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2015/01/11

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  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・043『不発弾』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記043『不発弾』最初はフェイクだと思った。あるでしょ、SNSって、時どきウソが混じってる。地震で動物園のライオンが逃げ出したとか、コロナのころのあれこれとか、スーパーからトイレットペーパーが消えたとか。質の悪いのは、発信者が突き止められて逮捕されたりしている。これも、そうだと思った。名古屋で不発弾発見!もう、戦争から何年たってるって言いたいよ。……78年だよ!ちょっと計算に時間がかかるくらいたってる。でも、本当だった!先月の22日に発見されて、昨日の30日に撤去作業が行われた。道路工事やってる歩道と車道の境目辺りに錆びだらけのガスボンベみたいなのが顔を覗かせている。250キロ爆弾だって!こんな錆々のが爆発すんのかなあと思ったけど、カメラが切り替わると、家の高さほどに土...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・043『不発弾』

  • RE・かの世界この世界:174『目覚めた男女神』

    RE・かの世界この世界174『目覚めた男女神』テル(光子)「あの二人はテルが起こせ」「え?」霞の向こうにイザナギ・イザナミの姿が見えてくると、急にホバリングしてヒルデが言う。勢いで追い越してしまったわたしは、大きくUターンしてヒルデと並ぶ。ヴァルキリアの姫騎士は腕組みして考えている。「どうした、ヒルデ?」「いや……な、ここは日本神話の世界だ。なにかの因縁で出てきてしまったが、ここは日本人のテルが声をかけるべきだ。このアメノヌホコは、この神話を……どこまで続いているかは分からないが、偉大な出発点だろ。異民族のわたしがしゃしゃり出るべきではないと思うぞ」「それは気にしなくてもいいよ」「神話とは神聖なものだろう」「そうなのか?」「そうだ」「日本は、あまり、そういうことにはこだわらないと思う」そもそもの始まりは、...RE・かの世界この世界:174『目覚めた男女神』

  • 銀河太平記・173『周温来撃たれる』

    銀河太平記・173『周温来撃たれる』周温来流しの坑夫は便利屋だ。頼まれれば坑夫以外の仕事もこなすし、話があれば、どこにでも出かけ、たとえ半日の賃仕事だってやる。今日は、カルデラの外に出て通信設備の保守点検。月も火星も通信設備は多元化されている。日ごろはパルス通信だが、万一のことも考えて光通信や電気通信も残されている。電気通信にも二通りあって、無線と有線。無線は中継設備の点検だが、有線の方は長いケーブルを目視確認しなくてはならない。何事にもチャランポランな月社会だが、通信インフラに関してだけはキチンとしている。通信がダウンしてしまえば、悪党どもの密売や違法賭博もできなくなってしまうからね。ケーブルの点検は二人一組でやる規則になっている。組み合わせはロボットと人間という決まりになっているが、それでは人件費が倍...銀河太平記・173『周温来撃たれる』

  • RE・かの世界この世界:173『アメノヌホコ・2』

    RE・かの世界この世界173『アメノヌホコ・2』テル(光子)ヒルデと並んで飛んでいくと、カオスは出来損ないの綿アメのように疎らになり、疎らはやがてフワフワと七つの人形(ひとがた)に凝ってきた。シュゥゥゥゥゥゥ人形はジェット気流に流される雲の切れ端のような速度で突き進んでいく。人形たちの中ほどには、アメノヌホコが見え隠れする。「あいつら、アメノなんとかを盗むつもりだぞ」「取り返す!」「おお!」シャリン!ヒルデがオリハルコンの剣を抜く、さすがに異世界の名刀、冴えた鞘走りの音だ!チャリンわたしのはシケた音しかしない(^△^;)「行くぞ!」ブワァアアアアアアアア!それだけで100メガバイトは使いそうなエフェクトを残してヒルデは突撃。「させるかあああああああ!」敵に言っているのか、ヒルデに怒っているのか分からない雄...RE・かの世界この世界:173『アメノヌホコ・2』

  • くノ一その一今のうち・67『化学分析場地下の戦い』

    くノ一その一今のうち67『化学分析場地下の戦い』そのいち『地下に続いています!』「あ、ちょ……」えいちゃんはわたしの言葉を待たずに壁の向こう、地下への階段を下りて行った。壁は地下への階段を隠すための擬装だったんだ。階段の手前に部屋があったり廊下が続いていたら、えいちゃんはわたしを待っただろう。しかし、直ぐ足もとから階段が伸びていて、見通せるところまでは行ってみようと思ったんだ。単なるアシスタントではなく、洞察力を持った助手を目指そうと言う気概を感じた。だから、気弱なカンフーみたいに「あ、ちょ……」しか言えなかった。五分待って、おかしいと思った。先を見通すには時間を超えている。先行した仲間や部下が戻ってこないのは事故があった証拠。並の忍者なら、直ぐにその場を離れる。別のルートを探すか、調べ直して日を改める。...くノ一その一今のうち・67『化学分析場地下の戦い』

  • RE・かの世界この世界:172『アメノヌホコ』

    RE・かの世界この世界172『アメノヌホコ』テル(光子)ヒルデと二人で手を繋いだ。手を繋いでいないと、上下も判然としないカオスの中をグルグル回って、いつ離れ離れになるか分からないのだ。重力が無いので、髪が大変なことになっている。ホワホワとタンポポの綿毛のように広がってしまっている。「ウ……口の中に入った……」ヒルデの方に顔を向けようとしたら、慣性の法則で顔の前に残った髪が口の中に入ってしまう。プペペッペッ「ジッとしてろ」ヒルデがわたしを手繰り寄せ、脚でわたしをホールド。フリーにした手で手際よく髪をまとめてくれる。ヒルデ自身は、いつの間にやったのか軽やかなポニーテールにまとめてしまっている。さすがはヴァルキリアの姫騎士だ。「なんだ?」「あ、今までのヒルデはツィンテールだったから」「あ、とっさにやってしまった...RE・かの世界この世界:172『アメノヌホコ』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 134『西遊記でいこう!』

    鳴かぬなら信長転生記134『西遊記でいこう!』信長「「「なぜだ!?」」」三人の声が揃った。俺たちが変身したのは、サル(信長)ブタ(市)カッパ(茶姫)の三人、いや、三匹だったのだ!「お兄ちゃん、サルに似てる!」「いや、似てるどころか猿そのものだろう?」俺たち兄妹がいうサルは、茶姫の頭に浮かんだ猿ではない。秀吉のことだ。「で、わたしは、なんでブタなのよ(`_´)?」これまで、扶桑でも三国志でもいろんな目に遭ってきたので、少々のことでは驚かないが、ブタにされた市は機嫌が悪い。「ああ……まあ、ブタにしては器量がいい方ではないか」「んもーー!」両手で顔をクシャクシャする市……すると、鼻だけが人間に戻った。「ん~~ブタ面に鼻だけが人間というのも気持ちが悪いかもなあ」茶姫が腕組みをする。「じゃあ、目だって!」もう一度ク...鳴かぬなら信長転生記134『西遊記でいこう!』

  • RE・かの世界この世界:171『最初の仲間』

    RE・かの世界この世界171『最初の仲間』テル(光子)ひょっとしたら分岐?ハチャメチャな異世界を巡ってきたけど、あとから思うと分岐のようなところがいくつもあった。その時は分岐だなんて思っていなかったから、流れるままに身を任せたけども……。いま形を現わそうとしている仲間は、はっきりイメージを思いうかべないと、とんでもない事態になっりかねない。冴子との関係がこじれたのも、肝心の時にきちんとした選択ができていなかったからだ。ええと……ええと……ケイト……ヒルデ……タングリス……タングニョースト……ロキ……ポチ……ユーリア……ナフタリン……とストロボのように巡っていく。あ……あ……迷っているうちに、その巡りそのものが薄くなり始めてきた。このままでは消えてしまう。シュボン!唐突にエフェクトが入ったかと思うと、それは...RE・かの世界この世界:171『最初の仲間』

  • 滅鬼の刃・31『H先生の大声』

    滅鬼の刃エッセーラノベ31『H先生の大声』武者走は、よく武者小路と間違われていました。武者走という苗字は稀で、武者小路は、みなさんご存知のように白樺派の大作家であります。学校の教科書や副読本にも必ず出ていて、作品を読んだことが無い人でも名前は知っていますでしょう。飲み屋のお品書きの横に――仲良きことは美しきかな――と書かれた野菜の絵がありますが、あれの作者です。武者走のフルネームは武者走幸次(むしゃばしりこうじ)と云います。約めれば「むしゃこうじ」で、武者小路と言っても、そうそう間違いでもないというのが奴の理屈です。郵便物も『武者小路』と誤記されていても、ちゃんと届くそうです。「でも、一度だけ新米の郵便屋が『武者足さんのお宅でいいんでしょうか?』って訊ねてきやがった」「むしゃたり?」「ああ『むしゃたり』っ...滅鬼の刃・31『H先生の大声』

  • せやさかい・424『原作を読んでみる』

    せやさかい・424『原作を読んでみる』さくら『宇宙戦艦三笠』は、四人の高校生が三笠に乗って、宇宙の冒険の旅に出るお話。艦長修一(CV小早川凜太郎)航海長樟葉(CV百武真鈴)砲術長天音(CV酒井さくら)⇐うち(^_^;)機関長トシ(CV花園あやめ)三笠の動力は『思い出エナジー』云うて、メンバーの思い出。思い出が昇華されることで三笠は突き進んでいく。三回にわたって思い出が語られ、その度に三笠は増速して太陽系を脱して銀河宇宙に乗り出す。来週は、いよいようちの天音の思い出がテーマ。監督や演出との話で――そうなんや――と、分かったつもりでおった。しかし、いよいよ自分の天音の回が迫って来ると――これでええんやろか(-_-;)?――という気持ちになる。それで、収録まで間がある今日は、原作の『宇宙戦艦三笠』を読み返す。声...せやさかい・424『原作を読んでみる』

  • RE・かの世界この世界:170『飛ぶぞ!』

    RE・かの世界この世界170『飛ぶぞ!』光子飛ぶぞ!その声は時美先輩だ。声の背後に息をのむ気配、これは美空先輩だろう。突然の決心に二人の先輩は短く声をあげることと息をのむことしかできなかったようだ。駅前の風景はグニャグニャになって渦を巻き始め、体がフワリと浮き上がったかと思うと、渦の中心に鈍色の穴が開いて引き込まれていく。仕方ない、ここからは自分でやるしか……これまでもそうだったけど、わたしの時空の飛び方に脈絡は無い。たとえ、犬のウンコを握りつぶしたことがきっかけであったとしても、自分の選択だ。前を向いて行くしかないよ。洗濯機の中を思わせる時空の渦の中をグルグル振り回されながら落ちていく……目が回るようなことはなかった。手にこびりついた犬のウンコが遠心力で飛び散ってきれいになっていく。よかった、ババ掴みの...RE・かの世界この世界:170『飛ぶぞ!』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・042『EXPO70』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記042『EXPO70』え、宮之森の人口より多いんですか!?開場の一時間前から並んでんだけど、人波の中、ゲートの屋根さえ見えない。それで、直美さんが気晴らしに話してくれる。「うん、この分だと、80万人はいくって話だよ」万博は夏休みに入って入場者がうなぎ上り、昨日は宮之森の人口に匹敵する75万人の入場者があったそうだ。「むろん朝の開場から夜に閉めるまでの総合計だから、同時に入ってるのは20万くらいかな?」「それでも、うちの学校の……200倍ですよ!」「あはは、そうなるか(^_^;)」「…………」会話が途絶えて、とたんに蝉の声が耳に付く。前後左右には、わたしたち同様に開場を待ってる人たちがひしめいているんだけど、ほとんど話声がしない。ゲートが開いたら、我先に飛び出してお目当...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・042『EXPO70』

  • RE・かの世界この世界:169『再びの決意』

    RE・かの世界この世界169『再びの決意』光子そうだったの……。お茶のエッセンスを絞り切るように急須を上下させて美空先輩は呟いた。「完全じゃないと思うけど、このあたりで手を打つか」時美先輩が、見かけのボーイッシュさとは裏腹な優しい手つきでケーキをお皿に移す。「ハハハ、不思議か?」「あ、いえ」「普段は雑だけど、ここ一番という時は丁寧にやるんだ」「時美はね、思ったよりも見かけにこだわるのよ」「潰れたケーキってやだろ。三人で食べるんだったら三つとも綺麗にしとかなきゃつまらん」「そうですね」時美先輩のこだわりにホッコリする。「さ、いただきましょ(^▽^)」美空先輩は解れるような笑顔でケーキにフォークを入れる。「……おいしい」久々に(現実世界では二時間ほどしかたってないんだけど)先輩といただくケーキはため息が出るほ...RE・かの世界この世界:169『再びの決意』

  • 銀河太平記・172『実験プラントのマス桜』

    銀河太平記・172『実験プラントのマス桜』緒方未来「ほかにご質問が無いようでしたら、時間も押してまいりましたのでお開きにさせていただきたいと存じます」「写真いいですか!?」「サインしてください!」「動画かまいませんか!?」「かわいい!」「握手!!」てな要望が会場中から出て……シンポジウムはアイドルの営業のようになってしまった。「一列に並んで欲しいのよさ!ご要望にお応えしゅゆのよさ!」「次の予定も迫っていますので、これで打ち切らせていただきます!」ダッシュがマネージャーのように立ちふさがり、わたしがかっさらうようにしてテルを控室に連れ帰る。「もうちょっとやっててもよかったのよしゃ(^▽^)」「あんたも調子にのるんじゃないわよ」「らってらってぇ!」「らってじゃねえ!」「控室、しょっちなのよさ!」「「こっち!」...銀河太平記・172『実験プラントのマス桜』

  • RE・かの世界この世界:168『ほとんど元の世界』

    RE・かの世界この世界168『ほとんど元の世界』光子学校の中を一通りまわってみた。そんなに居るわけじゃないけど、友だちにも声をかけたり視線を向けたり。みんな返事をしてくれる、手を振ってくれる、笑ってくれる、ピースしてくれる。冴子が他人になってしまった以外は何も変わっていないように感じる。クラスの友だちも普通に話しかけてくれるし、席に戻って五時間目の教科書を出すと、表紙の隅に憶えのあるシミがちゃんとついている。黒板に目を向けると……今日は日直だ。そうだ、日直だった。日直の最大の仕事は黒板を消すことだ。改めて確認すると、四時間目の板書はきれいに消してある。相棒の戸倉さんがやってくれたんだ。「ごめん、戸倉さん、ボーっとしてて日直忘れてた(^_^;)」「いいわよ、寺井さん考え事してたみたいだったし」「え、あ、ちょ...RE・かの世界この世界:168『ほとんど元の世界』

  • くノ一その一今のうち・66『天守から四方を探る』

    くノ一その一今のうち66『天守から四方を探る』そのいち怪しいと言えば何もかもが怪しい。甲府城とちがって、大阪城は何度も戦火に遭っている。単に破壊と再建が繰り返されたというだけではなくて、戦いの度に堀も石垣も姿を変え、その上に載っている建物も建て替わっている。当然、そのたびに大勢の人たちが傷つき無念の最後を遂げている。いまの天守閣は昭和になって再建された鉄筋コンクリートだし、そもそもは徳川の天守。秀吉の天守は、すぐ東隣の貯水施設の位置にあった。西の丸には、秀吉の死後、主のように居ついた家康が作った天守もあった。天守の直ぐ南には商業施設ミライザ大阪城。クラシックな中世のお城の形をしているけど、元々は旧陸軍の師団本部。ミライザの前は本丸広場だけれど、かつては紀州御殿があった。名前の通り紀州の和歌山城から移築され...くノ一その一今のうち・66『天守から四方を探る』

  • RE・かの世界この世界:167『冴子!』

    RE・かの世界この世界167『冴子!』光子モニターに映る三つ子ビルは傾きながらも立っている。三つ子ビルは、異世界を含むこの世の全てを現わす模式図だ。世界樹に似ている。一つのビルが崩れてしまうと、影響を受けて他の二つも倒れてしまう。そして、それぞれのビルには無数の部屋があって、その無数の部屋が無事であることで安寧を保っている。逆に、ビル全体が無事でなければ、一つの部屋を安寧に保っても意味がない。それを理解して、わたしは異世界への旅に出たんだ。「世界は無事なんですね……」「うん、光子ががんばってくれたからな」「安心はできないけど、しばらくは大丈夫。あなたの周囲も、かなり改善されたわ」「光子が卒業するまでは無事でいられると思うよ。まだ、やらなきゃならないことはあるけど、もう寺井光子でなくてもいい」「そうよ、生徒...RE・かの世界この世界:167『冴子!』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 133『紙飛行機西へ』

    鳴かぬなら信長転生記133『紙飛行機西へ』信長眼下に大森林が広がる。三国志と扶桑を隔てる緩衝地帯。境目の大樹林だ。その向こうには東西に長城が横たわり、所どころの木の間隠れに長城の物見櫓が窺える。このまま進んでは、長城どころか、三国志の北半分からは視認されてしまう。茶姫の働きで商人たちの行き来は回復したが、潜在的には敵同士、まして我々(信長・市・茶姫)は曹操から敵認定される身。このまま越境するわけにはいかない。「お兄ちゃん、どこから潜り込むつもり?」「西へ抜ける」「西、卯盃(ぼうはい)か?」「さらに西、天山山脈と崑崙山脈の間だ」「テンザンサンミャク?コンロンサンミャク?」「信長くん、それって、ゴビ砂漠ではないのか!?」「ゴビサバク?」市の地理的知識は三国志止まりのようだ。かく言う俺も平手の爺から聞いた西遊記...鳴かぬなら信長転生記133『紙飛行機西へ』

  • RE・かの世界この世界:166『帰還』

    RE・かの世界この世界166『帰還』テル(光子)ドグァッシャーーーン!!!カテンの森で野営の準備をしていると、森の奥から百年分の雷が落ちるような音がした。反射的に身を伏せると地震のような衝撃が続き、森の鳥や小動物たちが逃げてくる。すぐに四号の仲間と共に駆けつけると、トール元帥の戦車部隊がグチャグチャに撃破され、森の木々をなぎ倒して無残な姿をさらしていた。なんということだ……最前線で手ひどくやられ、全滅寸前にワープして撤退してきた様子だ。戦車と言うものは、外骨格の怪物で、撃破されてもおおよその形は残るものだ。それが、超重戦車の六号でさえ、ひしゃげた缶詰のように形を留めていないものがある。缶詰たちの周囲にはバーベキューの途中で放り出された肉のようなものがいくつも転がり、あるいは缶詰からはみ出ていた。その残骸と...RE・かの世界この世界:166『帰還』

  • せやさかい・423『小鳥遊先生に呼び出される』

    せやさかい・423『小鳥遊先生に呼び出される』さくらちょっとマヌケ。夏休みに入って、もう四日目やいうのに制服着て電車に乗ってる。『朝から会議だから、いつもの登校時間に来てもらえるかなあ』担任の小鳥遊先生に『終業式に出られなくてすみませんでした』の電話を入れて、先生と都合を合わせたら22日のこの時間になった。ホームも車両の中も制服の高校生いうのはほとんど居てへん。スマホを出して動画を観る。こないだ『たこやきテレビ』に出た時の留美ちゃん。もう何回も観てるねんけど、親友の晴れ姿は何べん見てもええもんや。関連して、他の画像やら映像も観れるしね(^▽^)留美ちゃんは、うちよりも映える。放送局で思わず眼鏡をとったときの画像。アニメ『JK戦士』のポップがロビーに立ってて、それが自分に似てるんで慌ててとったとこを写真に撮...せやさかい・423『小鳥遊先生に呼び出される』

  • RE・かの世界この世界:165『非常食』

    RE・かの世界この世界165『非常食』ポチ宿のオジサンがハンマーを振り下ろして……意識が飛んだ。意識が戻ると、真っ白な中を漂っている。もし、真っ白じゃなくて真っ暗闇で、無数の光のドットが点滅していたら宇宙空間に放り出されてしまったのかと思う。だって無重力で浮かんでいるんだからね。自分の手足を見ると、もうベスの姿じゃない。フェンと出会った時の女の子の姿。他に比較できるものがないので、等身大なのか1/12サイズに戻ってしまったのかは分からない。しばらく漂っていると、頭の方から風を感じる……あ、こっちが下なんだ。そう思って、頭を巡らすと、真っ白な中に緑が浮かび上がって、緑の先が細かいトゲトゲになっているので森の上に落ちているんだと分かる。ちょっと、いろんなものが焦げる臭いと血の臭いがしたかと思うと、緑の真ん中が...RE・かの世界この世界:165『非常食』

  • 滅鬼の刃・30『栞と来客』

    滅鬼の刃エッセーラノベ30『栞と来客』『お祖父ちゃん、お友だちがいらっしゃったわよ!』図書館に行くと言っていた栞が階段の下から呼ばわります。ドアホンの調子が悪いので、来客は玄関の戸を叩いています。「はい、どちらさまでしょうか?」「○○と申します、大橋さんは御在宅でしょうか?」「あ、祖父ですね、少々お待ちください」というやり取りがあって、最初の『お祖父ちゃん、お友だちがいらっしゃったわよ!』に繋がります。栞は、こういうところがあります。来客があると、その声の調子でおおよそのところを察してしまいます。セールスや勧誘などは、いちいちわたしに次げずに対応し、たいていは撃退してしまいます。わたしへの来客も、勘なのか、どこかで憶えたのか「町会の○○さん」「公〇党の▢▢さん」「共〇党▢▢さん」「同窓の○○さん」「お友だ...滅鬼の刃・30『栞と来客』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・041『テスト休みと終業式と』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記041『テスト休みと終業式と』テスト休みというらしい。「え、うそっ」小さく叫んでしまった。期末の最終テストが終わったホームルーム、藤田先生が「明日から休みだけど……」と切り出した。で、あとの説明も聞かずに喜んでしまった。「この間、先生たちは採点をしたり成績を付けたり会議をしたりする。出来の悪い奴は終業式までに呼び出して指導することもあるから、バイトなんかしてないで家に居ろ」付け加えた但し書きは気いちゃいない。とにかく、このクソ暑い中、冷房も無い(扇風機すら無い!)学校に来なくていいというだけでラッキー!テスト休みは四日間。うち二日は冷房の利いた希望が丘の結婚式場で撮影助手のアルバイト。そして、七月二十日の今日は終業式。家と結婚式場の冷房に慣れてしまって、ちょっとゲンナ...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・041『テスト休みと終業式と』

  • RE・かの世界この世界:164『瀕死のトール元帥』

    RE・かの世界この世界164『瀕死のトール元帥』テルドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!少年巨人族のアドバイスで野営のテントを張り終えたとき、森の中央あたりでとんでもない音がした。「え、なに?」ペグを打つ手が止まって、目を向けた時にはヒルデもタングリスも駆け出している。「ケイト、行くぞ!」「うん!」「わたし」「ユーリアは少年と残れ!ロキもだ!」ペグもハンマーも放り出し、ケイトと並んでカテンの森を奥に向かって走る。ヒルデたちの姿は見えなくなっているけど、森の真ん中と思われるあたりから煙が立ち上っているので、それを目当てに奥を目指す。奥に近づくにしたがって、鉄と油と肉の焼ける臭いが濃くなって息苦しく、目もシカシカしてくる。うわあ……………………(;'∀')言葉にならなかった。学校の校庭ほどの範囲に木々がな...RE・かの世界この世界:164『瀕死のトール元帥』

  • 銀河太平記・171『緊急招集かぁ!?』

    銀河太平記・171『緊急招集かぁ!?』緒方未来明日からまたパスカルの診療所。めちゃくちゃ気が重い。鉱山の医務室で発見したメディカルストックの不正会計。金額は知れている。一年分の操作でわたしの給料一か月分ちょっと。あくる朝には「適性」な数値に書き換えられていたから放っておいても、そうそうまずいことにはならない。この程度のことは開発の重点が月から火星に移った百年以上昔からある。しかし、いっしょに確認したのが、軍警の三等兵、いや三等軍曹で幼なじみのダッシュ。それに、老中だったお祖父ちゃんの顔もチラつくしね。月よりもマシな火星の中でも、扶桑はとびきり清廉な国だ。国民の九割が日系、政体は征夷大将軍を元首にいただく幕府の体制。そこで育った人間として、やっぱ見過ごしにはできない。重い腰を上げてシャトル便の時刻を調べる。...銀河太平記・171『緊急招集かぁ!?』

  • RE・かの世界この世界:163『フギンとムニン』

    RE・かの世界この世界163『フギンとムニン』ポチ……ちょっと予定が狂った。オーナーのオジサンがうつむいたまま呟いたよ。あんまり密やかな声なんで、どこかに人が隠れていて、思わず漏れた声かと思ったくらい。でも、すぐに顔を上げて、あたしとダグ(フェンリル二世)の顔を見たんで、オーナーだと分かった。「仕方がありません、ここで処理しましょう」オバサンもゆっくりと顔を上げたよ。ダグはどうしているのかとチラ見したよ。「え……ダグ?」ダグは「ところで、オーナーさんたちは半神族じゃありませんね……」の、最後の「ね……」の顔のまま固まってしまっている。「いやはや、おどかしてごめんね、ポチ」「ポ、ポチ(゚Д゚)!?」いきなり真名で呼ばれてしまったんで、思わず両手で頬っぺを挟んで、ムンクの『叫び』みたいに驚いてしまったよ。「あ...RE・かの世界この世界:163『フギンとムニン』

  • くノ一その一今のうち・65『再びの秀長さん』

    くノ一その一今のうち65『再びの秀長さん』そのいち豊国神社の秀長さんに挨拶してから本丸に向かった。秀長さんは詫びてばかりだった。『そうか、空堀はフェイクでしたか……いやはや、はんぱなことを教えてしまって、かえって木下に利用されてしまいましたね、申しわけない』「いえ、お守りのお蔭で助かりました」『少しでも役に立ったのなら嬉しいです……確かに天守の北側に抜け穴を作るという話はありました』「あったんですね?」『北側には、元々、大川の水を引き込んで舟入にしたところがあったんです。建築資材やら城内で入用なものを運ぶには便利です。大阪湾から直接船で運べますからね。でも、それは城の内側に作られていて、外側への連絡はありません』「船で侵入されることは想定していなかったんですか?」『同様な舟入は石山本願寺のころからあります...くノ一その一今のうち・65『再びの秀長さん』

  • RE・かの世界この世界:162『街はずれの宿』

    RE・かの世界この世界162『街はずれの宿』ポチあれ…………?そう言ったきり、ダグ(フェン)は車を止めてしまった。「どうかしたの?」「街の様子が変わってしまってるんだ……大きくなってるし……」わたしは初めてだから、大きいもなにも分からないんだけど、ダグの表情から、うかつにデミゴッドブルクには踏み込めないということは分かった。「さっきの車で、てっきりデミゴッドブルクは縮んでいると思ったんだが……」「どういうこと?」「あの婆さんは命のあるうちに葬られようとしていた。半神族は肉体が滅ぶと神になる。だから肉体には未練が無いんだ……だから、肉体のための街や世界にも未練がないんだと思っていたんだが……それが、このありさまだ。うかつには踏み込めない」市街地からは一キロほど手前だけども、建設中の機械や工事車両の音が聞こえ...RE・かの世界この世界:162『街はずれの宿』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 132『忠八の慰労会』

    鳴かぬなら信長転生記132『忠八の慰労会』織部「そがなことなら、うちが案内しょう」乙女会長は気安く腰を上げ、わたしと武蔵の前を歩いた。学園に二宮忠八を訪ねたんだけど、約束の時間になっても現れない。それで生徒会室に行ったら、生徒会長自らが案内してくれることになったんだ。「いやあ、あそこは、学園の中でもいちばんややこしいところにあるきなあ、案内無しではぜったい迷うぜよ」「忠八くんは、ずいぶんと忙しいようですね」「もうしわけない。飛行部は場所をとるんでクラブハウスには収まらんき、奥の奥に行ってもろうちゅー。いまは、クラブ予算の折衝の時期やき、ちっくと走り回っとるんや思う。校内放送も頼んじょいたきね」『飛行部の二宮忠八くん、二宮忠八くん、御来客ですので至急部室にお戻りください。繰り返します……』「あ、さっそく……...鳴かぬなら信長転生記132『忠八の慰労会』

  • RE・かの世界この世界:161『棺の中から』

    RE・かの世界この世界161『棺の中から』ポチ四人とも固まってしまったよ(;゚Д゚)。吸血鬼がベッドに使っているのでなければ死体が収まっているはず。その棺桶から声がしたんだからね。でも、固まり方が違う。あたしはオカルト的な驚き、フェンは犯罪の証拠を見てしまったように驚き、中年夫婦はちょっとした隠匿物資を見つけられたような驚きだったよ。『あ……だれか、人がいるのかい?』気まずそうに棺の声が続いた。「実は……棺の中は母なんだ。死亡予定日には間があるんだけど、仕事の都合で、今日しか墓地にいけなくってね……そりゃあ、死亡前埋葬は違法だけども、みんなやってることだし……むろん、母の意思は確認したよ」「そうなの、そもそも言い出したのはお義母さんの方からなの。そうでしょ、お義母さん?」すると、ほとんど音もなく棺の蓋が開...RE・かの世界この世界:161『棺の中から』

  • せやさかい・422『毎朝テレビ』

    せやさかい・422『毎朝テレビ』留美生まれついてのコミュ障はだいぶマシになった。普通に学校に通えてるし、クラスメートとも普通に喋ることができる。ときどき来られる檀家の方々との応対も「留美ちゃんがいちばんええなあ」とテイ兄さんに言ってもらえるようになった。むろん人あたりの良さとか元気さでは、さくらに敵わない。でも、お寺の応対って、法事や月参りのこと、時どきお葬式や報恩講などのお寺の行事やお付き合いの話。きちんと内容をお聞きして、メモを取って住職のおじさんや副住職のテイ兄さんにお伝えすること。あらかじめ分かっていることなら、それに沿ってご返事をしておくこと。連絡係り、大げさに言うと秘書的な感じ。それに、お寺の人間として対応の型というのがあって、それを見に付けてしまえば、さほど難しくはない。メインはもちろん坊守...せやさかい・422『毎朝テレビ』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・040『サラダパスタとパストフィックス』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記040『サラダパスタとパストフィックス』葦船の話で盛り上がった帰り道。戻り橋を渡っていると、無性に志忠屋のサラダパスタが食べたくなる。サラダパスタと銘打ってるけど、まあ、冷やし中華のパスタ版、志忠屋の夏の限定メニュー。なんか秘密の薬味が入ってるとかで、ちょっとクセになる味。ちょっぴり汗は出るけど、食べた後、半日ぐらいは元気でいられる。戻り橋に差し掛かったところで、スマホが着信のシグナルを奏で、渡りながら見ると、音信不通と言っていいお母さんのボーナスが振り込まれ、わたしへのおすそ分けが振り込まれたというラッキーなお知らせ。それで、瞬間でサラダパスタが思い浮かんだわけ。戻り橋を渡って、一つ上の寿橋を渡って戻る。寿橋を渡れば令和の宮之森。MS銀行でお金を下ろして角を曲がると...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・040『サラダパスタとパストフィックス』

  • RE・かの世界この世界:160『国民的大衆車フォルクスオーパー』

    RE・かの世界この世界160『国民的大衆車フォルクスオーパー』ポチ二号戦車のゲペックカステンにソウルを入れてやると古いセダンに化けた。「これは二世代前のフォルクスオーパーだ」「フォルクスは国民的……オーパーは歌劇場だったっけ?車が歌劇場?」「丈夫で燃費もいいんだけど、走らせると、いろいろ賑やかでね。開き直って、そんな名前をつけたんだ。国民的大衆車だったんだけど、デザインも垢ぬけないし、社会が豊かになると売れなくなったんだ」フェンは、そう言うけど、カクカクしたボディーは四号や二号に通じるものがあって、とっても実直なイメージで好ましい。ドアを開けると銀行の金庫のような、閉めると大砲の尾栓を閉じるような音。シートにお尻を沈めると象さんがオナラをしたような音がして、体格に合わせてシートを前にやるとライフルがリロー...RE・かの世界この世界:160『国民的大衆車フォルクスオーパー』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・039『蝉と葦船』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記039『蝉と葦船』ミーーンミンミンミ――ミーーンミンミンミ――弾道ミサイルの警報か!?というくらい、そいつらは突然に鳴きだした。セミ!セミですよ!セミ!セミなんて21世紀の令和でも鳴いてんだけど、こんな唐突なのは初めて!五月の中ごろから開けっ放しの教室の窓から、突然のセミの大合唱!1年5組の教室は二階で、五月の席替えで窓際になったわたしの真横、二メートルも離れていない中庭の木でセミが鳴きだした。全身がビクッとして、机がガタッって震えた。教室のみんなは全然ビックリしていない。ソロっと様子を見ると、お仲間のたみ子・真知子・ロコが――どうした?――という顔で、十円男は――バカか――という目で見ている。数学の先生は、そういう、わたしとみんなの反応も含めてセミを無視!こういう人...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・039『蝉と葦船』

  • RE・かの世界この世界:159『デミゴッドの墓地・2』

    RE・かの世界この世界159『デミゴッドの墓地・2』ポチいくつもお墓は見てきた。人と言うのは川沿いに住むもので、お墓も川を臨む丘の斜面とかに並ぶ。それにムヘン川は最前線になることが多くて、石を一個置いただけの兵士や犠牲者のお墓もある。霊魂と言うのは死んでもなかなか肉体から離れられないもので、お墓の傍に寄ると時どき頭が痛くなったりする。あたしはシリンダーだったので、そういう霊的なものには人よりも鋭いみたい。ところがデミゴッドの墓地というのはアッケラカンとしていて、霊的なものを何も感じない。「デミゴッドは半神。つまり半分神さまだから、死んだら魂は神界に上って神になるんだ。だから、お墓は抜け殻の肉体だけが葬られている。だから怖くはない」うん、怖くはないよ、霊ってご近所の皆さんて感じだったし。「でもね、中には神で...RE・かの世界この世界:159『デミゴッドの墓地・2』

  • 銀河太平記・170『パスカルの原理』

    銀河太平記・170『パスカルの原理』周温雷おお!やったあ!なるほど!こんな手があったんだぁ!温雷えらい!「いやいや、ちょっと思いついたことが上手くいっただけ。さ、仲良く並んで手も顔も洗おうぜ」おお(^▽^)!三日前から続いている水道のトラブルを直して、みんなが喜んでくれている。「いやあ、これで少しは落ち着いて食べてくれるでしょ」食堂のオバチャンたちも喜んでくれて、まあ、めでたくケリが付き、俺もトレーを持って列に並ぶ。俺が来たころからポンプの具合が悪くて、食堂は水圧が上がらずに困っていた。ようやく予算がついてポンプを交換したんだが、今度は水圧が高すぎて水しぶきがひどくなった。技師が来て、ポンプの調整をやったんだが、これが、なかなかうまくいかない。「いやあ、この方法には思い至りませんでした」ハゲの技師は喜んで...銀河太平記・170『パスカルの原理』

  • RE・かの世界この世界:158『デミゴッドの墓地・1』

    RE・かの世界この世界158『デミゴッドの墓地・1』ポチ半神族ってどんなの?素朴な質問をしたよ。シリンダーの変異体であるあたしはモノを知らない。1/12の人型妖精に変異してから、ずっと四号戦車の五人といっしょだった。冒険の旅の中に居たので知らないことがいっぱいある。素朴すぎるかもと思ったけど、変に知ったかぶりしているよりもいいと思ったから。自分が変異体だというのを言いそびれてるだけで気持ち悪いもん。「人と神さまの間に生まれた種族だよ」「人と神さまの間?」「その前に、乗り物が必要だな……この魔法石に乗り物のイメージを吹き込んで」「どこかに行くの?」「ああ、目標達成にために。とりあえず人里に出なくちゃ」「うん…………」思いを込めると、魔法石は二号戦車になった。ずっと四号に乗っていたから乗り物と言うと戦車になっ...RE・かの世界この世界:158『デミゴッドの墓地・1』

  • くノ一その一今のうち・64『木村重成』

    くノ一その一今のうち64『木村重成』そのいち朝ごはんもそこそこにスタジオに行く。相変わらず、セットはてんでバラバラの方向を向いているけど、ケーブルや道具の置き方にはルールや法則があって、憶えてしまうと気にならなくなっていた。真っ先に机の上に目をやるけど、今回は小道具として置かれてる古いのばかり。『あ、あそこです』えいちゃんがメモのありかを教えてくれる。こないだは机の上に置いてあったけど、今日は天井に貼り付けてある。ホームズの事務所らしく、その都度メモの場所が変わるみたい。「よく見つけたわね」『はい、付き人ですから』「ありがとう」たぶん事前にチェックしていたんだ、よくできた付き人だ。――五番のセットに行きたまえ――前回とは違って、スタジオ内のセットを指定してきた。『五番のセット……』これは事前には分からなか...くノ一その一今のうち・64『木村重成』

  • RE・かの世界この世界:157『ポチからポナへ』

    RE・かの世界この世界157『ポチからポナへ』ポチ目標って……?直球過ぎたのか、フェンリル二世はゴクンと息をのんだ。ヘタに答えると、その答えに質問が出てきて、その質問に答えると、さらに質問が出てくるという質問のラビリンスに落ち込みそうな顔をしている。まあ、仕方がない。わたしは、なんとしてもカテンの森のみんなのところに戻るんだから、フェンリル二世の目標を確かめても仕方のないことなんだ。「えーと……ユグドラシルを救うのが目標……的な?」「ありがとう、答えにくそうな質問に答えてくれて」「きちんと答えようと思ったら、明日の朝くらいまでかかりそうなんでね」「いいわよ、わたしも明日の朝くらいまでには戻りたいから」「そうだね、戻れるように知恵を絞ろう……伏せて!」「どうしたの?」「半神の使い魔が……」這いつくばって息を...RE・かの世界この世界:157『ポチからポナへ』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 131『再び南へ三国志の空へ』

    鳴かぬなら信長転生記131『再び南へ三国志の空へ』信長20ノットか……そう呟くと、信玄は背後の騎馬隊を振り返った。これから……川中島の合戦が始まろうというわけではない。実際、馬上の信玄は鎧兜の戦装束ではなく、赤のタンクトップにショートパンツ。暑さに耐えかねた女性騎手が規定ギリギリの薄着で天皇賞のレースに挑むような形(なり)だ。信玄の背後には、同じ装束の武田の騎馬娘50騎が二列で続いている。騎馬列の間にはロープがあって、ロープからは左右に25本ずつの枝が伸びて50騎の鞍壺に括り付けられ、先端は信玄の馬に連結されている。そして、ロープの末は俺たちが乗っている特大の紙飛行機に結わえられ、この双ヶ岡の南斜面には学院学園のスタッフや見送りの者が200人以上集まっている。「すみません、信玄さん。御山の南斜面では滑走距...鳴かぬなら信長転生記131『再び南へ三国志の空へ』

  • RE・かの世界この世界:156『魔法石』

    RE・かの世界この世界156『魔法石』ポチドドドドドドドドドーーーーーーーン!!!!小石一つを放り込んだとは思えない音がした(;゜Д゜)。「なんか、とんでもない音がしたよ……」「穴が崩壊した……」「あんなチッコイ物で?」「九つの世界は、好き放題に国境を固めたからね……ユグドラシルって、本来は樹木だろ。樹木と言うのはしなやかなものだけど、固めてしまうと柔軟性を失って、ちょっとした刺激で崩壊してしまうことがある……」「そ、それにしても、凄すぎない?」「きみが籠めた想いって、どんなの?」「『スヴァルトアルムヘイムに来てしまったけど、すぐに戻ります』的な?」「ごく普通だよね……ごめん、もう一度籠めてくれる?」「う、うん……」さっきと同じように魔法石に「すぐ帰る」的な想いを籠めた。それを渡すと、フェンリル二世は目の...RE・かの世界この世界:156『魔法石』

  • せやさかい・421『王室名誉衛士ボビー』

    せやさかい・421『王室名誉衛士ボビー』詩(ことは)宮殿で暮らしはじめて、ほとんど時計を見なくなった。宮殿には女王陛下を頂点として、王女のリッチ(頼子さん)、ガードのソフィー、それに、それぞれの部署や係りを担当する人たちが、分単位、秒単位の正確さで生活したり働いたりしている。5時半には、宮廷庭師のチャーリーさんが猫車(一輪車)を押しながら庭園の花や草木を見回る。6時には制服姿の衛士、これは当番制で日によって人は違うんだけど、どの衛士さんも同じ時間、同じリズムで同じ経路を通って巡回していく。窓を少し開けて耳を澄ますと、厨房や宮殿のあちこちで朝の準備をする声や物音がかすかに聞こえてきて、いとおかし。7時には、宮殿の親時計が時報の鐘を鳴らして本格的に宮殿の一日が始まる。そして、そこから始まる一日は、日本の鉄道並...せやさかい・421『王室名誉衛士ボビー』

  • RE・かの世界この世界:155『オオカミ王子フェンリル二世』

    RE・かの世界この世界154『オオカミ王子フェンリル二世』ポチトンネル小僧……フェンリル二世は静かに語った。「世界樹ユグドラシルには、もともと世界の区別なんかなかった。九つの種族が、それぞれの習慣や個性をもって生きていて、人も聖霊もみんな自由に暮らしていた。おおざっぱに居住地は決まっていたけど、旅行や商売、聖地巡礼なんかでの往来はあった。まあ、旅行は見識を広めるために学者とか腕を磨く職人とかで、そういう人口は5%ほどだし、聖地巡礼は一生に一回、そんなに多い交通量じゃなかった。オオカミ族は放浪の種族で、九つの世界を行き来して自由に暮らしていた。他の部族たちが、それぞれに国を作っても『ま、そういう暮らし方もあるんだろう』くらいに思って、いちばん多くのオオカミ族が暮らしていたスヴァルトアルムヘイムに半神族が国を...RE・かの世界この世界:155『オオカミ王子フェンリル二世』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・038『光化学スモッグ』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記038『光化学スモッグ』前にも言ったけど、昭和の宮之森高校には朝礼が無い。令和の宮之森はやってると思うよ、小学校や中学じゃやってたしね、なんか常識って感じ。先生たちは「遅刻をしないように!」とか注意するけど、朝礼で点呼とれば遅刻は断然減ると思う。「そりゃあ、朝礼なんかやったら、教師も遅刻できなくなるからなあ……」ロコとぼやいてたら、十円男がニヒルに呟く。「あ、ああ……」七月に入って、わたしたち一年生も、少しずつ学校の事情が分かってきた。先生の半分は遅れて出勤している。「そうだよねぇ、日直のとき出席簿や学級日誌取りに行っても、朝の職員室ってガラガラだもんね」「ああ、うん……」教室の窓から見てても、一時間目の途中に校門入って来る先生って、けっこういる。「知ってるか、一時間...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・038『光化学スモッグ』

  • RE・かの世界この世界:154『オオカミ王子フェンリル二世』

    RE・かの世界この世界154『オオカミ王子フェンリル二世』ポチなにを驚いてるの?トンネル小僧が不思議そうな顔で聞く。「そ、それは(ついさっきまで1/12サイズだったなんて言えない)……おまえが、か、かわい……変わってるからだ!オ、オオカミの耳こそしてるけで、まだ、ほんのガキじゃない!」「子どもでも立派なオオカミだ」「どこがよ!あたしと目が合っただけで、ぶっ飛んで逃げちまうし、グニャグニャトンネルとラビリンスの区別もついてないし、あたしみたいな女の子に組み伏せられてるし!」「おまえが怖すぎるんだろ!おまえ、目が合った時は人形みたいにちっこかったくせに……」「ちっこいゆーーーな!あ、あたしは、最初っからこのサイズよ、あんたの目がおかしいんだ!」「え?そ、そうなのか…………また見間違えたのか」「え?」「…………...RE・かの世界この世界:154『オオカミ王子フェンリル二世』

  • 銀河太平記・169『ピタゴラスゴールデン街・3』

    銀河太平記・169『ピタゴラスゴールデン街・3』緒方未来「まぁた、おまえらかぁ」警務の班長は、そう言うと二人の部下に酔っ払いを連行させ「先生も大変だねえ、でもまあ、一応……」と簡単な事情聴取をして行ってしまった。「さっきは、ありがとうね」路地から出てきたそいつに一応の礼は言っておく。「分かってるんだな。あのキックが入ったら事情聴取で済まなかったぜ」「うん、下手したら半身まひ、古い型式だから義体の修繕費高そうだし」「診療所の給料なら三か月分くらいはとんでしまうだろうね」「ああ、知ってんだぁ」「先週見かけた時は救急の制服だったけど」『ねえ、中に入んなよ、今日は二人とも驕りにしとくからー』「ラッキー!」「それはありがたい!」女将さんの声に同時に反応して店の奥に収まる。むろんスリッパに履き替えて。「いやあ、ご活躍...銀河太平記・169『ピタゴラスゴールデン街・3』

  • RE・かの世界この世界:153『カテンの森のトンネル小僧』

    RE・かの世界この世界153『カテンの森のトンネル小僧』ポチ横に伸びる穴をトンネルというんだ。当たり前のことを思い出したのは二分くらいガスマスクを追いかけた時よ。トンネルだとは思えないくらいに地底の穴はグニャグニャなのよ。でも、トンネルと推測するのは間違っていないと思う。だって、いっこうに枝分かれというか分岐が無い一本道だから。これは、落ち着いてアナライズすれば簡単に分かると思ったよ。地べたに座り込んで、両方の壁に手を伸ばす。グヌヌヌ……体がちっこいので、両方いっぺんにタッチすることができない。エイ!エイ!エイ!仕方なく、反復横跳びみたく壁をタッチしながら前に飛ぶ。グニャグニャになっている訳が分かった。ここはカテンの森の地下なので、カテンの巨木の根っこが深くまではびこっているんだ。トンネルは根っこを避けて...RE・かの世界この世界:153『カテンの森のトンネル小僧』

  • くノ一その一今のうち・63『撮影所の大浴場』

    くノ一その一今のうち63『撮影所の大浴場』そのいちグヌヌ……思わず唸ってしまった。撮影所の自室に戻って、もらったマップを開いてみると、そこに地下通路の出入り口がいっぱい書かれていた。つまり、どこから侵入しようとお見通しということだ。『今日は、もうお風呂に入ってお休みください。晩ご飯はお部屋の方にお持ちします』えいちゃんの言葉に甘えてお風呂をいただく。部屋にもお風呂はあるんだけど、あえて、大浴場にいく。大部屋俳優さんようの大浴場は、けして豪華ではなく、昔のお風呂屋さんという感じ。台浴槽にはジャグジーも付いていて、凝った背中を当てるとめちゃくちゃ気持ちがいい。『ジャグジーなら、お部屋のお風呂にも付いてるんですよ』最初は『いっしょに入るなんてとんでもないです(;'∀')!』と言っていたのを説得して、わたしの横に...くノ一その一今のうち・63『撮影所の大浴場』

  • RE・かの世界この世界:152『カテンの森』

    RE・かの世界この世界152『カテンの森』ポチちょっと怖い。なにがって、カテンの森よ。ハンシン族とかにやられて、縮んでしまったヨトゥンヘイムの中で、このカテンの森だけが昔のままにおっきい。低い木でも80メートルほど、高い木になると300メートルもあるそうよ。そうだと言うのは、自分で確かめたわけじゃないから。案内してくれた巨人族の少年が言ったことなんだけどね。メスシリンダーの変異体であるあたしは身の丈が人間の1/12しかない。だから、森から受ける圧は人間の12倍。300メートルの木は3600メートルなのよ(≧0≦)!そんなのが何千本、何万本もおっ立ってるんだから、あたしはテントの設営も勘弁してもらって、四号の中に留まった。通信機の上のお布団が一番よ。ハッチが半開きになってるんで外の様子は分かるんだ。巨人族の...RE・かの世界この世界:152『カテンの森』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 130『シフォンケーキの型』

    鳴かぬなら信長転生記130『シフォンケーキの型』信長ただいまぁ……の声に返事はない。市も茶姫も、まだ学校から帰ってきていないんだ。時計を見ると下校時間にはだいぶある。よし、二人が帰ってくるまでに焼きプリンを作っておいてやろう!兄妹愛とスィーツ愛がないまぜになって、俺をキッチンに急がせる。ペコポコボックスから焼く前のプリンを取り出してオーブンにぶち込む。じんわりとオーブンの中が幸せ色に染まる。要は、ヒーターに電気が通っただけなんだが、この穏やかな朱色は、まさに幸せ色。何十分か後に、美味しい焼きプリンが食べられるのかと思うと、唾が湧くどころではない。体中が美味しさを予感してフワフワしてくる。俺は、本当の意味で恋などしたことがないんだが、ひょっとしたら、このフワフワ感は恋に似ているのかもしれない。この感覚は男に...鳴かぬなら信長転生記130『シフォンケーキの型』

  • RE・かの世界この世界:151『大神官の住まい』

    RE・かの世界この世界151『大神官の住まい』テル広場に面した三階建てのアパルトメントだった。「半神がやってくるまでは役目がら神殿に住んでいたのですが、いまは単身者用の2DKです。狭いところですが気楽になさってください」気楽と言われても、そもそも椅子が二脚しかなく、姫にお座りいただくと、我々は立っているしかない。「大神官様、椅子をお持ちしました!」元気な声が廊下や階段からしてきたと思うと、少女たちがズカズカと入ってきて、要領よく全員分の椅子を並べてくれた。「ありがとう。みなさんに神のご加護があらんことを」マシガナ大神官が礼を言うと、少女たちは見かけの可憐さには似合わない豪快さで笑った。「ガハハハ、神のご加護は半神どもが居なくなってからいただきますよ」「あんたたち、大神殿ごとノヤをやっつけてくれた人たちだろ...RE・かの世界この世界:151『大神官の住まい』

  • せやさかい・420『ヤマセンブルグの七夕祭』

    せやさかい・420『ヤマセンブルグの七夕祭』詩(ことは)なんだかクリスマスツリーの感覚(^_^;)宮殿の前に建てられた笹……という触れ込みの孟宗竹は12メートルを超える高さで、ちょっと怯んでしまう。「一万人分も短冊が集まったんじゃしかたないわねぇ……」わたしの車いすを押しながら、呆れたように、それでも楽しそうに頼子さんが動画を撮る。「ごめんなさい、こんな時にバッテリー切れちゃって」「いいのよ、この方がゆっくりできるし」「ふふ、まあ、そうね」女王陛下の発案で、七夕の短冊を募集した。陛下が思いつかれたのは、ほんの一週間前。もともとは、七夕に備えて、わたしの部屋で笹を立ててささやかにやるつもりだった。「いいわねえ!どうせなら、みんなに呼びかけて元気にやりましょう!」そうおっしゃって、陛下は王室のホームページで『...せやさかい・420『ヤマセンブルグの七夕祭』

  • RE・かの世界この世界:150『進撃NO!巨人!!』

    RE・かの世界この世界150『進撃NO!巨人!!』テル大神官……?四号のみんなが驚いた。どう見ても十二三歳の少年だ。ヴァルハラの神官でも最年少は三十歳のベルクだ。大神官ともなれば六十歳以下では考えられない。「よく分かったな、ナフタリン」「ラタトスクはオーラで区別しているんだ。妖精や聖霊は姿が変わるやつも多くて、見かけで判断していてはメッセンジャーは務まらねえしな」「そうか、オーラでな……オーラであっても神官の属性が残っているのなら嬉しいことだよ」「いったい、なにが起こったんだよ?」「ヨトゥンヘイムは国ぐるみ縮んでしまったんだよ」「縮んだ?」「巨人の国であるヨトゥンヘイムは図体が大きいので莫大なエネルギーを必要とする。エネルギーの源泉は、我々巨人族に向けられる畏敬の念だ。それが失われてきて、何とかしなければ...RE・かの世界この世界:150『進撃NO!巨人!!』

  • RE・かの世界この世界:149『ここはどこだ・2』

    RE・かの世界この世界149『ここはどこだ・2』タングリス路上に降りて驚いた!四号は石造りの小屋を押しつぶしていた!「しまった!不可抗力とは言え、まずいことになったな……」「……ヨトゥンヘイムの神殿……かぁ?」ナフタリンもたよりない。「神殿なのか?」「ヨトゥンヘイムの真ん中は広場で、真ん中に神殿があるんだ。ヨトゥンの巨人たちがリカちゃん人形に見えてしまうほど巨大な神殿なんだぞ、下敷きのペシャンコになっているのは番小屋ほどの大きさしかねえし……」「ヨトゥンの街に似せたミニチュアのテーマパークとかではないのか?ヴァルハラには縮尺1/24のワールドパークあるぞ」「んなの聞いたこともねえ。他のと同じように縮んでも、並のカテドラルくれえはあるぞ」不思議がっていると、四号の向こう側がざわついた。他の乗員も目覚めたよう...RE・かの世界この世界:149『ここはどこだ・2』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・037『再びの希望が丘』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記037『再びの希望が丘』自習が二つも出て、委員長の高峰君と副委員長のたみ子が走り回って午後の授業を無しにした。ロコも今さらのクラブ見学なので、一人で帰る。「あ、そうだ」戻り橋を渡っている最中に思い立つ。令和の希望ヶ丘に行ってみよう!玄関上がるのももどかしく、框にカバンを置くと制服のまま自転車に跨って希望が丘を目指す。「ちょ、めぐり?」お祖母ちゃんの声がしたけど、お構いなし。三十分はかかるかと思ったけど、十七分で着いてしまう。こんなに近かったんだ。我が家のある寿町とは丘一つ隔てていて、せいぜい自転車しか乗らない子どもには生活圏外。丘のこっち側に公民館がある感じ。とりあえず、目の前の希望が丘ニュータウンにハンドルを向ける。あれ?めちゃくちゃ静か。こないだ公民館の屋上から見...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・037『再びの希望が丘』

  • RE・かの世界この世界:148『ここはどこだ・1』

    RE・かの世界この世界148『ここはどこだ・1』タングリスほんの0.1秒見えた気がする。視界の端から端までグレートウォールのように広がるゴツゴツの樹皮、一枚一枚が神殿の絨毯ほどに大きな葉っぱ、それが幾重にも重なって陽の光をさえぎる圧迫感…………これが世界樹ユグドラシルか?思った瞬間に衝撃がきたんだ。数瞬か数時間かたって意識が戻る。おぼろに視界が戻ってくると、四号の車内は傾いでいる……いや、どこか傾いたところに着地したので、意識が四号の傾ぎと認識しているのだ。俊敏な意識と感覚の回復はトール元帥親衛隊の訓練の賜物か、姫をヴァルハラまでお連れしなければならない役目の自覚からなのか。いずれにしろ、他の乗員よりも早く意識が戻ったのは幸いだ。目視できる範囲で乗員を見渡す。ショックで気絶はしているが、重篤な怪我などはし...RE・かの世界この世界:148『ここはどこだ・1』

  • 銀河太平記・168『ピタゴラスゴールデン街・2』

    銀河太平記・168『ピタゴラスゴールデン街・2』緒方未来扶桑の月面領土(正確には管理地)を3PAと書く。三つのPカルデラ(パスカル・プラトン・ピタゴラス)で3P。それにアルキメデスのAを合わせて3PA。英語読みしてスリーパ。月面開発勢力としては後発組の扶桑は、他の勢力からは警戒されて先代将軍さまのころまでは、これをもじってスリーパーと呼ばれていた。まあ、眠れる獅子的な感じ。それが、御当代の道隆さまが将軍位に就かれてからはスリッパと呼ばれるようになったんだよ。これにはエピソードがある。将軍位に就かれた道隆さまは、最初に征夷大将軍の大礼服でお写真をお撮りになったんだけど、誤ってスリッパのまま撮影されてしまった。黒皮のスリッパだったので、前の方から写したお写真では、ほとんど靴と区別がつかない。そのお写真が、全火...銀河太平記・168『ピタゴラスゴールデン街・2』

  • RE・かの世界この世界:147『ユグドラシルの時霧』

    RE・かの世界この世界147『ユグドラシルの時霧』ケイトユグドラシルというのがよく分からない。途方もなく巨大な世界樹で、その葉っぱの茂みや幹や根っこ中に八つの世界があって、その中には我々の住む人間界も含まれているらしい。だったら、その八つのうちの一つに過ぎない人間界の海に浮かぶユグドラシルってなんだ?ユグドラシルの中にユグドラシルがあるってことにならないか?そのユグドラシルの人間界の海にはまたユグドラシルがあって、その中にまた人間界があって、そのまた中に……はあぁ、もう分からん(╥﹏╥)。ため息をつくとベンチで横になったナフタリンと目が合った。「海に浮かんでいるユグドラシルはデバイスさ」「デバイス?」「ごめん、分からない言葉を使っちゃった」いや、一瞬パソコンとかスマホとかが頭に浮かんだけど、それが何なのか...RE・かの世界この世界:147『ユグドラシルの時霧』

  • くノ一その一今のうち・62『地下通路に映る影』

    くノ一その一今のうち62『地下通路に映る影』そのいち『左に抜ける通路は無視していいと思います』えいちゃんがはっきりと言う。「そうなの?」『はい、空堀は大阪城の南西の位置にあります。だからお城は北東の方角、いま、わたしたちは北に向かっていますから』「なるほど、右側になるんだね」『お守りに紐を付けておきました、腕に通して握っていてください』「いつの間に?」『ノッチさんの付き人なんです、これくらいのことは当たり前です』「そ、そうか……変わったストラップね?」『真田紐です』「な、なるほど(^_^;)」『真ん中を歩くと目立ちます』「よし、左端」『正解です。右側の枝道がよく見えますからね』ヤモリが壁に張り付く感覚で前に進む。これなら、普通に歩いてくる者には気取られない。ここを通る者が普通だったらだったらね。『影が映り...くノ一その一今のうち・62『地下通路に映る影』

  • RE・かの世界この世界:146『ケイトのシルバーケアル』

    RE・かの世界この世界146『ケイトのシルバーケアル』ケイトリスの化身だとは思えなかった。ロキが抱きとめた体は華奢だったけど、同性のあたしが見てもきれいだ。見たことは無いけど、月の女神アルテミスが居たとしたらこんな感じ。腕も脚も細いんだけど、駆けたり跳んだりする機能が集約された美しさはカモシカみたい。チュニックに包まれた胴はロキの腕の中でグッタリしているけど、かえってしなやかで美しいラインを顕わにしてトールボウ(あたしの武器の弓)のしなりを思わせた。でも、感動したのは一瞬だ。ええ!?みるみるナフタリンの体は、ロキが握っている手の先を除いて透け始めた。この世界の事には疎いあたしでも、ナフタリンに危機が迫っているのが分かった(;'∀')!「ケイト、ケアルを!」テルが叫ぶのとケアルの呪を唱えるのと同時だった。「...RE・かの世界この世界:146『ケイトのシルバーケアル』

  • せやさかい・419『半夏生の日曜日』

    せやさかい・419『半夏生の日曜日』さくらはんげしょう。音からだけだと半化粧、薄化粧と同じ意味だと思った。リビングでテイ兄さんが新聞を読んでいて、そこだけ口に出して言った。「あ、ああ、七月二日を『半夏生』て云うんやて」そう言って新聞を示してくれる。「ああ、これで『はんげしょう』って読むんですね」「留美ちゃんでも知らんかった?」「二十四節気はなんとなくわかるんですけど、七十二候は知らなかった。テイ兄さん偉いです!」「いや、僕も知らんかった。ええ言葉やねえ、半分くらい夏が生えてきた……そんな感じ?」「プ、夏が生えるんですか(´艸`)」「夏が生まれる?」「なるほど」「いえいえ、生えるの方が言葉が生きてます」「そう(^▽^)」二人でコラムを読む。「……そうか、この日までには田植えを済ませておけって、そういう意味が...せやさかい・419『半夏生の日曜日』

  • RE・かの世界この世界:145『ラタトスクのナフタリン』

    RE・かの世界この世界145『ラタトスクのナフタリン』ロキ次の瞬間、舳先の上に躍り出たのは栗色のチュニックを着た少女だった。トリャー!…………オットット(>0<)威勢のいい声で決めポーズ。マーメイド号が帆船だったら、そのまま舳先のフィギュアヘッド(船首の飾り)にしてもいいくらいにカッコイイ。しかし、タタラを踏んでガニ股でふんばる姿はみっともない。「きさま、ユグドラシルのラタトスクだな?」タングリスさんが遅刻してきた生徒を咎めるように聞いた。「へー、知ってたんだ。見かけよりはかしこいのかもな」「ユグドラシルのメッセンジャーは足が速いが口が悪い。予断と偏見に満ちたラタトスクに頼るくらいなら、自分で航路を切り開く」「ラタトスクってなに?」予備知識のないテルさんが基本的な質問をする。オレもよく分かってないので耳を...RE・かの世界この世界:145『ラタトスクのナフタリン』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・036『最初のアルバイト』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記036『最初のアルバイト』写真館最初のアルバイトは結婚式の記念撮影だ!「グッチには早いかもしれないけど、勉強になるわよ」直美さん(わたしの雇い主)はライトバンのハッチを締めながら刺激的なことを言う。記念写真だから、カメラと三脚ぐらいだと思ったら、レフ板やら照明機材やら、なにが入っているのか見当もつかないボックスやら、けっこうな機材でライトバンの後部座席は完全な物入れ。「えと……」助手席に収まって、軽くパニくる。「どうかした?」「あ、シートベルト……」「え?」しまった、1970年の車はシートベルトとかは付いてないんだ。「そうだよね、シートベルトぐらい付けたら、ちょっとましに見えるかもねぇ……」気を悪くさせたかなあと思ったけど、直美さんは、とても静かに発進させた。「学生時...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・036『最初のアルバイト』

  • RE・かの世界この世界:144『ユグドラシルを目指して・2』

    RE・かの世界この世界144『ユグドラシルを目指して・2』タングリス最後にユグドラシルが確認された海域を目指している。巨大な世界樹とは言え、闇雲に突き進んでも見つけられるものではない。ユグドラシルは間近に寄らなければ見えないのだ。その距離は五海里とも三海里とも、あるいは一海里、別の言い伝えでは、ほんの百メートルという絶望的な説まである。おそらくは、人智を超えた力で光学迷彩がかけられているのだろう。ロキの話では、三人の時の女神は毎朝水を汲んでは世界樹にやっている。水を与えているということは植物であるからであって、植物であれば、季節や日によってコンディションが異なって当然。三人の時の女神の内で覚醒しているのは現在を司る次女のヴェルサンディ一人だけ、過去を司る長女のウルズ、未来を司るスクルドはまだ眠ったまま。世...RE・かの世界この世界:144『ユグドラシルを目指して・2』

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