミケメ役の高瀬川薫子さん。「え、せやったん?」「はい、宗武監督がうちのお店の御常連さんでして、お声をかけていただきましたの」「え、お店?」「はい、飲食店を営んでおりまして、監督はお祖...せやさかい・427『みんながんばってる!』

  • RE・かの世界この世界:184『ボロクズと奇跡の柄杓』

    RE・かの世界この世界184『ボロクズと奇跡の柄杓』テルズサッ!背後の草むらからボロクズが転がり出てきた。ウワアーー!!キャーー!!キッタネーー!!楽しく美味しくたこ焼きパーティーを楽しんでいたところに、ゴミダメの底で腐っていたようなボロクズが飛び込んできたのだ。みんなたこ焼きのトレーを持ったまま飛び散ってしまった。ボロクズには手足が生えていて、背中の所がポッコリと膨れ、頭は廃棄寸前のモップのようにギタギタに絡んで悪臭を放っている。みず……みずを……水を……ボロクズが口をきいた!?そいつは肥ツボからやっと這い上がってきたドブネズミのように臭くてグロテスクだが……人の言葉を発している。どこかで聞き覚えのある……?最初に思い当たったのはヒルデだ。「お、おまえは!?」ヒルデは、食べかけのたこ焼きトレーをほっぽり...RE・かの世界この世界:184『ボロクズと奇跡の柄杓』

  • 銀河太平記・175『冥王星の裏側』

    銀河太平記・175『冥王星の裏側』周温来アルルカンと言えば伝説の宇宙海賊だ。地球や火星のテクノロジーは太陽系の中での移動手段しかもたないが、アルルカンの船は自在に銀河宇宙を駆け巡っているという噂だ。銀河宇宙に乗り出すには最低でも光の速度で飛ばなければならない。実際には光の何倍、何十倍、何百倍の速度が出せなければ実用にはならない。光速や光速の数倍程度では、目的の星に行って帰って来るだけで数年、数十年、遠いところでは百年かかっても到達さえできない。宇宙船のような移動手段は、移動することで経済的な目的を果たせなければ、国家的あるいは惑星規模の道楽でしかない。パルスギが発見され、理屈の上では光速航行が可能にはなった。しかし、それは、石油が発見されたから飛行機が飛ぶというくらいに高い技術だ。おそらく光速以上の速度、...銀河太平記・175『冥王星の裏側』

  • 滅鬼の刃・33『学校のにおい・2』

    滅鬼の刃エッセーラノベ33『学校のにおい・2』ニオイの話が続きます。「中学校のころ、理科室の匂いが好きだった」「ああ、ちょっと酸っぱいような焦げ臭いようなニオイがしてたなあ」「よく実験をやってたから、いろんな薬品が混ざったニオイだったんだろうなあ。ろくに換気扇も無かったから」「理科部だったか化学部だったかかがあって、そこの三年生なんか、放課後は制服の上に白衣を着ていたりしてさ、なんだかそこだけ学校の平均的な雰囲気から突き抜けてたよな……あ、中三の秋にU先生に呼び出されてな」「ああ、職員室に居るよりも理科の準備室に居ることが多い先生だったなあ」「『時をかける少女』で、主人公の七瀬は理科準備室でラベンダーの匂いを嗅いで気を失なってさ、タイムリープの能力を身に付けるだろ」「あ、ああ」武者もわたしも、中三から高校...滅鬼の刃・33『学校のにおい・2』

  • RE・かの世界この世界:183『淡路の浜でたこ焼きを』

    RE・かの世界この世界183『淡路の浜でたこ焼きを』テルやればできるものだ。ケイトの言う通り、右足を出して、それが沈まぬうちに左足を出し、左足が沈まぬうちに右足を……という具合に交互に進めて行くと、背後のオノコロジマはアメノミハシラ共々霞の向こうに滲んで消えた。「これは、淡路島を抜かしてしまって四国に着いてしまったかもしれない!」ちょっと興奮気味なイザナギは浜辺の砂をキュッキュと踏みしめながら陸に上がっていく。「ハァハァ……ヤ、ヤッタア(^▽^)/」無邪気なケイトは水上歩行が上手くいったので、足を痙攣させて肩で息をしながらも嬉しそうだ。セイ!小さく掛け声をかけえてジャンプすると、ヒルデは空中で一回転して地形を確認する。ズサ「わるいがイザナギ殿、ここはまだ淡路島の南端だ。東に進むと水道の彼方に四国の陸地が見...RE・かの世界この世界:183『淡路の浜でたこ焼きを』

  • くノ一その一今のうち・69『ミュンツァーはランツクネヒト』

    くノ一その一今のうち69『ミュンツァーはランツクネヒト』そのいち英語の時間は自習になった。なんでも、先生が具合悪くなって保健室で寝てるって話。『これでゆっくり話せるね(^▽^)』え、忍び語り?『何者よ、あんた?』『アンタじゃないよ、ミヒャエル・ミュンツァー。ミッヒって呼んで』『だから何者?』『ランツクネヒト』『ランツク……?』『ランツクネヒト、日本の言葉だと……傭兵かなあ、まあ忍者みたいなもの』『ドイツ人?』『まあね、研修で徳川物産に来てるんだ』『その研修生が、どうしてわたしの後ろにいるのよ?』『え、だって、僕の担当はキミだから』『聞いてないわよ』『連絡ミスだね、確認してみてよ』『あとで』『ええ、今でもできるだろ?』『だって、先生来るよ』『え?』ガラ「やあ、迷惑かけたね、もう大丈夫だから授業やるわね」弱々...くノ一その一今のうち・69『ミュンツァーはランツクネヒト』

  • RE・かの世界この世界:182『黄泉の国を目指す神々の会・2』

    RE・かの世界この世界182『黄泉の国を目指す神々の会・2』テル歩いていくと言うのか!?いざ出発という時になって、波打ち際に向かって歩き出すイザナギに驚いた。「はい、この世界は生まれたばかりで、交通手段がないのです。すみませんが、歩いて行くしか手がないんです」たしかに、オノコロジマはアメノミハシラが太ぶとと突っ立っているだけの小島で、海の向こうは生まれて間がない裸の土地が黒々と続いているばかり。所どころに煙が立ち上っているのは、イザナギが切り刻んだ火の神の欠片が燻っているところだ。ようく見ると、それでも木々の緑が萌えはじめているところがあって、やがては豊かな森林地帯になりそうだが、道らしいものや人里らしきものは気配も無い。「はてさて……」ブァルキリアの姫騎士は、岩場の一番高いところに登って腕組みをする。潮...RE・かの世界この世界:182『黄泉の国を目指す神々の会・2』

  • やくもあやかし物語・2・001『やくもふたたび』

    やくもあやかし物語・2001『やくもふたたび』ラスボスをやっつけて、達成感と虚脱感がいっぺんにやってきた。三か月かかったゲームも、これでお終い。エンドロールが淡々と流れ、最後にスペシャルサンクス……YakumoSaitou……と出てくる。あ……プレイヤーの名前、リアルにしてたんだ。ま、いいやオフラインでやってたし……コンプリートムービーが2クール目になりかけ、オプションボタンを押してゲーム終了をクリック。ホームに戻ると、ちかごろご無沙汰の『メディア』が気になってネタフリックスにしてみる。おすすめの映画……あ、これ見れるようになったんだ!流行り病のせいで映画館で見れなかった作品が見られるようになってる!近ごろのわたし、少しは人と喋れるようになった。そのぶん、あやかしたちとはご無沙汰になった……っていうか、あ...やくもあやかし物語・2・001『やくもふたたび』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 136『信長版西遊記・玉門関・1』

    鳴かぬなら信長転生記136『信長版西遊記・玉門関・1』信長万里の長城さえ尽き果てて、なお、その道は天竺や秦西(たいせい)に至らんと地平の彼方に伸びる。シルクロード……呟いただけで胸の高鳴りを憶えるのは戦国大名の性だ。好奇進取の気概あればこそ、この信長は天下の半ばを手中に収め得たし、生まれ変われば世界に雄飛することも夢ではない。しかし、そのシルクロードには背を向けて、俺たちは三国志の中原を目指す。この旅は、三国志に戻り、曹操の野望を打ち破り、扶桑にも三国志にも平安をもたらすための旅だ。次兄曹素の姦計に嵌められ国賊として追われる茶姫を援け、叶うことなら、茶姫を魏王に座に就かせ、三国を鼎立させる。そのために、天下三分の計の主唱者である諸葛茶孔明を訪ね、孔明との、中華風に言うならば合作を計る。曹素のために、茶姫は...鳴かぬなら信長転生記136『信長版西遊記・玉門関・1』

  • RE・かの世界この世界:181『』

    RE・かの世界この世界181『黄泉の国を目指す神々の会・1』テルこいつめっ!!イザナギは太刀を振るった!突然のことに、止める暇もなかった。温厚な男のように見えているが、さすがに国生みの神だ。オーディンの威光も届かぬ流刑地ムヘンで様々な災厄に遭い、敵の襲撃を凌いできた我々でも咄嗟に対応できなかった。イザナギは、生まれたばかりの火の神を一撃で切り倒した。その斬撃は凄まじく、火の神は数百数千に爆散して、できたばかりの世界に散ってしまった。「イザナギ、気持ちは分かるが、あれでは、火のタネを増やしただけだぞ」「あ……すまない、ついカッとなって荒ぶってしまった(-_-;)」「ヒルデ、あちこちに火の山が盛り上がってきたよ」ケイトが指差す方を見ると、霞を通してもはっきりと分かるほどに赤々とした山容が浮かび上がっている。そ...RE・かの世界この世界:181『』

  • せやさかい・426『王立民俗学校開校式と8/6の新行事』

    せやさかい・426『王立民俗学校開校式と8/6の新行事』ソフィー8月1日付で中尉に昇進した。士官学校出ではないノンキャリアとしては早い昇進だ。諜報部で王女付ガードなのだから将校の階級が必要。分かるだろうか、兵や下士官では出入りできないところが、軍の施設にも王宮にも、けっこうあるんだ。日本でも『殿上人』というのがあっただろ。従五位下(じゅごいのげ)という身分。従五位下というのは天皇のお住まいである清涼殿に上がることを許される最下級の身分で、殿に上がる人と書いて殿上人だ。軍隊では将校、英語ではオフィサー、自衛隊では幹部という。単なる資格なのだから、最下級の少尉でよかった。少しサバを読んでいるが、この三月に高校を出たばかりだしな。身に過ぎた階級や位階は、時に軋轢の元になる。ヤマセンブルグは小さな国だが、王室があ...せやさかい・426『王立民俗学校開校式と8/6の新行事』

  • RE・かの世界この世界:180『休まないのか!?』

    RE・かの世界この世界180『休まないのか!?』ヒルデ普通休むだろう!神さまとは言え、たった二人で日本列島と付属の島々を産んだんだ。これは休みを取るだろ。ユダヤ教やキリスト教では、六日間で世界を作ったゴッドは丸一日の休みを取って、それが安息日たる日曜日の起源になっている。ユダヤ教では、ことに厳格だ。車に乗ってはダメで、火を起こしても電気製品のスイッチを入れてもいけない。もし破って働こうものなら死刑だ!我が北欧神話では神々の骸から世界を作っている。元来が神の体なので、ちょっと手を加えるだけで、山や湖や土地になる。だから、とりたてて安息日というのはないんだが、日ごろからこまめに休んでいる。日本神話ではイザナギ・イザナミがリアルに交ぐわい、イザナミが腹を痛めて産んでいる。(#*´0`*#)⇒スポン(#*´0`*...RE・かの世界この世界:180『休まないのか!?』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・044『不発弾・2』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記044『不発弾・2』本物そっくり!検索した写真は、まさに本物そっくり。原子爆弾の姿は小中の教科書にも載っていたし、平和学習で見た映像でもおなじみ。中学の時は社会見学で平和博物館に連れていかれ、実物大の原子爆弾模型というのも見た。真っ黒のズングリムックリで、ニックネームもパンプキンとか云う。社会見学のあとで感想文を書かされた。何を書いたかは忘れたけど、たぶん『戦争は怖いです、戦争も原爆も無い世の中を目指しましょう』的な模範解答。傑作なのが二つあった。『原子爆弾は、巨大なイチジク浣腸に四角い羽根を付けた形をしている』『原子爆弾は、悪魔のよだれ』イチジク浣腸は男子。悪魔のよだれは女子。先生は女子の方を褒めて、男子の方は「面白いけどね……」でおしまいにした。わたしは、イチジク...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・044『不発弾・2』

  • RE・かの世界この世界:179『今度は無事に……!』

    RE・かの世界この世界179『今度は無事に……!』テル(光子)今度は男神のイザナギの方から声をかけた。「おお、なんと美しい!こんなに美しい女の人に出会うのは初めてだ!なんだか、からだが震えてきて止まらなくなりそうだよ!」「そういう、あなたこそ、この上もなく美しく頼もしい男です!あまりにもたくましいので、まともに目を合わせることもできないくらい!」「そう言わずに、目を合わせて……」「合わせるのは目だけですか(*ノωノ)?」「そ、それは言わぬが花……(;'∀')」「期待も、あそこも膨らんで……(;^_^」「そ、それでは(#゜Д゜#)」「あなたぁ……ん♡」ゴックン洞に身を潜めた我々は思わず生唾を呑み込んだ。「す、す……すごい!」鼻血を押えながらヒルデが歓声を上げる。わたしとケイトは息をするのも忘れて、見守るばか...RE・かの世界この世界:179『今度は無事に……!』

  • 銀河太平記・174『救急艇』

    銀河太平記・174『救急艇』周温来ピシピシピシ!ピシピシピシ!ピシピシピシ!ピシピシピシ!しつこい奴らだ、もう死にかけているというのに、まだ撃ってくる。しかし当たらない。仕方がない、窪地からにじり出て撃たれやすくしてやろう……ジリピシュジリピシュジリジリピシュピシュ……動くたびにスーツの破れ目からエアーが漏れる。大昔の爆撃機の燃料タンクにヒントを得たというスーツは小さな穴ならオートリペアする。リペア中の穴からヘタクソの口笛のような音がして、周温来様の断末魔にしては間抜けすぎる。まあいい、聞いている者も見ている者もいない。タタタタくそ、軽やかな足音させて……間近に寄って至近距離で止めを刺そうというのか、勘弁してくれ(^_^;)『動かないで、スーツの上からだけど応急処置します』『え……』『犯人たちはぶち殺しま...銀河太平記・174『救急艇』

  • RE・かの世界この世界:178『期待に胸を膨らませ』

    RE・かの世界この世界178『期待に胸を膨らませ』テル(光子)再会を果たし、積もる話は山ほどあるんだけど、取りあえずはイザナギ・イザナミを見守らなくちゃならない。海に潜ったヒルコとアハシマにも気持ちは残ったけど、三羽のカモメのように並んでオノコロジマに戻った。「すごい大木!」ケイトが目を丸くする。確かにカテンの森(152『カテンの森』)の巨木たちが苗木に見えるほどに巨大だ。わたしもヒルデも驚いたが、ケイトほどではなかった。ヒルデは世界樹のユグドラシルを知っているし、わたしも冴子ほどではないけど日本の神話を知っている。「ほんとうは、アメノミハシラという柱だよ」沖に出て戦っているうちにアメノミハシラの周囲はさらに緑が深くなっていて、わたしたちは、ミハシラの下の方、程よく洞になっているところに身を隠した。「あち...RE・かの世界この世界:178『期待に胸を膨らませ』

  • 滅鬼の刃・32『学校のにおい・1』

    滅鬼の刃エッセーラノベ32『学校のにおい・1』この暑いなか、武者は回転焼きを持ってやってきました。「昔は、たこ焼きやってる店だったら回転焼きもやってたけどなあ、回転焼きやってる店はめったに見ない。それが、M駅の近くで見つけてなあ、嬉しくなって買ってきた」「このクソ暑いのに、元気なじじいだ」「もう年なんだからさ、一期一会だろ。涼しくなってからなんて思ってたら命がねえかもしれねえ」「ハハ、まあいいさ、茶でも淹れよう」「うんと熱いやつ」「はは、なんだか我慢会になりそうだ」「そういやなんだなあ、夏場は冷やし飴とか冷やしコーヒーとかもやってたなあ」「うんうん、でっかい氷をいくつも入れたとこに入ってて、柄杓ですくってコップに注いでくれるんだ」「そうそう、二口目か三口目で、こめかみのあたりがキーーンと痛くなってきやがっ...滅鬼の刃・32『学校のにおい・1』

  • くノ一その一今のうち・68『一週間ぶりの登校』

    くノ一その一今のうち68『一週間ぶりの登校』そのいちまたまた一週間ぶりで学校に行く。いや……二週間ぶり。甲府から戻って一週間ぶりに学校に行こうとしたら、駅前のロータリーで拉致られるようにして大阪での任務。それも、またまた多田さん始め木下家にしてやられ、かなりの金塊が国外に持ち去られてしまった。昇降口で上履きに履き替える。下足のローファーを掴もうとして屈むと、通学カバンの中身がゴソリと寄れる。ゴソリの中にえいちゃんの気配はない。えいちゃんは帝国キネマの所属なので東京には来れないんだ。仕方がない、本来のわたしは鈴木豊臣家の姫、鈴木まあやの付き人でガードなんだ。「よし!」小さく気合いを入れてローファーをロッカーにぶちこんで教室への階段を上がる。この一週間は、社長や嫁持ちさんがわたしに化けて登校してくれていた。一...くノ一その一今のうち・68『一週間ぶりの登校』

  • RE・かの世界この世界:177『最初の子は流された』

    RE・かの世界この世界177『最初の子は流された』テル(光子)キャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!オノコロジマにイザナミの悲鳴が響き渡った。「なにごとだ!?」岩陰に移って、最初に生まれるのは「男の子かなあ(^_^;)女の子かなあ(^o^;)」と心待ちにしていたわたしとヒルデは反射的に剣の柄に手をかけて産屋の窓の下に駆けつけた。「あ……あれは!?」イザナミの足元には、まだへその緒が付いたままの……ちょっと表現するのも憚られるものが転がっている。「ふ、二つか……?」さすがはヴァルキリアの姫戦士、それを見ても動じることは無かったが、どうにも判断しかねている。「一体は、手足も目鼻もない……もう一体は……」わたしも言葉にはできない。イメージとして浮かんだのは、まるでお祖父ちゃんが酒のつまみに好んでいた『いか...RE・かの世界この世界:177『最初の子は流された』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 135『信長版西遊記・オブジェの三蔵』

    鳴かぬなら信長転生記135『信長版西遊記・オブジェの三蔵』信長「沈黙の行をなさっている……ことにしよう」「「うん」」馬上に現れた三蔵法師は喋らないのだ。呼吸も瞬きもしている、話しかければ目を合わせて笑みを返してくるのだが、まるで喋らない。忠八に尋ねると『人の形はしていますがオブジェです』ということだ。NPCですらない。NPCならアルゴリズムで言葉を発するし一定の動作もする。この三蔵法師は、道端にある石ころや小動物と同じオブジェなのだ。『スマホのアプリで多少の操作ができます、必要のない時はオフにもできますので、うまくカモフラージュに使ってください』「お、おう」さあ、出発!悟空の俺が先頭で、馬に乗ったオブジェの三蔵法師、その脇を茶姫の沙悟浄、市の猪八戒が固める。ルートを探るために、俺の目の前には畳一畳ほどのイ...鳴かぬなら信長転生記135『信長版西遊記・オブジェの三蔵』

  • RE・かの世界この世界:176『国生み事始め』

    RE・かの世界この世界176『国生み事始め』テル(光子)カオスの霧はアメノヌホコが貫いていたところだけが井戸を穿ったように薄くなっている。それを頼りに、ヒルデと二人イザナギ・イザナミ男女神の後をつけ、螺旋を描いてダイブしていく。「イテ!」ヒルデがなにかに接触した、わたしは反射的に、それを避けて、螺旋の半径を大きくする。「気をつけろ、いつの間にか、ぶっとい柱になっているぞ!」ヌホコが貫いた空間が実態を備えて太い柱になっている。ヒルデとわたしのダイブに合わせて柱に文字が現れる。ダイブに合わせて赤青二色の文字が走って、まるで床屋の看板を慕って舞飛ぶ羽虫になったような感じ。「AMENOMIHASHIRA……」「アメノミハシラ……」それはアメノミハシラと読めた。「なんだ、アメノミハシラとは?」「たしか……」最初に浮...RE・かの世界この世界:176『国生み事始め』

  • せやさかい・425『回廊の流れ星』

    せやさかい・425『回廊の流れ星』さくら夕食のダイニングに向かう回廊で、星が流れるのを見た。回廊は廊下式のベランダという感じで、空も庭も広く見渡せる。この回廊から流れ星に願いをかけると願いが叶うという言い伝えがある。七夕の伝説は宮殿の人たちに感動を与えたけど、この回廊の伝説もなかなかロマンチックだ。でも、何度かチャレンジしたけど、願いは叶うどころか間に合ったこともない。「あれはね……」夕食の席で陛下が謎解きをしてくださる。「ひいお婆さまの発明なのよ」「え、発明?」ウフフ……リッチが笑う。「人知れず涙を流したいときとか、人とお喋りをしたいときとかに、あそこに佇んでいても見咎められないための言い訳」「え、そうなんですか!?」「そうよ、王女が深刻な顔をしていたり、人と話していたら、みんな気にするでしょ『殿下、ど...せやさかい・425『回廊の流れ星』

  • RE・かの世界この世界:175『オノコロジマ』

    RE・かの世界この世界174『オノコロジマ』テル(光子)始原の神々から取り返した時は二間に満たないアメノヌホコだったけど……「ん?ニケンというのはなんだ?」ヒルデがのっけから聞いてくる。そうか、ヒルデは北欧神だから日本の尺貫法は理解できない。「一間は1・8メートルのことよ。あ、まだまだ伸てる!」「お、おお!」イザナギ・イザナミが二人で手に取ったアメノヌホコは、みるみるうちに伸びて、はるか下方のカオスに下りていく。「見えなくなったぞ」「目を凝らせば見えてくると思う、このカオスにも上下の区別が出てきたし、上の方から空気が澄んできている」ズボ「なにかに突き刺さったな……ヌホコが、あんなにしなってるぞ」突き刺さった先は、まだ見えてこないけど、ヌホコのしなり具合で粘度の高い液体のように感じられる。「似ているぞ」「え...RE・かの世界この世界:175『オノコロジマ』

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